説明

畦立て作業機

【課題】顧客が底板及び均し板を排土板に簡易に接続可能な畦立て作業機を提供する。
【解決手段】畦立て作業機1は、耕耘機80の後部に装着され、耕耘機80の前進走行に伴って進行して畦立て作業を行う。畦立て作業機1は、進行方向前側に配設されて掘り上げた耕土を左右に分ける排土板3と、排土板3の下側後部に上下方向に回動自在に接続されて後方側へ延びる底板と、底板の進行方向に対して左右方向両側に配設されて排土板3によって左右に分けられた耕土を左右両側の畦に押し付けてならす均し板20と、排土板3に取り付けられて底板10及び均し板20を上下方向に位置調節可能に移動させる位置調節手段30とを備える。底板10及び均し板20は一体的に形成されて、排土板10及び位置調節手段30に対して着脱可能に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に装着され、走行機体の前進走行に伴って進行して畦立て作業を行う畦立て作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
このような畦立て作業機は、例えば、特許文献1に記載されているように、進行方向前側に配置され耕土を左右に分ける排土板と、この下部後方側に配置されて後方側へ延びる底板と、底板の進行方向に対して左右方向一方側に配設されて排土板によって左右に分けられた耕土を畦に押し付けてならす均し板と、排土板に取り付けられて底板及び均し板を一体となって排土板に対して上下方向に位置調節可能に移動させる位置調節手段とを有して構成されたものが知られている。
【0003】
この均し板は底板に固着されて底板と一体化され、底板の前端部は蝶番を介して排土板に上下方向に回動自在に接続されている。底板の上方には手動式の伸縮シリンダが上下方向に延びた姿勢で配置され、伸縮シリンダのボトム側は排土板に支持され、伸縮シリンダのロッド側端部は底板に回動自在に接続されている。このため、伸縮シリンダを伸縮させると、底板及び均し板が蝶番を回動支点として上下方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−223200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の畦立て作業機は、底板及び均し板が蝶番を介して排土板に接続されている。このため、畦立て作業機を購入した顧客が底板及び均し板を排土板に接続する場合、底板及び均し板を排土板に簡易に接続することができない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、顧客が底板及び均し板を排土板に簡易に接続することができる畦立て作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の畦立て作業機は、走行機体(実施の形態における耕耘機80)の後部に装着され、該走行機体の前進走行に伴って進行して畦立て作業を行う畦立て作業機において、進行方向前側に配設されて掘り上げた耕土を左右に分ける排土板と、該排土板の下側後部に上下方向に回動自在に接続されて後方側へ延びる底板と、該底板の進行方向に対して左右方向片方又は両側に配設されて排土板によって左右に分けられた耕土を片方又は左右両側の畦に押し付けてならす均し板と、排土板に取り付けられて底板及び均し板を上下方向に位置調節可能に移動させる位置調節手段とを備えた畦立て作業機であって、底板及び均し板は一体的に形成されて、排土板及び位置調節手段に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
また、本発明は、排土板の下側後部及び底板の前端部のいずれか一方に左右方向に延びる軸部が設けられ、排土板の下側後部及び底板の前端部のいずれか他方に軸部に着脱可能に掛け止される掛止部が設けられて、底板及び均し板は、排土板に対して着脱可能に装着されるとともに軸部を中心として上下方向に回動自在であり、位置調節手段は、排土板に取り付けられて上下方向に延びる伸縮部材(実施の形態における伸縮シリンダ31)を有し、伸縮部材の下端部に底板が着脱可能に接続されていることを特徴とする(請求項2)。
【0009】
また本発明は、底板の表面には、伸縮部材の下端部を接続するための接続板が設けられ、接続板は、底板に設けられた孔部に挿通されたボルトを介して底板に固定され、底板の裏面には、底板の裏面側から孔部に挿通されたボルトのボルト頭部の前方側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる畦立て作業機によれば、上記特徴を有することで、顧客が底板及び均し板を排土板に簡易に接続可能な畦立て作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係わる畦立て作業機が装着された耕耘機の後方斜視図を示す。
【図2】この畦立て作業機の側面図を示す。
【図3】畦立て作業機の正面図を示す。
【図4】畦立て作業機の平面図を示す。
【図5】畦立て作業機の背面図を示す。
【図6】この畦立て作業機の分解斜視図を示す。
【図7】この畦立て作業機の掛止部の拡大図を示す。
【図8】この畦立て作業機の排土板と底板との接続状態を説明するための畦立て作業機の部分斜視図を示す。
【図9】畦立て作業機に設けられた突出部を示し、同図(a)は畦立て作業機の裏面図の一部を示し、同図(b)は同図(a)のIX−IX矢視に相当する部分断面図を示す。
【図10】本発明の他の実施形態に係わる畦立て作業機の背面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の畦立て作業機の好ましい実施の形態を図1から図10に基づいて説明する。本実施の形態は、歩行型の耕耘機に装着可能な畦立て作業機について説明する。先ず、畦立て作業機を説明する前に耕耘機について概説する。
【0013】
耕耘機80は、図1(後方斜視図)に示すように、機体81の上部にエンジン82が設けられ、機体81の下部に機体進行方向に対して左右方向(幅方向)に延びる回転中心軸83aを有して回転自在に支持された耕耘ロータ83が設けられ、機体81の後部に機体の左右方向両側から後方斜め上方へ延びる一対の操作ハンドル85が設けられて構成されている。
【0014】
耕耘ロータ83は、回転中心軸83aに取り付けられた複数の耕耘爪83bを有し、エンジン82からの動力を受けて回転する。機体81の後部には、後方側へ延びる支持杆86が設けられ、この支持杆86の長手方向中間部に一対の操作ハンドル85が取り付けられ、支持杆86の後端部に畦立て作業機1を着脱可能に取り付ける筒状部86aが設けられている。この筒状部86aに畦立て作業機1を連結するための連結部材88が連結される。連結部材88の構造については、後述する。
【0015】
畦立て作業機1は、図2(側面図)、図3(正面図)、図4(平面図)、図5(背面図)に示すように、進行方向前側に配置されて掘り上げた耕土を左右に分ける排土板3と、排土板3の下部後方側に配置された底板10と、底板10の左右両側に配置されて排土板3によって左右に分けられた耕土を畦に押し付けて均す一対の均し板20と、排土板3の裏側に配置され底板10及び均し板20を上下方向に位置調節可能に移動させる位置調節手段30とを有してなる。
【0016】
排土板3は、正面視において左右対称に一対配置され、上下方向に延びるとともに後方側に進むに従って左右方向外側に傾くように配置されている。これらの排土板3は、合成樹脂材料で一体成形されている。一対の排土板3の前側下部には、耕土を掘り上げる金属材料製の刃体4が取り付けられている。
【0017】
一対の排土板3の裏側には、位置調節手段30が取り付けられている。位置調節手段30は、一対の排土板3の裏側に上下方向に延びた状態で配置された手動式の伸縮シリンダ31を有する。伸縮シリンダ31は、一対の排土板3の裏面に取り付けられた支持部材33(図4参照)を介して排土板3に固定されている。
【0018】
支持部材33は、一対の排土板3の裏側前部に上下方向に延びた状態で排土板3に固定された柱部34と、柱部34の上端に固着されて一対の排土板3の上端を超えて前方へ延びる連結部37とを有してなる。柱部34の上下方向の中間部には一対の排土板3の裏面に沿って延びてボルト等の締結手段によって排土板3に固定された固定板35が設けられている。柱部34の下端部は一対の排土板3の下部に固着された底板部5上に固定されている。また、柱部34の上下方向の中間部には後方側へ突出する接続アーム36が設けられ、この接続アーム36の先端部に伸縮シリンダ31のボトム側が固着されている。このため、伸縮シリンダ31は、支持部材33を介して排土板3に固定されている。
【0019】
伸縮シリンダ31は、図5に示すように、シリンダチューブ31aに対してシリンダロッド31bが下方に位置するように配置され、シリンダチューブ31aの上部に設けられたノブ31cを回転させると、シリンダチューブに31a対してシリンダロッド31bが突出入するように構成されている。シリンダロッド31bの下端部には、左右方向に延びる孔部31e(図8参照)を有した係合部31dが設けられている。この係合部31dを介して、後述する底板10及び均し板20が伸縮シリンダ31に着脱可能に接続される。
【0020】
支持部材33の連結部37には、前述した連結部材88が着脱可能に装着される。連結部材88は、図2に示すように、連結部37に嵌合可能に装着される筒状の接続部89と、接続部89の前側下部に一端部が固着されて側面視においてU字状に形成されて筒状部86a(図1参照)に挿着される挿着部90とを有してなる。挿着部90は、筒状部86aに挿入されるピン91(図1参照)によって筒状部86aに固定される。
【0021】
一対の排土板3の裏側の底部には、図4及び図9に示すように、一対の排土板3の各内面に沿って延びて固着された前述した三角状の底板部5が設けられている。この底板部5の後部には、左右方向に延びる軸部6が設けられている。この軸部6は、後述する底板10に設けられた掛止部26に掛止されて、底板10及び均し板20を着脱可能に接続する。
【0022】
一対の排土板3の各後方には、図3、図4、図5に示すように、対応する排土板3に沿って後方側へ延びる一対の均し板20が設けられている。均し板20は、その外側に、前側から後側に進むにしたがって外側に拡開するとともに上下方向に凸状に湾曲する均し面20aが形成されて、丸みのあるかまぼこ状の丸畦の成形を可能にする。一対の均し板20の後部間には補強部材21が取り付けられて、一対の均し板20の強度を高めている。これらの均し板20の下部間に底板10が設けられている。一対の均し板20と底板10は、合成樹脂材料で一体に成形されている。
【0023】
底板10の上面には、図6に示すように、接続板23がボルト24、ナット25によって底板10に固定されている。この接続板23は略矩形状に形成され、接続板23の前端には、軸部6(図9(a)参照)に掛止可能に下側に折り曲げられて湾曲面を有した掛止部26が形成されている(図7参照)。掛止部26は、底板10の前端部よりも前方に配置されて底板10の前端に沿って左右方向に延びる。このため、図8に示すように、掛止部26を軸部6に掛止すると、底板10及び均し板20は、排土板3の軸部6を中心として上下方向に回動自在に接続される。
【0024】
接続板23には、ボルト24を通すための複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。また接続板23の表面側の中央部には伸縮シリンダ31のロッド側端部に設けられた係合部31dの孔部31eに挿通されるピン27(図5参照)を回動自在に支持するための係合孔部28aを有した係合突起部28が左右方向に間隔を有して一対設けられている。一対の係合突起部28間の間隔は係合部31dの左右方向長さよりも僅かに小さい寸法を有している。また係合孔部28aは前後方向に延びる長孔状に形成されている。このため、係合部31dを一対の係合突起部28間に配置し、係合部31dの孔部31eと係合突起部28の係合孔部28aを連通状態にして、一方の係合突起部28の左右方向外側からピン27を連通状態の孔部間に挿通すると、係合部31dを一対の係合突起部28に回動自在に接続することができる(図5参照)。
【0025】
連通状態の孔部間に挿通されるピン27は、図5に示すように、一端側に係合孔部28aよりも大きな形状の頭部27aが設けられ、ピン27の他端側には止め輪29が着脱可能に装着されている。このため、止め輪29をピン27から取り外し、ピン27を連通状態の孔部から抜脱すると、係合部31dを係合突起部28から分離することができる。つまり、一対の係合突起部28は伸縮シリンダ31に対して着脱可能に接続される。
【0026】
底板10の底面には、図9(a)及び図9(b)に示すように、ボルト24を通す孔部10bの前方位置から突出する突出部13が設けられている。この突出部13は、前側に進むに従って底板10の底面10a側に傾斜し、また正面視において円弧状に形成されている。このため、底板10が圃場の表面に接触した状態で前側に移動すると、ボルト24のボルト頭部24aが圃場の耕土に接触する虞が小さくなり、底板10が圃場上を移動した後の圃場の表面をきれいにすることができる。また、ボルト頭部24aに設けられたねじ穴24bへの耕土の付着をしにくくすることができる。図9(a)及び図9(b)の図面では、ボルト24は、皿ねじが使用された場合を示している。
【0027】
なお、畦立て作業機1'は、図10(背面図)に示すように、均し板20'の外側に前側から後側に進むにしたがって外側に平面状に拡開する均し面20'bが形成された均し板20'と底板10とが一体成形されたものを有して構成されたものでもよい。この均し板20'の後部には畦の天場を均す延長板40がボルト41、ナット42を介して接続されている。なお、均し板20'及び底板10以外の畦立て作業機1'の構造は、前述した畦立て作業機1(図5参照)と同様なので、対応する部分については同一符号を附して説明を省略する。この畦立て作業機1'を使用すると、圃場に台形状の畦を成形することができる。
【0028】
このように、畦立て作業機1は、図6に示すように、排土板3に対して一体的に形成された底板10及び均し板20が着脱可能に構成されているので、丸みのあるかまぼこ状の丸畦を形成可能な均し板20や、台形状の畦を形成可能な均し板20'(図10参照)を選択的に排土板3に着脱することができる。また、均し板20、20'の排土板3への着脱は、軸部6(図8参照)に掛止部26を掛け止したり取り外したりする操作と、伸縮シリンダ31のロッド側端部と係合突起部28に対してピン27(図5参照)を挿入したり抜脱したりする操作を行えばよい。このため、2種類の均し板20、20'のうちの選択されたものを排土板3に対して着脱する操作は容易であり、作業者を煩わせることもない。
【0029】
また、畦立て作業機1、1'の底板10及び均し板20、20'は、位置調節手段30を介して排土板3に対して上下方向に位置調節自在に支持されているので、図2に示すように、実線で示す均し板20と一体化された底板10を略水平方向を向いた位置(水平位置)又は、破線で示す均し板20と一体化された底板10を水平位置よりも上方の位置に移動させた状態で前進させると、圃場の耕土から底板10に作用する力のうちの上方を向く垂直成分を有した力は底板10に殆ど作用しない。このため、畦立て作業時に、刃体4に作用する下向きの力によって刃体4が耕土内に深く入り込み、その結果として溝の深さを深くすることができる。
【0030】
一方、二点鎖線で示す均し板20と一体化された底板10を水平位置よりも下方位置に移動させた状態で前進させると、圃場の耕土から底板10に対してこれを上方へ押し上げる力が作用して、刃体4の耕土内への挿入深さを浅くする。その結果、溝の深さを浅くすることができる。
【0031】
なお、前述した実施形態の畦立て作業機1は、進行方向に対して左右方向両側に均し板20を配設したものであるが、均し板20を左右方向一方側にのみ設けたものでもよい。
【符号の説明】
【0032】
1、1' 畦立て作業機
3 排土板
6 軸部
10 底板
13 突出部
20、20' 均し板
23 接続板
24 ボルト
24a ボルト頭部
26 掛止部
30 位置調節手段
31 伸縮シリンダ(伸縮部材)
80 耕耘機(走行機体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着され、該走行機体の前進走行に伴って進行して畦立て作業を行う畦立て作業機において、進行方向前側に配設されて掘り上げた耕土を左右に分ける排土板と、該排土板の下側後部に上下方向に回動自在に接続されて後方側へ延びる底板と、該底板の進行方向に対して左右方向片方又は両側に配設されて前記排土板によって左右に分けられた耕土を片方又は左右両側の畦に押し付けてならす均し板と、前記排土板に取り付けられて前記底板及び前記均し板を上下方向に位置調節可能に移動させる位置調節手段とを備えた畦立て作業機であって、
前記底板及び前記均し板は一体的に形成されて、前記排土板及び前記位置調節手段に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする畦立て作業機。
【請求項2】
前記排土板の下側後部及び前記底板の前端部のいずれか一方に左右方向に延びる軸部が設けられ、前記排土板の下側後部及び前記底板の前端部のいずれか他方に前記軸部に着脱可能に掛け止される掛止部が設けられて、前記底板及び前記均し板は、前記排土板に対して着脱可能に装着されるとともに前記軸部を中心として上下方向に回動自在であり、
前記位置調節手段は、前記排土板に取り付けられて上下方向に延びる伸縮部材を有し、前記伸縮部材の下端部に前記底板が着脱可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の畦立て作業機。
【請求項3】
前記底板の表面には、前記伸縮部材の下端部を接続するための接続板が設けられ、
前記接続板は、前記底板に設けられた孔部に挿通されたボルトを介して前記底板に固定され、
前記底板の裏面には、該底板の裏面側から前記孔部に挿通されたボルトのボルト頭部の前方側に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の畦立て作業機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−228211(P2012−228211A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98852(P2011−98852)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(591121524)株式会社宮丸アタッチメント研究所 (8)
【Fターム(参考)】