説明

画像読取装置

【課題】温度変化によって焦点がぼけない画像読取装置を提供する。
【解決手段】ベース部材10に固定され、主走査方向に受光点が配列された1次元撮像素子8と、1次元撮像素子8に原稿からの光を結像させるための結像レンズ7を有する画像読取装置において、結像レンズ7を保持する保持部材11を、ベース部材10に対して、主走査方向と平行で、結像レンズ7の光軸と交差しない回転軸Pの周りに回動可能に支持し、ベース部材10と保持部材11との間に熱膨張によって保持部材11をベース部材10に対して回動させる膨張部材14介設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿からの光を結像レンズで1次元撮像素子に結像させる画像読取装置では、結像レンズと1次元撮像素子との距離がずれるとピンぼけが発生するので、共通のベース部材上に結像レンズと1次元撮像素子とを固定している。通常、1次元撮像素子は、回路基板上に搭載され、回路基板をベース部材に対してビス止めすることで、1次元撮像素子がベース部材に固定される。
【0003】
画像読取装置内の温度が上昇すると、結像レンズやベース部材等の各構成要素が熱膨張する。結像レンズの熱膨張は、結像レンズの焦点距離を変化させ、ベース部材の熱膨張は、一次元撮像素子を結像レンズから遠ざける。つまり、各構成要素の熱膨張は、焦点をずらし、読取画像をピンぼけさせる。
【0004】
特許文献1には、保持部材を介して撮像素子を保持し、保持部材が熱膨張によって撮像素子を結像レンズ側に移動させるように膨張する発明が記載されている。光軸方向に熱膨張する保持部材を用いると、撮像素子の光軸方向後方に保持部材が延伸することになるので、画像読取装置が大型化するという問題がある。
【0005】
特許文献2には、結像レンズが光軸方向原稿側にのみ伸縮するように、撮像素子側の端部をベース部材に押圧して保持することで、結像レンズの熱膨張の影響を低減する発明が記載されているが、結像レンズの後端からの焦点位置までの距離の変化率が、ベース部材の熱膨張率と一致する場合にしか熱膨張によるピンぼけを防止できず、設計条件の制約が非常に大きい。
【特許文献1】特開2007−148047号公報
【特許文献2】特開2008−112072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点に鑑みて、本発明は、温度変化によって焦点がぼけない画像読取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による画像読取装置は、ベース部材に固定され、主走査方向に受光点が配列された1次元撮像素子と、前記1次元撮像素子に原稿からの光を結像させるための結像レンズを保持し、前記ベース部材に対して、前記主走査方向と平行で、前記結像レンズの光軸と交差しない回転軸の周りに回動可能に支持された保持部材と、前記ベース部材と前記保持部材との間に介設され、熱膨張によって前記保持部材を前記ベース部材に対して回動させる膨張部材とを有するものとする。
【0008】
この構成によれば、熱膨張によって保持部材を揺動させて、結像レンズを光軸方向に移動させることで、熱膨張による1次元撮像素子の受光面と結像レンズによる焦点位置との光軸方向のずれをなくすので、温度変化によって読取画像がピンぼけしない。
【0009】
また、本発明による画像読取装置において、前記回転軸は、前記結像レンズの光軸よりも、前記ベース部材側にあってもよい。
【0010】
この構成によれば、板状の保持部材によって結像レンズを保持できるので、構造が簡単である。
【0011】
また、本発明による画像読取装置において、前記結像レンズの熱膨張による焦点距離の増加量が、前記ベース部材の熱膨張による前記結像レンズと前記回路基板との距離の増加量より小さい場合は、前記回転軸は、前記結像レンズの光軸方向に、前記結像レンズの中心よりも前記1次元撮像素子側にあればよい。
【0012】
この構成によれば、膨張部材は保持部材の光軸方向原稿側に配置され、熱膨張によって保持部材をベース部材から離間させるように作用する。このため、温度が上昇すると結像レンズが撮像素子側に移動するので、ベース部材の熱膨張による撮像素子の離間に対する結像レンズの焦点距離の増加の不足を、保持部材の回動による結像レンズの移動で補うことができる。これにより、画像読取装置の内部温度が上昇しても、結像レンズによって、1次元撮像素子の受光面上にピンぼけしないように結像させられる。
【0013】
また、本発明による画像読取装置において、前記結像レンズの熱膨張による焦点距離の増加量が、前記ベース部材の熱膨張による前記結像レンズと前記回路基板との距離の増加量より大きい場合、前記回転軸は、前記結像レンズの光軸方向に、前記結像レンズの中心よりも前記原稿側にあればよい。
【0014】
この構成によれば、膨張部材は保持部材の光軸方向1次元撮像素子側に配置されるので、熱膨張によって、結像レンズを1次元撮像素子から離間させる方向に移動させる。これにより、画像読取装置の内部温度の上昇による結像レンズの焦点距離の増加を相殺し、ピンぼけのない画像を読み取れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、結像レンズを保持する保持部材をベース部材に対して回転軸周りに揺動可能に配置し、膨張部材の熱膨張によって、結像レンズを回転軸周りに揺動させることで、結像レンズを光軸方向に移動させ、1次元撮像素子の受光面上に正確に結像させることができるので、ピンぼけなく画像を読み取れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の画像読取装置1の概略構成を示す。画像読取装置1は、原稿が載置される原稿台ガラス2と、原稿を照明する光源ユニット3と、複数の反射ミラー4,5,6と、原稿からの光を合焦させる結像レンズ7と、結像レンズ7が合焦させる位置において原稿からの光を受光し、結像した画像を電気信号に変換する1次元撮像素子8と、1次元撮像素子8を保持し、1次元撮像素子8の生成した電気信号を処理する電子回路が形成された回路基板9とを有する。
【0017】
1次元撮像素子8は、主走査方向に受光点が一列に配列され、主走査方向の1ライン毎に原稿からの光を受光し、原稿の画像を電気信号に変換する。よって、結像レンズ7は、副走査方向に光を合焦させるものである。
【0018】
光源ユニット3と反射ミラー4とは一体に水平移動し、反射ミラー5,6は、一体に保持され、原稿から1次元撮像素子8までの光路長が一定になるように、光源ユニット3および反射ミラー4の移動に合わせて水平移動するようになっている。
【0019】
図2から4にさらに詳しく示すように、結像レンズ7は、ベース部材10に回転軸Pの周りに揺動可能に支持された保持部材11上に保持されている。本実施形態では、保持部材11の1次元撮像素子8側の端部を2本のねじ12によってスペーサ13を介してベース部材10に固定することによって、2本のねじ12を結ぶ主走査方向に平行な直線を軸として保持部材11を揺動可能としており、回転軸Pは現実の部材ではなく、仮想の軸である。
【0020】
また、保持部材11は、光軸方向に原稿側(1次元撮像素子8と反対側)の端部が、熱膨張率の高い膨張部材14を介して、ベース部材10に固定されている。膨張部材14は、熱膨張率の高い材料で形成された、回転軸Pと平行に延伸する帯状の部材であり、両端がベース部材10にねじ15で固定され、中央がねじ16で保持部材11に固定されている。
【0021】
回路基板9は、ベース部材10に固定した支持部材17に対して、ねじ18で固定されている。つまり、1次元撮像素子8は、回路基板9および支持部材17を介して、ベース部材10に固定されている。画像読取装置1では、常温において、結像レンズ7と1次元撮像素子8の光軸が厳密に一致し、結像レンズ7が1次元撮像素子8の受光面に原稿からの光を合焦させるように設計されている。
【0022】
画像読取装置1の各構成要素は、それぞれ、温度が上昇すると熱膨張し、お互いの位置関係を変化させる。また、結像レンズ7は、熱膨張によって、焦点距離が長くなる。画像読取装置1の内部温度が上昇すると、ベース部材10は、熱膨張によって、結像レンズ7と1次元撮像素子8との距離を拡大する。本実施形態では、ベース部材10の熱膨張による1次元撮像素子8の結像レンズ7からの離間が、結像レンズ7の熱膨張による焦点距離の増大に勝り、そのままでは、原稿の画像は1次元撮像素子8の受光面の手前に合焦してしまう。
【0023】
しかしながら、画像読取装置1では、図5に示すように、画像読取装置1の内部温度の上昇により、ねじ15で両端が規制された膨張部材14が熱膨張し、その中央部がベース部材10から離間するように撓む。これにより、図6に示すように、保持部材11は、前側(光軸方向原稿側)が膨張部材14によって持ち上げられ、回転軸Pを中心に、最大数10分程度回動する。この保持部材11の回動によって、結像レンズ7は、1次元撮像素子8に近づくように、回転軸Pを中心に回転移動する。これにより、画像読取装置1では、結像レンズ7による焦点位置が1次元撮像素子8の受光面からずれず、読取画像の焦点がぼけないように調整されている。
【0024】
図6に、熱膨張を無視した保持部材11の回転角度と結像レンズ7の焦点位置の光軸方向の移動距離との関係を示す。この焦点の移動距離ΔFは、保持部材11の回転角度をθ、回転軸Pから光軸までの垂直距離(副走査方向の距離)をH(本実施形態では12mm)とすると、近似式ΔF≒H・tanθで表される。よって、回転軸Pから光軸までの垂直距離Hと、保持部材11の回転角度をθを決定する膨張部材14の形状および材質との選択によって、熱膨張による焦点位置の1次元撮像素子8の受光面からのずれを補償できる。
【0025】
なお、保持部材11の回動によって、結像レンズ7の光軸が傾斜するので、焦点位置は、副走査方向にも僅かに移動するが、副走査方向の焦点位置のずれによる画像の劣化は非常に軽微である。
【0026】
また、保持部材11の揺動によって結像レンズ7の上流側の光軸位置が高くなり、原稿の読取位置が副走査方向に移動するが、これは、画像処理技術によって比較的容易に補正できる。
【0027】
画像読取装置1は、保持部材11の揺動によって熱膨張による焦点位置の1次元撮像素子8の受光面からのずれを相殺するので、1次元撮像素子8の裏側に、熱膨張を補償するための構造が必要なく、装置が小型である。
【0028】
図7に、本発明の第2実施形態の画像読取装置の結像レンズ7および1次元撮像素子8の保持構造を示す。なお、本実施形態において、図示しない構成要素は、第1実施形態と同じであり、図中においても、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付しているため、重複する説明は省略する。
【0029】
本実施形態では、保持部材11の光軸方向原稿側の端部が2本のねじ12によってスペーサ13を介してベース部材10に固定され、結像レンズ7よりも原稿側に回転軸Pを構成している。そして、保持部材11の光軸方向1次元撮像素子8側の端部が膨張部材14を介して、ベース部材10に固定されている。
【0030】
本実施形態の膨張部材14は、熱膨張によって保持部材11の1次元撮像素子8側の端部を持ち上げる。これにより、保持部材11の回転方向は、第1実施形態とは反対になり、結像レンズ7の焦点位置は、光軸方向原稿側に移動する。
【0031】
このため、本実施形態は、結像レンズ7の熱膨張による焦点距離の増加量が、ベース部材10の熱膨張による結像レンズ7と回路基板9との距離の増加量より大きい場合に適用される。
【0032】
つまり、本発明では、光軸方向に結像レンズ7の中心よりも1次元撮像素子8側に回転軸Pを設け、原稿側に熱膨張によって保持部材11の一部分を光軸に向かって移動させる膨張部材14を配置することで、焦点位置を1次元撮像素子8側に移動させることができる。逆に、光軸方向に結像レンズ7の中心よりも原稿側に回転軸Pを設け、1次元撮像素子8側に熱膨張によって保持部材11の一部分を光軸に向かって移動させる膨張部材14を配置すれば、焦点位置を原稿側に移動させることができる。
【0033】
なお、以上の実施形態では、板状の保持部材11をベース部材10に2本のねじ12で固定することで、結像レンズ7よりもベース部材側に回転軸Pを創成しているが、ベース部材10および保持部材11にさらなる支持構造を設けて、保持部材11の本体よりも結像レンズ7の光軸側、さらに、結像レンズ7の光軸の反対側に回転軸Pを創成してもよい。但し、回転軸Pから光軸までの垂直距離Hがゼロになると、結像レンズ7を光軸方向に移動させられなくなるので、回転軸Pは、結像レンズ7の光軸と交差しないねじれ位置にあるようにする必要がある。
【0034】
また、保持部材11の揺動角度を大きくする必要がある場合、膨張部材14の変形量を大きくするために、線膨張係数の異なる2つの材料を貼り合わせた、いわゆるバイメタルを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態の画像読取装置の概略構成図。
【図2】図1の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の平面図。
【図3】図1の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の常温時の正面図。
【図4】図1の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の常温時の側面図。
【図5】図1の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の高温時の正面図。
【図6】図1の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の高温時の側面図。
【図7】図1の画像読取装置の保持部材の回転角度と、結像レンズによる焦点位置の移動距離との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第2実施形態の画像読取装置の結像レンズおよび1次元撮像素子の取り付け構造の高温時の側面図。
【符号の説明】
【0036】
1…画像読取装置
7…結像レンズ
8…1次元撮像素子
9…回路基板
10…ベース部材
11…保持部材
12…ねじ
14…膨張部材
P…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に固定され、主走査方向に受光点が配列された1次元撮像素子と、
前記1次元撮像素子に原稿からの光を結像させるための結像レンズを保持し、前記ベース部材に対して、前記主走査方向と平行で、前記結像レンズの光軸と交差しない回転軸の周りに回動可能に支持された保持部材と、
前記ベース部材と前記保持部材との間に介設され、熱膨張によって前記保持部材を前記ベース部材に対して回動させる膨張部材とを有すること特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記回転軸は、前記結像レンズの光軸よりも、前記ベース部材側にあることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記結像レンズの熱膨張による焦点距離の増加量は、前記ベース部材の熱膨張による前記結像レンズと前記回路基板との距離の増加量より小さく、
前記回転軸は、前記結像レンズの光軸方向に、前記結像レンズの中心よりも前記1次元撮像素子側にあることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記結像レンズの熱膨張による焦点距離の増加量は、前記ベース部材の熱膨張による前記結像レンズと前記回路基板との距離の増加量より大きく、
前記回転軸は、前記結像レンズの光軸方向に、前記結像レンズの中心よりも前記原稿側にあることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−124386(P2010−124386A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298120(P2008−298120)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】