説明

画像読取装置

【課題】明瞭な読み取りと小型化とを両立させることが可能な画像読取装置を提供すること。
【解決手段】主走査方向に延びた線状光を読取対象物Dcに向けて出射する線状光源4と、読取対象物Dcによって反射された光を受光するリニアセンサIC7と、読取対象物DcからリニアセンサIC7に至る光路に配置されており、読取対象物Dcからの反射光をリニアセンサIC7に集光するレンズ6と、を備えた画像読取装置Aであって、読取対象物Dcによって反射された光を、副走査方向yに進行させるミラー51、およびミラー51から副走査方向yに進行してきた光をリニアセンサIC7に向けて副走査方向y反対方向に進行させるプリズム52、を有する光路変更手段5と、線状光源4およびミラー51とレンズ6およびリニアセンサIC7とを、読取対象物Dcに対して副走査方向yにおいて互いに反対方向に走査させる駆動手段2と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるフラットベッドスキャナに代表される画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の画像読取装置の一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示された画像読取装置Xは、ケース91内に収容されたキャリッジ93を備えている。キャリッジ93は、1対の回転軸92aに掛け回された無端ベルト92bに取り付けられており、副走査方向yに往復動自在とされている。キャリッジ93には、線状光源94、ミラー95、レンズ96、およびリニアセンサIC97が搭載されている。線状光源94は、副走査方向yに対して直角である主走査方向に延びる線状光を読取対象物Dcに対して照射する。読取対象物Dcによって反射された光は、ミラー95によって反射されることにより、レンズ96へと入射する。レンズ96は、入射した光をリニアセンサIC97に集光する。リニアセンサIC97は、主走査方向に配列された複数の受光部を有しており、受光した光を電気信号に変換する。画像読取装置Xは、キャリッジ93を副走査方向yに走査させることにより、読取対象物Dcに記載された内容を電子データとして取り込むことができる。
【0003】
しかしながら、線状光源94、ミラー95、レンズ96、およびリニアセンサIC97を収容するキャリッジ93は、そのサイズが大きくなりやすい。特に、読取対象物Dcがケース91から若干浮いたような状態においても明瞭に読み取るには、レンズ96の焦点距離を長くすることにより被写界深度を深くする必要がある。このため、たとえばミラー95とレンズ96との距離が長くなり、キャリッジ93の副走査方向yにおける寸法が大きくなる。このようなキャリッジ93を副走査方向yに走査させるには、ケース91が大型となってしまうという問題があった。
【0004】
ミラー95とレンズ96との距離を長くする方策としては、これらの間に複数の追加のミラーを配置することが挙げられる。これらのミラーによって光路を折り返すことにより、ミラー95とレンズ96との間を長くすることができる。しかしながら、ミラーの数が多いほど、互いの位置関係を正確に規定することが強いられる。これにより、製造工程が複雑化され、あるいは使用中における光路ずれが生じるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−97082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、明瞭な読み取りと小型化とを両立させることが可能な画像読取装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される画像読取装置は、主走査方向に延びた線状光を読取対象物に向けて出射する線状光源と、上記読取対象物によって反射された光を受光する受光手段と、上記読取対象物から上記受光手段に至る光路に配置されており、上記読取対象物からの反射光を上記受光手段に集光する集光手段と、を備えた画像読取装置であって、上記読取対象物によって反射された光を、上記副走査方向に進行させる第1光路変更部、および上記第1光路変更部から上記副走査方向に進行してきた光を上記受光手段に向けて上記副走査方向反対方向に進行させる第2光路変更部、を有する光路変更手段と、上記線状光源および上記第1光路変更部と上記集光手段および上記受光手段とを、上記読取対象物に対して副走査方向において互いに反対方向に走査させる駆動手段と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、上記第1光路変更部から上記受光手段に至る光路の長さを長くしつつ、上記画像読取装置の上記副走査方向におけるサイズが大きくなることを回避することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記駆動手段は、それぞれが上記主走査方向周りに回転し、かつ互いに上記副走査方向において離間配置された1対の回転軸と、上記1対の回転軸に掛け回された無端ベルトと、を具備しており、上記線状光源および上記第1光路変更部は、上記無端ベルトのうち上記読取対象物側の部分に支持されており、上記集光手段および上記受光手段は、上記無端ベルトのうち上記読取対象物とは反対側の部分に支持されている。このような構成によれば、上記第1光路変更部から上記受光手段に至る光路の長さを常に一定とすることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2光路変更部は、上記副走査方向において上記1対の回転軸よりも外方に配置されている。このような構成によれば、上記第1光路変更部から上記受光手段に至る光路の長さを長くするのに適している。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1および図2は、本発明に係る画像読取装置の一例を示している。本実施形態の画像読取装置Aは、ケース1、駆動手段2、キャリッジ3A,3B、線状光源4、光路変更手段5、レンズ6、およびリニアセンサIC7を備えており、読取対象物Dcに記載された内容を電子データとして取り込むための装置である。なお、図1においては、理解の便宜上ケース1を省略し、プリズム52を仮想線で示している。また、図中の一点鎖線は、線状光源4からキャリッジ3Bに至る光の軌跡を描いている。
【0014】
ケース1は、図2に示すように画像読取装置Aのその他の構成要素を収容しており、本体11、カバー12、およびガラス板13を有している。本体11は、たとえば樹脂製の箱状である。カバー12は、本体11に対して開閉可能に支持されており、読取対象物Dcを抑えるためのものである。ガラス板13は、透明ガラスからなり、読取対象物Dcを置くための原稿台である。
【0015】
駆動手段2は、キャリッジ3A,3Bを副走査方向yに走査させるためのものであり、1対の回転軸21、無端ベルト22、ガイドバー23,24、およびサーボモータ25を備えている。1対の回転軸21は、それぞれが主走査方向x周りに回転可能であり、副走査方向yにおいて離間配置されている。一方の回転軸21は、サーボモータ25によって駆動される。無端ベルト22は、たとえばゴム製であり、1対の回転軸21に掛け回されている。ガイドバー23,24は、それぞれ副走査方向yに延びており、キャリッジ3A,3Bを副走査方向yに沿って直線的にかつ滑らかに走査させるためのものである。ガイドバー23,24は、上下に平行配置されている。
【0016】
キャリッジ3Aは、無端ベルト22の上側部分に取り付けられており、その一端には、ガイドバー23が挿通されている。これにより、キャリッジ3Aは、副走査方向yに走査自在とされている。キャリッジ3Aには、線状光源4およびミラー51が作りこまれている。
【0017】
線状光源4は、読取対象物Dcに対して線状光を照射するためのものであり、基板41および導光体42を有している。基板41は、たとえばガラスエポキシ樹脂またはセラミックからなり、導光体42の一端に位置している。基板41には、たとえば赤色光、緑色光、および青色光を発する3つのLEDチップ(図示略)が実装されている。導光体42は、たとえばアクリル樹脂からなり、主走査方向xに延びている。導光体42は、その一端から入射した上記LEDチップからの光を、主走査方向xに延びる線状光として出射させる。
【0018】
ミラー51は、光路変更手段5を構成する部品であり、本発明で言う第1光路変更部に相当する。ミラー51は、主走査方向xに延びており、副走査方向yに対して傾いている。読取対象物Dcから向かってきた光は、ミラー51によって反射されることにより、副走査方向yに進行する。
【0019】
ケース1の副走査方向y一端寄り部分には、プリズム52が配置されている。プリズム52は、光路変更手段5を構成する部品であり、本発明で言う第2光路変更部に相当する。プリズム52は、主走査方向xに延びており、断面台形状とされている。ミラー51から副走査方向yに進行してきた光は、プリズム52内を下方に進行した後に、副走査方向yにおいて進行してきた向きとは反対の向きに進行する。
【0020】
キャリッジ3Bは、無端ベルト22の下側部分に取り付けられており、その一端には、ガイドバー24が挿通されている。これにより、キャリッジ3Bは、副走査方向yに走査自在とされている。キャリッジ3Bには、レンズ6およびリニアセンサIC7が収容されている。
【0021】
レンズ6は、プリズム52から進行してきた光をリニアセンサIC7に集光するための集光手段である。リニアセンサIC7は、主走査方向xに配列された複数の受光部を有しており、受光した光を電気信号に変換する。
【0022】
次に、画像読取装置Aの作用について説明する。
【0023】
本実施形態によれば、ミラー51からリニアセンサIC7までの光路の長さが常に一定となる。具体的には、図2において、読取対象物Dcの読み取りを開始するときには、キャリッジ3A,3Bがそれぞれ図中(S)で示された位置にある。そして、サーボモータ25によって無端ベルト22が回動することにより、キャリッジ3A,3Bは、図中(M)で示された位置を通過して、(E)で示された位置に至る。この読み取り動作においては、キャリッジ3A,3Bは、無端ベルト22の上下に別々に取り付けられているため、副走査方向yにおいて互いに反対方向に移動する。しかも、それぞれの移動距離は同一である。したがって、キャリッジ3A,3Bが位置(S)から位置(M)、位置(E)へと移動する全過程において、ミラー51からプリズム52を経てリニアセンサIC7に至る光路の長さは変わることがなく一定である。しかも、同一のキャリッジに複数のミラーを搭載するなどの方策を採ることなく、光路の長さを長くすることが可能である。これにより、いわゆる被写界深度を深くすることが可能であり、読取対象物Dcがガラス板13から若干浮いた状態などであっても、読取対象物Dcの記載内容を明瞭に読み取ることができる。
【0024】
ミラー51からリニアセンサIC7までの光路の長さを長くしても、副走査方向yに走査するキャリッジ3A,3Bは大きくなることがない。このため、たとえばケース1の副走査方向yにおけるサイズを小さくすることが可能である。
【0025】
回転軸21に対して副走査方向y外方にプリズム52を配置すれば、ミラー51からリニアセンサIC7に至る光路の距離を長くするのに適している。
【0026】
本発明に係る画像読取装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る画像読取装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0027】
本発明で言う第1および第2光路変更部は、それぞれミラーおよびプリズムのいずれを用いてもよい。本発明でいう駆動手段は、第1光路変更部と受光手段とを副走査方向において互いに反対方向に走査させる構成であればよく、無端ベルトを有する構成に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像読取装置の一例を示す要部斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】従来の画像読取装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 画像読取装置
Dc 読取対象物
x 主走査方向
y 副走査方向
1 ケース
2 駆動手段
3A,3B キャリッジ
4 線状光源
5 光路変更手段
6 レンズ(集光手段)
7 リニアセンサIC(受光手段)
11 カバー
12 ガラス板
21 回転軸
22 無端ベルト
23,24 ガイドバー
25 サーボモータ
41 基板
42 導光体
51 ミラー(第1光路変更部)
52 プリズム(第2光路変更部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に延びた線状光を読取対象物に向けて出射する線状光源と、
上記読取対象物によって反射された光を受光する受光手段と、
上記読取対象物から上記受光手段に至る光路に配置されており、上記読取対象物からの反射光を上記受光手段に集光する集光手段と、
を備えた画像読取装置であって、
上記読取対象物によって反射された光を、上記副走査方向に進行させる第1光路変更部、および上記第1光路変更部から上記副走査方向に進行してきた光を上記受光手段に向けて上記副走査方向反対方向に進行させる第2光路変更部、を有する光路変更手段と、
上記線状光源および上記第1光路変更部と上記集光手段および上記受光手段とを、上記読取対象物に対して副走査方向において互いに反対方向に走査させる駆動手段と、
を備えていることを特徴とする、画像読取装置。
【請求項2】
上記駆動手段は、それぞれが上記主走査方向周りに回転し、かつ互いに上記副走査方向において離間配置された1対の回転軸と、上記1対の回転軸に掛け回された無端ベルトと、を具備しており、
上記線状光源および上記第1光路変更部は、上記無端ベルトのうち上記読取対象物側の部分に支持されており、
上記集光手段および上記受光手段は、上記無端ベルトのうち上記読取対象物とは反対側の部分に支持されている、請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記第2光路変更部は、上記副走査方向において上記1対の回転軸よりも外方に配置されている、請求項2に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−63720(P2009−63720A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230077(P2007−230077)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】