説明

直接還元鉄製造システム

【課題】酸性ガス吸収液の使用量の節減を図ることができる直接還元鉄製造システムを提供する。
【解決手段】水素、一酸化炭素を含む高温還元ガス11を用いて、鉄鉱石12aを還元鉄12bに直接還元する直接還元炉13と、該直接還元炉13から排出される還元炉排ガス14中の酸性ガス成分(CO2、H2S)をアミン系溶剤等の吸収液15により除去する酸性ガス成分吸収塔16aと酸性ガスを放出する再生塔16bとからなる酸性ガス除去装置16と、吸収塔16aと再生塔16bとを循環利用される吸収液15中の劣化物を分離除去する劣化物除去装置17とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元鉄製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
粉鉱や塊鉱等の鉄鉱石を例えば1000℃前後の温度で、変性天然ガスにより固相のまま還元すると、直接還元鉄(DRI:Direct Reduced Iron)が得られる。この直接還元製鉄法は、還元炉での還元ガスの利用率が低いために、還元炉排ガスを還元ガス流れに戻し、再利用することで高効率化していた。
還元炉で発生する水(H2O)、二酸化炭素(CO2)とは、還元炉内では不活性なため、再利用する際には除去する必要があり、水は冷却器又はスクラバで、二酸化炭素は例えばアミン系溶剤等の除去ユニットで除去されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−520310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら直接還元製鉄炉からの排ガスに特有な一酸化炭素(CO)や、微量金属成分、または酸性ガス除去装置における再生塔リボイラにおける熱によって、アミン系溶剤の溶剤劣化物が生成されることで、フォーミングが発生して酸性ガス除去性能が低下したり、運転が難しくなるだけでなく、酸性ガス除去装置の腐食劣化が発生する、という問題がある。
【0005】
従来の直接還元プロセスにおいては、アミン系溶剤を新しいものに入れ替えることで、劣化物の濃度を下げて、管理をしており、特に直接還元製鉄炉システムにおいては、高頻度でアミン系溶剤を入れ替えしなければならず、大量の溶剤を消費する、という問題がある。
【0006】
そこで、頻繁なアミン系溶剤の入れ替えが不要となり、従来よりも大幅にアミン系溶剤の使用量の節減を図ることができる方策の出現が切望されている。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、直接還元製鉄炉からの排ガス中のCO2等の酸性ガスを除去するに際して、酸性ガス吸収液の使用量の節減を図ることができる直接還元鉄製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、水素、一酸化炭素を含む高温還元ガスを用いて、鉄鉱石を還元鉄に直接還元する直接還元炉と、該直接還元炉から排出される還元炉排ガス中の酸性ガス成分を酸性ガス吸収液により除去する酸性ガス成分吸収塔と酸性ガスを放出する再生塔とからなる酸性ガス除去装置と、前記酸性ガス成分吸収塔と前記再生塔との間を循環利用される吸収液中の劣化物を分離除去する劣化物除去装置とを具備することを特徴とする直接還元鉄製造システムにある。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記再生塔から前記吸収塔に返送するリーン溶液の一部をバイパスするバイパス回路と、該バイパス回路に介装されるフィルタとを具備することを特徴とする直接還元鉄製造システムに用いる酸性ガス除去装置にある。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記還元炉排ガスを前記酸性ガス除去装置に導入する導入ラインと、該導入ラインに介装され、前記還元炉排ガスを熱交換する熱交換器と、該熱交換器の前流側に設けられるバグフィルタと、前記熱交換器の後流側に設けられるスクラバと、を具備することを特徴とする直接還元鉄製造システムにある。
【0011】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記酸性ガス吸収液が、低沸点であることを特徴とする直接還元鉄製造システムにある。
【0012】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記高温還元ガスが、天然ガス又は石炭ガス化ガス又はコークス炉ガス由来のガスであることを特徴とする直接還元鉄製造システムにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収塔と再生塔とを循環する酸性ガス吸収液中の劣化物を劣化物除去装置により、分離することができるため、頻繁な酸性ガス吸収液の入れ替えが不要となり、従来よりも大幅に溶剤使用量の節減を図ることができる。
また、連続した溶剤劣化物の濃度の管理を行うことにより、フォーミング発生を抑え、安定した運転を実現し、機器の腐食も抑えることができる。
この運転の安定化によって、直接還元鉄プロセス全体の安定運転、及び溶剤消費量削減による低コスト化を実現することができる。
さらに、直接還元鉄プロセス系内での熱を利用して劣化物除去装置を稼動することにより、追加のエネルギー消費を必要とせず、経済的となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図4】図4は、実施例4に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図5】図5は、実施例4に係る他の直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図6】図6は、実施例5に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。
【図7】図7は、実施例5に係る他の直接還元鉄製造システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0016】
本発明による実施例に係る直接還元鉄製造システムについて、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。図1に示すように、直接還元鉄製造システム10Aは、水素、一酸化炭素を含む高温還元ガス(以下「還元ガス」という)11を用いて、鉄鉱石12aを還元鉄12bに直接還元する直接還元炉(以下「還元炉」という)13と、該直接還元炉13から排出される還元炉排ガス14中の酸性ガス成分(CO2、H2S)をアミン系溶剤等の酸性ガス吸収液(以下「吸収液」という)15により除去する酸性ガス成分吸収塔(以下「吸収塔」という)16aと酸性ガスを放出して吸収液15を再生する再生塔16bとからなる酸性ガス除去装置16と、吸収塔16aと再生塔16bとを循環利用される吸収液15中の劣化物を分離除去する劣化物除去装置17とを具備するものである。
図1中、符号15aはリッチ溶液、15bはリーン溶液、20はスクラバ、21は圧縮機、22は冷却洗浄塔、23はリボイラ、24は水蒸気、25は冷却器、26は気液分離器、27は凝縮水、L1は還元炉排ガス14を酸性ガス除去装置16へ導入するガス供給ライン、L2はリッチ溶液ライン、L3はリーン溶液ライン、L4はリーン溶液分岐ライン、L5は再生塔の下部でリーン溶液を循環させるリボイラライン、L6はガス放出ライン、L7は凝縮水ライン、L8は回収ガス排出ライン、L9は精製ガス排出ライン、L10はガス排出ラインを各々図示する。
ここで、還元ガス11は、還元炉13に導入する際には、所定の高温(例えば900〜1,050℃)の温度まで加熱されている。
【0017】
還元ガス11が導入される還元炉13においては、上部より鉄鉱石12aが供給され、供給された鉄鉱石12aは炉底部側へ移動していく。この際、同時に還元炉13の側部から供給される高温の還元ガス11と向流接触して、還元ガス11の主成分の水素(H2)と一酸化炭素(CO)によって鉄鉱石(酸化鉄)12aが還元され、還元鉄12bとなると共に、水素(H2)と一酸化炭素(CO)とは、各々水(H2O)と二酸化炭素(CO2)とに転化する。
還元された鉄鉱石12aは、還元鉄12bとして還元炉13の下部側から取り出される。
【0018】
また、還元ガス11中の水素(H2)と一酸化炭素(CO)とは、還元炉13内で全量は使用されず、大部分の水素(H2)と一酸化炭素(CO)とが未使用のまま還元炉排ガス14として、ガス供給ラインL1より排出される。
【0019】
ここで、還元炉13からの還元炉排ガス14は、還元炉13から発生する鉄粉等のダストを含み、後流側に接続される酸性ガス除去装置16の運転に悪影響を与えるため、スクラバ20によってダストを除去すると共に、還元炉13で発生した水(H2O)を除去している。
【0020】
還元炉排ガス14は、ガス供給ラインL1に介装された圧縮機21によって、昇圧され、その後、冷却洗浄塔22に導入される。この冷却洗浄塔22では、ガス温度を冷却水により低下させた後、酸性ガス除去装置16の吸収塔16aに導入される。
この吸収塔16aでは、還元炉排ガス14からCO2とH2Sの酸性ガスが吸収液15の化学吸収反応によって除去され、酸性ガスが除去された精製ガス14Aとなり、頂部側から精製ガス供給ラインL9より排出される。
この精製ガス14A中には、未利用のH2とCOとが含まれているので、還元ガス11に合流し、還元ガス11として再利用するようにしてもよい(後述する)。
【0021】
ここで、還元炉排ガス14中に含まれる系内不活性成分であるCH4やN2の系内蓄積を避けるために、スクラバ20を出たガスの一部14aは、スクラバ20の後流側で、ガス供給ラインL1から分岐されるガス排出ラインL10により系外に排出するようにしている。
【0022】
酸性ガス除去装置16では、吸収塔16aにおいて、還元炉排ガス14に含有するCO、H2、CO2及びH2Sの内、吸収液15でCO2とH2Sの酸性ガス成分を吸収除去している。
この吸収液15は、吸収塔16a内でCO2とH2Sを吸収したものをリッチ溶液15aと称し、このリッチ溶液15aは、リッチ溶液ラインL2で再生塔16b側に供給される。再生塔16bに導入されたリッチ溶液15aは、この塔内部において、リボイラ23で過熱された水蒸気の熱により、吸収したCO2とH2Sを放出して、リーン溶液15bとなり、リーン溶液ラインL3を介して再度吸収塔16aに戻され、循環再利用されている。
【0023】
吸収塔16aの上部側には、精製ガス14A中に同伴する吸収液を除去するための冷却部(図示せず)が設けられている。
また、再生塔16bでは、リッチ溶液15aから放出されたCO2とH2Sを主成分とする回収ガス14Bがその頂部からガス放出ラインL6を介して、系外へ排出される。
【0024】
回収ガス14Bは、ガス放出ラインL6に介装された冷却器25で冷却された後、気液分離器26で凝縮水27を分離している。分離された凝縮水27は、再生塔16b内に凝縮水ラインL7を介して戻している。
【0025】
還元炉13からの還元炉排ガス14中には、COや鉄成分を多く含み、ガス供給ラインL1に介装されたスクラバ20において除去できないものが、酸性ガス除去装置16に混入する可能性がある。
また、長時間の運転によって吸収液15の一部がこのようなCOや鉄成分と化学反応を起こすことによって劣化物を生成し、処理能力が低下する。
【0026】
ここで、CO起因の劣化物は、還元炉排ガス14中のCOが吸収液15中に溶解することに起因して、ギ酸を生成し、このギ酸がアミン系溶剤等の吸収液と反応して塩を作ることで、熱安定性塩となり、これが吸収液15内に蓄積することとなる。
この熱安定性塩の吸収液系内の蓄積により、例えば吸収液の沸点上昇が発生する。
この沸点上昇が発生すると、再生塔16bのリボイラ23での温度上昇により、溶剤の熱劣化が促進され、また、リボイラ23の熱効率が低下するので好ましくない。
また、粘度上昇する場合には、圧損が上昇し、フォーミングが発生するので好ましくない。
【0027】
また、鉄起因の劣化物は、吸収液の劣化により生じる。例えば吸収液としてアミン系溶剤を用いる場合、その劣化により、ビシン(N,N−ビス(2−ヒドロキエチル)グリシン)等のグリシン類が生成される。このようなグリシン類は、鉄とキレート錯体を作ることにより、鉄表面の皮膜生成を妨げると同時に、3価の鉄錯体が酸化還元反応に関与することで鉄の溶解を助長し、加速的に腐食を促進することとなるので、好ましくない。
特に、還元炉13から流入する鉄鉱石起因のダストは比表面積が大きいため、鉄錯体の急激な生成が予想される。
また、吸収液15自体もリボイラ23での加熱によって分解し劣化成分を生成することで酸性ガスの吸収能力が低下することとなる。
【0028】
吸収液15は、リッチ溶液15aとリーン溶液15bとして循環・再利用されているため、以上のような劣化物は吸収液15中に蓄積し、処理能力低下及び装置の腐食の原因となる。
【0029】
このため、本発明では、再生塔16bから吸収塔16aに返送するリーン溶液ラインL3から分岐するリーン溶液分岐ラインL4を設け、このリーン溶液分岐ラインL4に劣化物除去装置17を設け、劣化物を分離・除去して吸収液を再生させるようにしている。なお、リーン溶液分岐ラインL4に供給されるリーン溶液15bは、リーン溶液分岐ラインL4に介装されたバルブVの開閉により必要に応じて管理されている。
【0030】
この劣化物除去装置17を設けることにより、吸収液15中に蓄積する劣化物の濃度を低減させ、吸収液15の性能を回復又は維持し、長期間に亙っての吸収液15の性能の維持管理を行うようにしている。
【0031】
この劣化物除去装置17は、使用する吸収液15と、劣化物との沸点の違いを利用した蒸留による吸収液再生方式と、電気透析によって劣化物を濃縮分離する方法と、イオン交換によって劣化物を分離する方法があり、それぞれを組み合わせた方式も含まれる。
吸収液再生方式のリクレーマとしては、例えば熱交換器型リクレーマを挙げることができる。
【0032】
劣化物の除去を実施する場合には、CO起因の劣化物、Fe起因の劣化物のいずれか一方又は両方の基準値を超えた際に、バルブVを開き、リーン溶液15bの一部を劣化物除去装置17に供給し、劣化物除去の操作を開始する。
そして、リーン溶液15b中の劣化物の濃度が所定値未満まで低下した際に、劣化物除去操作を停止する。
【0033】
ここで、CO起因の劣化物(熱安定性塩濃度)の劣化物除去開始基準値としては、例えば2重量%を超えた場合に行うようにすることができる。
【0034】
また、Fe起因の劣化物(例えばビシン等のグリシン類)の劣化物除去開始基準値としては、例えば5ppmを超えた場合に行うようにすることができる。
【0035】
CO起因の劣化物(熱安定性塩濃度)及びFe起因の劣化物(ビシン等のグリシン類)の両方の値を測定する場合には、いずれか一方が基準値に達した際に、劣化物除去操作を開始するようにすることができる。
なお、前記劣化物の濃度は一例であり、吸収液15のアミン系溶剤等の吸収液の種類、酸性ガス除去装置16での諸条件により適宜変更される。
なお、鉄濃度の急激な上昇が予想されるため、濃度監視は別途頻繁に行う必要がある。
【0036】
劣化物の監視は、自動又は手動の分析操作により行い、図示しない判定手段にて判定するようにしてもよい。
【0037】
ここで、酸性ガス成分(CO2、H2S)を吸収する吸収液15としては、アミン系の溶剤を用いることが好ましい。このアミン系の溶剤としては、例えばメチルエチルアミン(MEA)等を例示することができる。
特に、1DMA2P(1‐ジメチルアミノ‐2‐プロパノール;沸点124℃)、DMAE(N,N‐ジメチルアミノエタノール;沸点134℃)、MPZ(1‐メチルピペラジン;沸点138℃)、PZ(ピペラジン;沸点146℃)、2MPZ(2‐メチルピペラジン;沸点155℃)、DEAE(N,N‐ジエチル‐2‐アミノエタノール;沸点161℃)、AMP(2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール;沸点166℃)、EAE(2‐エチルアミノエタノール;沸点170℃)、モノエタノールアミン(MEA;沸点170℃)、nBAE(2‐ブチルアミノエタノール;沸点200℃)、4AMPR(4‐ピペリジンメタンアミン;沸点200℃) のような低沸点のアミンをベースとした溶剤を用いることで、劣化物を例えば蒸発分離することを容易としている。
これは、アミン系の溶剤であっても、例えばMDEA(N−メチルジエタノールアミン)等のような高沸点(247℃)のアミンをベースとした溶剤を用いる場合には、水蒸気を用いた蒸発により劣化物の蒸発分離が困難であり、再生利用が効率的でないからである。
【0038】
この劣化物除去装置17で濃縮処理された劣化濃縮物29は系外に排出される。
なお、劣化物除去装置17で濃縮処理した際に発生する揮発された吸収液のガス30は、再生塔16bの下部側に戻される。
【0039】
以上、本実施例によれば、吸収塔16aと再生塔16bとを循環する吸収液15中の劣化物を劣化物除去装置17により、分離することができるため、頻繁な吸収液15の入れ替えが不要となり、従来よりも大幅に溶剤使用量の節減を図ることができる。
【0040】
また、連続した溶剤劣化物の濃度の管理を行うことにより、フォーミング発生を抑え、安定した運転を実現し、機器の腐食も抑えることができる。
この運転の安定化によって、直接還元鉄プロセス全体の安定運転、及び溶剤消費量削減による低コスト化を実現することができる。
【実施例2】
【0041】
本発明による実施例に係る直接還元鉄製造システムについて、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。なお、図1に示す実施例1に係る直接還元鉄製造システム10Aと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図2に示すように、本実施例の直接還元鉄製造システム10Bでは、図1に示す実施例1の直接還元鉄製造システム10Aにおいて、還元炉排ガス14を供給するガス供給ラインL1に、バグフィルタ31及び熱交換器32が設置されている。
このバグフィルタ31の設置により、スクラバ20の処理以前において還元炉排ガス14中のダスト除去の効率化を図っている。また、熱交換器32に供給する還元炉排ガス14中のダストを除去することで、熱交換器32の熱交換効率の維持を図るようにしている。
【0042】
リボイラ23と劣化物除去装置17にはそれぞれ熱源が必要であるが、本実施例では、その熱源としてガス供給ラインL1に設置された熱交換器32により水蒸気24を発生させ、この発生させた水蒸気24の蒸気を利用することが可能となる。
【実施例3】
【0043】
本発明による実施例に係る直接還元鉄製造システムについて、図面を参照して説明する。図3は、実施例3に係る直接還元鉄製造システムの概略図である。なお、図1及び2に示す実施例1及び2に係る直接還元鉄製造システム10A、10Bと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図3に示すように、本実施例の直接還元鉄製造システム10Cでは、図2に示す直接還元鉄製造システム10Bにおいて、再生塔16bから吸収塔16aに導入されるリーン溶液15bの一部をバイパスさせるリーン溶液バイパスラインL11を設け、このリーン溶液バイパスラインL11にフィルタ41を介装している。
【0044】
このフィルタ41を系内に設置することで、劣化物除去装置17で除去できない劣化物や不純物等をさらに除去することでアミン系溶剤等の吸収液15の性能を長期間維持することが可能となる。
この劣化物除去装置17で除去できない成分とは、沸点がアミン系溶剤等の吸収液よりも低い揮発性劣化要因物質等である。
【0045】
本実施例では、フィルタ41として活性炭フィルタを用いているが、不純物を除去できるものであれば活性炭フィルタに限定されるものではない。
このリーン溶液バイパスラインL11へのリーン溶液15bのバイパス量は、全量の1/10程度としているが、不純物の濃度により適宜調整してもよい。
【実施例4】
【0046】
本発明による実施例に係る直接還元鉄製造システムについて、図面を参照して説明する。図4は、実施例4に係る直接還元鉄製造システムの概略図、図5は、実施例4に係る他の直接還元鉄製造システムの概略図である。なお、図1乃至3に示す実施例1乃至3に係る直接還元鉄製造システム10A〜10Cと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図4に示すように、本実施例の直接還元鉄製造システム10Dでは、還元ガス11として、天然ガスを用いる場合を例示する。
【0047】
天然ガス50からのガスを改質して還元ガス11を供給する場合には、天然ガス50を改質するガス改質器(以下「改質器」という)51を設け、水蒸気24を供給して水蒸気改質、炭酸ガス改質、あるいはこれらを組み合わせた反応が行われ、天然ガス50は、水素(H2)と一酸化炭素(CO)とに転化し、水素(H2)と一酸化炭素(CO)が主成分の改質ガス52を得るようにしている。
【0048】
改質器51で改質された改質ガス52は、ガス冷却器53でガス冷却された後、気液分離器54で凝縮水55を分離している。
水分が分離された改質ガス52は、ガスヒータ56に導入され、所定の高温(例えば900〜1,050℃)に加熱され、還元ガス11として、還元炉13内に供給される。
【0049】
また、実施例4の直接還元鉄製造システム10Dにおいて、吸収塔16aにて精製された精製ガス14Aを、天然ガス50側に合流する場合には、図5に示すように、気液分離器54で凝縮水56を分離した後の改質ガス52に精製ガス14Aを合流するように、精製ガス供給ライン(※1)を設けるようにしている。
この精製ガス14Aを改質ガス52に合流する場合には、還元炉13での還元反応に理想的な還元ガス組成となるように調整して、改質器51に導入するようにしている。
【0050】
また、再生塔16bから放出される回収ガス14Bは、CO2とH2Sが主成分であり、回収ガス供給ライン(※2)を設け、ガス改質器51の改質炉又はガスヒータ56の炉に導入している。
そして炉内でH2Sを燃焼させて二酸化硫黄(SO2)とし、それぞれの炉から排出される大量の燃焼ガスによって希釈された後、それぞれの炉からの排ガスとして適切な処理(例えば脱硫処理等)を行った後、大気に放出する。
【0051】
これにより、再生塔16bから放出される回収ガス14B中のH2Sを直接系外に排出することが防止される。また、H2Sを例えば触媒等で処理する場合では、使用する触媒が劣化するので、その都度触媒の交換が必要となるが、本実施例のように燃焼処理する場合には、これが不要となり経済的となる。
【0052】
ここで、改質炉の廃熱によって発生させた水蒸気や、ガス改質器51から出た改質ガス52中の水分除去のための冷却器53で回収した熱によって発生させた水蒸気は、前述したリクレーマ22及び劣化物除去装置17の水蒸気24として利用することができる。
【0053】
また、系内不活性成分であるCH4やN2の系内蓄積を避けるために、スクラバ20を出たガスの一部14aは、還元炉排ガス供給ライン(※3)を設け、ガス改質器51の改質炉又はガスヒータ56の炉に導入して、ここで燃焼処理することができる。
【0054】
また、ガス改質器51又はガスヒータ56の炉の排ガスは、例えば熱交換器等の熱回収手段によって十分に廃熱回収を行った後排出される。この熱回収手段により、例えば水蒸気を製造し、リボイラ23や劣化物除去装置17等、系内の熱必要部で使用され、又はスチームタービンを駆動して、前述の圧縮機21の動力として利用するか、または発電を行い電力として利用することができる。
【実施例5】
【0055】
本発明による実施例に係る直接還元鉄製造システムについて、図面を参照して説明する。図6は、実施例5に係る直接還元鉄製造システムの概略図、図7は、実施例5に係る他の直接還元鉄製造システムの概略図である。なお、図1乃至5に示す実施例1乃至4に係る直接還元鉄製造システム10A〜10Dと同一の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
図6に示すように、本実施例の直接還元鉄製造システム10Eでは、還元ガス11として、天然ガス以外の石炭ガス化ガス60を用いる場合を例示する。
本実施例では、石炭をガス化炉(図示せず)でガス化し、精製して得た石炭ガス化ガス60を用い、ガスヒータ56で加熱して還元ガス11としている。
また、石炭ガス化ガス60以外としては、コークス炉ガスを精製したものを還元ガス11として利用することもできる。
【0056】
実施例5の直接還元鉄製造システム10Eにおいて、精製ガス14Aを石炭ガス化ガス60に合流する場合には、精製ガス供給ライン(※1)を設け、精製ガス14Aを石炭ガス化ガス60に合流させ、その後、ガスヒータ56で所定温度まで加熱して還元ガス11とし、還元炉13 に導入するようにしている。
【0057】
また、再生塔16bから放出される回収ガス14Bは、回収ガス供給ライン(※2)を設け、ガスヒータ56の炉に導入している。
そして炉内でH2Sを燃焼させて二酸化硫黄(SO2)とし、炉から排出される大量の燃焼ガスによって希釈された後、それぞれの炉からの排ガスとして適切な処理(例えば脱硫処理)を行った後、大気に放出する。
【0058】
また、図6及び7の実施例5において、ガスヒータ56を省略するようにしてもよい。このガスヒータ56を省略する場合には、石炭ガス化ガス60等は、還元炉13の前流側において、酸素と天然ガス等の燃料70の導入による部分酸化反応によって、還元ガス11を増量すると共に、前記必要温度(900〜1050℃)まで内部加熱された後、還元炉13に導入するようにしてもよい。
なお、この酸素と天然ガス等の燃料70は、実施例4の直接還元鉄製造システム10Dにおいても、必要に応じて供給して、還元ガス11の増量を行うようにしてもよい。
【0059】
また、実施例5においても、系内不活性成分であるCH4やN2の系内蓄積を避けるために、スクラバ20を出たガスの一部14aについては、還元炉排ガス供給ライン(※3)を設け、ガスヒータ56の炉に導入して、ここで燃焼処理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10A〜10E 直接還元鉄製造システム
11 高温還元ガス
12a 鉄鉱石
12b 還元鉄
13 直接還元炉
14 還元炉排ガス
15 酸性ガス吸収液(吸収液)
16 酸性ガス除去装置
16a 酸性ガス成分吸収塔(吸収塔)
16b 再生塔
17 劣化物除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、一酸化炭素を含む高温還元ガスを用いて、鉄鉱石を還元鉄に直接還元する直接還元炉と、
該直接還元炉から排出される還元炉排ガス中の酸性ガス成分を吸収液により除去する酸性ガス成分吸収塔と酸性ガスを放出する再生塔とからなる酸性ガス除去装置と、
前記酸性ガス成分吸収塔と前記再生塔との間を循環利用される吸収液中の劣化物を分離除去する劣化物除去装置とを具備することを特徴とする直接還元鉄製造システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記再生塔から前記吸収塔に返送するリーン溶液の一部をバイパスするバイパス回路と、
該バイパス回路に介装されるフィルタとを具備することを特徴とする直接還元鉄製造システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記還元炉排ガスを前記酸性ガス除去装置に導入する導入ラインと、
該導入ラインに介装され、前記還元炉排ガスを熱交換する熱交換器と、
該熱交換器の前流側に設けられるバグフィルタと、
前記熱交換器の後流側に設けられるスクラバと、を具備することを特徴とする直接還元鉄製造システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記酸性ガス吸収液が、低沸点であることを特徴とする直接還元鉄製造システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記高温還元ガスが、天然ガス又は石炭ガス化ガス又はコークス炉ガス由来のガスであることを特徴とする直接還元鉄製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108108(P2013−108108A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251966(P2011−251966)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】