説明

画像記録装置

【課題】制御パラメータ設定を複雑化せず、余剰媒体の発生量を最小とし、高品位の画像記録を行う。
【解決手段】所定の搬送経路で長尺の記録媒体を保持搬送する搬送部、搬送経路中の画像記録領域において記録媒体に画像を記録する画像記録部、記録媒体を切断するカッタ部及びこれらを制御する制御部を具備し、記録媒体の搬送速度が所望の一定速度であるときに記録媒体への画像記録及び切断をする画像記録装置である。この装置は、少なくとも画像記録領域での記録媒体の弛みの除去を検知して制御部に弛み除去検知信号を送信する弛み検知手段を有する。制御部は、この検知信号を受信したら、記録媒体の搬送速度を所望の一定速度まで連続的に加速することを含む搬送速度プロファイルに則り搬送部を駆動させると共に、搬送速度プロファイルに応じて画像記録部及びカッタ部を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回、又は葛折りされた長尺な記録媒体を切断するカッタ部を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ロール状に巻回された連続状の記録媒体を所定の方向に引き出して搬送し、画像記録部により記録媒体の片面又は両面に画像を記録する画像記録装置が知られている。このような装置には、画像記録後の記録媒体を必要に応じて所望の長さに切断するカッタ部が設けられている。
【0003】
このようなカッタ部を備えた画像記録装置では、記録媒体の搬送開始後、一般的には搬送速度が増加して所望の一定速度になってから、画像記録と切断との開始タイミングを同期させて、画像記録及び切断を行う。かくして、画像記録及び切断がなされた所望の記録切断完成媒体を得ることができる。
【0004】
しかし、この場合、記録媒体の搬送開始から、搬送速度が所望の一定速度になるまで、記録媒体には画像記録や切断がなされず、所望の記録切断完成媒体ではない、余剰媒体が画像記録装置より排出される。
【0005】
記録媒体の搬送開始時に発生するこのような余剰媒体の量を低減させるために、例えば、特許文献1には、画像記録速度を変更する方法が開示されている。この方法では、記録媒体の搬送開始時の加速制御において、記録媒体の見当、画像記録濃度、色合わせ、切断位置のずれが許容範囲内に収まる範囲で搬送速度を加速するように設定された変速モードと、許容範囲内のずれが収束する範囲において一定速度で搬送する安定速モードと、を交互に繰り返して、記録媒体の搬送速度を所望の一定速度(通常運転速度)になるまで階段状に変速している。これらの変速幅及び変速時間は、運転モードに予め設定されている。このように、特許文献1の方法では、記録媒体を段階的に加速することにより、搬送速度が所望の通常運転速度に達する前でも画像記録可能となり、余剰媒体の量の低減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−48309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
連続状の長尺な記録媒体の搬送において、加速から定速へ至らせる等、加速度を急激に変化させると、慣性により搬送経路中の記録媒体に弛みが発生する可能性がある。
例えば、上述の特許文献1に記載の画像記録装置は、所望の一定速度になるまで、切断位置のずれが許容範囲内にあるようにして、記録媒体の搬送を加速し、ずれが収束するまで定速で搬送する、というように、加速と定速とを繰り返すこととなる。しかし、加速から定速に移行する際、緩やかに速度変化させることに関する記載がないため、搬送経路中の記録媒体に弛みが生じることが想定される。画像記録部により記録媒体に画像記録がなされる搬送経路中の画像記録領域において、このような弛みが生じると、記録媒体上の正確な位置に画像を記録することができず、画像記録の品位が低下する虞がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の画像記録装置では、加速と定速とを繰り返す動作をするため、搬送を制御するパラメータの設定が複雑化し、搬送速度に同期した画像記録や切断のタイミング合わせも困難かつ複雑化してしまう。
【0009】
さらに、このような画像記録装置において、記録媒体の搬送が停止された状態で記録媒体に張力が加わっていると、搬送経路中にある記録媒体は、例えば、記録媒体を巻回しているローラに長時間に亘って押し付けられるため、曲げ癖がついてしまう。このような曲げ癖がついた状態のまま、記録媒体の搬送を再開すると、カッタ部による記録媒体の切断時などに、記録媒体の先端部分が搬送機構に引っ掛かり詰まる、いわゆるジャムが発生しやすくなる。従って、搬送停止時においては、記録媒体に張力を与えず弛んだ状態にしておくことが望ましい。
【0010】
一方、記録媒体の搬送開始後、記録媒体に正確に画像を記録するためには、少なくとも搬送経路中の画像記録領域における記録媒体に張力を与え、記録媒体が弛んでいない状態にすることが望ましい。従って、少なくとも画像記録領域における記録媒体の弛みが取れた後に画像記録を開始する必要がある。また、記録媒体の搬送開始時における余剰媒体の量を減らすためには、搬送経路中の記録媒体の弛みが取れてからできるだけ早く画像記録を開始することが好ましい。
【0011】
特許文献1には、上述したような、記録媒体の弛みが取れた後に画像記録を開始することに関する記載も、さらには弛みが取れてからできるだけ早く画像記録を開始することに関する記載もない。
【0012】
また、特許文献1では、記録媒体の搬送開始から画像記録や切断を行うまでに、見当や色合わせ等の調整に適した調整速度まで加速し、一定の調整速度で見当や色合わせ等の調整を行っているが、この調整時間中に余剰媒体が発生してしまう。
【0013】
本発明は、これらの問題を鑑みてなされたものであり、制御パラメータ設定を複雑化することなく、余剰媒体の発生量を最小とし、高品位の画像記録が可能な画像記録装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態は、所定の搬送経路で長尺の記録媒体を保持搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に、前記搬送経路中の画像記録領域において画像を記録する画像記録部と、前記画像記録部により画像が記録された前記記録媒体を所定の長さに切断するカッタ部と、前記搬送部、画像記録部及びカッタ部の駆動を制御する制御部と、を具備し、前記記録媒体の搬送速度が所望の一定速度であるとき、前記記録媒体への画像記録及び前記記録媒体の切断をする画像記録装置であって、少なくとも前記画像記録領域における前記記録媒体の弛みの除去を検知して、前記制御部に弛み除去検知信号を送信する弛み検知手段を有し、前記制御部は、前記弛み除去検知信号を受信したら、前記記録媒体の搬送速度を前記所望の一定速度まで連続的に加速することを含む所定の搬送速度プロファイルに則り前記搬送部を駆動させると共に、前記搬送速度プロファイルに応じて前記画像記録部及び前記カッタ部の駆動を制御する画像記録装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御パラメータ設定を複雑化することなく、余剰媒体の発生量を最小とし、高品位の画像記録が可能な画像記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の画像記録装置を概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、画像記録装置のカッタ部を示す概略図である。
【図3】図3は、画像記録装置の制御系の概略を示すブロック図である。
【図4】図4は、記録媒体の搬送速度及びカットタイミングを示す図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態の画像記録装置における画像記録開始位置及びカット位置を概略的に示す図である。
【図6】図6は、搬送経路を一直線上に展開し、記録媒体への画像記録開始位置及びカット位置を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態の画像記録装置を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置1を概略的に示す正面図である。なお、本実施形態の画像記録装置の画像記録方式は、インクジェット方式であり、以下の説明でもインクジェット方式を前提とするが、本発明は、これに限らず、例えば、電子写真方式にも適用可能である。
【0019】
画像記録装置1は、大別すると、長尺の記録媒体2を給送するアンワインダ部10と、給送された記録媒体2を保持搬送する搬送部20、記録媒体2に画像を記録する第1及び第2の画像記録部60、70並びにこれら画像記録部をクリーニングする第1及び第2のクリーニング部80、90を有する記録装置本体部100と、画像記録された記録媒体2を切断するカッタ部110と、切断された記録媒体、すなわちカット媒体3を排出する排出部120と、を有している。これら各構成部は、CPU等の演算処理部を搭載した制御部4により制御される。アンワインダ部10及び排出部120の一部を除く上述の各構成部は、装置本体フレーム5内に収容されている。
【0020】
なお、本実施形態においては、アンワインダ部10と記録装置本体部100とを別体に設けているが、これに限らず、例えば、アンワインダ部を記録装置本体部と一体的に設けてもよい。また、本実施形態においては、記録装置本体部100に、第1の画像記録部60と第2の画像記録部70とカッタ部110とを設けているが、これに限らず、例えば、それぞれが別体の構成や、カッタ部のみが別体の構成でもよい。また、本実施形態においては、画像記録部として第1及び第2の画像記録部60、70を設け、記録媒体2の両面に画像を記録する構成としているが、これに限らず、片面のみの画像記録部を有する構成としてもよい。
【0021】
まず、記録媒体給送部としてのアンワインダ部10の構成について説明する。
アンワインダ部10は、紙管固定シャフト11と、プーリ12と、スタンド13と、ブレーキ14と、ベルト15と、拍車16と、センサ17と、ベルト18と、を有している。
【0022】
紙管固定シャフト11は、例えば、ロール状に巻回された長尺な記録媒体2の中心に設けられた円筒状の紙管を貫通して記録媒体2を保持する。この紙管固定シャフト11は、スタンド13によって、画像記録装置1が置かれている床面に対して回転可能に支持されている。
なお、本実施形態では、記録媒体2としてロール紙(連続媒体)を挙げたが、ロール紙以外の記録媒体、例えば、葛折りされた長尺な記録媒体であってもよい。
【0023】
紙管固定シャフト11には、図示しない複数の爪部が設けられている。これら爪部は、空気注入口より空気を注入することにより径方向に突出する。記録媒体2が挿嵌された際には、かくして径方向に突出した爪部が記録媒体2の紙管の内径面に食い込み、記録媒体2が紙管固定シャフト11に強固に保持される。
なお、本実施形態では、一例として空気を注入する紙管固定シャフトを挙げたが、これに限らず、ねじを用いて爪部を出し引きする構成等、紙管を強固に保持固定できる紙管固定シャフトを採用することができる。
【0024】
紙管固定シャフト11の少なくとも一方の端側には、プーリ12が嵌装されている。このプーリ12は、ベルト15を介してブレーキ14と連結されている。これにより、プーリ12は、ブレーキ14による制動力を紙管固定シャフト11に伝達する。
【0025】
ブレーキ14は、搬送に伴うロール状の記録媒体2の回転に対し、記録媒体2の巻径に応じて、紙管固定シャフト11を介して可変的にブレーキをかける。これにより、記録媒体2には、搬送方向と逆方向の張力が与えられる。
なお、本実施形態では、ブレーキ14の制動力を記録媒体2に与える手段は、プーリ12とベルト15とで構成されているが、この制動力の伝達は、ギア列による構成や、紙管固定シャフトに直接ブレーキを接続する構成等、他の手段を用いて実現してもよい。
【0026】
以上のような構成により、記録媒体2は、紙管固定シャフト11と共に回転されて、ブレーキ14により記録媒体2の搬送方向と逆方向に張力を与えられた状態で、搬送方向下流側の搬送部20に引き出されて供給される。
なお、本実施形態では、ブレーキをアンワインダ部に設けているが、これに限らず、例えば、記録媒体の搬送経路上における、アンワインダ部と搬送方向最上流の画像記録部との間に、ローラ対からなるニップローラを設けると共に、該ニップローラに制動力を付与するブレーキを設け、該ブレーキの制動力を該ニップローラを介して記録媒体2に伝達してもよい。
【0027】
また、プーリ12には、ベルト18を介して拍車16が連結されている。この拍車16は、搬送時の記録媒体2の回転に伴って回転する。拍車16の近傍には、この拍車16の回転(所定時間当たりの回転数、又は回転速度)を検出するセンサ17が配置されている。このセンサ17による検出結果と記録媒体2の搬送速度とによって、制御部4により記録媒体2の巻径が検出され、ブレーキ14の制動力の大きさの制御等に用いられる。
【0028】
なお、本実施形態では、記録媒体2の回転を検出する手段として、拍車とセンサとを用いているが、これに限らず、例えば、ロータリエンコーダを用いてもよい。また、回転を検出する手段へ回転力を伝達する手段は、プーリ12とベルト15とで構成されているが、この回転力の伝達は、ギア列による構成や、紙管固定シャフトに回転を検出する手段を接続する構成等、他の手段を用いて実現してもよい。
【0029】
次に、記録装置本体部100の各構成部の構成について説明する。
搬送部20は、搬送ローラである回転可能な複数のフリーローラ21〜29と、媒体搬送ローラ対30と、媒体搬送モータ30aと、送りローラ対31と、送りガイド32と、第1のドラム40と、第2のドラム50と、を有している。少なくとも複数の搬送ローラ21〜29、媒体搬送ローラ対30、第1及び第2のドラム40、50の回転軸40a、50aの両端は、第1及び第2のドラム40、50を挟むように配置された2枚の金属板で構成された装置本体フレーム5に回転可能に支持されている。
【0030】
搬送部20は、アンワインダ部10から供給された長尺な記録媒体2を、搬送経路上流側から下流側へと順に、フリーローラ21、22、第1のドラム40、フリーローラ23〜25、第2のドラム50、フリーローラ26〜29、媒体搬送ローラ対30、送りローラ対31、送りガイド32により搬送する。この搬送経路の途中で、第1の画像記録部60によって記録媒体2の第1の面(例えば、表面側)に画像を記録し、さらに、第2の画像記録部70によって記録媒体2の第2の面(例えば、裏面側)に画像を記録する。
【0031】
媒体搬送ローラ対30には、搬送駆動機構としての媒体搬送モータ30aが連結されている。媒体搬送モータ30aには、パルスモータやサーボモータなどのモータを適宜採用することができる。この媒体搬送モータ30aから媒体搬送ローラ対30に与えられる駆動力を搬送力(記録媒体搬送方向の張力)として記録媒体2に与えることにより、搬送部20が記録媒体2を搬送する。
本実施形態では、媒体搬送モータ30aを駆動する搬送速度プロファイルは、少なくとも第1及び第2の搬送速度プロファイルを有しているものとする。この詳細は、後述する。
【0032】
送りローラ対31は、記録媒体2をニップするように対をなす2つのローラであり、図示しない送りローラ駆動モータと、すべりクラッチと、に連結されている。送りローラ対31の周速は、これよりも搬送経路上流側にある媒体搬送ローラ対30よりも速いように設定される。
【0033】
本実施形態では、第1及び第2のドラム40、50は、アルミニウム製の中空の円筒で構成されている。
なお、本実施形態では、画像記録部の直下で記録媒体を画像記録部に対して位置決めして搬送する搬送部として、記録媒体とつれ回りするドラムを用いているが、記録媒体と画像記録部との間で画像記録品質の維持に必要な相対位置関係を維持することができれば、ドラム以外の搬送手段、例えば、無端ベルト、湾曲形状の固定プラテン等を用いてもよい。
【0034】
第1の画像記録部60は、第1のドラム40の外周面に、また、第2の画像記録部70は、第2のドラム50の外周面に、それぞれ対向して設けられている。
第1の画像記録部60は、例えば、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の計4色のインクを吐出する記録ヘッド61(61a、61b、61c、61d)と、記録ヘッド61を保持するヘッド保持プレート62と、を有している。
【0035】
本実施形態では、記録ヘッド61は、搬送方向と直交する方向に記録媒体2の幅を超えて配列されたラインヘッドとなっている。また、記録ヘッド61には、第1のドラム40の外周面に対向している面(ノズル面)に、記録媒体2の搬送方向と直交する方向に形成された複数のノズルが配列されている。第1の画像記録部60は、搬送経路中の画像記録領域において、記録ヘッド61に形成されたこれらノズルからインクを吐出することにより、搬送される記録媒体2にインクを吐出して画像を記録する。
なお、第2の画像記録部70も上述の第1の画像記録部60と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
第1の画像記録部60の近傍には、第1のクリーニング部80が、第1のドラム40の外周面に対向して設けられており、また、第2の画像記録部70の近傍には、第2のクリーニング部90が、第2のドラム50の外周面に対向して設けられている。これら第1及び第2のクリーニング部80、90は、それぞれ、第1及び第2の画像記録部60、70の記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するために、ワイプ処理、ノズル吸引等のクリーニング処理を行う。
【0037】
次に、カッタ部110の構成について、図1並びに図2を参照して説明する。
図2は、画像記録装置1のカッタ部110を示す概略図である。
カッタ部110は、外周面にカッタ刃111bを備えたカッタローラ111aと、切断時の金床となるアンビルローラ111cと、カッタローラ111aの駆動源としてのカッタローラ駆動モータ111dと、カッタローラ111aのカッタ刃111bの回転位置を検出する刃位置検出ドグ111eと、刃位置検出ドグ111eの回転位置を検出する刃位置センサ111fと、を有している。
【0038】
カッタ刃111bは、記録媒体2の幅方向に、記録媒体幅以上の長さを有している。このカッタ刃111bの刃先は、カッタローラ111aの外周面から突出している。カッタローラ111aとアンビルローラ111cとは、この突出した長さ分だけ隙間を有するようにして、対向して配置されている。搬送部20により搬送されてきた記録媒体2は、この隙間を通過する。記録媒体2がこの隙間を通過するとき、カッタ刃111bがアンビルローラ111cに当接すれば、記録媒体2は切断され、当接しなければ、切断されることなく通過する。
【0039】
このように、カッタローラ111aとアンビルローラ111cとにより記録媒体2をニップせず、隙間を設けて記録媒体2を通過させる構成により、記録媒体2の搬送速度と同じ周速でカッタローラ111aを回転させる必要がなく、記録媒体2を切断する所望の長さに応じて、記録媒体2の搬送速度に対するカッタローラ111aの回転速度を可変設定することができる。
【0040】
刃位置検出ドグ111eは、カッタ刃111bに対して所定の回転方向の位相(位置)であるようにして、カッタローラ111aに固定されている。回転方向の位相差が既知であれば、刃位置検出ドグ111eとカッタ刃111bとは必ずしも同一の位相にある必要はない。刃位置検出ドグ111eは、カッタローラ駆動モータ111dによるカッタローラ111aの駆動に伴って回転する。刃位置検出ドグ111eの近傍には、この刃位置検出ドグ111eの回転位置を検出する刃位置センサ111fが配置されている。
なお、本実施形態では、カッタ刃111bの回転位置を検出する構成として、刃位置検出ドグ111e及び刃位置センサ111fを用いているが、これに限らず、カッタローラ111aの回転軸と共に回転するロータリエンコーダを用いてもよい。
【0041】
本実施形態では、カッタローラ111aのカッタ刃111bがアンビルローラ111cに当接するタイミング(時間間隔)が所定のタイミングになるように、記録媒体2の搬送速度に応じてカッタローラ駆動モータ100dを所定のカットタイミングプロファイルで駆動させる。これにより、記録媒体2を所定の長さに切断してカット媒体3とする。
本実施形態では、カッタローラ駆動モータ100dを駆動するプロファイルは、少なくとも前記第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルを有しているものとする。この詳細は、後述する。
【0042】
次に、排出部120の構成について説明する。
排出部120は、排出ガイド121と、排出ローラ対122と、排出トレイ123と、を有している。排出ガイド121は、カット媒体3を排出ローラ対122へと案内する。排出ローラ対122に送られたカット媒体3は、排出ローラ対122の回転により排出トレイ123へと排出される。排出トレイ123は、排出ローラ対122により排出されたカット媒体3を収容する。
【0043】
以上のように構成された画像記録装置1における記録媒体2の送出、画像記録、切断及び排出の一連の流れについて説明する。
【0044】
アンワインダ部10に巻回装填された記録媒体2は、搬送部20の媒体搬送ローラ対30により搬送方向に付加される搬送力により、図1に示す矢印Aの方向に送出される。記録媒体2には、さらに、アンワインダ部10のブレーキ14の制動力により搬送方向と逆方向にも張力が付加されるため、画像記録領域を含む媒体搬送ローラ対30からアンワインダ部10までの搬送経路中で記録媒体2が弛みなく搬送される。
【0045】
そして、搬送部20へと送出された記録媒体2は、フリーローラ21、22を経由して、第1のドラム40に巻回される。第1のドラム40に巻回された記録媒体2は、フリーローラ22、23によって第1のドラム40の搬送面である外周面に約330度の巻き付け角で巻き付けられる。この巻き付け角及び記録媒体2に付与された張力により、第1のドラム40と記録媒体2との間で滑りがなく、密着保持された状態での媒体搬送が可能となる。
【0046】
第1のドラム40は、記録媒体2の搬送に伴い、時計回り(図1の矢印Bの方向)に回転する。そして、第1のドラム40に保持された記録媒体2は、第1の画像記録部60の直下に搬送され、記録媒体2の第1の面への画像記録が行われる。
【0047】
次に、第1の画像記録部60にて第1の面に画像が記録された記録媒体2は、フリーローラ23により第1のドラム40から離れ、フリーローラ24を経由して、フリーローラ25から第2のドラム50の搬送面である外周面に巻き付けられる。このとき、第2のドラム50の外周面には、記録媒体2の第1の面(既に画像記録された面)が密着して、未記録面である第2の面(裏面)が表になるように巻き付けられる。
【0048】
記録媒体2は、第1のドラム40と同様に、フリーローラ25、26によって第2のドラム50に約330度の巻き付け角で巻き付けられる。これにより、記録媒体2は、第1のドラム40と同様に、第2のドラム50の外周面に対して滑りがなく、密着保持される。この状態で、記録媒体2は、第2のドラム50が反時計回り(図1の矢印Dの方向)に回転するのに従って、第2の画像記録部70の直下に搬送され、記録媒体2の第2の面への画像記録が行われる。
【0049】
第2の画像記録部70にて第2の面に画像が記録された記録媒体2は、フリーローラ27〜29を経由して、媒体搬送ローラ対30に搬送される。媒体搬送ローラ対30を通過した記録媒体2は、さらに搬送方向下流側に配置された送りローラ対31を通過する。
【0050】
送りローラ対31は、媒体搬送ローラ対30よりも速い速度で記録媒体2を搬送しようとするが、記録媒体2に対する媒体搬送ローラ対30のニップ力により、送りローラ対31に連結された不図示のすべりクラッチが働き、記録媒体2は速く搬送されない。かくして、記録媒体2は、媒体搬送ローラ対30による搬送速度を維持しつつ、媒体搬送ローラ対30と送りローラ対31との間で緊張状態を保持しながら、送りガイド32に導かれ、カッタ部110に搬送される。
【0051】
カッタ部110は、カッタローラ111aのカッタ刃111bをアンビルローラ111cに当接させることにより、記録媒体2を所望の長さのカット媒体3に切断する。このカット媒体3は、排出ガイド121に案内されて、排出ローラ対122により排出トレイ123へと排出され、整列収納される。
以上が画像記録装置1の記録媒体2の送出から排出までの一連の流れである。
【0052】
このような画像記録装置1において、記録媒体2の搬送停止時には、記録媒体2に張力を与えず弛んだ状態を維持することが望ましい。また、記録媒体2の搬送開始後は、搬送経路中の記録媒体2に張力を与えて記録媒体が弛んでいない状態にする必要がある。
【0053】
そこで、本実施形態の画像記録装置1には、記録媒体2の搬送開始時において少なくとも画像記録領域を含む画像記録部60、70から媒体搬送ローラ対30に至るまでの搬送経路中の記録媒体2の弛みの除去を検知する弛み検知手段51が設けられている。この弛み検知手段51について、以下に詳しく説明する。
【0054】
弛み検知手段51は、第2のドラム50の回転軸50aに取り付けられ、第2のドラム50の回転速度を検出する搬送速度検知部としてのドラムエンコーダ(ロータリエンコーダ)52と、このドラムエンコーダ52からの検出情報等に基づいて、例えば、アンワインダ部10から媒体搬送ローラ対30までの搬送経路(以下、単に搬送経路と称する)中の記録媒体2の弛みが除去されたか否かを判断する弛み除去判断部53と、を有している。
【0055】
弛み除去判断部53は、ドラムエンコーダ52から得られた第2のドラム50の回転速度の値と、媒体搬送ローラ対30の設定された回転速度の値とを比較する。そして、第2のドラム50の回転速度による記録媒体2の第2のドラム50上の搬送速度(第2のドラム50の周速)の値が、媒体搬送ローラ対30の回転駆動による記録媒体2の搬送速度(媒体搬送ローラ対30の周速)の設定値と一致していれば、記録媒体2の弛みが除去されたと判断して、制御部4に弛み除去信号を送信する。
【0056】
なお、慣性質量の大きなロール状の記録媒体2を停止状態から回転引き出しする際、回転開始時は、記録媒体2の慣性力により回転速度が不安定となり、回転速度が安定するまで、搬送経路中の記録媒体2が弛みと突っ張りとを交互に繰り返す可能性がある。このような不安定なときに記録媒体2の搬送経路中の弛みが除去されたと判断しないように、弛み除去判断部53は、媒体搬送ローラ対30による記録媒体2の搬送速度の値と第2のドラム50による記録媒体2の第2のドラム50上の搬送速度の値との差が、所定の値以内となったことにより、搬送速度の一致とみなして弛みが除去されたと判断するか、これら搬送速度が、所定の時間の間一致し続けたことにより、搬送速度の一致とみなして弛みが除去されたと判断するか、又は両方を組み合わせて判断するか、であることが好ましい。
【0057】
なお、本実施形態では、ロータリエンコーダからなるドラムエンコーダ52を第2のドラム50の回転軸に取り付けているが、これに限らず、媒体搬送ローラ対30より搬送経路の上流の記録媒体2の搬送速度を検知できればよく、例えば、搬送経路中に設けられたフリーローラ21〜29、第1のドラム40のいずれの回転軸にロータリエンコーダを設けても、同様の効果を得ることができる。また、搬送経路中の記録媒体2の搬送速度を、記録媒体2に当接するローラを用いた速度センサや非接触の速度センサを用いて検出しても、同様の効果が得ることができる。
【0058】
図3は、画像記録装置1の制御系の概略を示すブロック図である。
画像記録装置1は、操作パネル202と、搬送制御部203及び画像記録制御部204を含み、これらを一体的に制御すると共に、操作パネル202に画像記録装置1のステータスを表示する等の機能を有する制御部(装置制御部)4と、を有している。制御部4には、外部機器であるホストPC201が接続されている。
【0059】
搬送制御部203には、弛み検知手段51(ドラムエンコーダ52、弛み除去判断部53)と、媒体搬送モータ30aと、カッタローラ駆動モータ111dと、刃位置センサ111fと、が接続されている。搬送制御部203は、記録媒体2の搬送制御(搬送速度制御)及びカッタローラ111aの駆動制御(カットタイミング制御)を行う。
【0060】
画像記録制御部204には、刃位置センサ111fと、ドラムエンコーダ52と、第1及び第2の画像記録部60、70と、が接続されている。画像記録制御部204は、上位機器であるホストPC201から送信された画像データを変換し、第1及び第2の画像記録部60、70で画像記録するための画像記録信号を生成し、記録ヘッドのインク吐出制御(記録タイミング制御)を行う。
【0061】
なお、搬送部として、記録媒体の移動速度と同一周速度で回転するドラムに代わって固定式のプラテンを用いる場合には、記録媒体の搬送速度を検出する方法として、例えば、記録媒体に当接する速度検出ローラと、この速度検出ローラの回転量を検出するようにこのローラと同軸に取り付けられた搬送速度検出エンコーダと、を用いることができる。
【0062】
次に、搬送部20の駆動源としての媒体搬送モータ30a及びカッタ部110の駆動源としてのカッタローラ駆動モータ111dの駆動方法と、記録媒体2の画像記録開始位置及びカット位置の位置合わせ方法とについて説明する。
【0063】
まず、媒体搬送モータ30a及びカッタローラ駆動モータ111dの駆動方法について、図4を参照して説明する。
図4は、記録媒体2の搬送開始時における媒体搬送モータ30aの搬送速度の時間変化及びカッタ部110のカットタイミングの一例を、駆動時間に対する媒体搬送ローラ対30のローラ周速により模擬的に表したグラフである。
【0064】
記録媒体の搬送速度において、搬送停止状態や定速状態から一定の加速度での加速状態への移行時や、一定の加速度での加速状態から定速状態への移行時などの際は、急激な速度変化により、搬送経路中の記録媒体に弛みが発生する可能性がある。従って、速度を変化させる際は、急激な速度の変化を避け緩やかに速度を変化させることが望ましい。
【0065】
媒体搬送モータ30aは、搬送制御部203からの搬送要求信号により、第1の搬送速度プロファイルに則り、記録媒体2の搬送を開始する。第1の搬送速度プロファイルは、図4の時間t0よりも前に示されるように、加速度α1での加速の後、一定速度である第1の媒体搬送速度V1で記録媒体を搬送する速度プロファイルである。この加速度α1は、後述する加速度α2と比較して緩やかな加速であり、また、第1の媒体搬送速度V1は、後述する第2の媒体搬送速度Vpと比較して低速での搬送である。
【0066】
上述のように、搬送停止状態の搬送経路中の記録媒体2には、弛みがある。このため、搬送開始時にこの弛みが除去され、媒体搬送モータ30aが慣性質量の大きなロール状の記録媒体2を回転引き出しする際、記録媒体2や画像記録装置1全体に大きな衝撃が加わる可能性がある。第1の媒体搬送速度V1は、このような衝撃が加わるのを防ぐと共に、媒体搬送モータ30aとしてパルスモータを使用した場合の脱調リスクや、サーボモータを使用した場合の整定時間の延長(発振)を避けるように設定されている。
【0067】
記録媒体2の搬送速度が第1の媒体搬送速度V1に達した後、弛み検知手段51が搬送経路中の記録媒体2の弛みを検知する。この検知情報に基づいて、弛み除去判断部53により記録媒体2の弛みが除去されたと判断されたt0のタイミング(時間)で、搬送制御部203が弛み除去信号を受信する。
【0068】
搬送制御部203が弛み検知手段51から弛み除去信号を受信した後、カッタ部110は、第2の搬送速度プロファイルに応じたタイミングで記録媒体2をカットする必要がある。搬送経路中の記録媒体2の弛みが除去されるタイミングは、搬送停止時の記録媒体2の弛み具合等によるので、一義的には決まらない。従って、事前にカットタイミングを検知しておくために、カッタローラ駆動モータ111dは、弛み除去が検知される前段階である記録媒体の搬送速度がV1に達する前に、遅くとも回転駆動を開始し、記録媒体がV1の速度で搬送されたときに媒体搬送ローラ対30と同調するように、カッタローラ111aを回転させておく。カッタローラ111aの回転に伴って、刃位置センサ111fは、カッタローラ111aの1回転ごとに1回、刃位置検出ドグ111eを検出する。かくして、刃位置センサ111fは、カットタイミング検知手段として、カッタ刃111bにより記録媒体2が切断されるカットタイミングを検出して、搬送制御部203にカット検知信号を送信する。
【0069】
記録媒体2の弛みが除去されるタイミングは、記録媒体2が第1の媒体搬送速度V1に達した後の不特定のタイミングであり、制御部4が弛み除去信号を受信したタイミング(時間)t0でのカッタ刃111bの回転位置も不特定の位置となる。従って、制御部4が弛み除去信号を受信したタイミングt0の後の1回目のカットタイミングt1も、不特定のタイミングである。
【0070】
この1回目のカットタイミングであるt1が刃位置センサ111fにより検出されたと同時に、搬送制御部203から媒体搬送モータ30aに制御信号が送信されて、媒体搬送モータ30aは、第2の搬送速度プロファイルに則り、記録媒体2の搬送を開始する。第2の搬送速度プロファイルは、図4の時間t1以降に示されるように、加速度α2での、記録媒体2の連続的な加速の後、所望の一定速度(通常運転速度)である第2の媒体搬送速度Vpで記録媒体2を搬送する速度プロファイルである。第2の媒体搬送速度Vpは、記録媒体2に、最も効率よく、かつ正確に画像記録及び記録媒体2の切断がなされるように、適宜設定した速度である。
【0071】
加速度α1、α2の値は、記録媒体2の剛性やヤング率、画像記録装置1の各構成部の剛性、媒体搬送モータ30aの仕様、画像記録品質を確保するのに必要な速度変化率等を考慮して、また、例えば、媒体搬送モータ30aやカッタローラ駆動モータ111dが脱調や発振等を起こさず記録媒体2への画像記録動作及び切断動作の制御が可能な範囲に、適宜設定する。また、加速度α1、α2での加速の前後の速度変化は、緩やかな変化であることが望ましい。
【0072】
また、媒体搬送モータ30aと同様に、刃位置センサ111fからの弛み除去後1回目のカットタイミングt1のカット検知信号を受信したと同時に、搬送制御部203は、第2の搬送速度プロファイルによる加速度α2から所望の一定速度である第2の媒体搬送速度Vpに至る搬送速度に対応した、カットタイミングプロファイルに則り、カッタローラ駆動モータ111dがカッタローラ111aを回転駆動させるように制御し、記録媒体2を所望のカット長に切断する。
【0073】
次に、記録媒体2を所望のカット長のカット媒体3に切断する方法を説明する。
例えば、媒体搬送ローラ対30とカッタローラ111aとのローラ外周長が同じであり、これらの周の長さが所望のカット長であるとする。そして、媒体搬送ローラ対30とカッタローラ111aとは、同じ速度で回転しているとする。この場合、媒体搬送ローラ対30が1周(1回転)すれば、記録媒体2は所望のカット長だけ搬送されることとなり、このときにカッタローラ111aも1周し記録媒体2を切断する。かくして、記録媒体2を所望のカット長に切断することができる。
【0074】
媒体搬送ローラ対30が一定の速度ではなく速度変化しながら記録媒体2を搬送したとしても、媒体搬送ローラ対30と同じ速度変化でカッタローラ111aが回転すれば、記録媒体2が所望のカット長だけ搬送されたときに記録媒体2を切断することができる。
【0075】
図5に示すように、本実施形態においては、媒体搬送ローラ対30とカッタローラ111aとの大きさを異なる径としている。このように、各々のローラの外周長が異なっていたとしても、各々の外周長の比率がわかっていれば、各々の回転速度をその比率に応じた回転速度することにより、搬送速度が変化しても、所望のカット長に切断することができる。
【0076】
さらに、カット長を変えたい場合は、媒体搬送ローラ対30とカッタローラ111aとの回転速度を、そのカット長に応じた回転速度に設定すればよい。例えば、カット長を短くしたい場合は、元のカット長に対して短くなった比率だけ、媒体搬送ローラ対30に対するカッタローラ111aの回転速度を速く設定すればよい。
【0077】
タイミングt0で弛み検知手段51の弛み除去判断部53により弛みが除去されたと判断された後の1回目のカットタイミングであるt1が刃位置センサ111fにより検出されると、第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルに則り、カッタローラ駆動モータ111dがカッタローラ111aを回転駆動し、カッタ刃111bは、カットタイミングt2、t3、…、で記録媒体2を切断していく。なお、図4において、カットタイミングを表す破線と搬送速度を表す実線とで囲まれた面積が、カット長に相当する搬送距離となる。
【0078】
なお、本実施形態においては、カッタ部110を、カッタ刃111bをカッタローラ111aで回転駆動させ記録媒体2を切断する所謂ロータリタイプのカッタの構成としているが、これに限らず、カッタ部110は、記録媒体2を切断できればよい。カッタ部110として、例えば、カッタ刃を直線的に駆動させ、記録媒体2をカッタ刃と金床とで挟み込んで切断する所謂ギロチンタイプのカッタの構成や、レーザ光を発するレーザヘッドを走査させ、記録媒体2にレーザ光を照射して切断するレーザタイプのカッタの構成を採用することができる。
【0079】
また、本実施形態においては、記録媒体2の弛みが除去されたと判断されたタイミングt0の後の1回目のカットタイミングであるt1が検出されたと同時に、搬送制御部203は、第2の搬送速度プロファイルに則り媒体搬送モータ30aを駆動させ記録媒体2を搬送させると共に、第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルに則りカッタローラ駆動モータ111dを回転駆動させているが、これに限定されない。例えば、カッタ部がギロチンタイプやレーザタイプのカッタのように、任意のタイミングで記録媒体をカットできる構成の場合は、記録媒体2の弛みが除去されたと判断されたタイミングt0が検出されたと同時に、搬送制御部203が、第2の搬送速度プロファイルに則り媒体搬送モータ30aを駆動させ記録媒体2を搬送させると共に、第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルに則りカッタを駆動してもよい。
【0080】
次に、記録媒体2の画像記録開始位置とカット位置との位置合わせ方法について、図5並びに図6を参照して説明する。
図5は、画像記録装置1において、第1の画像記録部60による画像記録開始位置をP1、第2の画像記録部70による画像記録開始位置をP2、カッタ部110によるカット位置をP3として示した図である。図6は、搬送経路を一直線上に展開し、これらの位置関係を示した概念図である。
【0081】
上述のように、記録媒体2の搬送経路中の弛みがなくなり、搬送制御部203が弛み検知手段51より弛み除去信号を受けたと同時に、搬送制御部203は、カッタローラ駆動モータ111dを第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルに則り回転させる。この回転に伴って、刃位置センサ111fは、カッタローラ111aの1回転ごとに1回、刃位置検出ドグ111eを検出し、カッタ刃111bのカットタイミング(カット開始タイミング)を検出する。
【0082】
画像記録制御部204は、この刃位置センサ111fからの弛み除去後1回目のカットタイミングt1のカット検知信号を受けて、このタイミングt1の時点において、記録媒体2の搬送経路における第1の画像記録部60による画像記録開始位置P1より上流に位置する、記録媒体2がカッタ刃111bにより切断されるであろうカット予測位置C1を算出する。このカット予測位置の情報に基づき、カット予測位置C1が第1の画像記録部60の画像記録開始位置P1に到達したとき、所定の画像記録タイミングで画像記録が開始される。本実施形態では、第1の画像記録部60の搬送方向最上流側の記録ヘッドのインクノズルからのインク吐出が開始される。
【0083】
なお、算出されたカット予測位置C1が第1の画像記録部60の画像記録開始位置P1に到達する以前の画像記録タイミング、及びそれ以後の第1の画像記録部60による画像記録は、第2のドラム50の回転軸50aに取り付けられたドラムエンコーダ52の出力パルスをカウントすることにより、記録媒体2の搬送位置(搬送量)を検出して行う。
同様に、算出されたカット予測位置C1が第2の画像記録部70の画像記録開始位置P2に到達する以前の画像記録タイミング、及びそれ以後の第2の画像記録部70による画像記録も、第2のドラム50の回転軸50aに取り付けられたドラムエンコーダ52の出力パルスをカウントすることにより、記録媒体2の搬送位置を検出して行う。
【0084】
以上述べたカット予測位置C1に基づき、記録媒体上の画像先頭位置を算出し、第1のドラム40上に配置された第1の画像記録部60による画像記録開始位置を決定することにより、上位機器からの画像データの画像記録及び切断がなされる所望の記録切断完成媒体における、画像記録開始タイミングとカット開始タイミングとの、記録媒体2の搬送開始後の最初の同期がなされる。この同期を「最初の同期」と定義すると、この最初の同期がなされるタイミングは、記録媒体2が張力を付与され弛み除去状態となり、第1のドラム40に取り付けられた不図示のドラムエンコーダの出力パルスが安定する、すなわち記録媒体2が第1のドラム40上で滑らずに回転を始めた以降に設定することが可能となる。
【0085】
本実施形態では、時間t0で記録媒体2の弛みが取れた直後にこの最初の同期がなされるタイミングを設定する。つまり、制御部4(搬送制御部203、画像記録制御部204)は、記録媒体2の搬送経路上の弛みが取れたと判断されたら、加速度α2を伴う第2の搬送速度プロファイルで記録媒体2の搬送を開始すると同時に、第2の搬送速度プロファイルに応じたカットタイミングプロファイルでカッタ部110を駆動すると共に、第1及び第2の画像記録部60、70による画像記録開始タイミングと、カッタ部110によるカットタイミングとを同期させる。このため、カット予測位置と画像記録開始位置との距離を最小化することができ、余剰媒体の長さを低減させることが可能となる。
【0086】
本実施形態によれば、搬送部による記録媒体の搬送やカッタ部による記録媒体の切断等の制御を複雑化することなく、画像記録開始時に発生する余剰媒体の量を低減させながら、画像記録開始位置と切断位置との位置合わせを行うと共に、高品位の画像記録を行うことができる。
【0087】
以上の説明では、制御部4は、記録媒体2の搬送経路上の弛みが取れたと判断されたら、加速度α2を伴う第2の搬送速度プロファイルで記録媒体2の搬送を開始すると同時に、第2の搬送速度プロファイルに応じたカットタイミングプロファイルでカッタ部110を駆動すると共に、第1及び第2の画像記録部60、70による画像記録開始タイミングと、カッタ部110によるカットタイミングとを同期させているが、これに限定されるものではない。例えば、記録媒体2の搬送経路上の弛みが取れたと判断されたら、加速度α2を伴う第2の搬送速度プロファイルで記録媒体2の搬送を開始すると同時に、第2の搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルでカッタ部110を駆動すると共に、第2の搬送速度プロファイルに応じた記録タイミングプロファイルに則り、第1及び第2の画像記録部60、70による画像記録を開始してもよい。
【0088】
また、所望の一定速度である媒体搬送速度(通常運転速度)を複数設定して、これらの設定値に応じて搬送速度プロファイル及びカッタローラ駆動モータ100dを駆動させる対応するカットタイミングプロファイルを複数設定することにより、それぞれのカットタイミングプロファイルに応じた複数のカットサイズでの記録媒体2の切断が可能である。
【0089】
また、変形例として、例えば、搬送経路中に、この経路中の記録媒体の張力を検知する張力検知センサを設けて、記録媒体2の張力を直接検知することも可能である。
【0090】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。第2の実施形態では、弛み検知手段が第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と同様の構成部材には同じ参照符号を付して、その説明は省略し、第1の実施形態との相違点のみ詳しく説明する。
【0091】
第2の実施形態では、弛み検知手段として、アンワインダ部10から媒体搬送ローラ対30の間の記録媒体2の搬送経路中に、2つのフリーローラ21a、21b間に配置されたダンサローラ19と、このダンサローラのZ方向(上下方向)の位置を検出するセンサ17aと、を有している。ダンサローラ19の回転軸は、図7に矢印で示すZ方向(重力方向)に移動可能であるように、装置本体フレーム5に支持されている。
なお、本実施形態においては、ダンサローラ19を、アンワインダ部10から媒体搬送ローラ対30の間の記録媒体2の搬送経路中に設けているが、これに限らず、媒体搬送ローラ対30からアンワインダ部10までの搬送経路中に設けてもよい。
【0092】
ダンサローラ19は、例えば、ばね、錘、又はダンサローラ19自体の重量などの既知の手段により、Z方向下向き(鉛直方向)に所定の大きさの張力を記録媒体2に加えられるローラである。搬送経路中の記録媒体2が弛んでいると、記録媒体2が適切な張力で張られているときよりもZ方向下側の位置に移動する。記録媒体2が適切な張力で張られているときのダンサローラ19のZ方向の高さを予め設定しておけば、ダンサローラ19がこの高さに達したことをセンサ17aが検知したとき、記録媒体2の弛みが除去されたと判断する。
【0093】
本実施形態では、ロール状の記録媒体2がアンワインダ部10から送出された直後の搬送経路中にダンサローラ19を配置していることにより、ダンサローラ19が記録媒体2の巻き癖を戻すことができる。
【0094】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな改良並びに変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…画像記録装置、2…記録媒体、3…カット媒体、4…装置制御部、5…装置本体フレーム、10…アンワインダ部、11…紙管固定シャフト、12…プーリ、13…スタンド、14…ブレーキ、15…ベルト、16…拍車、17…センサ、18…ベルト、19…ダンサローラ、20…搬送部、21〜29…フリーローラ、30…媒体搬送ローラ対、31…送りローラ対、32…送りガイド、40…第1のドラム、50…第2のドラム、52…ロータリエンコーダ、53…弛み除去判断部、60…第1の画像記録部、61…記録ヘッド、62…ヘッド保持プレート、70…第2の画像記録部、80…第1のクリーニング部、90…第2のクリーニング部、100…記録装置本体部、110…カッタ部、111a…カッタローラ、111b…カッタ刃、111c…アンビルローラ、111d…カッタローラ駆動モータ、111e…刃位置検出ドグ、111f…刃位置センサ、120…排出部、121…排出ガイド、122…排出ローラ対、123…排出トレイ、201…ホストPC、202…操作パネル、203…搬送制御部、204…画像記録制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路で長尺の記録媒体を保持搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記記録媒体に、前記搬送経路中の画像記録領域において画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部により画像が記録された前記記録媒体を所定の長さに切断するカッタ部と、
前記搬送部、画像記録部及びカッタ部の駆動を制御する制御部と、
を具備し、前記記録媒体の搬送速度が所望の一定速度であるとき、前記記録媒体への画像記録及び前記記録媒体の切断をする画像記録装置において、
少なくとも前記画像記録領域における前記記録媒体の弛みの除去を検知して、前記制御部に弛み除去検知信号を送信する弛み検知手段を有し、
前記制御部は、前記弛み除去検知信号を受信したら、前記記録媒体の搬送速度を前記所望の一定速度まで連続的に加速することを含む所定の搬送速度プロファイルに則り前記搬送部を駆動させると共に、前記搬送速度プロファイルに応じて前記画像記録部及び前記カッタ部の駆動を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記弛み除去検知信号を受信したと同時に、所定の搬送速度プロファイルに則り前記搬送部を駆動させると共に、前記搬送速度プロファイルに応じて前記画像記録部及び前記カッタ部の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記カッタ部により前記記録媒体が切断されるタイミングを検知して、前記制御部にカット検知信号を送信するカットタイミング検知手段を有し、
前記制御部は、前記弛み除去検知信号を受信した後の最初のカット検知信号を受信したと同時に、所定の搬送速度プロファイルに則り前記搬送部を駆動させると共に、前記搬送速度プロファイルに応じて前記画像記録部及び前記カッタ部の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送速度プロファイルに対応したカットタイミングプロファイルに基づいて、前記カッタ部を駆動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送速度プロファイルに対応した記録タイミングプロファイルに基づいて、前記画像記録部を駆動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所望の一定速度として、複数の設定値を有するとともに、前記複数の設定値に応じて、前記搬送速度プロファイルを複数有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記弛み検知手段は、
前記搬送経路中の前記記録媒体の搬送速度を検知する搬送速度検知部と、
前記制御部により前記搬送部が記録媒体を搬送する前記搬送速度の設定値と、前記搬送速度検知部により検知された前記搬送速度の値と、が一致したとき、前記記録媒体の弛みが除去されたと判断する弛み除去判断部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記弛み検知手段は、
前記搬送部に設けられたダンサローラと、
前記ダンサローラが所望の高さに達したとき、前記記録媒体の弛みが除去されたと判断する弛み除去判断部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139983(P2012−139983A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1258(P2011−1258)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】