説明

真空吸着装置

【課題】真空吸着装置において、吸着されるワークの変形を確実に防止すると共に、該ワークに吸着跡を残存させることがなく、しかも、負圧流体の消費量を抑制する。
【解決手段】真空吸着装置10は、負圧流体の供給される供給ポート22を有したボディ12と、該ボディ12の下部に設けられワークWを吸着可能なパッド部14とを備え、前記パッド部14は、ボディ12の空間部24に収納されるベースプレート38と、該ベースプレート38の下部に設けられ弾性を有した中間プレート40と、該中間プレート40の下部に設けられ、ワークWを吸着するシート46を有した吸着シート体42とから構成される。このベースプレート38、中間プレート40、吸着シート体42は、ボディ12の軸方向に沿って積層されると共に、ベースプレート38の剛性が最も高く、中間プレート40、吸着シート体42の順番に前記剛性が低く、弾性が大きくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧流体の吸引作用下にワークを吸着することが可能な真空吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シート状又はパネル状のワーク(例えば、液晶ディスプレイ、太陽電池用セル)を搬送するために真空吸着装置が用いられている。この真空吸着装置は、内部に負圧流体が供給されるボディ本体と、該ボディ本体の開口部に支持体を介して装着される多孔質体とを備え、前記ボディ本体に供給された負圧流体が、支持体の吸気通路を通じて多孔質体へと流通することにより、前記多孔質体の吸着面においてワークが吸着される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太陽光パネルや液晶ディスプレイ等の薄板状のワークを搬送する目的で、上述した真空吸着装置が用いられているが、前記多孔質体の吸着面が前記ワークに当接して吸着する際に、該吸着面から化学物質が転移して前記ワークの表面に吸着跡が残存してしまうことがある。この吸着跡はワークの品質低下を招くこととなる。また、例えば、ワークが硬質である場合に、真空吸着装置による吸引力によって該ワークに変形・破損が生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、吸着されるワークの変形を確実に防止すると共に、該ワークに吸着跡を残存させることがなく、しかも、負圧流体の消費量を抑制することが可能な真空吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、負圧流体の吸引作用下にワークを吸着する真空吸着装置において、
前記負圧流体の供給されるポートを有したボディと、
前記ボディの下部に設けられ、前記ワークの表面形状に追従して変形可能な柔軟性を有する吸着面を備えた吸着部と、
前記吸着部の周縁部に設けられ、該吸着部と前記ボディとの間の気密を保持するシール手段と、
を備え、
前記吸着面は、前記ワークの吸着時において該ワークに対して化学物質の転移しない材質から形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、真空吸着装置において、ワークの表面形状に追従して変形可能な柔軟性を有する吸着面を備えた吸着部をボディの下部に設けると共に、前記吸着部の周縁部には、該吸着部と前記ボディとの間の気密を保持するシール手段を設けている。また、吸着部の吸着面は、ワークの吸着時において該ワークに対して化学物質の転移しない材質から形成されている。
【0008】
従って、例えば、硬質で凹凸状の表面のワークを真空吸着装置で吸着する場合に、柔軟性を有した吸着面が前記表面に追従するように変形させ密着させることができるため、前記ワークの表面形状に関わらず、吸着部を介して確実に前記ワークを吸着することができる。その結果、硬質のワークにおいても変形等を確実に防止しつつ吸着することが可能となる。また、吸着面は、ワークに対して化学物質の転移しない材質から形成されているため、前記ワークの吸着時に前記吸着面の吸着跡が該ワークの表面に付着して残存してしまうことが防止され、前記ワークの品質低下を好適に回避できる。さらに、吸着部の吸着面をワークの表面に対して密着させることで、前記吸着面と表面との間を通じた負圧流体の漏出を防止して前記消費量の抑制を図ることができる。
【0009】
また、吸着部には、前記ボディにおいて前記ポート側に設けられ、前記負圧流体が前記ワーク側に向かって通過可能なベース体と、
前記ボディの下部に設けられ、可撓性を有して前記ワークを吸着する吸着シートと、
前記吸着シートと前記ベース体との間に設けられ、前記負圧流体が通過可能であり、前記吸着シートと共に変形可能な弾性を有する中間体と、
を備え、
前記ベース体、前記中間体及び前記吸着シートを厚さ方向に積層し、前記ベース体、前記中間体、前記吸着シートの順番で剛性を小さく、且つ、該順番で弾性を大きくなるように設定するとよい。
【0010】
さらに、シール手段は、弾性材料からなるシール部材とするとよい。
【0011】
さらにまた、ボディの外周部には、吸着シートをボディに対して保持する保持部材を着脱自在に螺合するとよい。
【0012】
またさらに、吸着シートの材質は、熱可塑性樹脂とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、吸着面をワークに対して化学物質の転移しない材質で形成することで、前記ワークの吸着時に前記吸着面の吸着跡が該ワークの表面に付着して残存してしまうことが防止され、前記ワークの品質低下を好適に回避できると共に、例えば、凹凸状の表面のワークを真空吸着装置で吸着する場合に、柔軟性を有した吸着面が前記表面に追従するように変形させ密着させることができるため、前記ワークの表面形状に関わらず、吸着部を介して確実に前記ワークを吸着することができる。その結果、ワークの変形等を確実に防止しつつ吸着することが可能となる。また、さらに、吸着部の吸着面をワークの表面に対して密着させることで、前記吸着面と表面との間を通じた負圧流体の漏出を防止して前記消費量の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る真空吸着装置の全体断面図である。
【図2】図1に示す真空吸着装置の一部断面斜視図である。
【図3】図2に示す真空吸着装置の分解斜視図である。
【図4】凹凸状の表面を有したワークを真空吸着装置で吸着した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る真空吸着装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る真空吸着装置を示す。
【0018】
この真空吸着装置10は、図1〜図3に示されるように、図示しない真空発生装置に接続されるボディ12と、該ボディ12の下部に設けられワークWを吸着可能なパッド部(吸着部)14と、前記ボディ12に対してパッド部14を固定するリング体(保持部材)16とを含む。なお、真空吸着装置10は、図示しないロボットの搬送アーム等の先端に装着され、前記搬送アームを介してワークWの載置された位置や該ワークWが搬送される所定位置へと移動自在に設けられる。
【0019】
ボディ12は、例えば、樹脂製材料から円盤状に形成され、ワークW側(矢印A方向)となる一端面には開口した開口部18が形成されると共に、他端面の略中央には、図示しない継手を介して配管20の接続される供給ポート22が形成される。なお、配管20は、図示しない真空発生装置に対して接続され、供給ポート22に対して負圧流体を供給している。
【0020】
ボディ12の内部には、開口部18から一端面側(矢印B方向)に向かって所定深さで窪んだ空間部24を有し、該空間部24の略中央には、内壁面から略円形状に膨出した凸部26が形成される。凸部26の中央には供給ポート22が貫通し、前記凸部26には前記供給ポート22から半径外方向に向かって延在する連通路28が形成される。そして、連通路28は、凸部26の外周側に形成された環状の環状路30と連通している。なお、連通路28及び環状路30は、空間部24の内壁面に沿って形成されているため、略同一平面上に形成される。すなわち、供給ポート22からボディ12の空間部24へと供給された負圧流体は、連通路28を通じて環状路30へと供給される。
【0021】
また、ボディ12の一端面には、開口部18の外周側となる位置に環状のシール装着部32が形成され、前記シール装着部32は平面状に形成されると共に、該シール装着部32と開口部18との間には前記ボディ12の軸方向(矢印A方向)に沿って突出した環状の壁部34が形成される。
【0022】
さらに、ボディ12の外周面は、開口部18を有する一端面近傍が半径内方向に縮径し、周方向に沿ってねじが刻設されたねじ部36が形成される。このねじ部36には後述するリング体16が螺合される。
【0023】
パッド部14は、ボディ12の空間部24に収納され凸部26に当接するベースプレート(ベース体)38と、前記ベースプレート38の下面に当接する中間プレート(中間体)40と、前記中間プレート40を覆うように設けられる吸着シート体42とを含む。このベースプレート38、中間プレート40及び吸着シート体42は、ボディ12の軸方向(矢印A、B方向)に沿って同軸上に積層されている。
【0024】
ベースプレート38は、例えば、樹脂製材料を焼結することによって形成され、複数の貫通孔44を内部に有した焼結多孔質体からなる。貫通孔44は、ベースプレート38の厚さ方向(矢印A、B方向)に貫通すると共に、互いに等間隔離間するように形成される。なお、ベースプレート38は、樹脂の焼結多孔質体から形成される場合に限定されるものではなく、プレス成形や材質選定によって所定剛性を有した不織布やスポンジを用いるようにしてもよいし、一方、流体を流通させるための溝や孔を有した金属や樹脂製材料からなるプレートを用いるようにしてもよい。
【0025】
また、ベースプレート38は、略一定厚さで円盤状に形成され、後述する中間プレート40に対して剛性が高く設定されると共に、その外周径は、ボディ12における空間部24の内周径と略同等、若しくは、若干だけ小さくなるように設定される。
【0026】
中間プレート40は、例えば、スポンジ等の通気性及び弾性を有する材質から所定厚さで形成され、その内部を流体が通過可能に形成されると共に、ベースプレート38と同様に円盤状に形成され、その外周径は、前記ベースプレート38と略同等に設定される。
【0027】
そして、ベースプレート38を通過した負圧流体を中間プレート40の内部を通じて吸着シート体42側(矢印A方向)へと供給する。なお、この中間プレート40は、スポンジ以外に、ゴム、高分子ゲル、不織布等で形成するようにしてもよい。すなわち、中間プレート40は、ベースプレート38と比較して剛性が低く、且つ、弾性の大きな材質や構造で形成される。また、中間プレート40の通気性を増加させる目的で、孔部を追加するようにしてもよい。
【0028】
吸着シート体42は、例えば、通気性を有するシート(吸着シート)46と、該シート46の外周面に設けられた環状のシールリング(シール部材)48とからなり、前記シート46は、例えば、フィルムや合成繊維からなる織物等の薄膜状で可撓性及び通気性を有する材質から形成される。また、シート46の材質には、ワークWに対して化学物質が転移することがない材質(例えば、合成繊維織物、不織布、熱可塑性樹脂)が用いられる。
【0029】
このシート46は、例えば、格子状に編み込まれ複数の空孔(図示せず)を有し、前記空孔の配置、数量及び大きさ等は、吸着するワークWの形状等によって適宜設定される。
【0030】
シールリング48は、例えば、ゴム、スポンジ等の弾性材料から断面矩形状に形成されると共に、内部を流体が通過することのない非通気性に形成される。そして、シールリング48は、その下面がシート46の外縁部に接着剤等によって貼着される。また、シールリング48の上面には、環状の保持プレート50が装着され、前記シールリング48の外周面に対して半径外方向に突出するように設けられる。
【0031】
そして、シールリング48の上面が、保持プレート50を介してボディ12のシール装着部32に当接するように設けられ、前記保持プレート50の外縁部が後述するリング体16によって保持される。これにより、シールリング48を含む吸着シート体42がボディ12に対して保持される。
【0032】
リング体16は、断面略L字状に形成され、軸方向(矢印A、B方向)に沿った内周面に刻設されたねじを介してボディ12のねじ部36に螺合されると共に、半径内方向に突出した環状の押え部52が前記吸着シート体42の保持プレート50を保持することで、該保持プレート50が前記リング体16とボディ12のシール装着部32との間に挟持される。その結果、吸着シート体42を介してベースプレート38及び中間プレート40がボディ12の空間部24に収納された状態で保持される。なお、この場合、吸着シート体42の下部が、リング体16に対して下方に突出するように配置される。
【0033】
上述したように、パッド部14は、ベースプレート38の剛性が最も高く、吸着シート体42のシート46が最も剛性が低く可撓性が大きく、中間プレート40の剛性が、前記ベースプレート38と前記シート46との間となるように設定され、ボディ12の軸方向(矢印A、B方向)に沿って積層させるように層状に配置される。すなわち、吸着シート体42のシート46が、最も弾性を有し撓曲自在に形成され、一方、ベースプレート38は、弾性を有さずに剛体で形成され、中間プレート40は、所定の弾性及び剛性を有するように形成され、前記ベースプレート38と吸着シート体42との中間的な設定となる。
【0034】
本発明の実施の形態に係る真空吸着装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、真空吸着装置10は、例えば、吸着シート体42の吸着面42aが下方(矢印A方向)に臨むように、図示しないロボットの搬送アーム等に予め接続された状態であり、ボディ12の供給ポート22に接続された配管20が、図示しない負圧流体供給源に接続された状態とする。
【0035】
このような準備作業が完了した状態で、先ず、図示しないロボットの搬送アームを介して真空吸着装置10を移動させ、そのパッド部14をワークWの表面Wa(上面)に対して当接させる。そして、ボディ12の供給ポート22を通じて連通路28及び環状路30へと導入された負圧流体が、ベースプレート38の貫通孔44を通じて中間プレート40側(矢印A方向)へと流れ、該中間プレート40を通過した後に、吸着シート体42のシート46を通じてワークW側(矢印A方向)へと供給される。この際、負圧流体は、吸着シート体42に設けられたシールリング48によってボディ12の空間部24から外周方向へと漏出することがなく、ワークW側となる下方(矢印A方向)にのみ供給される。
【0036】
そして、図1に示されるように、パッド部14における吸着シート体42の吸着面42aから導出された負圧流体によってワークWが前記パッド部14に対して吸着される。
【0037】
最後に、ワークWがパッド部14に吸着された状態で、真空吸着装置10を搬送アームによって所望の搬送位置へと移動させ、前記ワークWを該搬送位置に載置した後に負圧流体の供給を停止する。これにより、パッド部14に対するワークWの吸着状態が解除され、該ワークWが搬送位置へと載置された状態となる。
【0038】
一方、ワークWが、図1に示されるような断面平板状ではなく、図4に示されるような表面Waが凹凸状の断面湾曲形状である場合には、真空吸着装置10の吸着シート体42を前記ワークWに当接させることで可撓性を有したシート46が該ワークWの表面Waに沿うように撓むと共に、シールリング48も前記ワークWの断面形状に追従するように変形する。
【0039】
さらに、吸着シート体42に当接している中間プレート40も弾性を有していることから、該吸着シート体42の変形に伴って追従するように変形する。なお、ベースプレート38は、中間プレート40に対して大きな剛性を備えていることから変形することがなく、前記中間プレート40を確実且つ強固に保持する。
【0040】
そして、ボディ12に対して負圧流体を供給することで、ベースプレート38、中間プレート40及び吸着シート体42を通過し、シート46の吸着面42aでワークWが吸着される。
【0041】
これにより、例えば、断面湾曲形状で硬質のワークWを吸着する場合でも、パッド部14を構成する吸着シート体42、中間プレート40を前記ワークWの表面Waに沿うように撓ませることができるため、前記パッド部14の吸着面42aを前記ワークWに対して好適に密着させて吸着することが可能となる。その結果、上述したワークWがパッド部14で吸着された際に、変形・破損等が生じることがなく、確実且つ安全に搬送することが可能となる。
【0042】
なお、上述した中間プレート40は、弾性変形するのみで塑性変形することがないため、ワークWを離脱させた後には、弾性によって初期形状へと復帰する復元性を有している。
【0043】
以上のように、本実施の形態では、ワークWを吸着するパッド部14において、剛性及び弾性の異なる吸着シート体42、ベースプレート38及び中間プレート40を積層し、前記ワークWに当接する前記吸着シート体42のシート46を最も剛性が低く可撓性を有した構成とすることにより、例えば、表面Waが断面凹凸状のワークWを吸着する場合にも、前記表面Waに追従するように前記シート46を撓ませて密着させることが可能となる。その結果、ワークWの表面形状に関わらず、パッド部14をワークWに密着させて吸着することが可能となる。換言すれば、パッド部14の吸着力が、ワークWの表面Waに対して局部的に付与されることがなく該表面Waに沿って均等に付与されるため、前記ワークWの変形・破損等が好適に回避される。
【0044】
また、ワークWに当接する吸着シート体42のシート46が、前記ワークWに対して化学物質が転移することがない材質から形成されているため、前記ワークWを吸着した際に表面Waに吸着跡が残存してしまうことが防止される。その結果、ワークWの品質を低下させてしまうことが好適に回避される。
【0045】
さらに、中間プレート40は、表面Waが断面凹凸状のワークWを吸着する場合に、吸着シート体42におけるシート46の変形に伴って一体的に変形するため、前記シート46を保持しつつ前記ワークWの表面形状に追従することができる。
【0046】
さらにまた、パッド部14の吸着面42aを、ワークWの表面Waに対して密着させることで、前記吸着面42aと表面Waとの間を通じた負圧流体の漏出を防止することができるため、前記負圧流体の消費量を抑制することが可能となる。
【0047】
またさらに、パッド部14を構成するベースプレート38、中間プレート40及び吸着シート体42は、ボディ12に対して積層され、リング体16を取り外すことで簡単に着脱することができるため、長年の使用によって前記ベースプレート38、中間プレート40及び吸着シート体42に目詰まりや磨耗が生じた場合でも、簡単に取り外してメンテナンス作業を行うことが可能である。その結果、真空吸着装置10におけるメンテナンス性を向上させることができる。この場合、ベースプレート38、中間プレート40及び吸着シート体42のいずれか1つを交換してもよいし、パッド部14の全体をユニットとして交換するようにしてもよい。
【0048】
また、吸着シート体42は、その上部に設けられ半径外方向に突出した保持プレート50がボディ12の外周側に螺合されるリング体16によって保持されることで、前記ボディ12の下部に容易且つ確実に保持されると同時に、該吸着シート体42によってベースプレート38及び中間プレート40が前記ボディ12の空間部24内に保持される。すなわち、吸着シート体42、ベースプレート38及び中間プレート40からなるパッド部14を、リング体16をボディ12に対して螺合させるという簡便な作業で、前記ボディ12に対して確実に固定することが可能となる。換言すれば、パッド部14をボディ12に対してボルト等で固定する場合と比較し、前記パッド部14の組み付け作業を簡素化することができると共に、前記ボルト等を不要とすることで部品点数の削減を図ることができる。
【0049】
さらに、ベースプレート38は、ワークWに対して直接接触することがないため、ワークWにおける吸着跡の発生を考慮することなく、その材質を自由に選択することが可能となる。
【0050】
さらにまた、ゴム等の弾性材料からなるシールリング48は、その下面側(矢印A方向)がシート46によって覆われているため、ワークWの吸着時において前記シールリング48が該ワークWに接触してしまうことがなく、ゴム等がワークWに接触した場合に生じる吸着跡の発生を防止することができる。換言すれば、ワークWにおける吸着跡の発生を考慮することなく、シールリング48の材質を自由に設定することが可能となる。
【0051】
またさらに、シールリング48は、その材質や断面形状を適宜設定することで、ワークWに対してパッド部14を密着させる際の追従性を変化させることが可能である。
【0052】
なお、本発明に係る真空吸着装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0053】
10…真空吸着装置 12…ボディ
14…パッド部 16…リング体
22…供給ポート 28…連通路
30…環状路 38…ベースプレート
40…中間プレート 42…吸着シート体
46…シート 48…シールリング
50…保持プレート 52…押え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧流体の吸引作用下にワークを吸着する真空吸着装置において、
前記負圧流体の供給されるポートを有したボディと、
前記ボディの下部に設けられ、前記ワークの表面形状に追従して変形可能な柔軟性を有する吸着面を備えた吸着部と、
前記吸着部の周縁部に設けられ、該吸着部と前記ボディとの間の気密を保持するシール手段と、
を備え、
前記吸着面は、前記ワークの吸着時において該ワークに対して化学物質の転移しない材質から形成されることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空吸着装置において、
前記吸着部には、前記ボディにおいて前記ポート側に設けられ、前記負圧流体が前記ワーク側に向かって通過可能なベース体と、
前記ボディの下部に設けられ、可撓性を有して前記ワークを吸着する吸着シートと、
前記吸着シートと前記ベース体との間に設けられ、前記負圧流体が通過可能であり、前記吸着シートと共に変形可能な弾性を有する中間体と、
を備え、
前記ベース体、前記中間体及び前記吸着シートは厚さ方向に積層され、前記ベース体、前記中間体、前記吸着シートの順番で剛性が小さく、且つ、該順番で弾性が大きくなるように設定されることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項3】
請求項2記載の真空吸着装置において、
前記シール手段は、弾性材料からなるシール部材であることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の真空吸着装置において、
前記ボディの外周部には、前記吸着シートを前記ボディに対して保持する保持部材が着脱自在に螺合されることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の真空吸着装置において、
前記吸着シートの材質は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする真空吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78810(P2013−78810A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218831(P2011−218831)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】