説明

発光装置

【課題】ファイバー発光体ケーブルを用いた発光装置の輝度向上と適用範囲を広げる。
【解決手段】光源である発光効率と視認性のよい高出力LED発光素子として400nm〜850nmの範囲の波長を有する0.5W以上の高出力LED発光素子を用いる。これにより光源から照射された光の光ファイバーの長さ方向にわたる到達距離が長く、しかも光ファイバーの長さ方向全体にわたり、その外周面より均一でしかも十分な光照射をおこなうことができる。その結果従来にない高い集魚効率や視覚的認識性の向上等、機能的でしかも汎用性が高く、また耐久性の良好な発光装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバー発光体ケーブルを用いて集魚活動や誘導・目印しなど機能的な用途に供する目的で開発された発光装置に関し、集魚効率の向上、あるいは視覚的認識性の向上をはかり、しかも省電力化や耐久性の向上をはかることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
たとえば夜間の海上で烏賊やサンマ漁などをおこなう場合においては、漁船の船体上に多数の電球などによる集魚灯ランプを取り付けて漁船を中心とした海面に向けて均一照射することにより集魚するのが一般的な手法である(たとえば特開平2005−117991号公報参照)。さらにこれらの場合に用いられる集魚灯としては、多くはランプ内に小型のショート・アーク放電灯を内臓させたもの(特開平2002−304967号公報参照)や、あるいは複数種の金属をキセノンガスとともに封入した白色の集魚灯(特開平2005−251495号公報参照)などが一般的である。
【0003】
また上記した白色灯に限らず、店舗や各種の看板をはじめ建築物・航空機の誘導灯などの夜間の装飾・発光手段として従来のネオン管に代わって発光ダイオード(LED)を用いる試みもなされている。
【特許文献1】特開平2002−304967号公報
【特許文献2】特開平2005−251495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1や特許文献2に記載されたランプをはじめとしたフィラメントやキセノン、ハロゲン、メタルハライドなどの白色系集魚灯は光源の消費電力量が多大であるばかりでなく、一般的に100時間からせいぜい5000時間程度の寿命しかなくランニングコストが高い。また特に裸のメタルハライドランプなどにあっては発光紫外線により眼や人体に与える悪影響が大きくあまり歓迎されない。
【0005】
さらに上記したフィラメントやキセノン等をはじめとした電球類は白色系の色光しか発することができないために、青系や黄色系などのカラー発光が求められる場合においては光源との間に別途カラーフィルターを介在させる必要があるために部品点数が増加し、強いてはコストの上昇が避けられない。
【0006】
また電球に代わる光源として一般的な0.1W程度の高輝度LEDも開発されたが、樹脂製のファイバーケーブルを発光させるためには、この程度の出力のLEDでは殆ど実用性に欠け、せいぜい7mm径以下のファイバーケーブルであって長さが1m以下のものを発光させるのが限界であって、それ以上の径の樹脂製ファイバーケーブルを発光させるには全く不向きである。
【0007】
さらに航空機の誘導灯として、また看板として用いる方法にあっては、一般的に光量不足で十分な効果を得がたいばかりでなく、多くの場合光ファイバーの長さ方向にわたって十分に発光させる長さには限りがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明にあっては、耐久性や加工性に優れた光ファイバーと、電力消費量が少なく、しかも発光効率と視認性のよい高出力LED発光素子とを組み合わせることにより、従来にない高い集魚効率や視覚的認識性の向上の見込まれる発光装置を開発したものであって、具体的にはコアとコアのまわりを被覆するクラッド層からなる一定の長さを有するファイバー発光体ケーブルと、該ファイバー発光体ケーブルの端部に取り付けられる光源部とからなり、光源部内には400nm〜850nmの範囲の波長を有する0.5W以上の高出力LED発光素子が上記ファイバー発光体ケーブルの端面に対面して取り付けられていることを特徴とした発光装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記したように、光源である発光効率と視認性のよい高出力LED発光素子として400nm〜850nmの範囲の波長を有する0.5W以上の高出力LED発光素子を用いるために、光源から照射された光の光ファイバーの長さ方向にわたる到達距離が長く、しかも光ファイバーの長さ方向全体にわたり、その外周面より均一でしかも十分な光照射をおこなうことができる。その結果従来にない高い集魚効率や視覚的認識性の向上等、機能的でしかも汎用性が高く、また耐久性の良好な発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において本発明の具体的な内容を説明すると、図1には本発明に係る発光装置の一実施例があらわされている。図において1はファイバー発光体ケーブル、4はファイバー発光体ケーブル1の端部に取り付けられる光源部を示す。ファイバー発光体ケーブル1は集魚や誘導などの用途目的、あるいは光源部4に内臓する光源の輝度・光量にもよるが通常は太さが3〜16φ程度で、長さについては用途にもよるが、概ね10m程度までの一定の長さを有し、アクリルなどのプラスチックあるいはガラスなど光透過性の高い材質からなるコア2と、該コア2のまわりを被覆する透明なクラッド層3とからなり、光源により端面から一定量の光量を照射することにより、ファイバー発光体ケーブル1の全長にわたり、その周面から放射方向に向けて光照射することが可能なものが使用される。
【0011】
光ファイバーは主に通信やインターネットの基幹ネットワーク接続手段として用いることが多いために、材質的にコア・クラッド共に石英ガラス製のものが多く、しかもコアはクラッドに比して屈折率が高いものを用いることにより、光を全反射現象によりコア内に閉じ込めたままの状態で伝搬させるようになっているが、本発明において用いられるファイバー発光体ケーブル1はファイバーケーブルの側面から漏れる光をシールドしない構造のものが用いられる。
【0012】
すなわち、本発明において用いられるファイバー発光体ケーブル1はクラッド層3とコア2の屈折率を同等か、あるいはクラッド層3よりもコア2の屈折率をいくぶん低くすることによりコア2の一端から照射された光がコア2内に全て閉じ込められることがなく、常にその一部がクラッド層3を透過してファイバー発光体ケーブル1の側面から散光されるようなものが用いられる。
【0013】
また光源部4は、ファイバー発光体ケーブル1の端部を内部に受け入れる固定ケーシング5と、該ファイバー発光体ケーブル1の端部に接近して、これに対面する高出力LED発光素子13を取り付けたアルミニウム等の熱伝導性に優れた取り付け基板12を取り付ける補助ケーシング8とからなり、補助ケーシング8の前方開口縁内周には雌ネジが刻設されており、これをシール材9を介して固定ケーシング5の後部外周縁に刻設された雄ネジ部に螺合させて一体的に構成している。
【0014】
なお上記した取り付け基板12は中央部に高出力LED発光素子13がマウントされており、ファイバー発光体ケーブル1の端面に対面して取り付けられるとともに、該取り付け基板12の周辺部を前記補助ケーシング8の内壁面に対して直接に密着固定させて取り付けられている。なお固定ケーシング5に対するファイバー発光体ケーブル1の固定は、ファイバー発光体ケーブル1の先端部を固定ケーシング5内にシール材9・9を介して装入するとともに、クランプ6の一対のアーム6a・6bを対面させた状態で該アーム6a・6bをボルトBにより締め付け固定するとともに、クランプ6自体をボルト7・7により固定ケーシング5に固定する。
【0015】
さらにここで用いられる高出力LED発光素子13としては、通常150mmA以上の電流を印加可能であるところの400nm〜850nmの範囲の波長を有する0.5W以上の高出力LED発光素子を用いるものとする。上記の範囲の波長は魚種によって若干の相違はあるものの、この範囲内の波長のLED発光を用いることにより各種の魚類に対して大きな集魚効果が認められる。
【0016】
なお最近高出力型のLED発光素子として5W程度の高出力型のものが開発されており、これは一般的な高輝度LED発光素子に比べて発光輝度が10倍から70倍もの高い発光輝度を有しており、また定格の寿命も25,000時間から100、000時間と、電球タイプの光源に比べてきわめて有利であるところから、これら高出力LED発光素子を用いることが必要である。
【0017】
なお固定ケーシング5と補助ケーシング8とからなる光源部4については放熱性を良好にするためにアルミニウムあるいはマグネシウム、チタン、亜鉛合金、放熱樹脂など易放熱性材質のものが用いられる。また図において8aは補助ケーシング8の外側に形成された方熱フィンをあらわしている。さらにファイバー発光体ケーブル1の端部とこれに対面する高出力LED発光素子13との間にはアルミ製のスペーサー11を介在させて反射鏡10が取り付けられている。
【0018】
この反射鏡10は高出力LED発光素子13から照射される光の指向特性(照射角度)が一般的には図2の(A)に表したように160°であるものから同図(B)に表したように70°までの範囲であるために、これらをファイバー発光体ケーブル1の端部に照射しても入射する光量に大幅なロスを生じ、そのために光源として高出力LED発光素子13を用いているにも拘らずファイバー発光体ケーブル1の側面からの輝度量が十分ではない。この場合に透明レンズを介在させることも試みたが、光がレンズを通過する際に輝度が減衰しやすく、その結果ファイバー発光体ケーブル1からの十分な輝度が得られなくなることが解った。
【0019】
そこで本発明者は種々の実験の結果、上記した反射鏡10を介在させることによって高出力LED発光素子13から照射される光の指向角度を狭めることによってファイバー発光体ケーブル1の側面からの十分な輝度量を得ることに成功した。具体的には一方が高出力LED発光素子13の発光部に対応する中央部に、発光部の直径に略対応する大きさの開口部を有するとともに、他方がファイバー発光体ケーブル1の端部の直径に略対応させるべく次第に拡開させた傘型に構成されている。
【0020】
この場合照射角度を39°以下とした場合にはファイバー発光体ケーブル1の側面に対して十分に反射せずに透過してしまう光が多くなり、ファイバー発光体ケーブル1の側面からの十分な輝度照射が得られなかった。また56°以上にしてもファイバー発光体ケーブル1と光の反射角が鋭角に近づくためにファイバー発光体ケーブル1の内部での光の減衰が大きくなり、結果として入光部付近のみが高輝度発光するだけでファイバー発光体ケーブル1の長さ方向全体を均一に発光することが困難となることがわかった。
【0021】
このことから、スペーサー11の長さ、すなわち高出力LED発光素子13とファイバー発光体ケーブル1の端部との間隔如何にもよるが、概ね図2の(C)に表したように40°〜55°の範囲内に集光させるように設計したものがファイバー発光体ケーブル1の発光輝度を最も高めることができること、またこの場合にファイバー発光体ケーブル1の長さ方向全体を均一かつ十分な輝度で発光させることが可能な長さは概ね11m程度までの長さにすることが可能であることが解った。
【0022】
上記した構成において、高出力LED発光素子13の電源コード14a・14bを防水コネクター16を介して接続したケーブル15により、途中に電源スイッチや光源LED点灯インジケーター、等を内蔵した制御部(図示省略)を介して電源に接続し、用途に応じて高出力LED発光素子13の発光によりファイバー発光体ケーブル1の全体から光を照射させる。この場合に、光源部4の全体を水密構造とすればファイバー発光体ケーブル1とともに水中に設置することも可能であり、また少なくともファイバー発光体ケーブル1の部分のみについては水中設置しても漏電その他の電気的トラブル発生の危険は全くない。
【0023】
高出力LED発光素子13の発光により発光素子13周辺の温度が上昇するが、アルミ製の取り付け基板12の周辺部が易放熱性の補助ケーシング8の内壁面に直接に密着固定させて取り付けられているために放熱性に優れ、その結果補助ケーシング8の内部を密閉構造とすることができ、またこの放熱構造により、高出力LED発光素子13への放熱フィンや放熱ファンなどの取り付けが不要となり、部品点数の低減と低コスト化をはかることができる。
【0024】
〔実施例1〕
サンマ漁の漁船の左右両弦にそれぞれ青色系の高出力LED発光素子を備えた光源部を設置するとともに、一端を該光源部に接続して弦に沿わせて水面下にファイバー発光体ケーブルを設置する。なおこの場合に光源部ともども水面下に設置するようにしてもよい。船上から海面に向けて投光していた従来のサンマ漁の場合においては計測の結果投光輝度の凡そ10%程度しか光量エネルギーが有効でなかったものが、ファイバー発光体ケーブルにより水面下点灯することによって、少なくとも50%以上の有効光量エネルギーを利用することができ、十分な集魚効果を得ることができた。また必要に応じて適宜波長のコントロールも自在に操作することが可能となった。
【0025】
〔実施例2〕
アジ漁の漁船の左右両弦に、実施例1と同様にそれぞれ青色系の高出力LED発光素子を備えた光源部を設置するとともに、一端を該光源部に接続して弦に沿わせて水面下にファイバー発光体ケーブルを設置した。この場合においてもファイバー発光体ケーブルによる水面下点灯によって、十分な水中照射光量を得ることができ、集魚効果が高いことが解った。
【0026】
〔実施例3〕
マダイの養殖生簀においては、一般的に太陽光の影響で養殖タイの表面が日焼けにより次第に黒色化し、市場における取引価格下落の要因となっているために、一般的には生簀の上面に黒色系の細かい網などを展張することがおこなわれているが、生簀の上面に反射シートを展張するとともに、該反射シートの下面に赤系の高出力LED発光素子を備えた光源部およびこれに接続されたファイバー発光体ケーブルを取り付けたところ、天然マダイに近い体色をした高品質のマダイ養殖をおこなうことに成功した。
【0027】
〔実施例4〕
夜間の烏賊漁についても基本的には実施例1あるいは実施例2と同様であるが、この場合においては光源部の発光素子として赤系の高出力LED発光素子の使用が有効であった。
【0028】
〔実施例5〕
鰻の養殖には稚魚の採集作業が欠かせないが、夜間河口付近の水底にフロートを付けて本発明装置を沈めて設置し、波長をコントロールして高出力LED発光素子を発光させることにより鰻の稚魚を寄せ集めて効率的採集を可能とすることができた。
【0029】
〔実施例6〕
防波堤の上縁に沿ってオレンジ色系の高出力LED発光素子を備えた光源部に接続された本発明のファイバー発光体ケーブルを設置して夜間に点灯してみたところ、高波に晒されても電気的な障害がなく、また濃霧環境下においても防波堤の存在が少なくとも100m以上離れた位置からも十分に視認することができ、夜間における車両の海中転落事故を確実に防止することができる。
【0030】
〔実施例7〕
縦・横それぞれ16m前後の略正方形をしたヘリポートの中央部に表示される「H」文字に沿って本発明に係るオレンジ色系あるいは赤系の高出力LED発光素子を備えた光源部に接続された本発明のファイバー発光体ケーブルを設置して夜間に点灯してみたところ、夜間の薄い霧の環境下においても少なくとも150m以上の上空からヘリポートの存在が十分に確認された。
【0031】
〔その他〕
本発明に係る発光装置は、上記した各種の実施例に示す場合のほかに、例えば繁華街の街灯として設置し、光源内の高出力LED発光素子を赤系や青系など複数種に必要に応じて切り替えて発光することができるようにし、クリスマスの時期には赤色の発光を、また夏の夜は青色系の発光を、それぞれ環境や時期などに応じて切替えが可能にし、また既存の光源に比して容易には破損しないところから光源内に複数種の色の異なる高出力LED発光素子を備えて店頭の看板などとして必要に応じ任意の色光に変化させることができるようにする等、大気中においても、また水中においても多くの用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例である発光装置の要部断面図ならびにXーX線矢視方向端面図。
【図2】高出力LED発光素子の光照射範囲をあらわした説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 ファイバー発光体ケーブル
2 コア
3 クラッド層
4 光源部
5 固定ケーシング
6 クランプ
6a アーム
6b アーム
7 ボルト
8 補助ケーシング
9 シール材
10 反射鏡
11 スペーサー
12 取り付け基板
13 高出力LED発光素子
14a 電源コード
14b 電源コード
15 ケーブル
16 防水コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとコアのまわりを被覆するクラッド層からなる一定の長さを有するファイバー発光体ケーブルと、該ファイバー発光体ケーブルの端部に取り付けられる光源部とからなり、光源部内には400nm〜850nmの範囲の波長を有する0.5W以上の高出力LED発光素子が上記ファイバー発光体ケーブルの端面に対面して取り付けられていることを特徴とした発光装置。
【請求項2】
光源部はアルミニウム等の易放熱性材質からなるケーシングであって、一方からファイバー発光体ケーブルの端部を内部に受け入れるとともに、該ファイバー発光体ケーブルの端部に接近して、これに対面する高出力LED発光素子を取り付けたアルミニウム等の熱伝導性に優れた取り付け基板が、該基板の周辺部を前記ケーシングに直接に密着させて取り付けられているところの請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
光源部内におけるファイバー発光体ケーブル端部と、これに対面する高出力LED発光素子との間には、高出力LED発光素子の光照射を40°〜55°の範囲内に集光してファイバー発光体ケーブルに光照射する反射鏡が介在されているところの請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
少なくともファイバー発光体ケーブルが大気中に設置されるものであるところの請求項1〜3のいずれか1に記載の発光装置。
【請求項5】
少なくともファイバー発光体ケーブルが水中に設置されるものであるところの請求項1〜3のいずれか1に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−66616(P2008−66616A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245016(P2006−245016)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000161437)宮田工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】