説明

発電装置

【課題】磁石発電機の整流出力により充電されるバッテリからインバータを通して電機子巻線に交流制御電圧を印加することによりバッテリ電圧を制限値以下に制御する発電装置において、交流制御電圧の基準位相を検出するためのセンサを省略すること。
【解決手段】発電機1の相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段501と、検出された相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を検出する相電流位相検出手段502と、検出された相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段503と、制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータ4のスイッチ素子を制御するインバータ制御手段504とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石発電機の整流出力で負荷を駆動する発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電機の整流出力で負荷を駆動する際には、負荷を過電圧から保護するため、負荷の両端の電圧が制限値を超えないように発電機の出力を制御する必要がある。発電機が界磁巻線を有している場合には、界磁巻線を流れる電流を制御することにより発電機の出力を制御することができる。ところが、磁石発電機においては、界磁が永久磁石により構成されているため、界磁巻線を有する発電機と同様な方法で界磁を制御して発電機の出力を制御することができない。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1及び特許文献2に示されているように、磁石発電機の電機子巻線と、負荷に対して並列に接続される電圧蓄積手段(バッテリまたはコンデンサ)との間に電圧形のインバータを設けて、電圧蓄積手段からインバータを通して電機子巻線に交流制御電圧を印加することにより、負荷の両端に印加される電圧が制限値を超えないように制御する発電装置を提案した。この発電装置においては、電機子巻線に誘起する交流電圧をインバータ内の帰還ダイオードにより構成される整流回路を通して電圧蓄積手段に印加してこの電圧蓄積手段を充電し、電圧蓄積手段側からインバータを通して電機子巻線に交流制御電圧を印加して、該交流制制御電圧の位相を制御することにより、電圧蓄積手段の両端の電圧(磁石発電機の負荷の両端の電圧)が制限値を超えないように磁石発電機の出力を制御する。
【0004】
磁石発電機において、電機子巻線に鎖交する磁束の変化を示す磁束波形の位相、または発電機の機械的構成から理論的に求められる無負荷誘起電圧の位相を基準位相とし、電機子巻線の誘起電圧と周波数が等しく、基準位相よりも位相が遅れた交流制御電圧を電機子巻線に印加すると、通常は、磁石発電機の電機子巻線と鎖交する磁束を増加させて発電機の出力を増加させることができる。また上記基準位相よりも位相が進んだ交流制御電圧を電機子巻線に印加すると、通常は、電機子巻線と鎖交する磁束を減少させて発電機の出力を減少させることができる。
【0005】
従って、電圧蓄積手段の両端の電圧が目標値よりも大きいか小さいかによって、交流制御電圧の位相を基準位相に対して進み側または遅れ側に変化させることにより、磁石発電機の出力を目標値に一致させる制御を行うことができる。
【0006】
上記のように、磁石発電機の電機子巻線からインバータ内の帰還ダイオードにより構成される整流回路を通して電圧蓄積手段を充電するとともに、電圧蓄積手段からインバータを通して磁石発電機の電機子巻線に交流制御電圧を印加し得るように発電装置を構成しておいて、交流制御電圧の位相を制御することにより磁石発電機の出力を調整する制御を、電圧蓄積手段側から磁石発電機に印加する交流制御電圧のベクトルを制御することにより発電出力を制御するという意味で、「ベクトル制御」と呼ぶことにする。
【0007】
ベクトル制御により磁石発電機の出力を制御する場合には、電圧蓄積手段からインバータを通して電機子巻線に印加する交流制制御電圧の位相角を基準位相に対して定めるため、この基準位相の情報を得ることができるようにしておく必要がある。交流制御電圧の基準位相は、発電機の機械的構成により定まるため、該基準位相の情報は、発電機のロータの回転角度位置が特定の位置に一致したことを検出することにより得ることができる。そのため、特許文献1に記載された発電装置においては、発電機のロータの回転角度位置が特定の位置に一致したことを検出する位置センサとして、ロータの磁石界磁を構成する永久磁石の磁極を検出する磁気センサをステータ側に設けて、この磁気センサの出力から上記基準位相の情報を得るようにしている。
【0008】
また特許文献2に示された発電装置においては、磁石発電機の回転角度位置が所定の回転角度位置に一致したときにパルス信号を発生するパルス信号発生器を上記位置センサとして設けて、このパルス信号発生器の出力パルスから上記基準位相の情報を得るようにしている。このパルス信号発生器は、エンジンの点火時期等をマイクロプロセッサを用いて制御する場合に、エンジンの回転角度位置情報を得るために用いられているものと同様のものである。
【0009】
なお発電機として、ロータ側に界磁コイルを有する同期発電機を用いた発電装置において、基準位相に対して位相が遅れた交流制御電圧を電機子巻線に印加することにより発電出力の増大を図る技術が特許文献3に示されているが、この発電装置においても、ロータの回転角度位置を検出する位置センサとして、ロータの磁極を検出する磁気センサをステータ側に設けて、該磁気センサの出力から基準位相の情報を得るようにしている。
【特許文献1】特開平11−46456号公報
【特許文献2】特開2004−173482号公報
【特許文献3】特開平8−214470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、ベクトル制御を用いた従来の発電装置においては、交流制御電圧の基準位相を検出するために、磁気センサや、パルス信号発生器等の位置センサを設ける必要があったため、コストが高くなるのを避けられなかった。
【0011】
また磁気センサとしては、通常ホール素子が用いられるが、ホール素子は熱に弱いため、磁石発電機の駆動源としてエンジンのように多くの発熱を伴う原動機を用いる場合には採用しにくいという問題があった。
【0012】
パルス信号発生器としては、発電機のロータヨークの一部に形成された突起または凹部からなるリラクタと、このリラクタのエッジを検出したときにパルスを発生する信号発電子とを備えたものが多く用いられている。エンジンを原動機として用いる場合には、エンジンの点火時期や燃料噴射量等の制御を行う際にエンジンの回転情報を得るために用いるパルスを発生させるために同様のパルス信号発生器が用いられるため、交流制御電圧の基準位相を検出するために上記のパルス信号発生器を用いる場合には、交流制御電圧の基準位相の検出に用いるパルスを発生させるためのリラクタと、点火時期の制御に用いるパルスを発生させるためのリラクタとの双方を磁石発電機のロータヨークに設けることが必要になる。このように、発電機のロータヨークに多くのリラクタを設けると、ロータヨークの加工が面倒になるだけでなく、リラクタどうしが干渉し合って誤信号が発生するおそれもあるため好ましくない。
【0013】
本発明の目的は、磁石発電機と、負荷に対して並列に接続される電圧蓄積手段との間にインバータを設けて、磁石発電機の出力をインバータ内の帰還ダイオードにより整流して電圧蓄積手段に供給することにより電圧蓄積手段を充電するとともに、電圧蓄積手段からインバータを通して電機子巻線に交流制御電圧を印加して、該交流制御電圧の位相を制御することにより電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御する発電装置において、交流制御電圧の基準位相を検出するためのセンサを省略できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、磁石界磁を有するロータとn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有するステータとを備えた磁石発電機と、n相ブリッジ接続されたスイッチ素子と各スイッチ素子に逆並列接続された帰還ダイオードとを備えて交流側端子が電機子巻線の出力端子に接続され、直流端子間に電圧蓄積手段と負荷とが並列に接続されるn相の電圧形インバータと、磁石発電機の出力電圧と周波数が等しく、予め定めた基準位相に対して所定の位相角を有するn相の交流制御電圧を電圧蓄積手段からインバータを通して電機子巻線に印加するようにインバータを制御することにより電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御するコントローラとを備えた発電装置を対象とする。
【0015】
本発明においては、磁石発電機の相電流を検出する電流検出器が設けられ、この電流検出器により検出された相電流の波形上の定点(零クロス点やピーク点等)の位相を基準にして、交流制御電圧を発生させるタイミングを定める。そのため、コントローラは、電流検出器により検出された相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段と、この定点検出手段により検出された相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を検出する相電流位相検出手段と、相電流位相検出手段により検出された相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段と、制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段とを備えている。
【0016】
上記の磁石発電機において、回転速度を一定とし、電機子巻線に交流制御電圧を印加しない場合に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すように、交流制御電圧の位相角を設定したとする。このような位相角を有する交流制御電圧を電機子巻線に印加した状態は、電機子巻線から整流回路を構成する各ダイオードを通して電流が流れている期間と同じ期間の間、各ダイオードに逆並列接続されたスイッチ素子をオンにする状態と同じである。そのため、上記のように位相角が設定された交流制御電圧を電機子巻線に印加した場合に電機子巻線に流れる相電流の大きさ、相電流の位相及び電機子巻線の各相の巻線の両端に印加される電圧の位相(交流制御電圧の位相)はそれぞれ、交流制御電圧を電機子巻線に印加しないとき(磁石発電機と電圧蓄積手段との間の回路が単なる整流回路としてのみ機能するとき)に電機子巻線に流れる相電流の大きさ、相電流の位相及び電機子巻線の各相の巻線の両端に印加される電圧の位相と同じになる。
【0017】
電機子巻線に交流制御電圧が印加されておらず、電機子巻線と電圧蓄積手段との間の回路が単なる整流回路としてのみ機能する時(以下、この状態を非制御時という。)に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角は、相電流の大きさ及び回転速度によって異なり、相電流の大きさと回転速度とが決まれば一定の値をとる。従って、非制御時に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と、相電流の大きさと、回転速度との間には一定の関係があり、この関係を利用して、相電流の大きさ及び回転速度から、非制御時に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧(相巻線の両端の電圧)の位相角(以下非制御時相当位相角ともいう。)を求めることができる。
【0018】
電機子巻線のインピーダンス及び電圧蓄積手段のインピーダンスが一定であるとすれば、交流制御電圧が印加された電機子巻線の各相巻線の両端の電圧の位相角と、相電流の位相角との間には一定の関係があるため、交流制御電圧の位相角がわかれば、そのときの相電流の位相角を推定することができる。これらのことから、電圧蓄積手段の両端の電圧(相電流の大きさと電圧蓄積手段の内部インピータンスとにより決まる。)をある一定値とし、電機子巻線のインピーダンスを一定とすれば、回転速度と相電流の大きさと相電流の位相との間の関係を与える相電流位相演算用マップを作成することができ、電機子巻線に交流制御電圧を印加しない状態で、検出された回転速度と相電流の大きさとに対してこのマップを検索することにより、相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を求めることができる。
【0019】
上記のようにして求めた相電流の基準位相に対する位相は、電圧蓄積手段の両端の電圧を一定とし、電機子巻線のインピーダンスを一定と仮定して作成したマップを用いて演算されたものであるため、電圧蓄積手段の両端の電圧が変わり(電圧蓄積手段のインピーダンスが変わり)、電機子巻線の温度によりその内部抵抗が変わると(電機子巻線のインピーダンスが変わると)変化してしまう。そのため、上記のマップ演算により求めた相電流の位相は、電圧蓄積手段の両端の電圧及び電機子巻線の温度に対して補正するようにしておくことが好ましい。
【0020】
相電流の位相を特定するためには、相電流の波形上の定点が基準位相に対していかなる位相角を有するかを求める必要がある。相電流の波形上の定点は、相電流の波形上の各点のうち、他の点と識別し得る特定の点であればよい。この波形上の定点は、相電流波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点、相電流波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点、相電流波形の正の半波若しくは負の半波のピーク点、または相電流の正の半波若しくは負の半波が設定されたしきい値に達する点のいずれかとするのが好ましい。
【0021】
また基準位相は、電機子電流により変化しない位相であればよいが、通常は、発電機の構成により決まる電機子巻線の無負荷誘起電圧波形の位相か、または各相の電機子巻線に鎖交する磁束の変化を示す磁束波形の位相を基準位相として用いる。
【0022】
相電流位相演算用マップは、回転速度と、相電流の大きさとに対して、相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を演算するように作成しておく。
【0023】
本発明では、上記のようにして求めた相電流の波形上の定点の位相を基準にして、電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つために必要な交流制御電圧を発生させるタイミングを求め、求めたタイミングで交流制御電圧を電機子巻線に印加するようにインバータを制御することを基本とする。
【0024】
電機子巻線の相電流の大きさ、及び相電流の波形上の定点は、相電流を検出する電流検出器の出力から零クロス検出回路などにより検出することができる。また発電機の回転速度は、相電流の波形上の定点が検出される周期から演算することができる。従って上記のように、磁石発電機の相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を求めて、この相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにすれば、ロータの回転角度位置を検出するための位置センサを用いることなく交流制御電圧を発生させて、発電機の出力の制御を行わせることができ、磁気センサやパルス信号発生器などの位置センサを省略してコストの低減を図ることができる。
【0025】
前述のように、相電流の波形上の定点の位相は、電圧蓄積手段の両端の電圧及び電機子巻線の内部抵抗により変化する。そのため、本発明の好ましい態様では、電圧蓄積手段の両端の電圧を検出する電圧検出器と、磁石発電機の電機子巻線の温度を検出する温度センサとが更に設けられ、相電流位相検出手段が、定点検出手段により相電流の波形上の定点が検出される周期から磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、相電流の大きさと磁石発電機の回転速度と相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角との関係を与える相電流位相演算用マップを電流検出器により検出された相電流の大きさと回転速度演算手段により演算された回転速度とに対して検索することにより相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を演算する相電流位相演算手段と、電圧検出器により検出された電圧蓄積手段の両端の電圧と温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して相電流位相演算手段により演算された位相角を補正する相電流位相補正手段とを備えている。
【0026】
上記相電流位相演算用マップは、電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で電機子巻線に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と磁石発電機の回転速度と相電流の大きさとの間の関係と、交流制御電圧が印加された電機子巻線の各相巻線の両端の電圧の位相角と相電流の位相角との間の関係とを用いて作成することができる。
【0027】
本発明の他の好ましい態様では、上記コントローラを、相電流の波形の1/2周期に相当する期間が経過する毎に現れる相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段と、この定点検出手段により定点が検出される周期から磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、相電流の波形の1周期に相当する期間に検出される2つの定点の内の一方を特定の定点として、回転速度演算手段により演算された回転速度と電流検出器により検出された相電流の大きさとに対して特定の定点の基準位相に対する位相角を演算する第1の相電流位相演算手段と、電圧検出器により検出された電圧蓄積手段の両端の電圧と温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して第1の相電流位相演算手段により演算された位相角を補正する第1の相電流位相補正手段と、第1の相電流位相補正手段により補正された相電流の波形上の特定の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する第1の制御電圧発生タイミング演算手段と、交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、該交流制御電圧の発生タイミングの後に現れる相電流の波形上の特定の定点の位相を検出する第2の相電流位相検出手段と、第2の相電流位相検出手段により検出された相電流の位相を回転速度演算手段により演算された回転速度と電圧検出器により検出された電圧と温度センサにより検出された温度とに対して補正する第2の相電流位相補正手段と、第2の相電流位相補正手段により補正された相電流の位相を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを演算する第2の制御電圧発生タイミング演算手段と、電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後、最初に交流制御電圧を発生させる際に第1の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させ、電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後2回目以降に交流制御電圧を発生させる際には、第2の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段とを備えた構成とする。
【0028】
上記のように構成すると、交流制御電圧を印加したままの状態で、出力電圧が制限値を超えた後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを求めて、該交流制御電圧を発生させることができる。
【0029】
上記の構成では、交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、該交流制御電圧の発生タイミングの後に現れる相電流の波形上の特定の定点の位相を検出する第2の相電流位相検出手段と、この第2の相電流位相検出手段により検出された相電流の位相を回転速度演算手段により演算された回転速度と電圧検出器により検出された電圧と温度センサにより検出された温度とに対して補正する第2の相電流位相補正手段とを設けて、第2の相電流位相補正手段により補正された相電流の位相を基準にして2番目以降に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算するように第2の制御電圧発生タイミング演算手段を構成しているが、第2の相電流位相検出手段及び第2の相電流位相補正手段を省略して、交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算するように第2の制御電圧発生タイミング演算手段を構成することもできる。
【0030】
相電流位相検出手段は、n相の内の1相の相電流の波形上の定点の位相のみを検出するように構成してもよく、n相の各相の相電流の波形上の定点の位相を検出するように構成しても良い。1相の相電流の波形上の定点の位相のみを検出するように相電流位相検出手段を構成する場合には、1相の相電流の波形上の定点の位相を基準にしてn相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成する。
【0031】
またn相の各相の相電流の波形上の定点の位相を検出するように相電流位相検出手段を構成する場合には、位相検出手段により検出された各相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成する。
【0032】
上記の説明では、磁石発電機の相電流の波形上の定点の位相を回転速度と相電流の大きさとに対して演算して、相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにしたが、磁石発電機の各相の巻線の両端の電圧を相電圧として検出して、この相電圧の波形上の定点の位相を回転速度と相電流の大きさとに対して演算して、演算した相電圧の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにすることもできる。
【0033】
この場合、コントローラは、相電圧の波形上の定点を検出する定点検出手段と、定点検出手段により相電圧の波形上の定点が検出される周期から磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、相電流の大きさと磁石発電機の回転速度と相電圧の波形上の定点の基準位相に対する位相角との関係を与える相電圧位相演算用マップを電流検出器により検出された相電流の大きさと回転速度演算手段により演算された回転速度とに対して検索することにより相電圧の基準位相に対する位相角を演算する相電圧位相演算手段と、相電圧位相演算手段により演算された相電圧の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段と、制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段とを備えた構成とすることができる。
【0034】
上記相電圧位相演算用マップは、電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で電機子巻線に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と磁石発電機の回転速度と相電流の大きさとの間の関係を用いることにより作成できる。
【0035】
相電圧の波形上の定点は、相電圧波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点、相電圧の波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点、相電圧の波形の正の半波若しくは負の半波のピーク点、または相電圧の正の半波若しくは負の半波が設定されたしきい値に達する点のいずれかとすることができる。
【0036】
相電圧位相検出手段は、1相の相電圧の波形上の定点の位相のみを検出するように構成してもよく、n相の各相の相電流の位相を検出するように構成してもよい。1相の相電圧の波形上の定点の位相のみを検出するように相電圧検出手段を構成する場合には、1相の相電圧の位相を基準にしてn相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成する。またn相の各相の相電流の位相を検出するように相電圧検出手段を構成する場合には、相電圧位相検出手段により検出された各相の相電圧の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成する。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明によれば、磁石発電機の相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相または、相電圧の波形上の定点の基準位相に対する位相を求めて、相電流の波形上の定点の位相または相電圧の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにしたので、ロータの回転角度位置を検出するための位置センサを用いることなく交流制御電圧を発生させて、ベクトル制御による発電機出力の制御を行わせることができる。従って、磁気センサやパルス信号発生器などの位置センサを省略して、発電装置のコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係わる発電装置の好ましい実施形態の構成を示した構成図で、同図において1はエンジンにより駆動される磁石発電機、2は電圧蓄積手段としてのバッテリ、3は電圧蓄積手段2の両端に接続された負荷、4は磁石発電機1と電圧蓄積手段2との間に設けられたインバータ、5はインバータを制御するコントローラ、6は磁石発電機1の相電流を検出する電流検出器、7は電流検出器6により検出された相電流の零クロス点を検出する零クロス検出回路、8は電圧蓄積手段2の両端の電圧を検出する電圧検出器、9は磁石発電機1の電機子巻線の温度を検出する温度センサである。
【0039】
更に詳細に説明すると、磁石発電機1は、エンジンのクランク軸に取り付けられたロータ1Aと、エンジンのケースなどに固定されたステータ1Bとからなっている。ロータ1Aは鉄等の強磁性材料によりカップ状に形成されたロータヨーク101の周壁部の内周に永久磁石m1及びm2を取り付けて磁石界磁を構成したもので、ロータヨーク101の底壁部の中央に設けられた図示しないボスがエンジンのクランク軸に取り付けられている。ステータ1Bはロータ1Aの磁極に対向する磁極部を有する電機子鉄心(図示せず。)と、この電機子鉄心に巻回された電機子巻線102とからなっている。電機子巻線102はスター結線された三つの相巻線Lu,Lv及びLwを有し、相巻線LuないしLwのそれぞれの中性点と反対側の端部からそれぞれ三相の出力端子1uないし1wが導出されている。
【0040】
インバータ4は、3相ブリッジ接続されたスイッチ素子Qu,Qv,Qw,Qx,Qy及びQzと、これらのスイッチ素子にそれぞれ逆並列接続された帰還ダイオードDu,Dv,Dw,Dx,Dy及びDzとを備えた周知の3相電圧形インバータである。電圧形インバータ4のブリッジの各辺を構成するスイッチ素子は、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTのように自己ターンオフ能力(駆動信号が与えられているときにオン状態になるが駆動信号が除去されるとターンオフする能力)を有するものであればよい。
【0041】
図示の例では、各スイッチ素子がMOSFETからなっており、各スイッチ素子を構成するMOSFETのドレインソース間に形成された寄生ダイオードが帰還ダイオードとして用いられている。スイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzをそれぞれ構成するMOSFETは、それぞれのゲートに駆動信号U,V,W及びX,Y,Zが与えられている間オン状態を保持し、これらの駆動信号が除去されたときにターンオフする。
【0042】
図示のインバータ4においては、ブリッジの上辺を構成するスイッチ素子QuないしQwをそれぞれ構成するMOSFETのソースと、ブリッジの下辺を構成するスイッチ素子QxないしQzをそれぞれ構成するMOSFETのドレインとが相互に接続されて、スイッチ素子QuないしQwを構成するMOSFETのソースとスイッチ素子QxないしQzを構成するMOSFETのドレインとの接続点がそれぞれ三相の交流側端子4uないし4wとなっている。またスイッチ素子QuないしQwをそれぞれ構成するMOSFETのドレインが共通接続されるとともに、スイッチ素子QxないしQzをそれぞれ構成するMOSFETのソースが共通接続され、スイッチ素子QuないしQwをそれぞれ構成するMOSFETのドレインの共通接続点及びスイッチ素子QxないしQzをそれぞれ構成するMOSFETのソースの共通接続点がそれぞれプラス側及びマイナス側の直流側端子4a及び4bとなっている。インバータ4の三相の交流側端子4uないし4wはそれぞれ磁石発電機1の電機子巻線102の三相の出力端子1uないし1wに接続され、プラス側及びマイナス側の直流側端子4a及び4bはそれぞれバッテリ2のプラス側端子及びマイナス側端子に接続されている。
【0043】
インバータ3は、ブリッジの上辺を構成する各スイッチ素子及び下辺を構成する各スイッチ素子が所定のタイミングで、交流電圧の1周期のうちの180度に相当する期間の間オン状態になるように制御されることにより、バッテリ2の両端の電圧を、磁石発電機の出力と周波数が等しい階段状波形の対称三相交流電圧に変換して、この交流電圧Vuを電機子巻線102に交流制御電圧として印加する。図3に示したVuは、三相交流制御電圧のうち、U相の交流制御電圧の波形を示している。
【0044】
図示のインバータ3においては、帰還ダイオードDuないしDw及びDxないしDzにより三相ダイオードブリッジ全波整流回路が構成され、磁石発電機1の交流出力がこの整流回路により整流されてバッテリ2に供給される。各帰還ダイオードはまた、バッテリ2から電機子巻線102に交流制御電圧を印加した際に、電機子巻線102の力率が1でないことにより発生する無効電力をバッテリ2側に帰還させるためにも用いられる。
【0045】
電流検出器6は、磁石発電機の電機子巻線を流れる相電流に比例した電気信号を発生するセンサで、この電流検出器としては変流器やシャント抵抗器等任意の電流センサを用いることができる。図示の例では、電流検出器6が電機子巻線のU相の相巻線を流れる電流iuを検出するように設けられている。
【0046】
電流検出器6の出力は零クロス検出回路7に入力されている。零クロス検出回路7は、例えば、検出された相電流の波形を矩形波に変換する波形整形回路と、この波形整形回路から得られる矩形波の立ち上がり及び立ち下がりをそれぞれ微分してパルスを発生する微分回路とにより構成することができる。
【0047】
電圧検出器8は、例えば、バッテリ2の両端に接続された抵抗分圧回路からなっていて、バッテリ2の両端の電圧に比例した電気信号を出力する。
【0048】
温度センサ9は、電機子巻線102の温度を検出するために設けられたもので、検知した温度に比例した電気信号を出力する素子、例えば両端に一定の直流電圧が印加された感温抵抗素子等からなる。温度センサ9は電機子巻線102に直接熱的に結合されて、電機子巻線の温度を直接検出するように設けられていてもよく、電機子鉄心や巻線巻回用ボビンなど、電機子巻線の温度が伝達される部分に熱的に結合されて、電機子巻線の温度を間接的に検出するように設けられていてもよい。
【0049】
上記電流検出器6、零クロス検出回路7、電圧検出器8及び温度センサ9から得られる検出信号はコントローラ5に入力されている。コントローラ5は、マイクロプロセッサを備えていて、該マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより、インバータ4の制御に必要な各種の手段を構成する。
【0050】
本実施形態においては、相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを定める。本実施形態では、相電流の波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点を定点として用い、この定点を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを演算する。そのため、図示のコントローラ5は、電流検出器6が検出した相電流の零クロス点を検出する零クロス検出回路7の出力信号を入力として、相電流の波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点を定点として検出する定点検出手段501を備えている。本明細書では、相電流の波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点を0位相の零クロス点と呼び、相電流の波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点をπ位相の零クロス点と呼ぶ。
【0051】
本実施形態では、バッテリ2の両端の電圧が制限値以下のときには、磁石発電機の電機子巻線102に交流制御電圧を印加せず、電機子巻線102が発生する交流出力をインバータ4内の帰還ダイオードにより構成されるダイオードブリッジ全波整流回路を通して整流してバッテリ2に供給することによりバッテリ2の充電を行う。バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えたときに、基準位相に対して所定の位相角を有する交流制御電圧をバッテリ2からインバータ4を通して電機子巻線102に印加し、これにより磁石発電機1の出力を低下させて、バッテリ2の両端の電圧を制限値以下に低下させる。
【0052】
バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えたときには、先ず交流制御電圧を印加する前の状態で相電流の大きさと回転速度とから相電流の波形上の定点が基準位相に対していかなる位相にあるかを求めて、この相電流の波形上の定点を基準にして磁石発電機の出力を低下させるために適した位相角を有する交流制御電圧の発生タイミングを演算し、演算されたタイミングが検出されたときに最初の交流制御電圧を発生させるようにインバータ4を制御する。その後適宜の方法により、次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算し、演算したタイミングでインバータ4を制御して交流制御電圧を発生させる処理を繰り返すことにより、交流制御電圧を電機子巻線102に繰り返し印加して、磁石発電機の出力を低下させる。バッテリの両端の電圧が制限値を超えたことが検出された後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングは、例えば電機子巻線に先に印加した交流制御電圧の発生タイミングを基準にして演算することができる。
【0053】
相電流の波形上の定点の位相及び交流制御電圧の位相角を定める際の基準とする基準位相としては、電機子巻線に鎖交する磁束の変化を示す波形の位相か、または磁石発電機の構成から理論的に求められる電機子巻線の無負荷誘起電圧の波形の位相を用いる。本実施形態では、電機子巻線102の理論的な無負荷誘起電圧の位相を基準位相として用いるものとする。
【0054】
上記の制御を行わせるため、コントローラ5は、定点検出手段501により検出された相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を検出する相電流位相検出手段502と、相電流位相検出手段502により検出された相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段503と、制御電圧発生タイミング演算手段503により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータ4のスイッチ素子を制御するインバータ制御手段504とを備えている。
【0055】
ここで、図2及び図3を参照して、相電流の大きさと回転速度とから相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を演算することができる理由について説明する。図2は、図1に示した磁石発電機において、バッテリ2の充電電流Iと発電機の回転速度N[rpm]と、バッテリ2からインバータ4を通して電機子巻線102に印加する交流制御電圧の位相角との関係の一例を示している。図2において、曲線aは交流制御電圧の基準位相に対する進み角を12°とした場合の充電電流対回転速度特性であり、曲線bは、交流制御電圧の基準位相に対する進み角を0°とした場合の充電電流対回転速度特性である。また曲線cないしeはそれぞれ交流制御電圧の基準位相に対する遅れ角を12°,24°及び36°とした場合の充電電流対回転速度特性であり、曲線fは交流制御電圧を印加しなかった場合、即ち、磁石発電機1の出力を単に全波整流器により整流してバッテリ2に供給するようにした場合の充電電流対回転速度特性である。
【0056】
図2に示した例において、交流制御電圧の基準位相に対する位相角が遅角36°から進角12°までの範囲では、交流制御電圧の基準位相に対する位相角を進角側に変化させることにより、充電電流(発電機の相電流)を減少させていく制御を行うことができる。また逆に交流制御電圧の位相を遅角側に変化させることにより、充電電流を増加させる制御を行うことができる。
【0057】
図2において、回転速度NをN1に固定した場合には、交流制御電圧の位相角を遅角24°とすると、充電電流Iの大きさを、交流制御電圧を印加しない場合(磁石発電機とバッテリとの間の回路が、磁石発電機の出力を整流する整流器としての機能のみを有する場合)に流れる充電電流Iに等しくすることができる。回転速度がN1で、交流制御電圧の位相角が遅角24°であるときに磁石発電機の各相の巻線の両端に印加されている電圧の位相及び相電流の位相はそれぞれ、交流制御電圧を印加しなかった場合に各相の巻線の両端に印加される電圧の位相及び相電流の位相に等しくなる。
【0058】
図3は、図2に示した特性を有する発電装置において、発電機の回転速度をN1に固定して、交流制御電圧の基準位相を進角12°から遅角36°まで変化させた場合及び交流制御電圧を印加しなかった場合(磁石発電機とバッテリとの間の回路を整流器のみとした場合)のU相の相電流iuの波形及びU相の巻線に印加される交流制御電圧Vuの波形を、U相の巻線に鎖交する磁束φuの波形及びU相の巻線に誘起する理論的な無負荷誘起電圧Vuoの波形と共に示したものである。この例では、図3(B)に示したU相の無負荷誘起電圧Vuoの波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点Oを基準位相として用いている。
【0059】
図3(F),(G)から明らかなように、回転速度がN1であるときに、電機子巻線に交流制御電圧を印加しない場合に流れる相電流iuと同じ大きさの相電流を流すように交流制御電圧の位相角(図示の例では遅角24°)を設定すると、電機子巻線に交流制御電圧を印加した場合に電機子巻線に流れる相電流iuの大きさ、相電流の位相及び電機子巻線の各相の巻線の両端に印加される電圧の位相(交流制御電圧の位相)はそれぞれ、交流制御電圧を電機子巻線に印加しない場合(磁石発電機とバッテリとの間の回路が単なる整流回路である場合)に電機子巻線に流れる相電流の大きさ、相電流の位相及び電機子巻線の各相の巻線の両端に印加される電圧の位相と同じになる。この例において、基準位相(O点)に対して遅角24°の位相角を有する交流制御電圧を電機子巻線102に印加している状態は、電機子巻線102から整流回路を構成する各ダイオードを通して電流が流れている期間と同じ期間の間、各ダイオードに逆並列接続されたスイッチ素子をオンにする状態と同じである。
【0060】
電機子巻線に交流制御電圧を印加しなかった時(非制御時)に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角(非制御時相当位相角)は、相電流の大きさ及び回転速度によって異なり、相電流の大きさと回転速度とが決まれば一定の値をとる。例えば、図2において、回転速度がNoのときには交流制御電圧の位相角を遅角12°としたときに、交流制御電圧を印加した場合も、印加しなかった場合も相電流の位相、相電流の大きさ及び各相巻線に印加される電圧の位相が同じになる。同様に、回転速度がN2のときには、交流制御電圧の位相角を遅角36°としたときに、交流制御電圧を印加した場合も、印加しなかった場合も相電流の位相、相電流の大きさ及び各相巻線に印加される電圧の位相が同じになる。
【0061】
このように、非制御時に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と、相電流の大きさと、回転速度との間には一定の関係があるため、この関係を利用して、相電流の大きさ及び回転速度から、非制御時に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の基準位相に対する位相角を、非制御時相当位相角として求めることができる。
【0062】
電機子巻線のインピーダンス及びバッテリの内部インピーダンスが一定であるとすると、上記のようにして求めた各相の交流制御電圧(電機子巻線の各相巻線の両端に印加されている電圧)の基準位相に対する位相角と、相電流の波形上の定点(この例では、π位相の零クロス点)の基準位相に対する位相角との間には一定の関係があるため、交流制御電圧の位相角がわかれば、そのときの相電流の位相角を推定することができる。
【0063】
例えば、図3に示した例において、非制御時相当位相角が遅角24°であることが分かれば、電機子巻線のインピーダンス及びバッテリの内部インピーダンスから予測される相電流の位相の進角量から、相電流の波形上の定点(P1点)の基準位相(O点)に対する位相角がδであることを推定できる。
【0064】
これらのことから、バッテリ2の両端の電圧(バッテリの内部インピータンスにより変わる)を一定値とし、電機子巻線102のインピーダンスを一定として(電機子巻線の温度を一定として)、交流制御電圧の非制御時相当位相角と磁石発電機の回転速度と相電流の大きさとの間の関係、及び交流制御電圧が印加された電機子巻線の各相巻線の両端の電圧の位相角と相電流の位相角との間の関係を用いて、回転速度Nと、相電流iuの大きさと、相電流iuの波形上の定点(P1点)の基準位相(O点)に対する位相角δとの間の関係を与える相電流位相演算用マップを作成することができ、電機子巻線102に交流制御電圧を印加しない状態で検出された回転速度と相電流の大きさとに対してこのマップを検索することにより、相電流の波形上の定点(図3のP1点)の基準位相(図3のO点)に対する位相角を求めることができる。
【0065】
上記のようにして求めた相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角は、バッテリの両端の電圧を一定とし、電機子巻線のインピーダンスを一定と仮定して作成したマップを用いて演算されたものであるため、バッテリの両端の電圧が変わり(バッテリのインピーダンスが変わり)、電機子巻線の温度によりその内部抵抗が変わり、電機子巻線のインピーダンスが変わると変化してしまう。そのため、相電流位相演算用マップを用いて演算した相電流の波形上の定点の位相は、バッテリの両端の電圧及び電機子巻線の温度に対して補正する必要がある。
【0066】
本実施形態では、相電流位相検出手段502が、定点検出手段501により相電流の波形上の定点(この例ではπ位相の零クロス点)が検出される周期から磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段505と、相電流の大きさと磁石発電機の回転速度と相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角との関係を与える相電流位相演算用マップを電流検出器により検出された相電流の大きさと回転速度演算手段505により演算された回転速度とに対して検索することにより相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角を演算する相電流位相演算手段506と、電圧検出器8により検出されたバッテリ2の両端の電圧と温度センサ9により検出された電機子巻線102の温度とに対して相電流位相演算手段506により演算された位相角を補正する相電流位相補正手段507とにより構成されている。
【0067】
相電流位相補正手段507による相電流の波形上の定点の位相角の補正は、例えば、相電流位相演算手段により演算された相電流の位相角に、電圧検出器により検出された電圧値及び温度センサにより検出された温度に対して演算した補正係数を乗じることにより行うことができる。この補正係数の演算は、実験値に基づいて作成したマップを用いて行うことができる。電圧値及び温度の検出値に対してそれぞれ補正係数を演算するために用いるマップは実験的に作成しておく。
【0068】
上記のようにして、相電流iuの波形上の定点の基準位相に対する位相角δを求めることができれば、この相電流の波形上の定点が検出されたタイミングを基準タイミングとして、発電機の出力を制御するために電機子巻線に印加する必要がある交流制御電圧の発生タイミングを求めることができる。例えば、基準タイミングに対する位相角がγである交流制御電圧の、定点P1に対する位相角αは、α=δ+γとなるため、電気角でαの区間を現在の回転速度で回転するのに要する時間を制御電圧発生タイミング検出用計時データとして演算して、この計時データをタイマに計測させることにより、交流制御電圧の発生タイミングを検出することができ、この発生タイミングで、磁石発電機の回転速度により決まる周波数を有する三相交流制御電圧をインバータ4から出力させるように、インバータ4のスイッチ素子を所定のタイミングでオンオフさせることにより、インバータ4から電機子巻線102に交流制御電圧を印加することができる。
【0069】
コントローラ5にはまた、電圧検出器8により検出されたバッテリの両端の電圧(出力電圧)Eoを制限値ELと比較して、バッテリの両端の電圧が制限値を超えているときに、バッテリの両端の電圧を制限値以下に低下させるために電機子巻線102に印加する必要がある交流制御電圧の基準位相に対する位相角γを決定する制御電圧位相決定手段508が設けられ、この制御電圧位相角決定手段508により決定された位相角が制御電圧発生タイミング演算手段503に与えられる。
【0070】
発電機の出力を低下させるためには、一般には、交流制御電圧の位相を進角側に変化させればよい。制御電圧位相決定手段508は、バッテリの両端の電圧が制限値を超えたときに、交流制御電圧の基準位相に対する位相角を、時間の経過に伴って予め定めた角度ずつ段階的に進角させていくように構成してもよく、バッテリの両端の電圧と制限値との偏差に応じて、マップ演算によりバッテリの両端の電圧を制限値以下に低下させるために必要な交流制御電圧の基準位相に対する位相角(時間により変化しない一定値)を演算するように構成してもよい。いずれにしても、制御電圧位相決定手段508は、バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えているときに、各瞬時に電機子巻線に印加する交流制御電圧の基準位相に対する位相角γを決定して、決定した位相角を制御電圧発生タイミング演算手段503に与える。
【0071】
磁石発電機の回転速度が図2に示したN1であるときには、図3に示したように、電機子巻線102に印加した際に、インバータ4が単なる整流器として機能する場合に流れる相電流iuと同じ相電流を流すことになる交流制御電圧Vuの基準位相Oに対する位相角(非制御時相当位相角)γは24°であり、相電流iuの波形上の定点P1の基準位相Oに対する位相角をδとした場合、上記交流制御電圧Vuの定点P1に対する位相角α(図3FのP1点からS1点までの角度)は、α=δ+24°である。
【0072】
ここで、バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えたために、制御電圧位相決定手段508が、基準位相(O点)に対する位相角が進角0°の交流制御電圧(無負荷誘起電圧Vuoと同位相の交流制御電圧)を電機子巻線102に印加することを決定したものとする。図3(D)に示すように、進角0°の交流制御電圧Vuの定点P1に対する位相角α1は、α1=δ+0°=δである。このとき制御電圧発生タイミング演算手段503は、電気角α1に相当する区間を現在の発電機の回転速度で回転するのに要する時間を制御電圧発生タイミング検出用の計時データとして演算するとともに、磁石発電機の回転速度により決まる電機子巻線102の誘起電圧と周波数が等しい交流制御電圧を電機子巻線102に印加する際のインバータのスイッチ素子のオンオフのタイミングを定めるためにタイマに計測させる計時データを演算し、マイクロプロセッサ内のタイマに制御電圧発生タイミング検出用計時データの計測を開始させる。相電流の波形上の定点の位相角の演算及び制御電圧発生タイミング検出用の計時データの演算は、ほぼ瞬時に行われるため、タイマが上記計時データの計測を開始するタイミングは、相電流の波形上の定点P1が検出されたタイミングとみなすことができる。
【0073】
タイマが制御電圧発生タイミング検出用計時データの計測を完了すると(図3Dの点S1′が検出されると)、インバータ制御手段504が、制御電圧発生タイミング演算手段503により演算されたタイミングでインバータ4のスイッチ素子をオンオフ制御することにより、バッテリ2の両端の電圧を図3(D)に示された進角0°の交流制御電圧に変換して、該交流制御電圧を電機子巻線102に印加する。
【0074】
インバータ4を制御して直流電圧を交流電圧に変換する際には、同時にオン状態にされたときにインバータの直流側端子4a,4b間を短絡しないように配慮しつつ、ブリッジの上辺を構成する複数のスイッチ素子及びブリッジの下辺を構成する複数のスイッチ素子の中からそれぞれ1つずつ選択したスイッチ素子を同時にオン状態にする対のスイッチ素子として、同時にオン状態にする対のスイッチ素子の組み合わせを適宜のタイミングで切り換えるように各スイッチ素子をオンオフ制御する。
【0075】
図1に示した発電装置において、磁石発電機の回転速度がN1であるときに、バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えたとする。このときコントローラ5の相電流位相演算手段506は、電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で、電流検出器6により検出された相電流iuの大きさ(平均値)と、回転速度演算手段505により演算された回転速度とから相電流iuの波形上の定点P1の基準位相Oに対する位相角を演算する。相電流位相補正手段507は、この位相角をバッテリ2の両端の電圧と電機子巻線の温度とに対して補正して、相電流の波形上の定点P1の基準位相Oに対する位相角がδであることを検出する。このときバッテリ2には、基準位相に対して遅角24°の位相角を有する交流制御電圧Vuを電機子巻線102に印加した場合に流れる相電流iuと同じ大きさの充電電流が流れている。従って、磁石発電機の出力を低下させて、バッテリの両端の電圧を制限値以下に低下させるためには、交流制御電圧の位相角を遅角24°よりも進角させる必要がある。
【0076】
ここで制御電圧位相決定手段508が、充電電流を減少させるために、交流制御電圧の位相角を進角0°とすることを決定したとする。このとき制御電圧発生タイミング演算手段503は、相電流の波形上の定点P1を基準にして、進角0°の交流制御電圧Vuの位相角α1を演算し、電気角でα1の区間を現在の回転速度で回転するのに要する時間を制御電圧発生タイミング検出用計時データとして演算するとともに、電機子巻線102の誘起電圧と同じ周波数の交流電圧をインバータ4から電機子巻線102に印加する際のインバータの各スイッチ素子のオンオフのタイミングを求めるためにタイマに計測させる計時データを演算する。インバータ制御手段504は、制御電圧発生タイミング演算手段503が演算した計時データを直ちにタイマにセットしてその計測を開始し、該タイマが計時データの計測を完了したとき(図3Dに示した点S1′が検出されたとき)に、バッテリ2から電機子巻線102に進角0°の交流制御電圧を印加するように、インバータ4のスイッチ素子を制御する。
【0077】
図1に示したコントローラ5の各手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートを図4及び図5に示した。図4は制御電圧位相決定手段508を実現するためにマイクロプロセッサに微小時間間隔で繰り返し実行させるタスクのアルゴリズムを示したものであり、図5は出力電圧(バッテリの両端の電圧)Eoが制限値ELを超えたときに実行されるタスクのアルゴリズムを示したものである。
【0078】
図4に示したタスクが開始されると、先ずステップS101において電圧検出器8が検出している出力電圧(バッテリの両端の電圧)Eoを読み込み、ステップS102において、読み込んだ出力電圧Eoが制限値EL以下であるか否かを判定する。その結果、出力電圧Eoが制限値EL以下であるときには何もしないでこの処理を終了する。
【0079】
ステップS102において出力電圧Eoが制限値ELを超えていると判定されたときには、ステップS103に進んで出力電圧Eoを制限値EL以下に制限するために電機子巻線に印加する交流制御電圧の位相角を決定する。この交流制御電圧の位相角は、出力電圧Eoと制限値ELとの偏差に応じて演算するようにしてもよく、単位時間当たりの進角量の形で予め用意して記憶させておいてもよい。出力電圧が制限値を超えたときに交流制御電圧の位相を時間の経過に伴って段階的に進角させる場合、進角量は一定でも良く、時間の経過に伴って変化させる(例えば段階的に大きくしていく)ようにしてもよい。
【0080】
ステップS103で交流制御電圧の位相角を決定した後、ステップS104に移行して、バッテリ2からインバータ4を通して電機子巻線102に交流制御電圧を印加することにより磁石発電機の出力を低下させるベクトル制御を行わせる。
【0081】
ベクトル制御では、図5に示すタスクを行わせる。図5に示すタスクが開始されると、先ずステップS201で相電流の検出値を読み込む。次いでステップS202で、零クロス検出回路7の出力信号から、相電流の波形上の定点(π位相の零クロス点)P1を検出し、この定点P1が検出される周期(時間間隔)から磁石発電機の回転速度N[rpm]を演算する。零クロス検出回路7は、相電流の波形が負の半波から正の半波に移行する際の0位相の零クロス点と、同波形が正の半波から負の半波に移行する際のπ位相の零クロス点とで極性が異なるパルス信号を発生するため、π位相の零クロス点は容易に識別することができる。
【0082】
ステップS202で回転速度を演算した後、ステップS203に進んで、ステップS201で読み込んだ相電流の大きさ(平均値)と回転速度とに対して前述の相電流位相演算用マップを検索することにより、相電流の波形上の定点P1の位相を演算する。次いでステップS204でバッテリ2の両端の電圧と電機子巻線の温度とを読み込み、ステップS205に進んで、ステップS203で演算された定点P1の位相をバッテリ電圧と電機子巻線の温度とに対して補正する。次いでステップS206で電機子巻線102の各相の巻線に最初に印加する交流制御電圧の定点P1の位相に対する位相角α1(各相毎に異なる値をとる)を演算し、この位相角α1と回転速度とから各相の巻線に印加する交流制御電圧を発生させるタイミング(図3Dの点S1′)を検出するためにタイマに計測させる制御電圧発生タイミング検出用計時データを演算するとともに、各相の交流制御電圧を発生させる際のインバータの各スイッチ素子のオンオフのタイミングを検出するためにタイマに計測させる計時データを演算する。
【0083】
次いでステップS207に進んで交流制御電圧を電機子巻線102に印加するための処理を行わせる。この処理では、ステップS206で演算された制御電圧発生タイミング検出用計時データをタイマに計測させ、その計測が完了したときにステップS206で演算されたタイミングでインバータ4のスイッチ素子をオンオフさせて、電機子巻線102の出力電圧と同じ周波数を有する三相交流電圧をインバータ4から発生させ、この三相交流電圧を交流制御電圧として電機子巻線102に印加する。
【0084】
ステップS207で、出力電圧が制限値を超えた後最初の交流制御電圧を電機子巻線102に印加した後、ステップS208で出力電圧Eoが制限値EL以下であるか否かを判定し、制限値以下である場合には、以後何もしないでこのタスクを終了する。
【0085】
ステップS208で出力電圧Eoが制限値ELを超えていると判定されたときには、ステップS209で相電流の波形上の定点P1の検出周期から発電機の回転速度を演算する。次いでステップS210で次に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングとインバータのスイッチ素子のオンオフタイミングとを演算し、ステップS208に戻って交流制御電圧を発生させるための処理を行わせる。
【0086】
ここで、次に発生させる交流制御電圧の基準位相に対する位相角と前回発生させた交流制御電圧の基準位相に対する位相角との差をΔγ(≧0)とすると、ステップS210における交流制御電圧の発生タイミングの演算は、前回発生させた交流制御電圧の発生タイミングから次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングまでの時間(電気角で2π±Δγの区間を回転するのに要する時間)をステップS209で演算された回転速度を基に演算することにより行う。
【0087】
出力電圧Eoが制限値ELを超えている間ステップS207ないしS210を繰り返し、ステップS207で出力電圧Eoが制限値EL以下になったと判定されたときに図5のタスクを終了させる。
【0088】
図5に示したアルゴリズムによりベクトル制御を行わせる場合、ステップS202において相電流の波形上の定点を検出する過程により定点検出手段501が構成され、ステップ202において回転速度を演算する過程により回転速度演算手段505が構成される。またステップS205により相電流位相補正手段507が構成され、ステップS206,S208及びS210により制御電圧発生タイミング演算手段が構成される。更にステップS207によりインバータ制御手段504が構成される。
【0089】
上記の説明では、出力電圧Eoが制限値ELを超えた後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを、先に発生させた交流制御電圧の発生タイミングを基準にして求めるとしたが、出力電圧Eoが制限値ELを超えた後、2回目以降に印加する交流制御電圧の発生タイミングを、相電流の波形上の定点の位相を基準にして求めることもできる。このように、出力電圧Eoが制限値ELを超えた後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを相電流の波形上の定点の位相を基準にして求めるようにした実施形態の構成を図6に示した。
【0090】
図6に示された実施形態では、コントローラ5が、定点検出手段501と、第1の相電流位相検出手段502Aと、第2の相電流位相検出手段502Bと、第1の制御電圧発生タイミング演算手段503と、第2の制御電圧発生タイミング演算手段511と、インバータ制御手段504と、制御電圧位相決定手段508とにより構成されている。
【0091】
定点検出手段501は、相電流の波形の1/2周期に相当する期間が経過する毎に現れる定点を検出するように構成されており、本実施形態では、零クロス検出回路7が検出する相電流の0位相の零クロス点とπ位相の零クロス点との双方を区別して検出するように構成されている。本実施形態では、これら2つの零クロス点のうち、π位相の零クロス点を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを求める。
【0092】
第1の相電流位相検出手段502Aは、回転速度演算手段505と、第1の相電流位相演算手段506と、第1の相電流位相補正手段507とにより構成されている。ここで、回転速度演算手段505は、相電流の0位相の零クロス点及びπ位相の零クロス点がそれぞれ検出された時刻を記憶していて、相電流の1/2周期に相当する時間から磁石発電機の回転速度を演算するように構成されている。
【0093】
第1の相電流位相演算手段506及び第1の相電流位相補正手段507はそれぞれ図1に示された相電流位相演算手段506及び相電流位相補正手段507と同様に構成されていて、第1の相電流位相演算手段506は、相電流の波形の1周期の期間に検出される2つの定点の内の一方(本実施形態ではπ位相の零クロス点)を特定の定点として、回転速度演算手段505により演算された回転速度と電流検出器6により検出された相電流の大きさとに対してマップを検索することにより特定の定点の基準位相に対する位相角を演算する。
【0094】
また第1の相電流位相補正手段507は、電圧検出器8により検出されたバッテリ2の両端の電圧Eoと温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して第1の相電流位相演算手段506により演算された位相角を補正する。
【0095】
第2の位相電流検出手段502Bは、出力電圧が制限値を超えた後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを求める際の基準として用いる相電流の波形上の定点の位相を検出する手段で、第2の相電流位相検出手段509と、第2の相電流位相補正手段510とにより構成されている。ここで、第2の相電流位相検出手段509は、先に発生させた交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、該交流制御電圧の発生タイミングの後に現れる相電流の波形上の特定の定点の位相を検出する手段であり、第2の相電流位相補正手段510は、第2の相電流位相検出手段509により検出された相電流の波形上の定点の位相を回転速度演算手段505により演算された回転速度と電圧検出器8により検出されたバッテリの両端の電圧と温度センサ9により検出された温度とに対して補正する手段である。
【0096】
第2の相電流位相補正手段510により補正された相電流の波形上の定点の基準位相に対する位相角は、第2の制御電圧発生タイミング演算手段511に与えられる。第2の制御電圧発生タイミング演算手段511は、第2の相電流位相補正手段510により補正された相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを演算する手段で、図1に示した制御電圧発生タイミング演算手段511と同様に構成されている。
【0097】
第1の制御電圧発生タイミング演算手段503が演算した交流制御電圧の発生タイミングを検出するためにタイマに計測させる計時データ及びインバータのスイッチ素子のオンオフのタイミングを検出するためにタイマに計測させる計時データは、インバータ制御手段504に与えられる。インバータ制御手段504は、バッテリ2の両端の電圧Eoが制限値ELを超えた後、最初に交流制御電圧を発生させる際には、第1の制御電圧発生タイミング演算手段503により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させ、バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えた後2回目以降に交流制御電圧を発生させる際には、第2の制御電圧発生タイミング演算手段511により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータのスイッチ素子を制御する。
【0098】
図6に示した実施形態において、制御電圧位相決定手段508は、図1に示した実施形態と同様に構成されており、バッテリ2の両端の電圧が制限値を超えているときに、各瞬時における交流制御電圧の基準位相に対する位相角γを決定して、決定した位相角を第1の制御電圧発生タイミング演算手段503及び第2の制御電圧発生タイミング演算手段511に与える。
【0099】
図6に示した第2の相電流位相演算手段509は、次のようにして相電流の波形上の定点を演算する。今、回転速度がN1のときに出力電圧Eoが制限値ELを超え、図3(D)に示すように、第1の相電流位相検出手段502Aにより検出された相電流の波形上の特定の定点P1に対してα1の位相角を有する最初の交流制御電圧Vuを発生させたとする。このとき第2の相電流位相演算手段509は、交流制御電圧の発生タイミング(図3DのS1′点)から、その直後に現れる相電流の0位相の零クロス点P2′が検出されるタイミングまでの時間(図3Dに示した角度θ0に相当する時間)T0を計測する。また最初に印加した交流制御電圧の発生タイミング(S1′点)から、相電流の次の定点P1′が検出されるまでの時間(図示の角度βに相当する時間)Tβを計測し、図示のβ−θ0(=π)の区間に相当する時間Tβ−T0から発電機の現在の回転速度を演算する。そして、演算した回転速度とTβとから、角度β(印加した交流制御電圧と相電流の位相差)を演算し、δ′=2π−(β+γ)(γは交流制御電圧の基準位相に対する位相角で、遅角位相のときに+の符号をとる)により、交流制御電圧が印加された後に現れる相電流の波形上の定点P1′の基準位相に対する位相角δ′を演算する。
【0100】
このようにして交流制御電圧が印加された後の相電流の波形上の特定の定点P1′の基準位相に対する位相角δ′を求め、この特定の定点P1′の位相を基準にして、次に印加する交流制御電圧(図示の例では進角0°の交流制御電圧)の発生タイミングまでの角度α2を求める。そして電気角でα2の区間を発電機が回転するのに要する時間を制御電圧発生タイミング検出用計時データとして演算し、この計時データをタイマに計測させて、出力電圧が制限値を超えた後2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを検出する。
【0101】
図6に示した実施形態において、ベクトル制御を行うためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図7に示した。制御電圧位相決定手段508を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムは図4に示したものと同様である。
【0102】
図7に示したタスクは、出力電圧が制限値ELを超え、図4のステップS103により交流制御電圧の位相角が決定されたときに実行される。図7に示したアルゴリズムによる場合には、先ずステップS301で相電流の検出値を読み込む。次いでステップS302で、零クロス検出回路7の出力信号から、相電流の波形上の特定の定点(π位相の零クロス点)を検出し、この特定の定点の1つ前の定点(0位相の零クロス点)が検出されてから今回特定の定点が検出されるまでの時間(相電流の半波の区間に相当する時間)から磁石発電機の回転速度N[rpm]を演算する。
【0103】
ステップS302で回転速度を演算した後、ステップS303に進んで、ステップS301で読み込んだ相電流の大きさ(平均値)とステップS302で演算された回転速度とに対して前述の相電流位相演算用マップを検索することにより、相電流の波形上の特定の定点P1の位相を演算する。次いでステップS304でバッテリ2の両端の電圧と電機子巻線の温度とを読み込み、ステップS305に進んで、ステップS303で演算された定点P1の位相をバッテリ電圧と電機子巻線の温度とに対して補正する。次いでステップS306で出力電圧Eoと制限値ELとを比較し、出力電圧Eoが制限値EL以下である場合には以後何もしないでこのタスクを終了する。
【0104】
ステップS306で出力電圧Eoが制限値を超えていると判定されたときには、ステップS307に進んで、出力電圧Eoを制限値EL以下にするために電機子巻線102の各相の巻線に最初に印加する交流制御電圧の位相を進み側に変化させるべく、交流制御電圧の定点P1の位相に対する位相角α1(各相毎に異なる値をとる)を演算し、この位相角α1と回転速度とから各相の巻線に印加する交流制御電圧を発生させるタイミング(図3Dの点S1′)を検出するためにタイマに計測させる制御電圧発生タイミング検出用計時データを演算するとともに、各相の交流制御電圧を発生させる際のインバータの各スイッチ素子のオンオフのタイミングを演算する。
【0105】
次いでステップS308に進んで交流制御電圧を電機子巻線102に印加するための処理を行わせる。この処理では、ステップS307で演算された制御電圧発生タイミング検出用計時データをタイマに計測させ、その計測が完了したときにステップS307で演算されたタイミングでインバータ4のスイッチ素子をオンオフさせて、電機子巻線102の出力電圧と同じ周波数を有する三相交流電圧をインバータ4から発生させ、この三相交流電圧を交流制御電圧として電機子巻線102に印加する。
【0106】
ステップS308で、出力電圧Eoが制限値ELを超えた後最初の交流制御電圧を電機子巻線102に印加した後、ステップS309で電機子巻線に印加した交流制御電圧と相電流の位相差βを検出し、ステップS310において、(β−θ0)度の区間に相当する時間から磁石発電機の回転速度を演算する。次いでステップS311で現在の相電流の波形上の特定の定点の位相角δ′を推定する。
【0107】
そして、ステップS312でバッテリ電圧と電機子巻線の温度とを読み込み、ステップS313で、相電流の波形上の特定の定点の位相を補正する。この補正は、第1の相電流位相補正手段による相電流の位相の補正と同じようにして行う。次いで、ステップS314で出力電圧Eoと制限値ELとを比較し、出力電圧Eoが制限値EL以下であるときには、ステップS315に進んで、電機子巻線に印加する交流制御電圧の位相を遅らせる方向に変化させるべく、該交流制御電圧の位相角α2を相電流の波形上の特定の定点の位相を基準にして演算し、この位相角α2と回転速度とから各相の巻線に印加する交流制御電圧を発生させるタイミングを検出するためにタイマに計測させる制御電圧発生タイミング検出用計時データを演算するとともに、各相の交流制御電圧を発生させる際のインバータの各スイッチ素子のオンオフのタイミングを演算する。
【0108】
次いでステップS316に進み、ステップS315で演算された位相角α2が、各回転速度において電機子巻線に交流制御電圧を印加しなかった場合に流れる相電流(電機子巻線と電圧蓄積手段との間の回路が単なる整流器として機能する状態で流れる相電流)と同じ大きさの相電流を流す交流制御電圧の位相角(非制御時相当位相角)α0よりも遅れているか否かを判定する。その結果位相角α2が非制御時相当位相角α0よりも遅れていないと判定されたときには、ステップS317に進んで制御に異常があるか否かを判定し、異常がない場合には、ステップS308に戻って交流制御電圧を印加するための処理を行わせて、出力電圧Eoを制限値EL以下に保つための制御を継続する。ステップS317で制御に異常があると判定されたときには、ステップS301に戻って制御をやり直し、交流制御電圧を印加しない状態で相電流の波形上の特定の定点の基準位相に対する位相角を改めて求める。
【0109】
ステップS317により判定する制御の異常とは、例えば、交流制御電圧を電機子巻線に印加する制御を一定時間継続させても出力電圧Eoが制限値以下にならない状態や、交流制御電圧と相電流との位相差βが異常な値として演算された状態(相電流の位相を正しく推定できない状態)である。
【0110】
ステップS316で位相角α2が非制御時相当位相角α0よりも遅れていると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。
【0111】
図7のタスクのステップS314で出力電圧Eoが制限値ELを超えていると判定されたときには、ステップS318に移行して、交流制御電圧の位相角を進ませるべく、該交流制御電圧の位相角α2を相電流の波形上の特定の定点の位相を基準にして演算し、この位相角α2と回転速度とから各相の巻線に印加する交流制御電圧を発生させるタイミングを検出するためにタイマに計測させる制御電圧発生タイミング検出用計時データを演算するとともに、各相の交流制御電圧を発生させる際のインバータの各スイッチ素子のオンオフのタイミングを演算して、ステップS316に移行する。
【0112】
図7に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS302において相電流の波形上の定点を検出する過程により定点検出手段501が構成され、ステップ302において回転速度を演算する過程により回転速度演算手段505が構成される。またステップS305により第1の相電流位相補正手段507が構成され、ステップS307により第1の制御電圧発生タイミング演算手段503が構成される。更にステップS309ないしS311により第2の相電流位相演算手段509が構成され、ステップS312及びS313により第2の相電流位相補正手段510が構成される。またステップS308によりインバータ制御手段504が構成される。
【0113】
上記の構成では、交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、該交流制御電圧の発生タイミングの後に現れる相電流の波形上の特定の定点の位相を検出する第2の相電流位相検出手段509と、この第2の相電流位相検出手段により検出された相電流の位相を回転速度演算手段505により演算された回転速度と電圧検出器8により検出された電圧と温度センサ9により検出された電機子巻線の温度とに対して補正する第2の相電流位相補正手段510とを設けて、第2の相電流位相補正手段510により補正された相電流の位相を基準にして2番目以降に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算するように第2の制御電圧発生タイミング演算手段を構成しているが、第2の相電流位相検出手段509及び第2の相電流位相補正手段510を省略して、交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算するように第2の制御電圧発生タイミング演算手段511を構成することもできる。
【0114】
上記の各実施形態においては、1相の相電流を検出する電流検出器6を設けて、この電流検出器により検出された1相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして三相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成しているが、三相の各相毎に相電流を検出する電流検出器を設けて、位相検出手段により検出された各相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成してもよい。三相の各相毎に相電流を検出する電流検出器を設けて、位相検出手段により検出された各相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるようにすると、交流制御電圧の発生タイミングの精度を高めることができる。
【0115】
またU相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして、U相より位相が遅れたV相の交流制御電圧の発生タイミングを求め、V相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして、V相よりも位相が遅れたW相の交流制御電圧の発生タイミングを求め、W相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして、W相よりも位相が遅れたU相の交流制御電圧の発生タイミングを求める等、位相が進んだ相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして、位相が遅れた他の相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるようにすることもできる。
【0116】
上記の説明では、磁石発電機の相電流の波形上の定点の位相を回転速度と相電流の大きさとに対して演算して、相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにしたが、磁石発電機の各相の巻線の両端の電圧を相電圧として検出して、この相電圧の波形上の定点の位相を回転速度と相電流の大きさとに対して演算し、演算した相電圧の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを定めるようにすることもできる。
【0117】
相電圧の波形上の定点の位相を回転速度と相電流の大きさとに対して演算して、演算した相電圧の波形上の定点の位相を基準に交流制御電圧を発生させるタイミングを定める場合のコントローラ5の構成例を図8に示した。図8に示した例では、相電流を検出する電流検出器6の他に、相電圧を検出する電圧検出回路10と、電圧検出回路10により検出された相電圧の零クロス点を検出する零クロス検出回路7′とが設けられている。コントローラ5は、定点検出手段501′と、回転速度演算手段505′と、相電圧位相演算手段506′と、制御電圧発生タイミング演算手段503と、インバータ制御手段504と、制御電圧位相決定手段508とにより構成されている。
【0118】
定点検出手段501′は、零クロス検出回路7′により検出される零クロス点の中から相電圧の波形上の定点を検出する手段であり、回転速度演算手段505′は、定点検出手段501′により相電圧の波形上の定点が検出される周期から磁石発電機の回転速度を演算する手段である。また相電圧位相演算手段506′は、相電流の大きさと磁石発電機の回転速度と相電圧の波形上の定点の基準位相に対する位相角との関係を与える相電圧位相演算用マップを電流検出器6により検出された相電流の大きさと回転速度演算手段505′により演算された回転速度とに対して検索することにより相電圧の基準位相に対する位相角を演算する手段である。制御電圧発生タイミング演算手段503は、相電圧位相演算手段506′により演算された相電圧の定点の位相を基準にして交流制御電圧を発生させるタイミングを演算するように構成され、インバータ制御手段504は、制御電圧発生タイミング演算手段503により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させるようにインバータのスイッチ素子を制御するように構成されている。
【0119】
上記相電圧位相演算用マップは、電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で電機子巻線に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と磁石発電機の回転速度と相電流の大きさとの間の関係を用いて作成される。
【0120】
相電圧の波形上の定点は、相電圧波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点(π位相の零クロス点)、相電圧の波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点(0位相の零クロス点)、相電圧の波形の正の半波若しくは負の半波のピーク点、または相電圧の正の半波若しくは負の半波が設定されたしきい値に達する点のいずれかとすることができるが、本実施形態では、相電圧波形のπ位相の零クロス点を定点として用いている。。
【0121】
相電圧位相検出手段506′は、1相の相電圧の波形上の定点の位相のみを検出するように構成してもよく、三相の各相の相電流の位相を検出するように構成してもよい。1相の相電圧の波形上の定点の位相のみを検出するように相電圧検出手段を構成する場合には、1相の相電圧の位相を基準にして三相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成する。また三相の各相の相電流の位相を検出するように相電圧検出手段を構成する場合には、相電圧位相検出手段により検出された各相の相電圧の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段503を構成する。
【0122】
相電流の大きさと回転速度と相電圧(交流制御電圧)の基準位相に対する位相との間には、図2に示す関係があるため、この関係を利用して、相電流の大きさと回転速度とに対して、交流制御電圧が印加されていない状態での相電圧の基準位相に対する位相角を演算するマップを容易に作成することができる。例えば回転速度がN1であるときには、交流制御電圧を印加していない状態で検出された相電流の大きさ(例えば平均値)と回転速度とに対して上記のマップを検索することにより、相電圧の波形上の定点S2の基準位相に対する位相角が遅角π−24°であることを検出することができ、これより相電圧のπ位相の零クロス点S2は基準位相(O点)に対してπ−24°遅れていることが分かる。このようにして、相電圧の波形上の定点の位相を求めることができれば、この相電圧の波形上の定点を基準にして電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを求めることができる。例えば、相電圧の波形上の定点S1が検出されたときに電気角でπ−24°の区間を回転するのに要する時間を演算すれば、進角0°の交流制御電圧の発生タイミングを求めることができる。
【0123】
この場合、制御電圧発生タイミング演算手段503は、出力電圧が制限値を超えた後、2回目以降に電機子巻線に印加する交流制御電圧の発生タイミングを演算する際には、先に印加された交流制御電圧の波形上の定点の位相を基準にして次に印加する交流制御電圧の発生タイミングを演算する。例えば、図3(D)においてS1′点で交流制御電圧を発生させた後、次のS1′で再度交流制御電圧を発生させる際には、S1′点よりπだけ遅れたπ位相の零クロス点S2′を定点として、S2′点から電気角でπの区間を回転するのに要する時間を演算することにより、次に印加する交流制御電圧の発生タイミングを求めることができる。一般に、電機子巻線に印加した交流制御電圧の基準位相に対する遅れ角をγとした場合、次の交流制御電圧の発生タイミングを演算する際の基準とする相電圧の波形上の定点の位相は基準位相に対してπ+γ遅れており、電機子巻線に印加する交流制御電圧の基準位相に対する進み角をγとした場合には、次の交流制御電圧の発生タイミングを演算する際の基準とする相電圧の波形上の定点の位相は基準位相に対してπ−γだけ遅れている。このように、先に電機子巻線に印加した交流制御電圧の波形上の定点の基準位相に対する位相角は常に特定できるので、この定点の位相を基準にして次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを求めることができる。
【0124】
図8に示したコントローラを構成する各手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図9に示した。図9に示したタスクは、零クロス検出回路7′が相電圧のπ位相の零クロス点を検出する毎に実行される。このアルゴリズムによる場合には、先ずステップS401で出力電圧Eoが制限値EL以下であるか否かを判定する。その結果、出力電圧Eoが制限値以下であると判定されたときには、ステップS402に移行してフラグFを0にリセットしてこのタスクを終了する。
【0125】
ステップS401で出力電圧Eoが制限値以下でないと判定されたときには、ステップS403に進んで、クロックパルスを計数しているマイクロプロセッサ内のタイマの計測値から前回相電圧の波形上の定点が検出されてから今回相電圧の波形上の定点が検出されるまでの時間を測定する。次いでステップS404に進み、ステップ403で計測した時間(電気角で2πの区間を回転するのに要した時間)から回転速度を演算する。
【0126】
回転速度を演算した後、ステップS405においてフラグFが1にセットされているか否かを判定する。その結果フラグFが1にセットされていない場合には、ステップS406に移行して、電流検出器6が検出している相電流の平均値を読み込み、ステップS407で相電流の大きさと回転速度とに対してマップを検索することにより、相電圧の波形上の定点(π位相の零クロス点)の基準位相に対する位相角を演算する。次いでステップS408において、相電圧の波形上の定点の位相に対して、次に印加する交流制御電圧の0位相の零クロス点までの角度αを演算し、ステップS409で、電気角αの区間を回転するのに要する時間を次に印加する交流制御電圧の発生タイミングを計測するための計時データとして演算すると共に、該交流制御電圧を発生させるために必要なインバータのスイッチ素子のオンオフのタイミングを定めるためにタイマに計測させる計時データを演算する。次いでステップS410で、タイマに上記計時データの計測を開始させ、その計測が完了したときにインバータ4に駆動信号を与えて、インバータ4から交流制御電圧を出力させる。インバータ4から交流制御電圧を出力させた後、ステップS411でフラグFを1にセットし、このタスクを終了する。
【0127】
相電圧の波形上の次の定点(π位相の零クロス点)が検出されて、図9のタスクが再度実行されたときにステップS401で出力電圧Eoが制限値EL以下でないと判定されると、ステップS403及びS404が実行されて回転速度が演算され、ステップS405でフラグFが1であるか否かが判定される。このときフラグFは1になっているため、相電流の波形上の定点の位相を求めるステップS406及びS407が省略されて、ステップS408及びS409が実行され、次に印加する交流制御電圧の発生タイミングを計測するためにタイマに計測させる計時データとインバータのスイッチ素子のオンオフのタイミングを定めるためにタイマに計測させる計時データとが演算される。
【0128】
電機子巻線に交流制御電圧を印加することにより出力電圧が制限値以下になると、図9のステップS401でEo≦ELであると判定されるため、交流制御電圧の印加が停止される。これにより磁石発電機の出力が上昇して出力電圧が制限値を超えると再度電機子巻線に所定の位相角を有する交流制御電圧を印加するベクトル制御が行われて、磁石発電機の出力が抑制される。これらの動作の繰り返しにより出力電圧Eoが制限値ELを超えないように制御される。
【0129】
図9に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS403及びS404により回転速度演算手段505′が構成され、ステップS406及びS407により相電圧位相演算手段506′が構成される。またステップS408及びS409により制御電圧発生タイミング演算手段503が構成され、ステップS410によりインバータ制御手段504が構成される。
【0130】
なお図8の実施形態において、制御電圧発生位相決定手段508を構成するタスクのアルゴリズムは図4に示したものと同様でよい。
【0131】
上記の各実施形態においては、1相の相電流を検出する電流検出器6を設けて、この電流検出器により検出された1相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして三相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成しているが、三相の各相毎に相電流を検出する電流検出器を設けて、位相検出手段により検出された各相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成してもよい。
【0132】
上記のように、相電圧の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを求める場合も、1相の相電圧のみを検出して、1相の相電圧の波形上の定点の位相を基準にして三相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成してもよく、三相の各相の相電圧の波形上の定点の位相を検出して、各相の相電圧の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように制御電圧発生タイミング演算手段を構成してもよい。
【0133】
また位相が進んだ相の相電圧の波形上の定点の位相を基準にして、位相が遅れた他の相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように、制御電圧発生タイミング演算手段を構成することもできる。
【0134】
上記の説明では、磁石発電機として3相の電機子巻線を有するものを用いる場合を例にとったが、本発明はn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有する磁石発電機を用いる場合に適用することができる。
【0135】
上記の説明では、インバータの直流側端子間にバッテリを電圧蓄積手段として接続して、磁石発電機の整流出力でこのバッテリを充電する場合を例にとったが、インバータの直流側端子間にコンデンサを電圧蓄積手段として接続して、このコンデンサの両端に負荷を接続する場合にも本発明を適用することができる。
【0136】
また磁石発電機の出力端子と電圧蓄積手段としてのコンデンサとの間に第1のインバータを設けて、磁石発電機の交流出力を第1のインバータ内の帰還ダイオードにより構成される整流回路を通して整流してコンデンサに印加し、このコンデンサの両端の電圧を第2のインバータの直流側端子間に印加して、該第2のインバータによりコンデンサの両端の電圧を一定の周波数(例えば商用周波数)を有する交流電圧に変換するようにしたインバータ発電機にも本発明を適用することができる。この場合には、第1のインバータの直流側端子間に接続されたコンデンサの両端の電圧で第1のインバータを通して磁石発電機の電機子巻線に、基準位相に対して所定の位相角を有する交流制御電圧を印加するこによりベクトル制御を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施形態の構成を示した構成図である。
【図2】磁石発電機の整流出力によりバッテリを充電する場合の充電電流対回転速度特性を、電機子巻線に印加する交流制御電圧の位相角をパラメータとして示したグラフである。
【図3】磁石発電機の回転速度が図2に示したN1であるときにU相の巻線に流れる相電流の波形と相巻線の両端に印加される電圧の波形とを、交流制御電圧の種々の位相角に対して示した波形図である。
【図4】図1に示した実施形態で用いるコントローラに設ける制御電圧位相決定手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図5】図1に示した実施形態で用いるコントローラを構成する各手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態の構成を示した構成図である。
【図7】図6に示した実施形態で用いるコントローラを構成する各手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の更に他の実施形態の構成を示した構成図である。
【図9】図8に示した実施形態で用いるコントローラを構成する各手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0138】
1 磁石発電機
2 バッテリ
3 負荷
4 インバータ
5 コントローラ
501 定点検出手段
502 相電流位相検出手段
502A 第1の相電流位相検出手段
502B 第2の相電流位相検出手段
503 制御電圧発生タイミング演算手段
504 インバータ制御手段
505 回転速度演算手段
506 相電流位相演算手段または第1の相電流位相演算手段
507 相電流位相補正手段または第1の相電流位相補正手段
508 制御電圧位相決定手段
509 第2の相電流位相演算手段
510 第2の相電流位相補正手段
511 第2の制御電圧発生タイミング演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石界磁を有するロータとn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有するステータとを備えた磁石発電機と、n相ブリッジ接続されたスイッチ素子と各スイッチ素子に逆並列接続された帰還ダイオードとを備えて交流側端子が前記電機子巻線の出力端子に接続され、直流側端子間に電圧蓄積手段と負荷とが並列に接続されるn相の電圧形インバータと、前記磁石発電機の出力電圧と周波数が等しく、予め定めた基準位相に対して所定の位相角を有するn相の交流制御電圧を前記電圧蓄積手段から前記インバータを通して前記電機子巻線に印加するように前記インバータを制御することにより前記電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御するコントローラとを備えた発電装置であって、
前記磁石発電機の相電流を検出する電流検出器が設けられ、
前記コントローラは、
前記相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段と、
前記定点検出手段により検出された相電流の波形上の定点の前記基準位相に対する位相角を検出する相電流位相検出手段と、
前記相電流位相検出手段により検出された相電流の波形上の定点の位相を基準にして前記交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段と、 前記制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで前記交流制御電圧を発生させるように前記インバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段と、
を具備してなる発電装置。
【請求項2】
前記電圧蓄積手段の両端の電圧を検出する電圧検出器と、前記磁石発電機の電機子巻線の温度を検出する温度センサとが更に設けられ、
前記相電流位相検出手段は、
前記定点検出手段により相電流の波形上の定点が検出される周期から前記磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、
前記相電流の大きさと前記磁石発電機の回転速度と前記相電流の波形上の定点の前記基準位相に対する位相角との関係を与える相電流位相演算用マップを前記電流検出器により検出された相電流の大きさと前記回転速度演算手段により演算された回転速度とに対して検索することにより前記相電流の波形上の定点の前記基準位相に対する位相角を演算する相電流位相演算手段と、
前記電圧検出器により検出された前記電圧蓄積手段の両端の電圧と前記温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して前記相電流位相演算手段により演算された位相角を補正する相電流位相補正手段とを備えている請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
磁石界磁を有するロータとn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有するステータとを備えた磁石発電機と、n相ブリッジ接続されたスイッチ素子と各スイッチ素子に逆並列接続された帰還ダイオードとを備えて交流側端子が前記電機子巻線の出力端子に接続され、直流側端子間に電圧蓄積手段と負荷とが並列に接続されるn相の電圧形インバータと、前記磁石発電機の出力電圧と周波数が等しく、予め定めた基準位相に対して所定の位相角を有するn相の交流制御電圧を前記電圧蓄積手段から前記インバータを通して前記電機子巻線に印加するように前記インバータを制御することにより前記電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御するコントローラとを備えた発電装置であって、
前記磁石発電機の相電流を検出する電流検出器と、前記電圧蓄積手段の両端の電圧を検出する電圧検出器と、前記磁石発電機の電機子巻線の温度を検出する温度センサとが更に設けられ、
前記コントローラは、
前記相電流の波形の1/2周期に相当する期間が経過する毎に現れる前記相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段と、
前記定点検出手段により定点が検出される周期から前記磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、
前記相電流の波形の1周期に相当する期間に検出される2つの定点の内の一方を特定の定点として、前記回転速度演算手段により演算された回転速度と前記電流検出器により検出された相電流の大きさとに対して前記特定の定点の前記基準位相に対する位相角を演算する第1の相電流位相演算手段と、
前記電圧検出器により検出された前記電圧蓄積手段の両端の電圧と前記温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して前記第1の相電流位相演算手段により演算された位相角を補正する第1の相電流位相補正手段と、
前記第1の相電流位相補正手段により補正された相電流の波形上の特定の定点の位相を基準にして前記交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する第1の制御電圧発生タイミング演算手段と、
前記交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、該交流制御電圧の発生タイミングの後に現れる前記相電流の波形上の特定の定点の位相を検出する第2の相電流位相検出手段と、
前記第2の相電流位相検出手段により検出された相電流の波形上の定点の位相を前記回転速度演算手段により演算された回転速度と前記電圧検出器により検出された電圧と前記温度センサにより検出された温度とに対して補正する第2の相電流位相補正手段と、
前記第2の相電流位相補正手段により補正された相電流の波形上の定点の位相を基準にして交流制御電圧の発生タイミングを演算する第2の制御電圧発生タイミング演算手段と、
前記電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後、最初に交流制御電圧を発生させる際に前記第1の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させ、前記電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後2回目以降に交流制御電圧を発生させる際には、前記第2の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで前記交流制御電圧を発生させるように前記インバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段と、
を具備してなる発電装置。
【請求項4】
磁石界磁を有するロータとn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有するステータとを備えた磁石発電機と、n相ブリッジ接続されたスイッチ素子と各スイッチ素子に逆並列接続された帰還ダイオードとを備えて交流側端子が前記電機子巻線の出力端子に接続され、直流側端子間に電圧蓄積手段と負荷とが並列に接続されるn相の電圧形インバータと、前記磁石発電機の出力電圧と周波数が等しく、予め定めた基準位相に対して所定の位相角を有するn相の交流制御電圧を前記電圧蓄積手段から前記インバータを通して前記電機子巻線に印加するように前記インバータを制御することにより前記電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御するコントローラとを備えた発電装置であって、
前記磁石発電機の相電流を検出する電流検出器と、前記電圧蓄積手段の両端の電圧を検出する電圧検出器と、前記磁石発電機の電機子巻線の温度を検出する温度センサとが更に設けられ、
前記コントローラは、
前記相電流の波形の1/2周期に相当する期間が経過する毎に現れる前記相電流の波形上の定点を検出する定点検出手段と、
前記定点検出手段により定点が検出される周期から前記磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、
前記相電流の波形の1周期に相当する期間に検出される2つの定点の内の一方を特定の定点として、前記回転速度演算手段により演算された回転速度と前記電流検出器により検出された相電流の大きさとに対して前記特定の定点の前記基準位相に対する位相角を演算する第1の相電流位相演算手段と、
前記電圧検出器により検出された前記電圧蓄積手段の両端の電圧と前記温度センサにより検出された電機子巻線の温度とに対して前記第1の相電流位相演算手段により演算された位相角を補正する第1の相電流位相補正手段と、
前記第1の相電流位相補正手段により補正された相電流の波形上の特定の定点の位相を基準にして前記交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する第1の制御電圧発生タイミング演算手段と、
前記交流制御電圧の発生タイミングを基準にして、次に発生させる交流制御電圧の発生タイミングを演算する第2の制御電圧発生タイミング演算手段と、
前記電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後、最初に交流制御電圧を発生させる際に前記第1の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで交流制御電圧を発生させ、前記電圧蓄積手段の両端の電圧が制限値を超えた後2回目以降に交流制御電圧を発生させる際には、前記第2の制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで前記交流制御電圧を発生させるように前記インバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段と、
を具備してなる発電装置。
【請求項5】
前記相電流の波形上の定点は、相電流波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点、相電流波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点、相電流波形の正の半波若しくは負の半波のピーク点、または相電流の正の半波若しくは負の半波が設定されたしきい値に達する点のいずれかである請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項6】
前記基準位相は、前記磁石発電機の無負荷誘起電圧の位相である請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項7】
前記基準位相は、前記磁石発電機の電機子巻線に鎖交する磁束の時間的変化を示す波形の位相である請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項8】
前記相電流位相検出手段は、1相の相電流の波形上の定点の位相のみを検出するように構成され、
前記制御電圧発生タイミング演算手段は、前記相電流位相検出手段により検出された1相の相電流の波形上の定点の位相を基準にしてn相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように構成されている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項9】
前記相電流位相検出手段は、前記n相の各相の相電流の波形上の定点の位相を検出するように構成され、
前記制御電圧発生タイミング演算手段は、前記位相検出手段により検出された各相の相電流の波形上の定点の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように構成されている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項10】
磁石界磁を有するロータとn相(nは1以上の整数)の電機子巻線を有するステータとを備えた磁石発電機と、n相ブリッジ接続されたスイッチ素子と各スイッチ素子に逆並列接続された帰還ダイオードとを備えて交流側端子が前記電機子巻線の出力端子に接続され、直流側端子間に電圧蓄積手段と負荷とが並列に接続されるn相の電圧形インバータと、前記磁石発電機の出力電圧と周波数が等しく、予め定めた基準位相に対して所定の位相角を有するn相の交流制御電圧を前記電圧蓄積手段から前記インバータを通して前記電機子巻線に印加するように前記インバータを制御することにより前記電圧蓄積手段の両端の電圧を制限値以下に保つように制御するコントローラとを備えた発電装置であって、
前記磁石発電機の相電流を検出する電流検出器と、前記磁石発電機の各相の巻線の両端の電圧を相電圧として検出する電圧検出器とが設けられ、
前記コントローラは、
前記相電圧の波形上の定点を検出する定点検出手段と、
前記定点検出手段により相電圧の波形上の定点が検出される周期から前記磁石発電機の回転速度を演算する回転速度演算手段と、
前記相電流の大きさと前記磁石発電機の回転速度と前記相電圧の波形上の定点の前記基準位相に対する位相角との関係を与える相電圧位相演算用マップを前記電流検出器により検出された相電流の大きさと前記回転速度演算手段により演算された回転速度とに対して検索することにより前記相電圧の前記基準位相に対する位相角を演算する相電圧位相演算手段と、
前記相電圧位相演算手段により演算された相電圧の定点の位相を基準にして前記交流制御電圧を発生させるタイミングを演算する制御電圧発生タイミング演算手段と、
前記制御電圧発生タイミング演算手段により演算されたタイミングで前記交流制御電圧を発生させるように前記インバータのスイッチ素子を制御するインバータ制御手段と、
を具備してなる発電装置。
【請求項11】
前記相電圧の波形上の定点は、相電圧波形が正の半波から負の半波に移行する際の零クロス点、相電圧の波形が負の半波から正の半波に移行する際の零クロス点、相電圧の波形の正の半波若しくは負の半波のピーク点、または相電圧の正の半波若しくは負の半波が設定されたしきい値に達する点のいずれかである請求項10に記載の発電装置。
【請求項12】
前記基準位相は、前記磁石発電機の無負荷誘起電圧の位相である請求項10または11に記載の発電装置。
【請求項13】
前記基準位相は、前記磁石発電機の電機子巻線に鎖交する磁束の時間的変化を示す波形の位相である請求項10または11に記載の発電装置。
【請求項14】
前記相電圧位相検出手段は、1相の相電圧の位相のみを検出するように構成され、
前記制御電圧発生タイミング演算手段は、前記相電圧位相検出手段により検出された1相の相電圧の位相を基準にしてn相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように構成されている請求項10ないし13のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項15】
前記相電圧位相検出手段は、前記n相の各相の相電圧の位相を検出するように構成され、
前記制御電圧発生タイミング演算手段は、前記相電圧位相検出手段により検出された各相の相電圧の位相を基準にして各相の交流制御電圧の発生タイミングを求めるように構成されている請求項10ないし13のいずれか1つに記載の発電装置。
【請求項16】
前記相電流位相演算用マップは、前記電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で前記電機子巻線に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と前記磁石発電機の回転速度と前記相電流の大きさとの間の関係と、前記交流制御電圧が印加された電機子巻線の各相巻線の両端の電圧の位相角と相電流の位相角との間の関係とを用いて作成されている請求項2に記載の発電装置。
【請求項17】
前記相電圧位相演算用マップは、前記電機子巻線に交流制御電圧を印加していない状態で前記電機子巻線に流れる相電流と同じ大きさの相電流を流すために電機子巻線に印加すべき交流制御電圧の位相角と前記磁石発電機の回転速度と前記相電流の大きさとの間の関係を用いて作成されている請求項10に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−61335(P2008−61335A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233553(P2006−233553)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】