説明

痩身作用を有する医薬又は健康食品

【課題】痩身作用を有する医薬又は健康食品を提供する。
【解決手段】痩身作用を有する医薬又は健康食品であって、コエンザイムQ10を有効成分として含む医薬又は健康食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を有効成分として含み痩身作用を有する医薬、及びコエンザイムQ10を含み痩身作用を有する健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキノン(略号:UQ)はミトコンドリア内膜や原核生物の細胞膜に存在する電子伝達系の構成成分の1つである。補酵素Qとも呼ばれているこの物質はキノン骨格を有しており、比較的長いイソプレン側鎖を有しているが、ヒトではイソプレン側鎖の繰り返し数が10個であることから、補酵素Q(10)、コエンザイムQ10、CoQ10などと称されることが多い(本明細書において、この物質を「コエンザイムQ10」と記載する場合がある)。コエンザイムQ10は生体内で合成されており、食事からも少量摂取されているが、正常な老化の過程では一般に徐々に欠乏することが知られている。また、コエンザイムQ10の体内量の減少が直接的又は間接的に老化に寄与していること、及びコエンザイムQ10の体内量を増加させることにより老化を遅らせることができることが示唆されている。
【0003】
コエンザイムQ10は種々の医薬用途に適用できることが示唆されている。例えば、うっ血性心不全の症状の改善(Clin. Investig., 71, pp.134-136, 1993)、高血圧に対する有効性(Mol. Aspects Med., 15,pp.257-263, 1994; Mol. Aspects Med., 15, pp.265-272, 1994; Eur. J. Clinical Nutr., 56, pp.1137-1142, 2002)、筋ジストロフィーの治療(Biochim. Biophys. Acta, 1271, pp.281-286, 1995)、ハンチントン病の治療(Ann. Neurol., 41, pp.160-165, 1997)、パーキンソン病の治療(Arch. Neurol., 59, pp.1541-1550, 2002)等を挙げることができる。また、コエンザイムQ10はサプリメントなどの健康食品としても利用されており、アルツハイマー病、パーキンソン病、若しくはハンチントン病の予防、がんの予防、老化防止、皮膚のシワの改善、疲労回復、動脈硬化の予防、又は糖尿病の予防などを目的として健康食品の成分として広く摂取されている。しかしながら、コエンザイムQ10について痩身作用は従来知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、痩身作用を有する医薬の有効成分及び上記作用を有する健康食品の成分を提供することにある。
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、コエンザイムQ10がヒトを含む哺乳類動物において痩身作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明により、痩身作用を有する医薬であって、コエンザイムQ10を有効成分として含む医薬が提供される。
また、本発明により、痩身作用を有する健康食品であって、コエンザイムQ10を含む食品が提供される。
【0007】
別の観点からは、上記の医薬又は健康食品の製造のためのコエンザイムQ10の使用が提供される。
さらに別の観点からは、哺乳類動物の痩身方法であって、コエンザイムQ10の有効量を経口的又は非経口的に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、上記医薬又は上記健康食品を用いて投与を行う上記方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医薬又は健康食品に含まれるコエンザイムQ10は哺乳類動物に対して痩身作用を有しており、ヒトを含む哺乳類動物の肥満防止、肥満抑制、体重の維持若しくは低減に有効である。特に、本発明の医薬又は健康食品は摂取カロリーを制限することなく体重を維持又は低減できるので高血圧、糖尿病、又は高脂血症などの生活習慣病などの予防などに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の医薬又は健康食品に含まれるコエンザイムQ10(2,3-ジメチル-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノン)を有効成分として含む医薬はすでに臨床で使用されているので、本発明の医薬としてすでに市販されている医薬を用いてもよい。例えば、ユビデカレノン製剤として、「エナチーム」(日本新薬株式会社)、「ノイキノン」(エーザイ株式会社)、又は「ノイクール」(協和発酵工業株式会社)などが提供されている。また、コエンザイムQ10を含む健康食品も多数提供されているので、本発明の健康食品としてそれらの健康食品を用いてもよい。
本発明の医薬又は健康食品に含まれるコエンザイムQ10が痩身作用を有することは実施例に具体的に説明した方法により当業者が容易に確認することが可能である。
【0010】
本発明の医薬の投与経路及び投与量は特に限定されないが、ヒトへの投与を行う場合には、例えば成人1日あたり有効成分であるコエンザイムQ10の重量として10〜1,000 mg程度の範囲で投与量を選択することができる。投与経路としては経口又は非経口のいずれの投与経路を選択することができる。好ましくは、50〜300 mg程度の範囲から投与量を選択し、経口的に投与することが望ましい。もっとも、上記の投与量は、患者の年齢、体重、若しくは症状、投与経路、所望の痩身作用の程度など種々の条件に応じて適宜増減することが可能であり、医師は適宜の投与量を選択できる。本発明の医薬は、上記の1日投与量を1日あたり1回投与してもよいが、1日投与量を2〜3回程度に分割して投与してもよい。
【0011】
本発明の医薬としてはコエンザイムQ10自体を用いてもよいが、好適には、本発明の医薬は有効成分であるコエンザイムQ10と1又は2以上の薬学的に許容される製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で提供される。本発明の医薬は、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、又は液剤などの経口投与用の医薬組成物として投与してもよく、あるいは静脈内投与、筋肉内投与、若しくは皮下投与用の注射剤又は点滴剤、坐剤、点鼻剤、又は点眼剤などの非経口投与用の医薬組成物として投与することもできる。製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、又は粘着剤等を用いることができ、医薬組成物の形態に応じて適宜のものを選択して使用することが可能である。
【0012】
本明細書において「医薬」という用語は疾病の予防及び/又は治療のために肥満を予防若しくは抑制するなど、医学的見地から痩身を目的としてコエンザイムQ10を投与するための任意の態様を包含しており、薬事法に規定された医薬品としての使用のほか、医薬部外品としての使用などを包含する。
また、本明細書において「食品」という用語は食品衛生法で定義される食品を意味しており、薬事法(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除いたすべての飲食物を意味している。本明細書において「健康食品」という用語は、疾病の予防や健康維持のために用いられる飲食物を意味している。本発明の健康食品は痩身作用を発揮することにより、肥満の予防や抑制、体重の維持若しくは低減、内臓脂肪の低減などにより高血圧、高脂血症、糖尿病などに代表される生活習慣病などの疾病の予防及び健康維持を達成することができる食品である。好ましい食品形態としては飲料類、菓子類、又は加工食品類などを例示することができるが、これらに限定されることはない。
【0013】
本発明の医薬又は健康食品はヒトを含む哺乳類動物に適用することができる。ヒト以外の哺乳類動物の種類は特に限定されないが、例えば、ネコやイヌなどのペット動物のほか、ウシやウマなどの家畜類なども含まれる。好ましい適用対象はヒト又はペット動物(イヌ又はネコなど)である。本発明の医薬を家畜類などに投与する場合、飼料中にコエンザイムQ10を配合することが望ましい。また、本発明の医薬をペット動物に対して投与する場合には、ドッグフード又はキャットフードなどにコエンザイムQ10を配合すればよい。また、上記のようにしてコエンザイムQ10を配合した家畜用飼料やペット動物用フードを健康食品として使用することもできる。
【0014】
本発明の医薬又は健康食品は痩身作用を有しており、ヒトを含む哺乳類動物において、体重の維持若しくは低減、肥満の予防若しくは抑制、又は内臓脂肪の蓄積の予防、抑制、若しくは低減などの作用を発揮できる。本明細書において「痩身」又はその類義語は体重の低減のみならず、上記の作用を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
コエンザイムQ10(有限会社康源製)をコーン油に溶解させ、45℃の水浴中マグネチックスターラーで均一になるように溶解させて、コエンザイムQ10溶液を調製した。
日本クレア社から5週令の雌ラットを26匹購入した。ラットを1週間飼育した後、6週令のラットとして、26匹の内、20匹を使用した。コエンザイムQ10投与群は、コエンザイムQ10溶液を経口投与した(1,000 mg/kg/dayの投与量として10匹を1群として使用)。経口投与開始時のラットの体重は、116−126 gであった。動物は、温度:22±3℃;湿度:50±20%;換気:1時間当たり10回以上(全て新鮮空気);照明:一日12時間の条件下で飼育した。食餌は給仕瓶からMFマッシュ(オリエンタル酵母社製)を自由に与えた。水は迅速フィルターユニットでろ過後、次亜塩素酸ナトリウムで滅菌し、さらにUV照射したものをプラスチック瓶に入れて動物に自由に与えた。溶媒投与群を陰性対照として設けた(10匹)。
【0016】
コエンザイムQ10検体溶液の動物への経口投与を31日間続けた。この経口投与方法は、臨床的なヒトへの投与と同一の投与ルートを用い、かつ医薬品の反復投与毒性試験で一般的に用いられている手法でもある。具体的には、コエンザイムQ10検体溶液を水浴中で45℃に維持して視覚的に検体溶液の均一性並びに物理的及び化学的劣化をチェックした後、40℃の水浴中でスターラーバーで攪拌しながらシリンジに注入して、該シリンジから強制的に動物の胃内にゾンデで投与した。投与は、本試験中にわたり毎日同一時間に行った。1,000 mg/kg/day投与群ではコエンザイムQ10の濃度を250 mg/mlに調整して4 ml/kgの容量でラットに経口投与した。体重の測定は、コエンザイムQ10投与開始時、及び毎週1回行った。各群の動物の平均体重は各群の全ての動物の測定値から求めた。結果を表1に示す。対照群と比較してコエンザイムQ10投与群においては体重の変化がほとんど認められなかった。
【0017】
【表1】

【0018】
また、食餌量を第1週から第3週については7日連続で、第4週については4日連続で測定した。個体ごとの毎日の食餌量を各週について計算し、各群の平均食餌量(g/rat/day)をそれらの個々のデータから計算した。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
上記の結果をまとめて表3に示す。第1週及び第4週における食餌量をダネットの多重比較検定で解析したところ、p<0.01(表3中、*で示した)で有意に増加していることが分かった。コエンザイムQ10投与群では対照群と比較して体重変化がないことから、食餌量を一定のレベルに管理すれば体重は減少することが示唆された。
【0021】
【表3】

【0022】
例2
実験動物としてマウスを用い、例1と同様にしてコエンザイムQ10溶液を経口投与した(1,000 mg/kg/dayの投与量として10匹を1群として使用)。投与期間は21日間とし、毎日同時刻に投与を行った。陰性対照として溶媒投与群を設けた。その結果、第3週においてコエンザイムQ10投与群は対照グループと比較して食餌量が7%増加したが、体重の変化がほとんど認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
痩身作用を有する医薬であって、コエンザイムQ10を有効成分として含む医薬。
【請求項2】
ヒトを含む哺乳類動物に対して用いる請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
哺乳類動物がヒト又は哺乳類ペット動物である請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
哺乳類ペット動物がイヌ又はネコである請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
痩身作用を有する健康食品であって、コエンザイムQ10を含む健康食品。
【請求項6】
飲料、菓子、又は加工食品の形態である請求項2に記載の食品。

【公開番号】特開2007−176804(P2007−176804A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373905(P2005−373905)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(504141768)ZMC−KOUGEN株式会社 (4)
【Fターム(参考)】