説明

発電淡水化方法および装置

【課題】 発電装置の排熱を利用して海水を淡水化するとともに、発電装置の効率を高める。
【解決手段】 発電機2を駆動するガスタービン1の排気と海水とを熱交換する第1の熱交換器6と、ガスタービンの空気圧縮段10から抽出した圧縮空気と海水とを熱交換する第2の熱交換器7とにより海水を加熱し、該海水を多段蒸発装置5においてフラッシュさせて淡水を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムと海水淡水化システムとを複合化して電気および淡水を得る方法、およびこの方法を適用した発電、淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化の方式として、逆浸透膜を利用する方式、多重効用蒸発缶を使用する方式、多段フラッシュ蒸発を使用する方式およびシステムなどが知られており、その詳細は、財団法人日本産業技術振興協会が昭和53年に発行した「海水淡水化技術」に詳しく説明されている。その内、多段フラッシュ蒸発方式による淡水化装置として、例えば、下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この多段フラッシュ蒸発方式では、海水を加熱するための熱源として、例えばボイラーにより生成した加熱水蒸気が用いられている。
【特許文献1】特開平9−117753号公報
【0004】
一方、火力発電システムとしては、石炭や石油、ガスを燃料にして、ボイラーで高圧スチーム(水蒸気)を発生させ、その高圧スチームを過熱(その圧力の沸点以上に温度を上昇させること)し、その過熱水蒸気で蒸気タービンをまわして発電するシステム、あるいは、燃焼ガスにてタービンをまわして発電し、さらにタービン排ガスから排熱回収ボイラーにて過熱水蒸気を発生させ、その過熱水蒸気により蒸気タービンを回す複合発電システムは良く知られている。以下、本発明の水蒸気は、過熱水蒸気を含むものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地球上の各地では、地域によって淡水(真水)と電気の両方が大幅に不足しており、真水と電気の両方を効率的に生産したいというニーズがある。従来、真水だけを効率的に生産する技術、および電気だけを効率的に生産する技術は数多く追求されて来たが、真水と電気とを効率的に併産する技術はあまり追求されて来なかった。
本発明は、海水の淡水化システムとガスタービン発電システムを複合化して真水と電気の両方を発電のエネルギー効率的に生産する技術を提供する。
【0006】
ガスタービン発電システムの排熱を利用する場合、この発電システムの各過程で発生する種々の温度域の排熱を海水の淡水化システムの加熱源に利用して、発電システムと淡水化システムの全体のエネルギー利用効率を高めることが望ましい。
しかしながら、前記排熱の利用には解決すべき課題が多い。
(1)海水には、高温に加熱すると析出する成分(イオン)が含まれており、熱交換器の加熱面が高温になるとスケールが析出し、伝熱特性の悪化、圧力損失の増大が生じ、ひいては運転不能となることもあり得る。
(2)ガスタービンからの排熱には、種々の温度レベルがあり、これらの排熱を海水の淡水化の熱源として利用しようとすると、排熱の温度によっては前記(1)のスケールの析出の問題が生じるおそれがある。
(3)ガスタービン発電システムでは、燃焼に必要な空気を圧縮する必要があるが、空気を圧縮すると高温になり、空気温度の上昇に伴って圧縮に要するエネルギーの増大を招く。そこで、圧縮空気を途中で抽気し、一旦冷却した後、再度圧縮することがあるが、圧縮空気の熱が利用されることはなかった。また、前述のガスタービンの排ガスの熱についても、一般的な排熱回収ボイラーにより回収された後は、ボイラー給水の予熱に使用される程度でそれ以外への利用は行われていなかった。
本発明は、上記の問題点を検討し、海水を高温の気体と熱交換する際に発生するスケールを最小限に抑えることができ、さらに発電と淡水化の総合的なエネルギー効率を最大にする方法を見出したものである。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、海水の淡水化に必要な熱を与える熱交換器の加熱面でのスケールの析出を防止しつつ、発電システムの排熱を有効に利用した、発電システムと海水淡水化システムとを複合化して電気および淡水を効率的に得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化して電気電気および淡水を得る方法において、
ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源とする熱交換、およびガスタービンからの排気ガスを熱源とする熱交換によって前記淡水化システムの海水を加熱する熱源に用いることを特徴とする。
そして、本発明は、前記空気圧縮機の中間段から抽気する圧縮空気の温度を480℃以下とすることを特徴とする。
また本発明は、前記ガスタービンの排気ガス温度を480℃未満にはるように制御し、ガスタービンの排気ガスを直接海水と熱交換することを特徴とする。
また本発明は、ガスタービンからの排気ガス温度を480℃以上になるように制御し、排気ガスを熱回収ボイラーに導入して水蒸気を発生させ、この水蒸気を蒸気タービンに導入して発電し、この蒸気タービンから排出された水蒸気の全部または一部を前記淡水化システムにおける海水の加熱の熱源に利用することを特徴とする。
また本発明は、前記空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を前記淡水化システムの海水の加熱の熱源の一部に利用して後段の空気圧縮機に戻す前に、該圧縮空気に水を噴射することを特徴とする。
また本発明は、前記噴射される水が、前記空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を淡水化システムの加熱の熱源の一部に利用し、さらに冷却されることによって生じる凝縮水および/または前記淡水化システムで製造された淡水であることを特徴とする。
また、本発明は、前記噴射される水の量が、空気のウエットネス度を10%以下とする量であることを特徴とする。
また本発明は、前記淡水化システムが、多段フラッシュ蒸留法を用いることを特徴とする。
また本発明は、海水を淡水化システムの熱回収部に供給する前に、ナノフィルターを通すことにより2価のイオンを除去する前処理を施すことを特徴とする。
また本発明は、外部熱源によって加熱される海水の温度を基準値と比較し、基準値を超えた場合に、前記ナノフィルターによる処理を施した海水を前記淡水化システムの熱回収部に供給あるいはナノフィルターによる処理を施さない海水に混合して供給することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、多段フラッシュ蒸留法による蒸留において、最も高温でフラッシュされる海水の加熱に、ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気、ガスタービンの排気ガスおよびガスタービンの排気ガスの熱を回収して発生させた水蒸気でスチームタービンを駆動した後に排気された水蒸気のグループから選ばれる少なくとも一つの熱源を用いることを特徴とする。
また本発明は、前記海水の熱交換は、チューブ内に海水を流通させ、チューブの外側に前記空気圧縮機の中間段から抽気された圧縮空気、あるいは前記ガスタービンからの排気ガスを供給することにより行われることを特徴とする。
また本発明は、ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化してなる発電、淡水化装置において、ガスタービンからの排気ガスを熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第1の熱交換器と、前記ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第2の熱交換器と、該第2の熱交換器で熱交換された圧縮空気を前記空気圧縮機の中間段へ戻す管路とを有することを特徴とする。
また、本発明は、ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化してなる発電、淡水化装置において、ガスタービンからの排気ガスを熱源とする排熱回収ボイラーと、前記排熱回収ボイラーから回収される排スチームを熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第1の熱交換器と、前記ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第2の熱交換器と、該第2の熱交換器で熱交換された圧縮空気を前記空気圧縮機の中間段へ戻す管路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電用ガスタービンの空気圧縮機の抽気空気の冷却およびタービン排気ガスの冷却と海水の加熱とが同時に行われるので、発電と海水淡水化との全体の効率を高めることができる。
また、本発明によれば、海水と熱交換する空気圧縮機の抽気空気の温度を480℃以下とすることにより、熱交換器の海水加熱側の伝熱面の温度を低くすることができるのでスケールの発生を抑制できる。
また、海水と熱交換するガスタービンからの排気ガス温度を480℃未満になるように制御して運転する場合には、その排気ガスと海水とを直接熱交換しても、上記と同様にスケールの発生を抑制した状態で熱回収できる。
さらに排気ガス温度を480℃以上になるように制御して運転する場合には、排気ガスをを排熱回収ボイラで水蒸気を発生させその水蒸気でスチームタービンを駆動して発電させた後の、480℃以下、一般的には150℃以下になったスチームタービン出口水蒸気と海水とを熱交換するので、熱交換器の伝面が480℃以上に加熱されないのでスケールの発生を抑制できる。
さらにまた、必要に応じて発電装置の排熱との熱交換に用いられる海水をナノフィルタによって処理することができるので、スケールの原因となる2価のイオン、例えばCa2+、Mg2+、SO2− 、が除去された海水を加熱することができ、したがって、スケール発生防止の見地から制限されていた熱交換器の熱源温度を高めることができ、より高い効率で海水を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は第1の実施形態を示すものである。この複合プラントは、発電装置と、海水淡水化装置とから構成されている。
前記発電装置は、内燃機関であるガスタービン1、該ガスタービン1により駆動される発電機2を基本構成としている。また前記海水淡水化装置は、加熱された海水をフラッシュさせて淡水を得る多段蒸発装置5と、該多段蒸発装置5に供給される海水と前記発電プラントから供給されるガスタービン排気ガスおよび抽気した圧縮空気との間でそれぞれ直接熱交換する第1、第2の熱交換器6、7とを基本構成としている。
【0012】
前記発電装置のガスタービン1は、空気圧縮部10と燃焼ガス膨張部11とを有し、空気圧縮部10によって圧縮された空気を用いて燃焼部12で燃料を燃焼させ、燃焼ガス膨張部11において熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、この運動エネルギーによって発電機2を駆動している。また前記燃焼ガス膨張部11と空気圧縮部10とは同軸上に連結されていて、燃焼ガス膨張部11で発生した運動エネルギーの一部によって空気圧縮部10が駆動されるようになっている。
【0013】
本発明において、ガスタービン1の排気ガス温度を480℃未満になるように制御するには、例えばガスタービン入口圧力を25気圧程度の圧力まで昇圧し1100℃で燃焼し、ガスタービン出口圧力を1.5気圧とすると、その排気ガス温度を480℃程度に制御可能である。このガスタービン1の排気ガス温度は、燃焼温度との関係もあるが、例えば同じ1100℃燃焼する場合のガスタービン入口圧力を25気圧よりさらに大きくすることにより、480℃以下の排気ガス温度のガスタービン1の運転は可能となる。また、ガスタービン1の排気ガス温度を480℃以上とするには、上記と同じ条件である燃焼温度1100℃でガスタービンの出口圧力1.5気圧とすると、入口圧力を25気圧でほぼ480℃、20気圧で515℃となるが、本発明においては、このガスタービンの入口圧力と温度は適宜選択できるものであり、その選択した条件の下、最適な構成を採用できる。
【0014】
前記ガスタービン1において燃焼ガス膨張部11からの排気ガスは、排出管路60を介して前記第1の熱交換器6へ供給されている。この熱交換器6では、第1の海水配管61を介して前記多段蒸発装置5から供給された海水を前記排気ガスと熱交換することにより加熱する。
【0015】
前記ガスタービン1の空気圧縮部10は複数段の構成とされ、その低圧段(前段)から抽気された圧縮空気は、管路24を経由して第2の熱交換器7に供給されて、第2の海水配管62から供給された海水と熱交換され、さらに、管路25を経由して高圧段(後段)へ戻される。また管路25の途中には、水噴射装置26が設けられていて、空気圧縮部10へ戻る圧縮空気中へノズルから水を噴射することにより、後段の高圧段での空気圧縮の際に生じる温度上昇を抑えている。この噴射される水の量は、多い程、温度上昇を抑制する効果があるが、多すぎると、空気圧縮羽根のバランス上、また、エロージョン悪影響を与え良くない。この噴射される水の量は、その空気温度のウエットネス度を10%以下になる量が好ましいことがわかった。本発明におけるウエットネス度とは、その温度において、飽和の水蒸気とは別に、ミスト(液滴)状態の水分を空気中に含有する状態をミストと空気の重量比で表す状態量である。符号27は水噴射装置26への水の供給を制御するバルブである。なお、抽気された圧縮空気は高圧段に戻される前に、必要により設置される冷却器28によってさらに冷却されても良い。
【0016】
前記海水淡水化装置には、加熱した海水をフラッシュさせて水蒸気を発生させ、この水蒸気を復水させることによって淡水を得る多段蒸発装置5が設けられている。この多段蒸発装置5は、比較的高い温度で海水をフラッシュさせる蒸発器(熱回収部)31と、低い温度で海水をフラッシュさせる蒸発器32(熱放出部)32とから構成されている。
蒸発器31の内部には複数の蒸発室が設けられ、上部にはフラッシュ後に復水した水を受け取る受け皿33が設けられている。また蒸発器31は、仕切板34によって複数に仕切られている。この蒸発器内の海水は、フラッシュを繰り返すことにより、温度、圧力が次第に低減するようになっている。同様に、蒸発器32にも受け皿33が設けられていて、復水した水蒸気を受け取るようになっている。
【0017】
次に、前記多段蒸発装置5へ海水を供給するシステムについて説明する。
符号40はポンプであって、このポンプ40から吐出された海水は熱放出部の熱交換チューブ41を介して蒸発器32内を通り、蒸発器32内のフラッシュで生じた水蒸気を冷却凝縮させる。また、前記熱交換チューブ41を出た海水は分岐され、一部は管路42を経て放流され、一部は前処理装置43に接続されている。この前処理装置43では、溶存COや酸素を除去したり、あるいはスケール抑制剤を添加する装置、すなわち従来知られている脱気装置やスケール抑制や防止のための前処理装置を備え、さらにナノフィルター設備を設けるのが好ましい。前記海水は、この前処理装置43に付設されたナノフィルター43を経ることによってスケールの原因となる2価のイオン、例えばCa2+、Mg2+、SO2− 、が除去されるようになっている。また、ナノフィルター43を通って前記2価のイオンが除去された海水は、ポンプ44によって蒸発器31内の熱交換チューブ45に供給されて蒸発器31内のフラッシュで生じた水蒸気を冷却凝縮することにより予熱された後、前記第1の熱交換器6の入口側の第1の海水配管61、前記第2の熱交換器7の入口側の第2の海水配管62に接続されている。なお、前処理装置を蒸発器32の外に設けた例で説明したが、脱気装置などを蒸発器32の内部に設けてもよい。
【0018】
前記熱交換器6、7によって加熱された海水は、蒸発器31へ送り込まれ、蒸発器31内の各室において逐次フラッシュして水蒸気を発生し、この水蒸気が熱交換チューブ45内の海水によって冷却されて復水して、その水滴が受け皿33により回収される。また、蒸発器31内の海水は、連結管46を介して蒸発器32へ送りこまれて更にフラッシュされ、熱交換パイプ41内の海水により冷却されて復水して、その水滴が受け皿33に回収される。
【0019】
さらに、蒸発器31、32においてフラッシュされた後の濃縮された海水(排出ブライン)は、ポンプ50によって大部分外部へ排出される。また、前記蒸発器31の受け皿33に溜まった淡水は、例えば、傾斜を利用して連結管47へ送り込まれ、連結管47から蒸発器32の受け皿33に溜まり、さらに、ポンプ51によって系外の淡水貯留設備へ送り込まれるようになっている。
【0020】
以上のように構成された発電海水淡水化複合システムの動作について説明する。
ポンプ40によって多段蒸発装置5の第1の蒸発器32の熱交換チューブ41、第2の蒸発器31の熱交換チューブ45へ供給された原料海水は、内部のフラッシュ蒸気と熱交換されて温度が上昇する。
【0021】
前記熱交換チューブ45を通って予熱された海水は、分岐されて第1、第2の熱交換器6,7への海水配管61、62へそれぞれ送り込まれる。第1の熱交換器6への海水配管61へ分岐された海水は、熱交換器6において、ガスタービン1からの排気ガスと熱交換される。
本発明においては、ガスタービン1からの排気ガス温度が所定の値、具体的には480℃を境としてガスタービン1からの排気ガスを受け取る設備構成が異なり、この実施形態では、排気ガスの温度が480℃未満であるので、ガスタービン1の排気ガスを第1の熱交換器6への海水配管61中の海水と直接熱交換する方式が採用されている。 また、第2の熱交換器7への海水配管62へ分岐された海水は、熱交換器7によって、ガスタービン1の圧縮部10から抽気された圧縮空気と熱交換され、加熱される。
場合によっては、前記熱交換チューブ45を通って予熱された海水は、分岐されることなく、第2の熱交換器7を経て、更に、第1の熱交換器6を経て加熱されても良い。
【0022】
第2の熱交換器7に圧縮機10の中間段から抽気した圧縮空気を供給して海水と熱交換することによる圧縮機の駆動力軽減効果について説明すると、圧縮機の所要動力は、一般に圧縮される空気の温度が低いほど小さくて済むので、圧縮機10の中間段から空気を抽出して冷却した後圧縮機へ戻すことにより、圧縮機10の所要動力が低減される。
【0023】
この実施形態では、前記空気圧縮機10の中間段から480℃以下の圧縮空気の抽気であり、好ましくは150℃〜400℃、さらに好ましくは、180℃〜260℃の圧縮空気を抽気するものである。このように圧縮空気を海水と熱交換することにより冷却するから、空気圧縮機10の所要動力(ガスタービンの負荷)を軽減し、しかも、このエネルギーを海水の加熱に利用することができる。
【0024】
なお、圧縮機10あるいは多段蒸発装置5の運転状況により、抽気した圧縮空気の温度を所望の値まで下げることができない場合にはさらに水冷あるいは空冷熱交換器によって圧縮空気を冷却しても良い。また、バルブ27を開いて水噴射装置26から戻りの配管25の圧縮空気へ淡水を噴射することにより、圧縮空気に少量の水を加え、後段空気圧縮器での温度上昇を抑えることができる。この水噴射には、例えばポンプ51から吐出される生成淡水あるいは中間抽気した空気を冷却した際に生じる凝縮水を用いることができる。
【0025】
次いで、前記ナノフィルタを使用することによる効果について説明する。
一般的な成分の海水では、伝熱面における海水温度が120℃を超えると、前記2価のイオンに起因するスケールの発生が著しくなるので、海水の加熱温度は120℃以下で行われる。しかし、ナノフィルターによって2価のイオンを除去することにより、スケールの発生を抑えて高温にすることができ、2価のイオンの除去具合によっては、170℃〜180℃もの高温まで加熱することができ、高温の熱源を利用して効率の良い熱交換を行うことができる。
【0026】
前記構成の発電、淡水化複合システムは以下の動作を行う。
ガスタービン1においては、その空気圧縮部10の中間段から抽気した480℃以下の温度の圧縮空気を海水と直接第2の熱交換器7を介して熱交換し、冷却された圧縮空気を空気圧縮部10の後段に戻し、さらに昇圧して圧縮された空気を燃料に添加して燃焼部12で燃焼させ、さらに燃焼ガス膨張部11で膨張させるとともに運動エネルギーに変換し、発電機2を駆動して発電する。また、ガスタービン1の排気ガスが480℃以下になるように制御されており、その480℃以下の排気ガスは海水と第1の熱交換器6を介して直接熱交換される。
【0027】
一方淡水化装置において、前記ポンプ40によって取り込まれた海水は、多段蒸発装置5の熱交換パイプ41、45を通って多段蒸発装置5内のフラッシュ蒸気と熱交換され、常温から昇温される。熱交換パイプ45によって予熱された海水は、第1および第2の熱交換器6、7によって加熱されて第1の蒸発器314へ送り込まれ、内部で順次フラッシュされる。フラッシュによって発生した水蒸気は、凝縮して水滴となって受け皿33に回収される。第1の蒸発器31においてフラッシュされた海水は、さらに、連結管46を介して第2の蒸発器32へ送り込まれ、再度フラッシュされる。この蒸発器32でフラッシュにより発生した水蒸気は冷却凝縮されて、受け皿33で回収されて、蒸発器31で回収した生成水とともに、ポンプ51によって所定のタンク等へ送り込まれる。そして、これまでの加熱およびフラッシュによって水蒸気を発生させることにより濃縮された海水は、ポンプ50によって排出ブラインとして系外に排出される。
【0028】
前記第2の熱交換器7において空気圧縮機10から抽出された空気を海水と熱交換して冷却することにより、空気圧縮機10の駆動に要する動力を軽減し、その結果、発電機2で多くの発電量を得ることができる。また、必要に応じて、バルブ27を開いて、圧縮段10へ戻る圧縮空気へ水を噴射することにより、後段の空気圧縮時の温度上昇を抑え発電量を高めることもできる。
【0029】
次いで、図2を参照して第2の実施形態を説明する。なお、第1実施例と共通の構成には同一の符号を付し、説明を簡略化する。
この第2の実施形態は、ガスタービン1の排気ガス温度を480℃以上に制御する場合の例で、前記第1の実施形態における熱交換器6の前段に、ガスタービン1の排熱を回収する排熱回収ボイラ70およびこの排熱回収ボイラ70により発生した蒸気により駆動される蒸気タービン71を設けた基本構成を有している。
ガスタービン1の燃焼ガス膨張部11の排気ガスが排出される排出管路60には、前記熱交換器6に代えて、排熱回収ボイラ70が設けられている。この排熱回収ボイラ70の熱交換チューブ72内で前記排気ガスと熱交換されて生じた水蒸気は、前記蒸気タービン71に供給されて運動エネルギに変換され、該蒸気タービン71によって発電機73が駆動され発電されるようになっている。
【0030】
前記蒸気タービン71から抽気または排気された水蒸気は、第1の熱交換器6Aに供給される。第1の熱交換器6Aに供給された水蒸気は、第1の海水配管61から供給された海水と熱交換されて復水し、復水ポンプ75によって復水タンク76へ送り込まれる。第1の熱交換器6Aで回収される以上の水蒸気がある場合は、復水器74に、蒸気タービンから排気された水蒸気を分岐して復水することもできる。この復水器74で発生した復水は、復水ポンプ77によって復水タンク76へ送り込まれる。さらに、復水タンク76に貯留された復水は、復水ポンプ79により排熱回収ボイラ70の伝熱チューブ72あるいはその下流のボイラー給水予熱器へ供給されて熱交換されるようになっている。
【0031】
この第2の実施形態においても、ガスタービン1の中間段から抽気された圧縮空気の冷却熱、および、蒸気タービンから排気された水蒸気の冷却熱を海水の加熱に利用することにより、下記の効果が得られる。
1.ガスタービンの圧縮工程における圧縮空気の中間冷却により、ガスタービンの熱効率を高め、以て発電の高効率化が図られる。
2.中間冷却後の空気流への凝縮水の噴霧により、発電の高効率化が図られる。
3.ガスタービン燃焼圧力の高圧化により、発電と淡水の製造の高効率化が図られる。なお、熱効率の面から見て、燃料の噴射圧力は10〜30kg/cm2、ガスタービンの排気温度は、400℃ないし550℃の範囲とすることが望ましい。
さらに、前記排出管路60の途中に熱媒体(例えば水より沸点の高いオイル)を用いた熱交換器を設け、この熱交換器によって海水を加熱するようにしてもよい。
【0032】
なお、本発明の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、特に、ガスタービンの圧縮段数、蒸発器の室数などについては、発電および淡水化プラントの要求仕様に基づいて適宜変更しても良いのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態の発電淡水化複合プラントの配管図である。
【図2】第2の実施形態の発電淡水化複合プラントの配管図である。
【符号の説明】
【0034】
1、1A ガスタービン 2 発電機
1 発電機 5 多段蒸発装置 6、6A 第1の熱交換器
7 第2の熱交換器 10 空気圧縮部 11 燃焼ガス膨張部
12 燃焼部 24 管路 25 管路
26 水噴射装置 31 蒸発器(熱回収部)
32 蒸発器(熱放出部) 33 受け皿 34 仕切板
41 熱交換チューブ(熱放出部) 43 前処理装置
45 熱交換チューブ(熱回収部) 60 排気管路
61 第1の海水配管 62 第2の海水配管 70 排熱回収ボイラー
71 蒸気タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化して電気および淡水を得る方法において、
ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源とする熱交換、およびガスタービンからの排気ガスを熱源とする熱交換によって前記淡水化システムの海水を加熱することを特徴とする発電、淡水化方法。
【請求項2】
前記空気圧縮機の中間段から抽気する圧縮空気の温度を480℃以下とすることを特徴とする請求項1記載の発電、淡水化方法。
【請求項3】
前記ガスタービンからの排気ガス温度を480℃未満になるように制御し、ガスタービンの排気ガスを直接海水と熱交換することを特徴とする請求項1または2記載の発電、淡水化方法。
【請求項4】
ガスタービンからの排気ガス温度を480℃以上になるように制御し、排気ガスを熱回収ボイラーに導入して水蒸気を発生させ、この水蒸気を蒸気タービンに導入して発電し、この蒸気タービンから排出された水蒸気の全部または一部を前記淡水化システムにおける海水の加熱の熱源に利用することを特徴とする請求項1または2記載の発電、淡水化方法。
【請求項5】
前記空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を前記淡水化システムの海水の加熱の熱源の一部に利用して後段の空気圧縮機に戻す前に、該圧縮空気に水を噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発電、淡水化方法。
【請求項6】
前記噴射される水が、前記空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を淡水化システムの加熱の熱源の一部に利用し、さらに冷却されることによって生じる凝縮水および/または前記淡水化システムで製造された淡水であることを特徴とする請求項5に記載の発電、淡水化方法。
【請求項7】
前記噴射される水の量が、空気のウエットネス度を10%以下とする量であることを特徴とする請求項5に記載の発電、淡水化方法。
【請求項8】
前記淡水化システムが、多段フラッシュ蒸留法を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の発電、淡水化方法。
【請求項9】
海水を淡水化システムの熱回収部に供給する前に、ナノフィルターを通すことにより2価のイオンを除去する前処理を施すことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の発電、淡水化方法。
【請求項10】
請求項1〜4の外部熱源により加熱される海水の温度を基準値と比較し、基準値を超えた場合に、前記ナノフィルターによる処理を施した海水を前記淡水化システムに供給することを特徴とする請求項9に記載の発電、淡水化方法。
【請求項11】
多段フラッシュ蒸留法による蒸留において、最も高温でフラッシュされる海水の加熱に、ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気、ガスタービンの排気ガスおよびガスタービンの排気ガスの熱を回収して発生させた水蒸気でスチームタービンを駆動した後に排気された水蒸気のグループから選ばれる少なくとも一つの熱源を用いることを特徴とする請求項4に記載の発電、淡水化方法。
【請求項12】
前記海水の熱交換は、チューブ内に海水を流通させ、該チューブの外側に前記空気圧縮機の中間段から抽気された圧縮空気および前記ガスタービンからの排気ガスを供給することにより行われることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の海水、淡水化方法。
【請求項13】
ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化してなる発電、淡水化装置において、
ガスタービンからの排気ガスを熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第1の熱交換器と、
前記ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第2の熱交換器と、
該第2の熱交換器で熱交換された圧縮空気を前記空気圧縮機の中間段へ戻す管路とを有することを特徴とする発電、淡水化装置。
【請求項14】
ガスタービン発電システムと、海水から蒸発手段を用いて淡水を得る淡水化システムを複合化してなる発電、淡水化装置において、
ガスタービンからの排気ガスを熱源とする排熱回収ボイラーと、
前記排熱回収ボイラーから回収される排スチームを熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第1の熱交換器と、
前記ガスタービンの空気圧縮機の中間段から抽気した圧縮空気を熱源として、前記淡水化システムに供給される海水を加熱する第2の熱交換器と、
該第2の熱交換器で熱交換された圧縮空気を前記空気圧縮機の中間段へ戻す管路とを有することを特徴とする発電、淡水化装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−70889(P2006−70889A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3183(P2005−3183)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】