目玉焼き様卵加工食品
【課題】本物の目玉焼きとそっくりな卵本来の外観を呈する目玉焼き様卵加工食品、およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る目玉焼き様卵加工食品は、第1の卵白部液を用いた第1の卵白部と、卵黄部液を用いた卵黄部と、第2の卵白部液を用いた第2の卵白部と、を備え、前記第2の卵白部は、第1のテーパー部と、第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄く、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みが1〜5mmであり、前記卵黄部の底面部に接する前記第1の卵白部の色が白色である。
【解決手段】本発明に係る目玉焼き様卵加工食品は、第1の卵白部液を用いた第1の卵白部と、卵黄部液を用いた卵黄部と、第2の卵白部液を用いた第2の卵白部と、を備え、前記第2の卵白部は、第1のテーパー部と、第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄く、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みが1〜5mmであり、前記卵黄部の底面部に接する前記第1の卵白部の色が白色である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目玉焼き様卵加工食品の製造方法および目玉焼き様卵加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、目玉焼きは、フライパンを熱し、そこに生卵を流し込み蓋をして蒸し焼きにし、卵黄部の表面に卵白の薄膜を形成させるという方法により調理されている。このようにして調理された目玉焼き(以下、「本物の目玉焼き」ともいう。)は、扁平な卵白部から卵黄部が突出した卵本来の外観を呈しており、とても美味しそうに見える。
【0003】
しかしながら、このような方法で得られる目玉焼きは、(1)鶏卵の個体差による品質や大きさのバラツキがあること、(2)家庭内での少人数用の料理として調理する場合には特に問題はないが、レストランや食品工場等で量産し顧客に提供する場合には、作業性や能率面の著しい低下をもたらすこと等の問題があった。
【0004】
そこで、上記のような問題点を解決するため、以下のような目玉焼き様卵加工食品の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。まず、目玉焼き用型の焼成部に食用油を塗布して加熱し、その焼成部に卵白部用卵白液を充填する。次に、この卵白部用卵白液が熱凝固する前に、予め成形機で成形しておいた卵黄を焼成部の卵白部用卵白液に静置する。次に、卵白部用卵白液の上に静置した成形した卵黄の上部表面に薄膜用卵白液を滴下または散布し、成形した凝固卵黄の上部表面が均一に薄膜用卵白液で被覆されるようにする。次に、目玉焼き用型を加熱することにより、目玉焼き用卵加工食品を得ることができる。
【0005】
また、任意の卵黄液をアルギン酸ナトリウム等の皮膜に包んでボール状にし、任意の卵白液と組み合わせて再構成卵とし、その再構成卵を焼成して目玉焼き様卵加工食品を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−146170号公報
【特許文献2】実開昭64−17196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、卵黄の表面にのみ薄膜用卵白液を滴下または散布するため、卵白部用卵白液から形成される扁平な卵白部と卵黄の表面に形成された薄膜卵白部との境界が不自然なものとなる。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法により得られた目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部の周囲にアルギン酸ナトリウム等の皮膜を有するものであるが、卵白膜とアルギン酸ナトリウム等の皮膜とが二重に存在するため、不自然な外観を呈していた。また、アルギン酸ナトリウム等の皮膜で覆われた卵黄部は、卵白部と分離しやすいため、卵黄部と一体化した卵白膜を形成することができず、製造上の問題を抱えていた。また、アルギン酸ナトリウム等の皮膜で覆われた卵黄部であっても、当該卵黄部が半熟である場合には潰れやすいという欠点があった。
【0009】
さらに、特許文献1および特許文献2に記載の方法により得られた目玉焼き様卵加工食品では、流通時において卵白部から卵黄部が外れやすい等、外観が損なわれやすいという
問題があった。
【0010】
そこで、本発明にかかる幾つかの態様は、上記課題を解決することで、本物の目玉焼きとそっくりな卵本来の外観を呈する目玉焼き様卵加工食品、およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0012】
[適用例1]
本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法の一態様は、
(a)第1の凹部を有する第1の型を準備する工程と、
(b)前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、流動性を有しない第1の卵白部を得る工程と、
(c)底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する、第2の型を準備する工程と、
(d)前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程と、
(e)前記第2の型に形成された前記第3の凹部に、前記第2の卵白部液よりも比重が大きい卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程と、
(f)前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し加熱して、前記第1の卵白部と、前記の第2卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程と、を含む。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記第2の型に形成された第3の凹部が略円錐台形状である場合において、前記第2の型は、前記第2の凹部の側壁から底部にかけて形成された第1のテーパー部と、前記第3の凹部内に前記第1のテーパー部から連続して形成された第2のテーパー部と、前記第3の凹部内に前記第2のテーパー部から連続して形成された第3のテーパー部と、を有することができる。
【0014】
[適用例3]
適用例2において、
前記第2の型を水平面に置いた場合、水平面に対する角度が、前記第1のテーパー部、前記第2のテーパー部、前記第3のテーパー部の順に大きくなるように形成されることができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記卵黄部液の25℃における比重は、前記第2の卵白部液の25℃における比重よりも0.01g/mL〜0.15g/mL高くすることができる。
【0016】
[適用例5]
本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の一態様は、
略扁平な形状を有する第1の卵白部と、
前記第1卵白部の上に前記第1の卵白部と接するように形成された底面部、前記底面部と連続した曲面からなる側面部、および前記側面部と連続した曲面からなる上面部を有し、前記底面部の面積よりも前記上面部の面積の方が大きい卵黄部と、
前記卵黄部のうち前記底面部以外の部分と前記第1の卵白部とをシームレスで被覆する第2の卵白部と、を備え、
前記第2の卵白部は、その端部から前記卵黄部に向かって形成された第1のテーパー部と、前記第1のテーパー部よりも内側に形成され前記第1のテーパー部と連続する第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0017】
[適用例6]
適用例5において、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、0.2mm以上2mm以下であることができる。
【0018】
[適用例7]
適用例5または適用例6において、
前記卵黄部は、その表面から内部に入り込んだ前記第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有することができる。
【0019】
[適用例8]
適用例5ないし適用例7のいずれか一例において、
前記卵黄部は、90℃で20分間加熱したときに流動性を有することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によれば、本物の目玉焼きと外観がそっくりな目玉焼き様卵加工食品を製造することができる。
【0021】
上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によって製造された目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部が流動性を有する半熟風である場合、その卵黄部の表面から内部へ入り込んだ卵白の突起部を少なくとも一部に有する。卵黄部が半熟風であると外力により変形や潰れが生じやすいが、前記卵白の突起部を有することで卵黄部の形状を保持することができ、外観が損なわれ難くなる。上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によって製造された目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部のうち底面部以外の部分と第1の卵白部とをシームレスで被覆する第2の卵白部を備えているので、卵白部から卵黄部が外れ難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態で使用する第1の型を模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施の形態で使用する第1の型を模式的に示す平面図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す斜視図である。
【図5】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す平面図である。
【図6】図4のB−B線に沿った断面図である。
【図7】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す断面図である。
【図8】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す断面図である。
【図9】目玉焼き様卵加工食品の製造装置を模式的に示す平面図である。
【図10】本実施の形態に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す斜視図である。
【図11】本実施の形態に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【図12】実施例1に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【図13】実施例2に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明において、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0024】
1.目玉焼き様卵加工食品の製造方法
本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法は、(a)第1の凹部を有する第1の型を準備する工程と、(b)前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、流動性を有しない第1の卵白部を得る工程と、(c)底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する、第2の型を準備する工程と、(d)前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程と、(e)前記第2の型に形成された前記第3の凹部に、前記第2の卵白部液よりも比重が大きい卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程と、(f)前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し加熱して、前記第1の卵白部と、前記の第2卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程と、を含む。
【0025】
本発明において「目玉焼き様卵加工食品」とは、本物の目玉焼きにそっくりな外観を呈する加工食品であり、原料として家禽卵を使用する卵食品ではあるが、家禽卵が本来有する卵黄膜に包まれた状態の卵黄を加熱して固定したものではない。
【0026】
以下、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法の各工程について図面を参照しながら説明する。
【0027】
1.1.工程(a)
本工程は、第1の凹部を有する第1の型を準備する工程である。図1は、本実施の形態で使用する第1の型100aを模式的に示す斜視図である。図2は、第1の型100aを模式的に示す平面図である。図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0028】
第1の型100aは、図1に示すように、第1の型を構成する底部12と、前記底部12の周縁に接続され第1の凹部10aが形成された側壁14と、を有している。
【0029】
第1の凹部10aは、図2に示すように、平面から見た場合、略円形または略楕円形であることが好ましく、後述する第2の型の第2の凹部と略同一形状であることがより好ましいが、第2の型の第3の凹部よりも内径が大きければ、特に限定されない。第1の凹部10aの直径は、6cm〜10cm程度であることが好ましい。
【0030】
第1の型100aは、図3に示すように、底部12と側壁14の接続面を曲面とすることで、第1の卵白層の取り外しが容易となる。側壁14の高さは、0.5cm〜2cm程度であることが好ましい。
【0031】
1.2.工程(b)
本工程は、前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、第1の卵白部を得る工程である。
【0032】
まず、卵白液、澱粉、増粘剤、糖アルコール、清水等を混合して第1の卵白部液を製する。卵白液には、卵を割卵して卵黄と分離した卵白液、また乾燥卵白を水戻ししたもの、冷凍卵白を解凍したもの、加熱殺菌したもの等が含まれる。なお、第1の卵白部液は、必要に応じて食塩、グルタミン酸ソーダ、砂糖等の調味料を添加して味付けしておくとよい
。
【0033】
なお、第1の卵白部液の比重および粘度は、特に制限されないが、後述する第2の卵白部液においては、卵黄部液の比重よりも小さく設定する必要があるので、第1および第2の卵白部液として共通の卵白部液を使用する場合には、あらかじめ比重や粘度を調整しておくことが好ましい。第2の卵白部液の好ましい比重や粘度は、後述する。
【0034】
次に、第1の型を100〜160℃程度に加熱して、第1の型100aに形成された第1の凹部10aに、バター、サラダ油等の離型油を適量塗布する。続いて、第1の凹部10aに前記第1の卵白部液を適量(10〜20g程度)流し込み、0.5〜2.0分間加熱することで第1の卵白部を製する。上記の温度範囲に設定しておくことにより、第1の卵白部における第1の型100aの底部12と接触する面に適度な焦げ目をつけることができ、本物の目玉焼きに似せることができる。
【0035】
1.3.工程(c)
本工程は、底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する第2の型を準備する工程である。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態で使用する第2の型200aを模式的に示す斜視図である。図5は、第2の型200aを模式的に示す平面図である。図6は、図4のB−B線に沿った断面図である。
【0037】
第2の型200aは、図4に示すように、底部22および底部22の周縁に接続する側壁24によって形成された第2の凹部20aと、前記第2の凹部20aの底部22に連続して形成された第3の凹部30aと、を有している。
【0038】
第2の型200aは、図5に示すように、平面から見た場合、略円形状の第2の凹部20aと略円形状の第3の凹部30aとが同一円心状に形成されているが、同一円心状に形成されることに限定されず、第2の凹部20aの内部に第3の凹部30aが形成されていれば特に限定されない。第2の凹部20aおよび第3の凹部30aの平面形状は、略円形状に限定されず、略楕円形状であってもよい。第2の凹部20aの直径は、6〜10cm程度であることが好ましい。また、第3の凹部30aの直径は、3.5〜5.5cm程度であることが好ましい。
【0039】
第2の凹部20aは、図6に示すように、側壁24から底部22にかけてテーパー状に形成されていてもよい。テーパー状に形成することで、本物の目玉焼きにそっくりなテーパー形状を有する卵白部を製することができる。
【0040】
第3の凹部30aは、図6に示すように、第2の凹部20aの底部22に連続して形成されている。第3の凹部30aは、略半楕円球状に形成されおり、卵黄部液が5〜12g程度充填できるサイズであることが好ましい。第3の凹部30aの内径は、前記第1の凹部10aの内径よりも小さい。第3の凹部30aの内径が、前記第1の凹部10aの内径よりも大きいと、後述する扁平状の第1の卵白部によって卵黄部を堰き止めることができないからである。第3の凹部30aの内径に対する深さの比(以下、「アスペクト比」という)は、好ましくは0.05〜0.50であり、より好ましくは0.10〜0.30である。アスペクト比が上記範囲外では、得られる目玉焼き様卵加工食品の外観が不自然なものとなる。
【0041】
また、第2の型に形成される第3の凹部は、略円錐台形状であってもよい。「略円錐台
形状」とは、円錐を底面に平行な平面で切り、小円錐の部分を除いた立体的形状である。該略円錐台形状の側面は、単数または複数のテーパー形状であってもよいし、曲面であってもよい。さらに、該略円錐台形状の上面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0042】
図7は、本発明の一実施形態で使用する略円錐台形状の第3の凹部30bを有する第2の型200bを模式的に示す断面図であり、上述した図6に対応する図である。
【0043】
第2の型200bは、第2の型200aと同様に、底部23および底部23の周縁に接続する側壁25によって形成された第2の凹部20bと、前記第2の凹部20bの底部23に連続して形成された第3の凹部30bと、を有している。
【0044】
第2の型200bは、第2の凹部20bの側壁25から底部23にかけて形成された第1のテーパー部26と、前記第3の凹部30b内に前記第1のテーパー部26から連続して形成された第2のテーパー部27と、前記第3の凹部30b内に前記第2のテーパー部27から連続して形成された第3のテーパー部28と、を有することができる。
【0045】
なお、第2の型200bを水平面に置いた場合、水平面に対する角度が、第1のテーパー部26、第2のテーパー部27、第3のテーパー部28の順に大きくなるように形成されていることが好ましい。第3の凹部30bがこのような形状を有することにより、本物の目玉焼きにそっくりなテーパー形状を有する卵白部を製することができる。
【0046】
また、第2の型は、第2の凹部の外周に沿って壁部を形成してもよい。図8は、本発明の一実施形態で使用する第2の型200cを模式的に示す断面図であり、上述した図6に対応する図である。第2の型200cに壁部29を形成することにより、第2の型200cをベルトコンベア等により移動させる際に第2の卵白部液の飛散を防止することができる。壁部29の高さは、0〜10mmであることが好ましい。
【0047】
1.4.工程(d)
本工程は、前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程である。
【0048】
まず、第2の卵白部液を準備する。第2の卵白部液は、工程(b)で準備した第1の卵白部液をそのまま使用することができるが、上述したように別途第2の卵白部液を用意してもよい。
【0049】
第2の卵白部液の比重は、25℃において、好ましくは1.00〜1.05である。第2の卵白部液の比重が上記範囲を超えると、卵黄部液との比重差が小さくなるからである。
【0050】
第2の卵白部液の粘度は、40℃において、好ましくは20〜80cPである。第2の卵白部液の粘度が上記範囲を超えると、後述する工程(e)において卵黄部液との比重差を設けていても卵黄部液を押し込むことが困難となる。なお、第2の卵白部液の粘度は、200mL検査用コップに第2の卵白部液を180mL充填し、品温を40℃に制御した後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.2、回転数100rpm)にて測定を開始し、測定開始後30秒後の示度により求めた値である。
【0051】
次いで、第2の型200aを80〜120℃程度に加熱して、第2の型200aに形成された第2の凹部20aおよび第3の凹部30aに、バター、サラダ油等の離型油を適量塗布する。続いて、第2の凹部20aおよび第3の凹部30aに第2の卵白部液を適量(
15〜30g程度)流し込み、0.1〜1.0分間加熱することで第2の卵白部を製する。上記の温度範囲に設定しておくことにより、焦げ目をつけることなく、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を製することができる。すなわち、工程(d)の段階では、第2の型200aと接している部分の卵白部液のみが凝固しており、それ以外の部分の卵白部液は、流動性を有している。少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を製する理由として、後述する工程(e)において卵黄部液を第3の凹部30aに押し込む必要があること、および後述する工程(f)において第1の卵白部との結着性を高めることの2点が挙げられる。
【0052】
1.5.工程(e)
本工程は、前記第2の型に形成された前記第3の凹部に卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程である。
【0053】
まず、卵黄液および清水を混合して卵黄部液を製する。卵黄液は、卵を割卵して卵白と分離した卵黄液、また乾燥卵黄を水戻ししたもの、冷凍解凍したもの、加熱殺菌したもの、脱コレステロール処理したもの、酵素処理したもの等が含まれる。卵黄部液は、必要に応じて糖アルコール、澱粉、植物油脂、ゼラチン、キサンタンガム、加熱変性卵黄粉等の添加剤を混合することができる。なお、卵黄部液は、必要に応じて食塩、グルタミン酸ソーダ、砂糖等の調味料を添加して味付けしておくとよい。
【0054】
前記卵黄部液の組成を制御することで、完全凝固した完熟風の卵黄部を得ることもできるし、流動性を有する半熟風の卵黄部を得ることもできる。ここで、「完熟風」の卵黄部とは、卵黄部液または卵黄部を90℃で20分間加熱したときに完全凝固しており流動性を完全に失っているものをいう。一方、「半熟風」の卵黄部とは、卵黄部液または卵黄部を90℃で20分間加熱したときであっても流動性を有しているものをいう。
【0055】
卵黄部液の25℃における比重は、好ましくは1.05〜1.20である。卵黄部液の比重が上記範囲未満では、前記第2の卵白部液との比重差が小さくなってしまうため好ましくない。一方、卵黄部液の比重が上記範囲を超えるためには、添加剤の量を増量しなければならず現実的ではない。
【0056】
なお、卵黄部液の比重は、第2の卵白部液の比重よりも大きくしなければならない。卵黄部液の比重は、第2の卵白部液の比重よりも0.01〜0.15g/mL大きくなるように製することが好ましい。卵黄部液の比重を第2の卵白部液の比重よりも0.01〜0.15g/mL大きくしておくことで、卵黄部液を第3の凹部へ容易に押し込むことができ、卵黄部の表面に適度な厚さの卵白膜を形成することが可能となる。比重差が上記範囲未満の場合には、卵黄部液を第3の凹部に押し込むことが困難となるため、卵黄部の表面に卵白部の薄膜を形成することができないことがある。比重差が上記範囲を超えると、卵黄部の表面に形成される卵白部の薄膜が薄くなりすぎたり、卵黄部が露出したりすることがある。
【0057】
卵黄部液の粘度は、40℃において15,000〜100,000cPであることが好ましく、15,000〜22,000cPであることがより好ましい。卵黄部液の粘度が低すぎると、卵黄部液を第3の凹部にまで押し込むことが困難となるばかりでなく、卵黄部液が第2の卵白部液の表面に拡がってしまい、本物の目玉焼きにそっくりな目玉焼き様卵加工食品が得られない。一方、卵黄部液の粘度が高すぎると、つのが立ちすぎてしまい、本物の目玉焼きが有するような卵黄部の形状を形成すること難しくなる。なお、卵黄部液の粘度は、200mL検査用コップに卵黄部液を180mL充填し、品温を40℃に制御した後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.6、回転数4rpm)にて測定を開始し、測定開始30秒後の示度により求めた値である。
【0058】
また、卵黄部液の40℃における粘度は、前記第2の卵白部液の40℃における粘度よりも14,920〜99,980cP高いことが好ましく、14,920〜21,980cP高いことがより好ましい。卵黄部液と第2の卵白部液との40℃における粘度の差が上記範囲未満の場合には、卵黄部液を第3の凹部に押し込むことが困難となるため、卵黄部の表面に卵白部の薄膜を形成することができないことがある。卵黄部液と第2の卵白部液との40℃における粘度の差が上記範囲を超えると、卵黄部の表面に形成される卵白部の薄膜が薄くなりすぎたり、卵黄部が露出したりすることがある。
【0059】
続いて、第2の型200aの温度を80〜120℃に保持した状態のまま、例えば充填機等を用いて第3の凹部30aに前記卵黄部液を適量(5〜12g程度)充填し、0.01〜1.0分間加熱することで卵黄部を製する。卵黄部液の比重を第2の卵白部液の比重よりも大きくしているため、卵黄部液は未だ完全凝固していない第2の卵白部の内部へ侵入し、第3の凹部30aに充填される。ここで、前記工程(d)において第2の型側の第2の卵白部表面は少なくとも完全凝固しているため、これにより卵黄部液の流動を堰き止めることができる。
【0060】
1.6.工程(f)
本工程は、前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し、80〜120℃の温度で3〜7分間加熱して、前記第1の卵白部と、前記第2の卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程である。
【0061】
第2の卵白部の第2の型と接している面とは反対側の面は、未だ卵白部液が完全凝固していないため、第1の卵白部を載置して完全凝固させることで、前記第1の卵白部と、前記の第2の卵白部および前記卵黄部とを結着させることができる。
【0062】
以上の工程(a)ないし(f)により製された半熟風の卵黄部を有する目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部の表面から内部に入り込んだ第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有する形状となる。このような突起部が形成される理由としては、未だ完全に凝固していない第2の卵白部液が第3の凹部30aへ流れ込み卵黄部液を外側から圧迫することで形成されたものと推測される。該突起部を形成することで重力等の外力の影響で変形しやすい半熟風の卵黄部の形状を保持することができ、また冷凍した場合卵黄部が卵白部から外れ難いものとなる。また、第2の凹部をテーパー状に形成しておくことで第3の凹部に第2の卵白部液がさらに流れ込みやすくなり、第2の卵白部液によって卵黄部液がさらに圧迫されるため突起部が形成されやすい。
【0063】
2.目玉焼き様卵加工食品の製造装置
以下に、本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法に適した製造装置の一例について説明する。具体的には、目玉焼き様卵加工食品の製造装置は、第1の凹部を有する第1の型と、底部および底部の周縁に接続する側壁を有する第2の凹部および前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状を有する第3の凹部を有する第2の型と、を備え、前記第1の型と前記第2の型とが左右対称となるように回動可能に接合されたことを特徴とする。
【0064】
図9は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造装置300の概略を示す平面図である。
【0065】
まず、目玉焼き様卵加工食品の製造装置300の概略を説明する。製造装置300は、所定の架台(図示せず)に据え付けられている第1の型100bと、第2の型200dと、それらを連結するシャフト60と、を含む。
【0066】
第1の型100bは、直方体形状の外観を呈しており、その長手方向に沿って4つの第1の凹部10bが直列かつ等間隔に配置されている。第1の型に形成される第1の凹部の数や位置は、特に限定されない。また、第1の型100bは、シャフト60と接続するための連結部64と、第1の型100bを回動させるための取手部66と、を備えている。第1の型100bは、連結部64により回動可能にシャフト60と連結されている。第1の凹部10bの形状については、上述した第1の凹部10aと同様の形状であるため説明を省略する。
【0067】
第2の型200dは、直方体形状の外観を呈しており、その長手方向に沿って4つの第2の凹部20d(内部に第3の凹部30dが形成されている)が直列かつ等間隔に配置されている。第2の型に形成される第2の凹部の数や位置は、特に限定されないが、第1の型に形成される第1の凹部の数や位置と合わせておくとよい。また、第2の型200dは、シャフト60と接続するための連結部65と、第2の型200dを回動させるための取手部67と、を有している。第2の型200dは、連結部65により回動可能にシャフト60と連結されている。第2の凹部20dおよび第3の凹部30dの形状については、上述した第2の凹部20a(または20bもしくは20c)および第3の凹部30a(または30bもしくは30c)と同様の形状であるため説明を省略する。
【0068】
第1の型100bおよび第2の型200dの材質は、熱伝導性に優れ、熱により変形しないものであれば特に限定されないが、例えばチタン、アルミ、鉄等が挙げられる。
【0069】
製造装置300は、シャフト60を対称軸として第1の型100bと第2の型200dとが左右対称となるように配置されている。このような構成とすることで、上述した工程(f)において第1の型100bの取手部66を持って反転させることにより第1の卵白部を第2の凹部へ容易かつ確実に載置することができる。また、目玉焼き様卵加工食品を製した後、第2の型200dの取手部67を持って反転させることにより、製した目玉焼き様卵加工食品を第2の型200dから容易に取り出すことができる。
【0070】
また、製造装置300の下方には、(図示しない)ガスコンロ等の加熱装置を設けることができる。また、必要に応じて製造装置300の上方に加熱装置を設けてもよい。製造装置300は、例えばベルトコンベア等に載せて移動させながら使用することで生産効率を向上させることができる。
【0071】
3.目玉焼き様卵加工食品
本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品は、上述した製造方法により製造することができる。図10は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の一例を模式的に示す斜視図である。図11は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の一例を模式的に示す断面図である。
【0072】
本実施の形態にかかる目玉焼き用卵加工食品400aは、図10および図11に示すように、略扁平な形状を有する第1の卵白部40と、前記第1の卵白部40の上に形成された卵黄部42と、前記卵黄部42および前記第1卵白部40を被覆する第2の卵白部44と、を備えている。
【0073】
目玉焼き様卵加工食品400aは、上述した製造方法により製造されたものであるため、図11に示すように、第1の卵白部40および第2の卵白部44の二層構造の卵白部を有しているところに特徴がある。
【0074】
第1の卵白部40は、略扁平な形状であり、卵黄部42を下方から支持および保護する
役割を担っている。第1の卵白部40を略扁平形状とした理由としては、本物の目玉焼きの卵白部が略扁平であるため、その形状に似せるためである。第1の卵白部40の厚みは、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜3mmである。本明細書において、「厚み」とは、その対象となる部材において最も厚い部分の厚さをいう。
【0075】
卵黄部42は、第1の卵白部40の上に第1の卵白部40と接するように形成された底面部45、前記底面部45と連続した曲面からなる側面部46、および前記側面部46と連続した曲面からなる上面部47を有している。したがって、側面部46と上面部47との境界には、変曲線が存在する。さらに、卵黄部42は、底面部45の面積よりも上面部47の面積の方が大きくなっており、平面から見た場合、底面部45が上面部47に包含されている形状であることが好ましい。卵黄部42がこのような特徴的な形状となる理由は、上述した第2の型の第3の凹部内に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫するためである。
【0076】
卵黄部42は、上述したように「完熟風」であってもよいし、「半熟風」であってもよい。卵黄部42が「半熟風」である場合には、該卵黄部は90℃で20分間加熱したときであっても流動性を有している。一方、卵黄部42が「完熟風」である場合には、該卵黄部は90℃で20分間加熱したときに完全凝固しており、流動性が失われている。
【0077】
第2の卵白部44は、卵黄部42のうち底面部45以外の部分と第1の卵白部40とをシームレスで被覆している。第2の卵白部44がこのような形状となるのは、上述した第2の型に第2の卵白部液を流し込んでから卵黄部液を第3の凹部へ注入するという製造方法を採用しているからである。卵黄部42の表面を第2の卵白部44の薄膜で被覆することで、本物の目玉焼きの卵黄部に似た外観となる。ここで、第2の卵白部44のうち卵黄部42の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における厚みは、好ましくは0.2mm以上2mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上1mm以下である。上記領域内における第2の卵白部44の厚みが0.2mm未満であると、卵黄部が損傷しやすくなり、特に半熟風の目玉焼き様卵加工食品では第2の卵白部44の損傷により卵黄部が流動してしまうことがある。一方、上記領域内における第2の卵白部44の厚みが2mmを超えると、第2の卵白部44の厚みが厚すぎるため、全体が白色の色調となり、卵黄部の色調が失われ、外観(形状、色調)が悪くなる傾向にある。
【0078】
また、第2の卵白部44は、その端部48から卵黄部42に向かって形成された第1のテーパー部49と、前記第1のテーパー部49よりも内側に形成されており該第1のテーパー部49と連続する第2のテーパー部50と、を有している。目玉焼き様卵加工食品400を水平面に置いた場合、水平面に対する角度は、第1のテーパー部49よりも第2のテーパー部50の方が大きくなっている。このような形状を有することで、さらに本物の目玉焼きにそっくりな形状とすることができる。
【0079】
また、目玉焼き様卵加工食品400aは、図11に示すような断面視において、第2のテーパー部50と、卵黄部42の側面部46と、に挟まれた略三角形状の卵白部の領域51を有している。領域51は、卵黄部42の外周を取り巻くように形成されている。領域51が形成される理由は、上述した第2の型の第3の凹部に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫するためである。領域51を形成することで、卵黄部42をしっかりと固定することができ、冷凍した場合でも卵黄部42が第2の卵白部44から外れ難くなる。例えば、領域51の断面形状が略三角形状ではなく薄膜状であると、冷凍した場合に卵黄部42が第2の卵白部44から外れ易いものとなる。
【0080】
目玉焼き様卵加工食品400aは、第2の卵白部44のうち卵黄部42の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、第1の卵白部40のうち前記垂
直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄いことを特徴とする。これは、上述した方法により製したものであることに由来する特徴であるが、かかる構造を有することで本物の目玉焼きにそっくりな形状および色彩となる。つまり、第2の卵白部44の厚みが第1の卵白部40よりも厚い場合には、卵黄部42の表面に分厚い第2の卵白部44が形成されることにより全体が白色の色調となり、外観(形状、色調)が悪くなる傾向にある。
【0081】
また、卵黄部42が「半熟風」である場合には、卵黄部42は、その表面から内部に入り込んだ第2の卵白部44により形成された突起部52を少なくとも一部に有している。突起部52は、上述した第2の型の第3の凹部に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫することで形成される。卵黄部42が「半熟風」であると、重力等の外力の影響を受けて変形することがあるが、卵黄部42の表面から内部に入り込んだ突起部52を有することにより、卵黄部42の形状を保持することができるようになる。また、突起部52を有することにより、卵黄部42が第2の卵白部44から外れ難くすることができる。
【0082】
目玉焼き様卵加工食品400aは、そのまま冷凍して冷凍食品としてもよい。冷凍温度は、冷凍厚焼き卵や冷凍味付けゆで卵と同じ−18〜−40℃でよい。目玉焼き様卵加工食品400aをビニル袋等で外装して冷凍すれば、品質を劣化させることなく、一年間以上保存することができ、また供食に当たっては凍結状態のまま電子レンジで加熱したりフライパン中で油ちょうすれば、本物の目玉焼きにそっくりな目玉焼き様卵加工食品を復元させることができる。なお、本発明にかかる「半熟風」の目玉焼き様卵加工食品を冷凍後、解凍した場合であっても、卵黄部は流動性を失わない。
【0083】
4.実施例
4.1.実施例1[半熟風目玉焼き様卵加工食品の製造]
まず、図9に示すような目玉焼き様卵加工食品の製造装置を準備した。なお、本製造装置の第2の凹部および第3の凹部は、図7に示した形状に加工されている。
【0084】
次に、卵白液、澱粉、糖アルコール、清水を表1に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵白部液を製した。得られた卵白部液の40℃における粘度を測定したところ、50cPであった。また、得られた卵白部液の25℃における比重を測定したところ、1.03g/mLであった。
【0085】
【表1】
【0086】
次に、卵黄液、澱粉、糖アルコール、植物油脂、ゼラチン、キサンタンガム、清水を表2に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合した。その混合液を80℃まで加熱して、澱粉を糊化させた。さらに、その混合液を40℃まで冷却することにより卵黄部液を製した。得られた卵黄部液の40℃における粘度を測定したところ、18,000cPであった。また、得られた卵黄部液の25℃における比重を測定したところ、1.05g/mLであった。
【0087】
【表2】
【0088】
次に、第1の型に卵白部液を15g流し込み、135℃で30秒間加熱することで、完全凝固した略扁平な第1の卵白部を製した。
【0089】
次に、第2の型に卵白部液を20g流し込み、90℃で20秒間加熱後、第2の型の第3の凹部に押し込むようにして卵黄部液を10g充填した。
【0090】
卵黄部液の充填後に90℃で30秒間加熱した後、第1の型を反転させることにより第1の卵白部を第2の型に重ねるようにして載置し、さらに90℃で5分間加熱した。第2の型を反転させることで第2の型から取り外して、半熟風目玉焼き様卵加工食品400bを製した。
【0091】
得られた半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの断面形状は、図12に示すような形状であった。半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの卵黄部には、第2の卵白部によって形成された突起部52が存在した。なお、図12において、半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの符号は、図11と対応しているため説明を省略する。
【0092】
さらに、第2の卵白部のうち卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、0.8mmであった。一方、第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、3mmであった。
【0093】
4.2.実施例2[完熟風目玉焼き卵加工食品の製造]
まず、図9に示すような目玉焼き様卵加工食品の製造装置を準備した。なお、本製造装置の第2の凹部および第3の凹部は、図7に示した形状に加工されている。
【0094】
次に、卵白液、澱粉、糖アルコール、清水を表1に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵白部液を製した。得られた卵白部液の40℃における粘度を測定したところ、50cPであった。また、得られた卵白部液の25℃における比重を測定したところ、1.03g/mLであった。
【0095】
次に、卵黄液、糖アルコール、澱粉、加熱変性卵黄粉、植物油脂、キサンタンガム、清水を表3に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵黄部液を製した。得られた卵黄部液の40℃における粘度を測定したところ、80,000cPであった。また、得られた卵黄部液の25℃における比重を測定したところ、1.10g/mLであった。
【0096】
【表3】
【0097】
次に、第1の型に卵白部液を15g流し込み、135℃で30秒間加熱することで、完全凝固した略扁平な第1の卵白部を製した。
【0098】
次に、第2の型に卵白部液を20g流し込み、90℃で20秒間加熱後、第2の型の第3の凹部に押し込むようにして卵黄部液を10g充填した。
【0099】
卵黄部液の充填後に90℃で30秒間加熱した後、第1の型を反転させることにより第1の卵白部を第2の型に重ねるようにして載置し、さらに90℃で5分間加熱した。第2の型を反転させることで第2の型から取り外して、完熟風目玉焼き様卵加工食品400cを製した。
【0100】
得られた完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの断面形状は、図13に示すような形状であった。完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの卵黄部には、第2の卵白部によって形成された突起部が存在しなかった。なお、図13において、完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの符号は、図11と対応しているため説明を省略する。
【0101】
さらに、第2の卵白部のうち卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、0.5mmであった。一方、第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、3.2mmであった。
【符号の説明】
【0102】
10a・10b…第1の凹部、12…底部、14…側壁、20a・20b・20d…第2の凹部、22・23…底部、24・25…側壁、26…第1のテーパー部、27…第2のテーパー部、28…第3のテーパー部、29…壁部、30a・30b…第3の凹部、40…第1の卵白部、42…卵黄部、44…第2卵白部、45…底面部、46…側面部、47…上面部、48…端部、49…第1のテーパー部、50…第2のテーパー部、51…(断面略三角形状の)領域、52…突起部、60…シャフト、64・65…連結部、66・67…取手部、100a・100b…第1の型、200a・200b・200c・200d…第2の型、300…製造装置、400a・400b・400c…目玉焼き様卵加工食品
【技術分野】
【0001】
本発明は、目玉焼き様卵加工食品の製造方法および目玉焼き様卵加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、目玉焼きは、フライパンを熱し、そこに生卵を流し込み蓋をして蒸し焼きにし、卵黄部の表面に卵白の薄膜を形成させるという方法により調理されている。このようにして調理された目玉焼き(以下、「本物の目玉焼き」ともいう。)は、扁平な卵白部から卵黄部が突出した卵本来の外観を呈しており、とても美味しそうに見える。
【0003】
しかしながら、このような方法で得られる目玉焼きは、(1)鶏卵の個体差による品質や大きさのバラツキがあること、(2)家庭内での少人数用の料理として調理する場合には特に問題はないが、レストランや食品工場等で量産し顧客に提供する場合には、作業性や能率面の著しい低下をもたらすこと等の問題があった。
【0004】
そこで、上記のような問題点を解決するため、以下のような目玉焼き様卵加工食品の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。まず、目玉焼き用型の焼成部に食用油を塗布して加熱し、その焼成部に卵白部用卵白液を充填する。次に、この卵白部用卵白液が熱凝固する前に、予め成形機で成形しておいた卵黄を焼成部の卵白部用卵白液に静置する。次に、卵白部用卵白液の上に静置した成形した卵黄の上部表面に薄膜用卵白液を滴下または散布し、成形した凝固卵黄の上部表面が均一に薄膜用卵白液で被覆されるようにする。次に、目玉焼き用型を加熱することにより、目玉焼き用卵加工食品を得ることができる。
【0005】
また、任意の卵黄液をアルギン酸ナトリウム等の皮膜に包んでボール状にし、任意の卵白液と組み合わせて再構成卵とし、その再構成卵を焼成して目玉焼き様卵加工食品を得る方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−146170号公報
【特許文献2】実開昭64−17196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、卵黄の表面にのみ薄膜用卵白液を滴下または散布するため、卵白部用卵白液から形成される扁平な卵白部と卵黄の表面に形成された薄膜卵白部との境界が不自然なものとなる。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法により得られた目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部の周囲にアルギン酸ナトリウム等の皮膜を有するものであるが、卵白膜とアルギン酸ナトリウム等の皮膜とが二重に存在するため、不自然な外観を呈していた。また、アルギン酸ナトリウム等の皮膜で覆われた卵黄部は、卵白部と分離しやすいため、卵黄部と一体化した卵白膜を形成することができず、製造上の問題を抱えていた。また、アルギン酸ナトリウム等の皮膜で覆われた卵黄部であっても、当該卵黄部が半熟である場合には潰れやすいという欠点があった。
【0009】
さらに、特許文献1および特許文献2に記載の方法により得られた目玉焼き様卵加工食品では、流通時において卵白部から卵黄部が外れやすい等、外観が損なわれやすいという
問題があった。
【0010】
そこで、本発明にかかる幾つかの態様は、上記課題を解決することで、本物の目玉焼きとそっくりな卵本来の外観を呈する目玉焼き様卵加工食品、およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0012】
[適用例1]
本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法の一態様は、
(a)第1の凹部を有する第1の型を準備する工程と、
(b)前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、流動性を有しない第1の卵白部を得る工程と、
(c)底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する、第2の型を準備する工程と、
(d)前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程と、
(e)前記第2の型に形成された前記第3の凹部に、前記第2の卵白部液よりも比重が大きい卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程と、
(f)前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し加熱して、前記第1の卵白部と、前記の第2卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程と、を含む。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記第2の型に形成された第3の凹部が略円錐台形状である場合において、前記第2の型は、前記第2の凹部の側壁から底部にかけて形成された第1のテーパー部と、前記第3の凹部内に前記第1のテーパー部から連続して形成された第2のテーパー部と、前記第3の凹部内に前記第2のテーパー部から連続して形成された第3のテーパー部と、を有することができる。
【0014】
[適用例3]
適用例2において、
前記第2の型を水平面に置いた場合、水平面に対する角度が、前記第1のテーパー部、前記第2のテーパー部、前記第3のテーパー部の順に大きくなるように形成されることができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記卵黄部液の25℃における比重は、前記第2の卵白部液の25℃における比重よりも0.01g/mL〜0.15g/mL高くすることができる。
【0016】
[適用例5]
本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の一態様は、
略扁平な形状を有する第1の卵白部と、
前記第1卵白部の上に前記第1の卵白部と接するように形成された底面部、前記底面部と連続した曲面からなる側面部、および前記側面部と連続した曲面からなる上面部を有し、前記底面部の面積よりも前記上面部の面積の方が大きい卵黄部と、
前記卵黄部のうち前記底面部以外の部分と前記第1の卵白部とをシームレスで被覆する第2の卵白部と、を備え、
前記第2の卵白部は、その端部から前記卵黄部に向かって形成された第1のテーパー部と、前記第1のテーパー部よりも内側に形成され前記第1のテーパー部と連続する第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄いことを特徴とする。
【0017】
[適用例6]
適用例5において、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、0.2mm以上2mm以下であることができる。
【0018】
[適用例7]
適用例5または適用例6において、
前記卵黄部は、その表面から内部に入り込んだ前記第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有することができる。
【0019】
[適用例8]
適用例5ないし適用例7のいずれか一例において、
前記卵黄部は、90℃で20分間加熱したときに流動性を有することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によれば、本物の目玉焼きと外観がそっくりな目玉焼き様卵加工食品を製造することができる。
【0021】
上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によって製造された目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部が流動性を有する半熟風である場合、その卵黄部の表面から内部へ入り込んだ卵白の突起部を少なくとも一部に有する。卵黄部が半熟風であると外力により変形や潰れが生じやすいが、前記卵白の突起部を有することで卵黄部の形状を保持することができ、外観が損なわれ難くなる。上記目玉焼き様卵加工食品の製造方法によって製造された目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部のうち底面部以外の部分と第1の卵白部とをシームレスで被覆する第2の卵白部を備えているので、卵白部から卵黄部が外れ難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態で使用する第1の型を模式的に示す斜視図である。
【図2】本実施の形態で使用する第1の型を模式的に示す平面図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す斜視図である。
【図5】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す平面図である。
【図6】図4のB−B線に沿った断面図である。
【図7】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す断面図である。
【図8】本実施の形態で使用する第2の型を模式的に示す断面図である。
【図9】目玉焼き様卵加工食品の製造装置を模式的に示す平面図である。
【図10】本実施の形態に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す斜視図である。
【図11】本実施の形態に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【図12】実施例1に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【図13】実施例2に係る目玉焼き様卵加工食品を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明において、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0024】
1.目玉焼き様卵加工食品の製造方法
本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法は、(a)第1の凹部を有する第1の型を準備する工程と、(b)前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、流動性を有しない第1の卵白部を得る工程と、(c)底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する、第2の型を準備する工程と、(d)前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程と、(e)前記第2の型に形成された前記第3の凹部に、前記第2の卵白部液よりも比重が大きい卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程と、(f)前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し加熱して、前記第1の卵白部と、前記の第2卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程と、を含む。
【0025】
本発明において「目玉焼き様卵加工食品」とは、本物の目玉焼きにそっくりな外観を呈する加工食品であり、原料として家禽卵を使用する卵食品ではあるが、家禽卵が本来有する卵黄膜に包まれた状態の卵黄を加熱して固定したものではない。
【0026】
以下、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法の各工程について図面を参照しながら説明する。
【0027】
1.1.工程(a)
本工程は、第1の凹部を有する第1の型を準備する工程である。図1は、本実施の形態で使用する第1の型100aを模式的に示す斜視図である。図2は、第1の型100aを模式的に示す平面図である。図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0028】
第1の型100aは、図1に示すように、第1の型を構成する底部12と、前記底部12の周縁に接続され第1の凹部10aが形成された側壁14と、を有している。
【0029】
第1の凹部10aは、図2に示すように、平面から見た場合、略円形または略楕円形であることが好ましく、後述する第2の型の第2の凹部と略同一形状であることがより好ましいが、第2の型の第3の凹部よりも内径が大きければ、特に限定されない。第1の凹部10aの直径は、6cm〜10cm程度であることが好ましい。
【0030】
第1の型100aは、図3に示すように、底部12と側壁14の接続面を曲面とすることで、第1の卵白層の取り外しが容易となる。側壁14の高さは、0.5cm〜2cm程度であることが好ましい。
【0031】
1.2.工程(b)
本工程は、前記第1の型を加熱した後、前記第1の凹部に第1の卵白部液を充填し、第1の卵白部を得る工程である。
【0032】
まず、卵白液、澱粉、増粘剤、糖アルコール、清水等を混合して第1の卵白部液を製する。卵白液には、卵を割卵して卵黄と分離した卵白液、また乾燥卵白を水戻ししたもの、冷凍卵白を解凍したもの、加熱殺菌したもの等が含まれる。なお、第1の卵白部液は、必要に応じて食塩、グルタミン酸ソーダ、砂糖等の調味料を添加して味付けしておくとよい
。
【0033】
なお、第1の卵白部液の比重および粘度は、特に制限されないが、後述する第2の卵白部液においては、卵黄部液の比重よりも小さく設定する必要があるので、第1および第2の卵白部液として共通の卵白部液を使用する場合には、あらかじめ比重や粘度を調整しておくことが好ましい。第2の卵白部液の好ましい比重や粘度は、後述する。
【0034】
次に、第1の型を100〜160℃程度に加熱して、第1の型100aに形成された第1の凹部10aに、バター、サラダ油等の離型油を適量塗布する。続いて、第1の凹部10aに前記第1の卵白部液を適量(10〜20g程度)流し込み、0.5〜2.0分間加熱することで第1の卵白部を製する。上記の温度範囲に設定しておくことにより、第1の卵白部における第1の型100aの底部12と接触する面に適度な焦げ目をつけることができ、本物の目玉焼きに似せることができる。
【0035】
1.3.工程(c)
本工程は、底部および底部の周縁に連続する側壁を有する第2の凹部と、前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状の第3の凹部と、を有する第2の型を準備する工程である。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態で使用する第2の型200aを模式的に示す斜視図である。図5は、第2の型200aを模式的に示す平面図である。図6は、図4のB−B線に沿った断面図である。
【0037】
第2の型200aは、図4に示すように、底部22および底部22の周縁に接続する側壁24によって形成された第2の凹部20aと、前記第2の凹部20aの底部22に連続して形成された第3の凹部30aと、を有している。
【0038】
第2の型200aは、図5に示すように、平面から見た場合、略円形状の第2の凹部20aと略円形状の第3の凹部30aとが同一円心状に形成されているが、同一円心状に形成されることに限定されず、第2の凹部20aの内部に第3の凹部30aが形成されていれば特に限定されない。第2の凹部20aおよび第3の凹部30aの平面形状は、略円形状に限定されず、略楕円形状であってもよい。第2の凹部20aの直径は、6〜10cm程度であることが好ましい。また、第3の凹部30aの直径は、3.5〜5.5cm程度であることが好ましい。
【0039】
第2の凹部20aは、図6に示すように、側壁24から底部22にかけてテーパー状に形成されていてもよい。テーパー状に形成することで、本物の目玉焼きにそっくりなテーパー形状を有する卵白部を製することができる。
【0040】
第3の凹部30aは、図6に示すように、第2の凹部20aの底部22に連続して形成されている。第3の凹部30aは、略半楕円球状に形成されおり、卵黄部液が5〜12g程度充填できるサイズであることが好ましい。第3の凹部30aの内径は、前記第1の凹部10aの内径よりも小さい。第3の凹部30aの内径が、前記第1の凹部10aの内径よりも大きいと、後述する扁平状の第1の卵白部によって卵黄部を堰き止めることができないからである。第3の凹部30aの内径に対する深さの比(以下、「アスペクト比」という)は、好ましくは0.05〜0.50であり、より好ましくは0.10〜0.30である。アスペクト比が上記範囲外では、得られる目玉焼き様卵加工食品の外観が不自然なものとなる。
【0041】
また、第2の型に形成される第3の凹部は、略円錐台形状であってもよい。「略円錐台
形状」とは、円錐を底面に平行な平面で切り、小円錐の部分を除いた立体的形状である。該略円錐台形状の側面は、単数または複数のテーパー形状であってもよいし、曲面であってもよい。さらに、該略円錐台形状の上面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0042】
図7は、本発明の一実施形態で使用する略円錐台形状の第3の凹部30bを有する第2の型200bを模式的に示す断面図であり、上述した図6に対応する図である。
【0043】
第2の型200bは、第2の型200aと同様に、底部23および底部23の周縁に接続する側壁25によって形成された第2の凹部20bと、前記第2の凹部20bの底部23に連続して形成された第3の凹部30bと、を有している。
【0044】
第2の型200bは、第2の凹部20bの側壁25から底部23にかけて形成された第1のテーパー部26と、前記第3の凹部30b内に前記第1のテーパー部26から連続して形成された第2のテーパー部27と、前記第3の凹部30b内に前記第2のテーパー部27から連続して形成された第3のテーパー部28と、を有することができる。
【0045】
なお、第2の型200bを水平面に置いた場合、水平面に対する角度が、第1のテーパー部26、第2のテーパー部27、第3のテーパー部28の順に大きくなるように形成されていることが好ましい。第3の凹部30bがこのような形状を有することにより、本物の目玉焼きにそっくりなテーパー形状を有する卵白部を製することができる。
【0046】
また、第2の型は、第2の凹部の外周に沿って壁部を形成してもよい。図8は、本発明の一実施形態で使用する第2の型200cを模式的に示す断面図であり、上述した図6に対応する図である。第2の型200cに壁部29を形成することにより、第2の型200cをベルトコンベア等により移動させる際に第2の卵白部液の飛散を防止することができる。壁部29の高さは、0〜10mmであることが好ましい。
【0047】
1.4.工程(d)
本工程は、前記第2の型を加熱した後、前記第2の凹部および前記第3の凹部に第2の卵白部液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を得る工程である。
【0048】
まず、第2の卵白部液を準備する。第2の卵白部液は、工程(b)で準備した第1の卵白部液をそのまま使用することができるが、上述したように別途第2の卵白部液を用意してもよい。
【0049】
第2の卵白部液の比重は、25℃において、好ましくは1.00〜1.05である。第2の卵白部液の比重が上記範囲を超えると、卵黄部液との比重差が小さくなるからである。
【0050】
第2の卵白部液の粘度は、40℃において、好ましくは20〜80cPである。第2の卵白部液の粘度が上記範囲を超えると、後述する工程(e)において卵黄部液との比重差を設けていても卵黄部液を押し込むことが困難となる。なお、第2の卵白部液の粘度は、200mL検査用コップに第2の卵白部液を180mL充填し、品温を40℃に制御した後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.2、回転数100rpm)にて測定を開始し、測定開始後30秒後の示度により求めた値である。
【0051】
次いで、第2の型200aを80〜120℃程度に加熱して、第2の型200aに形成された第2の凹部20aおよび第3の凹部30aに、バター、サラダ油等の離型油を適量塗布する。続いて、第2の凹部20aおよび第3の凹部30aに第2の卵白部液を適量(
15〜30g程度)流し込み、0.1〜1.0分間加熱することで第2の卵白部を製する。上記の温度範囲に設定しておくことにより、焦げ目をつけることなく、少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を製することができる。すなわち、工程(d)の段階では、第2の型200aと接している部分の卵白部液のみが凝固しており、それ以外の部分の卵白部液は、流動性を有している。少なくとも表面が流動性を有する第2の卵白部を製する理由として、後述する工程(e)において卵黄部液を第3の凹部30aに押し込む必要があること、および後述する工程(f)において第1の卵白部との結着性を高めることの2点が挙げられる。
【0052】
1.5.工程(e)
本工程は、前記第2の型に形成された前記第3の凹部に卵黄部液を充填し、卵黄部を得る工程である。
【0053】
まず、卵黄液および清水を混合して卵黄部液を製する。卵黄液は、卵を割卵して卵白と分離した卵黄液、また乾燥卵黄を水戻ししたもの、冷凍解凍したもの、加熱殺菌したもの、脱コレステロール処理したもの、酵素処理したもの等が含まれる。卵黄部液は、必要に応じて糖アルコール、澱粉、植物油脂、ゼラチン、キサンタンガム、加熱変性卵黄粉等の添加剤を混合することができる。なお、卵黄部液は、必要に応じて食塩、グルタミン酸ソーダ、砂糖等の調味料を添加して味付けしておくとよい。
【0054】
前記卵黄部液の組成を制御することで、完全凝固した完熟風の卵黄部を得ることもできるし、流動性を有する半熟風の卵黄部を得ることもできる。ここで、「完熟風」の卵黄部とは、卵黄部液または卵黄部を90℃で20分間加熱したときに完全凝固しており流動性を完全に失っているものをいう。一方、「半熟風」の卵黄部とは、卵黄部液または卵黄部を90℃で20分間加熱したときであっても流動性を有しているものをいう。
【0055】
卵黄部液の25℃における比重は、好ましくは1.05〜1.20である。卵黄部液の比重が上記範囲未満では、前記第2の卵白部液との比重差が小さくなってしまうため好ましくない。一方、卵黄部液の比重が上記範囲を超えるためには、添加剤の量を増量しなければならず現実的ではない。
【0056】
なお、卵黄部液の比重は、第2の卵白部液の比重よりも大きくしなければならない。卵黄部液の比重は、第2の卵白部液の比重よりも0.01〜0.15g/mL大きくなるように製することが好ましい。卵黄部液の比重を第2の卵白部液の比重よりも0.01〜0.15g/mL大きくしておくことで、卵黄部液を第3の凹部へ容易に押し込むことができ、卵黄部の表面に適度な厚さの卵白膜を形成することが可能となる。比重差が上記範囲未満の場合には、卵黄部液を第3の凹部に押し込むことが困難となるため、卵黄部の表面に卵白部の薄膜を形成することができないことがある。比重差が上記範囲を超えると、卵黄部の表面に形成される卵白部の薄膜が薄くなりすぎたり、卵黄部が露出したりすることがある。
【0057】
卵黄部液の粘度は、40℃において15,000〜100,000cPであることが好ましく、15,000〜22,000cPであることがより好ましい。卵黄部液の粘度が低すぎると、卵黄部液を第3の凹部にまで押し込むことが困難となるばかりでなく、卵黄部液が第2の卵白部液の表面に拡がってしまい、本物の目玉焼きにそっくりな目玉焼き様卵加工食品が得られない。一方、卵黄部液の粘度が高すぎると、つのが立ちすぎてしまい、本物の目玉焼きが有するような卵黄部の形状を形成すること難しくなる。なお、卵黄部液の粘度は、200mL検査用コップに卵黄部液を180mL充填し、品温を40℃に制御した後、B型粘度計(ブルックフィールド社製、ローターNo.6、回転数4rpm)にて測定を開始し、測定開始30秒後の示度により求めた値である。
【0058】
また、卵黄部液の40℃における粘度は、前記第2の卵白部液の40℃における粘度よりも14,920〜99,980cP高いことが好ましく、14,920〜21,980cP高いことがより好ましい。卵黄部液と第2の卵白部液との40℃における粘度の差が上記範囲未満の場合には、卵黄部液を第3の凹部に押し込むことが困難となるため、卵黄部の表面に卵白部の薄膜を形成することができないことがある。卵黄部液と第2の卵白部液との40℃における粘度の差が上記範囲を超えると、卵黄部の表面に形成される卵白部の薄膜が薄くなりすぎたり、卵黄部が露出したりすることがある。
【0059】
続いて、第2の型200aの温度を80〜120℃に保持した状態のまま、例えば充填機等を用いて第3の凹部30aに前記卵黄部液を適量(5〜12g程度)充填し、0.01〜1.0分間加熱することで卵黄部を製する。卵黄部液の比重を第2の卵白部液の比重よりも大きくしているため、卵黄部液は未だ完全凝固していない第2の卵白部の内部へ侵入し、第3の凹部30aに充填される。ここで、前記工程(d)において第2の型側の第2の卵白部表面は少なくとも完全凝固しているため、これにより卵黄部液の流動を堰き止めることができる。
【0060】
1.6.工程(f)
本工程は、前記第1の卵白部を前記第2の型に載置し、80〜120℃の温度で3〜7分間加熱して、前記第1の卵白部と、前記第2の卵白部および前記卵黄部と、を結着させる工程である。
【0061】
第2の卵白部の第2の型と接している面とは反対側の面は、未だ卵白部液が完全凝固していないため、第1の卵白部を載置して完全凝固させることで、前記第1の卵白部と、前記の第2の卵白部および前記卵黄部とを結着させることができる。
【0062】
以上の工程(a)ないし(f)により製された半熟風の卵黄部を有する目玉焼き様卵加工食品は、卵黄部の表面から内部に入り込んだ第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有する形状となる。このような突起部が形成される理由としては、未だ完全に凝固していない第2の卵白部液が第3の凹部30aへ流れ込み卵黄部液を外側から圧迫することで形成されたものと推測される。該突起部を形成することで重力等の外力の影響で変形しやすい半熟風の卵黄部の形状を保持することができ、また冷凍した場合卵黄部が卵白部から外れ難いものとなる。また、第2の凹部をテーパー状に形成しておくことで第3の凹部に第2の卵白部液がさらに流れ込みやすくなり、第2の卵白部液によって卵黄部液がさらに圧迫されるため突起部が形成されやすい。
【0063】
2.目玉焼き様卵加工食品の製造装置
以下に、本発明にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造方法に適した製造装置の一例について説明する。具体的には、目玉焼き様卵加工食品の製造装置は、第1の凹部を有する第1の型と、底部および底部の周縁に接続する側壁を有する第2の凹部および前記第2の凹部の底部に連続して形成され前記第1の凹部よりも内径が小さい略半楕円球状または略円錐台形状を有する第3の凹部を有する第2の型と、を備え、前記第1の型と前記第2の型とが左右対称となるように回動可能に接合されたことを特徴とする。
【0064】
図9は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の製造装置300の概略を示す平面図である。
【0065】
まず、目玉焼き様卵加工食品の製造装置300の概略を説明する。製造装置300は、所定の架台(図示せず)に据え付けられている第1の型100bと、第2の型200dと、それらを連結するシャフト60と、を含む。
【0066】
第1の型100bは、直方体形状の外観を呈しており、その長手方向に沿って4つの第1の凹部10bが直列かつ等間隔に配置されている。第1の型に形成される第1の凹部の数や位置は、特に限定されない。また、第1の型100bは、シャフト60と接続するための連結部64と、第1の型100bを回動させるための取手部66と、を備えている。第1の型100bは、連結部64により回動可能にシャフト60と連結されている。第1の凹部10bの形状については、上述した第1の凹部10aと同様の形状であるため説明を省略する。
【0067】
第2の型200dは、直方体形状の外観を呈しており、その長手方向に沿って4つの第2の凹部20d(内部に第3の凹部30dが形成されている)が直列かつ等間隔に配置されている。第2の型に形成される第2の凹部の数や位置は、特に限定されないが、第1の型に形成される第1の凹部の数や位置と合わせておくとよい。また、第2の型200dは、シャフト60と接続するための連結部65と、第2の型200dを回動させるための取手部67と、を有している。第2の型200dは、連結部65により回動可能にシャフト60と連結されている。第2の凹部20dおよび第3の凹部30dの形状については、上述した第2の凹部20a(または20bもしくは20c)および第3の凹部30a(または30bもしくは30c)と同様の形状であるため説明を省略する。
【0068】
第1の型100bおよび第2の型200dの材質は、熱伝導性に優れ、熱により変形しないものであれば特に限定されないが、例えばチタン、アルミ、鉄等が挙げられる。
【0069】
製造装置300は、シャフト60を対称軸として第1の型100bと第2の型200dとが左右対称となるように配置されている。このような構成とすることで、上述した工程(f)において第1の型100bの取手部66を持って反転させることにより第1の卵白部を第2の凹部へ容易かつ確実に載置することができる。また、目玉焼き様卵加工食品を製した後、第2の型200dの取手部67を持って反転させることにより、製した目玉焼き様卵加工食品を第2の型200dから容易に取り出すことができる。
【0070】
また、製造装置300の下方には、(図示しない)ガスコンロ等の加熱装置を設けることができる。また、必要に応じて製造装置300の上方に加熱装置を設けてもよい。製造装置300は、例えばベルトコンベア等に載せて移動させながら使用することで生産効率を向上させることができる。
【0071】
3.目玉焼き様卵加工食品
本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品は、上述した製造方法により製造することができる。図10は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の一例を模式的に示す斜視図である。図11は、本実施の形態にかかる目玉焼き様卵加工食品の一例を模式的に示す断面図である。
【0072】
本実施の形態にかかる目玉焼き用卵加工食品400aは、図10および図11に示すように、略扁平な形状を有する第1の卵白部40と、前記第1の卵白部40の上に形成された卵黄部42と、前記卵黄部42および前記第1卵白部40を被覆する第2の卵白部44と、を備えている。
【0073】
目玉焼き様卵加工食品400aは、上述した製造方法により製造されたものであるため、図11に示すように、第1の卵白部40および第2の卵白部44の二層構造の卵白部を有しているところに特徴がある。
【0074】
第1の卵白部40は、略扁平な形状であり、卵黄部42を下方から支持および保護する
役割を担っている。第1の卵白部40を略扁平形状とした理由としては、本物の目玉焼きの卵白部が略扁平であるため、その形状に似せるためである。第1の卵白部40の厚みは、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜3mmである。本明細書において、「厚み」とは、その対象となる部材において最も厚い部分の厚さをいう。
【0075】
卵黄部42は、第1の卵白部40の上に第1の卵白部40と接するように形成された底面部45、前記底面部45と連続した曲面からなる側面部46、および前記側面部46と連続した曲面からなる上面部47を有している。したがって、側面部46と上面部47との境界には、変曲線が存在する。さらに、卵黄部42は、底面部45の面積よりも上面部47の面積の方が大きくなっており、平面から見た場合、底面部45が上面部47に包含されている形状であることが好ましい。卵黄部42がこのような特徴的な形状となる理由は、上述した第2の型の第3の凹部内に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫するためである。
【0076】
卵黄部42は、上述したように「完熟風」であってもよいし、「半熟風」であってもよい。卵黄部42が「半熟風」である場合には、該卵黄部は90℃で20分間加熱したときであっても流動性を有している。一方、卵黄部42が「完熟風」である場合には、該卵黄部は90℃で20分間加熱したときに完全凝固しており、流動性が失われている。
【0077】
第2の卵白部44は、卵黄部42のうち底面部45以外の部分と第1の卵白部40とをシームレスで被覆している。第2の卵白部44がこのような形状となるのは、上述した第2の型に第2の卵白部液を流し込んでから卵黄部液を第3の凹部へ注入するという製造方法を採用しているからである。卵黄部42の表面を第2の卵白部44の薄膜で被覆することで、本物の目玉焼きの卵黄部に似た外観となる。ここで、第2の卵白部44のうち卵黄部42の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における厚みは、好ましくは0.2mm以上2mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上1mm以下である。上記領域内における第2の卵白部44の厚みが0.2mm未満であると、卵黄部が損傷しやすくなり、特に半熟風の目玉焼き様卵加工食品では第2の卵白部44の損傷により卵黄部が流動してしまうことがある。一方、上記領域内における第2の卵白部44の厚みが2mmを超えると、第2の卵白部44の厚みが厚すぎるため、全体が白色の色調となり、卵黄部の色調が失われ、外観(形状、色調)が悪くなる傾向にある。
【0078】
また、第2の卵白部44は、その端部48から卵黄部42に向かって形成された第1のテーパー部49と、前記第1のテーパー部49よりも内側に形成されており該第1のテーパー部49と連続する第2のテーパー部50と、を有している。目玉焼き様卵加工食品400を水平面に置いた場合、水平面に対する角度は、第1のテーパー部49よりも第2のテーパー部50の方が大きくなっている。このような形状を有することで、さらに本物の目玉焼きにそっくりな形状とすることができる。
【0079】
また、目玉焼き様卵加工食品400aは、図11に示すような断面視において、第2のテーパー部50と、卵黄部42の側面部46と、に挟まれた略三角形状の卵白部の領域51を有している。領域51は、卵黄部42の外周を取り巻くように形成されている。領域51が形成される理由は、上述した第2の型の第3の凹部に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫するためである。領域51を形成することで、卵黄部42をしっかりと固定することができ、冷凍した場合でも卵黄部42が第2の卵白部44から外れ難くなる。例えば、領域51の断面形状が略三角形状ではなく薄膜状であると、冷凍した場合に卵黄部42が第2の卵白部44から外れ易いものとなる。
【0080】
目玉焼き様卵加工食品400aは、第2の卵白部44のうち卵黄部42の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、第1の卵白部40のうち前記垂
直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄いことを特徴とする。これは、上述した方法により製したものであることに由来する特徴であるが、かかる構造を有することで本物の目玉焼きにそっくりな形状および色彩となる。つまり、第2の卵白部44の厚みが第1の卵白部40よりも厚い場合には、卵黄部42の表面に分厚い第2の卵白部44が形成されることにより全体が白色の色調となり、外観(形状、色調)が悪くなる傾向にある。
【0081】
また、卵黄部42が「半熟風」である場合には、卵黄部42は、その表面から内部に入り込んだ第2の卵白部44により形成された突起部52を少なくとも一部に有している。突起部52は、上述した第2の型の第3の凹部に第2の卵白部液が流れ込み、卵黄部液を圧迫することで形成される。卵黄部42が「半熟風」であると、重力等の外力の影響を受けて変形することがあるが、卵黄部42の表面から内部に入り込んだ突起部52を有することにより、卵黄部42の形状を保持することができるようになる。また、突起部52を有することにより、卵黄部42が第2の卵白部44から外れ難くすることができる。
【0082】
目玉焼き様卵加工食品400aは、そのまま冷凍して冷凍食品としてもよい。冷凍温度は、冷凍厚焼き卵や冷凍味付けゆで卵と同じ−18〜−40℃でよい。目玉焼き様卵加工食品400aをビニル袋等で外装して冷凍すれば、品質を劣化させることなく、一年間以上保存することができ、また供食に当たっては凍結状態のまま電子レンジで加熱したりフライパン中で油ちょうすれば、本物の目玉焼きにそっくりな目玉焼き様卵加工食品を復元させることができる。なお、本発明にかかる「半熟風」の目玉焼き様卵加工食品を冷凍後、解凍した場合であっても、卵黄部は流動性を失わない。
【0083】
4.実施例
4.1.実施例1[半熟風目玉焼き様卵加工食品の製造]
まず、図9に示すような目玉焼き様卵加工食品の製造装置を準備した。なお、本製造装置の第2の凹部および第3の凹部は、図7に示した形状に加工されている。
【0084】
次に、卵白液、澱粉、糖アルコール、清水を表1に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵白部液を製した。得られた卵白部液の40℃における粘度を測定したところ、50cPであった。また、得られた卵白部液の25℃における比重を測定したところ、1.03g/mLであった。
【0085】
【表1】
【0086】
次に、卵黄液、澱粉、糖アルコール、植物油脂、ゼラチン、キサンタンガム、清水を表2に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合した。その混合液を80℃まで加熱して、澱粉を糊化させた。さらに、その混合液を40℃まで冷却することにより卵黄部液を製した。得られた卵黄部液の40℃における粘度を測定したところ、18,000cPであった。また、得られた卵黄部液の25℃における比重を測定したところ、1.05g/mLであった。
【0087】
【表2】
【0088】
次に、第1の型に卵白部液を15g流し込み、135℃で30秒間加熱することで、完全凝固した略扁平な第1の卵白部を製した。
【0089】
次に、第2の型に卵白部液を20g流し込み、90℃で20秒間加熱後、第2の型の第3の凹部に押し込むようにして卵黄部液を10g充填した。
【0090】
卵黄部液の充填後に90℃で30秒間加熱した後、第1の型を反転させることにより第1の卵白部を第2の型に重ねるようにして載置し、さらに90℃で5分間加熱した。第2の型を反転させることで第2の型から取り外して、半熟風目玉焼き様卵加工食品400bを製した。
【0091】
得られた半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの断面形状は、図12に示すような形状であった。半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの卵黄部には、第2の卵白部によって形成された突起部52が存在した。なお、図12において、半熟風目玉焼き様卵加工食品400bの符号は、図11と対応しているため説明を省略する。
【0092】
さらに、第2の卵白部のうち卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、0.8mmであった。一方、第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、3mmであった。
【0093】
4.2.実施例2[完熟風目玉焼き卵加工食品の製造]
まず、図9に示すような目玉焼き様卵加工食品の製造装置を準備した。なお、本製造装置の第2の凹部および第3の凹部は、図7に示した形状に加工されている。
【0094】
次に、卵白液、澱粉、糖アルコール、清水を表1に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵白部液を製した。得られた卵白部液の40℃における粘度を測定したところ、50cPであった。また、得られた卵白部液の25℃における比重を測定したところ、1.03g/mLであった。
【0095】
次に、卵黄液、糖アルコール、澱粉、加熱変性卵黄粉、植物油脂、キサンタンガム、清水を表3に記載の濃度となるように秤量し、それらを混合することにより卵黄部液を製した。得られた卵黄部液の40℃における粘度を測定したところ、80,000cPであった。また、得られた卵黄部液の25℃における比重を測定したところ、1.10g/mLであった。
【0096】
【表3】
【0097】
次に、第1の型に卵白部液を15g流し込み、135℃で30秒間加熱することで、完全凝固した略扁平な第1の卵白部を製した。
【0098】
次に、第2の型に卵白部液を20g流し込み、90℃で20秒間加熱後、第2の型の第3の凹部に押し込むようにして卵黄部液を10g充填した。
【0099】
卵黄部液の充填後に90℃で30秒間加熱した後、第1の型を反転させることにより第1の卵白部を第2の型に重ねるようにして載置し、さらに90℃で5分間加熱した。第2の型を反転させることで第2の型から取り外して、完熟風目玉焼き様卵加工食品400cを製した。
【0100】
得られた完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの断面形状は、図13に示すような形状であった。完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの卵黄部には、第2の卵白部によって形成された突起部が存在しなかった。なお、図13において、完熟風目玉焼き様卵加工食品400cの符号は、図11と対応しているため説明を省略する。
【0101】
さらに、第2の卵白部のうち卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、0.5mmであった。一方、第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みを測定したところ、3.2mmであった。
【符号の説明】
【0102】
10a・10b…第1の凹部、12…底部、14…側壁、20a・20b・20d…第2の凹部、22・23…底部、24・25…側壁、26…第1のテーパー部、27…第2のテーパー部、28…第3のテーパー部、29…壁部、30a・30b…第3の凹部、40…第1の卵白部、42…卵黄部、44…第2卵白部、45…底面部、46…側面部、47…上面部、48…端部、49…第1のテーパー部、50…第2のテーパー部、51…(断面略三角形状の)領域、52…突起部、60…シャフト、64・65…連結部、66・67…取手部、100a・100b…第1の型、200a・200b・200c・200d…第2の型、300…製造装置、400a・400b・400c…目玉焼き様卵加工食品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略扁平な形状を有する、第1の卵白部液を用いた第1の卵白部と、
前記第1卵白部の上に前記第1の卵白部と接するように形成された底面部、前記底面部と連続した曲面からなる側面部、および前記側面部と連続した曲面からなる上面部を有し、前記底面部の面積よりも前記上面部の面積の方が大きい、卵黄部液を用いた卵黄部と、
前記卵黄部のうち前記底面部以外の部分と前記第1の卵白部とをシームレスで被覆する、第2の卵白部液を用いた第2の卵白部と、を備え、
前記第2の卵白部は、その端部から前記卵黄部に向かって形成された第1のテーパー部と、前記第1のテーパー部よりも内側に形成され前記第1のテーパー部と連続する第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄く、
前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みが1〜5mmであり、
前記卵黄部の底面部に接する前記第1の卵白部の色が白色である、目玉焼き様卵加工食品。
【請求項2】
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、0.2mm以上2mm以下である、請求項1に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【請求項3】
前記卵黄部液は、90℃で20分間加熱したときに流動性を有する、請求項1または請求項2に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【請求項4】
前記卵黄部は、その表面から内部に入り込んだ前記第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有する、請求項3に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【請求項1】
略扁平な形状を有する、第1の卵白部液を用いた第1の卵白部と、
前記第1卵白部の上に前記第1の卵白部と接するように形成された底面部、前記底面部と連続した曲面からなる側面部、および前記側面部と連続した曲面からなる上面部を有し、前記底面部の面積よりも前記上面部の面積の方が大きい、卵黄部液を用いた卵黄部と、
前記卵黄部のうち前記底面部以外の部分と前記第1の卵白部とをシームレスで被覆する、第2の卵白部液を用いた第2の卵白部と、を備え、
前記第2の卵白部は、その端部から前記卵黄部に向かって形成された第1のテーパー部と、前記第1のテーパー部よりも内側に形成され前記第1のテーパー部と連続する第2のテーパー部と、を有し、水平面に対する角度が第1のテーパー部よりも第2のテーパー部の方が大きく、
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みよりも薄く、
前記第1の卵白部のうち前記垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みが1〜5mmであり、
前記卵黄部の底面部に接する前記第1の卵白部の色が白色である、目玉焼き様卵加工食品。
【請求項2】
前記第2の卵白部のうち前記卵黄部の中心部を通過する垂直軸から半径5mmの領域における最大の厚みは、0.2mm以上2mm以下である、請求項1に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【請求項3】
前記卵黄部液は、90℃で20分間加熱したときに流動性を有する、請求項1または請求項2に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【請求項4】
前記卵黄部は、その表面から内部に入り込んだ前記第2の卵白部により形成された突起部を少なくとも一部に有する、請求項3に記載の目玉焼き様卵加工食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−63091(P2013−63091A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3143(P2013−3143)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2009−190152(P2009−190152)の分割
【原出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(593145009)株式会社カナエフーズ (11)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2009−190152(P2009−190152)の分割
【原出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(593145009)株式会社カナエフーズ (11)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
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