癌の治療および診断
【課題】前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識するか、または前立腺特異的膜抗原に結合あるいはそれで取り込まれる抗体、その結合部分、プローブ、リガンドまたは他の生物薬剤の提供。
【解決手段】生物薬剤は標識され、癌性細胞の検出に用いられる。特に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞に近接するか、またはこれを含有する癌性組織の検出に用いられる。標識された生物薬剤は、正常、良性増殖性または癌性前立腺上皮細胞、またはその部分の検出にも用いられる。生物薬剤は、単独で、あるいは前立腺または他の癌の治療として該細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質と共に用いられる。また、4ハイブリドーマ細胞系が開示され、その各々が正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体を産生する。
【解決手段】生物薬剤は標識され、癌性細胞の検出に用いられる。特に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞に近接するか、またはこれを含有する癌性組織の検出に用いられる。標識された生物薬剤は、正常、良性増殖性または癌性前立腺上皮細胞、またはその部分の検出にも用いられる。生物薬剤は、単独で、あるいは前立腺または他の癌の治療として該細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質と共に用いられる。また、4ハイブリドーマ細胞系が開示され、その各々が正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体を産生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1996年7月18日提出の米国仮特許出願60/022,125の利益を享受し、1996年5月6日提出の米国仮特許出願60/016,976の利益を享受する1997年4月9日提出の米国特許出願08/838,682の一部継続である。
【0002】
発明の分野
本発明は生物薬剤による癌の治療および診断に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある種の癌の治療が改善されてきたにもかかわらず、癌は米国において未だに死亡原因のトップである。癌を完全に寛解する可能性は、多くの場合、初期診断によって非常に高められるので、実質的な腫瘍が広がる前に、内科医が癌を検知できることが非常に望ましい。しかしながら、多くの種類の癌を迅速かつ正確に検知できる方法の開発が医学界に求められ続けている。そのような実例となるひとつの癌の種類は前立腺癌である。
【0004】
前立腺癌は、男性に最も多い癌であり、1996年、米国において推定317,000症例とされている。腫瘍により死亡する男性における死因の第2位であり、推定で年間40,000人が死亡している。前立腺癌による死亡率を抑制するために迅速な発見と治療が必要とされている。
【0005】
前立腺癌の発見
癌細胞の転移において、前立腺癌は骨およびリンパ節に転移する明確な傾向を有する。Saitoh.et al.,"Metastatic Patterns of Prostatic Cancer. Correlation Between Sites And Number of Organs Involved."Cancer,54:3078-3084(1984)。臨床診断において、放射性核種走査により患者の25%に骨への転移が認められている。Murphy,G.P.,et al.,"The National Survey Of Prostate Cancer In The United States By The American College Of Surgeons,"J.Urol.,127:928-939(1982)。結節での併発を正確に臨床上判定することは困難である。コンピュータ断層撮影法("CT")あるいは磁気共鳴("MR")映像法のようなイメージング技術により、リンパ節の転移性前立腺癌併発をサイズ(すなわち、>1cm)とは別の基準によって識別することは不可能である。従って、当然これらのイメージング様式は本来、大きい容積のアデノパシーの発見において非特異的であり、小さい容積(<1cm)の疾病の発見において感受性が鈍い。最近の研究において、臨床的に局在性の前立腺癌の患者におけるMRの正確さが調査された。Rifkin et al.,"Comparison Of Magnetic Resonance Imaging And Ultrasonography In Staging Early Prostate Cancer,"N.Engl.J.Med.,323:621-626(1990)。この研究において、194人の患者がMRを受け、そのうち185人の患者がリンパ節切開を受けた。23人(13%)の患者で病理的にリンパ節に併発があった。4%の感受性となる23症例のうち唯1例においてMRが疑わしかった。同様の結果がCTスキャンについても見られた。Gasser et al.,"MRI And Ultrasonography In Staging Prostate Cancer,"N.Engl.J.Med.(Correspondence),324(7):49-495(1991)。
【0006】
前立腺癌転移の患者における血清酸性ホスファターゼ活性の増加が最初、Gutman et al.によりJ.Clin.Invest 17:473(1938)に報告された。前立腺の癌において、前立腺酸性ホスファターゼは癌組織から血流へと放出され、その結果、全血清酸性ホスファターゼレベルは正常値よりはるかに増加する。この酵素およびその前立腺癌との関係について数多くの研究がその当時からなされてきた(例えば、Yam,Amer.J.Med.56:604(1974))。しかしながら、血清酸性ホスファターゼの測定値は、骨に転移した前立腺の癌腫がある患者の約65〜90%;X線による骨への転移の証拠がない患者の約30%;臨床的に明らかな転移がない患者の約5〜10%のみにおいて増加した。
【0007】
前立腺酸性ホスファターゼに関する特異的試験を開発しようとする先行技術の試みは、限定的な成功しか納めていない。なぜなら、いわゆる“特異的”基質に対する酵素活性を基とする技術は、前立腺起源の酵素活性とは無関係の多くの酸性ホスファターゼにおいて他の生化学的および免疫化学的差異を考慮し得ないからである。イソ酵素の場合、すなわち同じ特徴的酵素活性および同様の分子構造を有するが、アミノ酸配列および/あるいは含量が異なる、従って、免疫化学的には区別され得る、遺伝子学的に定義された酵素の場合、特定の基質を選択するだけで種々のイソ酵素の形態を識別することは、本来不可能であると思われる。 従って、これらの先行技術の方法において、前立腺酸性ホスファターゼ活性の直接的測定に関して非常に特異的なものが何もないことは驚くべきことではない;例えば、参照Cancer 5:236(1952);J.Lab.Clin.Med.82:486(1973);Clin.Chem.Acta.44:21(1973);and J.Physiol.Chem.356:1775(1975)。
【0008】
前立腺酸性ホスファターゼの検出に使用される先行技術の試薬の多くに特有であるとみられる上記の非特異性の問題に加え、他の疾病と関連のある血清酸性ホスファターゼの増加についての報告があり、前立腺癌の正確な臨床診断についての問題をさらに複雑にしている。例えば、Tuchman et al.,Am.J.Med.27:959(1959)はゴーシェ病患者の血清酸性ホスファターゼレベルが上昇するらしいことに注目している。
【0009】
前立腺酸性ホスファターゼのための“特異的”基質の開発が本来難しいので、数人の研究者が前立腺酸性ホスファターゼの検出に関する免疫化学的方法を開発してきた。しかしながら、先に報告された免疫化学的方法には広範囲の受容を妨げるというそれ自身の欠点がある。例えば、Shulman et al.,Immunology 93:474(1964)はヒト前立腺酸性ホスファターゼの検出のための免疫−拡散法試験を記載している。前立腺疾病の患者から直腸マッサージによって得られる前立腺液抗原から製造される抗血清を使用し、正常な腎臓、睾丸、肝臓および肺の抽出物に対する二重拡散技術において交差反応沈降素ラインは観察されなかった。しかしながら、この方法は、抗原が大量に使用されても、および前立腺液に存在する抗原的に無関係の血清タンパク質成分といった他のものと交差反応することがある抗血清が大量に使用されても、感受性が限定的であるという不都合を有する。
【0010】
Chu et al.のWO79/00475には、上記の欠点の多くを取り除く前立腺癌関連の前立腺酸性ホスファターゼイソ酵素パターンの検出のための方法が記載されている。しかしながら、実際の問題は、診断上意味のある前立腺癌関連の前立腺酸性ホスファターゼイソ酵素パターンがその抗体の製造のために抽出される癌前立腺組織の源を必要とすることから生じている。
【0011】
最近、特異的診断用試薬の開発の目的で、様々なタイプの悪性腫瘍についての酵素あるいは抗原マーカーを同定するために多大な努力が費やされている。理想的な腫瘍マーカーは、他の特性において組織あるいは細胞型についての特異性を示す。先の研究者らはヒト前立腺の組織特異的抗原の発生を証明している。
【0012】
前立腺癌の治療
W.J.Catalona,"Management of Cancer of the Prostate,"New Engl.J.Med.,331(15):996-1004(1994)に記載されているように、前立腺癌への対応は、注意深く見守ること、治療的処置をとること、および対症処置を行うことによって達成され得る。
【0013】
平均余命が10年以下の男性において、良性の前立腺肥大の部分的切除の際に、低程度で低段階の前立腺癌が発見された場合、注意深く見守ることが肝要である。このような癌は発見後の最初の5年間で進行することはめったにない。一方、若い男性にとって、治療はしばしばより適切である。
【0014】
前立腺癌が局在性であり、患者の平均余命が10年あるいはそれ以上の場合、前立腺の全切除は疾病の根絶のための最良の可能性を提供する。歴史的に、この方法の欠点は、癌が発見されたときにはほとんどの癌が手術の限界を越えてしまっていることである。しかしながら、前立腺特異的抗原試験の使用は、前立腺癌の早期発見につながる。結果として、合併症は少なく、外科手術は広範囲に及ばずに済む。大きい、高程度の腫瘍がある患者は、前立腺の全切除によって好結果の治療を受ける見込みは低い。
【0015】
外科手術後、血清前立腺特異的抗原が検出可能な濃度にある場合、残存する癌を示している。多くの場合、前立腺特異的抗原濃度は放射線治療によって低下する。しかしながら、この濃度は2年以内にしばしば再び増加する。
【0016】
放射線療法は前立腺の全切除に代わる手段としても広く使用されてきた。一般に放射線療法によって治療される患者は、高齢の健康でない者や高程度の臨床的に進行した腫瘍を有する者である。特に好ましい方法は、放射線の領域を治療される組織の容量に適合するように設定されている3次元の適合放射線療法を伴う外線療法;放射線化合物の種子が超音波誘導によって移植される介在性放射線療法;および外線療法と介在性放射線療法の組み合せである。
【0017】
局部的に進行した疾病の患者の治療には、前立腺の全切除あるいは放射線療法の前あるいは後にホルモン療法が利用されてきた。ホルモン療法は前立腺癌が拡大してしまった男性を治療する主要な手段である。睾丸摘除は血清テストステロン濃度を減じ、エストロゲン治療も同様に有益である。エストロゲンからのジエチルスチルベストロールは、別の有用なホルモン療法であるが、心臓血管系の障害を起こす不都合を有する。ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストが投与されると、テストステロン濃度は最終的に減少する。フルタミドおよび非ステロイド、抗−アンドロゲン剤は、テストステロンがその細胞内受容体と結合するのを阻害する。結果として、血清テストステロン濃度が増加しながら、また患者に性的能力が残存したままでフルタミドはテストステロンの効果を阻害する。性的能力については、前立腺の全切除および放射線治療の後では、重要な問題である。
【0018】
細胞毒性化学療法は前立腺癌治療においてほとんど効果がない。この療法はその毒性のために高齢患者にとって不適切となる。さらに、前立腺癌は比較的細胞障害剤に抵抗力がある。
【0019】
前立腺癌の発見と治療におけるモノクローナル抗体の使用
理論的には、放射ラベルモノクローナル抗体(“mAb”)は、リンパ節内および他の部位内の前立腺癌の発見に対する感受性および特異性の両方を高める能力を提供する。多くのmAbがすでに前立腺関連抗原に対して製造されてきたが、一方イメージング目的として特に製造されたものはない。しかしながら、臨床的な必要性からこれらmAbのいくつかが可能なイメージング試薬として検討されてきた。Vihko et al.,"Radioimaging of Prostatic Carcinoma With Prostatic Acid Phosphatase-Specific Antibodies,"Biotechnology in Diagnostics, 131-134(1985);Babaian et al.,"Radioimmunological Imaging of Metastatic Prostatic Cancer With 111-Indium-Labeled Monoclonal Antibody PAY 276,"J.Urol.,137:439-443(1987);Leroy et al.,"Radioimmunodetection of Lymph Node Invasion In Prostatic Cancer.The Use of Iodine 123(123-I)Labeled Monoclonal Anti-Prostatic Acid Phosphatase(PAP)227 A F(ab')2 Antibody Fragments In Vivo," Cancer, 64:1-5(1989);Meyers et al.,"Development of Monoclonal Antibody Imaging of Metastatic Prostatic Carcinoma,"The Prostate, 14:209-220(1989)。
【0020】
いくつかの場合、前立腺癌の発見および/または治療のために開発されたモノクローナル抗体は、悪性の前立腺組織に特異的な抗原を認識する。従って、このような抗体は悪性前立腺組織を(治療あるいは検出のため)良性前立腺組織と区別するために使用される。参照、Bazinet et al.の米国特許第4,970,299およびFreeman et al.の米国特許第4,902,615。
【0021】
他のモノクローナル抗体は、癌性あるいは良性のすべての前立腺表皮細胞上で表面抗原と反応する。参照、Chu et al.の米国特許第4,446,122およびRe33,405、McEwan et al.の米国特許第4,863,851およびUeda et al.の米国特許第5,055,404。しかし、これらのモノクローナル抗体によって検出される抗原は、血液中に存在し、従って、モノクローナル抗体について腫瘍部位での抗原と競合する。これは、インビボでのイメージングにおけるこのような抗体の使用が不適当となるノイズを引き起こす。治療において、このような抗体は、細胞障害剤と結合する場合、他の組織に有害となり得る。
【0022】
Horoszewicz et al.,"Monoclonal Antibodies to a New Antigenic Marker in Epithelial Prostatic Cells and Serum of Prostatic Cancer Patients," Anticancer Research, 7:927-936(1987)("Horoszewicz")およびHoroszewiczの米国特許第5,162,504は、前立腺特異的細胞膜抗原("PSMA")を認識する7E11と名付けられた抗体について記載している。Israeli et al.,"Molecular Cloning of a Complementary DNA Encoding a Prostate-specific Membrane Antigen, "Cancer Research, 53:227-230(1993)("Israeli")は、PSMAのクローニングおよび配列決定について記載し、PSMAが前立腺特異的であると報告し、転移部位およびホルモン不応性状態において発現レベルが増加していることを示している。他の研究によれば、PSMAは正常な前立腺からの細胞または良性過形成を有する前立腺からの細胞と比較して、前立腺癌細胞においてより強く発現することが示されている。さらに、PSMAは血清中に見出されない(Troyer et al.,"Detection and Characterization of the Prostate-Specific Membrane Antigen(PSMA)in Tissue Extracts and Body Fluids,"Int.J.Cancer,62:552-558(1995))。
【0023】
これらの特徴がPSMAを前立腺癌のイメージングおよび療法における抗体介在標的法について魅力的な対象としている。インジュウム標識7E11を用いるイメージング研究によれば、抗体は前立腺および転移部位の両方に非常によく局在することが示された。さらに、7E11は、CTおよびMRイメージングまたは骨シンチグラフィのような現在利用可能な他のイメージング技術と比較して、病変の検知に明らかに優れた感受性を有するようである。Bander,"Current Status of Monoclonal Antibodies for Imaging and therapy of Prostate Cancer,"Sem.In Oncology,21:607-612(1994)。
【0024】
しかしながら、イメージングおよび治療を提供するために7E11および他の既知の抗体をPSMAに使用することは、いくつかの不都合を有する。最初に、PSMAは短い細胞内テイルおよび長い細胞外ドメインを有することが知られている必須細胞膜タンパク質である。生化学的特徴およびマッピング(Troyer et al.,"Biochemical Characterization and Mapping of the 7E11-C5.3 Epitope of the Prostate-specific Membrane Antigen," Urol.Oncol.,1:29-37(1995))は、7E11抗体の結合するエピトープまたは抗原部位が分子の細胞内部分に存在することを示している。正常な環境下では、抗体分子が分子の細胞外部分と結合し、細胞内に転座しない限り、抗体分子は細胞膜を通過しないので、7E11抗体は他の健康な生長細胞においてその抗原標的部位とアクセスしない。
【0025】
従って、7E11を用いるイメージングは、腫瘍蓄積内の死亡細胞の検知に限定される。さらに、7E11抗体の治療への使用は、すでに死んだ細胞または大部分が死亡細胞である組織だけが効果的に標的され得るので、限定される。
【0026】
ひとつの特定の癌の種類の診断および治療における不適当および問題が先の議論の焦点であるが、前立腺癌は単に代表的モデルに過ぎない。数多くの他の癌の診断および治療が類似の問題を抱えている。
【発明の概要】
【0027】
本発明は前立腺癌および他のタイプの癌の診断および治療における先行技術の抗体の欠点を克服することに関する。
発明の要約
本発明のひとつの実施態様は、癌性細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原を認識する生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に、この血管性内皮細胞に生物薬剤を結合することと癌性細胞を殺すまたは切除することの両方を可能とするのに効果的な条件で、接触する。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合した際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質と結合して、用いられる。
【0028】
本発明における癌性細胞を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様では、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、該細胞の前立腺特異的膜抗原で取り込まれる。本発明における癌性細胞を切除または殺す方法に使用するのに好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。本発明の方法は、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。
【0029】
本発明の他の実施態様は、生物サンプルにおける癌性組織を検出する方法である。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプルにおける癌性組織の存在が標識の検出により検出される。
【0030】
本発明で癌性組織を検出する特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれるものである。本発明で癌性組織の検出方法での使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。本発明の方法は、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞を検出するのに特に有用である。
【0031】
本発明のさらに他の実施態様は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または細胞に生物薬剤が結合した際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合して、用いられる。この生物薬剤は細胞に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触する。
【0032】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法についての特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法における使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。
【0033】
本発明の他の実施態様は、生物サンプル中の正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に、細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプル中の細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプル中の細胞またはその部分の存在が標識の検出により検出される。
【0034】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法における使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。
【0035】
本発明の他の実施態様は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する生物薬剤に関する。好ましい実施態様において、単離された生物薬剤は前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。本発明における前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する好ましい単離生物薬剤は、単離された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。これらのタイプのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も開示される。
【0036】
本発明の生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞の抗原の細胞外ドメインを認識する。細胞溶解後に細胞外に露出される前立腺連関抗原のエピトープを認識する7E11抗体と異なり、本発明の生物薬剤は、生きている前立腺細胞において細胞外に露出される抗原性エピトープに結合する。本発明の生物薬剤を用いて、生きている、固定されていない正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を標的とすることができ、それによって治療および診断をより効率的にする。前立腺癌を処置するための好ましい実施態様において、本発明の生物薬剤は前立腺特異的膜抗原に結合もし、それで取り込まれ、よって細胞内で作用する細胞障害剤の医療的使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、4℃でのインキュベーション後のLNCaP細胞表面の金標識モノクローナル抗体J591の免疫電子顕微鏡図である。
【図2】図2は、37℃でのインキュベーション5分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図3】図3は、37℃でのインキュベーション10分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図4】図4は、37℃でのインキュベーション15分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図5】図5は、エンドソーム中に37℃で示した15分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞表面の免疫電子顕微鏡図である。
【図6】図6は、モノクローナル抗体J591の重鎖の配列決定戦略の概要を表す。
【図7A】図7Aは、モノクローナル抗体J591の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号1)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)および対応演繹アミノ酸配列(配列番号3、4および5)を示す。
【図7B】図7Bは、モノクローナル抗体J591の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号1)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)および対応演繹アミノ酸配列(配列番号3、4および5)を示す。
【図8】図8は、モノクローナル抗体J591の重鎖とマウス重鎖サブグループIIAについての共通配列との比較である。
【図9】図9は、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖の配列決定戦略の概要を示す。
【図10A】図10Aは、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号9)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号10)および対応演鐸アミノ酸配列(配列番号11、12および13)を示す。
【図10B】図10Bは、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号9)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号10)および対応演鐸アミノ酸配列(配列番号11、12および13)を示す。
【図11】図11は、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖とマウスカッパ鎖サブグループVについての共通配列との比較である。
【図12】図12A−12Fは、種々の癌腫の血管新生に対するmAB J591の免疫組織化学的反応性を示す顕微鏡図(倍率250X)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な記述
本発明のひとつの実施態様は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメイン(すなわち、該細胞の外にある前立腺特異的膜抗原の部分)に結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または細胞に生物薬剤が結合した際に癌性細胞を殺すのに効果的な物質と結合して、用いられる。この生物薬剤は細胞に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触する。 好ましい形において、該接触は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、生きている哺乳動物に生物薬剤を投与することによりその哺乳動物中で実施される。この投与は経口または非経口でなされ得る。
【0039】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。また、生物薬剤は単独で使用することができる。
あるいは、生物薬剤は、生物薬剤が前立腺特異的膜抗原に結合する際および生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合させることができる。
【0040】
生物薬剤を前立腺特異的膜抗原で取り込むメカニズムは、本発明の実施にとってあまり重要でない。例えば、生物薬剤は前立腺特異的膜抗原の取り込みを誘発する。他方、生物薬剤の取り込みは前立腺特異的膜抗原の通常的な取り込みの結果でもあり得る。
【0041】
上記の生物薬剤(すなわち、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識し、好ましくはそれで取り込まれる)は、癌性細胞を切除または殺すのに用いられる。本発明の好ましくは実施態様において、生物薬剤は、単独で用いられるか、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合した際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合して用いられる。生物薬剤は癌性細胞に近接する血管性内皮細胞に接触される。この接触は、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合するのに効果的な条件および加えるに癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な条件で、実施される。癌性細胞が切除または殺されるメカニズムは,本発明の実施にとってあまり重要でない。例えば、癌性細胞は、生物薬剤が結合する血管性内皮細胞へのその近接性の結果として、生物薬剤により直接的に切除または殺される。あるいは、生物薬剤は、血管性内皮細胞に近接の癌性細胞への血流を止めるか、さもなければ減少して、それにより癌性細胞を殺すまたは切除するように、血管性内皮細胞を殺しまたは切除し、さもなければその性質を変えることができる。このように、本発明の方法は、癌性組織または癌性組織を含有する癌性細胞における血管性内皮細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。
【0042】
本発明で癌性組織を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合し、それで取り込まれるものである。本発明の方法は、癌性前立腺上皮細胞あるいはそれ以外の癌性細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。癌性前立腺上皮細胞でない癌性細胞の例として、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞がある。本発明方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインおよびその部分を発現する細胞、および前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインおよびその部分を発現する細胞に生存を依存しているすべての細胞を殺すまたは切除するのに有用であり得るが、癌性細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。なぜなら、癌性細胞(例えば、腫瘍、癌性細胞の集団または他の癌性塊)に血液を供給する血管性内皮細胞は、関連する癌の種類にかかわらず前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現するからである。これに対し、正常組織に血液を供給する血管性内皮細胞は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現しない。
【0043】
本発明の他の実施態様は、生物サンプル中の正常、良性増殖性および癌性上皮細胞を検出する方法に関する。この方法は、該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に、細胞またはその部分(例えば、該正常、良性増殖性および癌性上皮細胞から遊離した前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメント)の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプル中の細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプル中の細胞またはその部分の存在が標識の検出により検出される。好ましい形において、該接触は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、生きている哺乳動物に生物薬剤を投与することによりその哺乳動物中で実施される。また、この投与は経口または非経口でなされ得る。
【0044】
本発明の方法は、正常、良性増殖性および癌性の上皮細胞またはその部分に関連する疾患について患者を識別するのに用いることができる。他方、このような疾患、特に患者の特定の生物的物質に局在している疾患の再発を同定するのに用いられる。例えば、放射線での前立腺切除後、前立腺窩に疾患が再発することがある。本発明方法を用いると、短射程放射標識抗体を投与し、標識を直腸において経直腸検出プローブなどで検出することにより、再発が調べられる。
【0045】
一方、接触工程は、血清、尿あるいは他の体液などのサンプルにおいて、例えば、体液中のPSMAを検出するために実施される。接触が血清または尿サンプルでなされるときは、生物薬剤がPSMA以外の血中を循環する抗原を実質的に認識しないことが好ましい。無傷の前立腺細胞はPSMAを細胞外環境に排出も分泌もしないので、血清、尿または他の体液中にPSMAが検出されると前立腺細胞が溶解していることを一般的に表す。このように、本発明の生物薬剤および方法は、血清、尿または他の体液におけるPSMAのレベルを監視することにより、前立腺癌に対する処置法の効果を調べるのに用いることができる。
【0046】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出方法の特に好ましい実施態様において、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。また、生物薬剤が前立腺特異的膜抗原に結合し、またはそれで取り込まれる際に、生物薬剤は、細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識に結合している。
【0047】
本発明の他の実施態様は、生物サンプルにおける癌性組織を検出する方法である。この方法は、上記の生物薬剤(すなわち、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤)を提供することを含む。生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは標識を有する生物薬剤に接触される。接触は、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で行われる。生物サンプルにおける癌性細胞またはその部分の存在が標識の検出により調べられる。
【0048】
全体の生物サンプルを生物薬剤に接触させるよりも、部分的な生物サンプルを使用することが考えられる。例えば、組織生検サンプルを生物薬剤に接触せしめて、組織生検サンプル中の癌性組織の存在を、元の大きい生物サンプルと同様に、調べる。あるいは、生物薬剤を血清または尿サンプルに接触せしめて、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞が存在するかどうかを確認する。前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞は、癌性組織の血管系に存在し、正常組織の血管系には見出されないので、血清または尿サンプルにおける標識の検出は、元の大きい生物サンプル(例えば、患者)における癌性組織の存在を表す。
【0049】
本発明で癌性組織を検出する特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれるものである。本発明の方法は、癌性の前立腺上皮細胞および癌性前立腺上皮細胞以外の癌性細胞を含有する癌性組織を検出するのに用いられる。本発明で検出できる癌性前立腺上皮細胞以外の癌性細胞を含有する癌性組織の例としては、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞がある。
【0050】
上述のように、癌性細胞、正常、良性増殖性および前立腺上皮細胞を殺すまたは切断する、あるいはこれらを検出するのいずれにも適している生物薬剤には、モノクローナルまたはポリクロナール抗体などの抗体が含まれる。さらに、抗体フラグメント、半抗体、ハイブリド誘導体、プローブおよび他の分子構築体を用いることができる。抗体、その結合部分、プローブおよびリガンドなどの生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞における前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインまたはその部分に結合する。結果として、正常、良性増殖性および前立腺上皮細胞を殺すまたは切断する、あるいはこれらを検出する本発明の方法を行うときに、生物薬剤はすべてのこのような細胞に、固定されている細胞や細胞外環境に細胞内抗原性ドメインが露出している細胞のみでなく、結合する。その結果として、生物薬剤の結合は、前立腺上皮細胞が固定または非固定、生存または壊死であるにかかわらず、この細胞が存在する場所に集中する。加えるにまたは別に、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞中の前立腺特異的膜抗原またはその部分に結合し、またはそれで取り込まれる。
【0051】
モノクローナル抗体の製造は、よく知られた技術でなされる。基本的に、望む抗原によりインビトロまたはインビボのいずれかで予め免疫された哺乳動物(例えば、マウス)の脾臓由来の免疫細胞(リンパ球)を最初に得ることを含む。抗体分泌リンパ球は(マウス)ミエローマ細胞または形質転換細胞と融合さす。これらの細胞は、細胞培養中で際限なく複製され、不死の免疫グロブリン分泌細胞系を産生し得るものである。この融合細胞すなわちハイブリドーマを培養し、得たコロニーを望むモノクローナル抗体の産生のためにスクリーンする。このような抗体を産生するコロニーをクローン化し、インビトロまたはインビボで成長せしめて、多量の抗体を製造する。このような細胞の融合についての理論的基本および実際的方法は、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0052】
哺乳動物のリンパ球を本発明のタンパク質またはペプチドで動物(例えば、マウス)のインビボ免疫により免疫する。この免疫を数週間までの間隔で必要に応じて繰り返し、十分な力価の抗体を得る。最後の免疫強化後に動物を殺し、脾細胞を取り出す。
【0053】
哺乳動物のミエローマ細胞または細胞培養中で際限なく複製できる他の融合相手との融合は、標準的な既知の技術、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や他の融合剤を用いて行われる(参照、Milstein and Kohler,Eur.J.Immunol.6:511(1976)、出典明示により本明細書の一部とする)。この不死の細胞系は、好ましくはネズミであるが、限定的でなくラットやヒトを含む他の哺乳動物の細胞からも誘導され、選択されて、ある種の栄養物の利用に必要な酵素を欠き、成長が速く、融合能の高いものを得る。これらの細胞系の多くは当業者に知られており、その他の系も常に報告されている。
【0054】
ポリクローナル抗体を増大する方法もよく知られている。典型的には、かかる抗体は、本発明のタンパク質またはポリペプチドをニュージランド白兎(プレ免疫血清を得るために、まず採血する)に皮下投与することにより、増殖される。
抗原を6カ所の異なる場所に1カ所につき計100μl注射する。各注射物質には、合成表面活性アジュバント・プルロニックポリオールまたはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後のタンパク質やポリペプチド含有の微細アクリルアミドゲルが含まれる。最初の注射2週間後にウサギから採血し、次いで定期的に同じ抗原で3回6週おきに免疫強化する。各強化10日後にサンプルの血清を採取する。抗体を捕らえる対応抗原を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより血清からポリクローナル抗体を得る。最後にウサギをフェノバルビタール150mg/kgIVで安楽死させる。ポリクロナール抗体を得るこの方法および他の方法は、E.Harlow,et al.,editors,Antibodies:A Laboratory Manual(1988)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0055】
抗体全体の使用に加えて、本発明の方法は該抗体の結合部分の利用にも関する。この結合部分には、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントが含まれる。これらの抗体フラグメントは、タンパク質分解フラグメンテイション法などの従来法によりつくられる。これは、J.Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.98-118(N.Y.Academic Press 1983)
(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0056】
別の手段として、本発明方法において、天然に存在するプローブまたはリガンド、または組換えDNA法あるいは他の生物学的方法により合成されたプローブまたはリガンドが使用される。適当なプローブまたはリガンドは、本発明のモノクローナル抗体により同定される前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する分子である。他の適当なプローブまたはリガンドは、前立腺特異的膜抗原に結合、またはそれで取り込まれる分子である。該プローブまたはリガンドは、例えばタンパク質、ペプチド、レクチンまたは核酸のプローブで有り得る。
【0057】
下記の表1に同定されるモノクローナル抗体を使用するのが特に好ましい。
【0058】
【表1】
【0059】
これらの抗体は、単独で,または他の抗体または他の生物薬剤との混合物中の成分として、癌を治療し、あるいは癌性組織(特に、そのうちの血管性内皮細胞)または種々の表面抗原特性を有する前立腺上皮細胞を造影するために、用いられる。
【0060】
生物薬剤が治療または診断のいずれに使用されるにかかわらず、生物薬剤は、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点鼻、空洞または小胞点滴、点眼、動脈内、病巣内に投与され、または鼻、喉および気管支などの粘膜に適用される。単独で投与されるか、薬学的あるいは生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤とともに投与され、そして錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルションなどの固体または液体の形態をとる。
【0061】
固体の単位用量形態は通常のタイプであり得る。固体形態は、本発明の抗体やその結合部分などの生物薬剤および担体、例えば滑沢剤やラクトース、スクロースまたはトウモロコシデンプンなどの無活性充填剤を含有する通常のゼラチンタイプなどのカプセルであり得る。他の実施態様において、これらの化合物は、ラクトース、スクロースまたはトウモロコシデンプンなどの通常の錠剤基剤をアカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤およびステアリン酸やステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と併用して錠剤にされる。
【0062】
本発明の生物薬剤は、薬学的担体と共に生理的に許容される希釈剤中のこれらの物質の溶液または懸濁液により注射可能な用量形態でも投与され得る。この担体には水や油などの無菌の液体があり、それに界面活性剤およびアジュバント、賦形剤または安定剤などを含む他の薬理学的および栄養学的に許容される担体が加えられたり、加えられなかったりする。上記した油は、石油、動物、植物、合成を起源とし、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油である。一般的に、水、塩水、水性デキストールおよび関連糖溶液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい液体担体、特に注射用の担体である。
【0063】
エアゾルとしての使用のために、溶液や懸濁液中の本発明の生物薬剤は、適当な噴霧剤、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素系噴霧剤、通常のアジュバンドとともに、加圧エアゾル容器に充填され得る。本発明の物質はネブライザーやアトマイザーなどの非加圧形態でも投与され得る。
【0064】
生物薬剤は、インビボで癌性組織(特に、そのうちの血管性内皮細胞)、および正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出するのに、用いられる。生物薬剤を標識し、それを哺乳動物に投与し、哺乳動物を造影して、検出する。
【0065】
本発明による診断造影に有用な標識の例には、131I,111In,123I,99mTc,32P,125I,3H,14Cおよび188Rhなどの放射標識、フルオレセインおよびローダニンなどの蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、ルシフェリンなどの化学発光体、ペロキシダーゼまたはホスファターゼなどの酵素マーカーがある。経直腸プローブなどの短射程検出プローブのような短射程放出体も使用される。これらの放射同位体および経直腸検出プローブは、併用されるとき、前立腺窩再発および骨盤結節疾患を検出するのに特に有用である。生物薬剤は既知の技術を用いてこれらの試薬で標識される。例えば、抗体の放射標識については、Wensel and Meares,Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy,Elsevier,NewYork(1983)(出典明示により本明細書の一部とする)を参照。D.Colcher et al., "Use of Monoclonal Antibodies as Radiopharmaceuticals for the Localization of Human Carcinoma Xenografts in Athymic Mice",Meth.Enzymol.121:802-816(1986)(出典明示により本明細書の一部とする)も参照。
【0066】
放射標識された本発明の生物薬剤は、インビトロ診断試験に使用され得る。標識された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの標識された生物薬剤の特異的活性は、放射活性標識の半減期や同位体純度と、いかに標識が生物薬剤に合体しているかとに依存する。表2は、いくつかの普通に使用される同位体、その特異的活性および半減期を表示する。イムノアッセイにおいて、特異的活性が高くなるほど、一般的に感受性がよくなる。
【0067】
【表2】
【0068】
生物薬剤を表2の放射活性同位体で標識する方法は、一般的に知られている。
トリチウム・標識法は米国特許第4,302,438(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ネズミモノクローナル抗体に特に適用されるヨウ素化法、トリチウム・標識法および32S標識法は、Goding,J.W.(上記、pp124-126)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。抗体やその結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤をヨウ化する他の方法は、Hunter and Greenwood,Nature 144:945(1962),David et al.,Biochemistry 13:1014-1021(1974)、および米国特許第3,867,517および4,376,110(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。造影に有用な放射標識元素は、例えば123I、131I、111Inおよび99mTcである。生物薬剤をヨウ化する方法は、Greenwood,F.et al., Biochem.J.89:114-123(1963); Marchalonis,J.,Biochem.J.113:299-305(1969);and Morrison,M.et al., Immunochemistry,289-297(1971)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。99mTc標識法は、Rhodes,B.et al.in Burchiel,S.et al.(eds.),Tumor Imaging:The Radioimmunochemical Detection of Cancer,New York:Masson 111-123(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。生物薬剤を111In標識するのに適した方法は、Hnatowich,D.J.et al.,J.Immul.Methods,65:147-157(1983),Hnatowich,D.et al.,J.Applied Radiation,35:554-557(1984),and Buckley,R.G.et al.,F.E.B.S.166:202-204(1984)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0069】
放射標識された生物薬剤の場合、生物薬剤は患者に投与されて、抗原を生じる腫瘍に局在する。生物薬剤は、その抗原と反応し、次いで、例えばガンマー・カメラまたは発光断層撮影法を用いる放射核スキャンなどの既知方法でインビボで検出すなわち“造影”される。参照、A.R.Bradwell et al.,"Developments in Antibody Imaging",Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.,(eds.),pp.65-85(Academic Press 1985)(出典明示により本明細書の一部とする)。他方、放射標識が陽電子(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)を放出するときは、Brookhaven National Laboratory に存在するPet VIなどの陽電子放出軸移送断層撮影スキャナーを使用し得る。
【0070】
発蛍光団および発色団で標識された生物薬剤は、既知の標準的分子部分からつくられる。抗体および他のタンパク質が約310nm以上の波長の光を吸収するので、選択される蛍光部分は、約310nm以上、好ましくは400nm以上の波長で実質的な吸収を有するべきである。種々の適当な発蛍光団および発色団は、Stryer,Science,162:526(1968)and Brand,L.et al.,Annual Review of Biochemistry,41:843-868(1972)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。生物薬剤は、米国特許第3,940,475、4,289,747および4,376,110(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のような通常の方法によって、蛍光発色基で標識され得る。
【0071】
上記のいくつかの望ましい特性を有する蛍光体のひとつのグループは、キサンテン色素であって、これは、3,6−ジヒドロ−9−ヘニルキサントヒドロールから誘導されたフルオレセイン、レサミン、3,6−ジアミノ−9−フェニルキサントヒドロールから誘導されたローダニン、リサニムローダミンBを含む。ローダミンBおよびフルオレセインの9−o−カルボキシフェニルキサントヒドロール誘導体は9−o−カルボキシフェニル基を有する。アミノおよびイソチオシアネート基などの活性カップリング基を有するフルオレセイン化合物、例えばフルオレセイン・イソシアネートおよびフルオレセスカミンは、容易に利用される。蛍光化合物の他のグループは、αまたはβ位にアミノ基を有するナフチルアミンである。
【0072】
生物薬剤は、Goding,J.(上記、pp208-249)記載の方法により発蛍光団または発色団で標識される。生物薬剤は、NMR活性19F原子を含む指示基または下記のような原子の複数で標識され得る。それは、(i)天然に豊富にあるフッ素原子の実質的にすべてが19F同位体であり、したがって、実質的にすべてのフッ素含有化合物がNMR活性であり、(ii)トリフルオロ酢酸無水物などの多くの化学的活性ポリフッ化化合物が比較的低価格で市販されており、(iii)多くのフッ化化合物がヒトに医学的に使用し得る事が知られ、過フッ化ポリエーテルがヘモグロビン置換などの酸素移送に用いられているものである。インキュベーションの時間を取った後、癌性組織(特に、その中の血管性内皮細胞)および前立腺上皮細胞を局在化し造影するために、全体NMR測定をPykett,Scientific American,246:78-88(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されるような機器を用いて実施する。
【0073】
生きているのと死んだ前立腺上皮細胞含有の領域を識別すること、または生きているのと死んだ前立腺上皮細胞を識別することが重要である場合、本発明の抗体(または本発明の他の生物薬剤)は、上記のように標識されて、生きているか死んだのかいずれかの前立腺上皮細胞のみを認識する抗体または他の生物薬剤と共に投与される。これらの抗体などは、主体の抗体を標識するのに用いた標識と区別できる標識で標識されている。種々の場所または時間における2レベルを監視することにより、生きているまたは死んだ、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞の場所的および時間的な濃度の変化を確かめることができる。特に、この方法は、生きているのと死んだのと両方の前立腺上皮細胞を認識する本発明の標識抗体と死んだ前立腺上皮細胞のみを認識する標識7El1抗体とを用いて実施することができる。
【0074】
生物薬剤は、インビボで正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺すためにも用いられる。これには、生物薬剤がそれのみ、または生物薬剤(すなわち、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を認識する生物薬剤)が結合する細胞障害剤とともに用いられることが含まれる。また、細胞障害剤と結合した生物薬剤を処置を必要とする哺乳動物に投与することが含まれる。正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞の場合、生物薬剤は前立腺上皮細胞を認識するので、生物薬剤が結合するこのような細胞は破壊される。該投与は正常な前立腺上皮細胞を破壊するが、前立腺が生命に、すなわち生存に必要でないので問題でない。前立腺は間接的に生殖に関係するが、本発明の処置を受ける患者にとって実際的に考慮すべき問題ではなかったようである。癌性組織の場合、生物薬剤が癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を認識するので、生物薬剤/細胞障害剤の血管性内皮細胞との結合は、この細胞を破壊し、それによって近接の癌性細胞への血流を遮断し、それら癌性細胞を殺すまたは切断する。あるいは、生物薬剤は、その癌性細胞に近接の血管性内皮細胞との結合によって、癌性細胞に近接して局在する。このように、適当な生物薬剤(非識別的に、短い射程で細胞を殺すのに効果的な物質を含有する生物薬剤を含む)を用いて、癌性組織中の細胞(癌性細胞を含む)が選択的に切断または殺される。
【0075】
本発明の生物薬剤は、治療薬剤、放射化合物、植物、かび、細菌源の分子、生物的タンパク質およびこれらの混合物などの様々な細胞障害剤を輸送するのに用いられる。細胞障害剤は、細胞内作用細胞障害剤、例えば短射程、高エネルギα放出体などの短射程放射放出体であり得る。
【0076】
酵素的に活性のトキシンおよびそのフラグメントには、例えば、ジフテリア・トキシンAフラグメント、ジフテリア・トキシンの非結合活性フラグメント、エキソトキシンA(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サクリン、ある種のAleurites fordiiタンパク質、ある種のジアンシン・タンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAP,PAPIIおよびPAP−S)、Morodica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Saponaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミタギリン、レストリクトシン、フェノマイシンおよびエノマイシンがある。酵素的活性タンパク質の製造方法は、WO84/03508およびWO85/03508(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ある種の細胞障害部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキセート、ネオカルジノスタチンおよびプラチナムから誘導される。
【0077】
生物薬剤を細胞障害剤とコンジュゲートする方法は、以前から知られている。
クロラムブシルを抗体とコンジュゲートする方法は、Flechner,I.,European Journal of Cancer,9:741-745(1973);Ghose,T.et al.,British Medical Journal,3:495-499(1972);and Szekerke,M.,et al.,Neoplasma,19:211-215(1972)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ダウノマイシンおよびアドリアマイシンを抗体とコンジュゲートする方法は、Hurwitz,E.et al.,Cancer Research,35:1175-1181(1975)and Arnon,R.et al.,Cancer Surveys,1:429-449(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。抗体−リシン・コンジュゲートを製造する方法は、米国特許第4,414,148およびOsawa,T.,et al.,Cancer Surveys,1:373-388(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。カップリング方法は、EP86309516.2(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0078】
本発明の特に好ましい実施態様、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞を殺すまたは切断することについて特に適した実施態様において、第1生物薬剤がプロドラッグ活性化剤に密接したときにのみ活性化されるプロドラッグとコンジュゲイトしている。プロドラッグ活性化剤は、本発明の第2生物薬剤、特に前立腺特異的膜抗原分子上の非競合部位に結合している生物薬剤とコンジュゲートされる。競合または非競合結合部位に結合した2種の生物薬剤は、通常の競合結合アッセイにより測定される。例えば、モノクローナル抗体J591、J533およびE99は、前立腺特異的膜抗原分子上の競合結合部位に結合する。他方、抗体J415は、J591、J533およびE99が結合する部位と競合しない結合部位に結合する。従って、例えば第1生物薬剤がJ591、J533およびE99の一つであり、第2生物薬剤がJ415であり得る。逆に、第1生物薬剤がJ415であり、第2生物薬剤がJ591、J533およびE99の一つであり得る。本発明の実施に使用するのに適したドラッグ−プロドラッグの対については、Blakely et al.,"ZD2767,an Improved System for Antibody-directed Enzyme Prodrug Therapy That Results in Tumor Regressions in Colorectal Tumor Xenografts."Cancer Reseach,56:3287-3292(1996)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0079】
別法において、抗体やその結合部分あるいはプローブは、高エネルギー放出体、例えば、γ放出体、131Iなどの放射性同位体とカップリングさすことができ、腫瘍部位に局在して、いくつかの細胞を殺す。参照、例えば、S.E.Order,"Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy",Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.(eds.),pp303-316(Academic Press 1985)(出典明示により本明細書の一部とする)。他の適当な放射性同位体には、212Bi、213Bi、211Atなどのα放出体および186Re、90Yなどのβ放出体がある。癌における前立腺上皮細胞および血管性内皮細胞が放射線に比較的感受性であることから、放射治療は特に効果的であると期待される。
【0080】
生物薬剤が癌性細胞または前立腺上皮細胞を殺すまたは切除するために単独で使用されるときは、補体媒介または抗体依存性の細胞毒性などの内因性宿主免疫機能が開始されて、殺すまたは切除することがなされる。
【0081】
本発明の生物薬剤は、特定の標識を検出するために、キットとして器具とともに使用され、販売され得る。
本発明の生物薬剤の医療的使用は、他の医療処置形態と併用することができる。その他の処置には、外科処置、放射線照射、冷凍外科法、温熱療法、ホルモン治療、化学療法、ワクチンおよび他の免疫治療が含まれる。
【0082】
本発明にさらに包含されるものとして、予防のために生物薬剤を用いて、殺すまたは切除する方法がある。例えば、これらの物質は、前立腺または他の癌の発生あるいは進行を防止または遅延するのに用いられる。
【0083】
本発明の前立腺または他の癌を処置する医療方法には多くの利点がある。生物薬剤は、癌性細胞(前立腺上皮細胞を含有する癌性組織の細胞など)および前立腺上皮細胞のみを標的とするので、他の組織に影響しない。結果として、生物薬剤による処置は安全性が高く、特に高齢者により安全である。本発明による処置は、前立腺癌の転移が起こりやすく、また多くの他の癌が転移しやすい骨髄やリンパ節に抗体やその結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を高レベルで向けるので、特に効果的であると期待される。さらに、前立腺癌の腫瘍部位は大きさが小さい傾向にあり、従って、細胞障害剤により容易に破壊されやすいので、本発明方法は前立腺癌の処置に特に適している。本発明による処置は、前立腺癌の場合、血清前立腺特異抗原、患者の癌の病理的特性、グリーソン・スコア、嚢外の、精液の、小胞の、眼周辺の侵入、リンパ節を含むポジチブ・マージンなどの臨床パラメーターにより効果的に監視され得る。また、これらのパラメーターは、かかる処置が取られるべきかを知るのに使用することができる。
【0084】
本発明の生物薬剤が生きている前立腺細胞に結合するので、これらの生物薬剤を使用する前立腺癌を処置する医療的方法は、溶解前立腺細胞を標的とする他の方法よりも非常に効果的である。同じ理由によって、生きている正常、良性増殖性または癌性の前立腺上皮細胞(同じく癌における血管性内皮細胞)の存在位置を診断または造影する方法は、本発明の生物薬剤を用いることにより非常に改善される。さらに、生きているのと死んだ前立腺細胞とを識別する能力は、特に特定の処置の効果を監視するのに、優れている。
【0085】
ハイブリドーマE99、J415、J533およびJ591は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタベスト条約の要件に従い、それを満足して、American Type Culture Collection(A.T.C.C.)at 12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852に寄託されている。ハイブリドーマE99は1996年5月2日に(寄託番号HB-12101)、ハイブリドーマJ415は1996年5月30日に(寄託番号HB-12109)、ハイブリドーマJ533およびJ591は1996年6月6日に(寄託番号HB-12127およびHB-12126)寄託された。
【0086】
本発明を下記の実施例でさらに説明する。
実施例
実施例1−ヒト組織
良性および悪性組織の新鮮な試料は、New York Hospital Cornell University Medical Center(NYH-CUMC)の病理学部門により提供された。
【0087】
実施例2-組織培養
ヒト癌の培養細胞系は、NYH-CUMCの泌尿器癌研究所から得た。前立腺癌細胞系PC−3(Mickey,D.D.et al.、『単層培養および無胸腺マウスにおける固形癌としての、ヒト前立腺癌細胞系(DU145)の特徴づけ』、Prog.Clin.Biol.Res.,37:67-84(1980)、出典明示により本明細書の一部とする)、DU−145(Mickey,D.D.et al.、『単層培養および無胸腺マウスにおける固形癌としての、ヒト前立腺癌細胞系(DU145)の特徴づけ』、Prog.Clin.Biol.Res.,37:67-84(1980)、出典明示により本明細書の一部とする)およびLNCaP(Horoszewicz,J.S.et al.、『ヒト前立腺癌のLNCaPモデル』、Cancer Res.43:1809-1818(1983)、出典明示により本明細書の一部とする)は、アメリカ基準菌株保存機構(ATCC)(Rockville,MD.)から入手した。始めにハイブリドーマを、10%FCS、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよびHAT培地(GIBCO,Grand Island,NY)を追加したRPMI−1640培地中でクローン化した。サブクローンをアミノプテリン非含有の同培地で培養した。
【0088】
実施例3−マウスモノクローナル抗体の調製
雌性BALB/cマウスを、2週間間隔で3回、LNCaP(6X106細胞)を用いて腹腔内注射により免疫化した。最後の腹腔内免疫強化をインビトロで生育した新鮮な前立腺上皮細胞で行った。標準的な技術(Ueda,R.et al.、『マウスモノクローナル抗体により規定されるヒト腎臓癌の細胞表面抗原:組織特異的肝臓糖蛋白質の同定』、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:5122-5126(1981)(出典明示により本明細書の一部とする)を用いて、3日後に脾臓細胞をSP−2マウスミエローマ細胞と融合させた。得られたクローンの上清を生きているLNCaPに対するロゼット法および細胞毒性アッセイによりスクリーニングした。これらのアッセイで陽性であったクローンを正常腎臓、結腸および前立腺に対する免疫化学でスクリーニングした。LNCaP+/Nml腎-/結腸-/前立腺+であったクローンを選別し、限定希釈により3回サブクローンした。各クローン由来の培養上清の免疫グロブリンクラスを、特異的ウサギ抗血清(Calbiochem,San Diego,CA)を用いて免疫拡散法により決定した。MAPS−IIキット(Bio-Red,Richmond,CA)を用いて、mAbを精製した。
【0089】
実施例4-mAbのビオチニル化
精製mAbを0.1MNaCO3中で2時間透析した。1mg/mlのmAb1mlをジメチルスルホキシド中、ビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンアミドエステル(Sigma)1mg/mlの0.1mlと混合し、4時間室温で撹拌した。非結合ビオチンをリン酸緩衝液(PBS)に対する透析により除去した。
【0090】
実施例5-免疫組織化学的染色
前立腺組織のクリオスタット画分を、Marusich,M.F.『免疫組織化学的ハイブリドーマスクリーニング用の、組織画分を非常に大量に調製する迅速な方法』、J.Immunol.Methods,111:143-145(1988)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように、前以て0.45%ゼラチン溶液で被膜したファルコン3034プレートカバー(Becton-Dickenson、Lincoln Park、NJ)のリング内に置いた。プレートを−80℃で貯蔵した。クリオスタット画分を10分間室温でPBS中、2%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄後、内因性ペルオキシダーゼ活性は、10分間室温でPBS中、0.3%過酸化水素で処理することにより阻害された。画分を20分間PBS中、2%BSAでインキュベートした後、mAbを60分間で室温にて加えた。スライドは、PBSで充分に洗浄し、PBS中10%正常ヒト血清で1:100に希釈したペルオキシダーゼーコンジュゲートウサギ・アンチ−マウスIg(DAKO Corp.,Santa Barbara,CA)と共に60分間、室温でインキュベートした。ジアミノベンジン反応後、画分をヘマトキシリンを用いて対比染色した。
【0091】
実施例6−血清学的解析
アンチ−マウス免疫グロブリン混合血球吸着アッセイを、Ueda,R.et al.、『マウスモノクローナル抗体により規定されるヒト腎臓癌の細胞表面抗原:組織特異性肝臓糖蛋白質の同定』、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:5122-5126(1981)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように行った。指示細胞を調製するために、0.01%塩化クロムを用いて、アンチ−マウスIgDAK0(Corp.)をO型ヒトRBCに結合させた。血清学的検定は、前以てテラサキプレート(Nunc,Denmark)で培養した細胞で行った。抗体を室温で1時間、標的細胞と共にインキュベートした。ついで、標的細胞を洗浄し、指示細胞を1時間で加えた。
【0092】
実施例7−免疫沈降反応
LNCaP細胞(2×107)を氷上30分間ビオチンNHSS(最終濃度5mM)でビオチニル化した。洗った後、ビオチニル化細胞を氷上30分間、溶解緩衝液1ml(20mM Tris/HCl、pH8.0、1mM EDTA、1mM PMSF、1% toriton X-100)に再懸濁した。懸濁液を4℃100分間1500g×100で遠心分離し、上澄み液を4℃で15分間12,000rpmで遠心分離した。得た溶解質をウサギまたはヤギ−マウスIgG−コート・パンソルビンで4℃1時間あらかじめ吸収せしめた。吸収された溶解質をmAbで4℃一夜インキュベートした。ウサギまたはヤギアンチ−マウスIgコート・アガロースビードを4℃2時間で加え、次いで洗った。ビードをTris塩基/NaClに再懸濁し、サンプルの緩衝液に2−メルカプトエタノールと共に加え、5分間煮沸した。遠心分離後、上澄み液をSDS−PAGE12%ゲルにかけた。ゲルをストラプタビジン−ペルオキシダーゼでブロックおよび着色されたニトロセルロース膜を通した。膜はジアミノベンジディン(DAB)で展開された。
【0093】
逐次免疫沈降は、溶解質が4℃一夜−79mAbで最初にあらかじめ処理された以外は同様である。次いで第2のmAbが用いられて、前処理された溶解質が免疫沈降された。
約2000クローンがスクリーンされ、うち4クローンは実施例4に記載のように選択された。サブクローニングの後、4ハイブリドーマ、E99、J415、J533およびJ591からの上澄み液を、生存能力のある(すなわち非固定の)LNCaPに対する免疫蛍光および免疫沈降および逐次免疫沈降によって検定し、PSMAに対する反応性を確認した。
【0094】
LNCaP標的細胞(最初にHoroszewiczに記載されており、7E11抗体およびPSMAの発現についてのプロトタイプ細胞系をつくる)を用いた免疫蛍光試験は、E99抗体が生存能力のあるLNCaP細胞免疫蛍光物に結合し、低下することを示す。このことは、Horoszewiczが最初に記載したように、7E11抗体が生存能力のあるLNCaP細胞にほとんどまたはまったく結合しないで、固定された(死んだ)細胞のみに強く結合することと好対照である。
【0095】
4種のmAbの正常ヒト組織との反応性を免疫組織化学的に調べた。その結果を表3に示す。
表3
間接的免疫ペルオキシダーゼ染色によるmAbのヒト正常組織との反応性
【0096】
【表3】
【0097】
上記の逐次免疫沈降試験は、7E11、E99、J415、J533および591が同じ分子すなわちPSMAに結合することを示した。
実施例8−ウェスタンブロット法
抗体E99、J415、J533および591が7E11抗体(すなわちPSMA)と同じバンドを沈降することを確認するために、ウェスタンブロット法を行った。精液(400μg/レーン)またはLNCaP溶解質を12%SDS−PAGEゲルのレーン中に充填した。ゲルをニトロセルロース膜に移した。膜を室温60分間、5%ドライミルク/Tris緩衝液-Tween20(TBST)でブロックした。洗った後、膜を室温で60分間、最初のmAbでインキュベートした。 くり返して洗った後、膜を室温で60分間、5%ドライミルク/TBST中のヤギアンチマウス−Igペルオキシダーゼ1/5000でインキュベートした。さらに洗った後、“ECL”(Amersham Life Sciences, International,Arlington Heights,Illinois)と云う化学発光物を用いて製造業者の指示通りに展開した。ウェスタンブロット試験を表4に示す。
【0098】
表4
ウェスタンブロット結果
【0099】
【表4】
【0100】
実施例9−PSMAの外的ドメインに対するmAbの反応性
検出されたPSMAの細胞表面(外部)発現を確認するために、新鮮な生存能力のある細胞を固定することなしに、インビトロで免疫蛍光によって調べた。LNCaP細胞を洗い、室温で1時間、mAbと共に、次いでウサギアンチマウスIg蛍光物(DAKO Corp.,Santa Babara.CA)と共にインキュベートした。ウェルを蛍光顕微鏡で読んだ。陰性コントロールはアイソタイプ対無関係mAbからなり、一方、アンチ−クラスI MHC mAbは陽性コントロールとなった。
【0101】
免疫蛍光法およびロゼット法の結果を表5に示す。
表5
7E11の新しいmAbとの比較
【0102】
【表5】
【0103】
実施例10−競合試験
J591,J533,E99およびJ415が同じまたは異なる前立腺特異的膜抗原分子の抗原性部位(エピトープ)を検出したかどうかを調べるために、下記の方法で競合試験を行った。
【0104】
前立腺特異的膜抗原源としてのLNCaP細胞系の溶解質でプレートをコートし、洗って非結合物を除去した。“コールド”(非標識)モノクローナル抗体をプレート上で室温1時間インキュベートし、その抗原性部位へ結合せしめした。次いで、ビオチンまたは125Iで標識した第2モノクローナル抗体を追加の時間で加えた。前立腺特異的膜抗原コートプレートに結合の第2モノクロナール抗体の量は酵素連結イムノアッセイのアビジン−アルカリホスファターゼ(ビオチン標識第2モノクロナール抗体の場合)またはガンマー・カウンターでの物理的に計数(125I−標識第2モノクロナール抗体の場合)によって調べた。非標識(コールド)と標識されているのと両方の同じモノクローナル抗体を用いたコントロールを“100%競合”とし、まったく異なる分子に対するモノクローナル抗体(例えば、前立腺特異的膜抗原と異なる前立腺関連タンパク質であるインヒビンを検出するモノクローナル抗体I−56)を“0%競合”と定義した。
【0105】
その結果によると、J591、J533およびE99は互に妨害し、競合し夫々の結合をブロックするが、J415の結合をブロックしない。逆も同じである。7E11/CYT356は、異なる部位(細胞内)でPSMAを結合することが知られているが、J591、J533、E99またはJ415のいずれをもブロックしなかった。
【0106】
非競合的部位に結合するモノクローナル抗体の対を有することは、例えば体液における可溶化前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメントなどの可溶性抗原についての抗体サンドウィッチアッセイの開発を可能にする。例えば、抗原(例えば前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメント)は、J591で体液から“捕捉”され、他の工程で標識J415により検出され得る。
【0107】
別の処置において、非競合的モノクローナル抗体を用いて抗体結合を増すことができる。例えば、非競合部位が各々前立腺特異的膜抗原分子上で提示されているとすると、J591とJ415の併用を加えることは、夫々のモノクローナル抗体単独の2倍のモノクローナル抗体分子に結合することになる。2つの非競合抗原結合部位に結合することは、抗原架橋を増加し、そしておそらく取りこみを増大することになる。さらに2つの検出された部位は同じ前立腺特異的膜抗原分子上に物理的に位置しているので、単一の前立腺特異的膜抗原分子に2つのモノクローナル抗体分子が結合することは、2つのモノクローナル抗原分子を互に近接の場所に置き、非常に好ましいドラック−プロドラッグ相互作用を提供する。
例えば、モノクローナル抗体J591は不活性プロドラッグとコンジゲートし、J415はプロドラッグ活性化剤とコンジゲートされ得る。プロドラッグと活性化剤は、前立腺特異的膜抗原−発現細胞(例えば、前立腺癌細胞)の部位でのみ密接して結合しているので、活性型へのプロドラッグの活性化はそれらの部位でのみ起きる。
【0108】
実施例11−顕微鏡検査
共焦点顕微鏡検査および免疫電子顕微鏡検査によると、E99、J591、J533およびJ415はクラスリン被覆小窩で細胞膜に結合し、迅速にエンドソーム(細胞膜小胞)に取り込まれる。図1−4は、細胞表面での金標識モノクローナル抗体J591の取り込みを時間関数で表わしている免疫電子顕微鏡検査である。これらの図においてモノクローナル抗体は黒点で表わされる。
【0109】
生存能力のあるLNCaP細胞をJ591と共に4℃で1時間インキュベートした。細胞を洗い、37℃で、0、5、10または15分に取得し、固定し、免疫電子顕微鏡検査を行った。図1は37℃インキュベーションの前の細胞を示す。J591が細胞膜の外観に沿って細胞に結合しているのが見られる。この図において、“M”は細胞のミトコンドリアを、“N”は核を示す。図2は37℃5分間インキュベーション後の細胞を示す。矢印はクラスリン被覆小窩の形成を示す。図3は37℃10分インキュベーション後の細胞を示す。クラスリン被覆小窩の摘み取り、すなわち細胞内取り込み(エンドサイト−シス)が矢印で示すように見られる。図4では、37℃15分間インキュベーション後に、モノクローナル抗体J591が細胞内の取り込み小胞に含有されており、矢印で示す。図5では、37℃15分間インキュベーション後に、モノクローナル抗体J591がエンドソーム中にも含有されており、矢印で示す。
【0110】
実施例12−モノクローナル抗体591の可変領域の配列決定
全RNAを107ネズミハイブリドーマJ591細胞から調製した。これらの細胞からのコンディションドメディウムのサンプルについて、前立腺細胞上のJ591の特異抗原との結合を調べた。条件培養基はELISAおよびウェスタンブロット法で抗原との結合が陽性であった。
【0111】
VHおよびVK cDNAは、逆転写酵素、マウスκ定常領域およびマウスIgG正常領域プライマーを用いて調製した。第1鎖cDNAは多種のマウスシグナル配列プライマー(VHについて6、VKについて7)を用いて、PCRにより増幅した。増幅DNAをゲル精製し、ベクターpT7Blue中にクローン化した。
【0112】
得たVHおよびVKクローンをPCRで正しい挿入について選別し、選択したクローンのDNA配列をジデオキン鎖測定法で調べた。
プライマー領域(用いられたプライマーの配列に依存したこの配列として)、得たすべてのVHクローンは同じ配列を有していた。この配列は3種の異なる5’プライマーから産生したクローンより得られた。1つのクローンはシグナル配列に1塩基対を有し、1つのクローンは異常なPCR産物を含有していた。図6に示す配列決定戦略を用いて、重鎖についてのヌクレオチド配列を得た。これを配列番号1とし、対応の逆転非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)と併せて、図7に示す。これらの配列はシグナル配列の部分および抗体の定常領域の部分を含んでいる。J591VHの対応演繹アミノ酸配列を配列番号3、配列番号4および配列番号5として図7に示す。J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は、下記ヌクレオチド配列(配列番号6)を有する。
【0113】
【化1】
【0114】
J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は、下記ヌクレオチド配列(配列番号7)を有する。
【0115】
【化2】
【0116】
J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は、下記のヌクレオチド配列(配列番号8)を有する。
【0117】
【化3】
【0118】
J591VHはマウス重鎖サブグループIIA(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunoloqical Interest, U.S.Department of Health and Human Services(1991)(“Kabat”)、出典明示により本明細書の一部とする。)中に存在する。図8にJ591の配列をこのサブグールとの共通配列について比較する。
【0119】
VHと異なり、複数のVK配列が得られた。検査した15VKクローンのうち、4が融合相手(Carol et al.,Molecular Immunology,25:991-995(1988)、出典明示により本明細書の一部とする)からの異常マウスIgκの配列を有した。これらのクローンは2つの特異的5’プライマーから始まる。これらのクローンについてはさらに研究しなかった。残りのクローンのうち、10は同じヌクレオチド配列を有し、1つのクローン、VK17は別のVK配列を有した。10の同じクローンは3つの5’プライマー(異常配列を示す2つのものと異なる)から始まり、そのうち1つはVK17を産生した。用いた配列決定戦略を図9に示す。
【0120】
10の同じクローンに対応するJ591VKの核酸配列(配列番号9)を、対応する逆転非コード鎖の核酸配列(配列番号10)および演繹アミノ酸配列(配列番号11、12、13)と併せて図10に示す。これらの配列はシグナル配列の部分および抗体の定常領域の部分を含有している。10の同じクローンに対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号14)を有する。
【0121】
【化4】
【0122】
10の同じクローンに対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号15)を有する。
【0123】
【化5】
【0124】
10の同じクローンに対応のJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は下記のヌクレオチド配列(配列番号16)を有する。
【0125】
【化6】
【0126】
クローンVK17に対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号
17)を有する。
【0127】
【化7】
【0128】
クローンVK17に対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号18)を有する。
【0129】
【化8】
【0130】
クローンVK17に対応のJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は下記のヌクレオチド配列(配列番号19)を有する。
【0131】
【化9】
【0132】
J591VKはマウスカッパー鎖サブグループV(Kabat,出典明示により本明細書の一部とする)に存在する。図11において、10の同じクローンに対応するJ591VKの配列をこのサブグループの共通配列について比較する。
【0133】
好ましいJ591の配列は、配列番号6に対応する重鎖可変領域DNAコード鎖配列および配列番号7に対応する重鎖可変領域DNAコード鎖配列を有するものである。J591の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号8に対応するアミノ酸配列を有する。J591の軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号17に対応するDNAコード鎖配列、配列番号18に対応するDNA非コード鎖(逆転)配列および配列番号19に対応するアミノ酸配列を有する。
【0134】
実施例13−正常および癌性組織の免疫組織化学的染色
23癌腫からの癌組織を液体窒素であらかじめ冷し、ドライアイス上OTC化合物(Miles,Elkhart,Indiana)中で急凍し、−80℃で保存した。低温槽の組織画分(5μm)を冷アセトン(4℃)で10分間で固定した。mAb(5μg/mlまたはハイブリドーマ上清)を室温で1時間インキュベートした。抗体結合は、第2抗体としてウサギアンチ−マウスIgペルオキシダーゼ(Dako,Carpinteria,California)およびクロモゲンとしてDAB(Sigma,St.Louis,Missouri)を用いて検出した。同位体マッチ非関連抗体を陰性コントロールとして用いた。
【0135】
mAb J591,J533,J415およびE99は、試験した全23の癌腫中の血管性内皮細胞に強く反応した。これらは、9/9腎の、5/5尿路の、6/6結腸の、1/1肺の、1/1乳房の癌腫および1/1肝への転移性腺癌である。図2A−2Fは、それぞれ腎、尿路、結腸、肺および乳房の癌腫、および肝への転移性腺腫の新生血管系に対するmAb J591の免疫化学的反応性を示す。
【0136】
説明の目的で本発明を詳細に記載したが、この詳述は説明のためにのみなされたものであって、当業者は下記の請求項に定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなしに改変できることが理解されるべきである。
【0137】
【数1】
【0138】
【数2】
【0139】
【数3】
【0140】
【数4】
【0141】
【数5】
【0142】
【数6】
【0143】
【数7】
【0144】
【数8】
【0145】
【数9】
【0146】
【数10】
【0147】
【数11】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1996年7月18日提出の米国仮特許出願60/022,125の利益を享受し、1996年5月6日提出の米国仮特許出願60/016,976の利益を享受する1997年4月9日提出の米国特許出願08/838,682の一部継続である。
【0002】
発明の分野
本発明は生物薬剤による癌の治療および診断に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある種の癌の治療が改善されてきたにもかかわらず、癌は米国において未だに死亡原因のトップである。癌を完全に寛解する可能性は、多くの場合、初期診断によって非常に高められるので、実質的な腫瘍が広がる前に、内科医が癌を検知できることが非常に望ましい。しかしながら、多くの種類の癌を迅速かつ正確に検知できる方法の開発が医学界に求められ続けている。そのような実例となるひとつの癌の種類は前立腺癌である。
【0004】
前立腺癌は、男性に最も多い癌であり、1996年、米国において推定317,000症例とされている。腫瘍により死亡する男性における死因の第2位であり、推定で年間40,000人が死亡している。前立腺癌による死亡率を抑制するために迅速な発見と治療が必要とされている。
【0005】
前立腺癌の発見
癌細胞の転移において、前立腺癌は骨およびリンパ節に転移する明確な傾向を有する。Saitoh.et al.,"Metastatic Patterns of Prostatic Cancer. Correlation Between Sites And Number of Organs Involved."Cancer,54:3078-3084(1984)。臨床診断において、放射性核種走査により患者の25%に骨への転移が認められている。Murphy,G.P.,et al.,"The National Survey Of Prostate Cancer In The United States By The American College Of Surgeons,"J.Urol.,127:928-939(1982)。結節での併発を正確に臨床上判定することは困難である。コンピュータ断層撮影法("CT")あるいは磁気共鳴("MR")映像法のようなイメージング技術により、リンパ節の転移性前立腺癌併発をサイズ(すなわち、>1cm)とは別の基準によって識別することは不可能である。従って、当然これらのイメージング様式は本来、大きい容積のアデノパシーの発見において非特異的であり、小さい容積(<1cm)の疾病の発見において感受性が鈍い。最近の研究において、臨床的に局在性の前立腺癌の患者におけるMRの正確さが調査された。Rifkin et al.,"Comparison Of Magnetic Resonance Imaging And Ultrasonography In Staging Early Prostate Cancer,"N.Engl.J.Med.,323:621-626(1990)。この研究において、194人の患者がMRを受け、そのうち185人の患者がリンパ節切開を受けた。23人(13%)の患者で病理的にリンパ節に併発があった。4%の感受性となる23症例のうち唯1例においてMRが疑わしかった。同様の結果がCTスキャンについても見られた。Gasser et al.,"MRI And Ultrasonography In Staging Prostate Cancer,"N.Engl.J.Med.(Correspondence),324(7):49-495(1991)。
【0006】
前立腺癌転移の患者における血清酸性ホスファターゼ活性の増加が最初、Gutman et al.によりJ.Clin.Invest 17:473(1938)に報告された。前立腺の癌において、前立腺酸性ホスファターゼは癌組織から血流へと放出され、その結果、全血清酸性ホスファターゼレベルは正常値よりはるかに増加する。この酵素およびその前立腺癌との関係について数多くの研究がその当時からなされてきた(例えば、Yam,Amer.J.Med.56:604(1974))。しかしながら、血清酸性ホスファターゼの測定値は、骨に転移した前立腺の癌腫がある患者の約65〜90%;X線による骨への転移の証拠がない患者の約30%;臨床的に明らかな転移がない患者の約5〜10%のみにおいて増加した。
【0007】
前立腺酸性ホスファターゼに関する特異的試験を開発しようとする先行技術の試みは、限定的な成功しか納めていない。なぜなら、いわゆる“特異的”基質に対する酵素活性を基とする技術は、前立腺起源の酵素活性とは無関係の多くの酸性ホスファターゼにおいて他の生化学的および免疫化学的差異を考慮し得ないからである。イソ酵素の場合、すなわち同じ特徴的酵素活性および同様の分子構造を有するが、アミノ酸配列および/あるいは含量が異なる、従って、免疫化学的には区別され得る、遺伝子学的に定義された酵素の場合、特定の基質を選択するだけで種々のイソ酵素の形態を識別することは、本来不可能であると思われる。 従って、これらの先行技術の方法において、前立腺酸性ホスファターゼ活性の直接的測定に関して非常に特異的なものが何もないことは驚くべきことではない;例えば、参照Cancer 5:236(1952);J.Lab.Clin.Med.82:486(1973);Clin.Chem.Acta.44:21(1973);and J.Physiol.Chem.356:1775(1975)。
【0008】
前立腺酸性ホスファターゼの検出に使用される先行技術の試薬の多くに特有であるとみられる上記の非特異性の問題に加え、他の疾病と関連のある血清酸性ホスファターゼの増加についての報告があり、前立腺癌の正確な臨床診断についての問題をさらに複雑にしている。例えば、Tuchman et al.,Am.J.Med.27:959(1959)はゴーシェ病患者の血清酸性ホスファターゼレベルが上昇するらしいことに注目している。
【0009】
前立腺酸性ホスファターゼのための“特異的”基質の開発が本来難しいので、数人の研究者が前立腺酸性ホスファターゼの検出に関する免疫化学的方法を開発してきた。しかしながら、先に報告された免疫化学的方法には広範囲の受容を妨げるというそれ自身の欠点がある。例えば、Shulman et al.,Immunology 93:474(1964)はヒト前立腺酸性ホスファターゼの検出のための免疫−拡散法試験を記載している。前立腺疾病の患者から直腸マッサージによって得られる前立腺液抗原から製造される抗血清を使用し、正常な腎臓、睾丸、肝臓および肺の抽出物に対する二重拡散技術において交差反応沈降素ラインは観察されなかった。しかしながら、この方法は、抗原が大量に使用されても、および前立腺液に存在する抗原的に無関係の血清タンパク質成分といった他のものと交差反応することがある抗血清が大量に使用されても、感受性が限定的であるという不都合を有する。
【0010】
Chu et al.のWO79/00475には、上記の欠点の多くを取り除く前立腺癌関連の前立腺酸性ホスファターゼイソ酵素パターンの検出のための方法が記載されている。しかしながら、実際の問題は、診断上意味のある前立腺癌関連の前立腺酸性ホスファターゼイソ酵素パターンがその抗体の製造のために抽出される癌前立腺組織の源を必要とすることから生じている。
【0011】
最近、特異的診断用試薬の開発の目的で、様々なタイプの悪性腫瘍についての酵素あるいは抗原マーカーを同定するために多大な努力が費やされている。理想的な腫瘍マーカーは、他の特性において組織あるいは細胞型についての特異性を示す。先の研究者らはヒト前立腺の組織特異的抗原の発生を証明している。
【0012】
前立腺癌の治療
W.J.Catalona,"Management of Cancer of the Prostate,"New Engl.J.Med.,331(15):996-1004(1994)に記載されているように、前立腺癌への対応は、注意深く見守ること、治療的処置をとること、および対症処置を行うことによって達成され得る。
【0013】
平均余命が10年以下の男性において、良性の前立腺肥大の部分的切除の際に、低程度で低段階の前立腺癌が発見された場合、注意深く見守ることが肝要である。このような癌は発見後の最初の5年間で進行することはめったにない。一方、若い男性にとって、治療はしばしばより適切である。
【0014】
前立腺癌が局在性であり、患者の平均余命が10年あるいはそれ以上の場合、前立腺の全切除は疾病の根絶のための最良の可能性を提供する。歴史的に、この方法の欠点は、癌が発見されたときにはほとんどの癌が手術の限界を越えてしまっていることである。しかしながら、前立腺特異的抗原試験の使用は、前立腺癌の早期発見につながる。結果として、合併症は少なく、外科手術は広範囲に及ばずに済む。大きい、高程度の腫瘍がある患者は、前立腺の全切除によって好結果の治療を受ける見込みは低い。
【0015】
外科手術後、血清前立腺特異的抗原が検出可能な濃度にある場合、残存する癌を示している。多くの場合、前立腺特異的抗原濃度は放射線治療によって低下する。しかしながら、この濃度は2年以内にしばしば再び増加する。
【0016】
放射線療法は前立腺の全切除に代わる手段としても広く使用されてきた。一般に放射線療法によって治療される患者は、高齢の健康でない者や高程度の臨床的に進行した腫瘍を有する者である。特に好ましい方法は、放射線の領域を治療される組織の容量に適合するように設定されている3次元の適合放射線療法を伴う外線療法;放射線化合物の種子が超音波誘導によって移植される介在性放射線療法;および外線療法と介在性放射線療法の組み合せである。
【0017】
局部的に進行した疾病の患者の治療には、前立腺の全切除あるいは放射線療法の前あるいは後にホルモン療法が利用されてきた。ホルモン療法は前立腺癌が拡大してしまった男性を治療する主要な手段である。睾丸摘除は血清テストステロン濃度を減じ、エストロゲン治療も同様に有益である。エストロゲンからのジエチルスチルベストロールは、別の有用なホルモン療法であるが、心臓血管系の障害を起こす不都合を有する。ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストが投与されると、テストステロン濃度は最終的に減少する。フルタミドおよび非ステロイド、抗−アンドロゲン剤は、テストステロンがその細胞内受容体と結合するのを阻害する。結果として、血清テストステロン濃度が増加しながら、また患者に性的能力が残存したままでフルタミドはテストステロンの効果を阻害する。性的能力については、前立腺の全切除および放射線治療の後では、重要な問題である。
【0018】
細胞毒性化学療法は前立腺癌治療においてほとんど効果がない。この療法はその毒性のために高齢患者にとって不適切となる。さらに、前立腺癌は比較的細胞障害剤に抵抗力がある。
【0019】
前立腺癌の発見と治療におけるモノクローナル抗体の使用
理論的には、放射ラベルモノクローナル抗体(“mAb”)は、リンパ節内および他の部位内の前立腺癌の発見に対する感受性および特異性の両方を高める能力を提供する。多くのmAbがすでに前立腺関連抗原に対して製造されてきたが、一方イメージング目的として特に製造されたものはない。しかしながら、臨床的な必要性からこれらmAbのいくつかが可能なイメージング試薬として検討されてきた。Vihko et al.,"Radioimaging of Prostatic Carcinoma With Prostatic Acid Phosphatase-Specific Antibodies,"Biotechnology in Diagnostics, 131-134(1985);Babaian et al.,"Radioimmunological Imaging of Metastatic Prostatic Cancer With 111-Indium-Labeled Monoclonal Antibody PAY 276,"J.Urol.,137:439-443(1987);Leroy et al.,"Radioimmunodetection of Lymph Node Invasion In Prostatic Cancer.The Use of Iodine 123(123-I)Labeled Monoclonal Anti-Prostatic Acid Phosphatase(PAP)227 A F(ab')2 Antibody Fragments In Vivo," Cancer, 64:1-5(1989);Meyers et al.,"Development of Monoclonal Antibody Imaging of Metastatic Prostatic Carcinoma,"The Prostate, 14:209-220(1989)。
【0020】
いくつかの場合、前立腺癌の発見および/または治療のために開発されたモノクローナル抗体は、悪性の前立腺組織に特異的な抗原を認識する。従って、このような抗体は悪性前立腺組織を(治療あるいは検出のため)良性前立腺組織と区別するために使用される。参照、Bazinet et al.の米国特許第4,970,299およびFreeman et al.の米国特許第4,902,615。
【0021】
他のモノクローナル抗体は、癌性あるいは良性のすべての前立腺表皮細胞上で表面抗原と反応する。参照、Chu et al.の米国特許第4,446,122およびRe33,405、McEwan et al.の米国特許第4,863,851およびUeda et al.の米国特許第5,055,404。しかし、これらのモノクローナル抗体によって検出される抗原は、血液中に存在し、従って、モノクローナル抗体について腫瘍部位での抗原と競合する。これは、インビボでのイメージングにおけるこのような抗体の使用が不適当となるノイズを引き起こす。治療において、このような抗体は、細胞障害剤と結合する場合、他の組織に有害となり得る。
【0022】
Horoszewicz et al.,"Monoclonal Antibodies to a New Antigenic Marker in Epithelial Prostatic Cells and Serum of Prostatic Cancer Patients," Anticancer Research, 7:927-936(1987)("Horoszewicz")およびHoroszewiczの米国特許第5,162,504は、前立腺特異的細胞膜抗原("PSMA")を認識する7E11と名付けられた抗体について記載している。Israeli et al.,"Molecular Cloning of a Complementary DNA Encoding a Prostate-specific Membrane Antigen, "Cancer Research, 53:227-230(1993)("Israeli")は、PSMAのクローニングおよび配列決定について記載し、PSMAが前立腺特異的であると報告し、転移部位およびホルモン不応性状態において発現レベルが増加していることを示している。他の研究によれば、PSMAは正常な前立腺からの細胞または良性過形成を有する前立腺からの細胞と比較して、前立腺癌細胞においてより強く発現することが示されている。さらに、PSMAは血清中に見出されない(Troyer et al.,"Detection and Characterization of the Prostate-Specific Membrane Antigen(PSMA)in Tissue Extracts and Body Fluids,"Int.J.Cancer,62:552-558(1995))。
【0023】
これらの特徴がPSMAを前立腺癌のイメージングおよび療法における抗体介在標的法について魅力的な対象としている。インジュウム標識7E11を用いるイメージング研究によれば、抗体は前立腺および転移部位の両方に非常によく局在することが示された。さらに、7E11は、CTおよびMRイメージングまたは骨シンチグラフィのような現在利用可能な他のイメージング技術と比較して、病変の検知に明らかに優れた感受性を有するようである。Bander,"Current Status of Monoclonal Antibodies for Imaging and therapy of Prostate Cancer,"Sem.In Oncology,21:607-612(1994)。
【0024】
しかしながら、イメージングおよび治療を提供するために7E11および他の既知の抗体をPSMAに使用することは、いくつかの不都合を有する。最初に、PSMAは短い細胞内テイルおよび長い細胞外ドメインを有することが知られている必須細胞膜タンパク質である。生化学的特徴およびマッピング(Troyer et al.,"Biochemical Characterization and Mapping of the 7E11-C5.3 Epitope of the Prostate-specific Membrane Antigen," Urol.Oncol.,1:29-37(1995))は、7E11抗体の結合するエピトープまたは抗原部位が分子の細胞内部分に存在することを示している。正常な環境下では、抗体分子が分子の細胞外部分と結合し、細胞内に転座しない限り、抗体分子は細胞膜を通過しないので、7E11抗体は他の健康な生長細胞においてその抗原標的部位とアクセスしない。
【0025】
従って、7E11を用いるイメージングは、腫瘍蓄積内の死亡細胞の検知に限定される。さらに、7E11抗体の治療への使用は、すでに死んだ細胞または大部分が死亡細胞である組織だけが効果的に標的され得るので、限定される。
【0026】
ひとつの特定の癌の種類の診断および治療における不適当および問題が先の議論の焦点であるが、前立腺癌は単に代表的モデルに過ぎない。数多くの他の癌の診断および治療が類似の問題を抱えている。
【発明の概要】
【0027】
本発明は前立腺癌および他のタイプの癌の診断および治療における先行技術の抗体の欠点を克服することに関する。
発明の要約
本発明のひとつの実施態様は、癌性細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原を認識する生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に、この血管性内皮細胞に生物薬剤を結合することと癌性細胞を殺すまたは切除することの両方を可能とするのに効果的な条件で、接触する。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合した際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質と結合して、用いられる。
【0028】
本発明における癌性細胞を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様では、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、該細胞の前立腺特異的膜抗原で取り込まれる。本発明における癌性細胞を切除または殺す方法に使用するのに好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。本発明の方法は、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。
【0029】
本発明の他の実施態様は、生物サンプルにおける癌性組織を検出する方法である。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプルにおける癌性組織の存在が標識の検出により検出される。
【0030】
本発明で癌性組織を検出する特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれるものである。本発明で癌性組織の検出方法での使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。本発明の方法は、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞を検出するのに特に有用である。
【0031】
本発明のさらに他の実施態様は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または細胞に生物薬剤が結合した際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合して、用いられる。この生物薬剤は細胞に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触する。
【0032】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法についての特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法における使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。
【0033】
本発明の他の実施態様は、生物サンプル中の正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法に関する。この方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に、細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプル中の細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプル中の細胞またはその部分の存在が標識の検出により検出される。
【0034】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出する方法における使用に好ましい生物薬剤は、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。
【0035】
本発明の他の実施態様は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する生物薬剤に関する。好ましい実施態様において、単離された生物薬剤は前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。本発明における前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識する好ましい単離生物薬剤は、単離された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである。これらのタイプのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も開示される。
【0036】
本発明の生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞の抗原の細胞外ドメインを認識する。細胞溶解後に細胞外に露出される前立腺連関抗原のエピトープを認識する7E11抗体と異なり、本発明の生物薬剤は、生きている前立腺細胞において細胞外に露出される抗原性エピトープに結合する。本発明の生物薬剤を用いて、生きている、固定されていない正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を標的とすることができ、それによって治療および診断をより効率的にする。前立腺癌を処置するための好ましい実施態様において、本発明の生物薬剤は前立腺特異的膜抗原に結合もし、それで取り込まれ、よって細胞内で作用する細胞障害剤の医療的使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、4℃でのインキュベーション後のLNCaP細胞表面の金標識モノクローナル抗体J591の免疫電子顕微鏡図である。
【図2】図2は、37℃でのインキュベーション5分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図3】図3は、37℃でのインキュベーション10分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図4】図4は、37℃でのインキュベーション15分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞の免疫電子顕微鏡図である。
【図5】図5は、エンドソーム中に37℃で示した15分後の金標識モノクローナル抗体J591で処理したLNCaP細胞表面の免疫電子顕微鏡図である。
【図6】図6は、モノクローナル抗体J591の重鎖の配列決定戦略の概要を表す。
【図7A】図7Aは、モノクローナル抗体J591の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号1)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)および対応演繹アミノ酸配列(配列番号3、4および5)を示す。
【図7B】図7Bは、モノクローナル抗体J591の重鎖のヌクレオチド配列(配列番号1)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)および対応演繹アミノ酸配列(配列番号3、4および5)を示す。
【図8】図8は、モノクローナル抗体J591の重鎖とマウス重鎖サブグループIIAについての共通配列との比較である。
【図9】図9は、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖の配列決定戦略の概要を示す。
【図10A】図10Aは、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号9)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号10)および対応演鐸アミノ酸配列(配列番号11、12および13)を示す。
【図10B】図10Bは、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号9)、対応逆転、非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号10)および対応演鐸アミノ酸配列(配列番号11、12および13)を示す。
【図11】図11は、モノクローナル抗体J591のカッパ軽鎖とマウスカッパ鎖サブグループVについての共通配列との比較である。
【図12】図12A−12Fは、種々の癌腫の血管新生に対するmAB J591の免疫組織化学的反応性を示す顕微鏡図(倍率250X)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な記述
本発明のひとつの実施態様は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法に関する。この方法は、該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメイン(すなわち、該細胞の外にある前立腺特異的膜抗原の部分)に結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を提供することを含む。この生物薬剤は、単独で用いられるか、または細胞に生物薬剤が結合した際に癌性細胞を殺すのに効果的な物質と結合して、用いられる。この生物薬剤は細胞に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触する。 好ましい形において、該接触は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、生きている哺乳動物に生物薬剤を投与することによりその哺乳動物中で実施される。この投与は経口または非経口でなされ得る。
【0039】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。また、生物薬剤は単独で使用することができる。
あるいは、生物薬剤は、生物薬剤が前立腺特異的膜抗原に結合する際および生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合させることができる。
【0040】
生物薬剤を前立腺特異的膜抗原で取り込むメカニズムは、本発明の実施にとってあまり重要でない。例えば、生物薬剤は前立腺特異的膜抗原の取り込みを誘発する。他方、生物薬剤の取り込みは前立腺特異的膜抗原の通常的な取り込みの結果でもあり得る。
【0041】
上記の生物薬剤(すなわち、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを認識し、好ましくはそれで取り込まれる)は、癌性細胞を切除または殺すのに用いられる。本発明の好ましくは実施態様において、生物薬剤は、単独で用いられるか、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合した際に細胞を殺すのに効果的な物質と結合して用いられる。生物薬剤は癌性細胞に近接する血管性内皮細胞に接触される。この接触は、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合するのに効果的な条件および加えるに癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な条件で、実施される。癌性細胞が切除または殺されるメカニズムは,本発明の実施にとってあまり重要でない。例えば、癌性細胞は、生物薬剤が結合する血管性内皮細胞へのその近接性の結果として、生物薬剤により直接的に切除または殺される。あるいは、生物薬剤は、血管性内皮細胞に近接の癌性細胞への血流を止めるか、さもなければ減少して、それにより癌性細胞を殺すまたは切除するように、血管性内皮細胞を殺しまたは切除し、さもなければその性質を変えることができる。このように、本発明の方法は、癌性組織または癌性組織を含有する癌性細胞における血管性内皮細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。
【0042】
本発明で癌性組織を切除または殺す方法の特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合し、それで取り込まれるものである。本発明の方法は、癌性前立腺上皮細胞あるいはそれ以外の癌性細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。癌性前立腺上皮細胞でない癌性細胞の例として、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞がある。本発明方法は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインおよびその部分を発現する細胞、および前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインおよびその部分を発現する細胞に生存を依存しているすべての細胞を殺すまたは切除するのに有用であり得るが、癌性細胞を殺すまたは切除するのに特に有用である。なぜなら、癌性細胞(例えば、腫瘍、癌性細胞の集団または他の癌性塊)に血液を供給する血管性内皮細胞は、関連する癌の種類にかかわらず前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現するからである。これに対し、正常組織に血液を供給する血管性内皮細胞は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現しない。
【0043】
本発明の他の実施態様は、生物サンプル中の正常、良性増殖性および癌性上皮細胞を検出する方法に関する。この方法は、該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を提供することを含む。生物薬剤は、細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に、細胞またはその部分(例えば、該正常、良性増殖性および癌性上皮細胞から遊離した前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメント)の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは、標識を有する生物薬剤に、生物サンプル中の細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触する。生物サンプル中の細胞またはその部分の存在が標識の検出により検出される。好ましい形において、該接触は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、生きている哺乳動物に生物薬剤を投与することによりその哺乳動物中で実施される。また、この投与は経口または非経口でなされ得る。
【0044】
本発明の方法は、正常、良性増殖性および癌性の上皮細胞またはその部分に関連する疾患について患者を識別するのに用いることができる。他方、このような疾患、特に患者の特定の生物的物質に局在している疾患の再発を同定するのに用いられる。例えば、放射線での前立腺切除後、前立腺窩に疾患が再発することがある。本発明方法を用いると、短射程放射標識抗体を投与し、標識を直腸において経直腸検出プローブなどで検出することにより、再発が調べられる。
【0045】
一方、接触工程は、血清、尿あるいは他の体液などのサンプルにおいて、例えば、体液中のPSMAを検出するために実施される。接触が血清または尿サンプルでなされるときは、生物薬剤がPSMA以外の血中を循環する抗原を実質的に認識しないことが好ましい。無傷の前立腺細胞はPSMAを細胞外環境に排出も分泌もしないので、血清、尿または他の体液中にPSMAが検出されると前立腺細胞が溶解していることを一般的に表す。このように、本発明の生物薬剤および方法は、血清、尿または他の体液におけるPSMAのレベルを監視することにより、前立腺癌に対する処置法の効果を調べるのに用いることができる。
【0046】
本発明で正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出方法の特に好ましい実施態様において、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、該細胞の前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれる。また、生物薬剤が前立腺特異的膜抗原に結合し、またはそれで取り込まれる際に、生物薬剤は、細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識に結合している。
【0047】
本発明の他の実施態様は、生物サンプルにおける癌性組織を検出する方法である。この方法は、上記の生物薬剤(すなわち、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤)を提供することを含む。生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合している。生物サンプルは標識を有する生物薬剤に接触される。接触は、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で行われる。生物サンプルにおける癌性細胞またはその部分の存在が標識の検出により調べられる。
【0048】
全体の生物サンプルを生物薬剤に接触させるよりも、部分的な生物サンプルを使用することが考えられる。例えば、組織生検サンプルを生物薬剤に接触せしめて、組織生検サンプル中の癌性組織の存在を、元の大きい生物サンプルと同様に、調べる。あるいは、生物薬剤を血清または尿サンプルに接触せしめて、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞が存在するかどうかを確認する。前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインを発現する血管性内皮細胞は、癌性組織の血管系に存在し、正常組織の血管系には見出されないので、血清または尿サンプルにおける標識の検出は、元の大きい生物サンプル(例えば、患者)における癌性組織の存在を表す。
【0049】
本発明で癌性組織を検出する特に好ましい実施態様において、生物薬剤は、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原に結合し、それで取り込まれるものである。本発明の方法は、癌性の前立腺上皮細胞および癌性前立腺上皮細胞以外の癌性細胞を含有する癌性組織を検出するのに用いられる。本発明で検出できる癌性前立腺上皮細胞以外の癌性細胞を含有する癌性組織の例としては、腎、尿路上皮、結腸、直腸、肺、乳房の癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞がある。
【0050】
上述のように、癌性細胞、正常、良性増殖性および前立腺上皮細胞を殺すまたは切断する、あるいはこれらを検出するのいずれにも適している生物薬剤には、モノクローナルまたはポリクロナール抗体などの抗体が含まれる。さらに、抗体フラグメント、半抗体、ハイブリド誘導体、プローブおよび他の分子構築体を用いることができる。抗体、その結合部分、プローブおよびリガンドなどの生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞における前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインまたはその部分に結合する。結果として、正常、良性増殖性および前立腺上皮細胞を殺すまたは切断する、あるいはこれらを検出する本発明の方法を行うときに、生物薬剤はすべてのこのような細胞に、固定されている細胞や細胞外環境に細胞内抗原性ドメインが露出している細胞のみでなく、結合する。その結果として、生物薬剤の結合は、前立腺上皮細胞が固定または非固定、生存または壊死であるにかかわらず、この細胞が存在する場所に集中する。加えるにまたは別に、抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤は、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞中の前立腺特異的膜抗原またはその部分に結合し、またはそれで取り込まれる。
【0051】
モノクローナル抗体の製造は、よく知られた技術でなされる。基本的に、望む抗原によりインビトロまたはインビボのいずれかで予め免疫された哺乳動物(例えば、マウス)の脾臓由来の免疫細胞(リンパ球)を最初に得ることを含む。抗体分泌リンパ球は(マウス)ミエローマ細胞または形質転換細胞と融合さす。これらの細胞は、細胞培養中で際限なく複製され、不死の免疫グロブリン分泌細胞系を産生し得るものである。この融合細胞すなわちハイブリドーマを培養し、得たコロニーを望むモノクローナル抗体の産生のためにスクリーンする。このような抗体を産生するコロニーをクローン化し、インビトロまたはインビボで成長せしめて、多量の抗体を製造する。このような細胞の融合についての理論的基本および実際的方法は、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0052】
哺乳動物のリンパ球を本発明のタンパク質またはペプチドで動物(例えば、マウス)のインビボ免疫により免疫する。この免疫を数週間までの間隔で必要に応じて繰り返し、十分な力価の抗体を得る。最後の免疫強化後に動物を殺し、脾細胞を取り出す。
【0053】
哺乳動物のミエローマ細胞または細胞培養中で際限なく複製できる他の融合相手との融合は、標準的な既知の技術、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や他の融合剤を用いて行われる(参照、Milstein and Kohler,Eur.J.Immunol.6:511(1976)、出典明示により本明細書の一部とする)。この不死の細胞系は、好ましくはネズミであるが、限定的でなくラットやヒトを含む他の哺乳動物の細胞からも誘導され、選択されて、ある種の栄養物の利用に必要な酵素を欠き、成長が速く、融合能の高いものを得る。これらの細胞系の多くは当業者に知られており、その他の系も常に報告されている。
【0054】
ポリクローナル抗体を増大する方法もよく知られている。典型的には、かかる抗体は、本発明のタンパク質またはポリペプチドをニュージランド白兎(プレ免疫血清を得るために、まず採血する)に皮下投与することにより、増殖される。
抗原を6カ所の異なる場所に1カ所につき計100μl注射する。各注射物質には、合成表面活性アジュバント・プルロニックポリオールまたはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後のタンパク質やポリペプチド含有の微細アクリルアミドゲルが含まれる。最初の注射2週間後にウサギから採血し、次いで定期的に同じ抗原で3回6週おきに免疫強化する。各強化10日後にサンプルの血清を採取する。抗体を捕らえる対応抗原を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより血清からポリクローナル抗体を得る。最後にウサギをフェノバルビタール150mg/kgIVで安楽死させる。ポリクロナール抗体を得るこの方法および他の方法は、E.Harlow,et al.,editors,Antibodies:A Laboratory Manual(1988)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0055】
抗体全体の使用に加えて、本発明の方法は該抗体の結合部分の利用にも関する。この結合部分には、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントが含まれる。これらの抗体フラグメントは、タンパク質分解フラグメンテイション法などの従来法によりつくられる。これは、J.Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.98-118(N.Y.Academic Press 1983)
(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0056】
別の手段として、本発明方法において、天然に存在するプローブまたはリガンド、または組換えDNA法あるいは他の生物学的方法により合成されたプローブまたはリガンドが使用される。適当なプローブまたはリガンドは、本発明のモノクローナル抗体により同定される前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する分子である。他の適当なプローブまたはリガンドは、前立腺特異的膜抗原に結合、またはそれで取り込まれる分子である。該プローブまたはリガンドは、例えばタンパク質、ペプチド、レクチンまたは核酸のプローブで有り得る。
【0057】
下記の表1に同定されるモノクローナル抗体を使用するのが特に好ましい。
【0058】
【表1】
【0059】
これらの抗体は、単独で,または他の抗体または他の生物薬剤との混合物中の成分として、癌を治療し、あるいは癌性組織(特に、そのうちの血管性内皮細胞)または種々の表面抗原特性を有する前立腺上皮細胞を造影するために、用いられる。
【0060】
生物薬剤が治療または診断のいずれに使用されるにかかわらず、生物薬剤は、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点鼻、空洞または小胞点滴、点眼、動脈内、病巣内に投与され、または鼻、喉および気管支などの粘膜に適用される。単独で投与されるか、薬学的あるいは生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤とともに投与され、そして錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルションなどの固体または液体の形態をとる。
【0061】
固体の単位用量形態は通常のタイプであり得る。固体形態は、本発明の抗体やその結合部分などの生物薬剤および担体、例えば滑沢剤やラクトース、スクロースまたはトウモロコシデンプンなどの無活性充填剤を含有する通常のゼラチンタイプなどのカプセルであり得る。他の実施態様において、これらの化合物は、ラクトース、スクロースまたはトウモロコシデンプンなどの通常の錠剤基剤をアカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤およびステアリン酸やステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と併用して錠剤にされる。
【0062】
本発明の生物薬剤は、薬学的担体と共に生理的に許容される希釈剤中のこれらの物質の溶液または懸濁液により注射可能な用量形態でも投与され得る。この担体には水や油などの無菌の液体があり、それに界面活性剤およびアジュバント、賦形剤または安定剤などを含む他の薬理学的および栄養学的に許容される担体が加えられたり、加えられなかったりする。上記した油は、石油、動物、植物、合成を起源とし、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油である。一般的に、水、塩水、水性デキストールおよび関連糖溶液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい液体担体、特に注射用の担体である。
【0063】
エアゾルとしての使用のために、溶液や懸濁液中の本発明の生物薬剤は、適当な噴霧剤、例えばプロパン、ブタンまたはイソブタンのような炭化水素系噴霧剤、通常のアジュバンドとともに、加圧エアゾル容器に充填され得る。本発明の物質はネブライザーやアトマイザーなどの非加圧形態でも投与され得る。
【0064】
生物薬剤は、インビボで癌性組織(特に、そのうちの血管性内皮細胞)、および正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を検出するのに、用いられる。生物薬剤を標識し、それを哺乳動物に投与し、哺乳動物を造影して、検出する。
【0065】
本発明による診断造影に有用な標識の例には、131I,111In,123I,99mTc,32P,125I,3H,14Cおよび188Rhなどの放射標識、フルオレセインおよびローダニンなどの蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、ルシフェリンなどの化学発光体、ペロキシダーゼまたはホスファターゼなどの酵素マーカーがある。経直腸プローブなどの短射程検出プローブのような短射程放出体も使用される。これらの放射同位体および経直腸検出プローブは、併用されるとき、前立腺窩再発および骨盤結節疾患を検出するのに特に有用である。生物薬剤は既知の技術を用いてこれらの試薬で標識される。例えば、抗体の放射標識については、Wensel and Meares,Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy,Elsevier,NewYork(1983)(出典明示により本明細書の一部とする)を参照。D.Colcher et al., "Use of Monoclonal Antibodies as Radiopharmaceuticals for the Localization of Human Carcinoma Xenografts in Athymic Mice",Meth.Enzymol.121:802-816(1986)(出典明示により本明細書の一部とする)も参照。
【0066】
放射標識された本発明の生物薬剤は、インビトロ診断試験に使用され得る。標識された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドなどの標識された生物薬剤の特異的活性は、放射活性標識の半減期や同位体純度と、いかに標識が生物薬剤に合体しているかとに依存する。表2は、いくつかの普通に使用される同位体、その特異的活性および半減期を表示する。イムノアッセイにおいて、特異的活性が高くなるほど、一般的に感受性がよくなる。
【0067】
【表2】
【0068】
生物薬剤を表2の放射活性同位体で標識する方法は、一般的に知られている。
トリチウム・標識法は米国特許第4,302,438(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ネズミモノクローナル抗体に特に適用されるヨウ素化法、トリチウム・標識法および32S標識法は、Goding,J.W.(上記、pp124-126)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。抗体やその結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤をヨウ化する他の方法は、Hunter and Greenwood,Nature 144:945(1962),David et al.,Biochemistry 13:1014-1021(1974)、および米国特許第3,867,517および4,376,110(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。造影に有用な放射標識元素は、例えば123I、131I、111Inおよび99mTcである。生物薬剤をヨウ化する方法は、Greenwood,F.et al., Biochem.J.89:114-123(1963); Marchalonis,J.,Biochem.J.113:299-305(1969);and Morrison,M.et al., Immunochemistry,289-297(1971)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。99mTc標識法は、Rhodes,B.et al.in Burchiel,S.et al.(eds.),Tumor Imaging:The Radioimmunochemical Detection of Cancer,New York:Masson 111-123(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。生物薬剤を111In標識するのに適した方法は、Hnatowich,D.J.et al.,J.Immul.Methods,65:147-157(1983),Hnatowich,D.et al.,J.Applied Radiation,35:554-557(1984),and Buckley,R.G.et al.,F.E.B.S.166:202-204(1984)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0069】
放射標識された生物薬剤の場合、生物薬剤は患者に投与されて、抗原を生じる腫瘍に局在する。生物薬剤は、その抗原と反応し、次いで、例えばガンマー・カメラまたは発光断層撮影法を用いる放射核スキャンなどの既知方法でインビボで検出すなわち“造影”される。参照、A.R.Bradwell et al.,"Developments in Antibody Imaging",Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.,(eds.),pp.65-85(Academic Press 1985)(出典明示により本明細書の一部とする)。他方、放射標識が陽電子(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)を放出するときは、Brookhaven National Laboratory に存在するPet VIなどの陽電子放出軸移送断層撮影スキャナーを使用し得る。
【0070】
発蛍光団および発色団で標識された生物薬剤は、既知の標準的分子部分からつくられる。抗体および他のタンパク質が約310nm以上の波長の光を吸収するので、選択される蛍光部分は、約310nm以上、好ましくは400nm以上の波長で実質的な吸収を有するべきである。種々の適当な発蛍光団および発色団は、Stryer,Science,162:526(1968)and Brand,L.et al.,Annual Review of Biochemistry,41:843-868(1972)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。生物薬剤は、米国特許第3,940,475、4,289,747および4,376,110(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のような通常の方法によって、蛍光発色基で標識され得る。
【0071】
上記のいくつかの望ましい特性を有する蛍光体のひとつのグループは、キサンテン色素であって、これは、3,6−ジヒドロ−9−ヘニルキサントヒドロールから誘導されたフルオレセイン、レサミン、3,6−ジアミノ−9−フェニルキサントヒドロールから誘導されたローダニン、リサニムローダミンBを含む。ローダミンBおよびフルオレセインの9−o−カルボキシフェニルキサントヒドロール誘導体は9−o−カルボキシフェニル基を有する。アミノおよびイソチオシアネート基などの活性カップリング基を有するフルオレセイン化合物、例えばフルオレセイン・イソシアネートおよびフルオレセスカミンは、容易に利用される。蛍光化合物の他のグループは、αまたはβ位にアミノ基を有するナフチルアミンである。
【0072】
生物薬剤は、Goding,J.(上記、pp208-249)記載の方法により発蛍光団または発色団で標識される。生物薬剤は、NMR活性19F原子を含む指示基または下記のような原子の複数で標識され得る。それは、(i)天然に豊富にあるフッ素原子の実質的にすべてが19F同位体であり、したがって、実質的にすべてのフッ素含有化合物がNMR活性であり、(ii)トリフルオロ酢酸無水物などの多くの化学的活性ポリフッ化化合物が比較的低価格で市販されており、(iii)多くのフッ化化合物がヒトに医学的に使用し得る事が知られ、過フッ化ポリエーテルがヘモグロビン置換などの酸素移送に用いられているものである。インキュベーションの時間を取った後、癌性組織(特に、その中の血管性内皮細胞)および前立腺上皮細胞を局在化し造影するために、全体NMR測定をPykett,Scientific American,246:78-88(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されるような機器を用いて実施する。
【0073】
生きているのと死んだ前立腺上皮細胞含有の領域を識別すること、または生きているのと死んだ前立腺上皮細胞を識別することが重要である場合、本発明の抗体(または本発明の他の生物薬剤)は、上記のように標識されて、生きているか死んだのかいずれかの前立腺上皮細胞のみを認識する抗体または他の生物薬剤と共に投与される。これらの抗体などは、主体の抗体を標識するのに用いた標識と区別できる標識で標識されている。種々の場所または時間における2レベルを監視することにより、生きているまたは死んだ、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞の場所的および時間的な濃度の変化を確かめることができる。特に、この方法は、生きているのと死んだのと両方の前立腺上皮細胞を認識する本発明の標識抗体と死んだ前立腺上皮細胞のみを認識する標識7El1抗体とを用いて実施することができる。
【0074】
生物薬剤は、インビボで正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を切除または殺すためにも用いられる。これには、生物薬剤がそれのみ、または生物薬剤(すなわち、正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞を認識する生物薬剤)が結合する細胞障害剤とともに用いられることが含まれる。また、細胞障害剤と結合した生物薬剤を処置を必要とする哺乳動物に投与することが含まれる。正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞の場合、生物薬剤は前立腺上皮細胞を認識するので、生物薬剤が結合するこのような細胞は破壊される。該投与は正常な前立腺上皮細胞を破壊するが、前立腺が生命に、すなわち生存に必要でないので問題でない。前立腺は間接的に生殖に関係するが、本発明の処置を受ける患者にとって実際的に考慮すべき問題ではなかったようである。癌性組織の場合、生物薬剤が癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を認識するので、生物薬剤/細胞障害剤の血管性内皮細胞との結合は、この細胞を破壊し、それによって近接の癌性細胞への血流を遮断し、それら癌性細胞を殺すまたは切断する。あるいは、生物薬剤は、その癌性細胞に近接の血管性内皮細胞との結合によって、癌性細胞に近接して局在する。このように、適当な生物薬剤(非識別的に、短い射程で細胞を殺すのに効果的な物質を含有する生物薬剤を含む)を用いて、癌性組織中の細胞(癌性細胞を含む)が選択的に切断または殺される。
【0075】
本発明の生物薬剤は、治療薬剤、放射化合物、植物、かび、細菌源の分子、生物的タンパク質およびこれらの混合物などの様々な細胞障害剤を輸送するのに用いられる。細胞障害剤は、細胞内作用細胞障害剤、例えば短射程、高エネルギα放出体などの短射程放射放出体であり得る。
【0076】
酵素的に活性のトキシンおよびそのフラグメントには、例えば、ジフテリア・トキシンAフラグメント、ジフテリア・トキシンの非結合活性フラグメント、エキソトキシンA(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サクリン、ある種のAleurites fordiiタンパク質、ある種のジアンシン・タンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAP,PAPIIおよびPAP−S)、Morodica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Saponaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミタギリン、レストリクトシン、フェノマイシンおよびエノマイシンがある。酵素的活性タンパク質の製造方法は、WO84/03508およびWO85/03508(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ある種の細胞障害部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキセート、ネオカルジノスタチンおよびプラチナムから誘導される。
【0077】
生物薬剤を細胞障害剤とコンジュゲートする方法は、以前から知られている。
クロラムブシルを抗体とコンジュゲートする方法は、Flechner,I.,European Journal of Cancer,9:741-745(1973);Ghose,T.et al.,British Medical Journal,3:495-499(1972);and Szekerke,M.,et al.,Neoplasma,19:211-215(1972)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。ダウノマイシンおよびアドリアマイシンを抗体とコンジュゲートする方法は、Hurwitz,E.et al.,Cancer Research,35:1175-1181(1975)and Arnon,R.et al.,Cancer Surveys,1:429-449(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。抗体−リシン・コンジュゲートを製造する方法は、米国特許第4,414,148およびOsawa,T.,et al.,Cancer Surveys,1:373-388(1982)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。カップリング方法は、EP86309516.2(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0078】
本発明の特に好ましい実施態様、正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞を殺すまたは切断することについて特に適した実施態様において、第1生物薬剤がプロドラッグ活性化剤に密接したときにのみ活性化されるプロドラッグとコンジュゲイトしている。プロドラッグ活性化剤は、本発明の第2生物薬剤、特に前立腺特異的膜抗原分子上の非競合部位に結合している生物薬剤とコンジュゲートされる。競合または非競合結合部位に結合した2種の生物薬剤は、通常の競合結合アッセイにより測定される。例えば、モノクローナル抗体J591、J533およびE99は、前立腺特異的膜抗原分子上の競合結合部位に結合する。他方、抗体J415は、J591、J533およびE99が結合する部位と競合しない結合部位に結合する。従って、例えば第1生物薬剤がJ591、J533およびE99の一つであり、第2生物薬剤がJ415であり得る。逆に、第1生物薬剤がJ415であり、第2生物薬剤がJ591、J533およびE99の一つであり得る。本発明の実施に使用するのに適したドラッグ−プロドラッグの対については、Blakely et al.,"ZD2767,an Improved System for Antibody-directed Enzyme Prodrug Therapy That Results in Tumor Regressions in Colorectal Tumor Xenografts."Cancer Reseach,56:3287-3292(1996)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0079】
別法において、抗体やその結合部分あるいはプローブは、高エネルギー放出体、例えば、γ放出体、131Iなどの放射性同位体とカップリングさすことができ、腫瘍部位に局在して、いくつかの細胞を殺す。参照、例えば、S.E.Order,"Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy",Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.(eds.),pp303-316(Academic Press 1985)(出典明示により本明細書の一部とする)。他の適当な放射性同位体には、212Bi、213Bi、211Atなどのα放出体および186Re、90Yなどのβ放出体がある。癌における前立腺上皮細胞および血管性内皮細胞が放射線に比較的感受性であることから、放射治療は特に効果的であると期待される。
【0080】
生物薬剤が癌性細胞または前立腺上皮細胞を殺すまたは切除するために単独で使用されるときは、補体媒介または抗体依存性の細胞毒性などの内因性宿主免疫機能が開始されて、殺すまたは切除することがなされる。
【0081】
本発明の生物薬剤は、特定の標識を検出するために、キットとして器具とともに使用され、販売され得る。
本発明の生物薬剤の医療的使用は、他の医療処置形態と併用することができる。その他の処置には、外科処置、放射線照射、冷凍外科法、温熱療法、ホルモン治療、化学療法、ワクチンおよび他の免疫治療が含まれる。
【0082】
本発明にさらに包含されるものとして、予防のために生物薬剤を用いて、殺すまたは切除する方法がある。例えば、これらの物質は、前立腺または他の癌の発生あるいは進行を防止または遅延するのに用いられる。
【0083】
本発明の前立腺または他の癌を処置する医療方法には多くの利点がある。生物薬剤は、癌性細胞(前立腺上皮細胞を含有する癌性組織の細胞など)および前立腺上皮細胞のみを標的とするので、他の組織に影響しない。結果として、生物薬剤による処置は安全性が高く、特に高齢者により安全である。本発明による処置は、前立腺癌の転移が起こりやすく、また多くの他の癌が転移しやすい骨髄やリンパ節に抗体やその結合部分、プローブまたはリガンドなどの生物薬剤を高レベルで向けるので、特に効果的であると期待される。さらに、前立腺癌の腫瘍部位は大きさが小さい傾向にあり、従って、細胞障害剤により容易に破壊されやすいので、本発明方法は前立腺癌の処置に特に適している。本発明による処置は、前立腺癌の場合、血清前立腺特異抗原、患者の癌の病理的特性、グリーソン・スコア、嚢外の、精液の、小胞の、眼周辺の侵入、リンパ節を含むポジチブ・マージンなどの臨床パラメーターにより効果的に監視され得る。また、これらのパラメーターは、かかる処置が取られるべきかを知るのに使用することができる。
【0084】
本発明の生物薬剤が生きている前立腺細胞に結合するので、これらの生物薬剤を使用する前立腺癌を処置する医療的方法は、溶解前立腺細胞を標的とする他の方法よりも非常に効果的である。同じ理由によって、生きている正常、良性増殖性または癌性の前立腺上皮細胞(同じく癌における血管性内皮細胞)の存在位置を診断または造影する方法は、本発明の生物薬剤を用いることにより非常に改善される。さらに、生きているのと死んだ前立腺細胞とを識別する能力は、特に特定の処置の効果を監視するのに、優れている。
【0085】
ハイブリドーマE99、J415、J533およびJ591は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタベスト条約の要件に従い、それを満足して、American Type Culture Collection(A.T.C.C.)at 12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland 20852に寄託されている。ハイブリドーマE99は1996年5月2日に(寄託番号HB-12101)、ハイブリドーマJ415は1996年5月30日に(寄託番号HB-12109)、ハイブリドーマJ533およびJ591は1996年6月6日に(寄託番号HB-12127およびHB-12126)寄託された。
【0086】
本発明を下記の実施例でさらに説明する。
実施例
実施例1−ヒト組織
良性および悪性組織の新鮮な試料は、New York Hospital Cornell University Medical Center(NYH-CUMC)の病理学部門により提供された。
【0087】
実施例2-組織培養
ヒト癌の培養細胞系は、NYH-CUMCの泌尿器癌研究所から得た。前立腺癌細胞系PC−3(Mickey,D.D.et al.、『単層培養および無胸腺マウスにおける固形癌としての、ヒト前立腺癌細胞系(DU145)の特徴づけ』、Prog.Clin.Biol.Res.,37:67-84(1980)、出典明示により本明細書の一部とする)、DU−145(Mickey,D.D.et al.、『単層培養および無胸腺マウスにおける固形癌としての、ヒト前立腺癌細胞系(DU145)の特徴づけ』、Prog.Clin.Biol.Res.,37:67-84(1980)、出典明示により本明細書の一部とする)およびLNCaP(Horoszewicz,J.S.et al.、『ヒト前立腺癌のLNCaPモデル』、Cancer Res.43:1809-1818(1983)、出典明示により本明細書の一部とする)は、アメリカ基準菌株保存機構(ATCC)(Rockville,MD.)から入手した。始めにハイブリドーマを、10%FCS、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよびHAT培地(GIBCO,Grand Island,NY)を追加したRPMI−1640培地中でクローン化した。サブクローンをアミノプテリン非含有の同培地で培養した。
【0088】
実施例3−マウスモノクローナル抗体の調製
雌性BALB/cマウスを、2週間間隔で3回、LNCaP(6X106細胞)を用いて腹腔内注射により免疫化した。最後の腹腔内免疫強化をインビトロで生育した新鮮な前立腺上皮細胞で行った。標準的な技術(Ueda,R.et al.、『マウスモノクローナル抗体により規定されるヒト腎臓癌の細胞表面抗原:組織特異的肝臓糖蛋白質の同定』、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:5122-5126(1981)(出典明示により本明細書の一部とする)を用いて、3日後に脾臓細胞をSP−2マウスミエローマ細胞と融合させた。得られたクローンの上清を生きているLNCaPに対するロゼット法および細胞毒性アッセイによりスクリーニングした。これらのアッセイで陽性であったクローンを正常腎臓、結腸および前立腺に対する免疫化学でスクリーニングした。LNCaP+/Nml腎-/結腸-/前立腺+であったクローンを選別し、限定希釈により3回サブクローンした。各クローン由来の培養上清の免疫グロブリンクラスを、特異的ウサギ抗血清(Calbiochem,San Diego,CA)を用いて免疫拡散法により決定した。MAPS−IIキット(Bio-Red,Richmond,CA)を用いて、mAbを精製した。
【0089】
実施例4-mAbのビオチニル化
精製mAbを0.1MNaCO3中で2時間透析した。1mg/mlのmAb1mlをジメチルスルホキシド中、ビオチンアミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンアミドエステル(Sigma)1mg/mlの0.1mlと混合し、4時間室温で撹拌した。非結合ビオチンをリン酸緩衝液(PBS)に対する透析により除去した。
【0090】
実施例5-免疫組織化学的染色
前立腺組織のクリオスタット画分を、Marusich,M.F.『免疫組織化学的ハイブリドーマスクリーニング用の、組織画分を非常に大量に調製する迅速な方法』、J.Immunol.Methods,111:143-145(1988)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように、前以て0.45%ゼラチン溶液で被膜したファルコン3034プレートカバー(Becton-Dickenson、Lincoln Park、NJ)のリング内に置いた。プレートを−80℃で貯蔵した。クリオスタット画分を10分間室温でPBS中、2%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄後、内因性ペルオキシダーゼ活性は、10分間室温でPBS中、0.3%過酸化水素で処理することにより阻害された。画分を20分間PBS中、2%BSAでインキュベートした後、mAbを60分間で室温にて加えた。スライドは、PBSで充分に洗浄し、PBS中10%正常ヒト血清で1:100に希釈したペルオキシダーゼーコンジュゲートウサギ・アンチ−マウスIg(DAKO Corp.,Santa Barbara,CA)と共に60分間、室温でインキュベートした。ジアミノベンジン反応後、画分をヘマトキシリンを用いて対比染色した。
【0091】
実施例6−血清学的解析
アンチ−マウス免疫グロブリン混合血球吸着アッセイを、Ueda,R.et al.、『マウスモノクローナル抗体により規定されるヒト腎臓癌の細胞表面抗原:組織特異性肝臓糖蛋白質の同定』、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:5122-5126(1981)(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように行った。指示細胞を調製するために、0.01%塩化クロムを用いて、アンチ−マウスIgDAK0(Corp.)をO型ヒトRBCに結合させた。血清学的検定は、前以てテラサキプレート(Nunc,Denmark)で培養した細胞で行った。抗体を室温で1時間、標的細胞と共にインキュベートした。ついで、標的細胞を洗浄し、指示細胞を1時間で加えた。
【0092】
実施例7−免疫沈降反応
LNCaP細胞(2×107)を氷上30分間ビオチンNHSS(最終濃度5mM)でビオチニル化した。洗った後、ビオチニル化細胞を氷上30分間、溶解緩衝液1ml(20mM Tris/HCl、pH8.0、1mM EDTA、1mM PMSF、1% toriton X-100)に再懸濁した。懸濁液を4℃100分間1500g×100で遠心分離し、上澄み液を4℃で15分間12,000rpmで遠心分離した。得た溶解質をウサギまたはヤギ−マウスIgG−コート・パンソルビンで4℃1時間あらかじめ吸収せしめた。吸収された溶解質をmAbで4℃一夜インキュベートした。ウサギまたはヤギアンチ−マウスIgコート・アガロースビードを4℃2時間で加え、次いで洗った。ビードをTris塩基/NaClに再懸濁し、サンプルの緩衝液に2−メルカプトエタノールと共に加え、5分間煮沸した。遠心分離後、上澄み液をSDS−PAGE12%ゲルにかけた。ゲルをストラプタビジン−ペルオキシダーゼでブロックおよび着色されたニトロセルロース膜を通した。膜はジアミノベンジディン(DAB)で展開された。
【0093】
逐次免疫沈降は、溶解質が4℃一夜−79mAbで最初にあらかじめ処理された以外は同様である。次いで第2のmAbが用いられて、前処理された溶解質が免疫沈降された。
約2000クローンがスクリーンされ、うち4クローンは実施例4に記載のように選択された。サブクローニングの後、4ハイブリドーマ、E99、J415、J533およびJ591からの上澄み液を、生存能力のある(すなわち非固定の)LNCaPに対する免疫蛍光および免疫沈降および逐次免疫沈降によって検定し、PSMAに対する反応性を確認した。
【0094】
LNCaP標的細胞(最初にHoroszewiczに記載されており、7E11抗体およびPSMAの発現についてのプロトタイプ細胞系をつくる)を用いた免疫蛍光試験は、E99抗体が生存能力のあるLNCaP細胞免疫蛍光物に結合し、低下することを示す。このことは、Horoszewiczが最初に記載したように、7E11抗体が生存能力のあるLNCaP細胞にほとんどまたはまったく結合しないで、固定された(死んだ)細胞のみに強く結合することと好対照である。
【0095】
4種のmAbの正常ヒト組織との反応性を免疫組織化学的に調べた。その結果を表3に示す。
表3
間接的免疫ペルオキシダーゼ染色によるmAbのヒト正常組織との反応性
【0096】
【表3】
【0097】
上記の逐次免疫沈降試験は、7E11、E99、J415、J533および591が同じ分子すなわちPSMAに結合することを示した。
実施例8−ウェスタンブロット法
抗体E99、J415、J533および591が7E11抗体(すなわちPSMA)と同じバンドを沈降することを確認するために、ウェスタンブロット法を行った。精液(400μg/レーン)またはLNCaP溶解質を12%SDS−PAGEゲルのレーン中に充填した。ゲルをニトロセルロース膜に移した。膜を室温60分間、5%ドライミルク/Tris緩衝液-Tween20(TBST)でブロックした。洗った後、膜を室温で60分間、最初のmAbでインキュベートした。 くり返して洗った後、膜を室温で60分間、5%ドライミルク/TBST中のヤギアンチマウス−Igペルオキシダーゼ1/5000でインキュベートした。さらに洗った後、“ECL”(Amersham Life Sciences, International,Arlington Heights,Illinois)と云う化学発光物を用いて製造業者の指示通りに展開した。ウェスタンブロット試験を表4に示す。
【0098】
表4
ウェスタンブロット結果
【0099】
【表4】
【0100】
実施例9−PSMAの外的ドメインに対するmAbの反応性
検出されたPSMAの細胞表面(外部)発現を確認するために、新鮮な生存能力のある細胞を固定することなしに、インビトロで免疫蛍光によって調べた。LNCaP細胞を洗い、室温で1時間、mAbと共に、次いでウサギアンチマウスIg蛍光物(DAKO Corp.,Santa Babara.CA)と共にインキュベートした。ウェルを蛍光顕微鏡で読んだ。陰性コントロールはアイソタイプ対無関係mAbからなり、一方、アンチ−クラスI MHC mAbは陽性コントロールとなった。
【0101】
免疫蛍光法およびロゼット法の結果を表5に示す。
表5
7E11の新しいmAbとの比較
【0102】
【表5】
【0103】
実施例10−競合試験
J591,J533,E99およびJ415が同じまたは異なる前立腺特異的膜抗原分子の抗原性部位(エピトープ)を検出したかどうかを調べるために、下記の方法で競合試験を行った。
【0104】
前立腺特異的膜抗原源としてのLNCaP細胞系の溶解質でプレートをコートし、洗って非結合物を除去した。“コールド”(非標識)モノクローナル抗体をプレート上で室温1時間インキュベートし、その抗原性部位へ結合せしめした。次いで、ビオチンまたは125Iで標識した第2モノクローナル抗体を追加の時間で加えた。前立腺特異的膜抗原コートプレートに結合の第2モノクロナール抗体の量は酵素連結イムノアッセイのアビジン−アルカリホスファターゼ(ビオチン標識第2モノクロナール抗体の場合)またはガンマー・カウンターでの物理的に計数(125I−標識第2モノクロナール抗体の場合)によって調べた。非標識(コールド)と標識されているのと両方の同じモノクローナル抗体を用いたコントロールを“100%競合”とし、まったく異なる分子に対するモノクローナル抗体(例えば、前立腺特異的膜抗原と異なる前立腺関連タンパク質であるインヒビンを検出するモノクローナル抗体I−56)を“0%競合”と定義した。
【0105】
その結果によると、J591、J533およびE99は互に妨害し、競合し夫々の結合をブロックするが、J415の結合をブロックしない。逆も同じである。7E11/CYT356は、異なる部位(細胞内)でPSMAを結合することが知られているが、J591、J533、E99またはJ415のいずれをもブロックしなかった。
【0106】
非競合的部位に結合するモノクローナル抗体の対を有することは、例えば体液における可溶化前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメントなどの可溶性抗原についての抗体サンドウィッチアッセイの開発を可能にする。例えば、抗原(例えば前立腺特異的膜抗原またはそのフラグメント)は、J591で体液から“捕捉”され、他の工程で標識J415により検出され得る。
【0107】
別の処置において、非競合的モノクローナル抗体を用いて抗体結合を増すことができる。例えば、非競合部位が各々前立腺特異的膜抗原分子上で提示されているとすると、J591とJ415の併用を加えることは、夫々のモノクローナル抗体単独の2倍のモノクローナル抗体分子に結合することになる。2つの非競合抗原結合部位に結合することは、抗原架橋を増加し、そしておそらく取りこみを増大することになる。さらに2つの検出された部位は同じ前立腺特異的膜抗原分子上に物理的に位置しているので、単一の前立腺特異的膜抗原分子に2つのモノクローナル抗体分子が結合することは、2つのモノクローナル抗原分子を互に近接の場所に置き、非常に好ましいドラック−プロドラッグ相互作用を提供する。
例えば、モノクローナル抗体J591は不活性プロドラッグとコンジゲートし、J415はプロドラッグ活性化剤とコンジゲートされ得る。プロドラッグと活性化剤は、前立腺特異的膜抗原−発現細胞(例えば、前立腺癌細胞)の部位でのみ密接して結合しているので、活性型へのプロドラッグの活性化はそれらの部位でのみ起きる。
【0108】
実施例11−顕微鏡検査
共焦点顕微鏡検査および免疫電子顕微鏡検査によると、E99、J591、J533およびJ415はクラスリン被覆小窩で細胞膜に結合し、迅速にエンドソーム(細胞膜小胞)に取り込まれる。図1−4は、細胞表面での金標識モノクローナル抗体J591の取り込みを時間関数で表わしている免疫電子顕微鏡検査である。これらの図においてモノクローナル抗体は黒点で表わされる。
【0109】
生存能力のあるLNCaP細胞をJ591と共に4℃で1時間インキュベートした。細胞を洗い、37℃で、0、5、10または15分に取得し、固定し、免疫電子顕微鏡検査を行った。図1は37℃インキュベーションの前の細胞を示す。J591が細胞膜の外観に沿って細胞に結合しているのが見られる。この図において、“M”は細胞のミトコンドリアを、“N”は核を示す。図2は37℃5分間インキュベーション後の細胞を示す。矢印はクラスリン被覆小窩の形成を示す。図3は37℃10分インキュベーション後の細胞を示す。クラスリン被覆小窩の摘み取り、すなわち細胞内取り込み(エンドサイト−シス)が矢印で示すように見られる。図4では、37℃15分間インキュベーション後に、モノクローナル抗体J591が細胞内の取り込み小胞に含有されており、矢印で示す。図5では、37℃15分間インキュベーション後に、モノクローナル抗体J591がエンドソーム中にも含有されており、矢印で示す。
【0110】
実施例12−モノクローナル抗体591の可変領域の配列決定
全RNAを107ネズミハイブリドーマJ591細胞から調製した。これらの細胞からのコンディションドメディウムのサンプルについて、前立腺細胞上のJ591の特異抗原との結合を調べた。条件培養基はELISAおよびウェスタンブロット法で抗原との結合が陽性であった。
【0111】
VHおよびVK cDNAは、逆転写酵素、マウスκ定常領域およびマウスIgG正常領域プライマーを用いて調製した。第1鎖cDNAは多種のマウスシグナル配列プライマー(VHについて6、VKについて7)を用いて、PCRにより増幅した。増幅DNAをゲル精製し、ベクターpT7Blue中にクローン化した。
【0112】
得たVHおよびVKクローンをPCRで正しい挿入について選別し、選択したクローンのDNA配列をジデオキン鎖測定法で調べた。
プライマー領域(用いられたプライマーの配列に依存したこの配列として)、得たすべてのVHクローンは同じ配列を有していた。この配列は3種の異なる5’プライマーから産生したクローンより得られた。1つのクローンはシグナル配列に1塩基対を有し、1つのクローンは異常なPCR産物を含有していた。図6に示す配列決定戦略を用いて、重鎖についてのヌクレオチド配列を得た。これを配列番号1とし、対応の逆転非コード鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)と併せて、図7に示す。これらの配列はシグナル配列の部分および抗体の定常領域の部分を含んでいる。J591VHの対応演繹アミノ酸配列を配列番号3、配列番号4および配列番号5として図7に示す。J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は、下記ヌクレオチド配列(配列番号6)を有する。
【0113】
【化1】
【0114】
J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は、下記ヌクレオチド配列(配列番号7)を有する。
【0115】
【化2】
【0116】
J591重鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は、下記のヌクレオチド配列(配列番号8)を有する。
【0117】
【化3】
【0118】
J591VHはマウス重鎖サブグループIIA(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunoloqical Interest, U.S.Department of Health and Human Services(1991)(“Kabat”)、出典明示により本明細書の一部とする。)中に存在する。図8にJ591の配列をこのサブグールとの共通配列について比較する。
【0119】
VHと異なり、複数のVK配列が得られた。検査した15VKクローンのうち、4が融合相手(Carol et al.,Molecular Immunology,25:991-995(1988)、出典明示により本明細書の一部とする)からの異常マウスIgκの配列を有した。これらのクローンは2つの特異的5’プライマーから始まる。これらのクローンについてはさらに研究しなかった。残りのクローンのうち、10は同じヌクレオチド配列を有し、1つのクローン、VK17は別のVK配列を有した。10の同じクローンは3つの5’プライマー(異常配列を示す2つのものと異なる)から始まり、そのうち1つはVK17を産生した。用いた配列決定戦略を図9に示す。
【0120】
10の同じクローンに対応するJ591VKの核酸配列(配列番号9)を、対応する逆転非コード鎖の核酸配列(配列番号10)および演繹アミノ酸配列(配列番号11、12、13)と併せて図10に示す。これらの配列はシグナル配列の部分および抗体の定常領域の部分を含有している。10の同じクローンに対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号14)を有する。
【0121】
【化4】
【0122】
10の同じクローンに対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号15)を有する。
【0123】
【化5】
【0124】
10の同じクローンに対応のJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は下記のヌクレオチド配列(配列番号16)を有する。
【0125】
【化6】
【0126】
クローンVK17に対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)のコード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号
17)を有する。
【0127】
【化7】
【0128】
クローンVK17に対応するJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)の逆転、非コード鎖は下記のヌクレオチド配列(配列番号18)を有する。
【0129】
【化8】
【0130】
クローンVK17に対応のJ591軽(kappa)鎖の可変領域(シグナル配列および定常領域成分を除く)に対応するタンパク質配列は下記のヌクレオチド配列(配列番号19)を有する。
【0131】
【化9】
【0132】
J591VKはマウスカッパー鎖サブグループV(Kabat,出典明示により本明細書の一部とする)に存在する。図11において、10の同じクローンに対応するJ591VKの配列をこのサブグループの共通配列について比較する。
【0133】
好ましいJ591の配列は、配列番号6に対応する重鎖可変領域DNAコード鎖配列および配列番号7に対応する重鎖可変領域DNAコード鎖配列を有するものである。J591の重鎖可変領域は、好ましくは配列番号8に対応するアミノ酸配列を有する。J591の軽鎖可変領域は、好ましくは配列番号17に対応するDNAコード鎖配列、配列番号18に対応するDNA非コード鎖(逆転)配列および配列番号19に対応するアミノ酸配列を有する。
【0134】
実施例13−正常および癌性組織の免疫組織化学的染色
23癌腫からの癌組織を液体窒素であらかじめ冷し、ドライアイス上OTC化合物(Miles,Elkhart,Indiana)中で急凍し、−80℃で保存した。低温槽の組織画分(5μm)を冷アセトン(4℃)で10分間で固定した。mAb(5μg/mlまたはハイブリドーマ上清)を室温で1時間インキュベートした。抗体結合は、第2抗体としてウサギアンチ−マウスIgペルオキシダーゼ(Dako,Carpinteria,California)およびクロモゲンとしてDAB(Sigma,St.Louis,Missouri)を用いて検出した。同位体マッチ非関連抗体を陰性コントロールとして用いた。
【0135】
mAb J591,J533,J415およびE99は、試験した全23の癌腫中の血管性内皮細胞に強く反応した。これらは、9/9腎の、5/5尿路の、6/6結腸の、1/1肺の、1/1乳房の癌腫および1/1肝への転移性腺癌である。図2A−2Fは、それぞれ腎、尿路、結腸、肺および乳房の癌腫、および肝への転移性腺腫の新生血管系に対するmAb J591の免疫化学的反応性を示す。
【0136】
説明の目的で本発明を詳細に記載したが、この詳述は説明のためにのみなされたものであって、当業者は下記の請求項に定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなしに改変できることが理解されるべきである。
【0137】
【数1】
【0138】
【数2】
【0139】
【数3】
【0140】
【数4】
【0141】
【数5】
【0142】
【数6】
【0143】
【数7】
【0144】
【数8】
【0145】
【数9】
【0146】
【数10】
【0147】
【数11】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌性細胞を切除または殺す方法であって、
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、
癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を生物薬剤に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することと癌性細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む方法。
【請求項2】
生物薬剤が癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を殺すまたは切除し、それによって癌性細胞への血流を減少して癌性細胞を殺すまたは切除する、請求項1の方法。
【請求項3】
癌性細胞が腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項1の方法。
【請求項4】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項1の方法。
【請求項5】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項1の方法。
【請求項6】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤を結合さすことと癌性細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項6の方法。
【請求項8】
抗体が請求項4の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項4の方法。
【請求項9】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項8の方法。
【請求項10】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項8の方法。
【請求項11】
抗体の結合部分が請求項4の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項4の方法。
【請求項12】
プローブまたはリガンドが請求項4の方法の実施において使用される、請求項4の方法。
【請求項13】
生物薬剤が、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に結合している、請求項1の方法。
【請求項14】
癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質が細胞障害剤である、請求項13の方法。
【請求項15】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、カビまたは細菌源の分子、生物性タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項14の方法。
【請求項16】
抗体が内因性宿主免疫機能を開始するのに効果的である、請求項4の方法。
【請求項17】
内因性宿主免疫機能が補体媒介性細胞障害である、請求項16の方法。
【請求項18】
内因性宿主免疫機能が抗体依存性細胞障害である、請求項16の方法。
【請求項19】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項1の方法。
【請求項20】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項1の方法。
【請求項21】
生物サンプルにおいて癌性組織を検出する方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、そのうち、生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合しており、 標識を有する生物薬剤に生物サンプルを、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめ、 標識の検出により生物サンプルにおける癌性組織の存在を検出する、ことを含む方法。
【請求項22】
癌性細胞が腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項21の方法。
【請求項23】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項21の方法。
【請求項24】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項21の方法。
【請求項25】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤を結合さすことと癌性細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項21の方法。
【請求項26】
標識が短射程放射放出体である、請求項25の方法。
【請求項27】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項25の方法。
【請求項28】
抗体が請求項23の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項23の方法。
【請求項29】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項28の方法。
【請求項30】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項28の方法。
【請求項31】
抗体の結合部分が請求項23の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項23の方法。
【請求項32】
プローブまたはリガンドが請求項23の方法の実施において使用される、請求項23の方法。
【請求項33】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項21の方法。
【請求項34】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項21の方法。
【請求項35】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項21の方法。
【請求項36】
該接触がサンプルの血清または尿において行われる、請求項21の方法。
【請求項37】
該接触が組織生検サンプルにおいて行われる、請求項21の方法。
【請求項38】
正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞を切除または殺す方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、 該細胞を生物薬剤に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと該細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む方法。
【請求項39】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項38の方法。
【請求項40】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項38の方法。
【請求項41】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤を結合さすことと該細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与する、ことを含む請求項38の方法。
【請求項42】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項41の方法。
【請求項43】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項41の方法。
【請求項44】
抗体が請求項39の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項39の方法。
【請求項45】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項44の方法。
【請求項46】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項44の方法。
【請求項47】
抗体の結合部分が請求項39の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項39の方法。
【請求項48】
プローブまたはリガンドが請求項39の方法の実施において使用される、請求項39の方法。
【請求項49】
生物薬剤が、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に結合している、請求項38の方法。
【請求項50】
癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質が細胞障害剤である、請求項49の方法。
【請求項51】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、カビまたは細菌源の分子、生物性タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項50の方法。
【請求項52】
抗体が内因性宿主免疫機能を開始するのに効果的である、請求項39の方法。
【請求項53】
内因性宿主免疫機能が補体媒介性細胞障害である、請求項52の方法。
【請求項54】
内因性宿主免疫機能が抗体依存性細胞障害である、請求項52の方法。
【請求項55】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項38の方法。
【請求項56】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項38の方法。
【請求項57】
さらに、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する第2生物薬剤を準備し、 該細胞を第2生物薬剤に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに第2生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む、請求項38の方法。
【請求項58】
生物薬剤および第2生物薬剤が前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメイン上の非競合の結合部位に結合する、請求項57の方法。
【請求項59】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項57の方法。
【請求項60】
生物薬剤が該細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に、生物薬剤が該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する際および活性化剤により活性化される際に結合しており、第2生物薬剤が活性化剤に結合している、請求項57の方法。
【請求項61】
生物サンプルにおいて正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞またはその部分を検出する方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、そのうち、生物薬剤は、該細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に該細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識と結合しており、 標識を有する生物薬剤に生物サンプルを、生物サンプルにおける該細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめ、 標識の検出により生物サンプルにおける該細胞またはその部分の存在を検出する、ことを含む方法。
【請求項62】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項61の方法。
【請求項63】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項61の方法。
【請求項64】
該接触が生きている哺乳動物で行われ、そして生物薬剤を哺乳動物に、生物サンプルにおける該細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項61の方法。
【請求項65】
標識が短射程放射放出体である、請求項64の方法。
【請求項66】
該検出が経直腸で行われる、請求項64の方法。
【請求項67】
生物サンプルが哺乳動物の前立腺窩である、請求項64の方法。
【請求項68】
該検出が前立腺除去後に行われる、請求項64の方法。
【請求項69】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項64の方法。
【請求項70】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項64の方法。
【請求項71】
抗体が請求項62の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項23の方法。
【請求項72】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項71の方法。
【請求項73】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項71の方法。
【請求項74】
抗体の結合部分が請求項62の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項62の方法。
【請求項75】
プローブまたはリガンドが請求項62の方法の実施において使用される、請求項62の方法。
【請求項76】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項61の方法。
【請求項77】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項61の方法。
【請求項78】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項61の方法。
【請求項79】
該接触がサンプルの血清または尿において行われる、請求項61の方法。
【請求項80】
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する単離された生物薬剤。
【請求項81】
該単離された生物薬剤が単離された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項80の生物薬剤。
【請求項82】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項83】
単離された生物薬剤がモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項84】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項83の単離された生物薬剤。
【請求項85】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項83の単離された生物薬剤。
【請求項86】
単離された生物薬剤がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる抗体の結合部分である、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項87】
単離された生物薬剤がプローブまたはリガンドである、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項88】
生物薬剤が細胞障害剤と結合している、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項89】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、かび、細菌源の分子、生物的タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項88の単離された生物薬剤。
【請求項90】
請求項88の生物薬剤および 生物薬剤と混合した生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項91】
請求項88の生物薬剤および 生物薬剤と混合した薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項92】
該生物薬剤が標識に結合している、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項93】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項92の単離された生物薬剤。
【請求項94】
請求項92の生物薬剤および生物薬剤と混合した生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項95】
請求項92の生物薬剤および生物薬剤と混合した薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項96】
請求項92の生物薬剤および標識を検出する手段を含む、癌検出キット。
【請求項97】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項96のキット。
【請求項98】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項96のキット。
【請求項99】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項96のキット。
【請求項100】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項96のキット。
【請求項101】
癌性細胞が前立腺癌、腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項96のキット。
【請求項102】
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系。
【請求項103】
抗体が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【請求項104】
モノクローナル抗体がE99、J415、J533またはJ591モノクローナル抗体である、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【請求項105】
ハイブリドーマ細胞系がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有する、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【請求項1】
癌性細胞を切除または殺す方法であって、
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、
癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を生物薬剤に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することと癌性細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む方法。
【請求項2】
生物薬剤が癌性細胞に近接の血管性内皮細胞を殺すまたは切除し、それによって癌性細胞への血流を減少して癌性細胞を殺すまたは切除する、請求項1の方法。
【請求項3】
癌性細胞が腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項1の方法。
【請求項4】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項1の方法。
【請求項5】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項1の方法。
【請求項6】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤を結合さすことと癌性細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項6の方法。
【請求項8】
抗体が請求項4の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項4の方法。
【請求項9】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項8の方法。
【請求項10】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項8の方法。
【請求項11】
抗体の結合部分が請求項4の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項4の方法。
【請求項12】
プローブまたはリガンドが請求項4の方法の実施において使用される、請求項4の方法。
【請求項13】
生物薬剤が、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に結合している、請求項1の方法。
【請求項14】
癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質が細胞障害剤である、請求項13の方法。
【請求項15】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、カビまたは細菌源の分子、生物性タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項14の方法。
【請求項16】
抗体が内因性宿主免疫機能を開始するのに効果的である、請求項4の方法。
【請求項17】
内因性宿主免疫機能が補体媒介性細胞障害である、請求項16の方法。
【請求項18】
内因性宿主免疫機能が抗体依存性細胞障害である、請求項16の方法。
【請求項19】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項1の方法。
【請求項20】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項1の方法。
【請求項21】
生物サンプルにおいて癌性組織を検出する方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、そのうち、生物薬剤は、癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞の検出を可能にするのに効果的な標識と結合しており、 標識を有する生物薬剤に生物サンプルを、生物サンプルにおける癌性細胞に近接または内在の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめ、 標識の検出により生物サンプルにおける癌性組織の存在を検出する、ことを含む方法。
【請求項22】
癌性細胞が腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項21の方法。
【請求項23】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項21の方法。
【請求項24】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項21の方法。
【請求項25】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤を結合さすことと癌性細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項21の方法。
【請求項26】
標識が短射程放射放出体である、請求項25の方法。
【請求項27】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項25の方法。
【請求項28】
抗体が請求項23の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項23の方法。
【請求項29】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項28の方法。
【請求項30】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項28の方法。
【請求項31】
抗体の結合部分が請求項23の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項23の方法。
【請求項32】
プローブまたはリガンドが請求項23の方法の実施において使用される、請求項23の方法。
【請求項33】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項21の方法。
【請求項34】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項21の方法。
【請求項35】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項21の方法。
【請求項36】
該接触がサンプルの血清または尿において行われる、請求項21の方法。
【請求項37】
該接触が組織生検サンプルにおいて行われる、請求項21の方法。
【請求項38】
正常、良性増殖性および癌性前立腺上皮細胞を切除または殺す方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、 該細胞を生物薬剤に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することと該細胞を切除または殺すことの両方を可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む方法。
【請求項39】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項38の方法。
【請求項40】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項38の方法。
【請求項41】
該接触が生きている哺乳動物で実施され、そして、生物薬剤を哺乳動物に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤を結合さすことと該細胞を殺すことの両方を可能とするのに効果的な条件で、投与する、ことを含む請求項38の方法。
【請求項42】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項41の方法。
【請求項43】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項41の方法。
【請求項44】
抗体が請求項39の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項39の方法。
【請求項45】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項44の方法。
【請求項46】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項44の方法。
【請求項47】
抗体の結合部分が請求項39の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項39の方法。
【請求項48】
プローブまたはリガンドが請求項39の方法の実施において使用される、請求項39の方法。
【請求項49】
生物薬剤が、癌性細胞に近接の血管性内皮細胞に生物薬剤が結合する際に癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に結合している、請求項38の方法。
【請求項50】
癌性細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質が細胞障害剤である、請求項49の方法。
【請求項51】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、カビまたは細菌源の分子、生物性タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項50の方法。
【請求項52】
抗体が内因性宿主免疫機能を開始するのに効果的である、請求項39の方法。
【請求項53】
内因性宿主免疫機能が補体媒介性細胞障害である、請求項52の方法。
【請求項54】
内因性宿主免疫機能が抗体依存性細胞障害である、請求項52の方法。
【請求項55】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項38の方法。
【請求項56】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項38の方法。
【請求項57】
さらに、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する第2生物薬剤を準備し、 該細胞を第2生物薬剤に、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに第2生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめる、ことを含む、請求項38の方法。
【請求項58】
生物薬剤および第2生物薬剤が前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメイン上の非競合の結合部位に結合する、請求項57の方法。
【請求項59】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項57の方法。
【請求項60】
生物薬剤が該細胞を殺すまたは切除するのに効果的な物質に、生物薬剤が該細胞の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する際および活性化剤により活性化される際に結合しており、第2生物薬剤が活性化剤に結合している、請求項57の方法。
【請求項61】
生物サンプルにおいて正常、良性増殖性および癌性の前立腺上皮細胞またはその部分を検出する方法であって、 前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する生物薬剤を準備し、そのうち、生物薬剤は、該細胞またはその部分に生物薬剤が結合する際に該細胞またはその部分の検出を可能にするのに効果的な標識と結合しており、 標識を有する生物薬剤に生物サンプルを、生物サンプルにおける該細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、接触せしめ、 標識の検出により生物サンプルにおける該細胞またはその部分の存在を検出する、ことを含む方法。
【請求項62】
生物薬剤が抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項61の方法。
【請求項63】
生物薬剤が、前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに接触したときに、前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項61の方法。
【請求項64】
該接触が生きている哺乳動物で行われ、そして生物薬剤を哺乳動物に、生物サンプルにおける該細胞またはその部分の前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに生物薬剤が結合することを可能にするのに効果的な条件で、投与することを含む、請求項61の方法。
【請求項65】
標識が短射程放射放出体である、請求項64の方法。
【請求項66】
該検出が経直腸で行われる、請求項64の方法。
【請求項67】
生物サンプルが哺乳動物の前立腺窩である、請求項64の方法。
【請求項68】
該検出が前立腺除去後に行われる、請求項64の方法。
【請求項69】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項64の方法。
【請求項70】
該投与が経口で、非経口で、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、点鼻で、空洞または小胞点滴で、点眼で、動脈内に、病巣内に、および粘膜になされる、請求項64の方法。
【請求項71】
抗体が請求項62の方法の実施において使用され、この抗体がモノクローナルおよびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項23の方法。
【請求項72】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項71の方法。
【請求項73】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリド細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項71の方法。
【請求項74】
抗体の結合部分が請求項62の方法の実施において使用され、この結合部分がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項62の方法。
【請求項75】
プローブまたはリガンドが請求項62の方法の実施において使用される、請求項62の方法。
【請求項76】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項61の方法。
【請求項77】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項61の方法。
【請求項78】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項61の方法。
【請求項79】
該接触がサンプルの血清または尿において行われる、請求項61の方法。
【請求項80】
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合する単離された生物薬剤。
【請求項81】
該単離された生物薬剤が単離された抗体、その結合部分、プローブまたはリガンドである、請求項80の生物薬剤。
【請求項82】
生物薬剤が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項83】
単離された生物薬剤がモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体よりなる群から選ばれる抗体である、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項84】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項83の単離された生物薬剤。
【請求項85】
抗体がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有するハイブリドーマ細胞系により産生されるモノクローナル抗体である、請求項83の単離された生物薬剤。
【請求項86】
単離された生物薬剤がFabフラグメント、F(ab')2フラグメントおよびFvフラグメントよりなる群から選ばれる抗体の結合部分である、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項87】
単離された生物薬剤がプローブまたはリガンドである、請求項81の単離された生物薬剤。
【請求項88】
生物薬剤が細胞障害剤と結合している、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項89】
細胞障害剤が治療薬剤、放射化合物、植物、かび、細菌源の分子、生物的タンパク質およびこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項88の単離された生物薬剤。
【請求項90】
請求項88の生物薬剤および 生物薬剤と混合した生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項91】
請求項88の生物薬剤および 生物薬剤と混合した薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項92】
該生物薬剤が標識に結合している、請求項80の単離された生物薬剤。
【請求項93】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項92の単離された生物薬剤。
【請求項94】
請求項92の生物薬剤および生物薬剤と混合した生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項95】
請求項92の生物薬剤および生物薬剤と混合した薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含有する組成物。
【請求項96】
請求項92の生物薬剤および標識を検出する手段を含む、癌検出キット。
【請求項97】
標識が蛍光標識、放射標識、核磁気共鳴活性標識、発光体および発光団よりなる群から選ばれる、請求項96のキット。
【請求項98】
抗体がE99、J415、J533およびJ591モノクローナル抗体よりなる群から選ばれる、請求項96のキット。
【請求項99】
生物薬剤が、生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項96のキット。
【請求項100】
生物薬剤が、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤をさらに含有する組成物に含まれる、請求項96のキット。
【請求項101】
癌性細胞が前立腺癌、腎癌性細胞、尿路上皮癌性細胞、結腸癌性細胞、直腸癌性細胞、肺癌性細胞、乳房癌性細胞または肝への転移性腺癌細胞である、請求項96のキット。
【請求項102】
前立腺特異的膜抗原の細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系。
【請求項103】
抗体が前立腺特異的膜抗原で取り込まれる、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【請求項104】
モノクローナル抗体がE99、J415、J533またはJ591モノクローナル抗体である、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【請求項105】
ハイブリドーマ細胞系がHB-12101、HB-12109、HB-12127およびHB-12126抗体よりなる群から選ばれるATCC受託番号を有する、請求項102のハイブリドーマ細胞系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−197002(P2009−197002A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92429(P2009−92429)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【分割の表示】特願平10−506995の分割
【原出願日】平成9年7月17日(1997.7.17)
【出願人】(592035453)コーネル・リサーチ・ファンデーション・インコーポレイテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【分割の表示】特願平10−506995の分割
【原出願日】平成9年7月17日(1997.7.17)
【出願人】(592035453)コーネル・リサーチ・ファンデーション・インコーポレイテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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