説明

画像形成装置

【課題】熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなるとともに、圧力定着以外の処理でトナーが圧力を受けることによるトナーの固着や固化を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】圧力相転移樹脂を含むトナーTを担持するトナー担持体1と、トナー担持体1から飛翔したトナーTが通過するトナー通過孔41とトナー通過孔41におけるトナーTの通過を制御する制御電圧Vcが印加される制御電極42とを有するトナー制御手段4と、トナー制御手段4の制御電極42に制御電圧Vcを印加する駆動回路7などの電圧印加手段とを備える。トナー制御手段4のトナー通加孔41を通過したトナーTを、記録媒体に直接又は中間転写体103を介して付着させることにより、記録媒体上にトナー画像を形成する。記録媒体上のトナー画像は圧力定着ユニット160により定着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置においてトナー画像を紙等の記録媒体に定着させる定着方式としては熱定着方式が広く用いられているが、画像形成装置の消費電力の半分以上が熱定着方式の加熱に費やされているため、昨今の環境問題の観点から加熱温度を下げるか全く加熱させないで定着させる非加熱定着方式が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる成分を含む粒子が非水系分散媒に分散されている非水系の定着液を、記録媒体上の撥水性処理されたトナーに付与する定着方法が提案されている。また、特許文献2には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶である有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着液を、未定着のトナーが所定位置に配設された紙などの被定着物の表面から噴霧または滴下することにより、トナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させる湿式定着方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では定着液を塗布あるいは噴霧する際や、塗布後の液体の表面張力の影響により未定着トナーが移動してしまい画像が大幅に乱れてしまう不具合やさらに水分除去が必要となり実用的ではないと考えられる。
【0004】
また、特許文献3には、トナーの樹脂を溶解または膨潤させる軟化剤を含有した泡状定着液を調合し、泡状定着液を均一塗布することにより、トナー画像を乱すことなく非加熱定着させる定着方法が提案されている。しかしながら、この定着方法では、泡状定着液のトナーへの浸透に時間がかかるため、実用レベルには至っていないのが現状である。
【0005】
一方、以下に示すように、エンジニアリングプラスチックやバイオプラスチック分野では、樹脂のミクロ相分離構造由来の特性を利用した低温での圧力成形用樹脂の研究がなされており、当該樹脂を電子写真方式の画像形成装置に応用する試みが行われている。
【0006】
性質の異なる二種以上の高分子が共有結合でつながって構成されているブロック共重合体からなる樹脂は、互いに性質の異なる複数の高分子鎖が独立して凝集し、ミクロ相分離構造を形成する。このブロック共重合体からなる樹脂の構造は、各高分子鎖の組成に比例し、海島構造、シリンダー構造、ラメラ構造へと変化することは既に広く知られていたが、非特許文献1に記載されている小核中性子散乱によるブロック共重合体の構造研究において、当該樹脂に圧力刺激を加えると流動性が発生するという現象が近年新たに発見された。その後、非特許文献2に記載されているように、上記ブロック共重合体からなる樹脂のほか、ナノサイズのコアシェル樹脂粒子においても、同様の圧力刺激に対する樹脂の流動性発現が確認されている。さらに、非特許文献2では、この現象の解釈としてフローリー・ハギンズ理論を見直し、最終的に樹脂を構成する高分子成分の質量密度、溶解度パラメーター、膨張係数から、圧力刺激にて当該樹脂を構成する高分子が秩序状態(Ordered State:固体)から無秩序状態(Disordered State:相溶)に変化することにより当該樹脂に流動性が発現することを理論および実験の両側面から証明し、また、当該樹脂をバロプラスチック(baroplastic)と命名した。このように非特許文献1のブロック共重合体からなる樹脂の圧力刺激による流動性の発現は、非特許文献2に記載されているように、圧力刺激による樹脂の相転移現象により生じることが明らかにされた。
また、ソフトセグメント(ガラス転移温度または融点が低い(−30℃以下))とハードセグメント(ガラス転移温度が高い(50℃以上))とから成るミクロ相分離構造を有する樹脂であると圧力による相転移が起こりやすく流動性が発現することは、その後の多数の研究からも示唆されている(例えば、非特許文献3参照)。
このようにして1998年に発見された圧力刺激にて樹脂に流動性が出現する現象は2003年以降に広く認められるようになってきた。
ミクロ相分離構造を有する共重合体(樹脂)の設計は流動性現象の発見以前に既に古くから行われており、上述のソフトセグメントとハードセグメントとからなる樹脂設計を含め、種々の文献に上記樹脂の製造方法が記載されている。例えば、エチレン性不飽和化合物の場合にはミニエマルション法やリビングラジカル重合など、ポリエステル系の場合には結晶性ブロックと非結晶性ブロックとを含むポリエステルブロック共重合体(例えば、非特許文献4参照)などは、一般によく知られている。
【0007】
上記圧力刺激に伴う相転移現象により流動性が出現する樹脂(以下「圧力相転移樹脂」という。)を画像形成装置に用いる試みについては、圧力定着を行う電子写真方式の画像形成装置に応用した例が提案されている。
例えば、特許文献4には、上記圧力相転移樹脂を有するトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて潜像保持体上にトナー画像を形成し、その感光体から被記録材(記録媒体)に転写されたトナー画像を、定着温度が15℃以上50℃以下及び定着圧力が0.1Mpa以上5Mpa以下の条件で定着する画像形成装置が提案されている。
また、特許文献5には、上記圧力相転移樹脂を有するトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて潜像保持体上にトナー画像を形成し、その潜像保持体から被転写体(記録媒体)に転写されたトナー画像を、最大定着圧力が5Mpaとなるように構成した2ロール型の定着装置により、定着ローラを加熱することなく圧力定着する画像形成装置が提案されている。
また、特許文献6には、上記圧力相転移樹脂を有するトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて潜像保持体上にトナー画像を形成し、その潜像保持体から被転写材(記録媒体)に転写されたトナー画像を、定着温度が110〜180℃及び定着圧力が1〜5Mpaとなるように構成された加熱ローラ加熱ローラ定着機により定着する画像形成装置が提案されている。
また、特許文献7には、上記圧力相転移樹脂を有するトナーを含む現像剤を用いて像保持体上にトナー画像を形成し、その保持体から被転写材(記録媒体)に転写されたトナー画像を、定着温度が50℃以下及び定着圧力が1〜5Mpaとなるように上下ロールから構成された圧力付与装置により加圧して仮定着し、その後、紫外線を照射することにより紫外線硬化成分を硬化させ、被転写材にトナー画像を定着する画像形成装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献4〜7に記載されている上記圧力相転移樹脂を有するトナーと圧力定着方式とを組み合わせた従来の画像形成装置では、圧力相転移樹脂が一定以上の圧力を受けることによって軟化する特性をもつことから、当該樹脂のトナーを用いて形成したトナー画像を圧力定着方式で定着することができる。そのため、従来の加熱によってトナーの樹脂を溶融して定着する熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなる。
しかしながら、上記従来の画像形成装置では、感光体(潜像保持体、像保持体)の周面上で帯電、露光、現像、転写の各工程が繰り返し実行される。そのため、感光体上のトナー画像を記録媒体(被記録材、被転写体)に転写する転写工程の後、感光体の周面に残った残トナーを除去するクリーニング手段が必要になる。このクリーニング手段は、感光体上の残トナーをかき取るように感光体に押圧させた弾性ブレードや感光体に接触させた状態で回転駆動されるブラシローラなどを用いて構成されるが、いずれの構成も感光体上の残トナーに圧力がかかる。このため、圧力定着を行う定着装置以外の部分で一定以上の圧力を受けると、感光体の周面やクリーニング手段を構成する弾性ブレード及びブラシローラの表面などの部材表面に固着したりトナーがいったん軟化した後に固化したりするなどの不具合が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなるとともに、圧力定着以外の処理でトナーが圧力を受けることによるトナーの固着や固化を抑制することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、圧力相転移樹脂を含むトナーを用いて記録媒体上に形成したトナー画像に、非加熱で圧力を加えることにより、該トナー画像を該記録媒体に定着させる圧力定着手段を備えた画像形成装置であって、圧力相転移樹脂を含むトナーを担持するトナー担持体と、前記トナー担持体から飛翔したトナーが通過するトナー通過孔と該トナー通過孔におけるトナーの通過を制御する制御電圧が印加される制御電極とを有するトナー制御手段と、前記トナー制御手段の制御電極に前記制御電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、前記トナー制御手段のトナー通加孔を通過したトナーを、前記記録媒体に直接又は中間転写体を介して付着させることにより、該記録媒体上にトナー画像を形成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、圧力相転移樹脂を含むトナーを担持したトナー担持体からトナー制御手段に向かってトナーが飛翔し、そのトナー制御手段のトナー通過孔におけるトナー通過が、トナー制御手段の制御電極に印加された制御電圧により制御される。このように制御されてトナー通過孔を通過したトナーを、記録媒体に直接又は中間転写体を介して付着させることにより、記録媒体上にトナー画像を形成する。この圧力相転移樹脂を含むトナーで形成されたトナー画像は、従来の加熱定着方式に比して加熱温度を低減した又は加熱を行わない非加熱方式で圧力を加えることにより記録媒体に定着させることができる。従って、熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなる。しかも、従来の潜像担持体上のトナー画像を転写した後に潜像担持体の表面にブレードやブラシ等のクリーニング部材を押圧して残トナーを除去する構成とは異なり、上記圧力相転移樹脂を含むトナーは、潜像担持体上に付着した状態でクリーニング部材から圧力を受けるということがなくなる。そのため、圧力定着以外の処理でトナーが圧力を受けることによるトナーの固着等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなるとともに、圧力定着以外の処理でトナーが圧力を受けることによるトナーの固着や固化を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成の一例を示す説明図。
【図2】制御パルスのON/OFFの状態を示す説明図。
【図3】(a)は記録紙側から見たトナー制御手段の印写面の一例を示す説明図。(b)はトナー担持体側から見たトナー制御手段のトナー供給側面の一例を示す説明図。
【図4】トナー担持体、トナー制御手段、記録媒体の二次元断面電界強度分布のシミュレーション結果に基づくトナー通過孔を通過する電気力線を示す説明図。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を模式的に示した全体構成図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を模式的に示した全体構成図。
【図7】(a)は、トナー担持体の一構成例を展開した状態で模式的に示す平面説明図。(b)は、そのトナー担持体の断面説明図。
【図8】トナー担持体の電極に印加するパルス電圧の一例を示す説明図
【図9】(a)は、トナー担持体の他の構成例を展開した状態で模式的に示す平面説明図。(b)は、そのトナー担持体の断面説明図。
【図10】トナー供給ユニットの一構成例を示す概略構成図。
【図11】トナー供給ユニットの他の構成例を示す概略構成図。
【図12】圧力定着ユニットに用いられる加圧装置の加圧ローラ対で発生させる加圧力を変化させる加圧力調整機構の構成例を示す図であり、同加圧装置の加圧ローラ対による加圧力を高くした状態の概略構成図。
【図13】同加圧装置の加圧ローラ対による加圧力を低くした状態の概略構成図。
【図14】画像情報に基づいて加圧装置の加圧ローラ対で発生させる加圧力を制御する制御系の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成などは、発明が適用される装置の機構や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る画像形成装置で用いる圧力相転移樹脂を含むトナーについて説明する。本実施形態におけるトナーを構成する圧力相転移樹脂としては、ミクロ相分離構造を有するものが好ましく、ブロック共重合体あるいはコアシェル構造の樹脂がより好ましい。このブロック共重合体は、ガラス転移温度Tgの高いハードセグメントの高分子と、ガラス転移温度Tgあるいは融点が低いソフトセグメントの高分子とから構成されていることがさらに好ましい。上記コアシェル構造の樹脂の場合は、コア及びシェルのどちらか一方がガラス転移温度Tgの高いハードセグメントの高分子(以下、必要に応じて「ハードセグメント成分相」という。)からなり、もう一方がガラス転移温度Tgあるいは融点が低いソフトセグメントの高分子(以下、必要に応じて「ソフトセグメント成分相」という。)から構成されていることがさらに好ましい。
【0016】
上記圧力相転移樹脂を画像形成用のトナーに用いると、圧力刺激により、樹脂の流動性が発現し、所定の定着工程を有する作像プロセスにおいて、定着工程に必要な所望の樹脂流動性を得ることができる。
【0017】
上記構造の圧力相転移樹脂としては、例えば、重縮合機構により重合した樹脂、あるいはエチレン性不飽和単量体をラジカル重合機構により重合した樹脂を用いることができる。
上記重縮合機構により重合した樹脂は、例えば、「重縮合」(化学同人、1971年刊)、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができる。また、上記重縮合機構により重合した樹脂は、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、それらの方法を組み合わせて用いて合成することもできる。上記重縮合機構により重合した樹脂としては、ポリエステル樹脂を好ましく挙げることができる。
上記エチレン性不飽和単量体を重合した樹脂としては、例えば、リビングアニオン重合法によりブロック共重合体を得ることができる。また、コアシェル粒子の場合には、2ステージフィード法と呼ばれる単量体を段階的に重合系へ供給する方法にて、コア成分高分子とシェル成分高分子とからなるガラス転移温度の異なるナノサイズのコアシェル樹脂粒子を合成することができ、好ましい。
【0018】
上記ハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、45〜120℃であることが好ましく、50〜110℃の範囲にあることがより好ましい。上記ソフトセグメント成分相のガラス転移温度Tgは、上記ハードセグメント成分相のガラス転移温度Tgより20℃以上低いことが好ましく、圧力刺激による樹脂の流動性を効率よく出現させるためには、30℃以上低いことがより好ましい。ここで、上記ガラス転移温度Tgの値は、示差走査熱量計(DSC)を用いて−80〜140℃迄、毎分10℃の昇温速度で測定を行ったときのASTM D3418−82に規定された方法で測定した値を意味する。
【0019】
上記ブロック共重合体や重縮重合したポリエステル樹脂については、回転剪断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)など各種機械的高剪断力により水系媒体に分散させる剪断乳化法、樹脂を有機溶剤に溶解した後、水系媒体を添加し転相させる転相乳化法、ブロック共重合体又はその前駆体(リビング末端低分子量体又はブロック)を少量のエチレン性不飽和化合物と混合し、剪断乳化や転相乳化後、ミニエマルション重合、懸濁重合によりブロック共重合体の樹脂粒子分散液に調合する手法など、既存の分散法を利用してナノサイズコアシェル粒子の場合と同様に、樹脂粒子分散液にすることができる。例えば、得られた樹脂分散液を用い、着色剤含有分散液、必要に応じて離型剤含有分散液をそれぞれ適量配合し、乳化凝集法により画像形成用のトナーを製造することができる。
【0020】
画像形成用のトナーの製造方法においては、前記分散液中の前記樹脂粒子、離型剤粒子及びその他の添加した粒子を凝集(会合)させる既知の凝集法を用いて凝集(会合)させることにより、トナー粒径及び粒径分布を調整することが可能である。
【0021】
具体的には、樹脂粒子分散液及び離型剤粒子分散液を、着色剤粒子分散液等と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、配合した分散液の系を樹脂粒子のガラス転移温度以上、又は、融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合合一し、洗浄、乾燥することによりトナーが得られる。このとき、加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御することができる。
【0022】
上記重縮合樹脂としては、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸や、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の重縮合性単量体を用いた直接エステル化反応、エステル交換反応等により重縮合を行い、作製することができる。重縮合の際には、重縮合を促進するために、重縮合触媒を併用することが好ましい。
多価カルボン酸は、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物を含む。
多価アルコールは、多価アルコール、それらのエステル化合物を含む。
【0023】
なお、多価カルボン酸のアルキルエステルは、低級アルキルエステルであることが好ましい。ここで、「低級アルキルエステル」とは、エステルのアルコキシ部分の炭素数が1〜8であるアルキルエステルを表す。具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル及びイソブチルエステル等を挙げることができる。
【0024】
また、多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等を挙げることができる。
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
これらの多価カルボン酸は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0025】
多価アルコール(ポリオール)は、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノキシアルコールフルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)等を挙げることができる。
【0026】
ジオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。これらの多価アルコール(ポリオール)は、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を併用することもできる。
【0027】
また、エチレン性不飽和化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、親水性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体であってもよい。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類などや、β−カルボキシエチルアクリレートが好ましく例示できる。これらの単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上共重合して得られる共重合体、さらにはこれらの混合物を使用することができる。
【0028】
親水性基としては、極性基が挙げられ、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基等の酸性極性基:アミノ基等の塩基性極性基、アミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ホルミル基等の中性極性基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、特に本実施形態のトナーに好ましく用いられるのは、酸性極性基である。この酸性極性基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体が、樹脂粒子表面にある特定の範囲で存在することにより、樹脂粒子に凝集性を付与し、樹脂粒子のトナー化が可能となり、さらにトナーに十分な帯電性を与えることができる。好ましく用いられる酸性極性基としては、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。この酸性極性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及びスルホ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。上記カルボキシ基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルを挙げることができる。これらの単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
ガラス転移温度Tgが40℃以上の樹脂としては、エチレン性不飽和化合物の重合体である場合には、ランダム共重合体であることが好ましい。また、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物をモノマー単位として含有する樹脂が好ましく、親水性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合比で0.1〜10mol%含有することが好ましい。この範囲内の共重合比であると、水系媒体中でのトナーの製造工程において、Tgが40℃以上の樹脂がトナーのシェル層を容易に形成するため、好ましい。Tgが40℃以上のエチレン性不飽和化合物の重合体、ポリエステル樹脂などの重縮合樹脂は、トナーに含まれる全結着樹脂の50重量%以下が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。上記範囲内の共重合比であると、トナー耐久性が向上し、安定した画質特性を得ることができる。
【0030】
本実施形態のトナーに用いることができる着色剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
また、黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。
また、赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
また、青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。
また、白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
また、これらの着色剤は単独又は混合して使用される。
【0031】
これらの着色剤は、任意の方法、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等や、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することにより、着色剤粒子の分散液が調製される。また、これらの着色剤は極性を有する界面活性剤を用いて、ホモジナイザーによって水系に分散され、また、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
【0032】
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。また、着色剤は、トナー構成固体分総重量に対して4〜15重量%の範囲で添加される。黒色着色剤として磁性体を用いる場合は、他の着色剤とは異なり、12〜240重量%添加される。前記の着色剤の配合量は、定着時の発色性を確保するために好ましい量である。また、トナー中の着色剤粒子の中心径(メジアン径)を100〜330nmにすることにより、OHP透明性及び発色性が確保される。なお、着色剤粒子の中心径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定される。
【0033】
本実施形態のトナーに用いることができる離型剤の具体例としては、例えば、各種エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などが挙げられる。これらのワックス類は、室温付近では、トルエンなど溶剤にはほとんど溶解しないか、溶解しても極めて微量である。これらのワックス類を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、サブミクロン以下の粒子の分散液が作製される。なお、得られた離型剤粒子分散液の粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)で測定することができる。
【0034】
上記具体例を挙げた離型剤は、トナー構成固体分総重量に対して5〜25重量%の範囲で添加することが、オイルレス定着システムにおける定着画像の剥離性を確保する上で好ましい。
【0035】
また、上記離型剤を使用するときには、樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を凝集した後に、さらに樹脂粒子分散液を追加して凝集粒子表面に樹脂粒子を付着することが、帯電性、耐久性を確保する観点から好ましい。
【0036】
磁性体としては、具体的には、磁場中で磁化される物質を用いるが、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性の粉末、若しくはフェライト、マグネタイト等の化合物が使用される。本実施形態において水系媒体中でトナーを得るときには、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは予め磁性体の表面を改質し、例えば疎水化処理等を施しておくことが好ましい。
【0037】
帯電制御剤としては、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料やトリフェニルメタン系顔料など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することができるが、凝集や合一時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0038】
重合、顔料の分散、樹脂粒子の製造や分散、離型剤の分散、凝集、又はその安定化などに用いる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用される。
【0039】
次に、本実施形態の圧力相転移樹脂を含むトナー及びその作成方法のより具体的な実施例についてさらに詳しく説明する。
[樹脂粒子分子量の測定]
ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって以下に記す条件で重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し、測定を行う。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。ここで、測定結果の信頼性は、上記測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、重量平均分子量Mw=28.8×10及び数平均分子量Mn=13.7×10となることにより、確認することができる。また、上記GPCのカラムとしては、上記条件を満足するTSK−GEL、GMH(東ソー(株)製)等を用いた。
【0040】
[樹脂のガラス転移温度Tgの測定]
樹脂のガラス転移温度Tgの測定には、示差走査熱量計DSC/RDC220(セイコーインスツルメント社製)を用いた。樹脂粒子分散液中における樹脂粒子の粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−920)を使用して、測定した。トナー粒子、キャリア粒子、及び、記録剤の粒子径は、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を使用して、測定した。
【0041】
[樹脂粒子分散液(1)の作成]
エチレン性不飽和化合物重合体からなる樹脂分散液(1)は次のようにして作成した。まず、セパラブルフラスコ中に、イオン交換水300重量部とTTAB(テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、シグマ社製)1.5重量部を仕込み、20分間、窒素置換を行った後、撹拌しながら65℃まで昇温した。その後、n−ブチルアクリレートモノマー40重量部を加え、さらに20分間撹拌を行った。そして、重合開始剤V−50(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、和光純薬工業(株)製)0.5重量部を予め、10重量部のイオン交換水に溶解後、フラスコ中に投入した。65℃で、3時間保持し、スチレンモノマー61重量部と、n−ブチルアクリレートモノマー9重量部、アクリル酸2重量部及び0.8重量部のドデカンチオールを0.5重量部のTTABを溶解したイオン交換水100重量部に乳化した乳化液を2時間かけて定量ポンプを用いてフラスコ中に連続的に投入した。その後、温度を70℃に昇温、さらに2時間保持して、重合を完了させた。この重合により、重量平均分子量Mwが25,000、平均粒子径が150nm、固形分量が25重量%のコアシェル型樹脂粒子分散液(1)を得た。また、樹脂粒子を40℃で風乾後、−80℃から140℃の温度範囲のDSC解析を行ったところ、−50℃付近にポリブチルアクリレートによるガラス転移が観測された。また、60℃付近にスチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸共重合体からなると考えられる共重合体による樹脂のガラス転移が観測された。
【0042】
[着色剤粒子分散液(C1)の調合]
着色剤粒子分散液(C1)の調合は次のようにして行った。ここで、着色剤粒子分散液は、シアンに対応した着色剤粒子分散液(C1)の調合の例について説明する。シアン顔料100重量部(大日精化工業(株)製、銅フタロシアニンC.I.Pigment Blue15:3)アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR)10重量部イオン交換水400重量部前記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により15分間分散した後、超音波バスにより10分間分散し、中心径210nm、固形分量21.5%のシアン着色剤粒子分散液を得た。
【0043】
[離型剤粒子分散液(R1)の調合]
離型剤粒子分散液(R1)の調合は次のようにして行った。イオン交換水800重量部にアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR)2重量部とカルナバワックス215重量部上記成分を混合し、100℃に加熱し融解した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で15分間乳化した後、さらにゴーリンホモジナイザーを用いて100℃にて乳化を行った。これにより、粒子の中心径が230nm、融点が83℃、固形分量が21.5%の離型剤粒子分散液を得た。
【0044】
[トナー(1)の調合・作成]
上記調合した各種分散液を用い、以下のようにしてトナー(1)を作成した。樹脂粒子分散液(1)168部(樹脂42部)着色剤粒子分散液(C1)40部(顔料8.6部)離型剤粒子分散液(R1)80部(離型剤17.2部)ポリ塩化アルミニウム0.15部イオン交換水300重量部を成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を84重量部(樹脂21重量部)追加して緩やかに撹拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95℃まで加熱した。ここでは、水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.5以下とならないように95℃で3時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行いシアントナー粒子(1)を得た。このトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、体積平均粒径は5.8μmであった。
上記トナー50重量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.5重量部を添加し、サンプルミルで混合してシアン色のトナー(1)を得た。
【0045】
[記録剤(1)の調合]
シリコン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)100重量部、カーボンブラック(BP2000、キャボット社製)3重量部およびトルエン100重量部を、ホモミキサーで30分間分散させ、被覆層形成溶液を調製した。この被覆層形成液および平均粒子径50μmの球状フェライトキャリア1000重量部を用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア表面に被覆層を形成したキャリアを製造した。次に、上記トナー90重量部および上記キャリア910重量部をボールミルに入れ30分間攪拌して記録剤(1)を作成した。シアン顔料の代わりにマゼンタマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57:2)、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー97)、ブラック顔料(カーボンブラックR330)を用いた以外は、シアンの記録剤(1)と同様にして、他のイエロー、マゼンタ、ブラックの3色の記録剤(1)を作成した。
【0046】
[樹脂粒子分散液(2)の作成]
ポリエステス樹脂からなる樹脂粒子の分散液(2)の作成は次の様にして行った。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸175重量部、ビスフェノールA2モルエチレンオキサイド付加物320重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.5重量部の材料を混合した。そして、この混合した材料を、撹拌機を備えたリアクターに投入し、窒素雰囲気下120℃で12時間重縮合を実施したところ、均一透明なポリエステル樹脂(1)を得た。GPCによる重量平均分子量は14,000、DSCによるTgは54℃であった。
また、ドデシルベンゼンスルホン酸0.36重量部、1,6−ヘキサンジオール80重量部およびセバシン酸115重量部を上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターに投入し、窒素雰囲気下90℃で5時間重縮合を実施したところ、均一白色ポリエステル樹脂(2)を得た。GPCによる重量平均分子量は8,000、DSCによるTgは−52℃であった。
【0047】
上記の重縮合で得られたポリエステル樹脂(1)100重量部とポリエステル樹脂(2)100重量部を撹拌機を備えたリアクターに投入し、120℃で30分溶解、混合した。その後、95℃に加熱したイオン交換水800重量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0重量部、1NNaOH水溶液を1.0重量部溶解した中和用水溶液をフラスコ中に投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で5分間乳化した後、さらに超音波バス内で10分振とうした後、室温水にてフラスコを冷却した。このように固形分量が20重量%の樹脂粒子分散液(2)を得た樹脂粒子の中心径は、250nmであった。
【0048】
[トナー(2)の調合・作成]
上記調合した各種分散液を用い、以下のようにしてトナー(2)を作成した。樹脂粒子分散液(2)210重量部(樹脂42重量部)、着色剤粒子分散液(C1)40重量部(着色剤8.6重量部)、離型剤粒子分散液(R1)40重量部(離型剤8.6重量部)、ポリ塩化アルミニウム0.15重量部、イオン交換水300重量部を上記配合に従って、その成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。その後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(2)を105重量部(樹脂21重量部)追加して緩やかに撹拌した。その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95℃まで加熱した。95℃までのあいだ、水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.0以下とならないようにした。95℃で、3時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行いトナー粒子を得た。このトナー粒子の粒径をコールターカウンターで測定したところ、体積平均粒径は4.9μmであった。
上記トナー50重量部に対し、疎水性シリカ(キャボット社製、TS720)1.5重量部を添加し、サンプルミルで混合してシアン色のトナー(2)を得た。
【0049】
[記録剤(2)の調合]
シリコン樹脂溶液(KR50、信越化学社製)100重量部、カーボンブラック(BP2000、キャボット社製)3重量部およびトルエン100重量部をホモミキサーで30分間分散させ被覆層形成溶液を調製した。この被覆層形成液および平均粒子径50μmの球状フェライトキャリア1000重量部を用い、流動床型塗布装置により、球状フェライトキャリア表面に被覆層を形成したキャリアを製造した。次に、上記トナー90重量部および上記キャリア910重量部をボールミルに入れ30分間攪拌して静電荷像現像用(2)を作成した。シアン顔料の代わりにマゼンタマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド57:2)、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー97)、ブラック顔料(カーボンブラックR330)を用いた以外は、シアンのトナー(2)と同様にして、他のイエロー、マゼンタ、ブラックの3色の記録剤(2)を作成した。
【0050】
次に、本実施形態に係る画像形成装置におけるトナー画像形成の原理について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部構成の一例を示す説明図である。この画像形成装置は、上記圧力相転移樹脂を含むトナーTをクラウド化した状態で担持するローラ状のトナー担持体1と、トナー制御手段4とを備えている。トナーTとしては、例えば、前述のトナー(1)やトナー(2)を用いることができる。トナー制御手段4は、トナー担持体1と、トナーTが付着させられるトナー付着対象物としての記録媒体である記録紙3の搬送路(通過位置)との間に位置するように配置されている。
【0051】
トナー担持体1は、表面側にトナーTを搬送する方向(本例では周方向)に所定の間隔でトナーTを搬送する方向と直交する方向(本例では軸方向)に沿って形成された所定ピッチで設けられた複数の制御電極11を有している。このトナー担持体1の各制御電極11には、バイアス電圧印加手段(電源)6から時間によって電位が変化するパルス電圧(クラウドパルス)Vsが印加される。例えば、0.5kHz〜7kHzの周波数のパルス電圧Vsが印加される。各電極11、11の間隔はファインピッチに設けられているため、電極11、11間で強い電界が形成される。そのため、トナーTの帯電極性に対して反発する電位にある電極11の表面からトナーTは勢いよく飛翔し、飛翔したトナーTは吸引する極性の電位が印加されている電極11に引き寄せられる。パルス電圧Vsが切り替わることにより、パルス周波数に応じた上下方向の飛翔を繰り返し、トナーTがクラウド化された状態になる。
【0052】
トナー制御手段4は、トナーTが通過可能な複数(図1では1個のみ図示)のトナー通過孔(開口)41が複数列配列するように設けられている。また、トナー制御手段4のトナー供給側の面(トナー担持体側の面)のトナー通過孔41周辺にはリング状に制御電極42が設けられている。また、トナー制御手段4のトナー通過孔41から若干離れた印写側の面(記録媒体側の面)には共通の共通電極43が設けられている。
【0053】
トナー制御手段4の制御電極42には、制御電圧印加手段(制御パルス印加手段)Pを構成する駆動回路7から、例えば図2に示すような制御パルスVcが印加される。この場合、トナー通過孔41をトナーTが通過可能な状態(ON状態)にするときには、制御電極42に電圧Vc−onが印加される。一方、トナーTが通過不可能な状態(OFF状態)にするときには、制御電極42に電圧Vc−offが印加される。また、印写側の面の共通電極43には常時、電圧印加手段としての電源8から電圧Vrgが印加されており、トナー制御手段4の印写側の領域における電界の相互干渉を防止している。
【0054】
なお、トナー制御手段4の制御電極42は、トナー通過孔41の周囲に設けるだけでも動作が可能であるが、トナー通過孔41の内壁面に設けたものであってもよいし、又は、トナー通過孔41の内壁面とトナー通過孔41のトナー担持体側の周囲との両方に設けたものであってもよい。
【0055】
記録紙3のトナー付着面とは反対側の背面には、対向電極手段としての背面電極5が接触対向するように配置されている。この背面電極5には、バイアス電圧印加手段としてのバイアス電源9から、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録紙3に付着させるためのバイアス電圧Vpが印加される。
【0056】
なお、トナー担持体1からのトナーTが付着するトナー付着対象物は、記録媒体としての記録紙3に転写されるトナー画像が担持される中間転写体(例えば、中間転写ベルトや中間転写ドラム)であってもよい。この場合、トナー担持体1からのトナーTを中間転写体の表面に選択的に付着させることによりトナー画像を形成し、その後、中間転写体上のトナー画像が記録媒体としての記録紙に転写される。
【0057】
記録紙3にバイアス電圧Vpを印加するには、例えば、トナー付着対象物が記録媒体としての記録紙3の場合、その記録紙3の背面側(トナー担持体側とは反対側の面)に、バイアス電圧Vpを印加する背面電極5を配置し、この背面電極5の上面に記録紙3を通過させるように構成する。また、トナー付着対象物が記録媒体としての中間転写体の場合、その中間転写体の内部に電極を埋め込んだ構成(記録媒体側の対向電極手段を内部電極とする構成)にしたり、又は、中間転写体の背面側に背面電極5を配置した構成にしたりすることができる。この場合、上記バイアス電圧Vpは、中間転写体の内部の電極に印加したり、中間転写体の背面側の背面電極5に印加したりする。
【0058】
ここで、トナー担持体1の表面に担持するトナーをクラウド化する手段として、トナー担持体1表面に設けられた複数の電極11を備え、各電極11に電圧Vsを印加する。このとき、互いに隣接する複数の電極11は、その電極間でトナーTを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加する2相の電極間ピッチp、又は、2本毎の各電極11に2相の位相電圧を印加する2相の電極間ピッチに配置する。
【0059】
図3(a)は記録紙側から見たトナー制御手段4の印写面の一例を示す説明図であり、図3(b)はトナー担持体側から見たトナー制御手段4のトナー供給側面の一例を示す説明図である。この図3の例では、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過孔41を囲む形で所定幅(例えば、10〜100μm幅)のリング状の制御電極42を設けている。トナー通過孔41は、形成する画像のドット径のサイズで決定するが、例えば直径φ50μm〜φ200μmである。
【0060】
トナー制御手段4の制御電極42には、個々にトナーTの通過をON、OFF制御するためのドライバ回路(駆動回路)に接続するためのリードパターン42aが接続されている。また、トナー制御手段4の印写面側には、トナー通加孔41の周辺部を除いた領域に共通電極43が設けられている。この共通電極43には、制御電極42へのVc−on、Vc−offの電圧印加にかかわらず、隣接相互の電界の影響を受けないようにDC電位が印加される。すなわち、記録紙側のバイアス電位とトナー供給側の間に形成する電気力を各トナー通過孔の独立した電気力線として形成できるため、マルチ駆動(複数のノズルトナー通過孔からトナーを飛翔させる駆動)のときの相互干渉(他のトナー通過孔の状態を受けること)が発生しないようにしている。
【0061】
上記構成のトナー制御手段4は、例えば次のように製造することができる。まず、基材45である絶縁性部材として、コスト及び製造プロセスの観点から樹脂フィルム(例えば、ポリイミド、PET、PEN、PES等)を使用する。樹脂フィルムの厚さは30μm〜100μmが好適である。この樹脂フィルムの裏表の表面に0.2μm〜1μmのAl蒸着膜を形成する。次に、Al蒸着膜が形成された樹脂フィルムの表面(おもての面)のフォトリソ工程として、フォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク及びマスク露光を行ない、現像した後、フォトレジストの加熱硬化を行なう。同様に、Al蒸着膜が形成された樹脂フィルムの裏面に対して印写面側のパターンを前記と同様なフォトリソ工程で形成する。その後、Alエッチング液によるAlのパタンニングを行う。トナー通過孔41となる貫通孔の形成は、上記Alのパターンを形成した後に行う。この貫通孔を形成する加工としては、プレスによる機械的な加工、形成したパターンに対するエキシマレーザー加工、メタルマスクを利用したスパッタエッチング加工等のドライエッチング加工を用いることができる。これらの加工を採用することにより、位置ずれの無い高精度な貫通孔の加工が可能になる。
【0062】
上記構成のトナー担持体1及びトナー制御手段4を備えた画像形成装置においては、トナー担持体1の電極11に対して180度位相の異なる2相パルス電圧を印加することにより、トナー担持体1上でトナーTが飛翔してクラウド化される。また、トナー担持体1の回転による搬送により、トナーTが搬送される。一方、記録紙3側の背面電極5に印写バイアス電圧Vpが印加される。この状態で、トナー制御手段4の共通電極43に対して電圧Vrgを印加する。そして、制御電極42に対して、トナーTがトナー通過孔41を通過可能な状態(ON状態)にするときには図2に示すON時の電圧Vc−onを印加し、トナーTがトナー通過孔41を通過不可能な状態(OFF状態)にするときには、図2に示すOFF時の電圧Vc−offを印加する。この場合、これらの各電極11,5,42,43に対する印加電圧を後述するように設定することで、トナー制御手段4をトナー担持体1のトナーTが記録紙3に向かって通過可能な状態のVc−on印加時に、記録紙3側からトナー供給側に電気力線10が形成される。これにより、トナー担持体1上でクラウド化しているトナーは電気力線10による電界に乗ってトナー制御手段4のトナー通過孔41を通過して記録紙3上に着弾する。したがって、形成対象の画像に応じてトナー制御手段41の各トナー通過孔41をON/OFF制御(開閉制御)することで、記録紙3上に直接トナー画像を形成することができる。
【0063】
図4は、トナー担持体1の電極11に対するパルス電圧Vs、記録紙3側の背面電極5に対するバイアス電圧Vp、トナー制御手段4の制御電極42に対する制御パルス電圧Vcをそれぞれ印加したときの、トナー担持体1、トナー制御手段4、記録紙3の二次元断面における電界強度分布のシミュレーション結果に基づくトナー通過孔を通過する電気力線を示す説明図である。
トナー担持体1の電極11にはパルス電圧(電位が時間的に変動する電位)Vsを印加する。この場合、バイアス電圧Vpの波高値は電極ピッチ、使用するトナー等に応じて設定する。通常の実験結果によると、バイアス電圧Vpの波高値を±60〜±300Vpp(ppはピーク−ピーク)の範囲内で設定することにより、トナーの飛翔が可能になる。
【0064】
図4のシミュレーションの例では、±200Vpp、DC電圧成分0Vの電圧を印加している。なお、トナー担持体1とトナー制御手段4の間隔dは0.2mmである。また、この例では、トナー制御手段4のトナー通過孔41の直径はφ120μm、リング状の制御電極42の穴中心方向の幅は50μm、共通電極43と穴の間隔は50μmである。このトナー制御手段4の共通電極43に対する印加電圧は0Vである。そして、トナー制御手段4の制御電極42には、トナーTがトナー通過孔41を通過可能な状態(ON状態)にする場合、制御パルス電圧Vc−onが+250V、トナーTを通過させる時以外の阻止状態の(通過不可能な状態にする)場合の電圧Vc−offは0Vとしている。
【0065】
記録紙3の背面電極5へのバイアス電圧Vpは、トナー制御手段4と記録紙3との間隔にもよるが、例えば+200〜+1500VのDC電圧を印加すればよい。図4の例では、トナー制御手段4と記録紙3との間隔が0.3mmであり、背面電極5に+800VのDC電圧を印加し、マイナス帯電トナーを記録紙3の表面に引き寄せる電位勾配を形成している。
【0066】
各電極11、42,43、5に印加する電位の関係を以上のように設定することで、例えば、マイナスに帯電したトナーがトナー通過孔41を通過可能な状態(ON状態)にする場合(図4(a))においては、次のように電気力線が形成される。すなわち、最もプラス側に電位が高い記録紙3側の電極5から出る電気力線のうち、トナー制御手段4のトナー通過孔41を通る電気力線の多くが、トナー通過孔41を通過した後、一番電位の低い電極すなわちトナー担持体電極11の−200Vを印加している電極に入ることになる。
【0067】
図4(a)に示すように、トナーTがトナー通過孔41を通過可能な状態(ON状態)にしたときには、先の記録紙3側の電極5からトナー通過孔41を通る電気力線10は、−200Vと最も電位の低い2箇所の電極43に入る結果となっている。したがって、トナー担持体1上でクラウド状態にあるマイナス帯電トナー、または−200V印加の担持体電極近傍のトナーは、この電気力線10に沿ってトナー通過孔41を通過し、記録紙3の表面にトナーTが飛翔することができる。
【0068】
一方、トナーTがトナー通過孔41を通過不可能な阻止状態(OFF状態)にした場合(図4(b))においては、制御電極42に−200Vが印加されている。また、トナー担持体1の電極11の低電位側も−200Vであるが、記録紙3側の電極5からの電気力線は近い位置にある制御電極42に全ての電気力線が入ることになる。したがって、トナー担持体1の表面及びその上方の供給領域にあるトナーは、記録紙3側の電極31に向かって飛翔することはない。この阻止状態(OFF状態)の制御電極42への印加電圧は、トナー担持体1の電極11の低電位側と同じ電位である必要はなく、トナー通過孔41を通過した電気力線がトナー担持体1の表面に至らない条件であればトナーTの通過を阻止する(OFF状態にする)ことはできる。
【0069】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図5は本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を模式的に示した全体構成図である。この画像形成装置は、前述した実施形態のユニットを4個設けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化とトナー制御手段によるON/OFF制御とを行ってカラー画像を形成する画像形成装置の例である。図5において、画像形成装置は、トナー付着対象物としてのベルト状の中間転写体103の張架面に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化して供給する4個のトナー供給ユニット100y、101m、101c、101k(色を区別しないときは「トナー供給ユニット100」という。以下同様。)が配置されている。各トナー供給ユニット100と中間転写体103との間にはそれぞれ、前述のトナー制御手段4と同様な構成のトナー制御手段104が配置されている。トナーとしては、例えば、前述のトナー(1)やトナー(2)を用いることができる。
【0070】
中間転写体103は、2つのローラ132、133との間に掛け回されて矢示方向に周回移動する。この中間転写体103の背面(内側)には各トナー供給ユニット100に対応して記録媒体側電極である背面電極105が配置されている。また、記録紙3にトナー画像が転写された後の中間転写体103上の残トナーを除去するクリーニングユニット135が設けられている。
【0071】
トナー供給ユニット100は、トナーをクラウド化させるために電圧を印加する複数の電極111を並べて配置したトナー担持体1と同様な構成の円筒状のトナー担持体101と、このトナー担持体101にトナーを補給する回転するトナー補給ローラ113と、トナー担持体101上のトナー量を規制するブレード114とを備えている。
ここでは、トナー補給ローラ113からトナー担持体101にトナーが補給されるとともに、トナー補給ローラ113上のトナーとトナー担持体101との摩擦によってトナーの摩擦帯電が行われる。
また、トナー補給ローラ113の下流側のブレード114は、トナー担持体101表面のトナー量を薄層で一定量にするとともに、トナー帯電量の安定化も図っている。
そして、トナー供給ユニット100で供給されるトナーがトナー制御手段104によって画像に応じてON/OFF制御されることで中間転写体103上に飛翔され、中間転写体103上にカラーのトナー画像が形成される。
【0072】
トナー供給ユニット100の下方には、記録紙150を収容する給紙部151が配置され、給紙部151から記録紙150がピックアップローラ(給紙ローラ)152で給紙される。給紙部151から給紙された記録紙150は、中間転写体103を掛け回したローラ132に対向して配置した転写ローラ153で中間転写体103上のトナー画像が転写される。なお、ここでは図示していないが、記録紙150の裏面側の転写ローラ153に正極性のバイアス電圧(+バイアス)が印加されることで中間転写体103から記録紙150面へのトナー画像の転写が行われる。
【0073】
上記トナー画像が転写された記録紙150は、圧力定着手段としての圧力定着ユニット160に搬送され、その圧力定着ユニット160でトナーが記録紙150上に定着された後、排紙される。この圧力定着ユニット160は、記録紙150が通過するニップ部を形成する加圧ローラ対を備えている。圧力定着ユニット160による圧力定着の際に加圧ローラ対によって記録紙150上のトナー画像に加える圧力は、0.5MPa以上100MPa以下が好ましい。当該圧力が0.5MPa以上であることによって定着不良を防止し、また当該圧力が100MPa以下であることによって記録紙150を支障なく搬送することができる。
【0074】
また、上述したように中間転写体103は、中間転写体クリーニング手段としてのクリーニングユニット135によって残トナーがクリーニングされ、次の画像形成が行われる。
【0075】
以上のように、図5の画像形成装置は、中間転写体103に4色トナー画像を形成した後、その中間転写体103上の4色トナー画像を給紙部151から供給される記録紙150に転写を行う中間転写記録方式である。
この中間転写記録方式の場合は、印写面(「トナーが着弾する面」、「画像形成面」ともいう。)とトナー制御手段104との間隔を一定に保つ精度確保が容易であり、トナー飛翔速度が低い条件で高画質化を図ることができる。
また、中間転写記録方式の場合は、平滑で体積抵抗率の調整によって電荷が蓄積しない、電位変動のない印写面が得られる。クラウド化したトナーの通過のON/OFFで記録紙上に直接印刷する画像形成装置は電位に対する感度が高く、印写面バイアス電位の変動に対して画質変動が発生しやすいが、上記中間転写記録方式の構成であれば信頼性の高い、高画質のカラー画像を得ることができる。
【0076】
図6は、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を示す全体構成図である。なお、図6において、図5と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図6の画像形成装置は、トナー制御手段を通過したトナーを記録媒体としての記録紙上に直接着弾させてトナー画像を形成する例である。つまり、本実施形態の画像形成装置では、給紙部151から供給される記録紙150を紙搬送ベルト161に静電的に吸着し、トナー供給ユニット100と対向する領域を通過させ、トナー制御手段104の画像に応じたON/OFF制御によって記録紙150上に直接カラー画像を形成する。
【0077】
図6において、紙搬送ベルト161は例えばポリイミド等から形成され、2つのローラ162、163に掛け回されて矢示方向に周回移動するように駆動される。そして、紙搬送ベルト161は、図示しない帯電ローラなどの帯電手段によって帯電されることにより、記録紙150を静電的に吸着保持して搬送する。また、給紙部105から記録紙150を紙搬送ベルト161に導くためのガイド164、レジストローラ165なども配置されている。
【0078】
図6の構成の画像形成装置では、トナー通過を制御するトナー制御手段104と、通過後のトナーを記録紙150に導くためのバイアスを印加する背面電極105との間に、ポリイミド等の紙搬送ベルト161及び記録紙150がある。そのため、トナー制御手段104と背面電極105との間隔を非常に狭く設定することが難しいが、他方、記録紙150上に直接カラー画像を形成し、転写プロセスがないため、転写によるトナー散りで画質低下することがなくなる。また、図6の画像形成装置は、前記図5で説明した構成のようなベルトクリーニング機構を必要としないこと等もあり、小型、低コストの画像形成装置の実現に有利である。
【0079】
図5及び図6に示したトナーをクラウド化して飛翔させる構成の画像形成装置では、印写面のバイアスを低い設定にしてトナーを導くことも可能であるため、記録紙の表面へのトナーの着弾スピードも低く設定でき、トナーの散りが起きない高画質の画像形成装置を得ることができる。
【0080】
次に、上記構成の画像形成装置で用いることができるトナー担持体の構成例について説明する。
図7(a)は、トナー担持体の一構成例を展開した状態で模式的に示す平面説明図であり、図7(b)は、そのトナー担持体の断面説明図である。図示の例は、トナー担持体101の表面に複数の電極を設け、これら複数の電極を1本おきの2組を共通にして2相用電極を構成した例である。2組の2相用電極それぞれには、180°位相の異なる2相パルス(例えば、図8のA相のパルス及びB相のパルス参照)が印加され、互いに隣接する電極同士で吸引と反発を繰り返す2相電界が形成される。
【0081】
図7において、トナー担持体101は、絶縁性基板101Aの表面上に複数の電極111として、A用電極(第1の電極)111AとB相用電極(第2の電極)111Bとを備え、その上に表面保護層101Bを設けたものである。電極111A、111Bはそれぞれ櫛歯状に形成され、トナーの搬送方向に微細なピッチで並び、かつトナーの搬送方向と直交する方向に対して並行になるように設けられている。トナーの搬送方向と直交する方向における両サイドには共通のバスライン111Aa、111Baが設けられ、各バスライン111Aa、111Baは外部の図示しない2相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
【0082】
電極111A、111Bに印加するパルス電圧は、例えば、周波数が0.5kHz〜7kHzであり、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧である。そのパルス電圧の波高値は例えば±60〜±300Vの範囲内で、電極幅、電極間隔及び使用するトナーの種類などに応じて設定される。このパルス電圧の印加により、電極111Aと電極111Bとの間には、隣接同士の電界方向の切り替わりに応じてトナーの反発飛翔と吸引飛翔とを繰り返す2相電界が形成される。このトナーの反発飛翔と吸引飛翔とを繰り返しにより、トナーは相互の電極111A、111B間を往復移動する。そして、トナー担持体101の全体は、トナーを搬送する方向に表面が移動するように回転するものである。
【0083】
図7のトナー担持体101は、その表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極111A、111Bを有し、各電極111A、111Bに、隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係のパルス電圧を印加し、更にトナー担持体101を所定方向に回転駆動するように構成されている。このようにトナーの搬送とクラウド化を行うようにトナー担持体101を構成することにより、トナー担持体101の表面におけるトナー搬送に関して、トナーの帯電品質に左右されない安定なトナーの搬送が可能となり、装置全体としても信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
【0084】
図9(a)は、トナー担持体の他の構成例を展開した状態で模式的に示す平面説明図であり、図9(b)は、そのトナー担持体の断面説明図である。図9の例は、トナー担持体表面に複数の電極を設け、表層側の各電極をすべて共通とした例である。この表層側の各電極と、絶縁層を介して下層に設けた導体基材電極との間に、180°位相の異なる2相パルス(図8参照)が印加され、表層側電極と下層の導体基材電極との間に形成される相互の電界で吸引と反発を繰り返すトナー担持体の例である。なお、図9において、図7と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0085】
図9において、トナー担持体101は、内部に配置した絶縁性基板101Aの表面上に複数の電極としてA相用電極111Aが設けられ、絶縁性基板101Aの下面にベタの導体基材(B相用電極)111Bが設けられている。これらの電極111A、111Bの表面に保護層101B、101Bが設けられている。表面側の電極111Aは、トナーの搬送方向に微細なピッチで並び、かつトナーの搬送方向と直交する方向にそれぞれ並行になるように設けられている。トナーの搬送方向と直交する方向における両サイドには共通のバスライン111Aaが設けられている。この電極111Aのバスライン111Aaと絶縁性基板101Aの下面の電極111Bは、外部の図示しない2相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
【0086】
電極111A、111Bに印加する2相パルス電圧も、例えば、周波数が0.5KHz〜7KHzでありDC電圧をバイアスに含むパルス電圧である。そのパルス電圧の波高値は例えば±60〜±300Vの範囲内で、電極幅、電極間隔及び使用するトナーの種類などに応じて設定される。パルス電圧を印加する構成は、図7と同様である。このパルス電圧の印加により、表層側の電極111A、111Aの間(スペース間)を2相パルスの切り替わりに応じてトナーが飛翔を繰り返す。そして、トナー担持体101全体は、トナーを搬送する方向に表面が移動するように回転するものである。
【0087】
図9のトナー担持体101の具体的構成において、ベース基板である絶縁性基板101Aは、例えば、樹脂或いはセラミックス等の絶縁性材料からなるもの、或いは、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるもの、などを用いることができる。
【0088】
また、電極111は、ベース基板上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1μm厚さで成膜し、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成、または銅箔を積層、メッキ等で形成した後フォトリソでパターン化したものであってもよい。下層導体基材電極111Bは、例えばAl、Ni−Cr等の導電性材料であればよい。
【0089】
表面保護層101Bとしては、例えば、SiO、TiO、TiN、Taなどを厚さ0.5〜2μmで蒸着成膜して形成、またはポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を2〜10μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
【0090】
このように構成したトナー担持体においては、前述の駆動回路7から飛翔用のパルスを印加して飛翔電界を形成することにより、トナー担持体101上の帯電したトナーは反発力及び吸引力を受けて上下方向への飛翔しながら進行波方向への搬送が行われる。
【0091】
次に、上記画像形成装置におけるトナー供給ユニット100の具体的な構成例について説明する。
図10は、トナー供給ユニット100の一構成例を示す概略構成図である。本構成例は、トナー供給ユニット100は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含む二成分記録剤を用いる例である。二成分記録剤としては、例えば、前述の記録剤(1)や記録剤(2)を用いることができる。記録剤収容部201は2つの室201A、201Bに分けられており、トナー供給ユニット100内の両端部の記録剤通路(図示せず)によって繋がっている。記録剤収容部201には二成分記録剤が収容されており、各室201A、201Bにある攪拌搬送スクリュー202A、202Bによって攪拌されながら記録剤収容部201内を搬送されている。記録剤収容部201の室201Aにはトナー補給口203が配置されており、図示しないトナー収容部からトナー補給口203を通って、記録剤収容部201内に補給される。
【0092】
記録剤収容部201には記録剤の透磁率を検知する図示しないトナー濃度センサが設置されており、記録剤の濃度を検知している。記録剤収容部201のトナー濃度が減少すると、トナー補給口203から記録剤収容部201内にトナーが補給される。そして、攪拌搬送スクリュー202Bと対向する位置には、トナー補給ローラとしてのマグブラシローラ204が配置されている。マグブラシローラ204の内部には固定された磁石が配置されおり、マグブラシローラ204の回転と磁力によって、記録剤収容部201内の記録剤はマグブラシローラ204表面に汲み上げられる。記録剤の汲み上げ位置よりマグブラシローラ204の回転方向上流において、マグブラシローラ204と対向する位置に記録剤層規制部材205が設けられている。汲み上げ位置で汲み上げたれた記録剤は記録剤層規制部材205によって一定量の記録剤層厚に規制される。
【0093】
記録剤層規制部材205を通った記録剤はマグブラシローラ204の回転に伴って、トナー担持体101と対向する位置まで搬送される。マグブラシローラ204には、第一電圧印加手段211によって供給バイアスが印加されている。 トナー担持体101には、第二電圧印加手段212によって前述した図7或いは図9に示す電圧が電極111に印加されている。
【0094】
マグブラシローラ204と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段211、212によってトナー担持体101とマグブラシローラ204との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから分離し、トナー担持体101の表面に移動する。
【0095】
トナー担持体101表面に達したトナーは、第二電圧印加手段212から電極111に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体101の回転、またはトナー担持体101の進行波電界によって搬送される。そして、トナー制御手段104と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
【0096】
図11は、トナー供給ユニット100の他の構成例を示す概略構成図である。このトナー供給ユニット100は、非磁性トナーから成る一成分記録剤を用いる例である。トナーは記録剤収容部201に収容されており、帯電ローラ220によってトナーはトナー補給ローラ113と摩擦帯電を行い、静電気力によってトナー補給ローラ113上に汲み上げられる。トナー補給ローラ113上のトナーは記録剤層規制部材114によって薄層とされ、トナー補給ローラ113の回転に伴ってトナー担持体101と対向する位置に搬送される。このとき、トナー補給ローラ113には、第一電圧印加手段221によって供給バイアスが印加されている。また、トナー担持体101には、第二電圧印加手段222によって電極111に電圧が印加されている。したがって、トナー担持体101と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段221、222によってトナー担持体101とトナー補給ローラ113との間に電界が生じ、その電界からの静電気力を受け、トナーはトナー補給ローラ113から分離し、トナー担持体101表面に移動する。
【0097】
前述の図10の構成例と同様に、トナー担持体101の表面に達したトナーは、第二電圧印加手段222から電極11に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体101の回転、またはトナー担持体101の進行波電界によって搬送される。
【0098】
そして、トナー制御手段104と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
【0099】
なお、これらの各トナー供給ユニット100において、印写に寄与しなかったトナーはトナー担持体101によってさらに搬送され、図示しない回収手段によってトナー担持体101表面から回収される。回収されたトナーは再び記録剤収容部201に戻され、トナー供給ユニット100内を循環する。
【0100】
次に、本発明の実施形態に係る画像形成装置における圧力定着ユニット160における圧力を変更する圧力変更手段について説明する。この圧力変更手段は、制御手段としての制御装置と、この制御装置に接続された圧力定着ユニット160の加圧力を変化させる加圧力調整機構とを用いて構成される。
【0101】
図12及び図13は、圧力定着ユニット160に用いられる加圧装置12の加圧ローラ対で発生させる加圧力を変化させる加圧力調整機構の構成例を示す概略構成図である。図12は加圧ローラ対による加圧力を高めた状態の図であり、図13は加圧ローラ対による加圧力を低くした状態の図である。
本構成例の加圧力調整機構は、加圧装置12の筐体15の支点40に一端が軸支され、多端側が圧縮スプリング33で支持されたレバー31を備えている。このレバー31の略中央部で下ローラ12bの軸受12b1を支持するとともに、圧縮スプリング33で支持されたレバー31の端部に、カム34と当接するコロ32が設けられている。このカム34の回転(図示しないモータ等により回転する)によりレバー31が揺動するように構成されている。また、カム34を挟んで反対側には、加圧装置12の筐体15に設けた軸37、38と圧縮スプリング39とで支持されたアーム36が設けられている。このアーム36の先端に設けたコロ35がカム34に当接している。このような構成とすることにより、カム34の回転に応じて上ローラ12aと下ローラ12bで発生する圧力を変化させることができる。
【0102】
図14は、画像情報に基づいて加圧力調整機構における加圧装置12の加圧ローラ対で発生させる加圧力を制御する制御系の一例を示すブロック図である。制御装置900は例えばCPU901、RAM902、ROM903、I/Oインターフェース904などで構成され、加圧装置12及び前述の駆動回路7(図1参照)に接続されている。制御装置900は、予め組み込まれた所定の制御プログラムを実行することにより、駆動回路7からの画像情報に基づいて加圧装置12における加圧力を制御することができる。
【0103】
例えば、制御装置900は、前述の図5及び図6に示した構成の複数の色の画像を形成できる画像形成装置によって記録紙150に形成された画像が、単色で形成された画像であるか複数の色で形成された画像であるかを、前述の駆動回路7(図1参照)からの情報に基づいて判別する。制御装置900は、その判別結果に基づいて、加圧装置12の加圧ローラ対12a,12bで発生させる加圧力の設定値を各々の画像に適した値に変更し、その変更後の設定値に基づいて加圧装置12に制御信号を送る。加圧装置12は、制御装置900からの制御信号に基づいて加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を変化させる。
【0104】
ここで、一般に単色の画像に比べて複数の色の画像はトナー付着量が多くトナー層も厚いため、例えばモノクロ(単色)の画像である場合は加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を小さく設定し、カラー(複数の色)の画像である場合は加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を大きく設定し、加圧力をそれぞれの画像パターンに適した値に変更する。このように、記録紙に形成する画像が単色か否かを判断し、記録材の画像の違いによって加圧装置12の加圧ローラ対に発生させる圧力を自動的に最適値に変更することにより、加圧力不足による定着不良や、過剰な加圧力がかかることによって発生するしわなどの不具合を防止することができる。
【0105】
また、前述の図5及び図6に示した構成の複数の色の画像を形成できる画像形成装置によって記録紙150に形成された画像の画像面積率を前述の駆動回路7(図1参照)からの情報によって判別する。制御装置900は、その判別結果に基づいて、加圧装置12の加圧ローラ対12a,12bで発生させる加圧力の設定値を各々の画像に適した値に変更し、その変更後の設定値に基づいて加圧装置12に制御信号を送る。加圧装置12は、制御装置900からの制御信号に基づいて加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を変化させる。
【0106】
ここで、記録紙上のトナー付着量は画像面積率に比例して多くなりトナー層も厚くなる。そのため、例えば各色の画像面積率の合計が予め設定した閾値(例えば50%)以下の画像である場合は加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を小さく設定し、画像面積率が上記閾値(例えば50%)よりも大きい場合は加圧ローラ対12a,12bで発生させる圧力を大きく設定し、加圧力をそれぞれの画像面積率に適した値に変更する。このように、記録紙に形成する画像の画像面積率を判断し、その画像面積率の違いによって加圧装置12の加圧ローラ対12a,12bに発生させる圧力を自動的に最適値に変更することにより、加圧力不足による定着不良や、過剰な加圧力がかかることによって発生するしわなどの不具合を防止することができる。
【0107】
なお、上記実施形態では主に負帯電トナーを用いてトナー画像を形成する場合について説明したが、本発明は、正帯電トナーを用いてトナー画像を形成する場合にも同様に適用することができる。
【0108】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
圧力相転移樹脂を含むトナーTを用いて記録紙3(150)などの記録媒体上に形成したトナー画像に、非加熱で圧力を加えることにより、トナー画像を記録媒体に定着させる加圧装置12を有する圧力定着ユニット160などの圧力定着手段を備えた画像形成装置であって、圧力相転移樹脂を含むトナーTを担持するトナー担持体1(101)と、トナー担持体1から飛翔したトナーTが通過するトナー通過孔41とトナー通過孔41におけるトナーTの通過を制御するパルス電圧などの制御電圧Vcが印加される制御電極42とを有するトナー制御手段4(104)と、トナー制御手段4の制御電極42に制御電圧Vcを印加する駆動回路7などの電圧印加手段と、を備え、トナー制御手段4のトナー通加孔41を通過したトナーTを、記録媒体に直接又は中間転写ベルトなどの中間転写体103を介して付着させることにより、記録媒体上にトナー画像を形成する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、圧力相転移樹脂を含むトナーTを担持したトナー担持体1からトナー制御手段4に向かってトナーTが飛翔し、そのトナー制御手段4のトナー通過孔41におけるトナー通過が、トナー制御手段4の制御電極42に印加された制御電圧Vcにより制御される。このように制御されてトナー通過孔41を通過したトナーTを、記録媒体に直接又は中間転写体103を介して付着させることにより、記録媒体上にトナー画像を形成する。この圧力相転移樹脂を含むトナーTで形成されたトナー画像は、従来の加熱定着方式に比して加熱温度を低減した又は加熱を行わない非加熱方式で圧力を加えることにより記録媒体に定着させることができる。従って、熱定着方式の画像形成装置に比べてエネルギーの消費が少なくなる。しかも、従来の潜像担持体上のトナー画像を転写した後に潜像担持体の表面にブレードやブラシ等のクリーニング部材を押圧して残トナーを除去する構成とは異なり、上記圧力相転移樹脂を含むトナーTは、潜像担持体上に付着した状態でクリーニング部材から圧力を受けるということがなくなる。そのため、圧力定着以外の処理でトナーが圧力を受けることによるトナーの固着や固化を抑制することができる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、トナー制御手段4のトナー通加孔41を通過したトナーを、中間転写体を介さずに記録媒体に直接付着させることにより、記録媒体上にトナー画像を形成する。これによれば、上記実施形態について説明したように、トナー担持体1からのトナーが直接付着させられる記録媒体が記録紙であり、中間転写ベルトなどの中間転写体を必要としないため、中間転写体の表面をクリーニングする中間転写体クリーニング手段が不要になる。このため、中間転写体とクリーニングブレード等の中間転写体クリーニング部材との間にかかる圧力によってトナーが固化したり、中間転写体やクリーニングブレードなどの中間転写体クリーニング部材へトナーが固着したりすることを防止することができる。
(態様C)
上記態様A又は態様Bにおいて、圧力定着ユニット160などの圧力定着手段による定着の際に記録媒体上のトナー画像に加える圧力は0.5MPa以上100MPa以下である。これによれば、上記実施形態について説明したように、前記圧力の下限値を0.5MPaに規定することによって定着不良を防止し、また前記圧力の上限値を100MPaに規定することによって記録紙3などの記録媒体を支障なく搬送することができる。
(態様D)
上記態様A、態様B又は態様Cにおいて、圧力定着ユニット160などの圧力定着手段は、記録紙3などの記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ローラ対12a,12bを備え、記録媒体に形成されるトナー画像が単色の画像か否かの情報に基づいて、加圧ローラ対12a,12bのニップ部に加える圧力を変更する、制御装置900及び加圧力調整機構などからなる圧力変更手段を備える。記録媒体に形成される画像がモノクロ画像などの単色の画像か、その他のフルカラーなどの2色以上の画像かによって、圧力定着ユニット160などの圧力定着手段で記録媒体上のトナー画像にかける圧力の最適範囲は変化する。本態様Dの構成によれば、上記実施形態で示したように、記録紙3などの記録媒体に形成される画像が単色の画像かあるいはその他の複数色の画像かに応じて、圧力定着手段で記録媒体上のトナー画像にかける加圧力を調整できるため、トナー画像の定着性を確保しながら記録媒体におけるしわの発生などの副作用を防止することができる。
(態様E)
上記態様A、態様B又は態様Cにおいて、圧力定着ユニット160などの圧力定着手段は、記録紙3などの記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ローラ対12a,12bを備え、記録媒体に形成されるトナー画像の面積率に基づいて、加圧ローラ対12a,12bのニップ部に加える圧力を変更する、制御装置900及び加圧力調整機構などからなる圧力変更手段を備える。記録紙3等の記録媒体に形成される画像の面積率によって、圧力定着手段で記録媒体上のトナー画像にかける圧力の最適範囲は変化する。本態様Eの構成によれば、上記実施形態で示したように、記録紙3などの記録媒体に形成される画像の面積率に応じて、圧力定着手段で記録媒体上のトナー画像にかける加圧力を調整できるため、トナー画像の定着性を確保しながら記録媒体のしわの発生などの副作用を防止することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 トナー担持体
3 記録紙(記録媒体)
4 トナー制御手段
5 対向電極(背面電極)
6 電圧印加手段
7 駆動回路
8 電源手段
11 電極
12 加圧装置
12a 上ローラ
12a1 軸受
12b 下ローラ
12b1 軸受
15 定着装置の筐体
31 レバー
32 コロ
33 圧縮スプリング
34 カム
35 コロ
36 アーム
37,38 軸
39 圧縮スプリング
40 支点
41 トナー通過孔
42 制御電極
43 共通電極
100 トナー供給ユニット
101 トナー担持体
101A 絶縁性基板
101B 表面保護層
103 中間転写体
104 トナー制御手段
105 対向電極(背面電極)
111 電極
111A 電極
111Aa バスライン
111B 電極
111Ba バスライン
113 トナー補給ローラ
114 記録剤層規制部材
113 トナー補給ローラ
114 ブレード
150 記録紙
151 給紙部
152 ピックアップローラ(給紙ローラ)
153 転写ローラ
160 圧力定着ユニット(圧力定着手段)
162,163 ローラ
165 レジストローラ
220 帯電ローラ
221 第1電圧印加手段
222 第2電圧印加手段
T トナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特公昭59−119364号公報
【特許文献2】特許第3290513号公報
【特許文献3】特開2009−008967号公報
【特許文献4】特許第4582227号公報
【特許文献5】特許第4525828号公報
【特許文献6】特開2009−300848号公報
【特許文献7】特開2011−028055号公報
【非特許文献】
【0111】
【非特許文献1】Pollard, M., Russell, T. P., Ruzette, A.-V. G., Mayes, A. M. and Gallot, Y., "The effect of hydrostatic pressure on the lower critical ordering transition on diblock copolymers": Macromolecules, 31, 6493 (1998)
【非特許文献2】Ruzette, A.-V. G., Banerjee, P., Mayes, A. M. and Russell, T. P., "A simple model for baroplastic behavior in block copolymer melts": J. Chem. Phys., 114, 8205 (2001)
【非特許文献3】Gonzalez-Leon, J. A., Metin, H. A., Ryu, S.-W., Ruzette, A.-V. G. and Mayes, A. M., "Low temperature processing of baroplastics by pressure-induced flow": Nature, 426, 424 (2003)
【非特許文献4】Doi, Y. and Steinbuchel, A.: Biopolymers, Polyester II-Properties and Chemical Synthesis, (2002), Wiley-VCH

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力相転移樹脂を含むトナーを用いて記録媒体上に形成したトナー画像に、非加熱で圧力を加えることにより、該トナー画像を該記録媒体に定着させる圧力定着手段を備えた画像形成装置であって、
圧力相転移樹脂を含むトナーを担持するトナー担持体と、
前記トナー担持体から飛翔したトナーが通過するトナー通過孔と該トナー通過孔におけるトナーの通過を制御する制御電圧が印加される制御電極とを有するトナー制御手段と、
前記トナー制御手段の制御電極に前記制御電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記トナー制御手段のトナー通加孔を通過したトナーを、前記記録媒体に直接又は中間転写体を介して付着させることにより、該記録媒体上にトナー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記トナー制御手段のトナー通加孔を通過したトナーを、中間転写体を介さずに前記記録媒体に直接付着させることにより、該記録媒体上にトナー画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記圧力定着手段による定着の際に前記記録媒体上のトナー画像に加える圧力は、0.5MPa以上100MPa以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3の画像形成装置において、
前記圧力定着手段は、前記記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ローラ対を備え、
前記記録媒体に形成されるトナー画像が単色の画像か否かの情報に基づいて、前記加圧ローラ対のニップ部に加える圧力を変更する圧力変更手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1、2又は3の画像形成装置において、
前記圧力定着手段は、前記記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ローラ対を備え、
前記記録媒体に形成されるトナー画像の面積率に基づいて、前記加圧ローラ対のニップ部に加える圧力を変更する圧力変更手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−37311(P2013−37311A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175530(P2011−175530)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】