説明

発泡金属成形体の製造方法、及び発泡金属成形体

【課題】成形体本体部が発泡部により形成されているとともに局部的に強度が求められる所定の部位が中実部により形成されている発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造可能な発泡金属成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る発泡金属成形体の製造方法は、金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製し、同混合粉末から前駆体(11,21,31,41) を作製し、同前駆体(11,21,31,41) を発泡成形することにより、発泡部(14,24,34,44) と中実部(15,25,35,45) とを有する発泡金属成形体(16,26,36,46) を製造する製造方法であって、前記前駆体(11,21,31,41) の発泡成形時に、前記発泡部(14,24,34,44) を有する成形体本体部(18,28,38,48) と、同成形体本体部(18,28,38,48) の所定部位から延在し、前記中実部(15,25,35,45) により形成される中実延在部(19,29,39,49) とを一体に成形することに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製し、同混合粉末を圧粉成形して前駆体を作製し、同前駆体を加熱して発泡成形することにより発泡金属成形体を製造する製造方法に関し、特に、発泡部を有する成形体本体部から、中実部により形成される中実延在部が延在した発泡金属成形体を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡金属は、金属からなる母材中に無数の気泡(発泡セル)が形成された多孔質体であり、この発泡金属の成形体は、現在、各種構造材料、衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収材、吸音材(遮音材)、触媒担体等として様々な分野で利用されつつある。また一般に、発泡金属の母材としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、鉄、錫、鉛又はこれらを含む合金が提案されており、その中でも軽量化と高強度が図れるアルミニウム又はアルミニウムを含有する合金が多く用いられている。
【0003】
このような発泡金属成形体を製造する方法の一例が、特許第2898437号公報(特許文献1)に記載されている。
前記特許文献1に記載されている発泡金属成形体の製造方法は、アルミニウム等の金属粉末と、水素化金属、炭酸塩、硫酸、水酸化物、有機物質の粉末等の発泡剤粉末(精錬材粉末)とを混合して混合粉末を調製し、その得られた混合粉末を熱間圧粉して前駆体(圧粉体)を作製する。得られた前駆体を冷却した後、同前駆体を所定の温度に予熱した炉内に投入し、同前駆体を発泡させる温度まで所定の昇温速度で加熱することによって発泡金属成形体が製造されている。
【0004】
また、特許文献1には、前駆体の作製時に、金属粉末と発泡剤粉末とを混合した混合粉末から第1の層を形成するとともに、その第1の層の表裏両面に発泡剤粉末を含まない金属粉末のみからなる第2の層を形成することにより、発泡が生じる第1の層が金属粉末のみの第2の層に挟み込まれた前駆体を作製することが記載されている。このような3つの層を有する前駆体を加熱して発泡成形した場合、前記第1の層が発泡することによって形成された多孔質発泡層の表裏両面に、前記第2の層によって形成された多孔性の少ない表部層と底部層を有する成形体が製造される。このようにして得られた成形体は、成形体全体の強度を高めることができるとともに、表裏面側の前記表部層及び底部層が発泡を生じていないため、成形体表面を比較的平滑に形成することが可能となる。
【特許文献1】特許第2898437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えばサッシやその他の建材製品においては、その材質として、強度が高く、また比較的低い温度にて押出成形が可能であり、更に、寸法精度が高く、複雑な形状にも容易に対応できる等の理由から、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金が多く用いられている。
【0006】
また、このような建材製品においては、更なる軽量化を図るために、内部に無数の気泡が形成された発泡アルミニウム等の発泡金属を材質に用いることが考えられている。しかしながら、発泡金属の発泡部は、気泡が形成されていない金属の中実部に比べて強度が低く、例えばサッシにおいて、ガラス戸等の他の部材が取り付けられる取付部のような部位を発泡部で形成した場合には強度や耐久性の面で不安があった。そこで、このような局部的に強度が求められるサッシ等の製品では、製品の本体部を発泡金属の発泡部により形成して軽量化を図るとともに、強度が求められる部位のみを金属の中実部により形成することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このような所定の部位のみが中実部で形成される発泡金属成形体を、例えば前記特許文献1に記載されているような方法を用いて製造しようと試みた場合、特許文献1の製造方法では、発泡成形中に発泡部が全体的に膨張することから、前述のように発泡成形体の表裏面全体に多孔性の少ない層(中実部)を所定の厚さで設けることは可能であるものの、中実部を所定の部位のみに所望の形状に設けて発泡金属成形体を製造することは極めて困難であった。
【0008】
特に、複雑な形状を有する発泡金属成形体を、一回の発泡成形工程によって製造する場合には、中実部を発泡金属成形体の所定部位のみに形成することは極めて難しく、更に、その中実部をサッシの取付部等のように複雑な形状を有するように形成することはできなかった。
【0009】
なお、前記特許文献1には、発泡金属を同種又は異種の材料に接着、ろう接、溶接、ネジ止め等によって接合することが記載されている。このように発泡金属成形体を製造した後に、同発泡金属成形体とその他の材料とを接着等により接合することにより、例えばサッシの取付部等のような局部的に強度が求められる部位を後付けすることができる。これにより、成形体本体部を発泡部で形成するとともに、局部的に強度が求められる部位を金属の中実部で形成した製品を得ることも可能となる。
【0010】
しかしながら、この場合、前駆体を発泡成形して発泡金属成形体を製造した後に、同発泡金属成形体にその他の材料を接合するための煩雑な作業が必要となるため、製造工程数が増大し、一般的な中実のアルミサッシ等の製品に比べて製造コストが大幅に増大するという問題があった。更に、発泡金属成形体とその他の異種材料とを接着やネジ止め等によって接合した場合、その製品をリサイクルする際に、発泡金属成形体とその他の材料とを分別することや、接着剤や取付ネジ等を取り除くことが必要となるため、リサイクルが困難になるという問題もあった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、成形体本体部が発泡部により形成されているとともに局部的に強度が求められる所定の部位が中実部により形成されており、且つ、リサイクル性に優れた発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することが可能な発泡金属成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供される発泡金属成形体の製造方法は、基本的な構成として、母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製し、同混合粉末を圧粉成形して前駆体を作製し、同前駆体を金型に収容した状態で加熱し発泡成形することにより、気泡が形成された発泡部と気泡が形成されていない中実部とを有する発泡金属成形体を製造する発泡金属成形体の製造方法であって、前記前駆体の発泡成形時に、少なくとも前記発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在し、前記中実部により形成される中実延在部とを一体に成形することを最も主要な特徴とするものである。
特に、本発明に係る発泡金属成形体の製造方法においては、前記成形体本体部の母材となる金属と、前記中実延在部の金属とに同じ材質の金属を使用することが好ましい。
【0013】
このような本発明の製造方法における第1の態様としては、前記前駆体の作製時に、同前駆体内に前記発泡剤粉末を含有する発泡剤含有層と前記発泡剤粉末を含有しない発泡剤非含有層とを形成し、作製された前記前駆体を加熱することにより、前記前駆体の発泡剤含有層を発泡させて前記発泡部を形成するとともに、同発泡部を形成するときの発泡圧を利用して、溶融した前記発泡剤非含有層を前記金型のキャビティ内に展延させて前記中実部を形成し、同中実部により前記中実延在部を形成することにより、発泡金属成形体の製造が行われる。
【0014】
この場合、前記発泡剤含有層の体積V1、前記発泡剤非含有層の体積V2、前記発泡金属成形体の体積Vf、前記発泡金属成形体の密度ρ、及び、母材となる金属の密度Cが、以下の関係式(A)、(B)、及び(C)を満足することが好ましい。
V1/Vf≧0.1 ・・・(A)、
1≦V2/V1≦2 ・・・(B)、
V=C×(V1+V2)/ρ ・・・(C)。
【0015】
また、本発明の製造方法における第2の態様としては、前記金型として、前記成形体本体部を成形する第1キャビティと、同第1キャビティに連続して形成され、前記中実延在部を成形する第2キャビティとを有する金型を使用し、前記前駆体の発泡成形時に、前記前駆体を母材となる金属の固相線温度以上の温度にて所定時間加熱することにより、前記発泡剤粉末の分解により生じる気泡を浮上させるとともに同気泡を成長させて前記第1キャビティ内に前記発泡部を形成するとともに、溶融した前記金属を自重により沈降させ、沈降した同溶融金属を前記前記発泡部の発泡圧により前記第2キャビティ内に展延させて前記中実延在部を形成することにより、発泡金属成形体の製造が行われる。
【0016】
この場合、前記前駆体における前記発泡剤粉末の添加量A、前記前駆体の体積Vp、及び、前記発泡金属成形体の体積Vfが、以下の関係式(D)及び(E)を満足することが好ましい。
0.1≦A≦4.0 ・・・(D)、
20≦Vp/Vf≦50 ・・・(E)。
【0017】
更に、本発明の製造方法における第3の態様としては、前記金型として、前記成形体本体部を成形する第1キャビティと、前記中実延在部を成形する第2キャビティとを有し、前記第2キャビティには前記第1キャビティと連通する連通部が設けられ、前記連通部の断面における最小寸法Lが、前記発泡金属成形体内に形成される気泡の直径rよりも小さく設定された金型を使用し、前記前駆体の発泡成形時に、前記前駆体を前記金型の前記第1キャビティ内に収容した状態で加熱することにより、同第1キャビティ内で溶融した金属を発泡させて前記発泡部を形成するとともに、前記発泡部を形成するときの発泡圧を利用して同溶融金属の一部を前記第1キャビティから前記連通部を介して前記第2キャビティ内へ展延させるときに、前記溶融金属内の気泡を前記連通部にて破壊することにより前記第2キャビティ内に前記中実延在部を形成することにより、発泡金属成形体の製造が行われる。
【0018】
更にまた、本発明の製造方法における第4の態様としては、前記金型として、前記成形体本体部を成形する第1キャビティと、同第1キャビティに連通して前記中実延在部を成形する第2キャビティと、母材となる金属を前記前駆体とは別の場所で溶融して貯溜し、その貯溜した溶融金属を前記前駆体の加熱時に前記第2キャビティ内に流し込むことが可能な押湯部とを有する金型を使用し、前記前駆体を発泡成形するときに、同前駆体を前記第1キャビティ内で発泡させて前記発泡部を形成するとともに、前記押湯部に貯溜した溶融金属を前記第2キャビティ内に流し込むことにより、同第2キャビティ内に前記中実延在部を形成することにより、発泡金属成形体の製造が行われる。
【0019】
この場合、前記金型の前記押湯部内に、前記第2キャビティの容積の106%以上の容量で前記溶融金属を貯溜し、前記前駆体の加熱時に、前記押湯部内に貯溜した前記溶融金属を、4.0Pa以上の押湯圧力を保持しながら前記第2キャビティ内に流し込むことが好ましい。
【0020】
そして、本発明によれば、上記構成を有する発泡アルミニウム成形体の製造方法により製造された発泡金属成形体が提供される。
このような本発明の方法により製造された発泡金属成形体は、前記中実延在部が薄肉部分に設けられていることが好ましく、特に、前記中実延在部が0.5mm以上15mm以下の肉厚を有して形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る発泡金属成形体の製造方法は、前駆体を発泡成形するときに、発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在し、前記中実部により形成される中実延在部とが一体に成形される。このような本発明の製造方法であれば、一回の発泡成形を行うことにより、例えばサッシ等の製品のように成形体本体部から延在し、且つ、局部的に高い強度を求められる延在部等の部位が中実部により構成された発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することができる。しかも、本発明の製造方法は、中実延在部を所望の形状に容易に成形することができるため、サッシの取付部等のように複雑な形状を有する部位のみを局所的に中実に形成することも容易に可能となる。
【0022】
特に、本発明によれば、接着剤や取付ネジ等を用いずに発泡部と中実延在部とが一体化した発泡金属成形体を製造できるため、例えば発泡部の母材となる金属と中実延在部の金属とに同じ材質の金属を使用することにより、リサイクル性に優れた発泡金属成形体が得られる。
【0023】
なお、本発明における中実延在部とは、発泡金属成形体において、成形体本体部よりも肉厚が薄く、且つ、成形体本体部から突出するように延在して形成されている部位である。また、本発明において発泡金属成形体を製造する際に、同発泡金属成形体の成形体本体部は発泡部のみから形成することができ、或いは、発泡部と中実部とから形成することも可能である。この場合、発泡金属成形体の成形体本体部を発泡部のみから形成するときには、同成形体の中実延在部は発泡部の所定部位から延在するように形成される。また、発泡金属成形体の成形体本体部を発泡部と中実部とにより形成するときには、成形体の中実延在部は、成形体本体部における発泡部の部位、中実部の部位、及び発泡部と中実部の両方の部位の何れの部位からも延在させることが可能である。
【0024】
このような本発明の製造方法において、第1の態様としては、前駆体の作製時に、同前駆体内に発泡剤粉末を含有する発泡剤含有層と発泡剤粉末を含有しない発泡剤非含有層とを形成し、その後、作製された前駆体を加熱することにより、前駆体の発泡剤含有層を発泡させて発泡部を形成する。それとともに、同発泡部を形成するときの発泡圧を利用して溶融した発泡剤非含有層を金型のキャビティ内に展延させ、同キャビティ内に発泡剤非含有層を充填することにより中実延在部を形成して、発泡金属成形体を製造する。
【0025】
このような第1の態様に係る方法のように、発泡成形時に発泡剤含有層を発泡させるとともに、同発泡剤含有層を発泡させたときの発泡圧を利用して、溶融状態の発泡剤非含有層を展延させることにより発泡金属成形体を製造することによって、発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在する中実延在部とが一体に成形され、且つ、同中実延在部が所定の部位から所望の形状を有するように成形された発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することができる。
【0026】
この場合、前記発泡剤含有層の体積V1、前記発泡剤非含有層の体積V2、前記発泡金属成形体の体積Vf、前記発泡金属成形体の密度ρ、及び、母材となる金属の密度Cが、以下の関係式(A)、(B)、及び(C)を満足するように前駆体を作製する。
V1/Vf≧0.1 ・・・(A)、
1≦V2/V1≦2 ・・・(B)、
V=C×(V1+V2)/ρ ・・・(C)。
【0027】
例えば前記中実延在部を0.5mm以上15mm以下の肉厚を有するような薄板状に成形して発泡金属成形体を製造する場合、金型のキャビティにおいて中実延在部を成形する空間部分が狭くなることから、発泡成形中に同キャビティ内を移動する溶融金属とキャビティ面との間における摩擦が大きくなる。このため、発泡成形中に発泡圧が適切に得られないときには、溶融した金属を中実延在部を成形するキャビティ内に充填させることができなくなる虞がある。
【0028】
これに対して、前駆体の作製時に、上述のようにV1/Vfが0.1以上で、且つ、V2/V1が2以下となるように前駆体が作製されていれば、体積V1の発泡剤含有層を発泡させることによって適切な発泡圧を確保することができる。これにより、同前駆体を発泡成形して例えば中実延在部が0.5mm以上15mm以下の肉厚を有するように発泡金属成形体を製造する場合であっても、発泡剤含有層から得られる発泡圧を利用することによって、溶融した発泡剤非含有層を容易に展延させてキャビティ内に確実に充填させることができる。このため、所望の形状を有する中実延在部を安定して形成することができる。
【0029】
しかも、V2/V1が1以上となるように前駆体が作製されていることにより、同前駆体の発泡成形中に、発泡剤含有層内で形成された気泡が発泡剤非含有層内に、特に中実延在部内に侵入することを抑制できる。このため、中実延在部に気泡が形成されて同中実延在部の強度が低下することを防止することができる。
【0030】
次に、本発明の製造方法における第2の態様としては、前記金型として、成形体本体部を成形する第1キャビティと、同第1キャビティに連続して形成され、中実延在部を成形する第2キャビティとを有する金型を使用する。更に、前駆体の発泡成形時に、前駆体を所定時間加熱することにより、発泡剤粉末の分解により生じる気泡を浮上させて第1キャビティ内に発泡部を形成する。それとともに、溶融した金属を自重により沈降させ、沈降した同溶融金属を発泡部の発泡圧により第2キャビティ内に展延させ、同第2キャビティ内に溶融金属を充填することにより、成形体本体部の所定部位に中実延在部を形成して、発泡金属成形体を製造する。
【0031】
即ち、第2の態様に係る方法では、発泡成形中に気泡を第1キャビティ内に浮上させるとともに溶融金属を沈降させ、更に、そのときに生じる第1キャビティ内の発泡圧を利用することにより沈降した溶融金属を第2キャビティ内に展延させて発泡金属成形体を製造する。
【0032】
これにより、発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在する中実延在部とが一体に成形され、且つ、同中実延在部が所定の部位から所望の形状を有するように成形された発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することができる。なお、第2の態様に係る方法を用いて発泡金属成形体を製造する場合は、溶融金属を沈降させて中実延在部を形成するため、同中実延在部が金型の底部側に形成される。
【0033】
この場合、前記前駆体における発泡剤粉末の添加量A、前駆体の体積Vp、及び、発泡金属成形体の体積Vfが、以下の関係式(D)及び(E)を満足するように前駆体を作製する。
0.1≦A≦4.0 ・・・(D)、
20≦Vp/Vf≦50 ・・・(E)。
【0034】
上述のように発泡剤粉末の添加量Aが0.1以上で、且つ、Vp/Vfが20以上となるように前駆体が作製されていれば、同前駆体を発泡成形するときに、金型の第1キャビティ内で適切な発泡圧を確保することができる。これにより、同前駆体を発泡成形して例えば中実延在部が0.5mm以上15mm以下の肉厚を有するように発泡金属成形体を製造する場合であっても、第1キャビティ内で生じる発泡圧を利用することによって、自重により沈降した溶融金属を第2キャビティ内に容易に展延させて確実に充填させることができる。このため、所望の形状を有する中実延在部を安定して形成することができる。
【0035】
しかも、前駆体の作製時に、発泡剤粉末の添加量Aが4.0以下で、且つ、Vp/Vfが50以下に制御されていることにより、発泡成形中に溶融金属内で形成された気泡を確実に浮上させて第1キャビティに移動させることができる。これにより、中実延在部内に気泡が侵入することを抑制して、中実延在部の強度が低下することを防止することができる。
【0036】
また、本発明の製造方法における第3の態様としては、前記金型として、成形体本体部を成形する第1キャビティと、中実延在部を成形する第2キャビティとを有し、第2キャビティには第1キャビティと連通する連通部が設けられ、且つ、連通部の断面における最小寸法Lが、発泡金属成形体内に形成される気泡の直径rよりも小さく設定された金型を使用する。更に、前駆体の発泡成形時に、前駆体を金型の第1キャビティ内に収容した状態で加熱することにより、同第1キャビティ内で溶融した金属を発泡させて発泡部を形成する。それとともに、その発泡部を形成するときの発泡圧を利用して同溶融金属の一部を第1キャビティから連通部を介して第2キャビティ内へ展延させるときに、溶融金属内の気泡を、同気泡の直径rよりも断面における最小寸法Lが小さく設定された連通部にて破壊して溶融金属内からガスを放出する。そして、気泡が破壊された溶融金属を、第1キャビティ内の発泡圧を利用することにより第2キャビティ内に展延させて充填することにより中実延在部を形成して、発泡金属成形体を製造する。
【0037】
このような第3の態様に係る方法を用いて発泡金属成形体を製造することによっても、発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在する中実延在部とが一体に成形され、且つ、同中実延在部が所定の部位から所望の形状を有するように成形された発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することができる。特に、この第3の態様に係る方法では、連通部の断面における最小寸法Lが気泡の直径rよりも小さく設定されているため、中実延在部内に気泡が形成又は浸入されることを防いで、中実延在部の強度が低下することを防止することができる。
【0038】
なお、第3の態様における連通部の断面における最小寸法Lとは、連通部の断面を見たときに、その断面の中心を通る直線の中で最小の長さとなる直線の長さ寸法を意味しており、例えば連通部の断面が円形の場合は、その円の直径の長さが最小寸法Lとなり、また、連通部の断面が楕円形の場合は、その楕円の短径の長さが最小寸法Lとなる。
【0039】
更に、本発明の製造方法における第4の態様としては、前記金型として、成形体本体部を成形する第1キャビティと、同第1キャビティに連通して中実延在部を成形する第2キャビティと、母材となる金属を前駆体とは別の場所で溶融して貯溜し、その貯溜した溶融金属を前駆体の加熱時に第2キャビティ内に流し込むことが可能な押湯部とを有する金型を使用する。更に、前駆体を発泡成形するときに、同前駆体を第1キャビティ内で発泡させて発泡部を形成する。それとともに、金型の押湯部に貯溜した溶融金属を第2キャビティ内に流し込んで充填することにより、同第2キャビティ内に中実延在部を形成して、発泡金属成形体を製造する。
【0040】
このような第4の態様に係る方法を用いて発泡金属成形体を製造することによっても、発泡部を有する成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在する中実延在部とが一体に成形され、且つ、同中実延在部が所定の部位から所望の形状を有するように成形された発泡金属成形体を容易に且つ低コストで製造することができる。
【0041】
この場合、金型の押湯部内に、第2キャビティの容積の106%以上の溶融金属を貯溜し、更に、前駆体の加熱時に、その押湯部内に貯溜した溶融金属を、4.0Pa以上の押湯圧力を保持しながら第2キャビティ内に流し込んで発泡金属成形体を製造する。
【0042】
このように押湯部内に貯溜して第2キャビティ内に流し込む溶融金属の容量を第2キャビティの容積の106%以上と多く設定することにより、同溶融金属を第2キャビティに充填した後に同第2キャビティ内で冷却するときに、溶融金属が凝固することにより体積収縮が生じても、その収縮量を補って所望の形状を有する中実延在部を安定して形成することができる。
【0043】
また、押湯部内に第2キャビティの容積の106%以上の容量で貯溜した溶融金属を、4.0Pa以上の押湯圧力を保持しながら第2キャビティ内に流し込むことにより、同溶融金属を第2キャビティ内に確実に充填して中実延在部を安定して形成することができる。これにより、発泡金属成形体の中実延在部に鋳造欠陥が発生することを防いで、中実延在部の強度が低下することを防止することができる。
【0044】
そして、上述のような本発明の発泡金属成形体の製造方法により製造された発泡金属成形体は、発泡部を有する軽量化された成形体本体部と、同成形体本体部の所定部位から延在して所望の形状を有する中実延在部とを一体に有しており、所定部分の強度が中実延在部により高められた発泡金属成形体となる。更に、本発明の発泡金属成形体は、接着剤や取付ネジ等を用いずに成形体本体部と中実延在部とが一体化されているため、リサイクル性に優れている。
【0045】
また、本発明の発泡金属成形体では、前記中実延在部が薄肉部分に好適に設けられており、特に、0.5mm以上15mm以下の肉厚を有する薄肉部分に好適に設けられている。このように成形体の薄肉部分が中実延在部により形成されていれば、同薄肉部分の強度を確実に向上させることができる。従って、本発明の発泡金属成形体は、例えばサッシの取付部等のように、薄肉に形成され、且つ、強度や耐久性が求められる部位を有する製品に極めて有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、本発明において、金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を作製する混合工程における具体的な方法や条件は特に限定されず、任意に変更することが可能である。
【0047】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法について説明する。
第1の実施形態に係る製造方法は、母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製する混合工程と、同混合工程にて得られた混合粉末を圧粉成形することにより前駆体を作製する圧粉成形工程と、同圧粉成形工程にて得られた前駆体を加熱して発泡成形することにより発泡金属成形体を製造する発泡成形工程とを有している。以下、各工程について順を追って詳細に説明する。
【0048】
第1の実施形態における混合工程では、金属粉末と発泡剤粉末とを混合することにより、前駆体において発泡剤含有層を形成する混合粉末(第1粉末)を調整し、更に、発泡剤非含有層を形成する第2粉末を第1粉末とは別に準備する。
【0049】
このとき、第1粉末に含有させる金属粉末としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、鉄、錫、鉛、又はこれらの少なくとも1種を含む合金の粉末が用いられる。この第1の実施形態では、発泡金属成形体の軽量化及び高強度化を図るために、アルミニウム粉末又はアルミニウムを含有する合金粉末が用いられており、特に、純アルミニウム粉末、又は、Al−Si系合金、Al−Si−Cu系合金、若しくはAl−Mg−Si系合金の粉末等が好適に使用される。
【0050】
また、第1粉末に含有させる前記発泡剤粉末としては、TiH2、MgH2、ZrH4等の水酸化金属系発泡剤、CaCO3、CaMg(CO32等の炭酸塩系発泡剤、及びAl(OH2)等の水酸化物系発泡剤等の各種発泡剤の粉末が用いられ、特に水酸化金属系発泡剤の粉末(その中でもTiH2粉末)が好適に用いられる。このような粉末を発泡剤粉末として用いることにより、後述する発泡成形工程にて前駆体を発泡成形するときに、適切な発泡圧を確実に確保することができる。
【0051】
更に、第1粉末の調製においては、上述の金属粉末と発泡剤粉末とを混合する他に、金属カルシウムやシリコンカーバイド等の増粘剤、SiO2やTiB2等の表面平滑剤、及び、Al23等の安定化剤等が必要に応じて加えられて混合される。なお、第1粉末の調製においては、各粉末を均一に混合することができれば、その混合方法等は特に限定されない。
【0052】
一方、発泡剤非含有層を形成する第2粉末しては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、鉄、錫、鉛、又はこれらの少なくとも1種を含む合金の粉末が用いられる。なお、この第1の実施形態では、第2粉末として第1粉末に含有させる金属粉末と同じ材質の金属粉末が用いられている。これにより、発泡金属成形体を製造したときに、発泡部と中実部とを同質の材料で形成することができるため、リサイクル性に優れた発泡金属成形体を得ることができる。
【0053】
なお、この第2粉末にも、前記第1粉末と同様に、金属カルシウムやシリコンカーバイド等の増粘剤、SiO2やTiB2等の表面平滑剤、及び、Al23等の安定化剤等を必要に応じて添加することができる。特に、第2粉末に増粘剤等を添加する場合には、第1粉末に添加したものと同じ添加剤を、第1粉末と同じ割合で添加することが好ましい。
【0054】
次に、前記圧粉成形工程では、上述の混合工程で調製した第1粉末から形成される発泡剤含有層と、第2粉末から形成される発泡剤非含有層とを有する前駆体を作製する。具体的には、例えばプレス装置の成形型内に第2粉末を充填した後、同第2粉末の上に第1粉末を充填し、更にこれらの粉末を室温でプレスすることにより、第2粉末から形成された発泡剤非含有層と、同発泡剤非含有層の上に第1粉末から形成された発泡剤含有層の2つの層を有する冷間圧粉体を作製する。
【0055】
続いて、得られた冷間圧粉体を例えば300℃以上500℃以下の温度まで加熱した後、押出プレスを行って所定の形状に成形する。このとき、金属粉末の表面に形成された酸化膜が破壊されるとともに、金属粉末同士がせん断変形力により互いに結合する。これにより、図1(a)に示すような発泡剤含有層11aと発泡剤非含有層11bの2つの層を有する二層前駆体11が作製される。
【0056】
このとき、第1の実施形態では、二層前駆体11における発泡剤含有層11aの体積V1及び発泡剤非含有層11bの体積V2、同二層前駆体11から得られる発泡金属成形体16の体積Vf及び密度ρ、並びに、母材となる金属の密度Cが、以下の関係式(A)、(B)、及び(C)を満足するように二層前駆体11を作製する。
V1/Vf≧0.1 ・・・(A)、
1≦V2/V1≦2 ・・・(B)、
V=C×(V1+V2)/ρ ・・・(C)。
【0057】
例えば、前記混合工程及び圧粉成形工程を通して作製される二層前駆体11において、V1/Vfの値が0.1よりも小さい場合、又は、V2/V1の値が2よりも大きい場合には、後述する発泡成形工程において二層前駆体11の発泡成形を行ったときに、発泡剤含有層11aが発泡することによって得られる発泡圧が不十分となり、金型12のキャビティ13内に溶融金属(特に、中実延在部を形成する溶融金属)を安定して充填できなくなる虞がある。また、V2/V1の値が1よりも小さい場合には、発泡成形時に中実延在部を構成する部分にも気泡が侵入し易くなり、同中実延在部の強度を低下させる虞がある。
【0058】
これに対して、上記関係式(A)、(B)、及び(C)を満足するように二層前駆体11を作製することにより、発泡成形時に適切な発泡圧を安定して確保できるため、溶融金属をキャビティ13内に確実に充填させて所望の形状を有する発泡金属成形体16を安定して製造することができる。更に、発泡成形時に中実延在部19を構成する部分に気泡が侵入することを抑制できるため、同中実延在部19の強度が気泡に形成により低下することを防止できる。
【0059】
次に、前記発泡成形工程では、上述の圧粉成形工程にて得られた二層前駆体11を、図1(a)に示すように、発泡剤非含有層11bが発泡剤含有層11aよりも中実延在部19を成形する領域側に配されるように金型12のキャビティ13内に収容し、同金型12を密閉する。このとき、発泡成形工程に用いられる金型12のキャビティ13は、発泡金属成形体16の成形体本体部18を成形する領域と、その成形体本体部18の所定部位から延在する中実延在部19を成形する領域とを有している。従って、例えば中実延在部19が0.5mm以上15mm以下の肉厚を有するように発泡金属成形体16を製造する場合には、キャビティ13の中実延在部19を成形する空間部分が、その中実延在部19の肉厚の大きさ応じて狭く形成される。
【0060】
また、この発泡成形工程に用いられる金型12のキャビティ面には、二層前駆体11を構成する物質と反応することなく、且つ、気体が通過可能な多孔質の表面処理が施されている。キャビティ面に施される前記表面処理としては、例えばCr系皮膜処理、Si系皮膜処理、窒化処理等を用いることができる。
【0061】
このように金型キャビティ面にCr系皮膜処理等の表面処理を行うことにより、キャビティ面に離型剤を塗布することなく発泡成形を行うことができるため、発泡金属成形体の表面に離型剤の粉末形状が転写されることがなく、より平滑な成形体表面を容易に得ることが可能となる。更に、このようにキャビティ面に気体が通過可能な多孔質の表面処理層が形成されていれば、同表面処理層を介してキャビティ内の空気を金型の分割面に移動させて、その空気を金型分割面から金型の外部に排出させることが可能となる。
【0062】
その後、二層前駆体11が上述のように収容された金型12を加熱炉に投入し、更に、二層前駆体11を金型12内に収容した状態で、母材となる金属の固相線温度よりも高い温度に設定された発泡温度まで加熱する。これにより、二層前駆体11内の発泡剤含有層11a及び発泡剤非含有層11bでは金属粉末を溶融させるとともに、発泡剤含有層11aでは発泡剤粉末から発生した発泡ガスにより溶融金属内で気泡(発泡セル)17を形成して成長させることによって、発泡を生じさせる。
【0063】
このとき、第1の実施形態におけるに二層前駆体11は、上述のように上記関係式(A)、(B)、及び(C)を満足するように形成されているため、二層前駆体11の発泡剤含有層11aが図1(b)に示すように発泡することにより、適切な発泡圧を安定して確保することができる。
【0064】
このように適切な発泡圧が得られることにより、発泡剤含有層11aを膨張させて金型内に充填させるとともに、発泡剤粉末を含まない溶融した発泡剤非含有層11bも発泡剤含有層11aから、図1(b)の矢印の方向に発泡圧を受けるため、同発泡剤非含有層11bを金型12のキャビティ13内に展延させて確実に充填させることができる。
【0065】
特に、第1の実施形態では、二層前駆体1を発泡成形して例えば中実延在部が0.5mm以上15mm以下の薄い肉厚を有するように発泡金属成形体を製造する場合であっても、発泡剤含有層11aから得られる発泡圧を利用することによって、溶融した発泡剤非含有層11bをキャビティ13内に展延させて安定して充填させることができる。なお、このとき、溶融した発泡剤非含有層11bの発泡剤含有層11a側近傍に、気泡が発泡剤含有層11aから侵入して形成されることもある。
【0066】
そして、発泡剤含有層11aと発泡剤非含有層11bとを金型12のキャビティ13内に充填させた後、これらの溶融している発泡剤含有層11a及び発泡剤非含有層11bを冷却して凝固させる。
【0067】
このとき、例えば金型12を加熱炉から取り出し、同金型12に対してノズルから水を噴霧することにより、発泡剤含有層11a及び発泡剤非含有層11bの表面を10℃/s以上の冷却速度にて急冷する。このように発泡体表面が10℃/s以上の冷却速度にて急冷されることにより、金属の凝固収縮に起因して成形体表面に凹部が形成されることを効果的に防止することができるため、成形体表面を平滑に形成することができる。
【0068】
更に、発泡剤含有層を急冷することにより、同発泡剤含有層内の各気泡が互いに連結することも防止できるため、微細なセル組織を安定して形成することができる。なお、この冷却処理では、発泡温度から発泡体が完全に凝固する温度(例えば500℃)までの温度域にて水の噴霧による急冷を行うことが効果的であり、凝固温度よりも低い温度域では、水の噴霧による急冷を続けても良く、急冷から放冷に切り換えて冷却を行っても良い。
【0069】
このような冷却を行って発泡剤含有層11aと発泡剤非含有層11bとをそれぞれ凝固させることにより、図1(c)に示したように、発泡した発泡剤含有層11aから形成される発泡部14と、展延した発泡剤非含有層11bから形成される中実部15とが一体に成形された所望の形状を有する発泡金属成形体16を製造することができる。
【0070】
そして、このようにして製造された発泡金属成形体16は、図1(d)に示したように、発泡部14と中実部15とにより形成される成形体本体部18と、同成形体本体部18の所定部位から延在し、中実部15により形成される2つの中実延在部19とを一体に有している。また、同発泡金属成形体16は、前述のように発泡剤非含有層11bの発泡剤含有層11a側近傍に気泡17が形成されることはあるものの、発泡成形時の発泡圧が適切に制御されているため、2つの中実延在部19内に気泡17が形成されることは実質的になく、中実延在部19の強度低下が生じることを防止している。
【0071】
以上のように、第1の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法によれば、一回の発泡成形を行うことによって、製造する成形体の寸法や形状が制限されることなく、成形体本体部18と中実延在部19とが一体に成形された発泡金属成形体16を安定して得ることができる。このため、製造工程の簡略化や製造コストの削減を容易に達成することができる。
【0072】
特に、第1の実施形態の製造方法では、発泡剤含有層11aにて生じる発泡圧を利用することにより、溶融した発泡剤非含有層11bをキャビティ13内に展延により充填させて中実延在部19を成形している。このため、中実延在部19を成形体本体部18の所定の部位に意図的に形成できるとともに、同中実延在部19を所望の形状に、例えば0.5mm以上15mm以下の肉厚を有する薄肉の形状に容易に形成することができる。
【0073】
そして、この第1の実施形態において得られた発泡金属成形体16は、成形体本体部18が気泡を有する発泡部14と僅かの中実部15とにより形成されているため、軽量化されているとともに、例えば肉厚が0.5mm以上15mm以下となる薄肉の部位等の中実延在部19が中実部15により形成されているため、当該中実延在部19の強度や耐久性を確実に向上させることができる。
【0074】
また、同発泡金属成形体16は、接着剤や取付ネジ等を用いずに成形体本体部18と中実延在部19とが一体化されており、且つ、発泡部14と中実部15とが同質の材料で形成されているため、安価でリサイクル性にも優れている。従って、このような発泡金属成形体16は、サッシ等のような軽量の製品に極めて有効に適用することができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法について説明する。
第2の実施形態に係る製造方法は、母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製する混合工程と、同混合工程にて得られた混合粉末を圧粉成形することにより前駆体を作製する圧粉成形工程と、同圧粉成形工程にて得られた前駆体を加熱して発泡成形することにより発泡金属成形体を製造する発泡成形工程とを有している。
【0076】
第2の実施形態における混合工程では、金属粉末と発泡剤粉末とを均一に混合して、前駆体を作製するための混合粉末を調製する。
前記金属粉末としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、鉄、錫、鉛、又はこれらの少なくとも1種を含む合金の粉末が用いられる。この第2の実施形態では、前記第1の実施形態と同様に、アルミニウム粉末又はアルミニウムを含有する合金粉末が好適に用いられる。
【0077】
また、前記発泡剤粉末としては、TiH2、MgH2、ZrH4等の水酸化金属系発泡剤、CaCO3、CaMg(CO32等の炭酸塩系発泡剤、及びAl(OH2)等の水酸化物系発泡剤等の各種発泡剤の粉末が用いられ、特に水酸化金属系発泡剤の粉末(その中でもTiH2粉末)が好適に用いられる。更に、この混合工程では、上述の金属粉末と発泡剤粉末とを混合する他に、増粘剤、表面平滑剤、及び、安定化剤等が必要に応じて加えられて混合される。なお、この混合粉末の調製においては、各粉末を均一に混合することができれば、その混合方法等は特に限定されるものではない。
【0078】
次に、前記圧粉成形工程では、上述の混合工程で調製した混合粉末を室温でプレスして冷間圧粉体を作製する。続いて、得られた冷間圧粉体を例えば300℃以上500℃以下の温度まで加熱した後、押出プレスを行って所定の形状に成形する。これにより、前駆体が作製される。
【0079】
この場合、第2の実施形態では、上述の混合工程及び圧粉成形工程を通して、発泡剤粉末の添加量A、前駆体の体積Vp、及び、発泡金属成形体の体積Vfが、以下の関係式(D)及び(E)を満足するように前駆体を作製する。
0.1≦A≦4.0 ・・・(D)、
20≦Vp/Vf≦50 ・・・(E)。
【0080】
例えば、混合工程及び圧粉成形工程を通して作製される前駆体において、発泡剤粉末の添加量Aが0.1よりも小さい場合、又は、Vp/Vfの値が20よりも小さい場合には、後述する発泡成形工程において前駆体の発泡成形を行ったときに発泡圧が不十分となり、金型のキャビティ内に溶融金属(特に、中実延在部を形成する溶融金属)を安定して充填できなくなる虞がある。また、発泡剤粉末の添加量Aが4.0よりも大きい場合、又は、Vp/Vfの値が50よりも大きい場合には、発泡成形時に中実延在部を構成する部分にも気泡が侵入してしまい、同中実延在部の強度を低下させる虞がある。
【0081】
これに対して、混合工程及び圧粉成形工程を通して上記関係式(D)及び(E)を満足するように前駆体を作製することにより、発泡成形時に適切な発泡圧を安定して確保できるため、溶融金属をキャビティ内に確実に充填させて所望の形状を有する発泡金属成形体を安定して製造することができる。更に、発泡成形時に、中実延在部を構成する部分に気泡が侵入することを抑制できるため、中実延在部の強度が低下することを防止できる。
【0082】
次に、前記発泡成形工程では、上述の圧粉成形工程にて得られた前駆体21を、図2(a)に示すように金型22内に収容し、同金型22を密閉する。このとき、発泡成形工程に用いられる金型22は、成形体本体部28を成形する第1キャビティ23aと、同第1キャビティ23aの下部に連続して形成され、中実延在部29を成形する第2キャビティ23bとを有している。また、この発泡成形工程に用いられる金型22のキャビティ面には、前記第1の実施形態と同様に、前駆体21を構成する物質と反応することなく、且つ、気体が通過可能な多孔質の表面処理が施されている。
【0083】
その後、前駆体21を収容した金型22を加熱炉に投入し、同前駆体21を金型22内に収容した状態で、母材となる金属の固相線温度よりも高い温度に設定された発泡温度まで加熱する。これにより、前駆体21に含有させた金属粉末を溶融させるとともに、発泡剤粉末から発生した発泡ガスにより溶融金属内で気泡(発泡セル)27を形成して成長させることによって、発泡を生じさせる。
【0084】
このとき、第2の実施形態では、例えば前駆体21を緩やかに加熱し、更に金属の固相線温度よりも高い温度にて所定時間加熱保持することにより、溶融金属内に形成される気泡27を成長させながら、図2(b)に示すように、溶融金属内の気泡27をその浮力により上方に浮上させるとともに、溶融金属をその自重により下方に沈降させる。
【0085】
更に、この第2の実施形態におけるに前駆体21は、上述のように上記関係式(D)及び(E)を満足するように形成されているため、溶融金属内に気泡27が形成されて成長することにより、適切な発泡圧を安定して確保することができる。
【0086】
このように適切な発泡圧が得られることにより、図2(c)に示すように、気泡27が内部に形成されている溶融金属を金型22の第1キャビティ23a内に確実に充填させるとともに、沈降した気泡を含まない溶融金属が発泡圧を受けることにより、同溶融金属を金型22の第2キャビティ23b内に展延させて確実に充填させることができる。
【0087】
特に、第2の実施形態では、前駆体21を発泡成形して例えば中実延在部29が0.5mm以上15mm以下の薄い肉厚を有するように発泡金属成形体26を製造する場合であっても、適切な発泡圧が安定して確保できるため、溶融金属を金型22の第2キャビティ23b内に展延させて、安定して充填させることができる。
【0088】
そして、図2(c)に示したように金型22の第1及び第2キャビティ23a,23b内に溶融金属を充填させた後、同溶融金属を冷却して凝固させる。このとき、例えば金型22を加熱炉から取り出し、同金型22に対してノズルから水を噴霧することにより、溶融金属の表面を10℃/s以上の冷却速度にて急冷する。
【0089】
このような冷却を行って溶融金属を凝固させることにより、図2(c)に示したように、金型22の上部側に形成される発泡部24と、金型の下部側(底部側)に形成される中実部25とが一体に成形された所望の形状を有する発泡金属成形体26を製造することができる。
【0090】
そして、このようにして製造された発泡金属成形体26は、図2(d)に示したように、発泡部24と中実部25とにより形成される成形体本体部28と、同成形体本体部28から延在し、中実部25により形成される中実延在部29とを一体に有している。
【0091】
また、同発泡金属成形体26は、上記関係式(D)及び(E)を満足するように作製された前駆体21から製造されているため、発泡成形時の発泡圧が適切に制御されており、中実延在部29内に気泡27が形成されることはなく、中実延在部19の強度低下が生じることを防止している。
【0092】
以上のように、第2の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法によれば、一層の前駆体21の加熱条件を制御して一回の発泡成形を行うことによって、気泡27の浮上と溶融金属の沈降とを生じさせて成形体本体部28と中実延在部29とが一体に成形された発泡金属成形体26を容易に得ることができる。
【0093】
特に、第2の実施形態の製造方法では、発泡圧を利用することによって、溶融金属を第2キャビティ23b内に展延により充填させて中実延在部29を成形しているため、同中実延在部29を所定の部位で所望の形状に、例えば0.5mm以上15mm以下の肉厚を有する薄肉の形状に容易に形成することができる。
【0094】
そして、この第2の実施形態において得られた発泡金属成形体26も、前記第1の実施形態と同様に、軽量であるとともに、中実延在部29により所定部分の強度や耐久性を確実に向上させることができる。また、同発泡金属成形体26は、接着剤や取付ネジ等を用いずに成形体本体部28と中実延在部29とが一体化されており、且つ、発泡部24と中実部25とが同質の材料で形成されているため、安価でリサイクル性にも優れている。
【0095】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法について説明する。
第3の実施形態に係る製造方法は、母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製する混合工程と、同混合工程にて得られた混合粉末を圧粉成形することにより前駆体を作製する圧粉成形工程と、同圧粉成形工程にて得られた前駆体を加熱して発泡成形することにより発泡金属成形体を製造する発泡成形工程とを有している。
【0096】
第3の実施形態における混合工程では、金属粉末と発泡剤粉末とを均一に混合して、前駆体を作製するための混合粉末を調製する。なお、第3の実施形態の混合工程において用いられる金属粉末等は、前記第2の実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0097】
次に、前記圧粉成形工程では、上述の混合工程で調製した混合粉末を室温でプレスして冷間圧粉体を作製する。続いて、得られた冷間圧粉体を例えば300℃以上500℃以下の温度まで加熱した後、押出プレスを行って所定の形状に成形する。これにより、前駆体が作製される。
【0098】
更に、前記発泡成形工程では、上述の圧粉成形工程にて得られた前駆体31を、図3(a)に示すように金型32内に収容し、同金型32を密閉する。
このとき、発泡成形工程に用いられる金型32は、成形体本体部を成形する第1キャビティ33aと、中実延在部を成形する第2キャビティ33bとを有している。また、第2キャビティ33bには、第1キャビティ33aと連通する連通部33cが設けられている。特に、第3の実施形態において用いられる金型32は、連通部33cの断面における最小寸法Lが、製造される発泡金属成形体36内の気泡37の直径rよりも小さく設定されて形成されている。また、この金型32のキャビティ面には、前記第1の実施形態等と同様に、前駆体31を構成する物質と反応することなく、且つ、気体が通過可能な多孔質の表面処理が施されている。
【0099】
このような金型32内に前駆体31を収容した後、その前駆体31を収容した金型32を加熱炉に投入して、同前駆体31を母材となる金属の固相線温度よりも高い温度に設定された発泡温度まで加熱する。これにより、前駆体31に含有させた金属粉末を溶融させるとともに、発泡剤粉末から発生した発泡ガスにより溶融金属内で気泡37を形成して成長させる。これによって、前駆体31に発泡を生じさせて溶融金属を膨張させる。
【0100】
その後、溶融金属は、発泡が進むことにより第1キャビティ33a内に充填されるとともに連通部33cに進入し、更に、同溶融金属が発泡圧を受けることにより、図3(b)に示すように連通部33cを介して第2キャビティ33b内に展延する。
【0101】
このとき、金型32の連通部33cは、その断面における最小寸法Lが上述のように気泡37の直径rよりも小さく設定されて形成されているため、溶融金属が連通部33c内に展延するときに、同溶融金属内に形成されている気泡37が、図4に示すように溶融金属の表面に表出する。
【0102】
更に、金型32のキャビティ面には、上述のように気体が通過可能な多孔質の表面処理層が形成されているため、溶融金属が連通部33c内を展延するときに気泡37が溶融金属表面に表出することにより、気泡37内の発泡ガスがキャビティ面の表面処理層を介して外部に放出され、溶融金属内で気泡37が破壊される。その結果、溶融金属は、その内部に気泡37が形成されていない中実の状態で第2キャビティ33b内に展延して充填される。
【0103】
なお、この第3の実施形態においては、金型32の連通部33cの断面における最小寸法Lが気泡37の直径rよりも大きく形成されている場合には、第2キャビティ33b内に充填される溶融金属内に気泡37が残存してしまうが、金型32の連通部33cの断面における最小寸法L、更には、同連通部33cの長さ方向における長さ寸法や発泡成形時の発泡圧を制御することによって、溶融金属が連通部33c内を展延するときに同溶融金属内の気泡37をより確実に破壊することができる。
【0104】
そして、図3(c)に示したように金型32の第1及び第2キャビティ33b内に溶融金属を充填させた後、同溶融金属を冷却して凝固させることにより、発泡部34と、同発泡部34の上方に形成された中実部35とが一体に成形されており、しかも、肉厚が例えば0.5mm以上15mm以下となるような所望の形状を有する発泡金属成形体36を製造することができる。
【0105】
このようにして製造された発泡金属成形体36は、図3(d)に示したように、発泡部34により形成される成形体本体部38と、同成形体本体部38から延在し、中実部35により形成される中実延在部39とを一体に有している。また、この発泡金属成形体36は、前記第1の実施形態等と同様に、軽量であるとともに、中実延在部39により所定部分の強度や耐久性を確実に向上させることができる。
【0106】
更に、同発泡金属成形体36は、接着剤や取付ネジ等を用いずに成形体本体部38と中実延在部39とが一体化されており、且つ、発泡部34と中実部35とが同質の材料で形成されているため、安価でリサイクル性にも優れている。
【0107】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る発泡金属成形体の製造方法について説明する。
第4の実施形態に係る製造方法は、母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製する混合工程と、同混合工程にて得られた混合粉末を圧粉成形することにより前駆体を作製する圧粉成形工程と、同圧粉成形工程にて得られた前駆体を加熱して発泡成形するとともに溶融金属を流し込むことにより発泡金属成形体を製造する発泡成形工程とを有している。
【0108】
第4の実施形態における混合工程では、金属粉末と発泡剤粉末とを均一に混合して、前駆体を作製するための混合粉末を調製する。なお、第4の実施形態の混合工程において用いられる金属粉末等は、前記第2及び第3の実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0109】
次に、前記圧粉成形工程では、上述の混合工程で調製した混合粉末を室温でプレスして冷間圧粉体を作製する。続いて、得られた冷間圧粉体を例えば300℃以上500℃以下の温度まで加熱した後、押出プレスを行って所定の形状に成形する。これにより、前駆体が作製される。
【0110】
更に、前記発泡成形工程では、上述の圧粉成形工程にて得られた前駆体41を、図5(a)に示すように金型42内に収容し、同金型42を密閉する。
この第4の実施形態の発泡成形工程に用いられる金型42は、成形体本体部を成形する第1キャビティ43aと、第1キャビティ43aに連通して中実延在部を成形する第2キャビティ43bと、溶融金属を貯溜し、その貯溜した溶融金属を第2キャビティ43b内に流し込むことが可能な押湯部43cとを有している。
【0111】
更に、この金型42は、前駆体41の発泡成形を行なう際に、発泡金属成形体46の母材となる金属を溶融した溶湯を、押湯部43c内に第2キャビティ43bの容積の106%以上の容量で貯溜している。
なお、第4の実施形態において用いられる金型42のキャビティ面にも、前記第1の実施形態等と同様に、前駆体41を構成する物質と反応することなく、且つ、気体が通過可能な多孔質の表面処理が施されている。
【0112】
上述のように前駆体41を金型42内に収容した後、同前駆体41を母材となる金属の固相線温度よりも高い温度に設定された発泡温度まで加熱する。これにより、前駆体41に含有させた金属粉末を溶融させるとともに、発泡剤粉末から発生した発泡ガスにより溶融金属内で気泡を形成して成長させる。これによって、前駆体41に発泡を生じさせて溶融金属を膨張させる。
【0113】
また、この発泡成形工程では、上述のように前駆体41を発泡させるとともに、押湯部43cに貯溜した溶融金属を、4.0Pa以上の押湯圧力を保持しながら第2キャビティ43b内に流し込む。これにより、金型42の第1キャビティ43a内には、内部に気泡が形成された溶融金属がその発泡圧を受けて充填されるとともに、第2キャビティ43b内には、押湯部43cに貯溜されていた溶融金属が押湯圧力を受けて充填される。
【0114】
このとき、例えば金型42の押湯部43c内に貯溜した溶融金属の容量が、第2キャビティ43bの容積の106%よりも少ない場合には、その貯溜していた溶融金属を第2キャビティ43b内に充填した後、同溶融金属を冷却して凝固させたときに、同金属が凝固収縮することにより第2キャビティ43内に隙間が形成されてしまい、所望の形状を有する発泡金属成形体46が得られなくなる虞がある。
【0115】
また、押湯部43cに貯溜した溶融金属を第2キャビティ43b内に流し込む際に、その押湯圧力が4.0Pa未満であった場合、押湯圧力の不足により溶融金属を第2キャビティ43b内に十分に充填することができず、製造された発泡金属成形体46の中実部45に鋳造欠陥が発生する虞がある。
【0116】
従って、第4の実施形態のように、金型42の押湯部43c内に貯溜する溶融金属の容量を第2キャビティ43bの容積の106%以上にするとともに、その押湯部43cに貯溜した溶融金属を第2キャビティ43b内に流し込む際の押湯圧力を4.0Pa以上に設定することにより、溶融金属を第2キャビティ43b内に安定して充填することができるとともに、その後に同溶融金属を冷却するときに、金属の凝固収縮が生じてもその金属の体積収縮量を過剰な金属により十分に補うことができる。これにより、中実部45を所望の形状に安定して成形できるとともに、当該中実部45に鋳造欠陥が発生することを確実に防止することができる。
【0117】
そして、図5(b)に示したように金型42の第1キャビティ43a内に、気泡が形成された溶融金属を充填させ、且つ、第2キャビティ43b内に、気泡が形成されていない溶融金属を充填させた後、その第1及び第2キャビティ43a,43b内の溶融金属を冷却して凝固させる。
【0118】
これにより、発泡部44と、同発泡部44の所定部位から延在した中実部45とが一体に成形された所望の形状を有する発泡金属成形体46を製造することができる。また、このようにして製造された発泡金属成形体36は、図4(c)に示したように、発泡部44により形成される成形体本体部48と、同成形体本体部48の所定部位から延在し、中実部45により形成される中実延在部49とを一体に有している。
【0119】
以上のように、第4の実施形態に係る発泡金属成形体46の製造方法によれば、金型42内で前駆体41を発泡させるとともに、同金型42内に前駆体41とは別に溶融金属を流し込むことによって、製造する成形体の寸法や形状が制限されることなく、成形体本体部48と中実延在部49とが一体に成形された発泡金属成形体46を容易に得ることができる。
【0120】
また、第4の実施形態の製造方法では、金型42の第2キャビティ43b内に溶融金属を所定の押湯圧力で流し込むことにより充填させて中実延在部49(中実部45)を成形している。このため、中実延在部49を発泡部44の所定の部位に意図的に形成できるとともに、同中実延在部49を所望の形状に、例えば0.5mm以上15mm以下の肉厚を有する薄肉の形状に容易に形成することができる。
【0121】
そして、この第4の実施形態において得られた発泡金属成形体46も、前記第1の実施形態等と同様に、軽量であるとともに、中実延在部49により所定部分の強度や耐久性を確実に向上させることができる。また、同発泡金属成形体46は、接着剤や取付ネジ等を用いずに成形体本体部48と中実延在部49とが一体化されており、且つ、発泡部44と中実部45とが同質の材料で形成されているため、安価でリサイクル性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】第1の実施形態において前駆体を発泡成形して発泡金属成形体を製造する過程を模式的に説明する説明図である。
【図2】第2の実施形態において前駆体を発泡成形して発泡金属成形体を製造する過程を模式的に説明する説明図である。
【図3】第3の実施形態において前駆体を発泡成形して発泡金属成形体を製造する過程を模式的に説明する説明図である。
【図4】第3の実施形態の発泡成形工程において、溶融金属が金型の連通部内を展延するときの気泡の状態を模式的に示す要部拡大図である。
【図5】第4の実施形態において前駆体を発泡成形して発泡金属成形体を製造する過程を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0123】
11 二層前駆体
11a 発泡剤含有層
11b 発泡剤非含有層
12 金型
13 キャビティ
14 発泡部
15 中実部
16 発泡金属成形体
17 気泡(発泡セル)
18 成形体本体部
19 中実延在部
21 前駆体
22 金型
23a 第1キャビティ
23b 第2キャビティ
24 発泡部
25 中実部
26 発泡金属成形体
27 気泡(発泡セル)
28 成形体本体部
29 中実延在部
31 前駆体
32 金型
33a 第1キャビティ
33b 第2キャビティ
33c 連通部
34 発泡部
35 中実部
36 発泡金属成形体
37 気泡
38 成形体本体部
39 中実延在部
41 前駆体
42 金型
43a 第1キャビティ
43b 第2キャビティ
43c 押湯部
44 発泡部
45 中実部
46 発泡金属成形体
48 成形体本体部
49 中実延在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材となる金属粉末と発泡剤粉末とを混合して混合粉末を調製し、同混合粉末を圧粉成形して前駆体(11,21,31,41) を作製し、同前駆体(11,21,31,41) を金型(12,22,32,42) に収容した状態で加熱し発泡成形することにより、気泡が形成された発泡部(14,24,34,44) と気泡が形成されていない中実部(15,25,35,45) とを有する発泡金属成形体(16,26,36,46) を製造する発泡金属成形体の製造方法であって、
前記前駆体(11,21,31,41) の発泡成形時に、少なくとも前記発泡部(14,24,34,44) を有する成形体本体部(18,28,38,48) と、同成形体本体部(18,28,38,48) の所定部位から延在し、前記中実部(15,25,35,45) により形成される中実延在部(19,29,39,49) とを一体に成形することを特徴とする発泡金属成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形体本体部(18,28,38,48) の母材となる金属と、前記中実延在部(19,29,39,49) の金属とに同じ材質の金属を使用する請求項1記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項3】
前記前駆体(11)の作製時に、同前駆体(11)内に前記発泡剤粉末を含有する発泡剤含有層(11a)と前記発泡剤粉末を含有しない発泡剤非含有層(11b)とを形成し、
作製された前記前駆体(11)を加熱することにより、前記前駆体(11)の発泡剤含有層(11a) を発泡させて前記発泡部(14)を形成するとともに、同発泡部(14)を形成するときの発泡圧を利用して、溶融した前記発泡剤非含有層(11b) を前記金型(12)のキャビティ(13)内に展延させて前記中実部(15)を形成し、同中実部(15)により前記中実延在部(19)を形成する、
請求項1又は2記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡剤含有層(11a) の体積V1、前記発泡剤非含有層(11b) の体積V2、前記発泡金属成形体(16)の体積Vf、前記発泡金属成形体(16)の密度ρ、及び、母材となる金属の密度Cが、以下の関係式(A)、(B)、及び(C)を満足するように前記前駆体(11)を作製する請求項3記載の発泡金属成形体の製造方法。
V1/Vf≧0.1 ・・・(A)
1≦V2/V1≦2 ・・・(B)
V=C×(V1+V2)/ρ ・・・(C)
【請求項5】
前記金型として、前記成形体本体部(28)を成形する第1キャビティ(23a) と、同第1キャビティ(23a) に連続して形成され、前記中実延在部(29)を成形する第2キャビティ(23b) とを有する金型(22)を使用し、
前記前駆体(21)の発泡成形時に、前記前駆体(21)を母材となる金属の固相線温度以上の温度にて所定時間加熱することにより、前記発泡剤粉末の分解により生じる気泡(27)を浮上させるとともに同気泡(27)を成長させて前記第1キャビティ(23a) 内に前記発泡部(24)を形成するとともに、溶融した前記金属を自重により沈降させ、沈降した同溶融金属を前記前記発泡部(24)の発泡圧により前記第2キャビティ(23b) 内に展延させて前記中実延在部(29)を形成する、
請求項1又は2記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体(21)における前記発泡剤粉末の添加量A、前記前駆体(21)の体積Vp、及び、前記発泡金属成形体(26)の体積Vfが、以下の関係式(D)及び(E)を満足するように前記前駆体(21)を作製する請求項5記載の発泡金属成形体の製造方法。
0.1≦A≦4.0 ・・・(D)
20≦Vp/Vf≦50 ・・・(E)
【請求項7】
前記金型として、前記成形体本体部(38)を成形する第1キャビティ(33a) と、前記中実延在部(39)を成形する第2キャビティ(33b) とを有し、前記第2キャビティ(33b) には前記第1キャビティ(33a) と連通する連通部(33c) が設けられ、前記連通部(33c) の断面における最小寸法Lが、前記発泡金属成形体(36)内に形成される気泡(37)の直径rよりも小さく設定された金型(32)を使用し、
前記前駆体(31)の発泡成形時に、前記前駆体(31)を前記金型(32)の前記第1キャビティ(33a) 内に収容した状態で加熱することにより、同第1キャビティ(33a) 内で溶融した金属を発泡させて前記発泡部(34)を形成するとともに、前記発泡部(34)を形成するときの発泡圧を利用して同溶融金属の一部を前記第1キャビティ(33a) から前記連通部(33c) を介して前記第2キャビティ(33b) 内へ展延させるときに、前記溶融金属内の気泡(37)を前記連通部(33c) にて破壊することにより前記第2キャビティ(33b) 内に前記中実延在部(39)を形成する、
請求項1又は2記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項8】
前記金型として、前記成形体本体部(48)を成形する第1キャビティ(43a) と、同第1キャビティ(43a) に連通して前記中実延在部(49)を成形する第2キャビティ(43b) と、母材となる金属を前記前駆体(41)とは別の場所で溶融して貯溜し、その貯溜した溶融金属を前記前駆体(41)の加熱時に前記第2キャビティ(43b) 内に流し込むことが可能な押湯部(43c) とを有する金型(42)を使用し、
前記前駆体(41)を発泡成形するときに、同前駆体(41)を前記第1キャビティ(43a) 内で発泡させて前記発泡部(44)を形成するとともに、前記押湯部(43c) に貯溜した溶融金属を前記第2キャビティ(43b) 内に流し込むことにより、同第2キャビティ(43b) 内に前記中実延在部(49)を形成する、
請求項1又は2記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項9】
前記金型(42)の前記押湯部(43c) 内に、前記第2キャビティ(43b) の容積の106%以上の容量で前記溶融金属を貯溜し、
前記前駆体(41)の加熱時に、前記押湯部(43c) 内に貯溜した前記溶融金属を、4.0Pa以上の押湯圧力を保持しながら前記第2キャビティ(43b) 内に流し込む、
請求項8記載の発泡金属成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の発泡金属成形体の製造方法により製造されたことを特徴とする発泡金属成形体。
【請求項11】
前記中実延在部(19,29,39,49) が薄肉部分に設けられてなる請求項10記載の発泡金属成形体。
【請求項12】
前記中実延在部(19,29,39,49) が0.5mm以上15mm以下の肉厚を有して形成されてなる請求項11記載の発泡金属成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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