画像記録装置
【課題】簡単な構造で、各記録ヘッドにより形成されるドットのずれがなく、重なり精度が向上した画像記録を行う。
【解決手段】記録媒体を保持搬送するプラテンと、プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、これら記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、これら記録ヘッド及びヘッドホルダを搬送方向と直交する主走査方向に移動させる移動機構と、を具備し、搬送される記録媒体を、記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、移動機構により、記録ヘッド及びヘッドホルダを主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であり、複数の記録ヘッドの各々のノズルの位置が、主走査方向に所定のオフセット量をだけずれて配置されている。
【解決手段】記録媒体を保持搬送するプラテンと、プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、これら記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、これら記録ヘッド及びヘッドホルダを搬送方向と直交する主走査方向に移動させる移動機構と、を具備し、搬送される記録媒体を、記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、移動機構により、記録ヘッド及びヘッドホルダを主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であり、複数の記録ヘッドの各々のノズルの位置が、主走査方向に所定のオフセット量をだけずれて配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを移動させながら画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像記録装置として、記録ヘッドの複数のノズルからインク滴を吐出し、吐出したインク滴が記録媒体に着弾して画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタの中には、複数のノズルを記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に列状に配置した1つ又は複数の記録ヘッドを記録媒体の幅よりも長く設けた所謂ラインヘッドを構成すると共に、例えば、インク色毎のラインヘッド等、複数のラインヘッドを記録媒体の搬送方向に並び配置し、搬送される記録媒体に前記ノズルからインクを吐出して記録を行うラインプリンタがある。
【0003】
このようなラインプリンタでは、ラインヘッドを構成している各記録ヘッドに配列されたノズルのノズルピッチ(隣り合うノズル間の主走査方向の間隔)が、そのまま主走査方向の記録ドット密度となる。このため、高画質化を実現するためには、ノズルピッチの微細化を行う必要があり、技術的、コスト的困難を伴う。
【0004】
この解決策として、例えば、特許文献1には、記録媒体を搬送保持するドラムと、主走査方向に列をなして配置された複数のノズルを有する複数のラインヘッドと、各ノズルがドラムと対向する位置にこれらラインヘッドを保持すると共に、各ラインヘッドをドラムの回転中心に対し放射状に保持するヘッドホルダと、ヘッドホルダを記録媒体の主走査方向(ノズル列方向)に往復移動させる往復移動手段と、を有する画像記録装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の画像記録装置では、ドラムを所定の定速で複数回だけ回転させる間に、ヘッドホルダをノズルピッチ分だけ連続的に定速移動させながら、定速搬送される記録媒体の搬送方向における所望の記録密度のタイミングでインクを吐出して、記録媒体に対しスパイラル状に画像記録を行う。これにより、主走査方向のノズルピッチ間の隙間を補完し、主走査方向の記録媒体への記録ドット密度を増やして、高画質化を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−138516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような画像記録装置では、複数のラインヘッド、例えば、各色のラインヘッドにより複数の色のインクを吐出して重ね合わせることにより、カラー画像を記録する。このようなカラー画像や1色のインクの重ね合わせによる濃淡により画像を記録する場合、記録媒体に記録される各色のドット位置がずれると、各色のドットがうまく重ならず、得られる画像の品質が低下してしまう。
【0008】
上述の特許文献1に記載の画像記録装置では、各々のラインヘッドのノズルの主走査方向の位置が同一位置となるように、各ラインヘッドが1つのヘッドホルダに固定され、このヘッドホルダが主走査方向に移動可能な構成となっている。このような構成では、搬送方向の各ラインヘッド間に距離があり、搬送方向の第1の列のラインヘッドによる画像記録がなされた後、記録媒体が次の第2の列のラインヘッドの直下まで搬送される。この第2の列のラインヘッドにより画像記録がなされる際、ヘッドホルダは既に主走査方向に移動しており、この結果、第2の列のラインヘッドにより形成されたドットは、この移動量だけ、第1の列のラインヘッドにより形成されたドットに対して重ならず、主走査方向にずれてしまう。このため、高品質な画像が得られない。
【0009】
また、特許文献1に記載の画像記録装置において、各ラインヘッドは、記録媒体の幅に満たない記録領域を有する複数の短尺記録ヘッドを、記録媒体の幅方向(主走査方向)に沿って千鳥状に配列したラインヘッドである。このような千鳥状に配列された記録ヘッドの各々は、主走査方向における隣り合うノズルの間隔が、各記録ヘッドにおけるノズルピッチと同じ距離だけ離した位置になるように、位置決めされる。
【0010】
この場合も、主走査方向に隣り合う記録ヘッドには、搬送方向に位置ずれがあり、千鳥状に配列されたラインヘッドの搬送方向の第1の列の記録ヘッドが画像記録した後、記録媒体が次の第2の列の記録ヘッドの直下まで搬送される。この第2の列の記録ヘッドにより画像記録がなされる際、本来であれば主走査方向に隣り合う記録ヘッドのノズルは、ノズルピッチだけ離れたドットを記録媒体に着弾させる必要があるが、ヘッドホルダは既に主走査方向に移動している。この結果、第2の列の記録ヘッドにより形成されたドットは、この移動量だけ、主走査方向にずれてしまう。このため、やはり、画像の品質は低下する。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、複数の記録ヘッドの各々から吐出されるドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度が向上した高品質な画像を記録する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態は、記録媒体を保持搬送するプラテンと、前記プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、前記記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、前記複数の記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記搬送方向と直交する主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、を具備し、前記プラテンにより保持搬送される前記記録媒体を、前記記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、前記ヘッド移動機構により、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であって、前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向最上流側の記録ヘッドのノズルに対して、他の記録ヘッドの各々のノズルが、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されている画像記録装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造で、複数の記録ヘッドの各々から吐出されるドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度が向上した高品質な画像を記録する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のラインプリンタを概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、搬送機構のドラムと画像記録部との構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、ノズル面の構成を概略的に示す上面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図5】図5(a)乃至(d)は、画像記録部による画像記録を概念的に示す図である。
【図6】図6(a)並びに(b)は、画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図8】図8(a)並びに(b)は、第3の実施形態における画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【図9】図9は、第4の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図10】図10は、第5の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図11】図11(a)並びに(b)は、第5の実施形態における画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置について、図1乃至図6を参照して説明する。本実施形態では、複数の記録ヘッドのそれぞれから異なる色のインクを吐出して、移動する記録媒体にカラー画像を記録するラインプリンタを一例として説明する。
【0016】
図1は、ラインプリンタ1の構成を概略的に示す正面図である。
ラインプリンタ1は、複数の記録媒体2が装填された記録媒体カートリッジ10と、記録媒体カートリッジ10から記録媒体2を取り出す記録媒体供給部20と、取り出された記録媒体2を搬送する搬送機構30と、複数の記録ヘッド41を有し、搬送された記録媒体2にこれら記録ヘッド41からインクを吐出して画像を記録する画像記録部40と、画像が記録された記録媒体2を排出する記録媒体排出部50と、記録ヘッド41へインク供給するインクボトル60と、を有している。これら構成部は、記録媒体排出部50の一部を除き、筐体3内に収容されている。
【0017】
また、ラインプリンタ1は、パーソナルコンピュータやCPU等の演算処理部を備えた制御部4を有している。制御部4は、必要なプログラムやデータ等を記憶するメモリを有しており、ユーザの指示に従って、搬送機構30による記録媒体搬送動作や画像記録部40による画像記録動作など、ラインプリンタ1全体の動作を制御する。
【0018】
なお、以下では、本発明の要旨に関わるラインプリンタ1の構成のみを説明するが、ラインプリンタ1は、不図示のインク経路、画像記録部移動機構及びクリーニングユニットなど、通常のラインプリンタが備える構成部を有しているものとする。
【0019】
ラインプリンタ1の各構成部の構成について説明する。
記録媒体カートリッジ10は、本実施形態ではラインプリンタ1本体の最下部に配置されている。この記録媒体カートリッジ10には、記録用紙やフィルムなどの記録媒体2が収容されている。
【0020】
記録媒体供給部20は、記録媒体カートリッジ10の近傍に設けられている。この記録媒体供給部20は、記録媒体カートリッジ10に収容された記録媒体2を1枚ずつ取り出すピックアップローラ、取り出された記録媒体2を搬送方向下流側の搬送機構30へと搬送する無端ベルト及びこの無端ベルトが架けられたベルトローラなどの既知の構成を有している。もちろん、ベルトローラを用いないローラのみによる構成であってもよい。なお、図1中の矢印は、記録媒体2の搬送方向を示している。
【0021】
搬送機構30は、記録媒体供給部20から供給された記録媒体2を搬送方向下流側に案内する案内板31と、記録媒体2を帯電させる帯電ローラ32と、記録媒体2を外周面に巻き付けて回転搬送するドラム33と、記録媒体2の電荷を除去する除電ローラ34と、ドラム33の外周面に巻き付けられた記録媒体2を剥がす剥離爪35と、を有している。
【0022】
ドラム33は、例えば、金属製の円筒形状体であり、画像記録部40の直下において記録媒体2を保持搬送するプラテンである。ここでのプラテンとは、平坦な搬送部材のみならず、円筒形の胴体を有するドラム等も含むものとして、広義に解釈する。ドラム33は、その外周面が記録媒体2を密着保持(本実施形態では静電吸着)し、図示しないモータにより回転して、記録媒体2を搬送する。
【0023】
なお、本実施形態では、プラテンとしてドラムを用いているが、これに限らず、複数のローラで弛みなく保持させた無端ベルトにより記録媒体を搬送するベルトタイプのプラテンを用いてもよい。この場合、ファン等により負圧を発生させて小孔が多数の開口された無端ベルトに記録媒体を吸着保持させる。
【0024】
画像記録部40は、複数の記録ヘッド41と、これら記録ヘッド41を保持するヘッドホルダ42と、を有している。画像記録部40の詳細は、後述する。
【0025】
記録媒体排出部50は、搬送機構30の剥離爪35の搬送方向下流側に設けられている。この記録媒体排出部50は、剥離爪35から剥離された記録媒体2を搬送方向下流側へ排出する排出ローラ、排出ローラから記録媒体2を受ける排出トレイなどの既知の構成を有している。
【0026】
インクボトル60は、複数の記録ヘッド41に対応して複数設けられている。これら記録ヘッド41には、不図示のインク経路がそれぞれ接続されており、それぞれのインク経路を介して記録ヘッド41にインクが供給される。
【0027】
次に、ラインプリンタ1による記録媒体2の搬送動作について説明する。
制御部4が外部機器(パソコン等)からの画像記録指令を受けると、記録媒体2が記録媒体カートリッジ10から1枚取り出されて、記録媒体供給部20を通過する。そして、記録媒体供給部20を通過した記録媒体2は、案内板31により搬送方向下流側のドラム33へ搬送される。このとき、帯電ローラ32によって電荷が加えられることにより、記録媒体2がドラム33の外周面に密着保持される。
【0028】
ドラム33の回転により、記録媒体2の搬送方向先端が記録ヘッド41の記録領域(インク吐出領域)の下方に達すると、後述する所定の画像記録動作に則り、記録ヘッド41により記録媒体2にインクが吐出されて、画像が記録される。
【0029】
記録媒体2への画像記録が終了すると、除電ローラ34により記録媒体2の電荷が除去される。そして、電荷が除去された記録媒体2は、剥離爪35によってドラム33から取り除かれる。かくして、画像が記録された記録媒体2は、記録媒体排出部50へ排出される。
【0030】
なお、本実施形態では、記録媒体2の片面に画像記録を行っているが、これに限らず、図示しない既知の記録媒体反転機構を用いて、片面の画像記録が終了しドラム33から記録媒体2が剥がされた後、記録媒体2を反転し、再度ドラム33に吸着させて画像記録を行うことにより、記録媒体2の両面に画像記録を行ってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ドラム33への記録媒体2の吸着手段として帯電ローラ32で発生される静電気力を利用しているが、例えば、ドラム33の外周面に複数の通気孔を設けて、ドラム33内を負圧にして、記録媒体2をドラム33の外周面に吸着させてもよい。
【0032】
次に、画像記録部40の構成について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2は、搬送機構30のドラム33と画像記録部40との構成を概略的に示す図である。
画像記録部40は、複数の記録ヘッド41と、これら記録ヘッド41を保持しているヘッドホルダ42と、を有している。各記録ヘッド41は、ドラム33の外周面に沿い、ノズル面44に列をなして形成(配列)されたノズル43からのインクの吐出方向がドラム33の中心に向かうように放射状に位置付けられている。ヘッドホルダ42は、図2に示すように、これら記録ヘッド41のノズル面44が、ドラム33の円筒形の外周面(記録媒体保持面)に対して所定の距離(ヘッドギャップ)だけ離れ、この外周面に沿うようにして配置している。
【0033】
本実施形態における記録ヘッド41は、記録媒体2の幅以上の1ラインの記録領域(ノズル列長)を有するラインヘッドであるか、記録媒体2の幅に満たない記録領域を有する短尺な記録ヘッドを複数用いて、これら短尺な記録ヘッドを記録媒体2の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドであることができる。以下では、記録媒体2の幅以上の記録領域を有するラインヘッドである記録ヘッド41を例として説明する。
【0034】
記録ヘッド41は、色毎に設けられており、本実施形態では、搬送方向上流側から順に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の記録ヘッド41C、41K、41M、41Yの4つが搬送方向に並設されている。なお、本実施形態では、画像記録部40は、色を4色として4つの記録ヘッド41を有しているが、これに限らず、例えば、6色の場合は、6つの記録ヘッド41を設けてもよく、また、ある色のみ複数の記録ヘッド41を設けてその他の色は1つの記録ヘッド41をそれぞれ設けてもよい。
【0035】
図3は、図2の矢印Bの方向から見たインク吐出面44を示す図である。
各記録ヘッド41には、ノズル43(43a、43b、43c、…)が、記録媒体2の搬送方向と直交する主走査方向に列状に配置(配列)されている。図3の矢印Eは、記録媒体2の搬送方向であり、また、矢印Dは、主走査方向を示している。ノズル43は、図3に示すように、主走査方向にノズルピッチCだけ離れて規則的に配列されている。
【0036】
また、本実施形態のラインプリンタ1の画像記録部40には、ヘッドホルダ42を主走査方向に移動可能なヘッド移動機構としての主走査方向移動機構100が設けられている。この主走査方向移動機構100について、以下に説明する。
図4は、画像記録部40に設けられた主走査方向移動機構100を概略的に示す上面図である。
【0037】
主走査方向移動機構100は、ヘッドホルダ42の主走査方向の一端側に、コロベース102を介してコロ軸101aに回転自在に保持されたコロ101と、ラインプリンタ1の不図示のフレーム等に取り付けられたカムモータ103と、カムモータ103のモータ軸103aに取り付けられ、コロ101と主走査方向で当接するカム104と、を有している。
【0038】
ヘッドホルダ42は、図示しないスライドレール等により、主走査方向に移動可能に設けられている。また、ヘッドホルダ42は、図示しない付勢手段により、コロ101とカム104が当接するように、主走査方向でカム104側に付勢されている。
【0039】
カム104は、所定の回転角に対し、回転中心からの半径が所定量だけ連続的に長くなる外周を有している。カムモータ103を駆動させてカム104を回転させることにより、ヘッドホルダ42は、主走査方向である図4の矢印Dの方向に所定の距離だけ連続的に移動される。
【0040】
なお、本実施形態では、コロ101をヘッドホルダ42側に、カム104をラインプリンタ1の不図示のフレーム側に設けているが、コロ101をフレーム側に、カム104をヘッドホルダ42側に設けてもよい。
【0041】
また、主走査方向移動機構100は、図4では、偏芯カムであるカム104やカムモータ103などで構成されているが、これに限らず、例えば、ボールねじなどを用いた構成やリニアアクチュエータ等、ヘッドホルダ42が主走査方向に直進移動可能な機構を適宜採用することができる。
【0042】
また、本実施形態では、主走査方向移動機構100によりヘッドホルダ42が主走査方向に移動する構成となっているが、ヘッドホルダ42とドラム33との相対位置が主走査方向に移動すればよく、例えば、主走査方向移動機構100がドラム33に設けられ、固定されたヘッドホルダ42に対しドラム33が主走査方向に移動する構成でも、効果は同じである。
【0043】
次に、画像記録部40の1つの記録ヘッド41Cによる記録媒体2に対する画像記録動作について、図5(a)乃至(d)を参照して説明する。
図5(a)乃至(d)は、1つの記録ヘッド41Cによる画像記録動作を時系列的に示す概念図である。ここでは、1つの記録ヘッド41Cのみを例として挙げるが、記録ヘッド41K、41M、41Yも同様の画像記録動作を行う。なお、図5(a)乃至(d)において、ドラム33及びこのドラム33に保持されている記録媒体2は、ドラム33の外周面を搬送方向に平面に展開した概念図として示しており、ドラム33の図中上下の端部間の距離が、ドラム1周の搬送方向の長さを示している。
【0044】
以下の説明では、解像度を4倍にするように、つまりノズルピッチCで1回画像記録を行った場合に対し主走査方向の記録ドット密度を4倍とした画像を記録するように、ドラム33に記録媒体2を保持しながら画像を記録する。
【0045】
ドラム33が等速で回転する間に、ヘッドホルダ42は主走査方向移動機構100により主走査方向に移動し、ヘッドホルダ42に搭載された記録ヘッド41Cが等速で移動する。そして、ドラム33に密着保持されて搬送された記録媒体2が記録ヘッド41Cの下方を通過したとき(ドラム1回転目)、記録ヘッド41Cのノズル43からインクが吐出され、最初のドットd1より順次記録媒体2に1回目の画像が記録される(図5(a))。
【0046】
ヘッドホルダ42は、主走査方向移動機構100によって、ドラム33が等速で1回転する間に、ノズルピッチCをN分割したC/Nである距離Xだけ、主走査方向である矢印D方向に連続的に移動する。Nは1枚の記録媒体2に対する画像記録の回数であり、ここではN=4である。この移動の間に、記録ヘッド41Cは記録媒体2の搬送方向における所定の搬送量毎にノズル43からインクを吐出し、ドットd1以降のドットを順次記録していく。
【0047】
そして、ヘッドホルダ42が主走査方向に距離Xだけ移動し、記録媒体2が再び記録ヘッド41Cの下方を通過したら(ドラム2回転目)、記録媒体2に2回目の画像が記録される(図5(b))。同様にして、ドラム3回転目には3回目の画像(図5(c))が、ドラム4回転目には4回目の画像(図5(d))が、それぞれ記録される。
【0048】
このように、1枚の記録媒体2をドラム33に保持した状態でドラム33をN回だけ回転させ、この記録媒体2が記録ヘッド41の直下をN回通過(パス)する間に、ヘッドホルダ42をノズルピッチCだけ主走査方向に連続的に移動させながら、記録媒体2に画像を記録する。かくして、1枚の記録媒体2に対する画像記録が完了する。
【0049】
このような画像記録を行うことにより、ノズルピッチC間の主走査方向の画像記録のドット密度を補完することが可能となる。つまり、記録媒体2上において、主走査方向のノズルピッチC間にN−1個分のドットを補完形成することができ、高密度な画像記録を行うことができる。
【0050】
次に、本発明のラインプリンタ1において、主走査方向移動機構100により、各記録ヘッド41を搭載したヘッドホルダ42を主走査方向にずらす動作について、図6(a)並びに図6(b)を参照して説明する。
図6(a)は、一般的なラインプリンタの2つの記録ヘッド、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示しており、また、図6(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。図6(a)並びに(b)は、2色の記録ヘッド41C、41Kのみを示しているが、各色の記録ヘッド41も同様の構成となる。
【0051】
例えば、カラー画像を形成するためには、記録媒体2に対し、各色のインクのドットを精度よく重ね合わせる必要がある。ドットの重ね位置がずれると、カラー画像の色再現が崩れてしまう。
【0052】
図6(a)に示すように、一般的なラインプリンタでは、各色の記録ヘッドは主走査方向にずれていない。つまり、シアンの記録ヘッド41Cの1つのノズル43により形成されたドットと、ブラックの記録ヘッド41Kの1つのノズル43により形成されたドットとが精度よく重なることによりカラー画像を形成する場合に、重なり合うべきドットを形成する記録ヘッド41C、41Kのノズル43を対応ノズルと称すると、これら対応ノズルは、主走査方向に同じ位置に配置されている。また、搬送方向に関して、記録ヘッド41Cと記録ヘッド41Kとは、対応ノズルにより記録媒体2にインクを同時に吐出したときに形成されるドットが記録媒体2の搬送方向に距離Fだけ離れて形成される位置に配置されている。
【0053】
このようなラインプリンタにより画像記録を行うと、まず、搬送方向上流側に位置するシアンの記録ヘッド41Cが、記録媒体2にシアンのドットd1を記録する。続いて、ブラックの記録ヘッド41Kが、シアンのドットd1と同じ位置を始めとしてブラックのドットd1’を記録しようとする。しかし、このとき既にドラム33は距離Fだけ搬送方向に回転移動している。このため、記録ヘッド41C、41Kを保持しているヘッドホルダ42は、主走査方向移動機構100により距離Gだけ矢印Dに示す主走査方向に移動しており、記録ヘッド41Kも主走査方向に距離Gだけ移動している。従って、記録ヘッド41Kにより記録されたブラックのドットd1’は、記録ヘッド41Cにより記録されたシアンのドットd1に対し、距離Gだけ主走査方向にずれてしまい、ずれたまま画像記録し続ける。
【0054】
そこで、本実施形態では、図6(b)に示すように、複数の記録ヘッド41のノズル43の主走査方向の位置を、このずれ量を打ち消すようにオフセットして、ドットずれが発生しないようにする。このオフセットの設定について、以下に説明する。
【0055】
図6(b)に示すように、記録ヘッド41C、41Kは、対応ノズルの位置が主走査方向に距離Gだけずれた位置で、ヘッドホルダ42に固定保持されている。前述したように、記録ヘッド41は、各記録ヘッド41の対応ノズルが記録媒体2に形成するドットが搬送方向に距離Fだけ離れて形成される位置に配置されており、オフセット量である距離Gは、記録媒体2が距離Fだけ搬送されたときに、ヘッドホルダ42が主走査方向に移動する距離として設定する。
【0056】
つまり、ヘッドホルダ42に取り付けられた各記録ヘッド41のノズル43の主走査方向の位置が、
主走査方向移動機構の移動速度×(搬送方向の記録ヘッド間の距離F/ドラムによる記録媒体の搬送速度)
で表される距離Gの分だけオフセットした位置となるように、記録ヘッド41をヘッドホルダ42に取り付ける。つまり、本実施形態では、搬送方向上流に位置する記録ヘッド41(41C)に対し、搬送方向下流側に位置する記録ヘッド41(41K)の主走査方向におけるノズル43の位置が、予め所定のオフセット量だけ、主走査方向における主走査方向移動機構100によるヘッドホルダ42の移動方向と反対方向にずらされている。
【0057】
本実施形態のラインプリンタ1により画像記録を行うと、まず、搬送方向上流側に位置するシアンの記録ヘッド41Cが、記録媒体2にシアンのドットd1を始めとしドットを順次記録する。続いて、ブラックの記録ヘッド41Kが、シアンのドットd1と搬送方向の同じ位置を始めとしてブラックのドットd1’を記録しようとする。しかし、このとき既にドラム33は距離Fだけ搬送方向に回転移動しており、記録ヘッド41C、41Kを保持しているヘッドホルダ42も、距離Gだけ矢印Dに示す主走査方向に移動している。
【0058】
しかし、前記シアンのドットd1を吐出したノズル43に対応するブラックの記録ヘッド41Kのノズル43は、距離Gだけ記録ヘッド41Cに対しオフセットした位置に設けられているので、記録ヘッド41Kにより記録されたブラックのドットd1’は、シアンの記録ヘッド41Cにより記録されたシアンのドットd1に対し、精度よく重なるドットとなり、重なった状態で画像記録し続ける。この結果、図6(a)に示すようなドットのずれがなく、ドットの重なりの精度のよい高品質な画像記録を行うことができる。
【0059】
記録ヘッド41M、41Yでも同様の動作を、さらに、図5(a)乃至(d)を参照して説明した複数回の画像記録動作を行うことにより、1枚の記録媒体2への画像記録が完了する。その後、ドラム33から記録媒体2が剥がされる。
【0060】
このとき、次の記録媒体2に対して4色のうち最初に形成されるドットであるシアンのドットd1を図5(a)に示される最初の位置に記録するために、主走査方向移動機構100のカム104を画像記録開始時の回転位置に戻すようにカムモータ103を駆動させる。これにより、ヘッドホルダ42を画像記録時とは逆方向に移動させて、主走査方向の初期位置(図5(a))に移動させる。そして、新しい記録媒体2がドラム33に密着保持され、次の記録媒体2に対する画像記録が行われる。
【0061】
このように、本実施形態では、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yのうち、搬送方向最上流側の記録ヘッド41Cのノズル43に対して、他の記録ヘッド41K、41M、41Yの各々のノズル43が、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されていることにより、記録ヘッド41及びヘッドホルダ42が連続的に移動されながら画像記録がなされるラインプリンタ1であっても、ドットの重なり精度を高めることができる。
【0062】
主走査方向移動機構100によるヘッドホルダ42の主走査方向の移動速度は、ノズルピッチCを1枚の記録媒体2の画像記録におけるパス数Nで割った値(距離X)と、ドラム33の1回転に必要な時間、つまりドラム33の外周長とドラム33の外周の周速とによって表すことができる。
主走査方向移動機構の速度=(ノズルピッチC/パス数N)/(ドラム外周長/ドラム周速)
また、各記録ヘッド41の主走査方向におけるノズル43のオフセット量は、各記録ヘッド41の搬送方向の距離間隔をドラム33の外周長の1/Mとし、パス数をNとした場合、
オフセット量=ノズルピッチC/M/パス数N
となり、例えば、各色の記録ヘッドの搬送方向の間隔をドラム外周長の1/12(ドラム33の中心角で表すと30°)として、パス数Nを4回とすると、1つの記録ヘッド41は、搬送方向上流側の記録ヘッドの位置からノズルピッチCの1/48の距離だけオフセットしていればよい。
【0063】
また、記録媒体2の幅に満たない記録領域を有する短尺記録ヘッド41を複数用いて、記録媒体の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドとした場合も、同様に、千鳥状に配置した隣り合う記録ヘッドの搬送方向におけるノズル43の距離をFとし、距離Gだけノズル43の搬送方向の位置をずらすことにより、長尺の記録ヘッド41と同様に、ドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度のよい高品質な画像記録を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、プラテンであるドラム33に1枚の記録媒体2を保持し画像記録を行う構成としたが、これに限らず、複数枚、例えば2枚の記録媒体2を同時に保持し画像記録を行っても、同様の効果が得られる。
【0065】
以下、本発明の第2乃至第5の実施形態について説明する。第2乃至第5の実施形態では、図1に示すラインプリンタ1の基本構成は、第1の実施の形態と同様であるため、第1の実施形態と同様の構成部材には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施形態における画像記録部40及び主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yを概略的に示す上面図である。
第1の実施形態では、1つのヘッドホルダ42に4つの記録ヘッド41を搭載し、各記録ヘッド41を同時に主走査方向に移動させる構成であったが、第2の実施形態では、図7に示すように、4つの記録ヘッド41が独立して主走査方向に移動する構成である。
【0067】
上述した第1の実施形態では、パス数をN=4としたが、例えば、主走査方向のドット密度が比較的低く、1枚の記録媒体2に要する画像記録の時間を短縮したい場合は、Nを小さくすればよい。つまり、例えば、N=2とし、ドラムが1回転する間に、ノズルピッチCを2分割したC/2だけヘッドホルダを移動させて、ドラムが2回転する間に、ノズルピッチCだけ主走査方向に連続的に移動させながら画像記録を行う。この場合、N=4のときよりもノズルピッチC間の主走査方向の画像記録のドット密度は低くなるが、1枚の記録媒体2の画像記録をドラム2回転で行うため、画像記録に要する時間は短縮される。
本実施形態は、例えば、パス数Nを可変設定可能なラインプリンタに適用される。
【0068】
本実施形態では、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yが、それぞれ、ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yに保持されている。各ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yには、第1の実施形態と同様のヘッドホルダ移動機構としての主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yが設けられており、各ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yを主走査方向に所望の動作で連続的に移動させる。
【0069】
本実施形態では、各主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yは、同時に動かすのではなく、記録媒体2が各記録ヘッド41C、41K、41M、41Yのノズル43の直下に搬送されたときに動き始める。つまり、搬送方向上流側に位置する記録ヘッド41Cが主走査方向移動機構100Cにより主走査方向への移動を開始し、主走査方向移動機構100Cにより上流側に位置する記録ヘッド41Cが主走査方向に距離Gだけ移動したと同時に、主走査方向移動機構100Kにより下流側に位置する記録ヘッド41Kの主走査方向への移動を開始する。記録ヘッド41M、41Yも同様に順次主走査方向への移動を開始する。これにより、第1の実施形態における距離Gだけオフセット量を設定することと同じ効果を得る。
【0070】
本実施形態によれば、オフセット量を可変とすることができ、例えば、パス数Nが異なる、つまり、主走査方向のドット密度が高く1枚の記録媒体2への画像記録に要する時間が長い場合と、主走査方向のドット密度が低く1枚の記録媒体2への画像記録に要する時間が短い場合と、のような、例えば、パス数Nが異なることによりドットがずれる距離Gが変わる場合でも、オフセット量を可変設定することができる。これにより、各色のドットの重ね合わせのドットずれを起こすことなく、多種のニーズに対応した画像記録を行うことができる。
【0071】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、図8(a)並びに(b)を参照して説明する。
図8(a)並びに(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。
【0072】
本実施形態において、画像記録部40及び主走査方向移動機構100の構成は、第2の実施形態と同じである。以下では、本実施形態の画像記録動作について説明する。
第1並びに第2の実施形態では、主走査方向移動機構100による主走査方向の往復移動のうち、ヘッドホルダ42が一方向に移動(往動)するときにのみ画像記録を行い、画像記録が終了した記録媒体2がドラム33から剥され、次の記録媒体2の画像記録を始めるまでに、前記一方向に対して逆方向に移動(復動)し元の位置にヘッドホルダ42を戻していたが、本実施形態では、主走査方向移動機構100による主走査方向の往復移動のうち、一方向に移動(往動)しながら画像記録を行い、画像記録が終了した後に、ヘッドホルダ42を元の位置に戻さず、次の記録媒体2の画像記録を始めるときに、前記一方向に対して逆方向に移動(復動)しながら次の記録媒体2への画像記録を行うような場合において、ドットの重ね合わせのずれを防止する。
【0073】
まず、第2の実施形態と同様に、複数の記録ヘッド41は、各々の主走査方向移動機構100(100C、100K、100M、100Y)によりオフセット量として距離Gを保つように順次移動しつつ、図8(a)に示すように、記録媒体2への画像記録を行う。そして、記録媒体2への画像記録が終了しドラム33から記録媒体2が剥され、次の記録媒体2がドラム33に保持され画像記録を開始する際は、複数のヘッドホルダ42を元の位置に戻さず、複数の記録ヘッド41は、各々の主走査方向移動機構100(100C、100K、100M、100Y)によりオフセット量として距離Gを保つように順次主走査方向の逆方向に移動しつつ、図8(b)に示すように、記録媒体2への画像記録を行う。
【0074】
本実施形態によれば、ヘッドホルダ42の復路時に画像記録を行う場合においても、ドットの重ね合わせのずれを防止し、高品質な画像記録を行うことができる。
【0075】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について、図9を参照して説明する。
図9は、第4の実施形態における画像記録部40及び主走査方向移動機構100、100K、100M、100Yを概略的に示す上面図である。
通常、パス数Nは、ユーザが必要に応じて設定する可変のパラメータである。このため、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、そのパラメータの設定に応じて、オフセット量が任意に変化する機構を設けている。
【0076】
本実施形態では、ヘッドホルダは、搬送方向最上流側に位置しているシアンの記録ヘッド41Cを保持している第1のヘッドホルダ45と、第1のヘッドホルダ45に搭載され、記録ヘッド41K、41M、41Yをそれぞれ保持している第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yと、からなる2重構造を有している。
【0077】
主走査方向移動機構100は、第1の実施形態と同様の構成であり、第1のヘッドホルダ45を、設定されたパス数Nに応じて主走査方向に連続的に移動させる。また、第1のヘッドホルダ45に搭載された記録ヘッド41K、41M、41Yの主走査方向の一端側には、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yがそれぞれ設けられている。これらオフセット位置決め機構110K、110M、110Yは、主走査方向移動機構100と同様の構成であり、カムを所定回転位置に位置決めすることにより、それぞれ対応する第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yを、設定したパス数Nにより可変する距離Gに対応したオフセット量の分だけ移動位置決めさせる。
【0078】
なお、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yは、第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yを所定位置に移動位置決めできればよい。例えば、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yのカムは、連続的な半径を有する必要はなく、決められたオフセット量に対応した複数の半径を有する構成であればよく、また、リニアアクチュエータやその他の手段も適宜採用することができる。
【0079】
本実施形態では、搬送方向最上流側である記録ヘッド41Cを基準として記録ヘッド41K、41M、41Yのオフセット位置決めをする構成としているため、記録ヘッド41Cには、オフセット位置決め機構が設けられていない。このような構成であっても、記録ヘッド41Cが、記録ヘッド41K、41M、41Yに対し、必要なオフセット量の設定をオフセット用カムにもたせることにより、任意のオフセット量を実現することができる。
【0080】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態について、図10並びに図11を参照して説明する。
図10は、第5の実施形態における画像記録部40、主走査方向移動機構100及びオフセット位置決め機構120を概略的に示す上面図である。また、図11(a)並びに(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。
本実施形態では、ヘッドホルダを回動させる機構により、オフセット量を確保する。
【0081】
本実施形態では、ヘッドホルダは、第1のヘッドホルダ47と、第1のヘッドホルダ47に搭載され、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yを保持している第2のヘッドホルダ48と、からなる2重構造を有している。
第2のヘッドホルダ48は、第1のヘッドホルダ47の主走査方向の一端側に設けられた基準軸49を回動中心とし図中矢印Hに示す方向に回動可能に、第1のヘッドホルダ47に保持される。
【0082】
主走査方向移動機構100は、第1の実施形態と同様の構成であり、第1のヘッドホルダ47を、設定されたパス数Nに応じて主走査方向に連続的に移動させる。また、第1のヘッドホルダ47に搭載された第2のヘッドホルダ48は、第1のヘッドホルダ47に設けられた基準軸49を回動中心として矢印Hに示す方向に回動可能に、第1のヘッドホルダ47に保持されている。
【0083】
第2のヘッドホルダ48の搬送方向の一端側には、オフセット位置決め機構120が設けられている。オフセット位置決め機構120は、第4の実施形態におけるオフセット位置決め機構110K、110M、110Yと同様の構成であり、カムを所定の回動位置に位置決めすることにより、第1のヘッドホルダ47に対し第2のヘッドホルダ48を所定の回動角度だけ回動させて位置決めする。この回動角度は、各記録ヘッド41のノズル43の位置が、主走査方向に距離Gだけずれる角度である。この回動角度によって、距離Gに応じた所望のオフセット量の選択設定が実現される。
【0084】
なお、オフセット位置決め機構120は、第2のヘッドホルダ48を所定の位置に回動させて位置決めすることが可能な機構であればよい。例えば、オフセット位置決め機構120のカムは、連続的な半径を有する必要はなく、決められた回動角度に対応した複数の半径を有する構成であればよく、また、リニアアクチュエータやその他の手段を適宜採用することができる。
【0085】
第2のヘッドホルダ48を回動させる回動角度は、設定したパス数Nに連動して変化させる。つまり、図11(a)並びに(b)における1つのノズル43が記録媒体2上に描く直線と搬送方向とがなす角度と同じ角度だけ、第2のヘッドホルダ48を主走査方向に対して傾けることにより、可変する距離Gに応じた任意のオフセット量を実現する。
【0086】
本実施形態のような構成であっても、所望のオフセット量を設定し、ドットのずれを防止した高品質な画像記録を行うことができる。
【0087】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな改良並びに変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…ラインプリンタ、2…記録媒体、3…筐体、4…制御部、10…記録媒体カートリッジ、20…記録媒体供給部、30…搬送機構、31…案内板、32…帯電ローラ、33…ドラム、34…除電ローラ、35…剥離爪、40…画像記録部、41…記録ヘッド、42…ヘッドホルダ、43…ノズル、44…ノズル面、45…第1のヘッドホルダ、46…第2のヘッドホルダ、47…第1のヘッドホルダ、48…第2のヘッドホルダ、49…基準軸、50…記録媒体排出部、60…インクボトル、100…主走査方向移動機構、101…コロ、101a…コロ軸、102…コロベース、103…カムモータ、103a…モータ軸、104…カム、110…オフセット位置決め機構、111…オフセット用カム、120…オフセット位置決め機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する記録ヘッドを移動させながら画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像記録装置として、記録ヘッドの複数のノズルからインク滴を吐出し、吐出したインク滴が記録媒体に着弾して画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタの中には、複数のノズルを記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に列状に配置した1つ又は複数の記録ヘッドを記録媒体の幅よりも長く設けた所謂ラインヘッドを構成すると共に、例えば、インク色毎のラインヘッド等、複数のラインヘッドを記録媒体の搬送方向に並び配置し、搬送される記録媒体に前記ノズルからインクを吐出して記録を行うラインプリンタがある。
【0003】
このようなラインプリンタでは、ラインヘッドを構成している各記録ヘッドに配列されたノズルのノズルピッチ(隣り合うノズル間の主走査方向の間隔)が、そのまま主走査方向の記録ドット密度となる。このため、高画質化を実現するためには、ノズルピッチの微細化を行う必要があり、技術的、コスト的困難を伴う。
【0004】
この解決策として、例えば、特許文献1には、記録媒体を搬送保持するドラムと、主走査方向に列をなして配置された複数のノズルを有する複数のラインヘッドと、各ノズルがドラムと対向する位置にこれらラインヘッドを保持すると共に、各ラインヘッドをドラムの回転中心に対し放射状に保持するヘッドホルダと、ヘッドホルダを記録媒体の主走査方向(ノズル列方向)に往復移動させる往復移動手段と、を有する画像記録装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の画像記録装置では、ドラムを所定の定速で複数回だけ回転させる間に、ヘッドホルダをノズルピッチ分だけ連続的に定速移動させながら、定速搬送される記録媒体の搬送方向における所望の記録密度のタイミングでインクを吐出して、記録媒体に対しスパイラル状に画像記録を行う。これにより、主走査方向のノズルピッチ間の隙間を補完し、主走査方向の記録媒体への記録ドット密度を増やして、高画質化を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−138516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような画像記録装置では、複数のラインヘッド、例えば、各色のラインヘッドにより複数の色のインクを吐出して重ね合わせることにより、カラー画像を記録する。このようなカラー画像や1色のインクの重ね合わせによる濃淡により画像を記録する場合、記録媒体に記録される各色のドット位置がずれると、各色のドットがうまく重ならず、得られる画像の品質が低下してしまう。
【0008】
上述の特許文献1に記載の画像記録装置では、各々のラインヘッドのノズルの主走査方向の位置が同一位置となるように、各ラインヘッドが1つのヘッドホルダに固定され、このヘッドホルダが主走査方向に移動可能な構成となっている。このような構成では、搬送方向の各ラインヘッド間に距離があり、搬送方向の第1の列のラインヘッドによる画像記録がなされた後、記録媒体が次の第2の列のラインヘッドの直下まで搬送される。この第2の列のラインヘッドにより画像記録がなされる際、ヘッドホルダは既に主走査方向に移動しており、この結果、第2の列のラインヘッドにより形成されたドットは、この移動量だけ、第1の列のラインヘッドにより形成されたドットに対して重ならず、主走査方向にずれてしまう。このため、高品質な画像が得られない。
【0009】
また、特許文献1に記載の画像記録装置において、各ラインヘッドは、記録媒体の幅に満たない記録領域を有する複数の短尺記録ヘッドを、記録媒体の幅方向(主走査方向)に沿って千鳥状に配列したラインヘッドである。このような千鳥状に配列された記録ヘッドの各々は、主走査方向における隣り合うノズルの間隔が、各記録ヘッドにおけるノズルピッチと同じ距離だけ離した位置になるように、位置決めされる。
【0010】
この場合も、主走査方向に隣り合う記録ヘッドには、搬送方向に位置ずれがあり、千鳥状に配列されたラインヘッドの搬送方向の第1の列の記録ヘッドが画像記録した後、記録媒体が次の第2の列の記録ヘッドの直下まで搬送される。この第2の列の記録ヘッドにより画像記録がなされる際、本来であれば主走査方向に隣り合う記録ヘッドのノズルは、ノズルピッチだけ離れたドットを記録媒体に着弾させる必要があるが、ヘッドホルダは既に主走査方向に移動している。この結果、第2の列の記録ヘッドにより形成されたドットは、この移動量だけ、主走査方向にずれてしまう。このため、やはり、画像の品質は低下する。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、複数の記録ヘッドの各々から吐出されるドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度が向上した高品質な画像を記録する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態は、記録媒体を保持搬送するプラテンと、前記プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、前記記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、前記複数の記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記搬送方向と直交する主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、を具備し、前記プラテンにより保持搬送される前記記録媒体を、前記記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、前記ヘッド移動機構により、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であって、前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向最上流側の記録ヘッドのノズルに対して、他の記録ヘッドの各々のノズルが、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されている画像記録装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造で、複数の記録ヘッドの各々から吐出されるドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度が向上した高品質な画像を記録する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のラインプリンタを概略的に示す正面図である。
【図2】図2は、搬送機構のドラムと画像記録部との構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、ノズル面の構成を概略的に示す上面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図5】図5(a)乃至(d)は、画像記録部による画像記録を概念的に示す図である。
【図6】図6(a)並びに(b)は、画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【図7】図7は、第2の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図8】図8(a)並びに(b)は、第3の実施形態における画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【図9】図9は、第4の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図10】図10は、第5の実施形態における主走査方向移動機構の構成を示す上面図である。
【図11】図11(a)並びに(b)は、第5の実施形態における画像記録部による画像記録を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置について、図1乃至図6を参照して説明する。本実施形態では、複数の記録ヘッドのそれぞれから異なる色のインクを吐出して、移動する記録媒体にカラー画像を記録するラインプリンタを一例として説明する。
【0016】
図1は、ラインプリンタ1の構成を概略的に示す正面図である。
ラインプリンタ1は、複数の記録媒体2が装填された記録媒体カートリッジ10と、記録媒体カートリッジ10から記録媒体2を取り出す記録媒体供給部20と、取り出された記録媒体2を搬送する搬送機構30と、複数の記録ヘッド41を有し、搬送された記録媒体2にこれら記録ヘッド41からインクを吐出して画像を記録する画像記録部40と、画像が記録された記録媒体2を排出する記録媒体排出部50と、記録ヘッド41へインク供給するインクボトル60と、を有している。これら構成部は、記録媒体排出部50の一部を除き、筐体3内に収容されている。
【0017】
また、ラインプリンタ1は、パーソナルコンピュータやCPU等の演算処理部を備えた制御部4を有している。制御部4は、必要なプログラムやデータ等を記憶するメモリを有しており、ユーザの指示に従って、搬送機構30による記録媒体搬送動作や画像記録部40による画像記録動作など、ラインプリンタ1全体の動作を制御する。
【0018】
なお、以下では、本発明の要旨に関わるラインプリンタ1の構成のみを説明するが、ラインプリンタ1は、不図示のインク経路、画像記録部移動機構及びクリーニングユニットなど、通常のラインプリンタが備える構成部を有しているものとする。
【0019】
ラインプリンタ1の各構成部の構成について説明する。
記録媒体カートリッジ10は、本実施形態ではラインプリンタ1本体の最下部に配置されている。この記録媒体カートリッジ10には、記録用紙やフィルムなどの記録媒体2が収容されている。
【0020】
記録媒体供給部20は、記録媒体カートリッジ10の近傍に設けられている。この記録媒体供給部20は、記録媒体カートリッジ10に収容された記録媒体2を1枚ずつ取り出すピックアップローラ、取り出された記録媒体2を搬送方向下流側の搬送機構30へと搬送する無端ベルト及びこの無端ベルトが架けられたベルトローラなどの既知の構成を有している。もちろん、ベルトローラを用いないローラのみによる構成であってもよい。なお、図1中の矢印は、記録媒体2の搬送方向を示している。
【0021】
搬送機構30は、記録媒体供給部20から供給された記録媒体2を搬送方向下流側に案内する案内板31と、記録媒体2を帯電させる帯電ローラ32と、記録媒体2を外周面に巻き付けて回転搬送するドラム33と、記録媒体2の電荷を除去する除電ローラ34と、ドラム33の外周面に巻き付けられた記録媒体2を剥がす剥離爪35と、を有している。
【0022】
ドラム33は、例えば、金属製の円筒形状体であり、画像記録部40の直下において記録媒体2を保持搬送するプラテンである。ここでのプラテンとは、平坦な搬送部材のみならず、円筒形の胴体を有するドラム等も含むものとして、広義に解釈する。ドラム33は、その外周面が記録媒体2を密着保持(本実施形態では静電吸着)し、図示しないモータにより回転して、記録媒体2を搬送する。
【0023】
なお、本実施形態では、プラテンとしてドラムを用いているが、これに限らず、複数のローラで弛みなく保持させた無端ベルトにより記録媒体を搬送するベルトタイプのプラテンを用いてもよい。この場合、ファン等により負圧を発生させて小孔が多数の開口された無端ベルトに記録媒体を吸着保持させる。
【0024】
画像記録部40は、複数の記録ヘッド41と、これら記録ヘッド41を保持するヘッドホルダ42と、を有している。画像記録部40の詳細は、後述する。
【0025】
記録媒体排出部50は、搬送機構30の剥離爪35の搬送方向下流側に設けられている。この記録媒体排出部50は、剥離爪35から剥離された記録媒体2を搬送方向下流側へ排出する排出ローラ、排出ローラから記録媒体2を受ける排出トレイなどの既知の構成を有している。
【0026】
インクボトル60は、複数の記録ヘッド41に対応して複数設けられている。これら記録ヘッド41には、不図示のインク経路がそれぞれ接続されており、それぞれのインク経路を介して記録ヘッド41にインクが供給される。
【0027】
次に、ラインプリンタ1による記録媒体2の搬送動作について説明する。
制御部4が外部機器(パソコン等)からの画像記録指令を受けると、記録媒体2が記録媒体カートリッジ10から1枚取り出されて、記録媒体供給部20を通過する。そして、記録媒体供給部20を通過した記録媒体2は、案内板31により搬送方向下流側のドラム33へ搬送される。このとき、帯電ローラ32によって電荷が加えられることにより、記録媒体2がドラム33の外周面に密着保持される。
【0028】
ドラム33の回転により、記録媒体2の搬送方向先端が記録ヘッド41の記録領域(インク吐出領域)の下方に達すると、後述する所定の画像記録動作に則り、記録ヘッド41により記録媒体2にインクが吐出されて、画像が記録される。
【0029】
記録媒体2への画像記録が終了すると、除電ローラ34により記録媒体2の電荷が除去される。そして、電荷が除去された記録媒体2は、剥離爪35によってドラム33から取り除かれる。かくして、画像が記録された記録媒体2は、記録媒体排出部50へ排出される。
【0030】
なお、本実施形態では、記録媒体2の片面に画像記録を行っているが、これに限らず、図示しない既知の記録媒体反転機構を用いて、片面の画像記録が終了しドラム33から記録媒体2が剥がされた後、記録媒体2を反転し、再度ドラム33に吸着させて画像記録を行うことにより、記録媒体2の両面に画像記録を行ってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ドラム33への記録媒体2の吸着手段として帯電ローラ32で発生される静電気力を利用しているが、例えば、ドラム33の外周面に複数の通気孔を設けて、ドラム33内を負圧にして、記録媒体2をドラム33の外周面に吸着させてもよい。
【0032】
次に、画像記録部40の構成について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2は、搬送機構30のドラム33と画像記録部40との構成を概略的に示す図である。
画像記録部40は、複数の記録ヘッド41と、これら記録ヘッド41を保持しているヘッドホルダ42と、を有している。各記録ヘッド41は、ドラム33の外周面に沿い、ノズル面44に列をなして形成(配列)されたノズル43からのインクの吐出方向がドラム33の中心に向かうように放射状に位置付けられている。ヘッドホルダ42は、図2に示すように、これら記録ヘッド41のノズル面44が、ドラム33の円筒形の外周面(記録媒体保持面)に対して所定の距離(ヘッドギャップ)だけ離れ、この外周面に沿うようにして配置している。
【0033】
本実施形態における記録ヘッド41は、記録媒体2の幅以上の1ラインの記録領域(ノズル列長)を有するラインヘッドであるか、記録媒体2の幅に満たない記録領域を有する短尺な記録ヘッドを複数用いて、これら短尺な記録ヘッドを記録媒体2の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドであることができる。以下では、記録媒体2の幅以上の記録領域を有するラインヘッドである記録ヘッド41を例として説明する。
【0034】
記録ヘッド41は、色毎に設けられており、本実施形態では、搬送方向上流側から順に、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の記録ヘッド41C、41K、41M、41Yの4つが搬送方向に並設されている。なお、本実施形態では、画像記録部40は、色を4色として4つの記録ヘッド41を有しているが、これに限らず、例えば、6色の場合は、6つの記録ヘッド41を設けてもよく、また、ある色のみ複数の記録ヘッド41を設けてその他の色は1つの記録ヘッド41をそれぞれ設けてもよい。
【0035】
図3は、図2の矢印Bの方向から見たインク吐出面44を示す図である。
各記録ヘッド41には、ノズル43(43a、43b、43c、…)が、記録媒体2の搬送方向と直交する主走査方向に列状に配置(配列)されている。図3の矢印Eは、記録媒体2の搬送方向であり、また、矢印Dは、主走査方向を示している。ノズル43は、図3に示すように、主走査方向にノズルピッチCだけ離れて規則的に配列されている。
【0036】
また、本実施形態のラインプリンタ1の画像記録部40には、ヘッドホルダ42を主走査方向に移動可能なヘッド移動機構としての主走査方向移動機構100が設けられている。この主走査方向移動機構100について、以下に説明する。
図4は、画像記録部40に設けられた主走査方向移動機構100を概略的に示す上面図である。
【0037】
主走査方向移動機構100は、ヘッドホルダ42の主走査方向の一端側に、コロベース102を介してコロ軸101aに回転自在に保持されたコロ101と、ラインプリンタ1の不図示のフレーム等に取り付けられたカムモータ103と、カムモータ103のモータ軸103aに取り付けられ、コロ101と主走査方向で当接するカム104と、を有している。
【0038】
ヘッドホルダ42は、図示しないスライドレール等により、主走査方向に移動可能に設けられている。また、ヘッドホルダ42は、図示しない付勢手段により、コロ101とカム104が当接するように、主走査方向でカム104側に付勢されている。
【0039】
カム104は、所定の回転角に対し、回転中心からの半径が所定量だけ連続的に長くなる外周を有している。カムモータ103を駆動させてカム104を回転させることにより、ヘッドホルダ42は、主走査方向である図4の矢印Dの方向に所定の距離だけ連続的に移動される。
【0040】
なお、本実施形態では、コロ101をヘッドホルダ42側に、カム104をラインプリンタ1の不図示のフレーム側に設けているが、コロ101をフレーム側に、カム104をヘッドホルダ42側に設けてもよい。
【0041】
また、主走査方向移動機構100は、図4では、偏芯カムであるカム104やカムモータ103などで構成されているが、これに限らず、例えば、ボールねじなどを用いた構成やリニアアクチュエータ等、ヘッドホルダ42が主走査方向に直進移動可能な機構を適宜採用することができる。
【0042】
また、本実施形態では、主走査方向移動機構100によりヘッドホルダ42が主走査方向に移動する構成となっているが、ヘッドホルダ42とドラム33との相対位置が主走査方向に移動すればよく、例えば、主走査方向移動機構100がドラム33に設けられ、固定されたヘッドホルダ42に対しドラム33が主走査方向に移動する構成でも、効果は同じである。
【0043】
次に、画像記録部40の1つの記録ヘッド41Cによる記録媒体2に対する画像記録動作について、図5(a)乃至(d)を参照して説明する。
図5(a)乃至(d)は、1つの記録ヘッド41Cによる画像記録動作を時系列的に示す概念図である。ここでは、1つの記録ヘッド41Cのみを例として挙げるが、記録ヘッド41K、41M、41Yも同様の画像記録動作を行う。なお、図5(a)乃至(d)において、ドラム33及びこのドラム33に保持されている記録媒体2は、ドラム33の外周面を搬送方向に平面に展開した概念図として示しており、ドラム33の図中上下の端部間の距離が、ドラム1周の搬送方向の長さを示している。
【0044】
以下の説明では、解像度を4倍にするように、つまりノズルピッチCで1回画像記録を行った場合に対し主走査方向の記録ドット密度を4倍とした画像を記録するように、ドラム33に記録媒体2を保持しながら画像を記録する。
【0045】
ドラム33が等速で回転する間に、ヘッドホルダ42は主走査方向移動機構100により主走査方向に移動し、ヘッドホルダ42に搭載された記録ヘッド41Cが等速で移動する。そして、ドラム33に密着保持されて搬送された記録媒体2が記録ヘッド41Cの下方を通過したとき(ドラム1回転目)、記録ヘッド41Cのノズル43からインクが吐出され、最初のドットd1より順次記録媒体2に1回目の画像が記録される(図5(a))。
【0046】
ヘッドホルダ42は、主走査方向移動機構100によって、ドラム33が等速で1回転する間に、ノズルピッチCをN分割したC/Nである距離Xだけ、主走査方向である矢印D方向に連続的に移動する。Nは1枚の記録媒体2に対する画像記録の回数であり、ここではN=4である。この移動の間に、記録ヘッド41Cは記録媒体2の搬送方向における所定の搬送量毎にノズル43からインクを吐出し、ドットd1以降のドットを順次記録していく。
【0047】
そして、ヘッドホルダ42が主走査方向に距離Xだけ移動し、記録媒体2が再び記録ヘッド41Cの下方を通過したら(ドラム2回転目)、記録媒体2に2回目の画像が記録される(図5(b))。同様にして、ドラム3回転目には3回目の画像(図5(c))が、ドラム4回転目には4回目の画像(図5(d))が、それぞれ記録される。
【0048】
このように、1枚の記録媒体2をドラム33に保持した状態でドラム33をN回だけ回転させ、この記録媒体2が記録ヘッド41の直下をN回通過(パス)する間に、ヘッドホルダ42をノズルピッチCだけ主走査方向に連続的に移動させながら、記録媒体2に画像を記録する。かくして、1枚の記録媒体2に対する画像記録が完了する。
【0049】
このような画像記録を行うことにより、ノズルピッチC間の主走査方向の画像記録のドット密度を補完することが可能となる。つまり、記録媒体2上において、主走査方向のノズルピッチC間にN−1個分のドットを補完形成することができ、高密度な画像記録を行うことができる。
【0050】
次に、本発明のラインプリンタ1において、主走査方向移動機構100により、各記録ヘッド41を搭載したヘッドホルダ42を主走査方向にずらす動作について、図6(a)並びに図6(b)を参照して説明する。
図6(a)は、一般的なラインプリンタの2つの記録ヘッド、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示しており、また、図6(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。図6(a)並びに(b)は、2色の記録ヘッド41C、41Kのみを示しているが、各色の記録ヘッド41も同様の構成となる。
【0051】
例えば、カラー画像を形成するためには、記録媒体2に対し、各色のインクのドットを精度よく重ね合わせる必要がある。ドットの重ね位置がずれると、カラー画像の色再現が崩れてしまう。
【0052】
図6(a)に示すように、一般的なラインプリンタでは、各色の記録ヘッドは主走査方向にずれていない。つまり、シアンの記録ヘッド41Cの1つのノズル43により形成されたドットと、ブラックの記録ヘッド41Kの1つのノズル43により形成されたドットとが精度よく重なることによりカラー画像を形成する場合に、重なり合うべきドットを形成する記録ヘッド41C、41Kのノズル43を対応ノズルと称すると、これら対応ノズルは、主走査方向に同じ位置に配置されている。また、搬送方向に関して、記録ヘッド41Cと記録ヘッド41Kとは、対応ノズルにより記録媒体2にインクを同時に吐出したときに形成されるドットが記録媒体2の搬送方向に距離Fだけ離れて形成される位置に配置されている。
【0053】
このようなラインプリンタにより画像記録を行うと、まず、搬送方向上流側に位置するシアンの記録ヘッド41Cが、記録媒体2にシアンのドットd1を記録する。続いて、ブラックの記録ヘッド41Kが、シアンのドットd1と同じ位置を始めとしてブラックのドットd1’を記録しようとする。しかし、このとき既にドラム33は距離Fだけ搬送方向に回転移動している。このため、記録ヘッド41C、41Kを保持しているヘッドホルダ42は、主走査方向移動機構100により距離Gだけ矢印Dに示す主走査方向に移動しており、記録ヘッド41Kも主走査方向に距離Gだけ移動している。従って、記録ヘッド41Kにより記録されたブラックのドットd1’は、記録ヘッド41Cにより記録されたシアンのドットd1に対し、距離Gだけ主走査方向にずれてしまい、ずれたまま画像記録し続ける。
【0054】
そこで、本実施形態では、図6(b)に示すように、複数の記録ヘッド41のノズル43の主走査方向の位置を、このずれ量を打ち消すようにオフセットして、ドットずれが発生しないようにする。このオフセットの設定について、以下に説明する。
【0055】
図6(b)に示すように、記録ヘッド41C、41Kは、対応ノズルの位置が主走査方向に距離Gだけずれた位置で、ヘッドホルダ42に固定保持されている。前述したように、記録ヘッド41は、各記録ヘッド41の対応ノズルが記録媒体2に形成するドットが搬送方向に距離Fだけ離れて形成される位置に配置されており、オフセット量である距離Gは、記録媒体2が距離Fだけ搬送されたときに、ヘッドホルダ42が主走査方向に移動する距離として設定する。
【0056】
つまり、ヘッドホルダ42に取り付けられた各記録ヘッド41のノズル43の主走査方向の位置が、
主走査方向移動機構の移動速度×(搬送方向の記録ヘッド間の距離F/ドラムによる記録媒体の搬送速度)
で表される距離Gの分だけオフセットした位置となるように、記録ヘッド41をヘッドホルダ42に取り付ける。つまり、本実施形態では、搬送方向上流に位置する記録ヘッド41(41C)に対し、搬送方向下流側に位置する記録ヘッド41(41K)の主走査方向におけるノズル43の位置が、予め所定のオフセット量だけ、主走査方向における主走査方向移動機構100によるヘッドホルダ42の移動方向と反対方向にずらされている。
【0057】
本実施形態のラインプリンタ1により画像記録を行うと、まず、搬送方向上流側に位置するシアンの記録ヘッド41Cが、記録媒体2にシアンのドットd1を始めとしドットを順次記録する。続いて、ブラックの記録ヘッド41Kが、シアンのドットd1と搬送方向の同じ位置を始めとしてブラックのドットd1’を記録しようとする。しかし、このとき既にドラム33は距離Fだけ搬送方向に回転移動しており、記録ヘッド41C、41Kを保持しているヘッドホルダ42も、距離Gだけ矢印Dに示す主走査方向に移動している。
【0058】
しかし、前記シアンのドットd1を吐出したノズル43に対応するブラックの記録ヘッド41Kのノズル43は、距離Gだけ記録ヘッド41Cに対しオフセットした位置に設けられているので、記録ヘッド41Kにより記録されたブラックのドットd1’は、シアンの記録ヘッド41Cにより記録されたシアンのドットd1に対し、精度よく重なるドットとなり、重なった状態で画像記録し続ける。この結果、図6(a)に示すようなドットのずれがなく、ドットの重なりの精度のよい高品質な画像記録を行うことができる。
【0059】
記録ヘッド41M、41Yでも同様の動作を、さらに、図5(a)乃至(d)を参照して説明した複数回の画像記録動作を行うことにより、1枚の記録媒体2への画像記録が完了する。その後、ドラム33から記録媒体2が剥がされる。
【0060】
このとき、次の記録媒体2に対して4色のうち最初に形成されるドットであるシアンのドットd1を図5(a)に示される最初の位置に記録するために、主走査方向移動機構100のカム104を画像記録開始時の回転位置に戻すようにカムモータ103を駆動させる。これにより、ヘッドホルダ42を画像記録時とは逆方向に移動させて、主走査方向の初期位置(図5(a))に移動させる。そして、新しい記録媒体2がドラム33に密着保持され、次の記録媒体2に対する画像記録が行われる。
【0061】
このように、本実施形態では、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yのうち、搬送方向最上流側の記録ヘッド41Cのノズル43に対して、他の記録ヘッド41K、41M、41Yの各々のノズル43が、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されていることにより、記録ヘッド41及びヘッドホルダ42が連続的に移動されながら画像記録がなされるラインプリンタ1であっても、ドットの重なり精度を高めることができる。
【0062】
主走査方向移動機構100によるヘッドホルダ42の主走査方向の移動速度は、ノズルピッチCを1枚の記録媒体2の画像記録におけるパス数Nで割った値(距離X)と、ドラム33の1回転に必要な時間、つまりドラム33の外周長とドラム33の外周の周速とによって表すことができる。
主走査方向移動機構の速度=(ノズルピッチC/パス数N)/(ドラム外周長/ドラム周速)
また、各記録ヘッド41の主走査方向におけるノズル43のオフセット量は、各記録ヘッド41の搬送方向の距離間隔をドラム33の外周長の1/Mとし、パス数をNとした場合、
オフセット量=ノズルピッチC/M/パス数N
となり、例えば、各色の記録ヘッドの搬送方向の間隔をドラム外周長の1/12(ドラム33の中心角で表すと30°)として、パス数Nを4回とすると、1つの記録ヘッド41は、搬送方向上流側の記録ヘッドの位置からノズルピッチCの1/48の距離だけオフセットしていればよい。
【0063】
また、記録媒体2の幅に満たない記録領域を有する短尺記録ヘッド41を複数用いて、記録媒体の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドとした場合も、同様に、千鳥状に配置した隣り合う記録ヘッドの搬送方向におけるノズル43の距離をFとし、距離Gだけノズル43の搬送方向の位置をずらすことにより、長尺の記録ヘッド41と同様に、ドットの主走査方向のずれがなく、ドットの重なりの精度のよい高品質な画像記録を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、プラテンであるドラム33に1枚の記録媒体2を保持し画像記録を行う構成としたが、これに限らず、複数枚、例えば2枚の記録媒体2を同時に保持し画像記録を行っても、同様の効果が得られる。
【0065】
以下、本発明の第2乃至第5の実施形態について説明する。第2乃至第5の実施形態では、図1に示すラインプリンタ1の基本構成は、第1の実施の形態と同様であるため、第1の実施形態と同様の構成部材には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施形態における画像記録部40及び主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yを概略的に示す上面図である。
第1の実施形態では、1つのヘッドホルダ42に4つの記録ヘッド41を搭載し、各記録ヘッド41を同時に主走査方向に移動させる構成であったが、第2の実施形態では、図7に示すように、4つの記録ヘッド41が独立して主走査方向に移動する構成である。
【0067】
上述した第1の実施形態では、パス数をN=4としたが、例えば、主走査方向のドット密度が比較的低く、1枚の記録媒体2に要する画像記録の時間を短縮したい場合は、Nを小さくすればよい。つまり、例えば、N=2とし、ドラムが1回転する間に、ノズルピッチCを2分割したC/2だけヘッドホルダを移動させて、ドラムが2回転する間に、ノズルピッチCだけ主走査方向に連続的に移動させながら画像記録を行う。この場合、N=4のときよりもノズルピッチC間の主走査方向の画像記録のドット密度は低くなるが、1枚の記録媒体2の画像記録をドラム2回転で行うため、画像記録に要する時間は短縮される。
本実施形態は、例えば、パス数Nを可変設定可能なラインプリンタに適用される。
【0068】
本実施形態では、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yが、それぞれ、ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yに保持されている。各ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yには、第1の実施形態と同様のヘッドホルダ移動機構としての主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yが設けられており、各ヘッドホルダ42C、42K、42M、42Yを主走査方向に所望の動作で連続的に移動させる。
【0069】
本実施形態では、各主走査方向移動機構100C、100K、100M、100Yは、同時に動かすのではなく、記録媒体2が各記録ヘッド41C、41K、41M、41Yのノズル43の直下に搬送されたときに動き始める。つまり、搬送方向上流側に位置する記録ヘッド41Cが主走査方向移動機構100Cにより主走査方向への移動を開始し、主走査方向移動機構100Cにより上流側に位置する記録ヘッド41Cが主走査方向に距離Gだけ移動したと同時に、主走査方向移動機構100Kにより下流側に位置する記録ヘッド41Kの主走査方向への移動を開始する。記録ヘッド41M、41Yも同様に順次主走査方向への移動を開始する。これにより、第1の実施形態における距離Gだけオフセット量を設定することと同じ効果を得る。
【0070】
本実施形態によれば、オフセット量を可変とすることができ、例えば、パス数Nが異なる、つまり、主走査方向のドット密度が高く1枚の記録媒体2への画像記録に要する時間が長い場合と、主走査方向のドット密度が低く1枚の記録媒体2への画像記録に要する時間が短い場合と、のような、例えば、パス数Nが異なることによりドットがずれる距離Gが変わる場合でも、オフセット量を可変設定することができる。これにより、各色のドットの重ね合わせのドットずれを起こすことなく、多種のニーズに対応した画像記録を行うことができる。
【0071】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、図8(a)並びに(b)を参照して説明する。
図8(a)並びに(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。
【0072】
本実施形態において、画像記録部40及び主走査方向移動機構100の構成は、第2の実施形態と同じである。以下では、本実施形態の画像記録動作について説明する。
第1並びに第2の実施形態では、主走査方向移動機構100による主走査方向の往復移動のうち、ヘッドホルダ42が一方向に移動(往動)するときにのみ画像記録を行い、画像記録が終了した記録媒体2がドラム33から剥され、次の記録媒体2の画像記録を始めるまでに、前記一方向に対して逆方向に移動(復動)し元の位置にヘッドホルダ42を戻していたが、本実施形態では、主走査方向移動機構100による主走査方向の往復移動のうち、一方向に移動(往動)しながら画像記録を行い、画像記録が終了した後に、ヘッドホルダ42を元の位置に戻さず、次の記録媒体2の画像記録を始めるときに、前記一方向に対して逆方向に移動(復動)しながら次の記録媒体2への画像記録を行うような場合において、ドットの重ね合わせのずれを防止する。
【0073】
まず、第2の実施形態と同様に、複数の記録ヘッド41は、各々の主走査方向移動機構100(100C、100K、100M、100Y)によりオフセット量として距離Gを保つように順次移動しつつ、図8(a)に示すように、記録媒体2への画像記録を行う。そして、記録媒体2への画像記録が終了しドラム33から記録媒体2が剥され、次の記録媒体2がドラム33に保持され画像記録を開始する際は、複数のヘッドホルダ42を元の位置に戻さず、複数の記録ヘッド41は、各々の主走査方向移動機構100(100C、100K、100M、100Y)によりオフセット量として距離Gを保つように順次主走査方向の逆方向に移動しつつ、図8(b)に示すように、記録媒体2への画像記録を行う。
【0074】
本実施形態によれば、ヘッドホルダ42の復路時に画像記録を行う場合においても、ドットの重ね合わせのずれを防止し、高品質な画像記録を行うことができる。
【0075】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について、図9を参照して説明する。
図9は、第4の実施形態における画像記録部40及び主走査方向移動機構100、100K、100M、100Yを概略的に示す上面図である。
通常、パス数Nは、ユーザが必要に応じて設定する可変のパラメータである。このため、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、そのパラメータの設定に応じて、オフセット量が任意に変化する機構を設けている。
【0076】
本実施形態では、ヘッドホルダは、搬送方向最上流側に位置しているシアンの記録ヘッド41Cを保持している第1のヘッドホルダ45と、第1のヘッドホルダ45に搭載され、記録ヘッド41K、41M、41Yをそれぞれ保持している第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yと、からなる2重構造を有している。
【0077】
主走査方向移動機構100は、第1の実施形態と同様の構成であり、第1のヘッドホルダ45を、設定されたパス数Nに応じて主走査方向に連続的に移動させる。また、第1のヘッドホルダ45に搭載された記録ヘッド41K、41M、41Yの主走査方向の一端側には、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yがそれぞれ設けられている。これらオフセット位置決め機構110K、110M、110Yは、主走査方向移動機構100と同様の構成であり、カムを所定回転位置に位置決めすることにより、それぞれ対応する第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yを、設定したパス数Nにより可変する距離Gに対応したオフセット量の分だけ移動位置決めさせる。
【0078】
なお、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yは、第2のヘッドホルダ46K、46M、46Yを所定位置に移動位置決めできればよい。例えば、オフセット位置決め機構110K、110M、110Yのカムは、連続的な半径を有する必要はなく、決められたオフセット量に対応した複数の半径を有する構成であればよく、また、リニアアクチュエータやその他の手段も適宜採用することができる。
【0079】
本実施形態では、搬送方向最上流側である記録ヘッド41Cを基準として記録ヘッド41K、41M、41Yのオフセット位置決めをする構成としているため、記録ヘッド41Cには、オフセット位置決め機構が設けられていない。このような構成であっても、記録ヘッド41Cが、記録ヘッド41K、41M、41Yに対し、必要なオフセット量の設定をオフセット用カムにもたせることにより、任意のオフセット量を実現することができる。
【0080】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態について、図10並びに図11を参照して説明する。
図10は、第5の実施形態における画像記録部40、主走査方向移動機構100及びオフセット位置決め機構120を概略的に示す上面図である。また、図11(a)並びに(b)は、本実施形態のラインプリンタ1の記録ヘッド41C、41K、及びこれら記録ヘッドにより記録されるドットを示している。
本実施形態では、ヘッドホルダを回動させる機構により、オフセット量を確保する。
【0081】
本実施形態では、ヘッドホルダは、第1のヘッドホルダ47と、第1のヘッドホルダ47に搭載され、記録ヘッド41C、41K、41M、41Yを保持している第2のヘッドホルダ48と、からなる2重構造を有している。
第2のヘッドホルダ48は、第1のヘッドホルダ47の主走査方向の一端側に設けられた基準軸49を回動中心とし図中矢印Hに示す方向に回動可能に、第1のヘッドホルダ47に保持される。
【0082】
主走査方向移動機構100は、第1の実施形態と同様の構成であり、第1のヘッドホルダ47を、設定されたパス数Nに応じて主走査方向に連続的に移動させる。また、第1のヘッドホルダ47に搭載された第2のヘッドホルダ48は、第1のヘッドホルダ47に設けられた基準軸49を回動中心として矢印Hに示す方向に回動可能に、第1のヘッドホルダ47に保持されている。
【0083】
第2のヘッドホルダ48の搬送方向の一端側には、オフセット位置決め機構120が設けられている。オフセット位置決め機構120は、第4の実施形態におけるオフセット位置決め機構110K、110M、110Yと同様の構成であり、カムを所定の回動位置に位置決めすることにより、第1のヘッドホルダ47に対し第2のヘッドホルダ48を所定の回動角度だけ回動させて位置決めする。この回動角度は、各記録ヘッド41のノズル43の位置が、主走査方向に距離Gだけずれる角度である。この回動角度によって、距離Gに応じた所望のオフセット量の選択設定が実現される。
【0084】
なお、オフセット位置決め機構120は、第2のヘッドホルダ48を所定の位置に回動させて位置決めすることが可能な機構であればよい。例えば、オフセット位置決め機構120のカムは、連続的な半径を有する必要はなく、決められた回動角度に対応した複数の半径を有する構成であればよく、また、リニアアクチュエータやその他の手段を適宜採用することができる。
【0085】
第2のヘッドホルダ48を回動させる回動角度は、設定したパス数Nに連動して変化させる。つまり、図11(a)並びに(b)における1つのノズル43が記録媒体2上に描く直線と搬送方向とがなす角度と同じ角度だけ、第2のヘッドホルダ48を主走査方向に対して傾けることにより、可変する距離Gに応じた任意のオフセット量を実現する。
【0086】
本実施形態のような構成であっても、所望のオフセット量を設定し、ドットのずれを防止した高品質な画像記録を行うことができる。
【0087】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな改良並びに変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…ラインプリンタ、2…記録媒体、3…筐体、4…制御部、10…記録媒体カートリッジ、20…記録媒体供給部、30…搬送機構、31…案内板、32…帯電ローラ、33…ドラム、34…除電ローラ、35…剥離爪、40…画像記録部、41…記録ヘッド、42…ヘッドホルダ、43…ノズル、44…ノズル面、45…第1のヘッドホルダ、46…第2のヘッドホルダ、47…第1のヘッドホルダ、48…第2のヘッドホルダ、49…基準軸、50…記録媒体排出部、60…インクボトル、100…主走査方向移動機構、101…コロ、101a…コロ軸、102…コロベース、103…カムモータ、103a…モータ軸、104…カム、110…オフセット位置決め機構、111…オフセット用カム、120…オフセット位置決め機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を保持搬送するプラテンと、
前記プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、前記記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、
前記複数の記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、
前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記搬送方向と直交する主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、
を具備し、
前記プラテンにより保持搬送される前記記録媒体を、前記記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、前記ヘッド移動機構により、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であって、
前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向最上流側の記録ヘッドのノズルに対して、他の記録ヘッドの各々のノズルが、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向に隣り合う2つの記録ヘッドの前記ノズルの前記オフセット量は、前記記録媒体が、前記隣り合う2つの記録ヘッドのうち、搬送方向上流側に位置している一方の記録ヘッドの下方から他方の記録ヘッドの下方に搬送される間に、前記ヘッド移動機構により前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダが前記主走査方向に移動する移動距離と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ヘッドホルダは、前記他の記録ヘッドの各々の前記ノズルが、予め、前記主走査方向に前記オフセット量だけずれているようにして、前記複数の記録ヘッドを保持していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの主走査方向への前記移動距離は、複数設定可能であり、
前記移動距離に応じて、前記オフセット量が可変であることを特徴とする、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記ヘッドホルダ及び前記ヘッド移動機構は、前記複数の記録ヘッドの各々に設けられ、
前記複数のヘッド移動機構は、それぞれ、前記ヘッドホルダ及び該ヘッドホルダに保持された記録ヘッドを、前記移動距離に応じた前記オフセット量を保ちながら、それぞれ独立して主走査方向に移動させることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記ヘッドホルダは、
少なくとも前記搬送方向最上流側の記録ヘッドを保持する第1のヘッドホルダと、
前記第1のヘッドホルダに搭載され、前記他の記録ヘッドの各々を前記主走査方向に移動可能に保持する第2のヘッドホルダと、を有し、また、
前記第1のヘッドホルダに対して前記第2のヘッドホルダの主走査方向の位置を変更可能に位置決めするオフセット位置決め機構をさらに有し、
前記オフセット位置決め機構は、前記移動距離に応じた前記オフセット量を設定するように、前記第2のヘッドホルダの各々を位置決めすることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記ヘッドホルダは、
第1のヘッドホルダと、
前記第1のヘッドホルダに、該第1のヘッドホルダに対して回動可能に搭載され、前記複数の記録ヘッドを保持する第2のヘッドホルダと、を有し、
前記第1のヘッドホルダに対して前記第2のヘッドホルダを回動させて位置決めするオフセット位置決め機構をさらに有し、
前記オフセット位置決め機構は、前記移動距離に応じた前記オフセット量を設定するように、前記第2のヘッドホルダを回動させて位置決めすることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項1】
記録媒体を保持搬送するプラテンと、
前記プラテンに対向して配置され、各々が列をなして配置された複数のノズルを有し、前記記録媒体の搬送方向に並設された複数の記録ヘッドと、
前記複数の記録ヘッドを保持するヘッドホルダと、
前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記搬送方向と直交する主走査方向に移動させるヘッド移動機構と、
を具備し、
前記プラテンにより保持搬送される前記記録媒体を、前記記録ヘッドの下方を複数回通過させると共に、前記ヘッド移動機構により、前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダを前記主走査方向に連続的に移動させながら画像を記録する画像記録装置であって、
前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向最上流側の記録ヘッドのノズルに対して、他の記録ヘッドの各々のノズルが、主走査方向に所定のオフセット量だけずれて配置されていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記複数の記録ヘッドのうち、前記搬送方向に隣り合う2つの記録ヘッドの前記ノズルの前記オフセット量は、前記記録媒体が、前記隣り合う2つの記録ヘッドのうち、搬送方向上流側に位置している一方の記録ヘッドの下方から他方の記録ヘッドの下方に搬送される間に、前記ヘッド移動機構により前記複数の記録ヘッド及びヘッドホルダが前記主走査方向に移動する移動距離と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ヘッドホルダは、前記他の記録ヘッドの各々の前記ノズルが、予め、前記主走査方向に前記オフセット量だけずれているようにして、前記複数の記録ヘッドを保持していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの主走査方向への前記移動距離は、複数設定可能であり、
前記移動距離に応じて、前記オフセット量が可変であることを特徴とする、請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記ヘッドホルダ及び前記ヘッド移動機構は、前記複数の記録ヘッドの各々に設けられ、
前記複数のヘッド移動機構は、それぞれ、前記ヘッドホルダ及び該ヘッドホルダに保持された記録ヘッドを、前記移動距離に応じた前記オフセット量を保ちながら、それぞれ独立して主走査方向に移動させることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記ヘッドホルダは、
少なくとも前記搬送方向最上流側の記録ヘッドを保持する第1のヘッドホルダと、
前記第1のヘッドホルダに搭載され、前記他の記録ヘッドの各々を前記主走査方向に移動可能に保持する第2のヘッドホルダと、を有し、また、
前記第1のヘッドホルダに対して前記第2のヘッドホルダの主走査方向の位置を変更可能に位置決めするオフセット位置決め機構をさらに有し、
前記オフセット位置決め機構は、前記移動距離に応じた前記オフセット量を設定するように、前記第2のヘッドホルダの各々を位置決めすることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記ヘッドホルダは、
第1のヘッドホルダと、
前記第1のヘッドホルダに、該第1のヘッドホルダに対して回動可能に搭載され、前記複数の記録ヘッドを保持する第2のヘッドホルダと、を有し、
前記第1のヘッドホルダに対して前記第2のヘッドホルダを回動させて位置決めするオフセット位置決め機構をさらに有し、
前記オフセット位置決め機構は、前記移動距離に応じた前記オフセット量を設定するように、前記第2のヘッドホルダを回動させて位置決めすることを特徴とする、請求項4に記載の画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−143898(P2012−143898A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2183(P2011−2183)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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