説明

相互作用深度感度を持つ画素化検出器

放射線検出器20、20'はシンチレータ画素30を有し、各シンチレータ画素30は、放射線を受ける端部、光出力端部、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に延在する反射側面を持つ。前記反射側面は、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりが前記シンチレータ画素内の前記シンチレータ事象の深度に依存するように前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性40、40'、42、44を持つ。複数の光検出器46は、シンチレーション事象により生成された光を受けるように前記シンチレータ画素の前記光出力端部と光学的に通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の記載は、医療イメージング分野に関する。陽電子放出断層撮影(PET)スキャナ及びシステムにおいて特定の応用を見出し、特にこれに関連して記載される。より一般的には、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ及びシステム、核イメージングカメラ及びシステム並びにガンマ線カメラ等のようなシンチレーションベースの放射線検出器を採用する医療イメージングスキャナ及びシステムにおいて応用を見出す。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影イメージングにおいて、放射性医薬品が、人間又は他の撮像対象に投与される。放射性医薬品において生じる放射性崩壊事象は、511keVのエネルギを各々持つ2つの逆方向のガンマ線を生成する陽電子‐電子消滅事象において後で消滅する陽電子を放出する。撮像対象を囲む放射線検出器は、2つの逆方向のガンマ線を検出し、検出点が、前記検出点間のLOR(line of response)を規定する。多くの陽電子‐電子消滅事象からのLORは、画像に再構成されることができる投影データを規定する。
【0003】
PETスキャナの解像度は、ガンマ線検出事象が空間的に位置特定される(localized)ことができる精度及び確度に依存する。画素化(pixelated)シンチレータ検出器の実施例において、画素化シンチレータは、光電子増倍管又は光ダイオード等のような光検出器によりモニタされる。各検出事象は、前記光検出器の信号のアンガーロジック(Anger logic)又は他の重み付け解析を使用して単一の検出器画素に関して位置特定される。511keVのガンマ線の比較的高いエネルギのため、シンチレータの厚さは大きく、例えば一部のシンチレータ材料に対して約2センチメートルである。これは、放射線検出事象の位置特定において大きな深度不確定性を作り、前記LORの検出における視差誤差(parallax error)により減少された解像度を生じる。
【0004】
向上された相互作用深度(depth of interaction)位置特定を提供するために、一部のPET検出器において、多層シンチレータが使用される。各シンチレータ層は、異なる波長において光を生成し、したがって深度情報が、検出された光の波長で符号化される。このアプローチは、光電子増倍管信号を処理する際に採用される電子機器及びシンチレータの両方の複雑さを実質的に増大する。更に、異なるシンチレータ層の間の接合面は、反射、散乱、吸収又は他の光学的損失を生じる可能性がある。他のアプローチは、下側検出器に加えて上側光検出器を有することである。上側光検出器信号は、相互作用深度の推定値を提供する。このアプローチも検出器及び電子機器の複雑さを増大する。
【0005】
Gagnon、米国特許第5576546に開示された更に他のアプローチは、前記光検出器信号の2次モーメントに基づいて相互作用深度を推定する。しかしながら、2次モーメントは、各光検出器の位置が二乗されるので、ノイズを受けやすい可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の記載は、上記制限等を克服する改良された装置及び方法を意図する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によると、放射線検出器が開示される。各シンチレータ画素は、放射線を受ける端部(radiation-receiving end)、光出力端部、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に延在する反射側面(reflective sides)を持つ。前記反射側面は、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がり(lateral spread)が前記シンチレータ画素内の前記シンチレータ事象の深度に依存するように前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性を持つ。複数の光検出器が、シンチレーション事象により生成された光を受けるように前記シンチレータ画素の前記光出力端部と光学的に通信する。
【0008】
他の態様によると、少なくとも1つの放射線検出器を有する放射線を受けるシステム(radiation receiving system)が開示される。前記放射線検出器は、放射線を受ける端部、光出力端部、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に延在する反射側面を各々持つシンチレータ画素、並びにシンチレーション事象により生成された光を受けるように前記シンチレータ画素の前記光出力端部と光学的に通信する複数の光検出器を有する。前記シンチレータ画素の前記反射側面は、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりが前記シンチレータ画素内の前記シンチレータ事象の深度に依存するように前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性を持つ。相互作用深度プロセッサは、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象の相互作用深度を推定する。前記相互作用深度は、前記シンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放射する前記光の横方向の広がりに基づいて推定される。信号位置特定プロセッサは、前記複数の光検出器により受けられた光に基づいて前記シンチレーション事象の横方向位置を推定する。
【0009】
他の態様によると、陽電子放出断層撮影(PET)スキャナが開示される。複数の放射線検出器が撮像領域を囲む。各放射線検出器が、放射線を受ける端部、光出力端部、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に延在する反射側面を各々持つシンチレータ画素、並びにシンチレーション事象により生成された光を受けるように前記シンチレータ画素の前記光出力端部と光学的に通信する複数の光検出器を有する。前記シンチレータ画素の前記反射側面は、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりが前記シンチレータ画素内の前記シンチレータ事象の深度に依存するように前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性を持つ。相互作用深度プロセッサは、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象の相互作用深度を推定する。前記相互作用深度は、前記シンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放射する前記光の横方向の広がりに基づいて推定される。信号位置特定プロセッサは、前記複数の光検出器により受けられた光に基づいて前記シンチレーション事象の横方向位置を推定する。LORプロセッサは、2つの時間的に一致するシンチレーション事象に基づいてLORを決定する。前記LORの決定は、前記相互作用深度プロセッサにより推定される前記シンチレーション事象の相互作用深度により調整される前記信号位置特定プロセッサにより推定される前記シンチレーション事象の横方向位置に基づいて前記時間的に一致するシンチレーション事象の位置を決定することを有する。
【0010】
1つの利点は、改良された画像解像度にある。
【0011】
他の利点は、限定的な追加の検出器及び電子機器の複雑さで改良された解像度を提供することにある。
【0012】
多くの追加の利点及び利益が、以下の詳細な記載を読むと当業者に明らかになる。
【0013】
本発明は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの構成、並びに様々なプロセス操作及びプロセス操作の構成の形を取りうる。図面は、好適な実施例を説明する目的のみであり、本発明を限定するように解釈されるべきでない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
陽電子放出断層撮影(PET)システムは、撮像領域14を囲む静止した環状ガントリ12を持つPETスキャナ10を有する。複数の画素化放射線検出器モジュール20は、放射線感受側が撮像領域14に面するように前記環状ガントリの周りに取り付けられる。
【0015】
人間撮像対象又は他のタイプの撮像対象は、撮像領域14内に配置される。前記撮像対象に投薬された放射性医薬品は、生成物の1つとして陽電子を放出する核崩壊事象を生じる。この陽電子は、近くの電子と急速に消滅し、逆方向の511keVのガンマ線の対を生じる。図1に図示されるように、一例の核崩壊事象24が、核崩壊事象24から反対方向に延在する線26及び28により示される2つの逆方向のガンマ線の経路と共に概略的に示されている。各ガンマ線は、画素化放射線検出器モジュール20の1つを打つ。
【0016】
図1を参照し続け、更に図2を参照すると、各画素化放射線検出器モジュール20は、シンチレータ画素30のアレイを有し、各シンチレータ画素は、CeドープGd2SiO5(GSO)又はCeドープLu2SiO5(LSO)等のような放射線感受性材料からなる。十分なガンマ線を止めるパワーを提供するために、シンチレータ画素30は、相互作用深度方向(図2において"doi"で示される)に延在され、前記相互作用深度方向に垂直な2次元面に一緒にまとめられる。一部の実施例において、各シンチレータ画素は、前記相互作用深度方向に沿って約2cm及び約0.2ないし0.4cm2の前記相互作用深度方向に垂直な断面積のGSOの結晶であるが、しかしながら、他のシンチレータ画素材料及び寸法が使用されることができ、選択は、好ましくは、検出されるべき放射線のタイプ及びエネルギ、前記ガントリの幾何学的構成、所望の解像度及び感度の考慮に基づく。
【0017】
シンチレータ画素30の1つを打つガンマ線は、閃光を放出するシンチレーション事象を生成する。シンチレーション光の一部は、一般に、撮像領域14から離れる方向に向けられ、シンチレータ画素30の光出力端部を出て、シンチレータ画素30の前記出力端部に配置された裏側平面光パイプ32に入る。前記シンチレーション光の一部は、撮像領域14に向かう方向に向けられ、しかしながら、この光は、シンチレータ画素30の放射線を受ける端部に配置された前側リフレクタ34に衝突し、一般に裏側光パイプ32に向けて逆方向に反射する。前側リフレクタ34は、検出される放射線(例えば、PETスキャナの場合には511keVのガンマ線)に対して実質的に透明であるが、シンチレーション事象により生じる光に対しては反射率が高い(理想的には100%の反射率に近い)ように選択される。リフレクタ34は、例えば、シンチレータ画素30の前記放射線を受ける端部の上に配置された薄い反射フィルム又はコーティングであることができる。
【0018】
画素30の側面も反射するが、シンチレータ画素30の前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射/透過特性を持つ。画素化検出器モジュール20において、各反射側面は、シンチレータ画素30の前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に割り振られた複数の反射領域40、42、44を持つ。領域40、42、44の各々は、実質的に一様な反射率を持ち、前記側面の反射率は、2つの反射領域の接合部において変化する。反射領域40は、シンチレータ画素30の前記放射線を受ける端部の最も近くに配置され、3つの反射領域40、42、44のうち最高の反射率を持つ。一部の実施例において、反射領域40は、前側リフレクタ34と実質的に同じ反射率を持つ。反射領域44は、シンチレータ画素30の前記光出力端部の最も近くに配置され、3つの反射領域40、42、44のうち最低の反射率を持つ。一部の実施例において、領域40は100%の反射率を持ち、領域42は75%の反射率を持ち、領域44は50%の反射率を持つが、しかしながら、他の反射率値が使用されることができる。
【0019】
図2において、反射領域40、42、44の反射率の差は、より高い反射率を示すより太い線の太さを使用することにより概略的に示されている。一部の実施例において、反射領域40、42、44は、シンチレータ画素30間に配置された複数の反射紙(pieces of reflective paper)であり、領域40に使用される反射紙は、領域42に使用される反射紙より高い反射率を持ち、領域42に使用される反射紙は、領域44に使用される反射紙より高い反射率を持つ。反射紙の代わりに、反射金属箔又は他の反射平面素子がシンチレータ画素30間に挿入されることができる。他の実施例において、反射コーティングは、画素化検出器モジュール20の組み立ての前に、再び反射領域40、42、44の各々に使用される適切な反射率のコーティングを用いて、シンチレータ画素30の側面に付着される。更に他の実施例において、ディフェレンシャル・ラフニング(differential roughening)が、各シンチレータ画素30の側面に形成され、次いで、実質的に一様な反射率を持つ反射紙又はコーティング等が側面全体に沿って配置される。これらの実施例において、前記ディフェレンシャル・ラフニングは、変化する反射特性を提供する。例えば、領域40に対応する側面の部分の表面は、滑らかなまま残されうるのに対し、領域42、44に対応する側面の部分の表面は、領域42、44の有効反射率を減少させるために光散乱及び/又は領域42、44を通る透過率を増加するように増加的に粗くされうる。
【0020】
反射領域40、42、44に沿った前側リフレクタ34は、シンチレータ画素30の前記出力端部に配置された裏側平面光パイプ32に光を導く一般的効果を持つ。図示された光電子増倍管(PMT)46又は光ダイオード等のような複数の光検出器は、裏側平面光パイプ32の下に配置され、シンチレーション事象により生じた光を受けるために光パイプ32を介してシンチレータ画素30の前記光出力端部と光学的に通信する。裏側平面光パイプ32は、シンチレータ画素30の前記光出力端部とPMT46との間の光結合を向上するために光分布及び屈折率マッチングを提供する。PMT46又は他の光検出器は、一般に、シンチレータ画素30より面積が大きい。更に、光パイプ32内の光の広がり(light spreading)及びシンチレータ画素30の部分的に反射する側面の部分的な光透過のため、単一のシンチレーション事象からの光は、一般に、1以上のPMT46が単一のシンチレーション事象からの光を受けるように横方向に(即ち、相互作用深度方向("doi"に垂直に)広がる。
【0021】
図1に戻って参照すると、PMT信号メモリ50は、PMT46からの信号を収集し、記憶する。シンチレーション事象は、信号位置特定プロセッサ52により位置特定される。一部の実施例において、信号位置特定プロセッサ52は、前記シンチレーション事象に応答して最大の信号を生成する前記PMTの横方向位置に基づいて前記シンチレーション事象の横方向位置を識別する。しかしながら、図2に見られるように、PMT46の側面積(lateral area)は、典型的には、シンチレータ画素30の側面積より実質的に大きい。したがって、一部の実施例において、信号位置特定プロセッサ52は、前記シンチレーション事象をより正確に横方向に位置特定するためにアンガーロジック又は他の横方向位置特定アルゴリズムを採用する。前記シンチレーション事象からの光を受けるPMT46をTiとしてインデックスを付け、前記シンチレーション事象に応答して最強信号を生成する"高い増倍管(high tube)"PMTの位置に各PMT Tiに対する位置値piをそれぞれ割り当てると、アンガーロジックは、
【数2】

により前記シンチレーション事象を適切に横方向に位置特定し、ここでS(Ti)は時間の関数としての増倍管Tiの信号であり、積分は各増倍管により生成された時間積分された信号であり、p(event)はシンチレーション事象の横方向位置である。用語"横方向位置"が、前記シンチレーション事象を受ける特定の画素化放射線検出器モジュール20の局所座標系を基準とする相互作用深度方向("doi")に垂直な平面内の前記シンチレーション事象の位置に関すると理解されるべきである。シンチレータ画素30がPMT46の側面積より大幅に小さい側面積を持つ図示された幾何学的構成に対して、前記横方向位置は、どのシンチレータ画素30において前記シンチレーション事象が起こったかを実質的に識別する。
【0022】
前記位置特定されたシンチレーション事象は、事象メモリ54に記憶される。PETイメージングに対して、関心のある放射線事象は、ラインオブレスポンス("LOR")が決定されることができるように、陽電子‐電子消滅事象の逆方向のガンマ線の両方が検出されるものである。したがって、一致検出器56は、事象メモリ54に記憶された事象をモニタし、陽電子‐電子消滅事象により生じたガンマ線に対応する2つの実質的に同時のシンチレーション事象を検出する。典型的には、一致検出器56は、時間的一致ウィンドウを採用し、この結果、前記時間的一致ウィンドウ内にある2つのシンチレーション事象は"実質的に同時"であると見なされる。加えて、一致検出器56は、シンチレーション事象の対が関心あるかどうかを決定する際に他の情報を随意に考慮に入れる。例えば、一致検出器56は、陽電子‐電子消滅事象により生じたガンマ線が511keVのエネルギを持つことを考慮に入れることができる。前記シンチレーション事象の総エネルギは、
【数3】

により適切に表され、ここでEは前記シンチレーション事象により生成された総エネルギを表す。関心の事象を、総エネルギ値Eが511keVに対応するエネルギウィンドウ内にあるシンチレーション事象に限定することにより、向上された選択性が得られる。
【0023】
一致検出器56がシンチレーション事象の一致する対を識別する場合、ラインオブレスポンス("LOR")計算器58は、前記2つのシンチレーション事象を接続するLORを決定する。前記LORを計算する際に視差誤差を減少するために、相互作用深度プロセッサ60は、相互作用深度方向("doi")における前記シンチレーション事象の深度を決定する。相互作用深度プロセッサ60は、前記シンチレーション事象に応答してシンチレータ画素30の前記光出力端部から放出される光の深度に依存する横方向の広がりに基づいて前記深度を推定する。前記深度に依存する横方向の広がりは、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性を持つ前記反射側面の結果である。
【0024】
結果のLORはLORデータメモリ62に記憶される。再構成プロセッサ66は、前記LORデータを撮像領域14内に配置された前記撮像対象の少なくとも一部の再構成画像に再構成する。前記LORデータは、実質的に投影データに対応し、再構成プロセッサ66は、フィルタ逆投影アルゴリズムのような如何なる適切な再構成アルゴリズムでも使用することができる。前記再構成画像は、画像メモリ68に記憶され、コンピュータ70又は他のユーザインターフェースに表示されるか、不揮発性メモリに記憶されるか、プリンタによりプリントされるか、ローカルエリアネットワーク又はインターネットを介して送信されるか、さもなければ使用されることができる。一部の実施例において、コンピュータ70は、PETコントローラ74とのユーザインターフェースをも提供し、PETコントローラ74によりユーザはPETスキャナ10を制御することができる。
【0025】
図2ないし4を参照すると、相互作用深度プロセッサ60の一部の適切な実施例が記載されている。例として、図2において"A"、"B"及び"C"とラベル付けされたシンチレーション事象が図示されている。シンチレーション事象"A"は、高反射率領域40により囲まれたシンチレータ画素30の領域内で生じる。シンチレーション事象"B"は、中間の反射率の領域42により囲まれたシンチレータ画素30の領域内で生じる。シンチレーション事象"C"は、最低反射率の領域44により囲まれたシンチレータ画素30の領域内で生じる。
【0026】
図3は、図2において"A"、"B"及び"C"とラベル付けされたシンチレーション事象の各々に対して横方向位置の関数としてPMT46における光強度の広がり(light intensity spreading)をプロットする。近くの高度に前側のリフレクタ34と一緒の高反射率領域40が裏側平面光パイプ32に向かって前記光を比較的きつく集束する傾向にあるので、シンチレーション事象"A"は、PMT46において狭い光強度の広がりを持つ。対照的に、最低反射率領域44は前記光の大部分が近くのシンチレータ画素30を透過することを可能にするので、シンチレーション事象"C"は、PMT46において比較的広い光強度の広がりを持つ。シンチレーション事象"B"は、反射領域42の中間の反射率のためPMT46において中間の光強度の広がりを持つ。したがって、前記光の広がりを数量化することにより、前記相互作用深度は適切に推定される。
【0027】
前記光の広がりは様々な形で数量化されることができる。1つのアプローチは、積分された高い増倍管信号を式(2)の総エネルギにより正規化することであり、これは、
【数4】

の光の広がり計量(light spread metric)を与え、ここでThighは所与のシンチレーション事象に対して最高信号を生成するPMTを示し、m(spread)は前記光の広がりの尺度(measure)である。
【0028】
図4を参照すると、実質的に一様な反射率を各々持つ3つ領域40、42及び44は、結果として3つの領域40、42及び44に対応する3つの信号広がり(signal spread)"モード"を生じる。図4は、光の広がり計量m(spread)の関数としてシンチレーション事象の数のヒストグラムをプロットする。図4のヒストグラムは、光線トレーシング(light ray tracing)又は他の計算手法により計算されることができるか、又は画素化放射線検出器モジュール20に対して実験的に測定されることができる。
【0029】
一部の実施例において、これらの光の広がりモードの存在は、前記相互作用深度を3つの領域40、42及び44に対応する3つの離散的なビンの1つにビニングするために、図4に示される閾値の例"T1"及び"T2"のような閾値を規定するのに使用される。したがって、m(spread)>T2を持つシンチレーション事象は、相互作用深度位置d1を割り当てられ、T1<m(spread)<T2を持つシンチレーション事象は、相互作用深度位置d2を割り当てられ、m(spread)<T1を持つシンチレーション事象は、相互作用深度位置d3を割り当てられる。
【0030】
図5を参照すると、図1のPETスキャナ10内の画素化放射線検出器20の代わりに適切に使用されることができる他の画素化放射線検出器20'が図示される。画素化放射線検出器20'は、画素化放射線検出器20のシンチレータ画素30、裏側平面光パイプ32、前側リフレクタ34、及びPMT46を有する。画素化放射線検出器20'は、検出器20'においてはシンチレータ画素30の側面が前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で連続的に変化する反射率を持つ単一の連続的に変化する反射領域40'を持つ点で画素化放射線検出器20とは異なる。連像的に変化する反射領域40'は、前記放射線を受ける端部の最も近くで最高反射率を持ち、前記光出力端部の最も近くで最低反射率を持つ。一部の実施例において、反射領域40'の反射率は前記放射線を受ける端部において100%に近く、前記光出力端部において50%の反射率まで線形に減少する。これらは例の値であり、他の反射率値が使用されることができる。更に、反射率の漸次的変化は、線形以外、例えば二次であることができる。図5において、反射領域40'の反射率の漸次的減少は、徐々に減少する反射率を示す徐々に細くなる線の太さを使用することにより概略的に示される。
【0031】
画素化放射線検出器20の場合のように、図5において"A"、"B"及び"C"とラベル付けされたシンチレーション事象の光の広がりは、より深い相互作用深度においてシンチレータ画素30の側面を通る増大された光透過により増大する相互作用深度と共に増大する。したがって、式3の例の光の広がり計量のような適切な光の広がり計量が、前記相互作用深度を推定するために画素化放射線検出器20'と併せて使用されることができる。
【0032】
図6は、放射線検出器20'に対する式(3)の光の広がり計量m(spread)の関数としてのシンチレーション事象の数のヒストグラムをプロットする。図4に示された放射線検出器20に対するヒストグラムとは異なり、シンチレータ画素30の側面の反射率は放射線検出器20のように離散的な段階ではなく放射線検出器20'においては連続的に変化するので、放射線検出器20'に対する図6のヒストグラムは、明確なモードを示さない。
【0033】
他の光の広がり計量が、式(3)の代わりに使用されることができる。例えば、Gagnon、米国特許第5576546に開示された二次モーメント計算を採用する相互作用深度計算方法は、図2の画素化放射線検出器モジュール20又は図5の画素化放射線検出器モジュール20'との使用に対して容易に適合される。検出器モジュール20の反射領域40、42及び44により提供される、又は検出器モジュール20'の連続的に変化する反射領域40'により提供されるシンチレータ画素30の側面の変化する反射率は、二次モーメントを前記相互作用深度に対して強力に変化させるので、Gagnon'546の相互作用深度計算方法の精度及び確度を実質的に向上する。
【0034】
図示されたPET実施例は一例である。ここに記載された相互作用深度推定装置及び方法は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)及び透過コンピュータ断層撮影(CT)等のような他のイメージングモダリティ及び他のタイプの放射線検出器において適切に採用される。更に、図示された反射側面40、40'、42及び44は例であり、シンチレータ画素30の側面に沿って変化する反射率の他の構成が使用されることができる。例えば、実質的に一様な反射率の2つの領域又は3以上の領域が、図示された3つの領域40、42及び44の代わりに使用されることができる。更に、シンチレーション事象により生成された光が可視光、赤外光又は紫外光であることができると理解されるべきである。
【0035】
本発明は、好適な実施例に関連して記載されている。明らかに、先行する詳細な記載を読み、理解すると、修正及び変更が他に思いつくだろう。本発明は、添付の請求項又は同等物の範囲内に入る限り全てのこのような修正及び変更を含むと解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】向上された相互作用深度感度を有する陽電子放出断層撮影(PET)システムを概略的に示す。
【図2】図1のPETスキャナの放射線検出器モジュールの1つの側断面図を概略的に示し、3つの例の相互作用深度におけるシンチレーション事象が、ラベル"A"、"B"及び"C"により示される。
【図3】図2の3つの異なる相互作用深度"A"、"B"及び"C"におけるシンチレーション事象に対して横方向位置に対する光強度をプロットする。
【図4】図2の放射線検出器モジュールに対するエネルギ合計により正規化された積分された高い増倍管信号に対するシンチレーション事象カウントのヒストグラムをプロットする。
【図5】図1のPETスキャナにおいて使用するのに適切な他の放射線検出器モジュールの側断面図を概略的に示し、3つの例の相互作用深度におけるシンチレーション事象が、ラベル"A"、"B"及び"C"により示される。
【図6】図5の放射線検出器モジュールに対するエネルギ合計により正規化された積分された高い増倍管信号に対するシンチレーション事象カウントのヒストグラムをプロットする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を受ける端部、光出力端部、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に延在する反射側面を各々持つシンチレータ画素であって、前記反射側面が、前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりが前記シンチレータ画素内の前記シンチレータ事象の深度に依存するように前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で変化する反射特性を持つ、当該シンチレータ画素と、
シンチレーション事象により生成された光を受けるように前記シンチレータ画素の前記光出力端と光学的に通信する複数の光検出器と、
を有する放射線検出器。
【請求項2】
各反射側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に割り振られた反射率を持ち、前記放射線を受ける端部に最も近い反射率が最高反射率を持つ、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
各反射側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に割り振られた複数の領域を持ち、各領域が一様な反射率を持つ、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
各反射側面が、前記放射線を受ける端部に隣接した最も反射率の高い領域と、前記光出力端部に隣接した最も反射率の低い領域との間に割り振られた3つの領域を持つ、請求項3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記シンチレータ画素の前記放射線を受ける端部の上に配置された反射表面、
を更に含む、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記反射特性が、前記放射線を受ける端部に最も近い最高反射率、前記光出力端部に最も近い最低反射率、及び前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の単調非増加反射率を有する、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の前記単調非増加反射率が、実質的に一様な反射率の2以上の領域を有する、請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の前記単調非増加反射率が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間で連続的に減少する反射率の領域を有する、請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の前記変化する反射特性を規定する前記側面に配置された1以上の反射材料を有する、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の前記変化する反射特性を規定する前記側面に配置された1以上の反射コーティングを有する、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間の前記変化する反射特性を生成するテクスチャリングを有する、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項1に記載された放射線検出器と、
前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象の相互作用深度を推定する相互作用深度プロセッサであって、前記相互作用深度が、前記シンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりに基づいて推定される、当該相互作用深度プロセッサと、
前記複数の光検出器により受けられた光に基づいて前記シンチレーション事象の横方向位置を推定する信号位置特定プロセッサと、
を有する放射線を受けるシステム。
【請求項13】
前記信号位置特定プロセッサがアンガーロジックを採用する、請求項12に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項14】
前記相互作用深度プロセッサが、前記シンチレーション事象に応答して前記光検出により生成された最強の積分された信号を前記シンチレーション事象に応答して前記複数の光検出器により生成された積分された信号の結合値により除算した比に基づいて前記相互作用深度を推定する、請求項12に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項15】
前記信号の結合値が、前記シンチレーション事象を検出する前記光検出器にわたり合計された前記積分された信号である、請求項14に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項16】
前記相互作用深度プロセッサが、
【数1】

を使用して前記相互作用深度を推定し、ここでiは前記シンチレーション事象に応答して信号を生成する光検出器にインデックスを付け、S(Ti)は時間の関数として光検出器Tiからの信号を示し、S(Thigh)は時間の関数として所与のシンチレーション事象に対する最高信号を生成するThighからの信号を示し、m(spread)は前記光の広がりの尺度である、請求項14に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項17】
各反射側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に割り振られた複数の領域を持ち、各領域が一様な反射率を持ち、前記相互作用深度プロセッサが、前記複数の領域の選択された領域に関連付けられた広がりモードに対応する前記光の横方向の広がりに基づいて前記選択された領域の平均深度に対応する相互作用深度を推定する、請求項12に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項18】
前記シンチレータ画素の各反射側面が、前記放射線を受ける端部と前記光出力端部との間に割り振られた複数の領域を持ち、各領域が実質的に一様な反射率を持ち、前記相互作用深度プロセッサが、前記光の横方向の広がりの数量的尺度を閾値化することにより前記相互作用深度を推定する、請求項12に記載の放射線を受けるシステム。
【請求項19】
撮像領域を囲む複数の請求項1に記載の放射線検出器と、
前記シンチレータ画素の1つにおいて生じたシンチレーション事象の相互作用深度を推定する相互作用深度プロセッサであって、前記相互作用深度が、前記シンチレーション事象に応答して前記シンチレータ画素の前記光出力端部から放出される光の横方向の広がりに基づいて推定される、当該相互作用深度プロセッサと、
前記複数の光検出器により受けられた光に基づいて前記シンチレーション事象の横方向位置を推定する信号位置特定プロセッサと、
2つの時間的に一致するシンチレーション事象に基づいてLORを決定するLORプロセッサであって、前記LORの決定が、前記相互作用深度プロセッサにより推定された前記シンチレーション事象の前記相互作用深度により調整された前記信号位置特定プロセッサにより推定された前記シンチレーション事象の横方向位置に基づいて前記時間的に一致するシンチレーション事象の位置を決定することを有する、当該LORプロセッサと、
を有する陽電子放出断層撮影スキャナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−523381(P2008−523381A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545044(P2007−545044)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054054
【国際公開番号】WO2006/064393
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】