説明

画像読取装置

【課題】温度変化によって撮像素子の位置が変化しない画像読取装置を提供する。
【解決手段】ベース部材10に、撮像素子8を保持する回路基板9と、撮像素子8に原稿からの光を結像させるための結像レンズ7とが固定された画像読取装置において、回路基板9は、撮像素子8を保持する部分9aと、ベース部材に固定された部分9bとの間にスリット13が形成され、好ましくは、回路基板9は、2箇所でベース部材10に固定され、2つのスリット13が互いに平行に形成され、スリット13は、一端が開放され、総延長が、回路基板9のスリット13が延伸する方向の長さよりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿からの光を結像レンズで撮像素子に結像させる画像読取装置では、結像レンズと撮像素子との距離が変わるとピンぼけが発生するので、共通のベース部材上に結像レンズと撮像素子とを固定している。通常、撮像素子は、回路基板上に搭載され、回路基板をベース部材に対してビス止めすることで、撮像素子がベース部材に固定される。
【0003】
回路基板は、要求される電気的特性から熱膨張率を十分に低くできず、画像読取装置の内部の温度が上昇すると熱膨張する。回路基板は、ビス止めされた位置が移動できないので、熱膨張すると中央部を光軸方向前方または後方に突出させるように湾曲する。これにより、従来の画像読取装置では、内部温度が高くなると、結像レンズと撮像素子との間の距離がずれて、ピンぼけが発生するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、回路基板を撓ませて、その弾性によって撮像素子をブラケットに押圧するようにした発明が記載されている。
【特許文献1】特開2003−115978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記問題点に鑑みて、本発明は、温度変化によって撮像素子の位置が変化しない画像読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明による画像読取装置は、ベース部材に、撮像素子を保持する回路基板と、前記撮像素子に原稿からの光を結像させるための結像レンズを保持するベース部材とを固定され、前記回路基板は、前記撮像素子を保持する部分と、前記ベース部材に固定された部分との間にスリットが形成されているものとする。
【0007】
この構成によれば、スリットを設けたことで、回路基板その板面内で弾性変形させて熱膨張を吸収できる。これにより、回路基板の光軸方向の反りを防止でき、撮像素子が光軸方向に移動しない。
【0008】
また、本発明による画像読取装置において、前記スリットは、一端が開放されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、スリットの開放端の幅を拡大または縮小するような大きな変形が可能になり、回路基板の熱膨張を容易に吸収できる。
【0010】
また、本発明による画像読取装置において、前記回路基板は、2箇所で前記ベース部材に固定され、2つの前記スリットが互いに平行に形成され、前記スリットの総延長は、前記回路基板の前記スリットが延伸する方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、スリットを長くすることで、回路基板が変形しやすくなり、熱膨張を容易に吸収できる。
【0012】
また、本発明による画像読取装置において、前記回路基板は、前記撮像素子より外側で前記ベース部材に固定されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、回路基板が撮像素子を光軸周りに回転させるように変形し、撮像素子の中心から光軸からずれないようにして、撮像素子の有効領域を十分に利用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回路基板の熱膨張を、スリットの幅を増減させるような光軸に垂直な面内での弾性変形として吸収し、撮像素子を光軸方向に移動させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の画像読取装置1の概略構成を示す。画像読取装置1は、原稿が載置される原稿台ガラス2と、原稿を証明する光源ユニット3と、複数の反射ミラー4,5,6と、原稿からの光を合焦させる結像レンズ7と、結像レンズ7が合焦させる位置において原稿からの光を受光し、結像した画像を電気信号に変換する撮像素子8と、撮像素子8を保持し、撮像素子の生成した電気信号を処理する電子回路が形成された回路基板9とを有する。
【0016】
光源ユニット3と反射ミラー4とは一体に水平移動し、反射ミラー5,6は、原稿から撮像素子8までの光路長が一定になるように、光源ユニット3および反射ミラー4の移動に合わせて水平移動するようになっている。結像レンズ7と回路基板9とは、ベース部材10に対して固定されている。
【0017】
図2および3に、結像レンズ7および回路基板9のベース部材10に対する固定構造を示す。回路基板9は、概略長方形をなし、1組の対角近傍が、ベース部材10の支持部11に対して、ねじ12によって固定されている。
【0018】
さらに、図4に示すように、回路基板9は、撮像素子8を保持する部分と、ねじ12で固定されている部分との間に、それぞれ、スリット13が形成されている。スリット13は、回路基板9の長辺と平行に延伸し、ねじ12の近傍で回路基板9の短辺に開放している。また、2つのスリット13は、それらの総延長が回路基板9の長辺の長さ以上になるように形成されている。
【0019】
このスリット13によって、回路基板9は、撮像素子8を保持する中央部9aと、中央部9aから延伸し、中央部9aから離れた端部近傍でベース部材10に固定されたアーム部9bとに分けられている。
【0020】
図5に示すように、回路基板9が熱膨張すると、アーム部9bが回路基板9の板面内で湾曲し、中央部9aを光軸周りに回動させることで、回路基板9の熱膨張を吸収する。このとき、スリット13の一端が開放していることで、スリット13の幅を狭めるように、アーム部9bが変形することができ、回路基板9の変形能が高い。
【0021】
これにより、熱膨張によって回路基板9が光軸方向に反り返ることがなく、撮像素子8がフォーカス方向に移動しない。つまり、画像読取装置1では、温度変化によって、結像レンズ7と撮像素子8との光軸方向の距離が変化せず、ピンぼけが発生しない。
【0022】
また、回路基板9の中央に撮像素子8を保持し、撮像素子8の外側に、撮像素子8の中心について点対象となるように、複数のスリット13を形成し、さらにスリット13の外側をねじ12でベース部材10に対して固定するようにしたことで、回路基板9の熱膨張による変形が、撮像素子8の中心を結像レンズ7の光軸からずらすことなく撮像素子8を光軸周りに回転させるようになっている。尚、撮像素子8の光軸周りの回転による画像の傾きは、画像処理技術によって修正可能である。
【0023】
さらに、図6に、本発明の第2実施形態の画像読取装置1の常温時の回路基板9を示す。尚、本実施形態は、回路基板9の形状を除いて第1実施形態と同じ構成であるため、重複する説明は省略する。
【0024】
本実施形態において、回路基板9は、撮像素子8を保持する部分と、ねじ12で固定されている部分との間に、それぞれ、回路基板9の短辺と平行に延伸するスリット13が形成されている。スリット13は、総延長が回路基板9の短辺、つまり、スリット13の延伸方向の回路基板9の長さよりも長くなるように形成されている。
【0025】
本実施形態においても、スリット13は、回路基板9を、撮像素子8を保持する中央部9aと、中央部9aから延伸し、中央部9aから離れた位置がベース部材10に固定されたアーム部9bとに区分している。
【0026】
本実施形態の回路基板9も、高温時には、図7に示すように、アーム部9bが板面内で弾性変形し、中央部9aが光軸周りに回転することで、光軸方向の反りを発生させず、撮像素子8が光軸方向に移動して焦点がぼけることがない。
【0027】
以上の実施形態では、長方形の回路基板9の対角近傍をねじ12で固定し、長辺または短辺に平行なスリットを形成したが、回路基板9の形状および固定位置、並びに、スリット13の形状は、これらの実施形態に限られるものではない。
【0028】
例えば、長辺の中央部をベース部材に対してねじで固定し、回路基板の撮像素子を保持する部分とねじで固定された部分との間に、回路基板の長辺と平行に、両端が短辺に開放しないスリットを形成してもよい。
【0029】
また、スリットは、幅が均一で小さいものだけでなく、部分的または全体的に幅の大きな、例えば切欠きと呼ばれるような形状であってもよい。つまり、本発明におけるスリットは、その形状にかかわらず、回路基板を、撮像素子を保持する部分と、撮像素子を保持する部分から延伸して板面内で湾曲するように弾性変形可能な部分とに区分するもの全てを指す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の画像読取装置の概略構成図。
【図2】図1の画像読取装置の結像レンズおよび撮像素子の取り付け構造の平面図。
【図3】図1の画像読取装置の結像レンズおよび撮像素子の取り付け構造の斜視図。
【図4】図1の画像読取装置の回路基板の常温時の背面図。
【図5】図4の回路基板の高温時の背面図。
【図6】本発明の第1実施形態の画像読取装置の回路基板の常温時の背面図。
【図7】図6の回路基板の高温時の背面図。
【符号の説明】
【0031】
1…画像読取装置
7…結像レンズ
8…撮像素子
9…回路基板
10…ベース部材
11…支持部材
12…ねじ
13…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に、撮像素子を保持する回路基板と、前記撮像素子に原稿からの光を結像させるための結像レンズとが固定され、
前記回路基板は、前記撮像素子を保持する部分と、前記ベース部材に固定された部分との間にスリットが形成されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記スリットは、一端が開放されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記回路基板は、2箇所で前記ベース部材に固定され、2つの前記スリットが互いに平行に形成され、
前記スリットの総延長は、前記回路基板の前記スリットが延伸する方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記回路基板は、前記撮像素子より外側で前記ベース部材に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−124122(P2010−124122A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294525(P2008−294525)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】