説明

画像読取装置、画像形成装置、画像読取方法

【課題】プラテンカバーを開いた状態で原稿から画像データを読み取る際にできるだけ短時間の画像読取動作で画像データにおける原稿領域を正確に判定することができる画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取方法を提供すること。
【解決手段】副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る際に、その副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける光源の光量を異ならせ(図6(A))、このとき読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する(図6(B))。また、原稿領域外と判定された領域は白色データに置換する(図6(C))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に光を照射したときの反射光から画像データを読み取る画像読取装置に関し、特に、読み取られた画像データにおける実際の原稿領域を判定するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光源からコンタクトガラス上に載置された原稿に光を照射したときの反射光をCCD等の光電変換素子で受光して電気信号に変換することにより原稿から画像データを読み取る画像読取装置が知られている。
この種の画像読取装置では、コンタクトガラス上に原稿が載置され、その原稿の上から原稿側の面が白色のプラテンカバーが閉じられた状態で原稿から画像データが読み取られる。このようにプラテンカバーが閉じられた状態では、原稿領域外に照射された光はプラテンカバーで反射して光電変換素子で読み取られるため、原稿領域外の画像データは白色データとして読み取られる。
一方、雑誌又は書籍などの厚みのある原稿から画像データを読み取る際などには、プラテンカバーが開かれた状態で原稿から画像データが読み取られることがある。この場合、原稿領域外の光がプラテンカバーで反射しないため、原稿領域外の画像データは黒色データとして読み取られてしまう。
これに対し、例えば特許文献1には、原稿から2回続けて画像データを読み取って原稿外の領域を判断する技術が開示されている。具体的に、前記特許文献1では、1回目は通常よりも白側に上げた原稿認識濃度レベルにより原稿開始端及び原稿終了端を検出し、2回目はグレー色の部分を検出可能な原稿認識濃度レベルにより原稿開始端及び原稿終了端を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−157018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている原稿領域の判定手法では以下のような問題が生じる。
まず、原稿認識濃度レベルを通常よりも白側に上げたとしても、画像読取装置のすぐ近くに蛍光灯などの光源が設置されている場合など、その光源から入射される光量が大きい場合には、依然として原稿領域外が原稿領域と誤判定されるおそれがある。一方、原稿認識濃度レベルを通常よりも白側に上げ過ぎると、本来原稿領域と判定すべき領域を原稿領域外と誤判定してしまうおそれがある。また、原稿認識濃度レベルによって原稿領域が判定されるため、原稿の端部(縁部)に高濃度の画像又は下地色が存在する場合に、その領域が原稿領域外であると判定されてしまうおそれもある。
さらに、画像データの読み取りが2回連続して行われるため、画像読取動作の所要時間が単純に2倍になることも問題である。なお、原稿に対して光を副走査方向に往復走査させ、その往動作及び復動作の両方で画像データの読み取りを行うことも考えられる。しかしながら、この場合には、ユーザーが、往動作終了時に画像データの読み取りが終了したと誤解して原稿台上の原稿を移動させてしまい、原稿領域の判定が正確に行われないおそれがある。
従って、本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プラテンカバーを開いた状態で原稿から画像データを読み取る際にできるだけ短時間の画像読取動作で画像データにおける原稿領域を正確に判定することができる画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、以下の(1)〜(6)の構成要素を備える画像読取装置として構成される。
(1)原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源。
(2)前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段。
(3)入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段。
(4)前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取手段。
(5)前記2倍画像読取手段による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更手段。
(6)前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定手段。
本発明によれば、前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データを利用して原稿領域が判定されるため、できるだけ短時間の画像読取動作で前記画像データにおける原稿領域を正確に判定することができる。具体的には、前記2倍画像読取手段による一度の画像読取動作が行われるだけであるため、従来のように画像データの読み取りを2回続けて行う場合に比べて画像読取動作の所要時間が短縮される。また、従来のように原稿認識濃度レベルによる絶対的な基準で原稿領域が判定されるのではなく、前記光源の光量の変化に伴って生じる前記奇数ライン及び前記偶数ラインの画像データにおける差異の有無で前記画像データにおける原稿領域が判定される。そのため、近くに蛍光灯などの光源が設置されている場合や、原稿の端部に高濃度の画像又は下地色が存在する場合でも前記画像データにおける原稿領域を正確に判定することができる。
【0006】
例えば、前記原稿領域判定手段は、前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの差分値を算出し、前記差分値が予め設定された閾値以上である領域を原稿領域と判定し、前記差分値が前記閾値未満である領域を原稿領域外と判定するものである。
また、前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた画像データと、前記原稿領域判定手段による判定結果とに基づいて読取画像データを生成する読取画像生成手段を更に備える構成が考えられる。前記光源の光量が高い状態で読み取られた画像データは、前記光源の光量が低い状態で読み取られた画像データよりもノイズが少ない(S/Nが高い)ため、前記読取画像データについて高画質を維持することができる。
具体的に、前記読取画像生成手段は、前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた前記奇数ラインの画像データ又は前記偶数ラインの画像データのうち前記原稿領域判定手段により原稿領域外と判定された領域の画像データを白色データに置換して前記読取画像データを生成するものであることが考えられるこれにより、前記読取画像データでは、原稿領域外が白色データに置換されるため、原稿領域外が黒色データとして読み取られる場合に比べて見栄えが良くなる。特に、前記読取画像データに基づく画像形成処理を実行する画像形成装置では無駄な現像剤の消費を防止することができる。
ところで、前記原稿台の上面に対して開閉可能に設けられた白色板と、前記白色板の開閉を検知する開閉検知手段と、を更に備えてなる構成では、前記2倍画像読取手段、前記光量変化手段、前記原稿領域判定手段、及び前記読取画像生成手段は、前記開閉検知手段により前記白色板の開放が検知されている場合に機能が有効となるものであることが考えられる。これにより、前記白色板が閉じられた場合に無駄な処理が実行されることが防止される。
さらに、前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記光源の光量が低い状態で読み取られた画像データを主走査方向及び副走査方向の一方又は両方に間欠的に省略して記憶手段に記憶させるデータ省略手段を更に備える構成が考えられる。この場合、前記原稿領域判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記偶数ラインの画像データと前記奇数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定し、前記省略された画像データに対応する領域の原稿領域の判定は前記判定結果に基づく線形補間によって行うものであることが考えられる。これにより、前記記憶手段の記憶容量を省減しつつ、前記画像データにおける原稿領域を判定することができる。
ここに、前記2倍画像読取手段は、前記副走査手段による前記光の走査速度を前記出力解像度に対応する画像データの読み取り時における前記光の走査速度の1/2に設定するものであることが考えられる。これにより、前記副走査手段による一度の走査中に通常の2倍のライン数の画像データを得ることが可能となる。
【0007】
ところで、本発明は、画像形成装置の発明として捉えてもよい。即ち、本発明は、以下の(11)〜(18)の構成要素を備える画像形成装置として捉えることができる。
(11)原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源。
(12)前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段。
(13)入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段。
(14)前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取手段。
(15)前記2倍画像読取手段による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更手段。
(16)前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定手段。
(17)前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた画像データと、前記原稿領域判定手段による判定結果とに基づいて読取画像データを生成する読取画像生成手段。
(18)前記読取画像生成手段により生成された前記読取画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段。
【0008】
さらに、本発明は、画像読取方法の発明として捉えてもよい。即ち、本発明は、原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源と、前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段と、入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段とを備えてなる画像読取装置で実行される画像読取方法であって、以下の(21)〜(23)の処理工程を実行する画像読取方法として捉えることができる。
(21)前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取工程。
(22)前記2倍画像読取工程による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更工程。
(23)前記2倍画像読取工程により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、できるだけ短時間の画像読取動作で画像データにおける原稿領域を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施例に係る複合機Xの制御部5の概略構成を示すブロック図。
【図3】通常モード及び原稿領域判定モードで読み取られる画像データの一例を説明するための図。
【図4】モード変更処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】画像データ生成処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図6】画像データ生成処理における読取画像データの生成過程の一例を説明するための概念図。
【図7】画像データ生成処理の手順の他の例を説明するためのフローチャート。
【図8】線形補間による原稿領域の判定手法の一例を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る複合機X(画像読取装置、画像形成装置の一例)の概略構成について説明する。ここに、図1(A)は正面模式断面図、図1(B)は図1(A)におけるD−D矢視図である。
図1に示すように、前記複合機Xは、画像読取部1、ADF(自動原稿送り装置)2、画像形成部3、給紙カセット4、制御部5、及び操作表示部6などを備えている。なお、本発明は、複合機(MFP)に限らず、ファクシミリ装置又は複写機などの画像形成装置にも適用することができる。また、前記画像読取部1は本発明に係る画像読取装置に相当する。
【0012】
<画像形成部3>
前記画像形成部3は、前記画像読取部1で読み取られた画像データ、又は外部装置から入力された画像データなどに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。
具体的に、前記画像形成部3は、感光体ドラム31、帯電装置32、現像装置33、トナーコンテナ34、転写ローラー35、除電装置36、定着ローラー37、加圧ローラー38などを備えている。そして、前記画像形成部3では、前記給紙カセット4から供給される用紙に以下の手順で画像が形成される。
まず、前記帯電装置32によって前記感光体ドラム31が所定の電位に一様に帯電される。次に、不図示のレーザスキャナユニット(LSU)により前記感光体ドラム31の表面に画像データに基づく光が照射される。これにより、前記感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。そして、前記感光体ドラム31上の静電潜像は前記現像装置33によってトナー像として現像(可視像化)される。なお、前記現像装置33には、前記トナーコンテナ34からトナーが補給される。続いて、前記感光体ドラム31に形成されたトナー像は前記転写ローラー35によって用紙に転写される。その後、用紙に転写されたトナー像は、その用紙が前記定着ローラー37及び前記加圧ローラー38の間を通過して排出される際に前記定着ローラー37で加熱されて溶融定着する。なお、前記感光体ドラム31の電位は前記除電装置36で除電される。
【0013】
<画像読取部1>
前記画像読取部1は、コンタクトガラス11、読取ユニット12、ミラー13、14、光学レンズ15、及びCCD(Charge Coupled Device)16などを備えている。
前記コンタクトガラス11は、前記画像読取部1の上面に設けられており、前記複合機Xの画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。前記コンタクトガラス11の上面は、前記ADF2に設けられた後述のプラテンカバー25によって開閉可能である。
【0014】
前記読取ユニット12は、LED光源121及びミラー122を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーター18(図2参照)及び不図示の移動機構によって図1における左右方向(以下「副走査方向」という)へ移動可能に構成されている。そして、前記駆動モーター18により前記読取ユニット12が副走査方向に移動されると、前記LED光源121から照射される光が副走査方向に走査される。ここに、前記駆動モーター18及び前記移動機構が副走査手段に相当する。なお、前記読取ユニット12を直線移動させる前記移動機構は、ラックとピニオンやボールねじ等を用いた従来周知の移動機構を採用すればよいためここでは説明を省略する。
前記LED光源121は、図1において奥行き方向(以下「主走査方向」という)に沿って配列された多数の白色LEDを備えており、前記コンタクトガラス11上の読取位置12Aにある原稿P又は後述の原稿押さえ23に向けて1ライン分の白色光を照射する。前記読取位置12Aは、前記読取ユニット12が副走査方向に移動することにより副走査方向に移動することになる。なお、前記LED光源121は、一つの白色LEDとその白色LEDからの光を主走査方向全域に亘って拡散照射させる拡散部材とを備えたものであってもよい。
前記ミラー122は、前記LED光源121から前記読取位置12Aにある原稿P又は後述の原稿押さえ23に光を照射したときの反射光を前記ミラー13に向けて反射させる。そして、前記ミラー122で反射した光は、前記ミラー13、14によって前記光学レンズ15に導かれる。前記光学レンズ15は、入射した光を集光して前記CCD16に入射させる。
【0015】
前記CCD16は、受光した光をその光量に応じた電気信号(電圧)に変換し、画像データとして出力する光電変換素子(光電変換手段に相当)である。具体的に、前記CCD16は、前記LED光源121から光が照射されたときに前記原稿Pから反射した光に基づいて前記原稿Pの画像データを読み取る。前記CCD16で読み取られた画像データは前記制御部5に入力される。なお、本実施の形態では、光電変換手段として前記CCD16を用いた例について説明するが、前記CCD16よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS:Contact Image Sensor)を用いてもよい。
【0016】
<ADF2>
一方、前記ADF2は、原稿セット部21、複数の搬送ローラー22、原稿押さえ23、排紙部24、及びプラテンカバー25などを備えている。前記ADF2は、前記搬送ローラー22各々を不図示のモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部21にセットされた原稿Pを前記コンタクトガラス11上の読取位置12Aを通過させて前記排紙部24まで搬送させる。
前記原稿押さえ23は、前記コンタクトガラス11上の読取位置12Aの上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ23は、主走査方向に長尺状を成しており、その下面(コンタクトガラス11側の面)には白色のシートが貼り付けられている。前記複合機Xでは、前記白色のシートの画像データが白色基準データとして読み取られる。そして、前記白色基準データは、周知のシェーディング補正などで用いられる。
【0017】
前記プラテンカバー25は、前記コンタクトガラス11の上面に開閉可能に設けられた白色板である。前記プラテンカバー25が閉じられていれば、前記画像読取部1により前記コンタクトガラス11に載置された原稿Pから画像データを読み取る際、前記LED光源121から照射されて原稿Pの外側を通過する光は前記プラテンカバー25で反射する。また、前記プラテンカバー25には、該プラテンカバー25の開閉を検知するマイクロスイッチ又は光学式センサなどの周知の開閉検知センサ251(図2参照)が設けられている。前記開閉検知センサ251による検知結果は前記制御部5に入力される。
ところで、前記画像読取部1では、前記プラテンカバー25が開いた状態であっても、前記コンタクトガラス11に載置された原稿Pから画像データを読み取ることが可能である。但し、前記プラテンカバー25が開いていると、前記LED光源121から照射されて原稿Pの外側を通過する光が前記プラテンカバー25で反射しないため、その領域は黒色データとして前記CCD16で読み取られることになる。
これに対し、前記複合機Xでは、前記制御部5において後述の画像データ生成処理(図5参照)が実行されることにより、前記プラテンカバー25が開いた状態で原稿Pから画像データが読み取られる際には原稿領域外の画像データが白色データに置換される。
【0018】
<制御部5>
続いて、図2のブロック図を参照しつつ、前記制御部5について説明する。
図2に示すように、前記制御部5は、CPU51、ROM52、RAM53、クロックジェネレーター54、CDS55、AGC56、ADC57、ASIC58、DSP59、及び画像メモリー60などを備えている。なお、前記制御部5全体が集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
前記ROM52には、所定の制御プログラム及び各種パラメーターが記憶されている。前記CPU51は、前記ROM52に格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより前記複合機Xを統括的に制御する。具体的に、前記CPU51は、前記複合機Xの各構成要素を制御することにより原稿Pからカラー又はモノクロの画像データを読み取る画像読取処理を前記複合機Xに実行させる。前記RAM53は、前記CPU51で実行される各種の処理の一次記憶領域(作業領域)として利用される。
【0019】
前記クロックジェネレーター54は、前記CPU51からの制御指令により予め個別に定められる周期のクロック信号を複数生成して出力する。具体的に、前記クロックジェネレーター54は、モーター駆動信号C1及び水平同期信号C2を生成する。前記モーター駆動信号C1は前記モータードライバー17に入力され、前記水平同期信号C2は前記CCD16に入力される。
前記モータードライバー17は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記モーター駆動信号C1に従って前記駆動モーター18の駆動を制御することにより、前記読取ユニット12を副走査方向に移動させる。これにより、前記読取ユニット12のLED光源121が原稿Pに対して副走査方向に相対的に移動することになる。このとき、前記駆動モーター18の回転速度、即ち前記読取ユニット12の副走査方向の移動速度は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記モーター駆動信号C1の周期によって変化する。
一方、前記CCD16は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記水平同期信号C2に従って1ライン分の画像データの読み取りを実行する。具体的に、前記CCD16は、前記水平同期信号C2の1周期ごとに蓄積された光量に応じて1ライン分の画像データを出力する。
【0020】
前記CDS55は、前記CCD16から入力される画像データについて、相関二重サンプリング法などに基づくノイズ除去処理を実行する電気回路である。前記CDS55でノイズが除去された画像データは、前記AGC56に入力される。
前記AGC56は、前記CDS55から入力された画像データを予め設定された増幅率(ゲイン)に従って増幅させるゲインコントロールアンプである。前記AGC56による増幅後の画像データは前記ADC57に入力される。
前記ADC57は、前記AGC56から入力されたアナログ信号の画像データをデジタル信号に変換するADコンバーターである。前記ADC57でデジタル化された画像データは前記ASIC58に入力される。
前記ASIC58は、例えば後述の画像データ生成処理(図5参照)を実行することにより読取画像データを生成するための集積回路であって、その画像データを前記DSP59に入力する。
前記DSP59は、前記ASIC58から入力された画像データに対して各種の画像処理を施す信号処理プロセッサーである。例えば、前記DSP59は、前記ASIC58から入力されたRGBデータをYUVデータに変換する信号変換処理を実行する。前記DSP59で信号処理が施された後の画像データは、前記画像メモリー60に記憶される。
前記画像メモリー60は、前記複合機Xで読み取られる画像データを蓄積記憶するハードディスクや半導体メモリーなどの記憶手段である。前記複合機Xにおいて複写処理が実行される場合、前記画像メモリー60に記憶された画像データは前記画像形成部3に入力され、前記画像形成部3ではその画像データに基づいて画像形成処理が実行される。また、前記画像メモリー60に記憶された画像データは、例えばネットワーク接続された不図示のパーソナルコンピューター等の外部装置に転送され、或いは電話回線を通じてファクシミリ送信される。
【0021】
<動作モード>
また、前記複合機Xは、原稿から画像データを読み取る画像読取処理の動作モードとして通常モード及び原稿領域判定モードを有している。なお、前記通常モード及び前記原稿領域判定モードは、前記CPU51により後述のモード変更処理(図4参照)が実行されることによって選択的に実行される。
前記通常モードは、前記複合機Xから出力する前記原稿Pの画像データの解像度として予め設定された出力解像度(例えば600dpi、1200dpiなど)で画像データを原稿から読み取る動作モードである。例えば、出力解像度600dpiである場合には、前記通常モードで読み取られる画像データの1画素の主走査方向及び副走査方向のサイズが共に42.3μmである(図3(A)参照)。なお、図3(A)は前記通常モードで読み取られる画像データの一部のみを抜き出した図である。
一方、前記原稿領域判定モードは、副走査方向のライン数が前記出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る動作モードである。このとき読み取られる副走査方向に連続する一対の奇数ライン及び偶数ラインの画像データは略同一である。なお、前記原稿領域判定モードの画像読取処理により原稿から読み取られる画像データの主走査方向の画素数は前記出力解像度に対応する画素数である。例えば、出力解像度600dpiである場合には、前記原稿領域判定モードで読み取られる画像データの1画素の主走査方向のサイズは42.3μmであるが、副走査方向のサイズはその半分の21.15μmである(図3(B)参照)。なお、図3(B)は前記原稿領域判定モードで読み取られる画像データの一部のみを抜き出した図である。
【0022】
前記複合機Xでは、前記動作モードの切り替えを実現するため、前記通常モードに対応する通常周期T1及び前記原稿領域判定モードに対応する低速周期T2が前記ROM52に記憶されている。ここに、前記低速周期T2は前記通常周期T1の2倍の長さである。
そして、前記CPU51は、前記通常モードで画像読取処理を実行する場合、前記クロックジェネレーター54に対して前記通常周期T1で前記モーター駆動信号C1を生成させる。
また、前記CPU51は、前記原稿領域判定モードで画像読取処理を実行する場合、前記クロックジェネレーター54に対して前記低速周期T2で前記モーター駆動信号C1を生成させる。これにより、前記読取ユニット12の副走査方向の移動速度、即ち前記LED光源121から照射される光の走査速度は、前記出力解像度に対応する画像データを読み取る前記通常モード時の1/2に設定される。一方、前記水平同期信号C2の周期は前記通常モード及び前記原稿領域判定モードで共通である。従って、前記原稿領域判定モードの画像読取処理では、前記CCD16により副走査方向のライン数が前記出力解像度の2倍である画像データが読み取られる。ここに、前記原稿領域判定モードで画像読取処理を実行するときの前記CPU51が2倍画像読取手段に相当し、係る処理工程が2倍画像読取工程に相当する。
なお、前記読取ユニット12の移動速度の調整は、前記モーター駆動信号C1の周期の変更に限らない。例えば、前記駆動モーター18が供給電力により速度が変化するものである場合には、前記CPU51が前記駆動モーター18への供給電力を変化させることにより前記読取ユニット12の移動速度を調整する構成が考えられる。
【0023】
また、前記CPU51は、前記原稿領域判定モードの画像読取処理において、副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記LED光源121の光量を異ならせる。ここに、係る処理を実行するときの前記CPU51が光量変更手段に相当し、係る処理工程が光量変更工程に相当する。なお、前記CPU51は、1ライン当たりの前記LED光源121の点灯時間(CCD16の蓄光時間)の変更や、前記LED光源121に印加する電流の変更などによって前記LED光源121の光量の調整を行う。
具体的に、前記CPU51は、前記偶数ラインの画像データに対応する前記原稿Pの位置に光が照射されるときの前記LED光源121の光量は、前記通常モードと同様の光量とする(図3(B)参照)。
一方、前記CPU51は、前記奇数ラインの画像データに対応する前記原稿Pの位置に光が照射されるときの前記LED光源121の光量は、前記通常モード時における光量よりも低い光量(例えば、半分や数分の一など)とする(図3(B)参照)。
これにより、前記原稿領域判定モードの画像読取処理で読み取られた連続する一対の奇数ライン及び偶数ラインの画像データは、前記LED光源121の光量が異なる状態で取得されたものとなる。なお、前記奇数ライン及び前記偶数ラインの画像データの読み取り時における前記LED光源121の光量の関係は逆であってもよい。即ち、前記偶数ラインの画像データの読み取り時における前記LED光源121の光量が前記奇数ラインの画像データの読み取り時における前記LED光源121の光量よりも低いことが考えられる。
【0024】
<モード変更処理>
ここで、図4を参照しつつ、前記CPU51によって実行されるモード変更処理(図4参照)の手順の一例について説明する。なお、S1、S2、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。
まず、ステップS1において、前記CPU51は、前記複合機Xに対するスキャンの開始要求を待ち受ける(S1のNo側)。そして、前記CPU51は、前記操作表示部6のユーザー操作などによりスキャン処理又はコピー処理の要求がなされると、スキャンの開始が要求されたと判断する(S1のYes側)。
次に、ステップS2において、前記CPU51は、前記プラテンカバー25が開いているか否かを前記開閉検知センサ251の検知結果に応じて判断する。ここで、前記開閉検知センサ251により前記プラテンカバー25の開放が検知されている場合には(S2のYes側)、処理はステップS3に移行し、前記CPU51によって前記原稿領域判定モードで画像読取処理が実行される。前記原稿領域判定モードの画像読取処理は前記プラテンカバー25が開いているときにのみ実行されるため、前記プラテンカバー25が閉じているときの無駄な処理は防止される。一方、前記開閉検知センサ251により前記プラテンカバー25の閉鎖が検知されている場合には(S2のNo側)、処理はステップS4に移行し、前記CPU51によって前記通常モードで画像読取処理が実行される。
そして、前記CPU51は、前記ステップS3又は前記ステップS4と並行して、前記通常モード又は前記原稿領域判定モードのいずれの動作モードで画像読取処理を実行するかを前記ASIC58に通知する(S5)。
なお、本実施の形態では、前記CPU51が前記開閉検知センサ251の検知結果に応じて前記通常モード及び前記原稿領域判定モードのいずれかを選択的に実行する場合を例に挙げて説明する。一方、前記CPU51が、前記操作表示部6に対するユーザー操作に応じて前記通常モード及び前記原稿領域判定モードのいずれかを選択的に実行することや、初期設定などにより常に前記原稿領域判定モードを実行する構成も他の実施形態として考えられる。
【0025】
<画像データ生成処理>
以下、図5のフローチャートに従って、前記ASIC58で実行される画像データ生成処理について説明する。ここに、S11、S12、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。
【0026】
(ステップS11)
まず、ステップS11において、前記ASIC58は、前記CPU51によって実行される画像読取処理の動作モードが前記原稿領域判定モードであるか否かを判断する(S11のNo側)。具体的に、前記ASIC58は、前記CPU51から前記ステップS5で通知される動作モードに応じて前記原稿領域判定モードであるか否かを判断する。ここで、前記原稿領域判定モードであると判断されると(S11のYes側)、処理はステップS12に移行する。即ち、以下の処理は前記プラテンカバー25が開いているときにのみ実行されるため、前記プラテンカバー25が閉じているときの無駄な処理は防止される。
【0027】
(ステップS12)
続いて、ステップS12において、前記ASIC58は、前記原稿領域判定モードの画像読取処理において前記CCD16で読み取られる奇数ラインの画像データ及び偶数ラインの画像データの差分値を画素ごとに順に算出する。
具体的に、前記ASIC58は、図6(A)に示すように、1ライン目及び2ライン目の各画素の差分値、3ライン目及び4ライン目の各画素の差分値という具合に、連続する一対の奇数ラインの画像データと偶数ラインの画像データとを画素ごとに比較して差分値を算出する。そのため、前記ASIC58には、少なくとも連続する奇数ライン及び偶数ラインの2ライン分の画像データを記憶する記憶メモリーが設けられている。例えば、前記ASIC58は、奇数ラインの画像データを1ライン分だけ記憶する記憶メモリーと偶数ラインの画像データを1ライン分だけ記憶する記憶メモリーとを有しており、これらの記憶メモリーに記憶された画像データの差分値を1画素ごとに算出する。
【0028】
(ステップS13)
その後、ステップS13において、前記ASIC58は、前記ステップS12で算出された前記画像データの差分値が予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。ここに、前記閾値は、前記原稿Pから読み取られた前記画像データにおける原稿領域を判定するために、予めシミュレーション結果や実験結果に基づいて設定されたものである。
具体的に、前記複合機Xの近傍に蛍光灯などの光源が配置されている場合、原稿領域外には同じ光量の外光が常に入射されるため、前記LED光源121の光量が変化しても前記CCD16で読み取られる画像データに変化はない。そのため、連続する一対の奇数ライン及び偶数ラインの画像データの差分値が大きい領域は、前記LED光源121の光量の変化に伴って前記CCD16で読み取られる画像データが変化した領域であり、原稿領域であると判定することができる。一方、連続する一対の奇数ライン及び偶数ラインの画像データの差分値が小さい領域は、前記LED光源121の光量が変化しても前記CCD16で読み取られる画像データが変化しなかった領域であり、原稿領域外であると判定することができる。従って、前記閾値は、前記LED光源121の光量を変化させたときに原稿領域で生じる画像データの変化量に応じて適宜設定すれよい。
ここで、前記画像データの差分値が前記閾値以上である場合(S13のYes側)、前記ASIC58は、その画素が原稿領域であると判定し、処理をステップS15に移行させる。一方、前記画像データの差分値が前記閾値未満である場合(S13のNo側)、前記ASIC58は、その画素が原稿領域外であると判定し、処理をテップS14に移行させる。このように、前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定するときの前記ASIC58が原稿領域判定手段に相当し、係る処理工程が原稿領域判定工程に相当する。なお、図6(B)は、前記原稿領域の判定結果の一例を示すものである。
【0029】
(ステップS14〜S15)
ステップS14において、前記ASIC58は、前記LED光源121の光量が高い状態で取得された前記偶数ラインの画像データのうち前記画像データの差分値が前記閾値未満であると判定された領域(画素)の画像データを白色データに置換して出力する。これにより、前記偶数ラインの画像データにおける原稿領域外の画素は白色データに置き換えられる。一方、ステップS15において、前記ASIC58は、前記LED光源121の光量が高い状態で取得された前記偶数ラインの画像データをそのまま出力する。
その後、前記ステップS12〜S15の処理は、前記ステップS3で読み取られた画像データにおける全領域の画素を対象に繰り返し実行される(S16のNo側)。そして、全領域の画素についての判定が終了すると(S16のYes側)、当該一連の画像データ生成処理は終了される。これにより、前記ASIC58は、前記ステップS3で読み取られた前記偶数ラインの画像データと前記ステップS13による判定結果(図6(B)参照)とに基づいて、前記偶数ラインの画像データにおける原稿領域外を白色データに置き換えた読取画像データを生成することになる(図6(C)参照)。従って、前記読取画像データによれば、原稿領域外が黒色データではなく白色データとなるため見栄えの良い画像を再現することができる。ここに、係る処理を実行するときの前記ASIC58が画像データ生成手段に相当する。
なお、前記複合機Xにおいて複写処理が実行される場合には、前記画像形成部3により前記読取画像データに基づく画像形成処理が実行される。この場合、前記原稿領域外が黒色データである場合に比べて前記画像形成部3におけるトナー消費量を省減することができる。また、前記複合機Xにおいてファクシミリ送信処理が実行される場合には、前記読取画像データがファクシミリ送信される。
【0030】
以上説明したように、前記複合機Xでは、前記読取ユニット12が副走査方向に一度だけ移動され、前記LED光源121の光が副走査方向に一度だけ走査される間に読み取られる通常の2倍のライン数の画像データを利用して原稿領域が判定される。そのため、従来のように画像データの読み取りを2回続けて行う場合に比べて画像読取動作の所要時間が短縮される。
また、従来のように原稿認識濃度レベルによる絶対的な基準で原稿領域が判定されるのではなく、前記LED光源121の光量の変化に伴って生じる前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データの差異の有無で原稿領域が判定される。そのため、前記複合機Xの近くに蛍光灯などの光源が設置されている場合や、原稿の端部に高濃度の画像又は下地色が存在する場合でも原稿領域を正確に判定することができる。
なお、前記読取画像データとして前記奇数ラインの画像データを使用することも考えられるが、前記偶数ラインの画像データは前記奇数ラインの画像データよりも前記LED光源121の光量が高い状態で読み取られたものでありノイズが小さい(S/Nが高い)。そのため、高画質の前記読取画像データを得るためには、前述したように前記偶数ラインの画像データを使用して前記読取画像データを生成することが望ましい。
また、前記原稿Pから画像データを読み取る際、前記原稿領域外と判定すべき領域は、前記画像データにおける外周近傍の領域であることが多いと考えられる。そこで、前記画像データ形成処理において、前記画像データのうち予め設定された外周近傍の所定領域のみについて、原稿領域であるか原稿領域外であるかの判定を行うことが他の実施形態として考えられる。
【0031】
ところで、前記画像読取部1は、前記LED光源121がRGBの3色のLEDを有すると共に、前記CCD16がモノクロ対応のCCDであって、前記RGB各々のLEDを順次点灯させることによりカラー画像データを読み取る構成であることも考えられる。この場合、前記RGB各々のLEDを点灯させたときに得られたRデータ、Gデータ、Bデータの全てについて前記ステップS12及び前記ステップS13と同様の差分値の算出及び原稿領域の判定を実行することが考えられる。一方、前記Rデータ、前記Gデータ、前記Bデータのいずれか一つのみについて前記ステップS12及び前記ステップS13と同様の差分値の算出及び原稿領域の判定を実行することも考えられる。この場合には、前記Rデータ、前記Gデータ、前記Bデータの全データにおける同一位置の画素の画像データを白色データに置換するか否かがその判定結果に応じて決定される。
【実施例1】
【0032】
<画像データ生成処理の他の例>
前記実施の形態では、前記ASIC58により前記画像データ生成処理が実行される場合について説明した。以下、本実施例1では、図7のフローチャートを参照しつつ、前記CPU51が前記モード判定処理を含む画像データ生成処理を実行する場合について説明する。
図7に示すように、前記CPU51は、前記ステップS1〜S3及び前記ステップS4については前記モード判定処理と同様の処理を実行する。但し、前記ステップS3における前記原稿領域判定モードの画像読取処理では、前記ASIC58は、前記CCD16で読み取られた画像データを、奇数ラインの画像データで構成された画像データと偶数ラインの画像データで構成された画像データとに分離して前記DSP59に出力する。そして、前記DSP59は、前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データを前記画像メモリー60に記憶させる。そのため、前記画像メモリー60には、少なくとも前記原稿Pの2ページ分の画像データを記憶する記憶領域が確保されている。
【0033】
そして、前記ステップS3において、前記原稿領域判定モードの画像読取処理が実行されると、続くステップS31において、前記CPU51は、前記画像メモリー60から前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データを読み出し、前記ステップS12(図5参照)と同様にその差分値を画素ごとに算出する。
次に、ステップS32において、前記CPU51は、前記ステップS13(図5参照)と同様に前記ステップS31で算出された前記差分値が前記閾値以上であるか否かを判断する。
ここで、前記差分値が前記閾値以上であると判断されると(S32のYes側)、前記CPU51は処理をステップS34に移行させるが、前記差分値が前記閾値未満であると判断されると(S32のNo側)、前記CPU51は処理をステップS33に移行させる。
ステップS33では、前記CPU51は、前記画像メモリー60に記憶された前記偶数ラインの画像データのうち、前記差分値が前記閾値未満である領域の画像データを白色データに置換する。その後、前記ステップS31〜S33の処理はステップS34において全領域の判定が終了したと判断されるまで継続する(S34のNo側)。これにより、前記画像メモリー60に記憶された前記偶数ラインの画像データは、原稿領域外の画像データが白色データに置換された読取画像データとして更新される。ここに、係る処理を実行することにより前記読取画像データを生成するときの前記CPU51が画像データ生成手段に相当する。なお、前記CPU51は、前記画像データ生成処理の終了後、前記画像メモリー60に記憶された前記奇数ラインの画像データを削除する。
【実施例2】
【0034】
<画像データ生成処理の他の例>
ところで、前記画像データ生成処理(図7参照)では、前記原稿Pから読み取られた画像データの全領域を対象として前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データの差分値を画素ごとに比較している。そのため、前記画像メモリー60には、前記原稿Pの少なくとも2ページ分の画像データを記憶する記憶領域が必要である。
一方、原稿領域と原稿領域外との境界は直線であることも多いため、ある程度の間隔で原稿領域であるか否かを判定し、その間の領域については前記判定結果に基づく線形補間により原稿領域であるか否かを判定することも考えられる。
具体的に、前記ASIC58は、前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち、前記LED光源121の光量が低い状態で読み取られた前記奇数ラインの画像データについては所定間隔で間引いて出力する。例えば、前記ASIC58は、前記奇数ラインの画像データを副走査方向に連続する2ラインのうち1ラインについては主走査方向の画像データを1画素ごとに省略して残りの画像データを前記画像メモリー60に記憶させる(図8(A)参照)。これにより、前記画像メモリー60において前記奇数ラインの画像データを記憶するための記憶領域を省減することができる。ここに、係る記憶処理を実行するときの前記ASIC58がデータ省略手段に相当する。なお、前記奇数ラインの画像データの省略箇所はこれに限らず、前記奇数ラインの画像データは主走査方向及び副走査方向の一方又は両方に間欠的に省略すればよい。
【0035】
但し、この場合、前記CPU51は、前記画像データ生成処理の前記ステップS31〜S32において、前記画像メモリー60に記憶された前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて原稿領域を判定することになる。そのため、前記偶数ラインの画像データの全領域についての原稿領域の判定を行うことができない。
ここに、図8(B)は図8(A)に示された前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データについて原稿領域の判定を行った結果を示している。図8(B)に示すように、前記奇数ラインの画像データが間引かれた領域は、原稿領域であるか否かを判定することができない判定不可領域となる。
そこで、前記CPU51は、前記画像メモリー60に記憶された前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて原稿領域を判定し、前記省略された画像データに対応する領域の原稿領域の判定は前記判定結果に基づく線形補間によって行う。
ここに、図8(C)は、図8(B)に示した判定結果に基づいて線形補間を行うことにより得られた判定結果である。図8(C)に示すように、前記線形補間では、図8(B)における前記判定不可領域各々について、その上下左右の画素に応じて原稿領域及び原稿領域外のいずれであるかが判定結果として補間される。これにより、図6(C)と同じ読取画像データを得ることができる。
例えば、前記線形補間では、図8(B)、図8(C)に示すように、前記判定不可領域のうち上下左右の画素の少なくとも2つが原稿領域の画素で挟まれた画素を原稿領域と判定し、その他の画素を原稿領域外と判定することが考えられる。なお、前記原稿領域及び前記原稿領域外のいずれと判断するかの基準については予め各種の条件を設定することで任意に定めておけばよい。例えば、主走査方向は原稿領域外の画素で挟まれており、副走査方向は原稿領域の画素で挟まれている場合に、その画素を原稿領域と判定することで画像の抜け防止を優先させることが考えられる。また、原稿領域と判定された複数の画素を結んだ直線上に位置する画素を原稿領域、原稿領域外と判定された複数の画素を結んだ直線上に位置する画素を原稿領域外と判定してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 :画像読取部
11:コンタクトガラス
12:読取ユニット
12A:読取位置
121:LED光源
122:ミラー
13、14:ミラー
15:光学レンズ
16:CCD
17:モータードライバー
18:駆動モーター
2 :ADF
21:原稿セット部
22:搬送ローラー
23:原稿押さえ
24:排紙部
3 :画像形成部
4 :給紙カセット
5 :制御部
51:CPU
52:ROM
53:RAM
54:クロックジェネレーター
55:CDS
56:AGC
57:ADC
58:ASIC
59:DSP
60:画像メモリー
X :複写機(画像読取装置、画像形成装置の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源と、
前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段と、
入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段と、
前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取手段と、
前記2倍画像読取手段による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更手段と、
前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定手段と、
を備えてなる画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿領域判定手段は、前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの差分値を算出し、前記差分値が予め設定された閾値以上である領域を原稿領域と判定し、前記差分値が前記閾値未満である領域を原稿領域外と判定するものである請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた画像データと、前記原稿領域判定手段による判定結果とに基づいて読取画像データを生成する読取画像生成手段を更に備えてなる請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取画像生成手段は、前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた前記奇数ラインの画像データ又は前記偶数ラインの画像データのうち前記原稿領域判定手段により原稿領域外と判定された領域の画像データを白色データに置換して前記読取画像データを生成するものである請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記原稿台の上面に対して開閉可能に設けられた白色板と、前記白色板の開閉を検知する開閉検知手段と、を更に備えてなり、
前記2倍画像読取手段、前記光量変化手段、前記原稿領域判定手段、及び前記読取画像生成手段は、前記開閉検知手段により前記白色板の開放が検知されている場合に機能が有効となるものである請求項1〜4のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記光源の光量が低い状態で読み取られた画像データを主走査方向及び副走査方向の一方又は両方に間欠的に省略して記憶手段に記憶させるデータ省略手段を更に備えてなり、
前記原稿領域判定手段は、前記記憶手段に記憶された前記偶数ラインの画像データと前記奇数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定し、前記省略された画像データに対応する領域の原稿領域の判定は前記判定結果に基づく線形補間によって行うものである請求項1〜5のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記2倍画像読取手段は、前記副走査手段による前記光の走査速度を前記出力解像度に対応する画像データの読み取り時における前記光の走査速度の1/2に設定するものである請求項1〜6のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項8】
原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源と、
前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段と、
入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段と、
前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取手段と、
前記2倍画像読取手段による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更手段と、
前記2倍画像読取手段により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定手段と、
前記奇数ラインの画像データ及び前記偶数ラインの画像データのうち前記2倍画像読取手段により前記光源の光量が高い状態で読み取られた画像データと、前記原稿領域判定手段による判定結果とに基づいて読取画像データを生成する読取画像生成手段と、
前記読取画像生成手段により生成された前記読取画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
を備えてなる画像形成装置。
【請求項9】
原稿台に載置された原稿に向けて光を照射する光源と、前記光源から前記原稿に照射される光を副走査方向に走査させる副走査手段と、入射される光に応じた画像データを出力する光電変換手段とを備えてなる画像読取装置で実行される画像読取方法であって、
前記光電変換手段により副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを前記原稿から読み取る2倍画像読取工程と、
前記2倍画像読取工程による副走査方向の奇数ラインの画像データの読み取り時と偶数ラインの画像データの読み取り時とにおける前記光源の光量を異ならせる光量変更工程と、
前記2倍画像読取工程により読み取られた前記奇数ラインの画像データと前記偶数ラインの画像データとの比較結果に応じて前記画像データにおける原稿領域を判定する原稿領域判定工程と、
を実行する画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115499(P2013−115499A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257865(P2011−257865)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】