説明

白金金属で改質されたγ−Ni+γ’−Ni3Al合金組成物と反応性元素を含有する耐高温性コーティングの製造方法

耐酸化性物品の製造方法が開示される。該方法は、(a)支持体上へ白金族金属の層を沈着させることによって白金族金属沈着化支持体を形成させ、次いで(b)白金族金属沈着化支持体層上へ、Hf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの混合物から選択される反応性元素を沈着させることによって該白金族金属沈着化支持体上へ表面改質領域を形成させる工程を含む。この場合、該表面改質領域は、白金族金属、Ni、Al及び反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温と酸化に対して耐性を示す合金組成物を沈着させる方法に関する。このような合金組成物に基づくコーティング(coating)は単独で使用してもよく、あるいは、例えば、高温用システムにおける部品用の熱障壁系の一部として使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
高温用機械的システムの部品、例えば、ガスタービンエンジン等は過酷な環境下で作動させなければならない。例えば、商業用航空エンジンにおいて熱風に曝される高圧タービンのブレード(blade)とベーン(vane)の金属表面温度は一般的には約900℃〜1000℃になり、短時間のピーク温度は1150℃にもなる。
【0003】
高温用機械的システムにおいて使用される典型的な金属製物品(ブレード)10の一部を図1に示す。ブレード10は、熱障壁コーティング(thermal barrier coating : TBC)14で被覆されたNi又はCoを基材とする超合金製支持体12を含む。TBC14は熱絶縁性のセラミック製トップコート(topcoat)20及びその下部に位置する金属製のボンディングコート(bond coat)16を含む。
【0004】
通常は、空気プラズマ噴霧法又は電子ビーム物理蒸着法によって沈着されるトップコート20として現在のところ最もしばしば用いられているものは、厚さが約300〜600μmのイットリア−安定化ジルコニア(yttria-stabilized zirconia : YSZ)層である。YSZの特性には、低い熱伝導度、高い酸素透過性、及び比較的高い熱膨張係数(coefficient of thermal expansion : CTE)が含まれる。
【0005】
YSZ製トップコート20には、多数の孔及び/又は経路(pathway)を含む構造層を沈着させることによって「耐歪性」ももたらされる。この結果、YSZ製トップコート20の高い酸素透過性は、金属製のボンディングコート16は酸素に対して耐性を示さなければならないという制約を課す。従って、ボンディングコート16は、Alの熱成長酸化物(thermally grown oxide : TGO)の保護スケール層18が形成されるのに十分多量のAlを含有していなければならない。TGOは、耐酸化性を付与すると共に、セラミック製トップコート20を支持体12とボンディングコート16へ結合させる。
【0006】
TGOのスケール層18の密着性と機械的一体性は、ボンディングコート16の組成と構造によって大きく左右される。理想的には、高温度に曝されたときに、ボンディングコート16が酸化され、超合金製支持体12に十分に密着する非多孔性TGOスケールが遅い成長速度で形成されるべきである。常套のボンディングコート16は、一般的には、i)β−NiAl+γ−Ni相組成を有するMCrAlY(式中、MはNi、Co、NiCo又はFeを示す)オーバーレイ(overlay)又はii)β−NiAl相組成を有する白金で改質された拡散アルミニドである。いずれのタイプのコーティングの場合も、Alの含有量は、Alスケール層が、タービン部品の使用中に反復してもたらされる剥落後に「再修復(re-heal)」されるのに十分な量である。
【0007】
しかしながら、Alに富む組成を有すると共に、コーティングの微細構造中にβ−NiAlが主成分として存在することに起因して、このようなコーティングは、Niを基材とする超合金製支持体の相組成とは適合しない。該超合金はγ−Ni相とγ’−NiAl相を含む微細構造(本明細書においては、γ−Ni+γ’−NiAl又はγ+γ’で示す)を有する。γ−Ni+γ’−NiAl微細構造を有する超合金製支持体上への沈着がおこなわれると、Alはコーティング層から支持体中へ拡散する。このAlの相互拡散はコーティング層中のAl量を激減させ、このため、Alスケールの成長を持続させようとするコーティングの機能は低下する。付加的な拡散によって、望ましくない相変化及び酸化物スケールの剥離を促進する元素がもたらされる。β−NiAlに基づくコーティングの別の欠点は、γ−Ni+γ’−NiAlに基づく支持体との不適合性であり、これはCTEの相違に起因する。
【0008】
γ−Ni+γ’−NiAlに基づく金属製物品28へ保護コーティングを沈着させる別の態様を図2Aに示す(リッカーバイらによる米国特許第5667663号及び同第5981091号各明細書参照)。超合金製支持体30の外部表面は白金層32で被覆された後、熱処理に付される。この熱処理中においては、超合金製支持体30から白金層32へのAlの拡散を含む相互拡散が発生し、これによって、超合金製支持体上にはAlに富む白金で改質された外部表面領域34が形成される(図2B参照)。
【0009】
次いで、AlTGOスケール層38は表面改質領域34上に形成されてもよく、また、セラミック層のトップコート40は常套法を用いて沈着させもよい。しかしながら、表面改質領域34中には超合金製支持体から拡散した遷移金属が存在するので、表面改質領域34の組成と相組成を正確に調整することによって、TGOスケール層38の密着性を改良するために最適な特性を付与することは困難である。リッカーバイらは、この白金化と熱処理工程には、0.8重量%までのHf又はYを白金に富む表面層へ取り込む工程が含まれていてもよいことを提案しているが、このような表面層組成を達成するための特定の沈着法又はパック組成物は提供されていない。
【0010】
米国特許公報2004/229075A1には、ボンディングコート用に適した合金組成物が開示されている。この合金は、Pt族金属、Ni及びAlを、γ+γ’相組成をもたらすような相対濃度で含有する。この場合、γは固溶体Ni相を示し、γ’は固溶体NiAl相を示す。これらの合金においては、白金族金属、Ni及びAlが存在し、Alの濃度は、NiとPt族金属の濃度との関連において、該合金にβ−NiAl相が実質上含まれないように制限される。この種の合金は図3の領域Aに示される。
【0011】
好ましくは、同時に係属中の特許出願(’649号)に記載されているNi−Al−Pt三元合金は約23原子%未満のAl、約10原子%〜約30原子%のPt族金属(好ましくはPt)及びNi(残部)を含有する。所望により、付加的な反応性元素(例えば、Hf、Y、La、Ce、Zr又はこれらの混合物)を、Pt族金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAl三元合金へ添加してもよく、あるいは該合金中に存在させてもよく、及び/又はその特性を改良してもよい。この種の反応性元素はγ’相の安定化に寄与する。従って、十分な反応性金属を該組成中へ添加することによって、γ’相が相組成中に主要な相として存在するようにしてもよく、あるいは単独相として存在するようにしてもよい。
【0012】
白金族金属で改質したγ−Ni+γ’−NiAl合金は、常套のβ−NiAlに基づく合金に比べて、反応性元素に対して優れた溶解性を示す。’075号公報には、反応性元素を約2原子%(約4重量%)までの濃度でγ+γ’合金中に添加してもよい旨の記載がある。好ましい反応性元素はHfである。さらに、所望により、超合金製支持体のその他の一般的な構成成分、例えば、Cr、Co、Mo、Ta、Re及びこれらの混合物をPt族金属で改質したγ−Ni+γ’−NiAl合金中へ、γ+γ’相組成が支配的になるような濃度で添加してもよい。
【0013】
白金族金属で改質された合金は、一般的なNiに基づく超合金製支持体のγ+γ’微細構造と化学的、物理的及び機械的に適合するγ−Ni+γ’−NiAl相組成を有する。この種の合金から形成される保護コーティングは、β−NiAlに基づくコーティングのCTE(熱膨張係数)よりもNiに基づく超合金のCTEとより高い適合性を示すCTEを有する。前者は、高温度の機械的システム中の機械的部品類が受ける過酷な反復性熱サイクルにおいて高い安定性を示すコーティングをもたらす。
【0014】
熱的に酸化される場合、白金族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金コーティングは、常套のβ−NiAl−Ptボンディングコート系によって熱的成長により形成されるスケール層の成長速度と同等又は遅い速度でα−Alスケール層を成長させ、これによってγ−Ni+γ’−NiAl合金組成物に対して優れた耐酸化性が付与される。
【0015】
白金族金属によって改質されたγ+γ’合金が反応性元素(例えば、Hf等)によってさらに改質されて超合金製支持体上にコーティングとして沈着されると、TGOスケール層の成長は、Hfを添加しない対応するコーティング組成物の場合よりも遅くなる。熱処理時間がさらに長くなると、TGOスケール層は、常套のβ−NiAl−Ptコーティングから形成されるスケール層と比較して、より高い平面性を示す外観を呈すると共に、コーティング層に対してより高い密着性を示す。
【0016】
さらに、白金族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金中のAlの熱力学的活性は、白金含有量が十分な場合には、Niに基づく超合金製支持体中のAlの熱力学的活性よりも低いレベルまで低下させることができる。このような白金族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金コーティングが超合金製支持体上へ沈着されると、このような熱力学的活性の変化によって、Alは超合金製支持体からコーティングへの濃度勾配により拡散する。このような「昇り勾配拡散(uphill diffusion)」は、コーティングからのAlの激減現象の低減及び/又は実質的な除去をもたらす。これによって、スケール層の剥落の減少及びコーティングとスケール層の長期安定性の増大がもたらされ、また、熱障壁系の信頼性と耐久性が著しく高くなる。
【0017】
白金族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金の超合金製支持体上への沈着は既知のいずれかの方法、例えば、プラズマ噴霧法、化学蒸着法(chemical vapor deposition : CVD)、物理蒸着法(physical vapor deposition : PVD)及びスパッタリング(sputtering)法によっておこなってもよく、これらの方法により、コーティングを形成させることによって耐熱性物品が製造される。一般的には、この沈着工程は非酸化条件下、又は最低酸化性条件下でおこなわれる。
【0018】
先に説明したように、白金族金属によって改質されたγ+γ’合金(前記の’075号公報参照)をその他の反応性元素(例えば、Hf等)を用いて調製し、これをコーティングとして超合金製支持体上へ沈着させる場合、TGOスケール層の成長速度は、Hf等を添加しない対応するコーティング組成物の場合よりもさらに遅くなる。熱処理時間がさらに長くなると、TGOスケール層は、常套のβ−NiAl−Ptボンディングコート材料から形成されるスケール層と比較して、より高い平面性を示す外観を呈すると共に、コーティング層に対してより高い密着性を示す。このため、前記の’075号公報に記載のPt族金属によって改質されたγ+γ’合金へ反応性元素を含有させることが非常に望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述のように、リッカーバイらは、白金族金属によって改質されたγ+γ’合金へ反応性元素Hfを0.8重量%までの量で添加してもよいことを提案しているが、反応性元素を所望の濃度で表面層へ含ませることが困難であることを証明している。この理由は、反応性元素(例えば、Hf等)をγ’相へほぼ完全に分配するためには、表面層中のHfの含有量を高めるための沈着過程中においてγ’相が主要相になるようにすることが必要だからである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの観点によれば、下記の工程(a)及び(b)を含む耐酸化性物品の製造方法が提供される:
(a)支持体上へ白金族金属の層を沈着させることによって白金族金属沈着化支持体を形成させ、次いで
(b)白金族金属沈着化支持体層上へ、Hf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの混合物から選択される反応性元素を沈着させることによって該白金族金属沈着化支持体上に表面改質領域を形成させる(この場合、該表面改質領域は、Pt族金属、Ni、Al及び反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有する)。
【0021】
この方法の1つの好ましい実施態様においては、表面改質領域は、反応性元素を0.8重量%よりも多くて5重量%よりも少ない量で含有する。好ましい反応性元素はHfである。
【0022】
本発明の別の観点によれば、下記の工程(a)〜(c)を含む耐熱性物品の製造方法が提供される:
(a)超合金支持体上へ白金層を沈着させることによって白金沈着化支持体を形成させ、
(b)白金沈着化支持体を加熱処理に付し、次いで
(c)得られた白金沈着化支持体上へパックを沈着させることによって該支持体上に表面改質領域を形成させる(この場合、該パックは、該表面改質領域がPt、Ni、Hf及びAlを、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有するのに十分な量のHfを含有すると共に、表面改質領域がHfを0.8重量%よりも多くて5重量%よりも少ない量で含有する)。
【0023】
本発明のさらに別の観点によれば、超合金を含有する耐熱性物品であって、Hf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの混合物から成る群から選択される反応性元素を含有する表面領域を具有する該耐熱性物品(この場合、該表面領域は、白金族金属、Ni、Al及び該反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有する)が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書に記載されるPt+反応性元素によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングは、常套のβ−NiAl含有コーティングに比べて多くの利点を有する。このような利点としては、次のものが例示される:
1)Niに基づく超合金製の支持体に対して、相組成(phase constitution)と熱膨張挙動の点で適合性(compatibility)を示す。
2)コーティング層中での相転移(即ち、βからマルテンサイト又はγ’への不安定化)又はコーティング/支持体の相互拡散ゾーンにおける相転移(即ち、脆い位相的最密(TCP)相、例えば、σ相等の形成)を制限する性能を有さない。
3)Alを支持体からコーティングへ濃度勾配で拡散させるための化学的駆動力が存在する。
4)部分的には、0.8〜5重量%の好ましい反応性元素の存在に起因してTGOスケールの成長速度が非常に遅い。
【0025】
これらの利点に起因して、次の利点がもたらされる。即ち、Pt+反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの厚さは、性能上の利点を発揮させるために常套のβ−NiAl含有コーティングの場合のように厚くする必要はない。
【0026】
本発明による1又は複数の実施態様の詳細を、添付図面と以下の記載によって説明する。本発明のその他の特徴、目的及び利点は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかになる事項である。
【0027】
最初に、添付図面について簡単に説明する(図中に表れる同じ参照符号は同じ要素を示す)。
図1は、熱障壁コーティングを有する金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図2Aは、熱処理前のPt層で被覆された金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図2Bは、超合金製支持体を熱処理に付すと共に、常套の熱障壁コーティングを沈着させた後の図2Aに示す金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図3は、本発明によるPt族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金組成物の1つの実施態様を示すNi−Al−Pt状態図(1100℃)の一部を示す状態図である。
【0028】
図4は、白金族金属層を含む金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図5は、反応性金属の含有量を高めた表面改質領域を有する白金族金属層を含む金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図6は、熱障壁コーティングを有する図5に示す金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
図7A及び図7Bは、厚さが異なるPt層を有するCMSX−4超合金製支持体を熱処理に付して得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
図8A、図8B及び図8Cは、化学蒸着パック中のAl含有量を変化させて得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【0029】
図9A及び図9Bは、Ptによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングに対する熱処理温度の効果を示す断面画像を示す。
図10は、CMSX−4超合金製支持体上に沈着させたNi22Al30Pt合金コーティングの酸化挙動を示すプロットである。
図11は、CMSX−4超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
図12は、CMSX−10超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
図13は、反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの1150℃における酸化剥落を示すグラフである。
図14は、レネ(Rene)−N5超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
図15は、図14に示すコーティングのEPMA分析のプロットを示す。
【0030】
本発明の1つの観点によれば、支持体(substrate)、一般的には超合金(superalloy)製の支持体上に耐酸化性領域を含む耐酸化性物品の製造法が提供される。耐酸化性合金層は、Pt族金属、Ni、Al及び反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が得られるような相対濃度で含有する改質させたγ−Ni+γ’−NiAl合金を含む。この場合、特定の元素による安定化効果によって、γ’−NIAlが単独相になるようにしてもよい。この合金においては、Alの濃度は、Ni、Pt族金属及び反応性元素の濃度に関連して制限される。即ち、Alの濃度は、合金中にはθ−NiAl相が実質上存在せず(好ましくは、θ−NiAl相は存在しない)、また、γ−Ni+γ’−NiAl相構造が支配的になるように制限される。
【0031】
耐酸化性領域内の反応性元素は、これらの酸化物がAlよりも安定であるが、酸化しない傾向を示す。いずれかの理論に拘束されるものではないが、Ptはγ−Ni+γ’−NiAlにおけるHfとZrの熱力学的活性を低下させるように作用するので、この傾向は明らかである。耐酸化性領域を支持体の表面上に形成させることによって、該支持体に耐酸化性と耐高温分解性を付与してもよい。
【0032】
図4において、高温度用物品100は、Ni又はCoに基づく超合金製支持体102を具有する。支持体102としては、Ni又はCoに基づくいずれかの常套の超合金を使用してもよい。この種の超合金としては、マルチン−マルエッタ社(ベテスダ、メリーランド州)製の「MAR−M002」及びキャノン−マスキーゴン社(マスキーゴン、ミシガン州)製の「CMSX−4」及び「CMSX−10」等の市販品が例示される。
【0033】
また、図4に関連して言えば、上記方法の第1工程には、白金族金属層104を支持体上に沈着させることによって、白金族金属沈着化支持体103を形成させる工程が含まれる。白金族金属は、例えば、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru及びこれらの混合物から選択してもよい。Ptを含む白金族金属が好ましく、特にPtが好ましい。白金族金属は常套のいずれかの方法、例えば、電着法等によって沈着させてもよい。白金族金属層104の厚さは、耐熱性物品100の所望の用途に応じて広範囲に変化させてもよいが、一般的には、約3μm〜約12μm(±1μm)であり、好ましくは約6μmである。白金層は平坦で緻密であることが好ましいが、ある程度の粗さや多孔性は許容される。
【0034】
超合金製の支持体(102)上の白金族金属層104が加熱されると、元素は支持体102から白金族金属層104へ拡散する。この拡散は、γ−Ni+γ’−NiAl微細構造が白金族金属層(104)中において支配的になるまで続行される。従って、拡散熱処理は、白金層の沈着後におこなわれるのが好ましい。例えば、熱処理は1000℃〜1200℃で1〜3時間おこなってもよい。この熱処理工程中において、超合金製支持体102から白金族金属層104への拡散がさらにおこなわれ、γ’が主要相(好ましくは単独相)となるPtで改質された表面領域が形成される。現在の実験データによれば、反応性元素(例えば、Hf及びZr等)はほとんど単独でγ’相まで分配される。この結果、反応性元素の添加による十分な酸化に関する利点は、領域104のγ−Ni+γ’−NiAl微細構造中においてγ’が主要相となるときに最も容易かつ簡単に達成される。
【0035】
図5においては、反応性金属が表面領域(104)上へ沈着されて表面改質領域106が形成され、該表面改質領域中の反応性金属の濃度が増加する。適当な反応性金属としてはHf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの任意の混合物が例示されるが、Hfが好ましい。反応性金属は常套のいずれかの方法、例えば、物理蒸着(PVD)法(例えば、スパッタリング法、電子ビーム直接蒸着(EBDVD)等)及び化学蒸着(CVD)法(例えば、パック法(pack process)によって反応性金属を沈着させる化学蒸着法、及び反応性金属含有ガスを含むチャンバー内で反応性金属を沈着させる化学蒸着法等)によって沈着させてもよい。表面改質領域106を形成させるための好ましい沈着法は、パック法又はパック外法(out-of-pack process)、即ち、白金族金属層104を有する支持体102を、反応性金属を含有するパックの内部に埋設するか又はパックの上部に設置して沈着をおこなう方法である。
【0036】
例えば、パック−セメンテーション(pack-cementation)法においては、白金族金属層104を含む支持体102は、純粋な金属又は合金被覆源材料(マスター合金と呼ばれている)、活性剤として作用するハロゲン化物塩及び充填剤を含有する粉状混合物中に埋設させる。
【0037】
沈着工程中においては、パック中の粉末は高温の沈着温度まで加熱され、これによって、反応性金属を含有するハロゲン化物ガスが発生する。白金族金属層104が反応性金属含有ガスに曝されると、該ガスは該金属層104と反応し、反応性金属は該金属層上に沈着して拡散コーティング(表面改質領域106)を形成させる。
【0038】
表面改質領域106の組成は、パック中の粉末の組成によって直接的に左右される。好ましくは、パック中の粉末組成物は充填剤、活性剤及びマスター合金源を含有し、多数の組成物の使用が可能である。しかしながら、パックの粉末組成物は、反応性金属がPt族金蔵層(104)上に沈着して反応性金属を所望の濃度で含有する表面改質領域106が形成されるのに十分な量のマスター合金源を含有すべきである。好ましくは、表面改質領域106は、平均して約5重量%までの反応性金属、好ましくは約0.8重量%〜約5重量%(最も好ましくは約0.8重量%〜約3重量%)の反応性金属を含有する。
【0039】
表面改質領域(106)中に反応性金属をこのような濃度で含有させるためには、一般的には、マスター合金源が少なくとも約1重量%の反応性金属(好ましくはHf)を含むようにすると共に、パック中に約1重量%〜約5重量%のHf(最も好ましくは約3重量%のHf)が含まれるようにする。1種又は複数種の反応性元素を含有する塩は別の元素源、例えば、塩化ハフニウムであってもよい。所望により、マスター合金源に約0.5重量%〜約1重量%のAlを含有させることによって、Pt族金属層104の表面中の該金属濃度を増加させてもよい。
【0040】
パックの粉末組成物は、約0.5重量%〜約4重量%(好ましくは約1重量%)のハロゲン化物塩(活性剤)も含有する。ハロゲン化物塩は広範囲のものから採択してもよいが、ハロゲン化アンモニウム、例えば、塩化アンモニウム及びフッ化アンモニウムが好ましい。
【0041】
パックの粉状組成物の残余量(一般的には約94重量%)は充填剤である。充填剤は、沈着過程中におけるパックの焼結を防止すると共に、支持体を保持する。一般的には、充填剤は、反応性が最小の酸化物粉末である。酸化物粉末としては広範囲のものから採択してもよいが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムのような化合物が好ましく、酸化アルミニウム(Al)は特に好ましく、これによってPt族金属層104の表面において付加的にAlの濃度を高めることができる。
【0042】
パックの粉末組成物は、約650℃〜約1100℃(好ましくは約800℃未満)(最も好ましくは約750℃)の温度において、所望の厚さと反応性金属の濃度勾配を有する表面改質領域106が得られるのに十分な時間にわたって加熱される。沈着時間は一般的には約0.5時間〜約5時間(好ましくは約1時間)である。
【0043】
パックの組成物中に含まれる反応性金属及びその他の金属が白金族金属層(104)上に沈着すると、該金属層104の表面において拡散混合(diffusive mixing)が発生して表面改質領域106が形成される。パック中に含まれる反応性金属(好ましくはHf)及びその他の金属(例えば、Al)の拡散混合によって、Alの濃度が増加したPt+反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAl表面領域106が形成される。従って、この表面改質領域106はパックからの金属に富む。表面改質領域(106)内においては、反応性金属の濃度は表面107において最大になると共に、層106の厚さに沿って減少するために、該層106の厚さに沿って反応性金属の濃度勾配が形成される。
【0044】
表面改質領域106の一般的な厚さは約5μm〜約50μmであり、好ましくは約20μmである。厚さが20μmを越える場合、表面改質領域106は、少なくとも約1重量%の反応性金属(好ましくはHf)(一般的には、約1重量%〜約3重量%のHf)を含有する組成を有する。
【0045】
沈着工程中及び沈着工程後、表面改質領域106から白金族金属層104への内部方向への拡散の外に、超合金製支持体102から白金族金属層104及び表面改質領域106への金属の外部方向への拡散もおこなわれる。例えば、超合金製支持体、例えば、CMSX−4製支持体に含まれるAlの公称含有量は少なくとも約12原子%である。該支持体中のAlは白金族金属層104及び表面改質領域106へ拡散する。さらに、超合金製支持体に含まれるその他の元素(例えば、Cr、Co、Mn、Ta及びRe等)も超合金製支持体102からPt族金属層104及び表面改質領域106への外部方向へ拡散することもある。さらに、Alのようなその他の金属がパック中に含まれる場合には、反応性金属層と共に沈着するAlが表面改質領域106及び白金族金属層104への内部方向へ拡散することもある。
【0046】
パックの組成は、このような外部方向及び内部方向への拡散混合挙動を考慮した上で選定される。表面改質領域106には種々の金属が存在していてもよいが、該領域中のAl含有量は、白金族金属、Ni及び反応性金属の濃度との関連において、γ’−NiAlが主要相又は単独相となるγ−Ni+γ’−NiAl相組成が得られるように調整されるのが好ましい。表面改質領域106においては、Alの濃度は、Ni、白金族金属及び反応性元素の濃度との関連において、該領域中にθ−NiAl相構造が実質上(好ましくは全く)存在せずにγ−Ni+γ’−NiAl相構造が支配的になるように制限される。
【0047】
拡散混合が広範囲におこなわれる結果として、パック組成物中のマスター合金源としての金属Alの含有量は非常に低濃度(約1重量%未満)に維持されることが好ましい。特に、充填剤が少なくともある程度のAl粉末を含有するときには、Alの含有量が0重量%であるマスター合金源を用いることによってγ−Ni+γ’−NiAl相が形成されることが判明した。表面改質領域106における主要なAl源は、パックではなくて、超合金製支持体102であってもよい。特に、AlとPtとの化学的相互作用によって、支持体102からPt族金属層104及び表面改質領域106へAlを拡散させる強い駆動力がもたらされる。一般的には、金属Alを約1重量%よりも多く含有するパック組成物は、表面改質領域106中にθ−NiAl相の形成をもたらし、また、該領域中にWに富むTCP沈降物の発生をもたらすことがしばしばある。
【0048】
Pt族金属層104の厚さも、物品100における拡散混合挙動及び表面改質領域106の組成に対して影響をもたらす。例えば、白金族金属層104の厚さが約2μmである場合には、表面改質領域106は、γ相を主要相とする白金族金属で改質されたγ+γ’コーティングを有するようになるが、白金族金属層104の厚さが約4μmよりも厚くなる場合(一般的には、約4μm〜約8μm)には、表面改質領域106は、γ’相を主要相とするPt族金属で改質されたγ+γ’コーティングを有するようになる。
【0049】
パックのセメンテーション工程における温度も表面改質領域106の相組成に対して影響を及ぼす。特にAl粉末をマスター合金源中に含有させる場合、温度が比較的高くなると、反応性金属と共に沈着するAlの量は、表面改質領域105中の望ましくないθ−NiAl相構造が形成されるのに十分高くなる。一般的には、パックのセメンテーション温度を約900℃にすると、部分的にθ−NiAl相が形成される。従って、表面改質領域106におけるθ−NiAl相構造の形成を低減させるためには、パックのセメント化温度を約800℃未満(好ましくは約750℃)に維持することが好ましい。
【0050】
沈着工程後、好ましくは、物品100を室温まで冷却させるが、この冷却工程は必要ではない。
【0051】
表面改質領域106を形成させた後、所望により、物品100を約900℃〜約1200℃で約6時間まで加熱する加熱することによって、表面改質層200の微細構造を安定化させてもよい。所望による熱処理工程は、物品100を室温まで冷却する前又は後におこなってもよい。
【0052】
図6において、所望により、セラミック層202(一般的には、部分的に安定化されたジルコニア)を表面改質領域(106)上へ常套のPVD法により沈着させることによってセラミック製トップコート(topcoat)を形成させてもよい。適当なセラミック製トップコート用材料は、例えば、クロムアロイ・ガス・タービン社(米国、デラウェア)から入手可能である。セラミック製トップコート204の沈着は、一般的には、酸素ガスと不活性ガス(例えば、アルゴン等)を含有する雰囲気中でおこなう。セラミックの沈着過程中に酸素が存在することによって、表面改質領域106の表面上に薄い酸化物スケール層206が形成されることは回避できない。熱的に成長する酸化物(thermally grown oxide;TGO)層206はアルミナを含有しており、一般的にはI−Alの密着性層である。ボンディングコート層106、TGO層206及びセラミック製トップコート層204によって、超合金製支持体(102)上には熱障壁コーティング210が形成される。
【実施例】
【0053】
本発明の好ましい実施態様を、以下の実施例によって説明する。
実施例1
テトラ−アミン白金水素ホスフェート([Pt(NH]HPO)を用いて電着浴を調製した。超合金製支持体としては、大きさが約15×10×1mmのCMSX−4を使用した。
【0054】
超合金製支持体のサンプルは、SiC紙を用いて600グリットの仕上げまで研磨した後、以下の手順に従って洗浄することによって調製した。最初に、サンプルを蒸留水中に浸漬した後、ティッシュを用いて乾燥させた。このサンプルを10重量%のHCl溶液中に2分間浸漬し、次いで蒸留水中に浸漬した後、ティッシュを用いて乾燥させた。最後に、サンプルをアセトン中での超音波洗浄処理に5分間付した後、蒸留水中に浸漬させた。
【0055】
調製したサンプルを直ちに電着処理に付した。電着条件は以下の通りである。
電流密度:約0.5A/dm
温度:約95℃
pH:約10.5(NaOHを用いて調整)
電着時間:約0.5時間
陽極と陰極間の距離:約5cm
陽極:Pt
陽極対陰極の表面積比:約2
【0056】
Pt+Hfで改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティング(γ’が主要相である)を形成させるために、Hf粉末から成るパック又はHf粉末とAl粉末から成るパックについて検討した。パック中にAl粉末を添加しない理由は、超合金製支持体からのAlがPtに富む表面へ向けて外側へ拡散するからである。これは、Ptがγとγ’相構造中のAlの化学的活性を低下させることに起因する。
【0057】
パックの沈着温度を750℃又は800℃に設定すると共に、活性剤として約1重量%のNHClを使用することによって、Pt+Hfで改質されたコーティングが得られることが判明した。以下のセクションにおいては、Pt+Hfによって改質されたコーティングの微細構造と組成に対する特定の実験パラメーターの効果について説明する。
【0058】
電着されたPt層の厚さ
Ptで被覆されたサンプルを熱処理に付すことにより、内側へのPtの拡散と外側へのAl+Niの拡散によってPtで改質されたコーティングが得られた。沈着されたPt層の厚さがコーティングの微細構造、組成及びγとγ’の相対的な割合に対して影響を及ぼすことが判明した。図7は、電着されたPt層の厚さが異なるCMSX−4サンプルを熱処理に付すことによって得られたコーティングを示す。図7Aにおいては、薄いPt層(約2μm)により、Ptで改質されたγとγ’コーティング(γが主要相である)がもたらされることが示されている。これに対して、図7Bに示すように、より厚いPt層(約7μm)からは、Ptで改質されたγとγ’コーティング(γ’が主要相である)が形成される。
【0059】
パック中のAl含有量
パック中のAl粉末の含有量は、支持体中へのアルミニウムの取り込み量に影響を及ぼす。Alの公称含有量が約12原子%のCMSX−4中のAlは、熱処理中において、Ptに富む表面へ向けて外側へも拡散することができる。従って、パックのセメンテーション工程によって、約22原子%のAlを含有するコーティングを得るためには、少量のAlが必要なだけである。
【0060】
図8は、Al粉末の含有量が幾分異なる2種のパックのセメンテーションの結果を示す。被覆工程は、約5μmのPt層を電着させる過程、800℃で1時間にわたってアルミニウムを沈着させる過程、及びその後の1100℃で1時間の熱処理過程から成る。図8Aに示すように、約24原子%のAlを含有するγ’コーティングを形成させるためには、パック中のAlの含有量は0.5重量%で十分である。図8Aに示すように、Alの含有量が1重量%の場合には、コーティング中にθ−NiAl相構造がもたらされる。Alの取り込み量が高くなると、コーティング/合金界面の近接部にWに富むTCP沈殿物の形成がもたらされることに注意すべきである。
【0061】
また、次のことも判明した。即ち、Ptで被覆されたCMSX−4製支持体であって、さらにAl粉末は含有しないがAl粉末を含有するパック中で処理した該支持体はPtで改質されたγ’に基づく表面層を形成する。図8Cは、Hf(5重量%)とAl粉末を含有するパック中において800℃で1時間のパックによるセメンテーション処理に付した後のコーティングを示す。得られたコーティングの構造は図7Bに示すもの(この場合は、パックによるコーティング処理を、パック中にAlを0.5重量%含有させておこなう点で相違する。)と非常に類似している。
【0062】
パック中のHf含有量
Hfはγ’相へ分配されることが知られており、また、最終的に存在するHfの臨界含有量は、十分に高いHfの沈着速度が得られるような量でなければならない。この実施例によれば、パック中に5重量%のHfを含有させることによって、γ+γ’コーティング中のHfの含有量が検出可能な量(約0.3原子%よりも多い量)になることが判明した(図8C参照)。Hfを1原子%よりも多く含有するγ’に基づくコーティングは、ハフニウムの沈着条件を調整することによって沈着された。
【0063】
パックによるセメンテーション過程の温度
温度は、Alの沈着度を決定する要因となる。Alを約1重量%含有するパックを用いると共に、比較的高い温度を採用する場合には、Alの供給量は十分に高くなり、γ+γ’コーティングを得るという観点からは望ましくないθ−NiAlが形成された。アルミニウム沈着温度が約900℃よりも高くなると、緻密なθ−NiAlコーティングが形成された。熱処理(例えば、1100℃で1〜4日間の熱処理等)によって、該コーティングからγ’相への変態をもたらすことは困難であった。
【0064】
図9は、1100℃(図9A)又は1150℃(図9B)で1時間の熱処理に付した後において、CMSX−4のサンプル上で得られたPtで改質されたθ−NiAlコーティングを示す。このサンプルは、最初に約5μmのPt層を電着させ、次いでパック(Hf:3重量%、Al:1重量%、NHCl:1重量%、Al:残余量)によるアルミニウム沈着処理に付した後、最終的な熱処理に付して調製した。さらに熱処理に付すことによって、Wに富む多量の沈降物が相互拡散領域に形成されることが判明した。また、θ相はさらなる熱処理に付した後でも存続した。従って、好ましくは、θ相の発生を回避するためにアルミニウム沈着温度とハフニウム沈着温度を約800℃未満に維持すべきである。
【0065】
実施例2
図10は、Ni−Al−Pt合金の薄膜層(約60ミクロン)がCMSX−4超合金製支持体へ拡散結合していることを示す。この層は優れた耐酸化性を有すると共に、超合金製支持体に対して優れた適合性(compatibility)を示す。
【0066】
実施例3
図11及び12は、2種の異なる超合金製支持体、即ち、CMSX−4製支持体(図11)及びCMSX−10製支持体(図12)上に形成された反応性金属で改質されたNi−Al−Ptコーティングを示す。これらのコーティングは、相互拡散領域(即ち、コーティング−基材合金移行領域)中に最小の位相的最密(topologically closed-packed;tcp)相を有する。
【0067】
実施例4
図13は、反応性金属の濃度を高めた反応性金属で改質されたNi−Al−Ptコーティングを用いることによって得ることができる優れた耐酸化性を示す。図中のプロットは、β−NiAlコーティング、0.01原子%のHfを含有する反応性金属で改質されたNi−Al−Ptコーティング(RR)、及び0.5原子%のHfを含有する反応性金属で改質されたNi−Al−Ptコーティング(ISU)を比較するものである。ISUコーティングは1000サイクルよりも多い回数の剥離試験に対し耐性を示したが、β−NiAlコーティング及びRRコーティングはそれぞれ約50サイクル及び約100サイクルの剥離耐性を示すに過ぎなかった。
【0068】
図14は、本発明の1つの態様による反応性金属で改質されたNi−Al−Ptコーティングであって、Niに基づくレネ−N5超合金製支持体上に沈着された該コーティングを示す。図15は、図14に示すコーティングの組成分布を示す。該組成分布は電子プローブ微小部分析法(electron probe microanalysis;EPMA)によって測定したデータである。図15に示すEPMAプロットは、Hfの濃度がコーティングの表面において特に高くなっていることを示す。
【0069】
本発明の多くの実施態様について説明したが、本発明の技術的思想を逸脱することなく、多くの変形態様が可能である。従って、その他の実施態様も本願の特許請求の範囲の範囲内に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、熱障壁コーティングを有する金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図2A】図2Aは、熱処理前のPt層で被覆された金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図2B】図2Bは、超合金製支持体を熱処理に付すと共に、常套の熱障壁コーティングを沈着させた後の図2Aに示す金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明によるPt族金属によって改質されたγ−Ni+γ’−NiAl合金組成物の1つの実施態様を示すNi−Al−Pt状態図(1100℃)の一部を示す状態図である。
【図4】図4は、Pt族金属層を含む金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図5】図5は、反応性金属の含有量を高めた表面改質領域を有するPt族金属層を含む金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図6】図6は、熱障壁コーティングを有する図5に示す金属製物品の一部を示す模式的断面図である。
【図7A】図7Aは、厚さが2μmのPt層を有するCMSX−4超合金製支持体を熱処理に付して得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図7B】図7Bは、厚さが7μmのPt層を有するCMSX−4超合金製支持体を熱処理に付して得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図8A】図8Aは、化学蒸着パック中のAl含有量が0.5重量%のときに得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図8B】図8Bは、化学蒸着パック中のAl含有量が1重量%のときに得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図8C】図8Cは、化学蒸着パック中にAlを含有させたときに得られたPtによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図9A】図9Aは、Ptによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングに対する熱処理温度(1100℃)の効果を示す断面画像を示す。
【図9B】図9Bは、Ptによって改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングに対する熱処理温度(1150℃)の効果を示す断面画像を示す。
【図10】図10は、CMSX−4超合金製支持体上に沈着させたNi22Al30Pt合金コーティングの酸化挙動を示すプロットである。
【図11】図11は、CMSX−4超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質させたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図12】図12は、CMSX−10超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質させたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図13】図13は、反応性金属で改質されたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの1150℃における酸化剥落を示すグラフである。
【図14】図14は、レネ−N5超合金製支持体上に沈着させた反応性金属で改質させたγ−Ni+γ’−NiAlコーティングの断面画像を示す。
【図15】図15は、図14に示すコーティングのEPMA分析のプロットを示す。
【符号の説明】
【0071】
10 ブレード
12 金属製支持体
14 熱障壁コーティング
16 ボンディングコート
18 保護スケール層
20 トップコート
100 高温度用物品
102 金属製支持体
104 白金族金属層
106 表面改質領域
200 表面改質層
202 セラミック層
204 トップコート
206 酸化物スケール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)及び(b)を含む耐酸化性物品の製造方法:
(a)支持体上へ白金族金属の層を沈着させることによって白金族金属沈着化支持体を形成させ、次いで
(b)白金族金属沈着化支持体層上へ、Hf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの混合物から選択される反応性元素を沈着させることによって表面改質領域を形成させる(この場合、該表面改質領域は、白金族金属、Ni、Al及び反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有する)。
【請求項2】
γ’−NiAlが表面改質領域中の主要な相である請求項1記載の方法。
【請求項3】
γ’−NiAlが表面改質領域中の単独相である請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の前に、白金族金属沈着化支持体を加熱する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
白金族金属沈着化支持体を約1000℃〜約1200℃の温度で約1時間〜約3時間加熱する請求項4記載の方法。
【請求項6】
白金族金属がPtである請求項1記載の方法。
【請求項7】
白金族金属層が約3μm〜約12μmの厚さを有する請求項6記載の方法。
【請求項8】
反応性元素がHf、Zr及びこれらの混合物から選択される請求項6記載の方法。
【請求項9】
表面改質領域が、Hf及びZrの少なくとも一方の成分を0.8重量%よりも多く含有する請求項6記載の方法。
【請求項10】
表面改質領域が、Hf及びZrの少なくとも一方の成分を0.8重量%よりも多くて3重量%よりも少ない量で含有する請求項9記載の方法。
【請求項11】
表面改質領域が、Hf及びZrの少なくとも一方の成分を0.8重量%よりも多くて5重量%よりも少ない量で含有する請求項6記載の方法。
【請求項12】
表面改質領域が、Cr、Co、Mo、Ta、Re及びこれらの混合物から成る群から選択される金属をさらに含有する請求項9記載の方法。
【請求項13】
反応性元素を約650℃〜約1100℃の温度で沈着させる請求項1記載の方法。
【請求項14】
反応性元素を約750℃の温度で沈着させる請求項1記載の方法。
【請求項15】
反応性元素を約0.5時間〜約5時間にわたって沈着させる請求項1記載の方法。
【請求項16】
反応性元素を約1時間にわたって沈着させる請求項1記載の方法。
【請求項17】
反応性元素を約750℃の温度で、約1時間にわたって沈着させる請求項1記載の方法。
【請求項18】
工程(b)の後に、得られた物品を室温まで冷却させる工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
工程(b)の後に、得られる物品を、約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたって加熱する工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項20】
得られる物品を、約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたって加熱する工程をさらに含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
下記の工程(a)〜(c)を含む耐熱性物品の製造方法:
(a)支持体上へ白金層を沈着させることによって白金沈着化支持体を形成させ、
(b)白金沈着化支持体を加熱処理に付し、次いで
(c)得られる白金沈着化支持体上へ、Hf、Zr及びこれらの混合物から選択される反応性元素を沈着させることによって表面改質領域を形成させる(この場合、該表面改質領域は、Pt、Ni、Al及び反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有すると共に、反応性元素を0.8重量%よりも多くて5重量%よりも少ない量で含有する)。
【請求項22】
工程(b)が、充填剤、活性剤及び反応性元素含有源から成るパックから反応性元素を沈着させることを含む化学蒸着法を実施する工程である請求項21記載の方法。
【請求項23】
充填剤が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムから成る群から選択される酸化物の粉末である請求項22記載の方法。
【請求項24】
充填剤が酸化アルミニウムである請求項23記載の方法。
【請求項25】
活性剤が、塩化アンモニウム及び/又はフッ化アンモニウムのようなハロゲン化物塩である請求項22記載の方法。
【請求項26】
ハロゲン化物塩が塩化アンモニウムである請求項25記載の方法。
【請求項27】
反応元素含有源が、反応性元素を0.8重量%よりも多くて5重量%までの量で含有する合金層が形成されるのに十分な量の反応性元素を含有する請求項22記載の方法。
【請求項28】
反応性元素がHfである請求項27記載の方法。
【請求項29】
パックが、約0.5重量%〜約4重量%の活性剤、約1重量%〜約5重量%のHf及び全体を100重量%とする残余量の充填剤から成る請求項22記載の方法。
【請求項30】
活性元素源がAlをさらに含有する請求項22記載の方法。
【請求項31】
活性元素源が約0.5重量%〜約1重量%のAlをさらに含有する請求項29記載の方法。
【請求項32】
活性元素を約650℃〜約1100℃の温度で沈着させる請求項21記載の方法。
【請求項33】
活性元素を約750℃の温度で沈着させる請求項21記載の方法。
【請求項34】
活性元素を約0.5時間〜約5時間にわたって沈着させる請求項21記載の方法。
【請求項35】
活性元素を約1時間にわたって沈着させる請求項21記載の方法。
【請求項36】
活性元素を約750℃の温度で約1時間にわたって沈着させる請求項21記載の方法。
【請求項37】
工程(b)の後に、物品を室温まで冷却させる工程をさらに含む請求項21記載の方法。
【請求項38】
工程(b)の後に、物品を約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたる熱処理に付す工程をさらに含む請求項21記載の方法。
【請求項39】
さらに、物品を約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたる熱処理に付す工程をさらに含む請求項37記載の方法。
【請求項40】
下記の工程(a)〜(c)を含む耐熱性物品の製造方法:
(a)超合金製支持体上へPt層を沈着させることによって白金沈着化支持体を形成させ、
(b)白金沈着化支持体を加熱処理に付し、次いで
(c)得られる白金沈着化支持体上へパックを沈着させることによって表面改質領域を形成させる(この場合、パックが、該表面改質領域がPt、Ni、Hf及びAlを、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有するのに十分な量のHfを含有すると共に、表面改質領域がHfを0.8重量%よりも多くて5重量%よりも少ない量で含有する)
【請求項41】
パックが、(a)塩化アンモニウム及びフッ化アンモニウムから成る群から選択される活性剤0.5重量%〜4重量%、(b)Hf含有源1重量%〜5重量%、及び(c)酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムから成る群から選択される充填剤(全体が100重量%になる残余量)から成る請求項40記載の方法。
【請求項42】
Hf含有源がAlをさらに含有する請求項41記載の方法。
【請求項43】
Hf含有源が0.5重量%〜1重量%のAlをさらに含有する請求項42記載の方法。
【請求項44】
工程(c)における沈着を約650℃〜約1100℃の温度でおこなう請求項40記載の方法。
【請求項45】
工程(c)における沈着を約750℃の温度でおこなう請求項40記載の方法。
【請求項46】
沈着を約0.5時間〜約5時間にわたっておこなう請求項44記載の方法。
【請求項47】
沈着を約1時間にわたっておこなう請求項45記載の方法。
【請求項48】
工程(c)の後に、白金沈着化支持体を室温まで冷却させる工程をさらに含む請求項40記載の方法。
【請求項49】
工程(c)の後に、物品を約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたる熱処理に付す工程をさらに含む請求項40記載の方法。
【請求項50】
工程(c)の後に、物品を約900℃〜約1200℃の温度で約6時間までの時間にわたる熱処理に付す工程をさらに含む請求項48記載の方法。
【請求項51】
超合金を含有する耐熱性物品であって、Hf、Y、La、Ce、Zr及びこれらの混合物から選択される反応性元素を含有する表面領域を具有する該耐熱性物品(この場合、該表面領域は、Pt族金属、Ni、Al及び該反応性元素を、γ−Ni+γ’−NiAl相組成が形成されるような相対濃度で含有する)。
【請求項52】
γ’−NiAlが表面改質領域の主要な相である請求項51記載の物品。
【請求項53】
γ’−NiAlが表面改質領域の単独相である請求項51記載の物品。
【請求項54】
白金族金属がPtである請求項51記載の物品。
【請求項55】
反応性元素がHf、Zr及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項54記載の物品。
【請求項56】
表面領域が0.8重量%よりも多くのHfを含有する請求項54記載の物品。
【請求項57】
表面領域が0.8重量%よりも多く、3重量%よりも少ないHfを含有する請求項54記載の物品。
【請求項58】
表面領域が0.8重量%よりも多く、5重量%よりも少ないHfを含有する請求項54記載の物品。
【請求項59】
表面領域が、Cr、Co、Mo、Ta、Re及びこれらの混合物から成る群から選択される金属をさらに含有する請求項54記載の物品。
【請求項60】
表面領域が約5μm〜約50μmの厚さを有する請求項51記載の物品。
【請求項61】
表面領域が約20μmの厚さを有する請求項51記載の物品。
【請求項62】
表面層上に密着性の酸化物層をさらに具有する請求項51記載の物品。
【請求項63】
密着性の酸化物層上にセラミック製コーティングをさらに具有する請求項60記載の物品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−524446(P2008−524446A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547002(P2007−547002)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045927
【国際公開番号】WO2006/076130
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(304057287)アイオワ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Iowa State University Research Foundation, Inc.
【出願人】(501180458)ロールス−ロイス・コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】