説明

発光体駆動装置及びこれを用いた照明機器

【課題】トライアック調光器の誤動作に起因する発光体のフリッカを防ぐ。
【解決手段】発光体駆動装置100は、整流電圧Va’を監視して調光信号S3を生成するデコーダ部110と、調光信号S3に応じて発光体の駆動電流を制御する駆動電流制御部150と、を有し、デコーダ部110は、整流電圧Va’と所定の閾値電圧Vthとを比較して比較信号CMPを生成するコンパレータ111と、比較信号CMPのハイレベル期間THとローレベル期間TLを計測するサンプリングカウンタ112と、サンプリングカウンタ112の出力(TH、TL)に基づいて整流電圧Va’のデューティS1を算出するデューティ算出部113と、デューティ算出部113の出力S1にデジタルフィルタ処理を施して突発的なデューティ変動を除外するフィルタ演算部114と、フィルタ演算部114の出力S2に基づいて調光信号S3を生成する調光信号生成部115とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED[light emitting diode]などの発光体を駆動する発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トライアック(双方向サイリスタ)調光方式に対応したLEDドライバICが種々実用化されている。トライアック調光方式は、白熱電球などの調光方式として従来から採用されてきた調光方式である。従って、トライアック調光方式に対応したLEDドライバICを用いれば、既設のトライアック調光器を流用してLED照明機器の調光制御を行うことが可能となる。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−73689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トライアック調光器は、所定値以上の保持電流を流しておかなければ、誤動作を生じる構造である。図11A〜図11Cは、それぞれ、トライアック調光器の出力波形を示す図である。なお、図11Aは正常時の出力波形、図11Bは位相角異常時の出力波形、図11Cは周波数異常時の出力波形をそれぞれ示している。
【0006】
例えば、図11Bで示したように、トライアック調光器の出力波形に位相角異常が生じた場合には、LEDの輝度が意図せずに変動してフリッカが発生する。また、例えば、図11Cで示したように、トライアック調光器の出力波形に周波数異常が生じた場合には、LEDが意図に反したオン/オフを繰り返してフリッカが発生する。図11B及び図11Cでは、ある周期Tにおいて上記の異常が突発的に生じる様子が例示されているが、上記の異常は複数の周期Tに亘って定常的に生じるおそれもある。
【0007】
なお、従来のLEDドライバICでは、トライアック調光器の誤動作対策として、トライアック調光器の保持電流を維持するためのブリーダ回路や、トライアック調光器の出力波形にフィルタ処理を施すRCフィルタなどが外付けされていたが、LEDのフリッカを完全に排除することが難しかった。
【0008】
本発明は、本願の発明者らにより見出された上記の問題点に鑑み、トライアック調光器の誤動作に起因する発光体のフリッカを防ぐことのできる発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る発光体駆動装置は、整流電圧を監視して調光信号を生成するデコーダ部と、前記調光信号に応じて発光体の駆動電流を制御する駆動電流制御部と、を有し、前記デコーダ部は、前記整流電圧と所定の閾値電圧とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、前記比較信号のハイレベル期間とローレベル期間を計測するサンプリングカウンタと、前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧のデューティを算出するデューティ算出部と、前記デューティ算出部の出力にデジタルフィルタ処理を施して突発的なデューティ変動を除外するフィルタ演算部と、前記フィルタ演算部の出力に基づいて前記調光信号を生成する調光信号生成部と、を含む構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成る発光体駆動装置において、前記フィルタ演算部は、メディアンフィルタを含む構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第2の構成から成る発光体駆動装置において、前記メディアンフィルタは、複数の周期に亘って逐次算出されたデューティ群を格納するFIFO部と、前記FIFO部に格納されたデューティ群の中央値またはそれよりも大きい値を選択して出力する選択部と、を含む構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第2または第3の構成から成る発光体駆動装置において、前記フィルタ演算部は、ヒステリシスフィルタをさらに含む構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第2〜第4いずれかの構成から成る発光体駆動装置において、前記フィルタ演算部は、FIRフィルタをさらに含む構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る発光体駆動装置において、前記デコーダ部は、前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧の周波数を算出する周波数算出部と、前記整流電圧の周波数が所定範囲内に収まっているか否かを判定する周波数判定部と、前記周波数判定部の判定結果に基づいて前記デューティ算出部の出力にマスク処理を施すマスク処理部と、をさらに含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る発光体駆動装置において、前記デコーダ部は、前記整流電圧の立上り毎に論理レベルが切り替わるマスク信号を生成するマスク信号生成部と、前記マスク信号に基づいて前記デューティ算出部の出力にマスク処理を施すマスク処理部と、をさらに含む構成(第7の構成)にするとよい。
【0016】
また、本発明に係る照明機器は、発光体と、交流電圧を整流して前記整流電圧を生成する整流回路と、前記整流電圧から直流電圧を生成して前記発光体に供給する平滑回路と、前記発光体の駆動電流が流れる電流経路を導通/遮断するスイッチ素子と、前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行う上記第1〜第7いずれかの構成から成る発光体駆動装置と、を有する構成(第8の構成)とされている。
【0017】
なお、上記第8の構成から成る照明機器において、前記駆動電流制御部は、前記スイッチ素子に流れる電流が前記調光信号に基づいて設定される目標値と一致するように前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行う構成(第9の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第8または第9の構成から成る照明機器は、前記交流電圧の位相制御を行うトライアック調光器の保持電流を維持するブリーダ回路をさらに有する構成(第10の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第8〜第10いずれかの構成から成る照明機器において、前記発光体は、LED素子を含む構成(第11の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第11の構成から成る照明機器は、電球形LEDランプ、環形LEDランプ、直管形LEDランプ、シーリングライト、または、ダウンライトである構成(第12の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トライアック調光器の誤動作に起因する発光体のフリッカを防ぐことのできる発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】LED照明機器の一構成例を示す図
【図2】デコーダ部110の第1構成例を示す図
【図3】コンパレータ111及びサンプリングカウンタ112の一動作例を示す図
【図4】フィルタ演算部114の第1構成例を示す図
【図5】フィルタ演算部114の第2構成例を示す図
【図6】デコーダ部110の第2構成例を示す図
【図7】デコーダ部110の第3構成例を示す図
【図8】デコーダ部110の第4構成例を示す図
【図9】第4構成例のマスク処理を説明するためのタイミングチャート
【図10A】LED照明機器の第1適用例(LEDランプ)を示す外観図
【図10B】LED照明機器の第2適用例(LEDシーリングライト)を示す外観図
【図10C】LED照明機器の第3適用例(LEDダウンライト)を示す外観図
【図11A】トライアック調光器の出力波形(正常時)を示す図
【図11B】トライアック調光器の出力波形(位相角異常時)を示す図
【図11C】トライアック調光器の出力波形(周波数異常時)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<LED照明機器>
図1は、LED照明機器の一構成例を示す図である。本構成例のLED照明機器1は、LEDモジュール10と、電源モジュール20と、を有する。
【0024】
LEDモジュール10は、昼光色(色温度5000K程度)や電球色(色温度3000K程度)の光を発するLED照明機器1の光源であり、直列ないしは並列に接続された複数のLED素子を含む。
【0025】
電源モジュール20は、商用交流電源30(例えばAC90〜220V)から供給される交流電圧VINを直流電圧VOUT(例えばDC50V)に変換してLEDモジュール10に供給する。電源モジュール20は、LEDドライバIC100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(ダイオードブリッジDB、ブリーダ回路BLD、抵抗R1〜R5、ダイオードD1〜D4、ツェナダイオードZD、キャパシタC1〜C3、npn型バイポーラトランジスタQ1、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN1、及びトランスTR)をプリント配線基板上に搭載して成る。
【0026】
商用交流電源30の第1出力端は、ダイオードブリッジDB1の第1入力端に接続されている。商用交流電源30の第2出力端は、交流電圧VINの位相制御を行うトライアック調光器40を介して、ダイオードブリッジDB1の第2入力端に接続されている。ダイオードブリッジDB1の第1出力端は、ダイオードD1のアノードに接続される一方、ブリーダ回路BLDを介して接地端にも接続されている。ダイオードD1のカソードは、LEDモジュール10のアノードに接続されている。ダイオードブリッジDB1の第2出力端は、ブリーダ回路BLDを介して接地端に接続されている。ブリーダ回路BLDの制御端は、LEDドライバIC100の外部端子T2に接続されている。
【0027】
抵抗R1及びR2は、ダイオードブリッジDB1の第1出力端と接地端との間に直列接続されている。抵抗R1及びR2の接続ノード(整流電圧Vaの印加端)は、LEDドライバIC100の外部端子T1に接続されている。キャパシタC1は、ダイオードD1のカソードと接地端との間に接続されている。抵抗R3の第1端は、ダイオードD1のカソードに接続されている。抵抗R2の第2端は、ツェナダイオードZDのカソードとトランジスタQ1のベースに接続されている。ツェナダイオードZDのアノードは、接地端に接続されている。トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R4を介してダイオードD1のカソードに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、LEDドライバIC100の外部端子T3とダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD2のアノードは接地端に接続されている。
【0028】
ダイオードD3のカソードは、ダイオードD1のカソードに接続されている。ダイオードD3のアノードは、トランジスタN1のドレインに接続されている。トランジスタN1のソースは、抵抗R5を介して接地端に接続される一方、LEDドライバIC100の外部端子T5にも接続されている。トランジスタN1のゲートは、LEDドライバIC100の外部端子T4に接続されている。キャパシタC2の第1端は、LEDモジュール10のアノードに接続されている。キャパシタC2の第2端は、LEDモジュール10のカソードに接続されている。
【0029】
トランスTRを形成する一次巻線L1の第1端は、LEDモジュール10のカソードに接続されている。一次巻線L1の第2端は、トランジスタN1のドレインに接続されている。トランスTRを形成する二次巻線L2の第1端は、ダイオードD4のアノードに接続されている。二次巻線L2の第2端は、接地端に接続されている。ダイオードD4のカソードは、LEDドライバIC100の外部端子T3に接続されている。キャパシタC3はダイオードD4のカソードと接地端との間に接続されている。
【0030】
<電源モジュール>
上記構成から成る電源モジュール20の基本動作について詳細に説明する。
【0031】
ダイオードブリッジDBは、交流電圧VINを全波整流して整流電圧Vaを生成する整流回路である。ダイオードD1及びキャパシタC1は、ダイオードブリッジDBの出力を平滑化して直流電圧VOUTを生成し、これをLEDモジュール10に供給する平滑回路である。このように、ダイオードブリッジDB、ダイオードD1、及び、キャパシタC1は、交流電圧VINを直流電圧VOUTに変換してLEDモジュール10に供給するAC/DC変換部として機能する。なお、ダイオードブリッジDBの前段に、ノイズやサージを除去するためのフィルタ回路を設けてもよい。
【0032】
トランジスタN1は、LEDモジュール10のカソードから接地端に至る電流経路を導通/遮断するスイッチ素子である。LEDドライバIC100は、トランジスタN1及び抵抗R5を介して接地端に流れる電流(LEDモジュール10の駆動電流ILED)が目標値と一致するようにトランジスタN1のオン/オフ制御を行う半導体集積回路装置である。トランジスタN1がオンされているときには、ダイオードD1のカソードからLEDモジュール10、トランスTRの一次巻線L1、トランジスタN1、及び、抵抗R5を介して接地端に向けた駆動電流ILEDが流れる。一方、トランジスタN1がオフされているときには、トランスTRの一次巻線L1、ダイオードD3、及び、LEDモジュール10を介してループ状に駆動電流ILEDが流れる。
【0033】
トランジスタQ1、抵抗R3及びR4、ダイオードD2、並びに、ツェナダイオードZDは、LEDドライバIC100の起動時にダイオードD1のカソードからキャパシタC3の充電電流を引き込んで、LEDドライバIC100の電源電圧Vbを生成するための簡易レギュレータ(エミッタフォロワ)として機能する。トランスTRは、LEDモジュール10に流れる駆動電流ILEDを利用してLEDドライバIC100への電力供給を行う。従って、LEDドライバIC100の起動後には、トランスTRの二次巻線L2からダイオードD4を介する電流経路でキャパシタC3の充電動作が行われ、LEDドライバIC100への電力供給が継続される。なお、トランスTRの巻線比については、LEDドライバIC100の動作に必要な電源電圧Vbを鑑みて適宜設定すればよい。
【0034】
<LEDドライバIC>
次に、LEDドライバIC100の内部構成について説明する。LEDドライバIC100には、デコーダ部110と、減電圧保護部120と、レギュレータ部130と、ブリーダ制御部140と、駆動電流制御部150と、ドライバ部160と、が集積化されている。なお、LEDドライバIC100には、上記以外の回路ブロック(温度保護部、過電圧保護部、過電流保護部、LEDショート保護部、LEDオープン保護部、天絡/地絡保護部など)を集積化することも可能である。
【0035】
デコーダ部110は、抵抗R1及びR2の接続ノードから外部端子T1に印加される整流電圧Va’(整流電圧Vaの分圧電圧)を監視して調光信号とブリーダ制御信号を生成する。デコーダ部110を備えたLEDドライバIC100によれば、交流電圧VINの位相制御を行うトライアック調光器40を用いて、LED照明機器1の調光制御を行うことが可能となる。
【0036】
減電圧保護部120は、外部端子T3に印加される電源電圧Vbが所定の閾値電圧を下回っているか否かを監視して減電圧保護信号を生成する。
【0037】
レギュレータ部130は、外部端子T3に印加される電源電圧Vbから所定の内部電源電圧を生成してLEDドライバIC100の各部に供給する。
【0038】
ブリーダ制御部140は、デコーダ部110から入力されるブリーダ制御信号に基づいてブリーダ回路BLDの駆動制御を行う。このような構成とすることにより、トライアック調光器40の保持電流が不足するときには、ブリーダ回路BLDを介してブリーダ電流IBを流すことにより、トライアック調光器40の正常動作を維持することができる。
【0039】
駆動電流制御部150は、デコーダ部110から入力される調光信号に応じてLEDモジュール10の駆動電流ILEDを制御する。具体的に述べると、駆動電流制御部150は、外部端子T5の印加電圧(=ILED×R5)が所定の目標値と一致するようにトランジスタN1のオン/オフ制御信号を生成する。なお、上記の目標値は、デコーダ部110から入力される調光信号に基づいて設定される。このような構成とすることにより、トライアック調光器40を用いて、LED照明機器1の調光制御を行うことが可能となる。
【0040】
ドライバ部160は、駆動電流制御部150から入力されるオン/オフ制御信号の電流能力を増幅してトランジスタN1のゲート信号を生成する。
【0041】
<デコーダ部>
図2は、デコーダ部110の第1構成例を示す図である。第1構成例のデコーダ部110は、コンパレータ111と、サンプリングカウンタ112と、デューティ算出部113と、フィルタ演算部114と、調光信号生成部115と、を含む。
【0042】
コンパレータ111は、非反転入力端(+)に印加される整流電圧Va’と、反転入力端(−)に印加される所定の閾値電圧Vthとを比較して比較信号CMPを生成する。比較信号CMPは、整流電圧Va’が閾値電圧Vthよりも高いときにハイレベルとなり、逆に、整流電圧Va’が閾値電圧Vthよりも低いときにローレベルとなる。
【0043】
サンプリングカウンタ112は、比較信号CMPのハイレベル期間THとローレベル期間TLを計測する。ハイレベル期間THは、比較信号CMPの立上がりエッジから立下りエッジまでの期間を計測することにより取得することができる。ローレベル期間TLは、比較信号CMPの立下りエッジから立上がりエッジまでの期間を計測することにより取得することができる。
【0044】
図3は、コンパレータ111及びサンプリングカウンタ112の一動作例を示す図であり、上から順に、整流電圧Va’と比較信号CMPの電圧波形が描写されている。
【0045】
デューティ算出部113は、サンプリングカウンタの出力(TH、TL)に基づいて、周期毎に整流電圧Va’のオンデューティS1(=TH/(TH+TL))を算出する。整流電圧Va’のオンデューティS1は位相角に相当するので、デューティ算出部113を位相角算出部として理解することもできる。
【0046】
フィルタ演算部114は、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1(デジタル値)にデジタルフィルタ処理を施して突発的なデューティ変動を除外する。
【0047】
調光信号生成部115は、フィルタ演算部114から出力されるデジタルフィルタ処理済みのオンデューティS2に基づいて調光信号S3を生成する。
【0048】
図4は、フィルタ演算部114の第1構成例を示す図である。第1構成例のフィルタ演算部114は、メディアンフィルタXを含む。メディアンフィルタXは、FIFO部X1と選択部X2を含む。
【0049】
FIFO部X1は、n段(例えば9段)のレジスタを備えており、直近n周期に亘って逐次算出されたデューティ群S1(1)〜S1(n)を格納する。
【0050】
選択部X2は、FIFO部X1に格納されたデューティ群S1(1)〜S1(n)の中央値またはそれよりも大きい値(例えば上から3番目の値)を選択し、これをフィルタ処理済みのオンデューティS2として出力する。
【0051】
このような構成とすることにより、整流電圧Va’の突発的なデューティ変動を除外して調光信号S3を生成することができる。従って、先出の図8Bで示したように、トライアック調光器40の出力波形に位相角異常が生じた場合であっても、LEDモジュール10の意図しない輝度変動を防止してフリッカを抑制することが可能となる。
【0052】
なお、直近n周期分のデューティ群S1(1)〜S1(n)を単純に平均化した場合、オンデューティS1の異常低下に起因して調光信号S3に多少なりとも意図しない低下を生じるが、上記構成によれば、突発的なデューティ変動をより適切に除外して、調光信号S3の意図に反した変動を抑制することが可能となる。
【0053】
図5は、フィルタ演算部114の第2構成例を示す図である。第2構成例のフィルタ演算部114は、第1構成例で構成要素して挙げられたメディアンフィルタXに加えて、ヒステリシスフィルタYと、FIR[Finite Impulse Response]フィルタZを含む。
【0054】
ヒステリシスフィルタYは、入力値と出力値との差分が所定範囲内に収まっているときには出力値を変更しない特性を有するデジタルフィルタの一種である。ヒステリシスフィルタYは、メディアンフィルタXの前段に設けられている。
【0055】
FIRフィルタZは、複数の入力値に対して重み付けのある移動平均処理を施すデジタルフィルタの一種である。FIRフィルタZは、メディアンフィルタXの後段に設けられている。
【0056】
このような構成とすることにより、LEDモジュール10のフリッカをさらに抑制することが可能となる。
【0057】
図6は、デコーダ部110の第2構成例を示す図である。第2構成例のデコーダ部110は、第1構成例(図2)のデコーダ110とほぼ同様の構成であり、周波数算出部116、周波数判定部117、及び、マスク処理部118が追加された点に特徴を有する。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、図2と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0058】
周波数算出部116は、サンプリングカウンタ112の出力(TH、TL)に基づいて整流電圧Va’の周波数S4(=1/(TH+TL))を算出する。整流電圧Va’の周波数S4は周期T(=TH+TL)の逆数であるため、周波数算出部116を周期算出部として理解することも可能である。
【0059】
周波数判定部117は、整流電圧Va’の周波数S4が所定範囲内(例えば76.3〜152.6Hz(商用交流電源30の発振周波数100〜120Hzに対して±20%の許容誤差を含む範囲)に収まっているか否かを判定して判定結果信号S5を出力する。判定結果信号S5は、整流電圧Va’の周波数S4が所定範囲内に収まっているときにハイレベルとなり、逆に、整流電圧Va’の周波数S4が所定範囲内に収まっていないときにローレベルとなる。
【0060】
マスク処理部118は、判定結果信号S5に基づいて、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1にマスク処理を施す。具体的に述べると、マスク処理部118は、判定結果信号S5がハイレベルであるときには、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクすることなくフィルタ演算部114に伝達し、逆に、判定結果信号S5がローレベルであるときには、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクしてフィルタ演算部114への伝達を禁止する。
【0061】
なお、図6では説明の便宜上、マスク処理部118がオンデューティS1の導通/遮断を行う論理ゲートであるかのように描写されているが、整流電圧Va’の周波数異常時に検出されたオンデューティS1を後段のデジタル処理対象から除外し得る限り、いかなる構成を採用しても構わない。例えば、マスク処理部118は、判定結果信号S5に応じてFIFO部X1(図4を参照)へのデータ格納を許可/禁止する構成としても構わない。
【0062】
このような構成とすることにより、先出の図8Cで示したように、トライアック調光器40の出力波形に周波数異常が生じた場合であっても、LEDモジュール10の意図しないオン/オフ動作を防止してフリッカを抑制することが可能となる。
【0063】
図7は、デコーダ部110の第3構成例を示す図である。第3構成例のデコーダ部110は、第2構成例(図6)のデコーダ110とほぼ同様の構成であり、フィルタ演算部114が取り除かれた点に特徴を有する。
【0064】
このように、整流電圧Va’の位相角異常に起因するフリッカを抑制するための第1の技術的特徴(フィルタ演算部114)と、整流電圧Va’の周波数異常に起因するフリッカを抑制するための第2の技術的特徴(周波数算出部116、周波数判定部117、マスク処理部118)は、それぞれ独立して適用することが可能である。
【0065】
なお、第1構成例(図2)は、上記第1の技術的特徴のみを適用した構成であり、第2構成例(図6)は、上記第1及び第2の技術的特徴を併せて適用した構成であり、第3構成例(図7)は、上記第2の技術的特徴のみを適用した構成であると言える。
【0066】
図8は、デコーダ部110の第4構成例を示す図である。第4構成例のデコーダ部110は、第1構成例(図2)のデコーダ110とほぼ同様の構成であり、マスク処理部118とマスク信号生成部119が追加された点に特徴を有する。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、図2と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では第4構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0067】
マスク処理部118は、マスク信号S6に基づいて、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1にマスク処理を施す。具体的に述べると、マスク処理部118は、マスク信号S6がハイレベルであるときには、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクすることなくフィルタ演算部114に伝達し、逆に、マスク信号S6がローレベルであるときには、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクしてフィルタ演算部114への伝達を禁止する。
【0068】
マスク信号生成部119は、整流電圧Va’の立上り毎に論理レベルが切り替わるマスク信号S6を生成する。具体的に述べると、マスク信号S6は、整流電圧Va’の奇数番目の立上り毎にハイレベルとなり、整流電圧Va’の偶数番目の立上り毎にローレベルとなる。このようなマスク信号S6を用いたマスク処理の技術的意義について、図9を参照しながら詳細に説明する。
【0069】
図9は、第4構成例のマスク処理を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、交流電圧VIN、整流電圧Va’、及び、マスク信号生成部119が描写されている。なお、図9では、時刻t1〜t10の順に時間が経過していくものとする。
【0070】
交流電圧VINの出力期間(1)〜(4)は、トライアック調光器40を操作しない限り、理想的には正負に依ることなく常に一定期間となるはずである。しかしながら、実際には、負出力期間(1)及び(3)と正出力期間(2)及び(4)との間に僅かながら誤差が生じるので、整流電圧Va’のオンデューティが周期的(交互)に変動してしまい、LEDモジュール10のフリッカが発生するという問題があった。なお、上記誤差の大きさは、環境によって様々であり、一概に補正することは困難であった。
【0071】
そこで、第4構成例のデコーダ部110は、マスク処理部118とマスク信号生成部119を用いることにより、整流電圧Va’の奇数番目(1)’及び(3)’の立ち上がり時(マスク信号S6のハイレベル期間)には、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクすることなくフィルタ演算部114に伝達する一方、整流電圧Va’の偶数番目(2)’及び(4)’の立ち上がり時(マスク信号S6のローレベル期間)には、デューティ算出部113から出力されるオンデューティS1をマスクしてフィルタ演算部114への伝達を禁止する構成とされている。
【0072】
すなわち、第4構成例のデコーダ部110は、交流電圧VINの負出力期間(1)及び(3)にのみ、整流電圧Va’のオンデューティに応じた調光信号S3の生成(更新)を行う構成とされている。
【0073】
このような構成とすることにより、LEDモジュール10の輝度は、負出力期間(1)及び(3)のオンデューティのみに応じて決定されるので、交流電圧VINの負出力期間(1)及び(3)と正出力期間(2)及び(4)との間に誤差が生じた場合であっても、LEDモジュール10のフリッカを生じることはなくなる。
【0074】
なお、上記では、交流電圧VINの負出力期間(1)及び(3)にのみ整流電圧Va’のオンデューティに応じた調光信号S3の生成を行う構成を例に挙げて説明を行ったが、第4構成例のマスク処理はこれに限定されるものではなく、上記とは逆に、交流電圧VINの正出力期間(2)及び(4)にのみ整流電圧Va’のオンデューティに応じた調光信号S3の生成を行う構成としても構わない。
【0075】
<LED照明機器の具体的な適用例>
図10A〜図10Cは、それぞれ、LED照明機器1の第1〜第3適用例を示す外観図である。図10Aには、電球形LEDランプ1a、環形LEDランプ1b、及び、直管形LEDランプ1cが示されている。また、図10Bには、LEDシーリングライト1dが示されており、図10Cには、LEDダウンライト1eが示されている。これらの図示はいずれも例示であり、LED照明機器1は、多種多様な形態で用いることが可能である。
【0076】
<その他の変形例>
なお、上記の実施形態では、LEDドライバICに本発明を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、他の発光体(例えば有機EL[electro-luminescence])を駆動する発光体駆動装置全般に広く適用することが可能である。
【0077】
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、トライアック調光方式に対応したLEDドライバICの信頼性を高めるための技術として好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 LED照明機器
1a 電球形LEDランプ
1b 環形LEDランプ
1c 直管形LEDランプ
1d シーリングライト
1e ダウンライト
10 LEDモジュール
20 電源モジュール
30 商用交流電源
40 トライアック調光器
100 LEDドライバIC
110 デコーダ部
111 コンパレータ
112 サンプリングカウンタ
113 デューティ算出部
114 フィルタ演算部
115 調光信号生成部
116 周波数算出部
117 周波数判定部
118 マスク処理部
119 マスク信号生成部
120 減電圧保護部(UVLO部)
130 レギュレータ部
140 ブリーダ制御部
150 駆動電流制御部
160 ドライバ部
DB ダイオードブリッジ
BLD ブリーダ回路
R1〜R5 抵抗
D1〜D4 ダイオード
ZD ツェナダイオード
C1〜C3 キャパシタ
Q1 npn型バイポーラトランジスタ
N1 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
TR トランス
L1 一次巻線
L2 二次巻線
X メディアンフィルタ
X1 FIFO部
X2 選択部
Y ヒステリシスフィルタ
Z FIRフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流電圧を監視して調光信号を生成するデコーダ部と、
前記調光信号に応じて発光体の駆動電流を制御する駆動電流制御部と、
を有し、
前記デコーダ部は、
前記整流電圧と所定の閾値電圧とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、
前記比較信号のハイレベル期間とローレベル期間を計測するサンプリングカウンタと、
前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧のデューティを算出するデューティ算出部と、
前記デューティ算出部の出力にデジタルフィルタ処理を施して突発的なデューティ変動を除外するフィルタ演算部と、
前記フィルタ演算部の出力に基づいて前記調光信号を生成する調光信号生成部と、
を含むことを特徴とする発光体駆動装置。
【請求項2】
前記フィルタ演算部は、メディアンフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光体駆動装置。
【請求項3】
前記メディアンフィルタは、
複数の周期に亘って逐次算出されたデューティ群を格納するFIFO部と、
前記FIFO部に格納されたデューティ群の中央値またはそれよりも大きい値を選択して出力する選択部と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の発光体駆動装置。
【請求項4】
前記フィルタ演算部は、ヒステリシスフィルタをさらに含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発光体駆動装置。
【請求項5】
前記フィルタ演算部は、FIRフィルタをさらに含むことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の発光体駆動装置。
【請求項6】
前記デコーダ部は、
前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧の周波数を算出する周波数算出部と、
前記整流電圧の周波数が所定範囲内に収まっているか否かを判定する周波数判定部と、
前記周波数判定部の判定結果に基づいて前記デューティ算出部の出力にマスク処理を施すマスク処理部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発光体駆動装置。
【請求項7】
前記デコーダ部は、
前記整流電圧の立上り毎に論理レベルが切り替わるマスク信号を生成するマスク信号生成部と、
前記マスク信号に基づいて前記デューティ算出部の出力にマスク処理を施すマスク処理部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発光体駆動装置。
【請求項8】
発光体と、
交流電圧を整流して前記整流電圧を生成する整流回路と、
前記整流電圧から直流電圧を生成して前記発光体に供給する平滑回路と、
前記発光体の駆動電流が流れる電流経路を導通/遮断するスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行う請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発光体駆動装置と、
を有することを特徴とする照明機器。
【請求項9】
前記駆動電流制御部は、前記スイッチ素子に流れる電流が前記調光信号に基づいて設定される目標値と一致するように前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の照明機器。
【請求項10】
前記交流電圧の位相制御を行うトライアック調光器の保持電流を維持するブリーダ回路をさらに有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の照明機器。
【請求項11】
前記発光体は、LED素子を含むことを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれかに記載の照明機器。
【請求項12】
前記照明機器は、電球形LEDランプ、環形LEDランプ、直管形LEDランプ、シーリングライト、または、ダウンライトであることを特徴とする請求項11に記載の照明機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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