説明

真空弁および真空弁の制御装置

【課題】付勢スプリングの強度や真空送水管内の真空度の大きさに影響されることなく、全開状態および全閉状態に作動する真空弁および制御装置を提供する。
【解決手段】真空弁10は、弁座15を有する弁体収容部14と、弁体収容部14に移動可能に配設した弁体17と、弁体収容部14の端部に設けたシリンダケース19と、シリンダケース19の内部を第1変動圧室41および第2変動圧室42に気密状態で仕切る可撓性を有する仕切機構(仕切部材29A,29B)と、仕切機構と弁体17とを連結する作動軸35とを備え、第1変動圧室41および第2変動圧室42の一方を大気圧状態として他方を負圧状態とすることで生じる差圧により仕切機構を移動させ、この仕切機構および作動軸35を介して弁体17を開弁位置と閉弁位置に移動させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空弁および真空弁の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空による吸引作用を利用して送水を行う真空式送水システムが知られている。この真空送水システムの一例としては、真空式下水道システムがある。この真空式下水道システムは、真空ステーション、真空下水管および真空弁ユニットを備えている。
【0003】
真空ステーションは、真空ポンプ、集水タンクおよび圧送ポンプを備えている。真空下水管は、上流側が真空弁ユニットに接続され、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続されている。真空ステーションの真空ポンプは、真空下水管内に負圧を発生させる。そして、この真空下水管内の負圧により、真空弁ユニット内の汚水が真空下水管を通って真空ステーションの集水タンクに排水される。また、集水タンクに貯留された汚水は、圧送ポンプによってさらに下流側に搬送される。
【0004】
真空弁ユニットは、上流側である家庭等から搬送される汚水を一時的に貯留する貯水枡を備えている。真空弁は、下端が貯水枡の汚水溜に位置する吸水管と真空下水管との間に介設されている。そして、この真空弁は、閉弁時には吸水管と真空下水管の連通を遮断し、開弁時には吸水管と真空下水管を連通させて貯水枡内の汚水を真空下水管に送水する。
【0005】
真空弁は、弁体および弁座を含む弁本体と、弁体を開閉駆動する駆動アクチュエータとを備えている。駆動アクチュエータは2つの空気圧室を備え、これら空気圧室内の圧力差と付勢スプリングが弁体を閉弁させる方向の付勢力の釣り合いにより弁体を駆動する。真空弁の制御装置は、空気圧室のうちの一方(変動圧室)の空気圧を貯水枡内の水位に応じて切り換え、それによって弁体の開閉作動を制御する(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この真空弁の閉動作は、駆動アクチュエータの付勢スプリングの反発力に依存しており、この付勢スプリングは経時的かつ使用につれて劣化するため、弁体を確実に全閉できないことがある。即ち、付勢スプリングは、腐食や設計頻度を大きく上回る高頻度動作により、折損することがある。この場合、真空弁を閉じるための駆動力が無くなるため、開放状態が維持される。その結果、真空下水管に大量の空気が吸引されるためシステムが動作しなくなる。即ち、真空式下水道システムは、1つの真空ステーションに対して複数の真空弁ユニットが接続されている。そのため、故障等により1カ所の真空弁ユニットが開放状態になると、そこから大量に吸い込まれる空気により真空下水管の真空度(負圧)が低下する。その結果、故障してない他のユニットに開動作に必要な負圧が行き届かず、真空弁が動作できなくなるため、真空弁ユニット内に汚水が流入しても真空弁が開かず、水位が異常に上昇する。この状態を長時間放置すると、多数の真空弁ユニットから汚水が溢れるという重大事故に発展する可能性がある。そこで、このような重大事故を防止するためには、真空弁の故障が発生したら昼夜を問わず直ちに現場に急行して、故障した真空弁ユニットを探し出して復旧するという緊急対応が必要である。
【0007】
また、弁体の駆動アクチュエータに内蔵している付勢スプリングは、弁体が全開状態で反発力が最大となり、弁体が全閉状態で反発力が最小となる。さらに、駆動アクチュエータの動力は、作動軸を介して弁体に伝えられ、その作動軸は駆動アクチュエータのシリンダケースに軸ガイドによってシールされている。その結果、軸ガイドに異物が噛みこんだり長期使用によって軸ガイドの滑りが悪くなると、弁体の閉動作時に付勢スプリングの反発力が不足し、閉動作に時間がかかったり、途中で引っ掛かって全閉しなくなるという問題がある。
【0008】
この問題を解決するには、付勢スプリングの付勢力を強くすることが考えられる。しかし、この場合には弁体の閉動作は安定するが、弁体の全開時に付勢スプリングによる反発力も大きくなるため、真空下水管の真空度が低下すると直ぐに弁体が閉作動される。この場合、汚水の吸引中に弁体が半開か全閉状態となる可能性が高いため、汚水中の異物を噛み込んだり、真空弁が早く全閉になって空気が吸引できないために、エアーロックが生じ易くなるという問題がある。なお、このエアーロックとは、弁体が開状態で吸引する汚水量に対して吸引可能な空気量が不足することにより、真空下水管内の汚水量が過大となり、真空下水管全体に十分な真空度が行き届かなくなる現象のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2805127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、真空弁に内蔵した付勢スプリングの強弱と、真空送水管の真空度の強弱のバランスに影響されることなく、制御装置が開指令をだすと真空弁を全閉状態に作動・維持し、また、制御装置が閉指令をだすと真空弁を全閉状態に作動・維持することが可能な真空弁および真空弁の制御装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の真空弁は、吸水管に接続される流入部と真空送水管に接続される流出部との間に弁座を有する弁体収容部と、前記弁座に圧接した閉弁位置および前記弁座から離反した開弁位置にかけて移動可能に前記弁体配設部内に収容した弁体と、前記弁体収容部の端部に設けたシリンダケースと、前記シリンダケースの内部を、前記弁体収容部の側に位置する第1変動圧室および弁体収容部から離間した側に位置する第2変動圧室に気密状態で仕切る可撓性を有する仕切機構と、前記仕切機構と前記弁体とを連結する作動軸と、を備え、前記第1変動圧室および第2変動圧室の一方を大気圧状態として他方を負圧状態とすることで生じる差圧により前記仕切機構を移動させ、この仕切機構および作動軸を介して前記弁体を開弁位置と閉弁位置に移動させる構成としている。
【0012】
この真空弁は、第1変動圧室が負圧状態で第2変動圧室が大気圧状態となるように切り換えられると、その差圧により仕切機構が弁座から離れる方向に移動する。その結果。この仕切機構に作動軸を介して接続された弁体は、弁座から離反した開弁位置に移動する。一方、第1変動圧室が大気圧状態で第2変動圧室が負圧状態となるように切り換えられると、その差圧により仕切機構が弁座に近接する方向に移動する。その結果、この仕切機構に作動軸を介して接続された弁体は、弁座に圧接する閉弁位置に移動する。
【0013】
このように、本発明の真空弁は、第1および第2変動圧室の差圧により作動軸を介して弁体を開閉する構成としている。そのため、低い真空度(真空下水技術マニュアルで決められている最低真空度−25kPa以下)でも確実に開閉作動させることができる。また、付勢スプリングの反発力で弁体を閉じるのではないため、付勢スプリングの折損や軸ガイドの摺動不良により、弁体を閉弁できないという状態が発生することはない。よって、真空弁の信頼性を高めることができる。そして、この真空弁を真空式下水道システムに適用した場合、真空弁が開放状態のままになって大量の空気を吸引し続け、システム全体が機能停止するという重大事故の発生を防止できる。
【0014】
この真空弁では、前記仕切機構は、前記シリンダケースに外周部が圧接された一対の第1および第2仕切部材と、これら仕切部材に配設され前記シリンダケースの内部を軸方向に沿って移動可能な一対の第1および第2ピストンカップと、を備えることが好ましい。このようにすれば、確実にシリンダケース内を気密に仕切った第1変動圧室と第2変動圧室に区画できる。
この場合、前記各ピストンカップを、前記作動軸により一体的に連結することが好ましい。このようにすれば、第1および第2変動圧室の差圧により移動する仕切機構に連動して、弁体を確実に開閉作動させることができる。
また、前記第1および第2仕切部材の間に、各仕切部材の劣化を防止可能な薬剤からなる流動材を充填させることが好ましい。このようにすれば、シリンダケースとピストンカップとの間に仕切部材が噛み込むことによる作動不良を防止できる。
【0015】
さらに、前記シリンダケースは、前記作動軸を挿通する挿通部を備え、これら挿通部と作動軸との間を、可撓性を有するシール部材で密閉することが好ましい。このように、長期間使用することに伴う作動不良の要因となる軸ガイドの代わりに、可撓性を有するシール部材で挿通部と作動軸との間を密閉することにより、開閉作動に係る信頼性を更に向上できる。
【0016】
そして、前記シリンダケースの第1変動圧室に、前記仕切機構および作動軸を介して弁体を閉弁位置へ付勢する付勢部材を配設することが好ましい。このようにすれば、システムの立ち上げ時や停電など、真空下水管内が大気圧状態になった状態でも、弁体を弁座に対して確実に圧着した全閉状態とすることができる。
【0017】
前記真空弁の制御装置は、前記真空送水管に連通される第1真空管連通室および前記真空弁の第1変動圧室に連通される第1真空弁連通室を形成した第1切換部と、前記真空送水管に連通される第2真空管連通室および前記真空弁の第2変動圧室に連通される第2真空弁連通室を形成した第2切換部とを、略対称に位置するように形成したケーシングと、前記ケーシング内に直動可能に配設され、前記第1切換部の第1真空管連通室と第1真空弁連通室を連通させる開位置および第1真空管連通室と第1真空弁連通室の連通を遮断する閉位置の間を移動される第1弁部と、この第1弁部が開位置に位置するときに前記第2切換部の第2真空管連通室と第2真空弁連通室の連通を遮断する閉位置に位置し前記第1弁部が閉位置に位置するときに第2真空管連通室と第2真空弁連通室を連通させる開位置に位置するように移動される第2弁部と、を有する切換弁と、前記貯水枡内の水が予め設定した第1水位まで上昇すると、前記切換弁を第2切換部の側へ移動させて前記第1切換部を開位置に位置させるとともに前記第2切換部を閉位置に位置させ、前記真空弁の第1変動圧室を真空送水管と連通させて負圧状態に切り換えるとともに、前記真空弁の第2変動圧室を大気と連通させて大気圧状態に切り換え、前記仕切機構および作動軸を介して前記弁体を開弁位置に移動させる第1アクチュエータと、前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端より下側まで送水されると、前記切換弁を第1切換部の側へ移動させて前記第1切換部を閉位置に位置させるとともに前記第2切換部を開位置に位置させ、前記真空弁の第1変動圧室を大気と連通させて大気圧状態に切り換えるとともに、前記真空弁の第2変動圧室を真空送水管と連通させて負圧状態に切り換え、前記仕切機構および作動軸を介して前記弁体を閉弁位置に移動させる第2アクチュエータと、を備える構成としている。このようにすれば、真空弁の第1および第2変動圧室内の圧力を真空送水管の内圧に応じて切り換え、確実に弁体を開閉作動させることができる。
【0018】
具体的には、前記切換弁を第1切換部の側に移動させた状態、および、前記切換弁を第2切換部の側に移動させた状態で、前記切換弁を予め設定した保持力で保持する保持機構を備えることが好ましい。このようにすれば、真空弁の開弁状態および閉弁状態を確実に維持できる。
【0019】
また、前記第1アクチュエータは、前記貯水枡内の水位に応じて昇降するたフロートと、このフロートの昇降に連動して前記切換弁の直動方向に沿って直動し前記フロートが第1水位まで上昇すると前記切換弁を第2切換部の側へ移動させる開作動部材と、を備えることが好ましい。このようにすれば、大型のボールフロートによる大きな浮力で、真空弁の開作動を安定かつ確実に実行することができる。
さらに、前記第2アクチュエータは、内部が前記真空送水管に連通される検圧室と所定圧に保持した基準圧室に仕切られた切換用シリンダケースと、前記検圧室と基準圧室の差圧によって前記切換弁の直動方向に沿って直動し前記検圧室の内圧が基準圧室内の基準圧値より低い低圧値以下になると前記切換弁を前記第1切換部の側へ移動させる閉作動部材と、を備えるが好ましい。このようにすれば、真空送水管の内圧に応じて真空弁の閉作動を安定かつ確実に実行することができる。
【0020】
そして、前記真空送水管と前記ケーシングの第2切換部の第2真空管連通室との間に、内部を大気圧より低い低圧状態に保持する蓄圧槽を介設するとともに、この蓄圧槽と真空送水管との間に蓄圧槽から真空送水管へ向かう空気の流動を許容する逆止弁を配設してもよい。このようにすれば、弁体を弁座に対して確実に圧着した全閉状態とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の真空弁では、第1および第2変動圧室内の圧力を切り換え、それらの差圧により弁体を開閉するため、低い真空度(−25kPa以下)でも確実に開閉作動させることができる。また、付勢スプリングの折損や軸ガイドの摺動不良により、弁体を閉弁できないという状態が発生することはないため、真空弁の信頼性を高めることができる。そして、この真空弁を真空式下水道システムに適用した場合、真空弁が開放状態のままになって大量の空気を吸引し続け、システム全体が機能停止するという重大事故の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の真空弁および制御装置を適用した真空式下水道システムを示す概略図である。
【図2】第1実施形態の制御装置の概念図である。
【図3】第1実施形態の真空弁および制御装置の構成を示す断面図である。
【図4】制御装置により真空弁を開弁させた状態を示す断面図である。
【図5】制御装置により真空弁を閉弁させた状態を示す断面図である。
【図6】制御装置のケーシングおよび切換弁の分解斜視図である。
【図7A】制御装置の非作動状態を示す概略図である。
【図7B】切換弁が開作動した状態を示す概略図である。
【図7C】図7Bによる真空弁のシリンダケース内の圧力変動を示す概略図である。
【図7D】図7Cにより弁体が開作動した状態を示す概略図である。
【図7E】排水により空気が混入した状態を示す概略図である。
【図7F】図7Eによる真空弁および制御装置の圧力変動を示す概略図である。
【図7G】図7Fにより切換弁が閉作動した状態を示す概略図である。
【図7H】図7Gによる真空弁のシリンダケース内の圧力変動を示す概略図である。
【図7I】図7Hにより弁体が閉作動した状態を示す概略図である。
【図7J】図7Iによる真空送水管の圧力変動を示す概略図である。
【図7K】図7Jによる真空弁および制御装置の圧力変動を示す概略図である。
【図8】第2実施形態の真空弁および制御装置の構成を示す断面図である。
【図9】第3実施形態の真空弁および制御装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1は、本発明の真空弁10の制御装置50を適用した真空送水システムの一例である真空式下水道システムを示す。この真空式下水道システムは、汚水を一時的に貯留する貯水枡1を備え、この貯水枡1内の汚水を真空ステーションによる真空吸引作用で下流側の真空ステーションに排水するものである。
【0025】
まず、この真空式下水道システムの構成について説明する。
【0026】
この真空式下水道システムの貯水枡1は有底筒状をなし、その上端開口が蓋体2により閉塞されている。この貯水枡1の底には、汚水を貯留するための汚水溜3が設けられている。また、貯水枡1には、汚水溜3の上部に上流側が図示しない家庭に接続される大気圧状態の自然流下管4が接続されている。さらに、貯水枡1には、自然流下管4より上方に位置するように、下流側が真空ステーションの集水タンクに接続された負圧(−25kPa)状態の真空送水管5が接続されている。そして、貯水枡1には、真空送水管5より更に上部に位置するように、大気開放した空気取入管6が接続されている。
【0027】
前記貯水枡1の内部には、真空送水管5に接続された仕切弁7が設けられている。この仕切弁7は、真空式下水道システムの新規構築時やメンテナンス時に手動操作により閉状態とされ、真空ステーションとの連通を遮断する。また、新規構築後またはメンテナンス後の通常の使用時には開状態とされ、真空ステーションと連通させる。また、真空送水管5には、仕切弁7および真空弁10を介して吸水管8が接続されている。この吸水管8の一端の開口は、汚水溜3の底から所定間隔(50〜100mm)をもって上方に位置するように配管されている。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態の真空弁10の構成について説明する。
【0029】
この真空弁10は、図3に示すように、吸水管8および仕切弁7を介して真空送水管5の間に介設される管体11と、この管体11内に配設する弁体17と、この弁体17を開閉駆動させる駆動アクチュエータ18とを備えている。そして、弁体17は、駆動アクチュエータ18の第1変動圧室41および第2変動圧室42の差圧により、開閉作動されるものである。
【0030】
具体的には、管体11は、吸水管8が接続される流入部12と、仕切弁7が接続される流出部13と、弁体17を移動可能に配設する弁体収容部14とを備えている。流入部12と流出部13とは、直管状に形成されている。弁体収容部14は、流入部12および流出部13の境界部分に鋭角な角度で交差し、流入部12の側に延びるように設けられている。これら流入部12、流出部13および弁体収容部14の交差部位には、管体11の内壁から弁座15を突設することにより、その内部に円形状をなす弁口16が設けられている。この弁口16は、弁体収容部14の軸芯に対して直交方向に延びるとともに、その中心が弁体収容部14の軸芯と一致する。このように構成した管体11は、弁口16を閉塞した状態では、流入部12および弁体収容部14が吸水管8を介して大気圧(大気開放)状態となり、流出部13が仕切弁7および真空送水管5を介して接続した真空ステーションの真空吸引作用により大気圧より低い低圧(負圧)状態となる。
【0031】
前記弁体17は、駆動アクチュエータ18により弁体収容部14の軸芯に沿って進退移動可能に配設され、流入部12と流出部13とを連通状態および遮断状態に切り換えるものである。具体的には、弁体17は、駆動アクチュエータ18により後退され、弁口16から離間した開弁位置に移動されると、流入部12および流出部13を連通状態とする。また、駆動アクチュエータ18により進出され、弁口16に圧接した閉弁位置に移動されると、流入部12および流出部13の連通を遮断する。
【0032】
前記駆動アクチュエータ18は、上側ケース20と下側ケース23とこれらの間に位置する中側ケース27とからなるシリンダケース19を備えている。そして、このシリンダケース19の内部に、仕切機構を構成する仕切部材29A,29Bおよびピストンカップ31A,31Bを配設し、これらピストンカップ31A,31Bに作動軸35を配設したものである。なお、このシリンダケース19は、管体11の弁体収容部14の開口端を密閉するように配設される。
【0033】
前記上側ケース20は、下側に位置する開口端に中側ケース27を接合するための接合フランジ21を備えている。この上側ケース20の開口に対して逆側に位置する閉塞部には、後述する制御装置50に接続するための第1接続部22が設けられている。
【0034】
前記下側ケース23は、管体11の弁体収容部14に配設されるもので、上側に位置する開口端に中側ケース27を接合するための接合フランジ24を備えている。この下側ケース23の外周部には、制御装置50に接続するための第2接続部25が設けられている。また、下側ケース23の開口に対して逆側に位置する閉塞部には、弁体収容部14の軸芯に位置するように、作動軸35を挿通する挿通部26が設けられている。この挿通部26は、円形状の開口の縁から円筒状をなすように内向きに突出する筒部26aを備えている。
【0035】
前記中側ケース27は、両ケース20,23の間に位置する円筒状のものである。この中側ケース27の両端内周部には、仕切部材29A,29Bの外周部30A,30Bを圧接状態で固定するための取付段部28が設けられている。
【0036】
前記仕切部材29A,29Bは、シリンダケース19の内部を軸方向に沿って、管体11の側である下側ケース23の側と、管体11から離間した側である上側ケース20の側に仕切るためのものである。これら仕切部材29A,29Bは、可撓性を有するダイヤフラムからなり、ピストンカップ31A,31Bの外面を覆うように、有底筒状に形成されている。一方の第1の仕切部材29Aは、その外周部30Aを中側ケース27の取付段部28に位置させた状態で上側ケース20と中側ケース27とを接合することにより、これらの間に密封状態で圧接される。他方の第2の仕切部材29Bは、その外周部30Bを中側ケース27の取付段部28に位置させた状態で下側ケース23と中側ケース27とを接合することにより、これらの間に密封状態で圧接される。
【0037】
前記ピストンカップ31A,31Bは、シリンダケース19の内径より小さい外径の有底筒状のもので、作動軸35の組み付けにより仕切部材29A,29Bに一体的に連結されている。このピストンカップ31A,31Bの開口端には、シリンダケース19の内径より若干小さい外径をなすように突出するフランジ部32A,32Bが設けられている。なお、これらピストンカップ31A,31Bは、一体的に結合した状態で組み付けられ、各フランジ部32A,32Bは、ピストンカップ31A,31Bがシリンダケース19内を軸方向に沿って移動するためのガイドの役割をなす。一方のピストンカップ31Aには、閉塞された底に軸方向に沿って内向きに突出する略円錐筒状の取付部33が設けられている。他方のピストンカップ31Bには、閉塞された底に軸方向に沿って内向きに突出する略円錐筒状の軸挿通部34が設けられている。この軸挿通26部の外径は、下側ケース23の挿通部26の内径より小さく形成されている。また、軸挿通部34は、ピストンカップ31Bの開口端まで突出する寸法で形成されている。
【0038】
前記作動軸35は、弁体17とシリンダケース19内のピストンカップ31A,31Bとを連結するものである。この作動軸35の一端には、弁体17を固定するためのネジ部36が設けられ、弁体17がナットにより締付固定されている。作動軸35の他端は、挿通部26からシリンダケース19内に挿入され、ピストンカップ31Bの軸挿通部34、仕切部材29B,29Aおよびピストンカップ31Aの取付部33を順番に貫通し、取付部33の突出端部でナットにより締付固定されている。この作動軸35には、軸挿通部34の端部に位置するように位置決め段部37が設けられている。この作動軸35とシリンダケース19の挿通部26との間は、シール部材38により密閉されている。
【0039】
前記シール部材38は、シリンダケース19内と管体11の弁体収容部14とを気密に区画するものである。このシール部材38は、可撓性を有する仕切部材29A,29Bと同様のダイヤフラムからなり、外周部39が挿通部26の開口縁に密着固定され、内周部40が作動軸35の位置決め段部37に密着固定されている。
【0040】
このように構成した駆動アクチュエータ18は、一対の仕切部材29A,29Bがピストンカップ31A,31Bの底に挟まれた状態で組み立てられる。そして、シリンダケース19の内部は仕切部材29A,29Bにより、管体11から離れた側に位置する第1変動圧室41と、管体11の側に位置する第2変動圧室42とに仕切られる。また、一対の仕切部材29A,29Bの間には、ピストンカップ31A,31Bが移動しても容積は変わることのない密閉部43が形成される。本実施形態では、この密閉部43に仕切部材29A,29Bの劣化を防止可能なガスまたは液体からなる薬剤からなる流動材が充填されている。
【0041】
また、組立状態の駆動アクチュエータ18は、第1変動圧室41と第2変動圧室42の内圧が異なる場合、低圧(負圧)側の変動圧室41,42に向けて可撓性を有する仕切部材29A,29Bが変形する。これに伴い、ピストンカップ31A,31Bが連動してシリンダケース19内で軸方向に沿って移動する。その結果、作動軸35を介して弁体17が開閉作動する。そのため、第1変動圧室41と第2変動圧室42の内圧を、一方を大気圧状態として他方を負圧状態とするように、制御装置50によって切り換えることにより、弁体17を希望通りに開弁作動および閉弁作動させることができる。
【0042】
具体的には、第1変動圧室41が負圧状態で第2変動圧室42が大気圧状態となるように切り換えると、その差圧により仕切部材29A,29Bが管体11から離れる方向に移動する。その結果、ピストンカップ31A,31Bおよび作動軸35を介して接続された弁体17は、弁座15から離反した開弁位置に移動する。一方、第1変動圧室41が大気圧状態で第2変動圧室42が負圧状態となるように切り換えられると、その差圧により仕切部材29A,29Bが管体11に近接する方向に移動する。その結果、このピストンカップ31A,31Bおよび作動軸35を介して接続された弁体17は、弁座15に圧接する閉弁位置に移動する。
【0043】
なお、仕切部材29A,29Bが変形すると、その間の密閉部43の形状も変形する。しかし、本実施形態では、密閉部43に流動材を充填しているため、その容積は維持したまま、仕切部材29A,29Bだけが異なる形状に変形する。そのため、仕切部材29A,29Bが予期しない形状に変形することにより、ピストンカップ31A,31Bやシリンダケース19の内壁の間に噛み込むことを防止できる。
【0044】
このように、本実施形態の真空弁10は、第1および第2変動圧室41,42の差圧により作動軸35を介して弁体17を開閉する構成としている。そのため、低い真空度(−25kPa以下)でも確実に開閉作動させることができる。また、付勢スプリングの反発力で弁体17を閉じるのではないため、各変動圧室41,42内の圧力を確実に切り換えることにより、弁体17を閉弁できないという状態が発生することはない。よって、真空弁10の信頼性を高めることができる。そして、この真空弁10を真空式下水道システムに適用した場合、真空弁10が開放状態のままになって大量の空気を吸引し続け、システム全体が機能停止するという重大事故の発生を防止できる。
【0045】
また、本実施形態の真空弁10は、シリンダケース19内を仕切る一対の仕切部材29A,29Bの間に形成される密閉部43に、仕切部材29A,29Bの劣化を防止可能な薬剤からなる流動材を充填させているため、仕切部材29A,29Bの機能劣化を抑制できる。さらに、開閉作動時には、シリンダケース19とピストンカップ31A,31Bとの間に仕切部材29A,29Bが噛み込むことによる作動不良を防止できる。しかも、シリンダケース19と作動軸35とは、軸ガイドの代わりに可撓性を有するシール部材38で密閉しているため、長期間使用することに伴う作動不良の発生を防止でき、信頼性を更に向上できる。
【0046】
次に、この真空弁10を開閉作動させるための制御装置50の概略構成について説明する。
【0047】
図2に示すように、本実施形態の制御装置50は、4ポート2位置型の切換弁機構を備えている。この切換弁機構は、フロート98の昇降に連動する第1アクチュエータ97により開作動される。そして、切換弁機構の切換弁78が開作動により第1移動位置から第2移動位置に移動すると、真空送水管5と真空弁10の第1変動圧室41を連通させるとともに、大気と真空弁10の第2変動圧室42を連通させることにより、真空弁10を開弁状態とする。また、切換弁機構は、基準圧と真空送水管5の内圧との差圧により動作する第2アクチュエータ105により閉作動される。そして、切換弁機構の切換弁78が開作動により第2移動位置から第1移動位置に移動すると、大気と真空弁10の第1変動圧室41を連通させるとともに、真空送水管5と真空弁10の第2変動圧室42を連通させることにより、真空弁10を閉弁状態とする。
【0048】
次に、本発明の真空弁10の制御装置50について具体的に説明する。
【0049】
この制御装置50は、図3,4,5に示すように、制御装置50は、1つの切換弁78を有する切換弁機構と、切換弁78を開作動させるための第1アクチュエータ97と、切換弁78を閉作動させるための第2アクチュエータ105とを備えている。また、制御装置50は、真空送水管5に接続した一対の接続配管である第1空気チューブ51A,51Bが一対の切換部55,60にそれぞれ接続され、これら切換部55,60と真空弁10の各変動圧室41,42がそれぞれ第2空気チューブ52A,52Bに接続されている。そして、各アクチュエータ97,105により切換弁78を移動させることにより、各変動圧室41,42への接続状態を切り換え、真空弁10の弁体17を開閉作動させるものである。
【0050】
前記切換弁機構は、図3および図6に示すように、ケーシング53と、このケーシング53の内部に直動可能に配設した切換弁78と、この切換弁78を第1移動位置および第2移動位置に保持する保持機構とを備えている。
【0051】
前記ケーシング53は、略逆円錐筒状をなす下部の第1切換部55と、この第1切換部55と対称に位置する略円錐筒状をなす上部の第2切換部60と、これらの間に位置する略円筒状をなすアクチュエータ連結部67を備えている。そして、このケーシング53には、略接線方向に延びる固定用アーム部54が、径方向に対向する位置かつ上下2段で平行に設けられている。これら固定用アーム部54には、図3中左側に位置する端部に図示しないブラケット部材がネジ止めにより固定される。そして、このブラケット部材を介して貯水枡1内の所定部位に固定される。
【0052】
前記第1切換部55の内部には、真空送水管5に連通した流出部13に連通される第1真空管連通室56と、シリンダケース19の第1変動圧室41に連通される第1真空弁連通室57とが形成されている。第1真空管連通室56は下端に位置するもので、その外周部には真空弁10の流出部13に接続される第1接続部58Aが径方向外向きに突設されている。第1真空弁連通室57は第1真空管連通室56の軸方向に沿った上部に位置し、この第1真空管連通室56より内径が大きいものである。この第1真空弁連通室57には、真空弁10の第1変動圧室41に接続される第1接続部58Bが径方向外向きに突設されている。これら連通室56,57の間には、切換弁78が圧接される第1シール部59が設けられている。この第1シール部59は、内径が上向きに漸次大きくなる逆円錐筒形状をなす。
【0053】
前記第2切換部60の内部には、真空送水管5に連通した流出部13に連通される第2真空管連通室61と、シリンダケース19の第2変動圧室42に連通される第2真空弁連通室62とが形成されている。第2真空管連通室61は上端に位置するもので、その外周部には真空弁10の流出部13に接続される第2接続部63Aが径方向外向きに突設されている。第2真空弁連通室62は第2真空管連通室61の軸方向に沿った下部に位置し、この第2真空管連通室61より内径が大きいものである。この第2真空弁連通室62には、真空弁10の第2変動圧室42に接続される第2接続部63Bが径方向外向きに突設されている。これら連通室61,62の間には、切換弁78が圧接される第2シール部64が設けられている。この第2シール部64は、内径が上向きに漸次大きくなる円錐筒形状をなす。本実施形態では、この第2切換部60は、第1切換部55およびアクチュエータ連結部67とは別体で成形され、切換弁78の装着後に固着する構成としている。そのため、この第2切換部60には、下端に径方向外向きに突出するフランジ部65と、アクチュエータ連結部67の上端内周部に内嵌する内嵌部66とが設けられている。
【0054】
前記アクチュエータ連結部67は、各切換部55,60の対向部である真空弁連通室57,62より大きな内径で延びる円筒状をなす。これにより、第1切換部55とアクチュエータ連結部67との境界部分には、シール用の第1圧接段部68が形成されている。なお、第2切換部60とアクチュエータ連結部67との間のシール用第2圧接段部は、内嵌部66の端面により構成している。第1圧接段部68の上部には、一対の第1挿通穴69,69が設けられている。本実施形態では、これら第1挿通穴69,69の形成位置に下側の固定用アーム部54が位置するように設けられ、この固定用アーム部54に第1挿通穴69,69が設けられている。この第1挿通穴69は、一部がアクチュエータ連結部67の内部空間と連通するように構成されている。そして、各第1挿通穴69には係止部材70が挿通され、この係止部材70の一部を内部空間に突出させることにより、後述する第1シール部材88の上向きの移動を阻止する構成としている。この第1挿通穴69の上部には、保持機構を構成するトグルバネ96の配設部71が設けられている。このトグルバネ配設部71は、径方向外向きに突出した一対のネジ軸部72,72と、これらネジ軸部72,72にかけて延びるバネ配設溝73とを備えている。ネジ軸部72,72は、固定用アーム部54に対して直交方向に延びるように突設されている。バネ配設溝73は、ネジ軸部72,72間がアクチュエータ連結部67の内部空間に連通した状態をなす。また、このトグルバネ配設部71は、バネ配設溝73にトグルバネ96を配設した状態で、ネジ軸部72,72にナット74を締め付けることにより、トグルバネ96を脱落不可能に組み付ける構成としている。このトグルバネ配設部71の上部には、一対の第2挿通穴75,75が設けられ、各第2挿通穴75,75に切換弁78の上向きの移動を停止するためのストッパ部材76が挿通されている。この第2挿通穴75およびストッパ部材76は、第1挿通穴69および係止部材70と同一構成である。また、このストッパ部材76は、後述する第2シール部材91の下向きの移動を阻止する役割もなすように構成している。さらに、アクチュエータ連結部67には、径方向に対向する固定用アーム部54,54間に、軸方向に沿って上下に延び、内部空間に連通(貫通)する一対の挿通溝77,77が設けられている。
【0055】
前記切換弁78は、第1切換部55内から第2切換部60内にかけて延びる弁ロッド79を備え、その下端の第1弁部に第1弁パッキン80を配設するとともに、上端の第2弁部に第2弁パッキン81を配設したものである。
【0056】
第1弁部である第1弁パッキン80は、第1アクチュエータ97により切換弁78が上方に直動されることにより第1移動位置から第2移動位置に移動されると、図4に示すように、第1切換部55の第1真空管連通室56と第1真空弁連通室57とを連通させる位置に移動される。また、第2アクチュエータ105により切換弁78が下方に直動されることにより第2移動位置から第1移動位置に移動されると、図5に示すように、第1シール部59に圧接され、第1切換部55の第1真空管連通室56と第1真空弁連通室57の連通を遮断する位置に移動される。
【0057】
第2弁部である第2弁パッキン81は、図4に示すように、第1アクチュエータ97により切換弁78が第2移動位置に直動されると、即ち、第1弁パッキン80が開位置に位置するときには、第2シール部64に圧接され、第2切換部60の第2真空管連通室61と第2真空弁連通室62の連通を遮断する位置に移動される。また、図5に示すように、第2アクチュエータ105により切換弁78が第1移動位置に直動されると、即ち、第1弁パッキン80が閉位置に位置するときには、第2切換部60の第1真空管連通室56と第1真空弁連通室57とを連通させる位置に移動される。
【0058】
前記弁ロッド79には、第1弁パッキン80の上部に別体の第1ガイド部材82が配設されている。この第1ガイド部材82の上部には、この第1ガイド部材82の上方への移動を停止する第1ストッパ部83が設けられている。この第1ストッパ部83は、上部が円錐形状をなすように突出した第1圧接部84とされている。この第1ストッパ部83の上部には、第1圧接段部68に上方から圧接される第1シール部材88が軸方向に沿って移動可能に配設されている。
【0059】
同様に、弁ロッド79には、第2弁パッキン81の下部に別体の第2ガイド部材85が配設されている。この第2ガイド部材85の下部には、この第2ガイド部材85の下方への移動を停止する第2ストッパ部86が設けられている。この第2ストッパ部86は、下部が逆円錐形状をなすように突出した第2圧接部87とされている。この第2ストッパ部86の下部には、第2圧接段部に下方から圧接される第2シール部材91が軸方向に沿って移動可能に配設されている。
【0060】
前記第1シール部材88は、弁ロッド79の直径より大径の第1貫通孔89を備えている。この第1貫通孔89は、切換弁78が第2移動位置に移動されると、第1圧接部84により閉塞される。これにより、第1切換部55の第1真空弁連通室57は、第1貫通孔89を通した大気との連通が遮断される。また、第1貫通孔89は、切換弁78が第1移動位置に移動されると、第1圧接部84の離間により開放される。これにより、第1切換部55の第1真空弁連通室57は、第1貫通孔89を通した大気と連通した大気開放状態とされる。この第1シール部材88の上下にはそれぞれ第1補強部材90A,90Bが配設される。これら第1補強部材90A,90Bは、第1貫通孔89より大きな貫通孔を有する円環状をなす。なお、この第1シール部材88は、上側の第1補強部材90Aの上部が係止部材70に係止されることにより、第1圧接段部68に圧接状態で移動不可能に配置される。
【0061】
同様に、第2シール部材91は、弁ロッド79の直径より大径の第2貫通孔92を備えている。この第2貫通孔92は、切換弁78が第1移動位置に移動されると、第2圧接部87により閉塞される。これにより、第2切換部60の第2真空弁連通室62は、第2貫通孔92を通した大気との連通が遮断される。また、第2貫通孔92は、切換弁78が第2移動位置に移動されると、第2圧接部87の離間により開放される。これにより、第2切換部60の第2真空弁連通室62は、第2貫通孔92を通した大気と連通した大気開放状態とされる。この第2シール部材91の上下にはそれぞれ第2補強部材93A,93Bが配設される。これら第2補強部材93A,93Bは、第2貫通孔92より大きな貫通孔を有する円環状をなす。なお、この第2シール部材91は、下側の第2補強部材93Aの下部がストッパ部材76に係止されることにより、第2圧接段部に圧接状態で移動不可能に配置される。
【0062】
これらシール部材88,91の間には、下側に位置するように膨出部94が設けられ、上側に位置するように受動フランジ部95が設けられている。膨出部94は、上向きに漸次直径が大きくなるように拡径した後、漸次直径が小さくなるように縮径した断面菱形形状をなす。この膨出部94は、切換弁78が第1移動位置に移動した状態および第2移動位置に移動した状態を保持するための保持機構を構成する。受動フランジ部95は、径方向外向きに突出した円板状のもので、後述する第1アクチュエータ97と第2アクチュエータ105の駆動力を受けるためのものである。
【0063】
前記保持機構は、前記切換弁78の膨出部94と、バネ配設溝73内に配設されるL字形状をなす一対のトグルバネ96,96とで構成されている。これらトグルバネ96,96は、バネ配設溝73に組み付けることにより一部がアクチュエータ連結部67内に位置する。そして、これらトグルバネ96,96の間隔は、弁ロッド79の直径より大きく、膨出部94の最も膨出した稜部94aの直径より小さくなるように構成されている。これにより、トグルバネ96,96間に膨出部94を干渉させ、切換弁78を第1切換部55の側に移動させた状態(第1移動位置)、および、第2切換部60の側に移動させた状態(第2移動位置)を、トグルバネ96,96の保持力で保持できるようにしている。
【0064】
前記第1アクチュエータ97は、貯水枡1内に予め設定した第1水位まで汚水が貯められると、切換弁78をトグルバネ96の保持力に抗して第2切換部60の側へ移動させ、第1切換部55を開位置に位置させるとともに、第2切換部60を閉位置に位置させる。これにより、真空弁10の第1変動圧室41を真空送水管5と連通させ、大気圧より低い負圧状態に切り換えるとともに、真空弁10の第2変動圧室42を大気と連通させ、大気圧状態に切り換え、弁体17を開弁位置に移動させものである。この第1アクチュエータ97は、貯水枡1内の水位に応じて昇降するフロート98と、このフロート98の昇降に連動して切換弁78の直動方向に沿って移動する開作動部材102とを備えている。
【0065】
前記フロート98は、その浮力Fbがトグルバネ96,96の保持力Fsより大きいものである(Fs<Fb)。このフロート98には、開作動部材102に連結するための連結ロッド99が一体的に設けられている。この連結ロッド99の上端には、外径を小さくした挿通軸部100が設けられている。この挿通軸部100はネジ軸であり、ナット101を締め付けることにより、開作動部材102に固定されている。なお、連結ロッド99は、貯水枡1内に予め設定した第1水位まで汚水が溜まった状態で、開作動部材102を介して切換弁78を開作動可能な全長に設定されている。また、切換弁78の開作動に必要なストロークと、フロート98が汚水に浸かる深さとを加算した距離は、切換弁78を開閉作動させる第1および第2水位間の距離より小さく設定している。これにより、貯水枡1の汚水が第2水位まで低下している状態では、フロート98が汚水の水面より上方に位置するように構成している。
【0066】
前記開作動部材102は、切換弁78の直動方向であるケーシング53の軸方向に沿って延びるように、固定用アーム部54,54間に取り付けられる断面H字形状のものである。この開作動部材102には、ケーシング53の一方の挿通溝77を挿通してアクチュエータ連結部67内に突出し、受動フランジ部95の下部に位置する第1作動部103が設けられている。また、開作動部材102の下端には、フロート98の連結ロッド99を装着する装着部104が外向きに突設されている。この装着部104は、連結ロッド99の挿通軸部100より大きく、ナットより小さい直径の孔を有する。この開作動部材102は、固定用アーム部54にブラケット部材を配設することにより、ケーシング53に対して脱落不可能に装着される。
【0067】
前記第2アクチュエータ105は、排水により貯水枡1内の水位が吸水管8の下端より下側(第2水位)になると、切換弁78をトグルバネ96の保持力に抗して第1切換部55の側へ移動させ、第1切換部55を閉位置に位置させるとともに、第2切換部60を開位置に位置させる。これにより、真空弁10の第1変動圧室41を大気と連通させて大気圧状態に切り換えるとともに、真空弁10の第2変動圧室42を真空送水管5と連通させて大気圧より低い負圧状態に切り換え、弁体17を閉弁位置に移動させるものである。この第2アクチュエータ105は、内部を検圧室120と基準圧室119に仕切った切換用シリンダケース106に、切換弁78を閉作動させるための閉作動部材125を配設している。また、切換用シリンダケース106は、下側ケース107、上側ケース111、ダイヤフラム118、切換用ピストンカップ121、付勢スプリング122および保持補助機構を備えている。
【0068】
前記下側ケース107は、大気を吸引するための通気孔部108が設けられている。また、下側ケース107の開口端には、外向きに突出する接合フランジ109が設けられている。さらに、下側ケース107の開口に対して逆側に位置する閉塞部には、閉作動部材125を挿通する軸ガイド110が配設されている。
【0069】
前記上側ケース111は、その開口端に下側ケース107の接合フランジ109に密閉状態で接合される接合フランジ112を備えている。この上側ケース111の開口に対して逆側に位置する閉塞部には、付勢スプリング122の付勢力を調整するための調整機構が設けられている。この調整機構は、閉塞部に設けた被締付部113と、被締付部113に締付可能な締付部材115とからなる。被締付部113は、上側ケース111の軸芯に設けた開口部の縁に内向きに突出する円筒部114を設け、この円筒部114の内周にネジ溝を設けたものである。なお、円筒部114の外端側の所定領域は、ネジ溝を設けることなくシール部材が圧接されるシール領域としている。締付部材115は、一端を開口した上側ケース111とは別体の円筒状のものである。この締付部材115には、その閉塞部に第1空気チューブ51Cを介して真空送水管5に連通した流出部13に連通される接続部116が設けられている。また、締付部材115には、接続部116と逆側に位置する外周部に、被締付部113のネジ溝に噛み合うネジ部が設けられ、被締付部113に対して上側ケース111の内部側より締め付けて組み付ける構成としている。さらに、締付部材115には、組付状態で円筒部114のシール領域に圧接されるシール部材が配設されている。そして、締付部材115には、過剰な回転操作による被締付部113からの抜け出しを防止するために、被締付部113の突出端部に当接するストッパ部117が径方向外向きに突設されている。
【0070】
前記ダイヤフラム118は、切換用シリンダケース106の内部を、下側ケース107の側に位置する基準圧室119と、離間した側に位置する検圧室120とに仕切る可撓性材料からなるものである。このダイヤフラム118は、下側ケース107および上側ケース111の接合フランジ109,112の間に外周部を圧接した状態で、一体的に組み付けられている。本実施形態では、この基準圧室119内の基準圧は、下側ケース107に形成した通気孔部108により大気圧とされている。
【0071】
前記切換用ピストンカップ121は、その内径が締付部材115の外径より大きい受皿形状をなす。この切換用ピストンカップ121は、切換用シリンダケース106の検圧室120内に位置するように、閉鎖された底がダイヤフラム118に固着して配設されている。この切換用ピストンカップ121には、該切換用ピストンカップ121の後退状態で検圧室120内が密閉されることを防止するために、通気孔が設けられている。
【0072】
前記付勢スプリング122は、締付部材115と切換用ピストンカップ121との間に配設され、この切換用ピストンカップ121および閉作動部材125を介して切換弁78を第1移動位置へ向けて付勢するものである。この付勢スプリング122は、基準圧室119の内圧と検圧室120の内圧の差圧により、切換用ピストンカップ121を介して伸縮する。具体的には、検圧室120の内圧が吸引により大気圧より低くなり、伸張しようとする付勢力(反発力)より吸引力が大きくなると、切換用ピストンカップ121の移動(後退)による押圧力で徐々に収縮し始める。そして、検圧室120の内圧が第1低圧値P1以下になると、完全に収縮した状態をなす。一方、検圧室120の内圧が第1低圧値P1を上回ると切換用ピストンカップ121の押圧力に抗して徐々に伸張する。そして、検圧室120の内圧が第1低圧値P1を上回ると、完全に伸張した状態をなす。
【0073】
本実施形態では、付勢スプリング122の付勢力、即ち、切換弁78を閉位置に移動させる力Fcは、フロート98の浮力Fbより大きく設定している(Fs<Fb<Fc)。これにより、切換弁78に対して、第1アクチュエータ97による開作動と第2アクチュエータ105による閉作動とが同時に行われた場合、第2アクチュエータ105による閉作動が実行されるように構成している。なお、第2アクチュエータ105が閉作動する圧力は、締付部材115の締付量の調整により、変更することが可能である。
【0074】
前記保持補助機構は、付勢スプリング122が切換用ピストンカップ121を介して収縮した状態で、切換用ピストンカップ121を付勢スプリング122の付勢力より弱い保持力で保持することにより、後退状態を補助的に保持するものである。この保持補助機構は、切換用ピストンカップ121の開口端外周部に配設した第1磁石123と、第1磁石123と上側ケース111の軸方向に対応する位置に設けた第2磁石124とからなる。この保持補助機構を設けた切換用シリンダケース106は、付勢スプリング122を収縮させて切換用ピストンカップ121が後退位置に移動すると、各磁石123,124が互いの磁力で吸着する。その結果、切換用ピストンカップ121を検圧室120内の吸引力と磁石123,124による吸着力とで保持できる。そして、検圧室120内が第1低圧値P1より高い第2低圧値P2を更に上回ると、検圧室120内の吸引力と磁石123,124による吸着力とを加えた保持力より、付勢スプリング122の付勢力が大きくなり、切換用ピストンカップ121を進出させ、真空弁10を閉弁作動させる構成としている。
【0075】
前記閉作動部材125は、切換用ピストンカップ121の底中心に連結したロッド126を備えている。このロッド126は、下側ケース107の軸ガイド110を挿通し、アクチュエータ連結部67における開作動部材102の反対側に、軸方向に沿って延びるように配設されている。また、閉作動部材125は、第1作動部103を挿通した挿通溝77と逆側の挿通溝77を挿通してアクチュエータ連結部67内に突出し、受動フランジ部95の上部に位置する第2作動部127が設けられている。この第2作動部127は、切換用ピストンカップ121が限界位置まで進出した状態で、膨出部94の稜部94aがトグルバネ96より下方に位置するまで下降するように設定されている。なお、この閉作動部材125は、開作動部材102と同様に、突出させた固定用アーム部54,54の間に位置させ、ブラケット部材を配設することによりケーシング53に対して移動可能に位置決めすることが好ましい。
【0076】
この制御装置50を、前記真空弁10を用いた真空式下水道システムに適用する場合、フロート98が貯水枡1の汚水溜3に位置するように、ブラケット部材を介して貯水枡1内に固定される。そして、第1切換部55の第1接続部58Aと真空弁10の流出部13とを第1空気チューブ51Aによって接続する。また、第1切換部55の第1接続部58Bと真空弁10の第1接続部22とを、第2空気チューブ52Aによって接続する。さらに、第2切換部60の第2接続部63Aと真空弁10の流出部13とを第1空気チューブ51Bによって接続する。また、第2切換部60の第2接続部63Bと真空弁10の第2接続部25とを、第2空気チューブ52Bによって接続する。さらに、第2アクチュエータ105の接続部116と真空弁10の流出部13とを第1空気チューブ51Cによって接続する。なお、本実施形態では、制御装置50の接続部58A,63A,116を流出部13に接続することにより、この流出部13を介して真空送水管5に接続する構成としているが、直接真空送水管5に接続してもよい。
【0077】
次に、本発明の真空弁10および制御装置50を適用した真空式下水道システムの動作について説明する。
【0078】
図7Aに示すように、貯水枡1の内部の汚水が吸水管8の下側までしか溜められていない状態では、制御装置50の切換弁78は第1移動位置に移動され、この状態がトグルバネ96,96の保持力で保持されている。また、真空弁10の弁体17は閉弁位置に移動された状態をなす。
【0079】
この状態では、真空弁10の流入部12は、吸水管8を介して大気開放された大気圧状態をなす。真空弁10の流出部13は、真空ステーションの吸引作用により大気圧より低い第1低圧値P1(−25kPa)以下の状態をなす。そのため、制御装置50は、第1切換部55の第1真空管連通室56および第2切換部60の第2真空管連通室61が、流出部13との連通により第1低圧値P1以下の状態をなす。同様に、制御装置50の第2アクチュエータ105の検圧室120は、流出部13との連通により、大気圧より低い第1低圧値P1以下の状態をなす。その結果、閉作動部材125は、切換用ピストンカップ121を介して後退した状態をなす。一方、制御装置50の第1切換部55の第1真空弁連通室57は、切換弁78によって第1真空管連通室56との連通が遮断され、第1シール部材88の第1貫通孔89を通して大気開放状態をなす。よって、真空弁10の第1変動圧室41は、第1真空弁連通室57を介して大気圧状態となっている。また、制御装置50の第2切換部60の第2真空弁連通室62は、切換弁78によって第2真空管連通室61と連通され、第2シール部材91の第2貫通孔92を通した大気との連通が遮断された状態をなす。よって、真空弁10の第2変動圧室42は、第2真空弁連通室62を介して負圧状態となっている。その結果、真空弁10は、第2変動圧室42からの吸引により弁体17を進出させ、弁口16を閉塞した閉弁位置に保持されている。
【0080】
この状態で、貯水枡1内に汚水が溜まるとフロート98が着水して上昇し、第1水位まで上昇すると、図7Bに示すように、開作動部材102が上向きに移動される。その結果、切換弁78がトグルバネ96の保持力に抗して、トグルバネ96を弾性的に広げながら、開位置まで上向きに移動する。そして、膨出部94の稜部94aがトグルバネ96を乗り越えると、トグルバネ96が弾性的に復元することにより、切換弁78を第2移動位置に保持する。これにより、第1切換部55では、第1真空管連通室56と第1真空弁連通室57とが連通し、第2切換部60では、第2真空管連通室61と第2真空弁連通室62との連通が遮断される。
【0081】
そうすると、図7Cに示すように、真空弁10は、第1変動圧室41が第1真空弁連通室57を介して負圧状態となり、第2変動圧室42が第2真空弁連通室62を介して大気圧状態となる。その結果、真空弁10の駆動アクチュエータ18は、図7Dに示すように、第1変動圧室41からの吸引により弁体17を後退させ、弁口16を開放した開弁位置に移動され、流入部12と流出部13とが連通した状態をなす。よって、貯水枡1内の汚水は、真空ステーションの吸引作用により吸水管8、真空弁10の管体11、仕切弁7および真空送水管5を経て排水(送出)される。
【0082】
排水により貯水枡1内の汚水が吸水管8の下端近傍まで低下すると、吸水管8からの吸水に空気が混入される。そうすると、図7Eに示すように、流入部12の内圧が第1低圧値P1を上回る。これに伴い、図7Fに示すように、流出部13に連通した制御装置50の第2アクチュエータ105の検圧室120の内圧が第1低圧値P1を上回る。また、第1切換部55の第1真空管連通室56および第1真空弁連通室57を介して流出部13に連通した真空弁10の第1変動圧室41内が第1低圧値P1を上回る。さらに、第2切換部60の第2真空管連通室61内が第1低圧値P1を上回る。但し、この状態では、保持機構を構成する磁石123,124の吸着力により、切換用ピストンカップ121を後退位置に保持する保持力は、付勢スプリング122の付勢力より大きい。そのため、第2アクチュエータ105は、切換弁78を閉作動させることはない。これに伴い、真空弁10の駆動アクチュエータ18は、第2変動圧室42が大気圧状態を維持し、第1変動圧室41の大気圧より低い負圧状態を維持する。その結果、弁体17は開弁状態を維持する。
【0083】
そして、貯水枡1内の汚水が第2水位まで排水されて空気の混入量が増えると、真空弁10の流出部13の内圧が第2低圧値P2を上回る。そうすると、制御装置50の第2アクチュエータ105は、付勢スプリング122の付勢力が切換用ピストンカップ121を後退位置に保持する保持力より、大きくなる。その結果、図7Gに示すように、付勢スプリング122の付勢力で切換用ピストンカップ121が進出し、閉作動部材125を介して切換弁78がトグルバネ96の保持力に抗して第1移動位置へ移動される。そして、膨出部94の稜部94aがトグルバネ96を乗り越えると、トグルバネ96が弾性的に復元することにより、切換弁78を第1移動位置に保持する。これにより、第1切換部55では、第1真空管連通室56と第1真空弁連通室57の連通が遮断され、第2切換部60では、第2真空管連通室61と第2真空弁連通室62とが連通される。
【0084】
そうすると、図7Hに示すように、真空弁10は、第1変動圧室41が第1真空弁連通室57を介して大気圧状態となり、第2変動圧室42が第2真空弁連通室62を介して負圧状態となる。その結果、真空弁10の駆動アクチュエータ18は、図7Iに示すように、第2変動圧室42からの吸引により弁体17を進出させ、弁口16を閉塞した閉弁位置に移動され、流入部12と流出部13の連通を遮断した状態をなす。よって、真空弁10の流入部12から流出部13を経た排水が停止される。
【0085】
このように真空弁10が閉弁すると、図7Jに示すように、真空ステーションの吸引作用により流出部13の内圧は第1低圧値P1以下となる。これに伴い、図7Iに示すように、第1切換部55の第1真空管連通室56が第1低圧値P1以下となる。また、第2切換部60の第2真空管連通室61および第2真空弁連通室62を介して流出部13に連通した真空弁10の第2変動圧室42内が第1低圧値P1以下となる。さらに、流出部13に連通した制御装置50の第2アクチュエータ105の検圧室120の内圧が第1低圧値P1以下となる。その結果、弁体17は、第1変動圧室41と第2変動圧室42の差圧による付勢力で、閉弁状態を維持する。また、制御装置50の第2アクチュエータ105は、付勢スプリング122の付勢力に抗して切換用ピストンカップ121を後退させ、図7Aに示す状態になる。
【0086】
このように、本発明の制御装置50は、切換弁78を第1アクチュエータ97により開作動させ、第2アクチュエータ105により閉作動させることにより、確実に真空弁10の第1変動圧室41と第2変動圧室42の圧力を切り換えることができる。そして、第1アクチュエータ97は、貯水枡1内の水位に応じて昇降するフロート98を用いているため、大きな浮力で真空弁10の開作動を安定かつ確実に実行することができる。また、第2アクチュエータ105は、貯水枡1内の水位が吸水管8より下側に位置し、真空度が低下すると動作するものであるため、真空送水管5の内圧に応じて真空弁10の閉作動を安定かつ確実に実行することができる。しかも、切換弁78は、閉作動状態である第1移動位置および開作動位置である第2移動位置に、保持機構であるトグルバネ96により保持できる。
【0087】
そして、真空弁10は、閉弁作動に付勢スプリングの付勢力を用いることなく、第1変動圧室41と第2変動圧室42の差圧により実現するものであるため、確実に開弁状態および閉弁状態を確実に維持できる。そのため、弁体17を閉弁できないという状態が発生することはない。よって、真空弁10の信頼性を高めることができる。また、真空弁10が開放状態のままになって大量の空気を吸引し続け、システム全体が機能停止するという重大事故の発生を防止できる。
【0088】
さらに、フロート98を利用した第1アクチュエータ97は、切換弁78の開作動のみを行うものである。そのため、切換弁78を開作動した後は、貯水枡1の水位を検出する必要がない。即ち、フロート98は、貯水枡1内に汚水が溜められている状況下で、第1水位を検出するための極めて小さい範囲のみを検出できればよい。よって、フロート98は、制御装置50を設置するためのブラケット部材、第1アクチュエータ97の開作動部材102などの強度を確保すれば、貯水枡1内の汚水量が少ない状態では、汚水の水面の上方、即ち、空中に浮いて汚水に接しない状態を維持できる。これにより、汚水の水面付近に浮遊するスカム(油脂類)がフロート98に付着する量を大幅に減少できるため、フロート98の上下動が妨げられて発生する動作不良を防止できる。しかも、フロート98の上下動の範囲を小さくすることができるため、摺動による摩耗やそれに伴う動作不良も防止できる。その結果、フロート98を長期間にわたって安定して動作させることができる。また、使用中に汚水に混ざって貯水枡1に流入してくる土砂が貯水枡1の底に堆積したり、工事の際の残材が不意に流入してきても、フロート98の浮上動作は影響を受け難いため、動作不良防止効果を得ることができる。
【0089】
しかも、切換弁78を介して弁体17を閉弁作動させるための第2アクチュエータ105は、水位が吸水管8の下端より下側まで下がったことを差圧により検出して動作するものである。よって、汚水に混入して排水された油脂は、殆どを吸水管8から貯水枡1の外部に排水できる。よって、この真空弁10および制御装置50を搭載したユニットは、蓄積した油脂を除去するための定期的なメンテナンスが不要である。
【0090】
また、制御装置50は、第2アクチュエータ105により切換弁78を第1移動位置に移動させる力Fcを、フロート98の浮力Fbより大きくしている(Fb<Fc)。そのため、切換弁78に対して、第1アクチュエータ97による開作動と、第2アクチュエータ105による閉作動が同時に行われた場合、第2アクチュエータ105による閉作動が実行される。その結果、真空弁10が開弁状態と閉弁状態とを繰り返すチャタリングの発生を防止できる。
【0091】
具体的には、貯水枡1内の汚水が第1水位まで上昇することにより、第1アクチュエータ97が開作動を実行する状況では、第2アクチュエータ105が閉作動を実行させることは、通常の使用環境下ではありえない。また、第2アクチュエータ105が閉作動を実行する状況で、第1アクチュエータ97が開作動を実行するという状況は、フロート98が貯水枡1に油脂等によって固着されて下降不可能になった状態である。この油脂等によるフロート98の固着は、前述のように殆ど生じることはない。しかし、万が一にもこのような状況が生じた場合、油脂等によるフロート98の固着力Faは、通常、フロート98の浮力Fbより弱い(Fa<Fb)。そして、本実施形態では、第2アクチュエータ105により切換弁78を閉位置に移動させる力Fcを、フロート98の浮力Fbより大きくしている(Fa<Fb<Fc)。その結果、通常の使用環境下でフロート98が固着されている場合、第2アクチュエータ105の閉作動により固着を解除できる。よって、通常の使用環境下でのチャタリングの発生を確実に防止できる。
【0092】
さらに、本実施形態では、制御装置50の第2アクチュエータ105に切換用ピストンカップ121が後退した状態を、付勢スプリング122の付勢力より弱い力で保持する磁石123,124を配設している。そして、検圧室120が第2低圧値P1より高い第2低圧値P2を上回ると、付勢スプリング122の付勢力で閉作動部材125を介して切換弁78を閉作動させる構成としている。そのため、第2アクチュエータ105により切換弁78を閉位置に移動させる力Fcを、確実にフロート98の浮力Fbより大きくなるように設定できる。
【0093】
図8は第2実施形態の真空弁10を適用した真空弁ユニットを示す。この第2実施形態では、シリンダケース19の第1変動圧室41に、仕切機構を構成するピストンカップ31A,31Bおよび作動軸35を介して、強制的に弁体17を閉弁位置へ付勢するために、付勢部材として付勢スプリング128を配設した点で、第1実施形態と相違している。なお、この付勢スプリング128の付勢力は、真空送水管5の内圧が第2低圧値P2を上回ると閉作動を行う第2アクチュエータ105の付勢スプリング122の付勢力より極めて小さく、通常の使用時に弁体17を開弁状態から閉弁状態に迅速に移動させることを目的としたものではない。
【0094】
そして、このように構成した第2実施形態の真空弁10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、真空ステーションからの吸引力が弱く(真空度が低く)なった場合でも、閉弁位置に移動させた弁体17を、弁座15に圧着した全閉状態に確実に維持できる。また、停電により真空ステーションからの吸引が一時的に停止した場合に、付勢スプリング128の付勢力で弁体17を閉弁させることができる。
【0095】
即ち、第1アクチュエータ97が開作動することにより真空弁10が開弁状態となり、貯水枡1内の汚水を排水している時に停電した場合、排水が停止される。その結果、真空送水管5内の圧力は大気圧状態と同等になる。その結果、真空弁10は、第1変動圧室41と第2変動圧室42の内圧が、同様の略大気圧状態になる。その結果、駆動アクチュエータ18は、開弁作動も閉弁作動もしない。しかし、本実施形態では、第1変動圧室41に付勢スプリング128を配設しているため、この停電状態になると、弁体17を強制的に閉弁することができる。
【0096】
図9は第3実施形態の真空弁10を適用した真空弁ユニットを示す。この第3実施形態では、第2実施形態に示す付勢スプリング128の代わりに、真空送水管5に連通した流出部13と第2切換部60の第2接続部63Aとを接続する第1空気チューブ51Bに、蓄圧槽129と逆止弁130とを配設した点で、第1実施形態と相違している。
【0097】
前記蓄圧槽129は、内部を大気圧より低い低圧状態に保持するもので、真空下水技術マニュアルで決められている最低真空度−25kPaより低圧を十分に蓄圧できるタンクからなる。また、逆止弁130は、蓄圧槽129から真空送水管5へ向かう空気の流動を許容するものである。そのため、真空送水管5の吸引作用により、蓄圧槽129内の空気は吸引される。しかし、真空送水管5の吸引力が弱くなることにより真空度が低くなると、蓄圧槽129の内圧の方が低くなるため、蓄圧槽129が真空送水管5から空気を吸引するように作用する。そして、この逆向きの吸引作用を逆止弁130により阻止する構成としている。
【0098】
このように構成した第3実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、真空ステーションからの吸引力が弱くなった場合でも、閉弁位置に移動させた弁体17を、弁座15に圧着した全閉状態に確実に維持できる。
【0099】
なお、本発明の真空弁10および真空弁10の制御装置50は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、前記実施形態では、仕切機構を一対の仕切部材29A,29Bとピストンカップ31A,31Bとで構成したが、1個の仕切部材と1個のピストンカップで構成し、密閉部43は設けない構成としてもよい。
【0101】
また、第2実施形態では、駆動アクチュエータ18の上側ケース20に、第2アクチュエータ105の上側ケース111のように被締付部と締付部材を設け、付勢スプリング128の付勢力を調整できるようにしてもよい。
【0102】
一方、前記実施形態では、制御装置50は、第2アクチュエータ105の基準圧室119の内圧を、大気開放することによる大気圧としたが、所定の気体や液体等を密封することにより決定した圧力としてもよい。しかも、第2アクチュエータ105の付勢スプリングの付勢力を調整する調整機構は、被締付部113と締付部材115の構成に限られず、希望に応じて変更が可能である。
【0103】
また、前記実施形態では、切換弁78を第1移動位置および第2移動位置に保持する保持機構を一対のトグルバネ96,96で構成したが、トグルバネ96の保持力を高めるために、固定用アーム部54と開作動部材102の間に、トグル補助用のバネを配設する構成としてもよい。勿論、保持機構はバネに限られず、切換弁78を開位置および閉位置に所定の保持力で保持できる構成であれば、種々の変更が可能である。
【0104】
さらに、前記実施形態では、本発明の真空弁10および制御装置50を真空式下水道システムに適用したが、貯水枡1内に一定量の液体が溜められると、下流側に送水する真空送水システムであれば、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…貯水枡、4…自然流下管、5…真空送水管、8…吸水管、10…真空弁、11…管体、12…流入部、13…流出部、14…弁体収容部、15…弁座、16…弁口、17…弁体、18…駆動アクチュエータ、19…シリンダケース、22…第1接続部、25…第2接続部、26…挿通部、29A,29B…仕切部材(仕切機構)、30A,30B…外周部、31A,31B…ピストンカップ(仕切機構)、35…作動軸、38…シール部材、41…第1変動圧室、42…第2変動圧室、43…密閉部、50…制御装置、53…ケーシング、55…第1切換部、56…第1真空管連通室、57…第1真空弁連通室、60…第2切換部、61…第2真空管連通室、62…第2真空弁連通室、79…弁ロッド、80…第1弁パッキン、81…第2弁パッキン、88…第1シール部材、91…第2シール部材、94…膨出部、95…受動フランジ部、96…トグルバネ、97…第1アクチュエータ、102…開作動部材、105…第2アクチュエータ、106…切換用シリンダケース、118…ダイヤフラム、119…基準圧室、120…検圧室、121…切換用ピストンカップ、125…閉作動部材、128…付勢スプリング、129…蓄圧槽、130…逆止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水管に接続される流入部と真空送水管に接続される流出部との間に弁座を有する弁体収容部と、
前記弁座に圧接した閉弁位置および前記弁座から離反した開弁位置にかけて移動可能に前記弁体配設部内に収容した弁体と、
前記弁体収容部の端部に設けたシリンダケースと、
前記シリンダケースの内部を、前記弁体収容部の側に位置する第1変動圧室および弁体収容部から離間した側に位置する第2変動圧室に気密状態で仕切る可撓性を有する仕切機構と、
前記仕切機構と前記弁体とを連結する作動軸と、
を備え、前記第1変動圧室および第2変動圧室の一方を大気圧状態として他方を負圧状態とすることで生じる差圧により前記仕切機構を移動させ、この仕切機構および作動軸を介して前記弁体を開弁位置と閉弁位置に移動させるようにしたことを特徴とする真空弁。
【請求項2】
前記仕切機構は、前記シリンダケースに外周部が圧接された一対の第1および第2仕切部材と、これら仕切部材に配設され前記シリンダケースの内部を軸方向に沿って移動可能な一対の第1および第2ピストンカップと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の真空弁。
【請求項3】
前記各ピストンカップを、前記作動軸により一体的に連結したことを特徴とする請求項2に記載の真空弁。
【請求項4】
前記第1および第2仕切部材の間に、各仕切部材の劣化を防止可能な薬剤からなる流動材を充填させたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の真空弁。
【請求項5】
前記シリンダケースは、前記作動軸を挿通する挿通部を備え、これら挿通部と作動軸との間を、可撓性を有するシール部材で密閉したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空弁。
【請求項6】
前記シリンダケースの第1変動圧室に、前記仕切機構および作動軸を介して弁体を閉弁位置へ付勢する付勢部材を配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の真空弁。
【請求項7】
吸水管に接続される流入部と真空送水管に接続される流出部との間に弁座を有する弁体収容部と、
前記弁座に圧接した閉弁位置および前記弁座から離反した開弁位置にかけて移動可能に前記弁体配設部内に収容した弁体と、
前記弁体収容部の端部に設けたシリンダケースと、
前記シリンダケースの内部を、前記弁体収容部から離れた側に位置する第1変動圧室および前記弁体収容部の側に位置する第2変動圧室に気密状態で仕切る可撓性を有する仕切機構と、
前記仕切機構と前記弁体とを連結する作動軸と、
を備える真空弁の制御装置であって、
前記真空送水管に連通される第1真空管連通室および前記真空弁の第1変動圧室に連通される第1真空弁連通室を形成した第1切換部と、前記真空送水管に連通される第2真空管連通室および前記真空弁の第2変動圧室に連通される第2真空弁連通室を形成した第2切換部とを、略対称に位置するように形成したケーシングと、
前記ケーシング内に直動可能に配設され、前記第1切換部の第1真空管連通室と第1真空弁連通室を連通させる開位置および第1真空管連通室と第1真空弁連通室の連通を遮断する閉位置の間を移動される第1弁部と、この第1弁部が開位置に位置するときに前記第2切換部の第2真空管連通室と第2真空弁連通室の連通を遮断する閉位置に位置し前記第1弁部が閉位置に位置するときに第2真空管連通室と第2真空弁連通室を連通させる開位置に位置するように移動される第2弁部と、を有する切換弁と、
前記貯水枡内の水が予め設定した第1水位まで上昇すると、前記切換弁を第2切換部の側へ移動させて前記第1切換部を開位置に位置させるとともに前記第2切換部を閉位置に位置させ、前記真空弁の第1変動圧室を真空送水管と連通させて負圧状態に切り換えるとともに、前記真空弁の第2変動圧室を大気と連通させて大気圧状態に切り換え、前記仕切機構および作動軸を介して前記弁体を開弁位置に移動させる第1アクチュエータと、
前記貯水枡内の水位が前記吸水管の一端より下側まで送水されると、前記切換弁を第1切換部の側へ移動させて前記第1切換部を閉位置に位置させるとともに前記第2切換部を開位置に位置させ、前記真空弁の第1変動圧室を大気と連通させて大気圧状態に切り換えるとともに、前記真空弁の第2変動圧室を真空送水管と連通させて負圧状態に切り換え、前記仕切機構および作動軸を介して前記弁体を閉弁位置に移動させる第2アクチュエータと、
を備えることを特徴とする真空弁の制御装置。
【請求項8】
前記切換弁を第1切換部の側に移動させた状態、および、前記切換弁を第2切換部の側に移動させた状態で、前記切換弁を予め設定した保持力で保持する保持機構を備えることを特徴とする請求項7に記載の真空弁の制御装置。
【請求項9】
前記第1アクチュエータは、前記貯水枡内の水位に応じて昇降するたフロートと、このフロートの昇降に連動して前記切換弁の直動方向に沿って直動し前記フロートが第1水位まで上昇すると前記切換弁を第2切換部の側へ移動させる開作動部材と、を備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の真空弁の制御装置。
【請求項10】
前記第2アクチュエータは、内部が前記真空送水管に連通される検圧室と所定圧に保持した基準圧室に仕切られた切換用シリンダケースと、前記検圧室と基準圧室の差圧によって前記切換弁の直動方向に沿って直動し前記検圧室の内圧が基準圧室内の基準圧値より低い低圧値以下になると前記切換弁を前記第1切換部の側へ移動させる閉作動部材と、を備えることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の真空弁の制御装置。
【請求項11】
前記真空送水管と前記ケーシングの第2切換部の第2真空管連通室との間に、内部を大気圧より低い低圧状態に保持する蓄圧槽を介設するとともに、この蓄圧槽と真空送水管との間に蓄圧槽から真空送水管へ向かう空気の流動を許容する逆止弁を配設したことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の真空弁の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図7K】
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【公開番号】特開2010−281141(P2010−281141A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136388(P2009−136388)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】