説明

発光信号の検知可能かつ判読可能な範囲の決定方法

本発明は、所定の周囲の単位面積あたり放射密度での複数の光点を伴う発光信号の検知可能かつ判読可能な範囲の決定方法に関する。本発明により、検知可能な範囲の計算は、発光信号の総単位面積あたり放射密度すなわち総光強度が、単一光点の単位面積あたり放射密度すなわち光強度を光点の数により乗算することにより得られるという仮定の助けを借りて実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号、より好ましくはそれらが鉄道輸送で使用されるところの発光信号での光学的測定および試験方法に係り、特に、優勢なバックグラウンド若しくは周囲の光密度での発光信号の検知可能なかつ判読可能な範囲の決定方法を扱う。
【背景技術】
【0002】
鉄道輸送では交通を制御するために信号を使用する。原則として、これらは軌道に若しくはその上方に配置される。信号は、交通状況に関する情報源として列車の牽引装置の運転者の役に立ち、そして円滑かつ安全な鉄道輸送の運行を可能にする。
【0003】
該信号は、いわゆる腕木式信号機として設計し得る。腕木式信号機では、信号の概念は信号機の形状の変化により示される。しかしながら、腕木式信号機は旧式となり、そしていわゆる発光信号にますます置き換えられている。発光信号では、信号の概念は発光信号のある光放射により示される。原理的には、こうした発光信号は、道路交通の既知の信号灯に匹敵する。発光信号の主題のさらなる紹介については、非特許文献1を参照されたい。
【0004】
鉄道輸送における発光信号の使用に対する基礎的前提条件は、それが、より好ましくは日中に、十分な距離から牽引装置の運転者により検知可能若しくは判読可能でなければならないことである。この情況で、発光信号が牽引装置の運転者により認識され得る限り、それは検知可能である。
【0005】
記号を表示する複雑な発光信号では、検知可能性の前提条件に可読性が追加される。実際には、牽引装置の運転者がこれらを認知すなわち認識し得ることだけでは、これらの発光信号において十分でない。乗物の運転者が信号を認識するとすぐに、彼は加えて該信号により表示される記号を判読するための位置にもいなければならない。前記発光信号により表示される記号がある記号として完全に識別可能である場合に、前記発光信号の可読性が与えられる。従って、信号の可読性の前提条件は、最初にその検知可能性である。
【0006】
従って、発光信号が少なくともある最短距離まで多様な方向からそれぞれ検知可能かつ判読可能であることが、発光信号で保証されなければならない。言い換えれば、発光信号は、ある最短検知距離、および、適切な場合はある最短可読性距離も有する必要がある。所定の発光信号についてのこの前提条件が満たされているかどうかを決定するには、従って、その検知可能性および可読性距離が決定されなければならない。
【0007】
発光信号の検知距離は方向に依存する。発光信号を見る方向に依存して、異なる検知距離が得られる。例えば、検知距離は、発光信号が向けられる方向に沿って最長となる。発光信号の目的の方向は同時に該発光信号の光軸である。他方、例えば、発光信号をその背面から見る場合はその検知距離は明らかにゼロに等しい。信号の検知距離は見る方向に依存するため、全体として検知距離分布が存在するように、すべての方向について異なる検知距離が得られる。
【0008】
所定の方向の検知距離は、発光信号が優勢な周囲若しくはまたバックグラウンドの単位面積あたり放射密度でなお認識され得る、この方向に沿った距離と定義される。発光信号の検知距離は、発光信号の視程と呼ぶこともできる。
【0009】
発光信号の記号の可読性距離は、所定の方向について、該記号が優勢な周囲若しくはバックグラウンドの単位面積あたり放射密度でなお識別され得る、この方向に沿った距離と定義される。
【0010】
非特許文献2により、単一光点からなる発光信号の検知距離を決定し得る方法が既知である。この既知の方法の重大な一欠点は、それが複数の光点からなる発光信号の検知距離の決定を可能にしないことである。特に、この方法では、鉄道輸送でますます使用されているところの自己発光型の付加的指標の検知距離を測定し得ない。実際には、これらの付加的指標は、異なる記号を表示し得る複数の光点を有する。
【0011】
それ以外に関しては、発光信号の可読性距離を決定し得る方法はまだ知られていない。
【0012】
【非特許文献1】Dr.K.Grosskurth、“Grundsaetzliches ueber Lichtsignale”、Lichttechnick、1956年、第8巻、第8号
【非特許文献2】Dr.K.Grosskurth、“Tragweite von Lichtsignalen”、Lichttechnick、1957年、第9巻、第11号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の関連する従来技術の問題を鑑み、発光信号、より好ましくは複数の光点を持つ発光信号での検知可能性および可読性距離の決定方法を提案することが本発明の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、本発明による以下の段階を伴う、所定の方向に存在しかつ優勢な周囲の単位面積あたり放射密度での複数の光点を含んでなる発光信号の検知距離の決定方法により解決される:
所定の方向に存在する各個々の光点の単位面積あたり放射密度すなわち光強度の測定、および、個々の光点の単位面積あたり放射密度すなわち光密度の光点数および補正因子での乗算により得られる発光信号の総単位面積あたり放射密度すなわち総光強度についてのこれらの測定値から計算した閾値の助けを借りての、測定した放射密度すなわち光強度に基づく検知距離の計算。この補正因子は、光点数、光強度、光点のそれぞれの直径および位置、ならびに相互に関しての光点間で優勢である距離に依存する。より好ましくは、補正因子は常に1より小さいか若しくは1に等しい。
【0015】
変動する補正因子の原因は、眼の描写特性である。すなわち、
‐日中では、光点は眼の瞳孔上での眼に入る光の回折により眼の網膜上の小さな回折薄片として描写されるため、補正値は1である。
‐薄暮および夜間では、眼の網膜上の薄片としての光点のぼやけた描写が生じるため、補正因子は1より小さい。個々の光点のブルーミングが発生する。
‐日中、およびより好ましくは夜間では、眼球内の眼の液体中の懸濁粒子の散乱が付加的に発生するため、補正因子は1より小さい。眼中の懸濁粒子の存在は、より好ましくは目の老化若しくは病的現象である。
【0016】
実際の可読性距離の増大すなわち可読性の増大は、最初の2つの根本原因を考慮することにより可能である。しかしながら、これには、注視者の健全な視力、すなわち第三の根本原因が好ましくはほとんど出現/作用しないことが必要とされる。有利には、この補正因子は数値で決定される。そうするためには、仮想的付加的指標をユーザー定義の光点の配置で得、そして、補正因子を、眼モデル、より好ましくはGullstrandの眼モデル、および眼と付加的指標の間の所定の距離を用いる光線の計算によって計算する。仮想的付加的指標は、自由に選択可能な位置を持つ仮想格子が光点で占有されることで示される。
【0017】
ブルーミングは複数の光点からなる信号までの距離とともに増大する。何故なら、それぞれ2個の隣接光点間の角度が信号からの距離とともに減少するためである。可読性を改良するため、若しくは理論的可読性距離の量までのより長い実際の可読性距離を実現するため、すべての2個の隣接光点間の距離が増大されるべきであるが、しかしながらその結果として信号の視程が減少し得る。
【0018】
本発明の方法は、総単位面積あたり放射密度すなわち総光強度が光点数と反比例しない場合、例えば、光点数の累乗に比例しない場合にもまた適用可能である。
【0019】
この場合に上で選ばれる「相互までの距離」の定式化は、これが発光信号のある光点のいずれかの他の光点までの距離であることを説明するのに役立つ。これと対照的に、「相互からの距離」は、ある光点のそれの次の隣接光点までの距離を示す。
【0020】
発光信号の光点は、主として点光源としても記述し得る。好ましくは、発光信号は光点の総体により形成される。こうして、光点は総じて、例えば速度情報の一部のようなある記号をそれらの幾何学的配置で描写し得る。光点がその後共同で点灯される場合に、これは牽引装置の運転者にとっての情報源として役立ち得る発光記号をもたらす。
【0021】
各光点の単位面積あたり放射密度すなわち光強度の測定は、商業的に入手可能な測定装置によって実施する。この際、測定は使用される測定装置に依存して多様に実施されなければならない。例えば個々の平均の単位面積あたり放射密度すなわち光強度を直接測定する装置を使用する場合、該装置をある方向から発光信号の対応する光点と整列させ、そして、該装置により収集される平均の単位面積あたり放射密度すなわち光強度が記録される。
【0022】
例えば、単位面積あたり放射密度すなわち光強度の分布の測定のための測定カメラを使用する場合、カメラを既知の距離から全発光信号と整列させ、そして、全信号の単位面積あたり放射密度すなわち光強度の分布を記録する。測定した分布を使用して、値をその後個々の光点について測定し得る。
【0023】
総単位面積あたり放射密度および総光強度それぞれの閾値の助けを借りての検知距離の計算では、発光信号の総単位面積あたり放射密度および総光強度それぞれの閾値が、光点のそれぞれ単位面積あたり放射密度すなわち光強度の光点数および補正因子との積であると仮定する。
【0024】
たった今記述された仮定は、より好ましくは、関連する発光信号からのより長い距離(すなわち10m超)、若しくは相互に関しての光点のある最長距離に適用される。
【0025】
これは、光点の単位面積あたり放射密度の測定中に、単位面積あたり放射密度をスイッチの入った状態およびまたスイッチを切った状態の双方で測定する場合の利点の一つである。ここで、スイッチの入った状態で測定される単位面積あたり放射密度は、光点により引き起こされる純粋な単位面積あたり放射密度、および測定中に優勢である周囲の単位面積あたり放射密度の総和である。対照的に、スイッチを切った状態で測定される単位面積あたり放射密度は、周囲の単位面積あたり放射密度のみからなる。結果として、該2測定値の差を形成することにより、光点の純粋な単位面積あたり放射密度、すなわち完全に暗い環境でスイッチの入った光点の単位面積あたり放射密度が単に保持されるように、周囲の単位面積あたり放射密度を測定値から除去し得る。
【0026】
好ましくは、差を形成することにより得られる単位面積あたり放射密度の差は、発光信号の光軸に変換される。これは、単位面積あたり放射密度の測定が発光信号の光軸に沿って起こらずかつ光軸の方向の検知距離を測定するべきである場合に必要である。
【0027】
光軸に沿った光点の純粋な単位面積あたり放射密度に対応する光軸に沿った単位面積あたり放射密度の差から、定義された周囲の単位面積あたり放射密度、若しくはまたバックグラウンドの単位面積あたり放射密度も付加することにより、標準化した単位面積あたり放射密度を計算し得る。好ましくは、定義されたバックグラウンドの単位面積あたり放射密度は、最も困難な光条件、すなわち、発光信号が検知されることがとりわけ困難である条件下で優勢である、確立された値である。これは、例えば雪景色で輝く日光の場合である。好ましくは、定義されたバックグラウンドの単位面積あたり放射密度は、約10000cd/mの値を有する。
【0028】
最初に挙げた目的は、以下の段階を用いる、所定の周囲の単位面積あたり放射密度をもつ交通信号の記号の所定の方向で優勢な可読性距離の決定方法によっても解決される:
記号の特徴的長さの測定、所定の周囲の単位面積あたり放射密度での必要とされる最小視角の測定、ならびに確立された特徴的長さおよび確立された必要とされる最小視角を使用する可読性距離の計算。
【0029】
交通信号の記号は、牽引装置の運転者を指示するのに適するいかなる幾何学的形状でもよい。より好ましくは、記号は文字若しくは数字である。
【0030】
最小視角は、見る際に目が解像し得るより小さい角度である。最小視角より小さな角度で見ることができる対象は、目により識別された方法で、もはや認識され得ない。最小視角はまた「Riccoの臨界角」とも呼ばれ、そして周囲の単位面積あたり放射密度に依存する。好ましくは、該記号の特徴的長さは、目によるその解像が記号の判読の前提条件である長さである。
【0031】
好ましくは、可読性距離は交通信号の光軸の方向で測定する。
【0032】
可読性距離が光軸方向で測定されない場合、特徴的長さを測定するある状況では、光軸と関連方向の間の角度を考慮に入れなければならないであろう。
【0033】
好ましくは、記号は複数の要素からなる。記号が複数の要素からなりかつ可読性を交通信号の光軸方向で測定する場合、該記号の特徴的長さは以下のとおり定義される:
1.暗区間では、該暗区間の境界を形成する光点間の距離による
2.明区間では、該明区間に属する外側光点間の距離による
【0034】
該要素がそれら全体で記号を形成する。該要素は、より好ましくは個々の光点であり得る。
【0035】
交通信号は、好ましくは発光信号、より好ましくは付加的発光信号である。
【0036】
本発明により開示された方法は、より好ましくは複数の光点からなる発光信号を含む交通信号の検知可能性および可読性距離の正確かつ信頼できる測定を可能にする。こうして、稼働中若しくは原型である交通信号をそれらの検知可能性および可読性について確認し得る。例えば、該距離からもはや十分に検知できない若しくは判読できない古い交通信号を容易に検出かつ交換し得る。これは交通システムの安全性を増大させる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の特定の利点は、
‐可読性の改良、ならびに(理論的可読性距離の量の)より長い実際の可読性距離、若しくは要求される可読性距離および視程を達成するための光点に対するエネルギー要求の低減の実現。すなわち、光導体発光表面に他の格子挿入ボード位置を使用することによる、ジーメンスの設計のドイツ国鉄(Deutsche Bahn AG)の地域の解放区間に存在するその速度および方向の指標;
‐要求される可読性距離および視程を達成するための光点に対する好ましくは低いエネルギー要求の同時の消費/使用を伴う、好ましくは良好な可読性の達成、および好ましくは長い実際の可読性距離の実現(理論的可読性距離の量の理想的な場合において)。すなわち、光点数、個々のLED光点の直径および光強度、ならびに光点のそれぞれの位置を指定することによる、新しいなお使用されるべきLEDの付加的指標;
‐これらの量を測定することにより、個々の信号/光点の視程を決定するために測定した個々の信号/光点の光分布を用いる手順と同様に光測定区間で測定した付加的指標の光分布からこれらの量を決定することによる、付加的指標の可読性距離および視程を決定するための試験被検体試行の省略。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明を、2種の態様および1個の図面によって以下に詳細に説明する。
【0039】
以下に、発光信号の検知可能性および可読性を測定するための本発明の好ましい態様それぞれを記述する。
【0040】
15年間線路区分で稼働している自己発光型の付加的指標で、検知可能性および可読性距離が決定されるはずである。この付加的指標により示される記号100を図1に示す。それは文字「E」である。記号100は16個の光点101からなる。これらが共同してスイッチが入れられている場合、発光する「E」が結果として得られる。
【0041】
〈検知距離の決定〉
発光記号100、および従ってスイッチの入った付加的指標の検知距離tをある方向について決定するために、各光点101の平均の単位面積あたり放射密度を最初にこの方向から測定する。それを行うために、適する単位面積あたり放射密度測定装置を、個々の光点のそれぞれと整列させ、そして結果として生じる測定値を読み取る。ここで、付加的指標の光軸と、測定装置と付加的指標の前面での光軸の透過点の間の線との間に角αが存在するような測定を実施する。
【0042】
スイッチの入った状態の光密度Lanおよびスイッチを切った状態のLausを各光点について測定する。結果として、16個の光点それぞれについて2個の測定値LanおよびLausが得られる。その後、これらの2個の測定値から、各場合で単位面積あたり放射密度の差ΔLα=Lan−Lausが形成される。
【0043】
この後、ΔLαを、光軸ΔL0°に沿った単位面積あたり放射密度の差ΔL0°に変換する。これは以下の式で実施する:
ΔL0°=ΔLα・k・cos(α) (1)
ここで、kは最大光強度と、付加的指標の光軸に対し角αをもつ光強度との間の比である。kは、該付加的指標の追加測定した光分布から決定する。
【0044】
この後、100m超の距離についての光点の平均の標準化放射密度Lを、以下の等式によって決定する:
=ΔL0°+L (2)
ここで、Lはバックグラウンドの単位面積あたり放射密度である。このために、最も困難な周囲光条件に対応する値10000cd/mを想定する。この変換で、単一の共通のバックグラウンドの単位面積あたり放射密度に対し標準化した16個の放射密度Lが得られる。
【0045】
さらに、該16個の標準化した光強度Lから共通の平均値Lを計算する。この共通の平均値は、16個の光点のいずれかの平均の単位面積あたり放射密度を光軸の方向で構成する。最後に、この値を以下の式中の付加的指標の検知視程tに代入し得る:
【数1】

ここで、φは補正因子であり、Aは光点の断面積であり、およびnは既存の光点の数、すなわちこの例では16である。この中心的な式(3)は、φ=1かつn=1、すなわち1個の光点のみを持つ発光信号について既知である。しかしながら、複数の無作為に配置した光点を持つ発光信号についても検知距離の正確な計算を可能にする因子n、とりわけφの導入はこれまで知られていない。因子nの導入は、発光信号のある総光強度(光強度は単位面積あたり放射密度×表面積である)について各個々の光点により必要とされる光強度が光点の数n(この例ではn=16)に反比例するという知識に基づく。
【0046】
補正因子φは、信号の単位面積あたり放射密度全体の閾値の、光点数、光強度、光点のそれぞれの直径および位置、ならびに光点間の相互までの優勢な距離への依存状態を反映する一方、係数2は、大部分の発光信号で存在する信号画面の日中の信号に対する影響を記述する。夜間若しくはトンネル内の発光信号の検知距離を決定するためには、係数2の代わりに係数1000を上式に代入しなければならない。
【0047】
式(3)は、光点の光強度I(I=A・L)を利用して以下のようにも表現し得る:
【数2】

ここで、Eminは放射強度の閾値。この同等の式(4)によって、光度Iとnの間の反比例が即座に明らかである。
【0048】
についての新型の式(3)およびIについての同等の式(4)が光点の相互からのいかなる距離にも適用し得ることが発見された。
【0049】
式(3)を介して決定される検知距離tは、その後、具体的な場合で検知距離の許容できる最小値と比較し得る。こうして、測定された付加的指標がなお十分に検知可能であるか若しくは置換されなければならないかどうかを決定し得る。
【0050】
〈可読性距離の確立〉
付加的指標の記号100が牽引装置の運転者により時宜を得て検知される場合でも、これは、彼がそれを時宜を得て判読することが可能であることを未だ意味していない。認識された記号100を同様に判読し得ることを可能にするためには、それが付加的に眼によりそれが解像されることが可能でなければならない。記号100がぼやけた光の斑点として見られるのみでありかつ「E」と見られない限り、該付加的指標は実際に検知されているが、しかしそれは未だ判読され得ない。従って、付加的指標で、ある検知距離だけでなくある可読性距離も保証されなければならない。検知距離とまさに同様に、可読性距離は、判読されるべき記号を見る方向に依存する。
【0051】
以下で、記号100を持つ付加的指標について、この光軸に沿った可読性距離Iがどのように決定されるかを今から記述する。光軸に沿った可読性距離は同時に最長可読性距離でもある。
【0052】
付加的指標の光軸に沿った記号100の可読性距離Iは、以下の式によって決定し得る:
I=(ζ/2)/(tan(γ/2)) (5)
ここで、γは、観察者が所定の周囲の単位面積あたり放射密度で記号を判読若しくは解像することが可能である視角の最小値である。γは「Riccoの臨界角」としても記述され、そして既知の周囲の単位面積あたり放射密度について調査し得る。平均的な日中の光で、γについておよそ1’の値が得られる。
【0053】
バックグラウンドの単位面積あたり放射密度は、それぞれの光点のすぐ近傍での各不鮮明な円板に対応する。
【0054】
理論的可読性距離は周囲の単位面積あたり放射密度の関数であり、この場合は、バックグラウンドの単位面積あたり放射密度、およびそれぞれの面積成分で加重した光点のすぐ近傍の単位面積あたり放射密度の平均値である。
【0055】
ζは該記号の特徴的長さであり、そして記号100の場合が図面に示されている。
【0056】
原則として、ある記号の特徴的長さは、眼によるその解像が該記号の判読の前提条件である長さである。
【0057】
複数の光点からなるいかなる記号についても、記号の特徴的長さは以下のように定義される:
1.暗区間では、該暗区間の境界を形成する光点間の距離による
2.明区間では、該明区間に属する外側光点間の距離による
【0058】
可読性距離が光軸の方向以外の方向に沿って決定されるべきである場合、関連する方向と光軸間の角度を、所定の式で付加的にさらに考慮しなければならないであろう。
【0059】
要約すれば、発光信号の最長可読性距離は、記号の幾何学的形状から直接得られる該記号の特徴的長さによって、および、既知の周囲の単位面積あたり放射密度についての挙げられた式での調査された最小視角によって決定し得る。
【0060】
信号の可読性距離が記述された方法で決定されるとすぐに、許容できる最小値との比較により、該信号が十分な可読性を有するかどうかを即座に評価し得る。
【0061】
〈使用される式の記号の索引〉
α 角度
an スイッチの入った状態での単位面積あたり放射密度
aus スイッチを切った状態での単位面積あたり放射密度
ΔLα 単位面積あたり放射密度の差
ΔL0° 光軸に沿った単位面積あたり放射密度の差
k 最大光強度と、付加的指標の光軸と角αを伴う光強度との間の比
平均の単位面積あたり標準化放射密度
単位面積あたりバックグラウンド放射密度
全部の平均の標準化放射密度Lの総平均値
検知距離
φ 補正因子
A 光点の断面積
n 既存の光点数
光点の光強度
min 単位面積あたり放射密度の閾値
I 可読性距離
ζ 特徴的長さ
γ 観察者が所定の単位面積あたり周囲放射密度で記号を判読若しくは解像し得る視角の最小値
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】その16個の図の点が文字「E」を表す付加的指標を図示する。
【符号の説明】
【0063】
100 記号
101 光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐各個々の光点の所定の方向で優勢な単位面積あたり放射密度すなわち光強度を測定する段階と、
‐前記測定された放射密度すなわち光強度に基づく検知可能性および可読性距離を計算する段階とを有し、
前記検知距離の計算が、前記個々の光点の前記測定された単位面積あたり放射密度すなわち光強度の、光点数の累乗および補正因子での乗算により得られる、発光信号の総単位面積あたり放射密度すなわち総光強度の閾値の助けを借りて実施されることを特徴とする、確立された単位面積あたり放射密度をもつ複数の光点を含んでなる発光信号の所定の方向で優勢な検知距離の決定方法。
【請求項2】
前記補正因子が、光点数、光強度、光点のそれぞれの直径および位置、ならびに光点間の相互までの優勢な距離に依存することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正因子が数値で決定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ユーザー定義可能な光点の配置を伴う仮想的付加的指標が指定され、ならびに、前記補正因子が、眼と付加的指標の間の所定の距離を用いる眼モデルおよび光線の計算によって計算されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
自由に選択可能な位置を持つ仮想的格子が光点で占有されるために前記仮想的付加的指標が形成されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
‐発光信号のスイッチを切った状態での各個々の光点の第一の単位面積あたり放射密度を測定する段階と、
‐発光信号のスイッチを切った状態での各個々の光点の第二の単位面積あたり放射密度を測定する段階と
をさらに伴う、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
‐測定された前記第一および第二の放射密度によって発光信号の光軸に沿った各光点の単位面積あたり放射密度の差を計算する段階
をさらに伴う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
‐前記各場合に計算された単位面積あたり放射密度の差の、前記確立された周囲の単位面積あたり放射密度への付加による、各光点の標準化された単位面積あたり放射密度を計算する段階
をさらに伴う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記単位面積あたり放射密度すなわち光強度の測定に際し、平均の単位面積あたり放射密度すなわち平均の光強度が測定されることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記単位面積あたり放射密度すなわち光強度の測定中に、単位面積あたり放射密度の分布すなわち光強度の分布が測定されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
‐記号の特徴的長さを測定する段階と、
‐所定の周囲の単位面積あたり放射密度での眼の最小視角を測定する段階と、
‐確立された特徴的長さおよび確立された最小視角を利用して可読性距離を計算する段階とを伴う、所定の周囲の単位面積あたり放射密度での交通信号の記号の所定の方向の優勢な可読性距離の決定方法。
【請求項12】
前記記号の特徴的長さが、その眼による解像が記号の判読の前提条件である長さであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記記号が複数の要素からなり、また、該記号の特徴的長さが、
‐暗区間では、該暗区間の境界を形成する光点間の距離によって
‐明区間では、該明区間に属する外側光点間の距離によって
定義されることを特徴とする、請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記記号の要素が光点であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記交通信号が発光信号であることを特徴とする、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−524558(P2008−524558A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541791(P2007−541791)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012325
【国際公開番号】WO2006/053749
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507085243)ドイチュ・バーン・アーゲー (2)
【Fターム(参考)】