説明

着色ポリ乳酸系樹脂発泡体、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法

【課題】発泡性、成形性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することを課題とする。
【解決手段】メルトフローレート0.5〜15g/10分および軟化点60〜180℃の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂ならびに着色剤を含み、
前記着色剤を、前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量100重量部に対して3〜50重量部含むことを特徴とする着色ポリ乳酸系樹脂発泡体により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、発泡性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体、前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体から得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体および前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、その優れた発泡性、熱融着性等に鑑みてポリ乳酸系樹脂発泡体が発泡成形体の原材料として好適に用いられている。また、前記発泡成形体は成形性、耐熱性に優れるため、土木、建築、園芸分野等での構造部材、自動車分野での内装材、外装材等として幅広い用途が期待されている。
【0003】
特許文献1には、前記発泡成形体の一例として外観が良好で耐熱性、機械的強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4213200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリ乳酸系樹脂のみを樹脂成分として着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造する場合、着色剤をポリ乳酸系樹脂中で均一に分散させるために、予めポリ乳酸系樹脂に着色剤を高濃度に含有した着色剤マスターバッチが用いられる。この着色剤マスターバッチは、ポリ乳酸系樹脂に着色剤を添加し溶融混練した後にペレット化することで得られるが、均一な着色剤マスターバッチを得るために、溶融混練工程を長時間に亘って行わなければならない場合があった。この場合、ポリ乳酸系樹脂は熱履歴によって劣化し易く、低分子量化する傾向があり、その結果、ポリ乳酸系樹脂の発泡性は低下し、所望の嵩比重を有する発泡成形体を得ることができないことがあった。また、低分子量化により生じたポリ乳酸系樹脂末端のカルボキシル基により、さらにポリ乳酸系樹脂の加水分解が進み、ポリ乳酸系樹脂の耐久性を悪化させることもあった。
【0006】
さらに、ポリ乳酸系樹脂はその溶融張力が低くストランドを作製することが難しく、また着色剤を添加する事でさらにストランドを作製することが難しくなるため、高濃度の着色剤マスターバッチは得ることが極めて難しいという問題もあった。
【0007】
従って、これらの問題点に鑑みて、発泡性、成形性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして本発明によれば、メルトフローレート0.5〜15g/10分および軟化点60〜180℃の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂ならびに着色剤を含み、
前記着色剤を、前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量100重量部に対して3〜50重量部含むことを特徴とする着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が提供される。
【0009】
また本発明によれば、前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を成形することによって得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体が提供される。
【0010】
さらに本発明によれば、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法であって、
前記ポリ乳酸系樹脂と、前記熱可塑性樹脂および前記着色剤を含む着色熱可塑性樹脂組成物とを押出機に供給して溶融混練し、押出機の途中で揮発性発泡剤を圧入し、さらに混練することによって着色ポリ乳酸系樹脂押出物を得る溶融混練工程と、
前記押出機の前端に取り付けたノズル金型から前記着色ポリ乳酸系樹脂組成物を押出し、前記着色ポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら、180〜235℃のノズル金型の温度で、前記ノズル金型の前端面に接触させつつ、2000〜10000rpmの回転数で回転する回転刃によって切断して前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造し、前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を切断応力によって飛散させる押出発泡工程と、
前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を前記ノズル金型の前方に配設した冷却部材に衝突させて冷却する冷却工程と
を含む着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡性、成形性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0012】
また本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂が構成単量体成分としてD体およびL体の双方の光学異性体を含有しかつD体またはL体のうち少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、または、構成単量体成分としてD体またはL体のうちのいずれか一方の光学異性体のみを含有するポリ乳酸系樹脂である場合、耐熱性、発泡性により優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0013】
また本発明によれば、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が、前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量を0.001〜30重量部含む場合、着色剤が着色ポリ乳酸系樹脂発泡体中に十分含まれるため、発泡性に優れ、色むらのより少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0014】
また本発明によれば、熱可塑性樹脂がポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンのいずれかである場合、熱可塑性樹脂とポリ乳酸系樹脂との十分な分散性を確保することができるため、発泡性により優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0015】
本発明によれば、耐熱性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることもできる。
【0016】
本発明によれば、本発明の製造方法によって所望の嵩比重を有し、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を容易に得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造装置の一例を示した模式断面図である。
【図2】ノズル金型を正面から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の特徴は、メルトフローレート0.5〜15g/10分および軟化点60〜180℃の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂ならびに着色剤を含み、
前記着色剤を、前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量100重量部に対して3〜50重量部含む着色ポリ乳酸系樹脂発泡体である。
【0019】
具体的には、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂および着色剤、特にポリ乳酸系樹脂中に熱可塑性樹脂を併せて含むため、従来問題となっていた溶融混練時の熱履歴による樹脂劣化を抑制することができ、その結果として起こるポリ乳酸系樹脂の低分子量化を抑制することができる。このため、樹脂組成物を十分溶融混練した場合であっても、十分な発泡性を有する着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0020】
また、本発明の熱可塑性樹脂は0.5〜15g/10分のメルトフローレートおよび60〜180℃の軟化点を有するため、溶融混練時、樹脂組成物に必要な溶融張力や溶融粘度が確保することができ、この観点からも着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は十分な発泡性を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量100重量部に対して、着色剤を3〜50重量部含むため、前記の発泡性を十分確保しつつ、さらにその内部に十分な量の着色剤を含むこともできる。このため、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は色むらを有さず、美麗な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。また、従来得ることができないとされていた着色剤を高濃度で含有する着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を容易に製造することもできる。
以下、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体等について詳説する。
【0022】
(1)着色ポリ乳酸系樹脂発泡体
本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂および着色剤を少なくとも含む。
【0023】
(熱可塑性樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂は0.5〜15g/10分、好ましくは1.0〜12g/10分、より好ましくは1.5〜10g/10分のメルトフローレートを有し、また、60〜180℃、好ましくは70〜170℃、より好ましくは80〜160℃の軟化点を有する。この場合、熱可塑性樹脂とポリ乳酸系樹脂との溶融混練時、両樹脂は十分に軟化、流動し、低分子量化することなく、両樹脂を十分に混合することができる。このため揮発性発泡剤を樹脂組成物中に均一に含浸させ、十分な発泡性を有する着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。また、着色剤を均一に分散させることもできるため、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0024】
他方、熱可塑性樹脂が前記のメルトフローレートおよび軟化点の範囲を有さない場合、溶融混練時、熱可塑性樹脂は十分に軟化せず、また、十分な流動性等を得ることもできないことがある。この場合、前記の発泡性、色むらが問題となることがある。なお、前記のメルトフローレートおよび軟化点の測定方法等については実施例において詳説する。
【0025】
本発明においては、前記のメルトフローレートおよび軟化点を有する熱可塑性樹脂のいずれも使用することができる。具体的には、熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン;ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂とポリ乳酸系樹脂との十分な相溶性を確保することができるため、熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンのいずれかが好ましい。
【0026】
また、本発明の熱可塑性樹脂は十分な発泡性確保、即ち樹脂についてのガスバリア性確保の観点から、好ましくは10万〜300万、より好ましくは15万〜200万の重量平均分子量を有する。
【0027】
本発明において平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定した数平均分子量を意味する(なお、平均分子量とは、ある特定の物質が、化学的に同じ構造単位から構成される重合体の、異なる重合度を有する分子の集合体である場合、ある一定の重合度の分子の数がnであり、その分子の分子量がMnである場合、Σn・Mnで表される。さらに、縦軸にn、横軸にMnをプロットした際、概ね正規分布の形状を取る。)。
【0028】
さらに、本発明で使用する熱可塑性樹脂は、発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボキシ基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等のその他の官能基を含んでいてもよく、架橋剤等により架橋されていてもよい。同様に、熱可塑性樹脂を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよく、その他の樹脂成分等を含んでいてもよい。
【0029】
(ポリ乳酸系樹脂)
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂として乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性および着色ポリ乳酸系樹脂発泡体への発泡性付与の観点から、D−乳酸およびL−乳酸の共重合体、D−乳酸(D体)またはL−乳酸(L体)のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチドおよびDL−ラクチドからなる群から選択される1または2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。
【0030】
ポリ乳酸系樹脂は、発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、乳酸以外の単量体として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;
コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の脂肪族多価カルボン酸;
エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の脂肪族多価アルコール等を任意に含んでいてもよい。
【0031】
また、本発明で使用するポリ乳酸系樹脂は、同様に発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボキシ基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基等のその他の官能基を含んでいてもよい。また、エポキシ系架橋剤やイソシアネート系架橋剤、カルボジイミド化合物等により架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合手により結合していてもよい。さらに、ポリ乳酸系樹脂を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、特に限定されず公知の方法をいずれも使用することができる。具体的には、オクタン酸スズ(II)等の触媒存在下、ラクチドを重合させるラクチド法;ジフェニルエーテル等の溶媒中で乳酸系化合物を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合を行う直接重合法;乳酸系化合物を溶融させつつ重合を行う溶融法等の重合方法が挙げられる。
【0033】
本発明で使用するポリ乳酸系樹脂は、環境中に含まれる水分によって、エステル結合が加水分解されることにより低分子化し、最終的には微生物によって二酸化炭素と水にまで分解され得る。具体的には、堆肥中においては約1週間で分解されることもある。このため、本発明で得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は生分解性を示し、現在大きな問題となっている環境面等からも好ましい。
【0034】
ここで、D体またはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満であるD体とL体との共重合体、およびD体またはL体のいずれか一方の単独重合体は、少ない方の光学異性体が減少するに従って、結晶性が高くなり融点が高くなる傾向がある。一方、D体またはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%以上であるD体とL体との共重合体は、少ない方の光学異性体が増加するに従って、結晶性が低くなり、やがて非結晶となる傾向がある。よって、例えば、高い耐熱性が望まれる用途では、前者のポリ乳酸系樹脂を、複雑な空間への充填性の向上が望まれる用途では、後者のポリ乳酸系樹脂を使用することができる。
【0035】
また、後者のポリ乳酸系樹脂は、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を金型内に充填して発泡させて得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性を向上させることができ、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は高い温度であってもその形態を維持できることがある。従って、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を金型から高い温度のまま取り出すことが可能となって着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の金型内における冷却時間が短縮され、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産効率を向上させ得ることがある。このため、前記の観点から、D体とL体との共重合体は、D体またはL体のうちのいずれか少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満であることが好ましく、4モル%未満であることがより好ましい。
【0036】
ここで、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を押出発泡法で得る場合、ポリ乳酸系樹脂は、その融点(mp)と、動的粘弾性測定により得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度Tとが下記式1を満たすように調整されることが好ましい。
(ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃)
≦(交点における温度T)≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
【0037】
動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率は、粘弾性において弾性的な性質を示す指標であって、発泡過程における気泡膜の弾性の大小を示す指標であり、発泡過程において、気泡膜の収縮力に抗して気泡を膨張させるのに必要な発泡圧の大小を示す指標である。
【0038】
即ち、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が低いと、気泡膜が伸長された場合、気泡膜が伸長力に抗して収縮しようとする力が小さい。そのため、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造に必要とする発泡圧によって発泡膜が容易に伸長してしまう結果、気泡膜が過度に伸長してしまい破泡を生じることがある。一方、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率が高いと、気泡膜に伸長力が加わった場合、伸長に抗する気泡膜の収縮力が大きくなる。そのため、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造に必要とする発泡圧で一旦、気泡が膨張したとしても、温度低下等に起因する経時的な発泡圧の低下に伴って気泡が収縮してしまうことがある。
【0039】
また、動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率は、粘弾性において粘性的な性質を示す指標である。具体的には、発泡過程における気泡膜の粘性を示す指標である。特に、発泡過程において、気泡膜をどの程度まで破れることなく伸長できるかの許容範囲を示す指標であると同時に、発泡圧によって所望大きさに気泡を膨張させた後、この膨張した気泡をその大きさに維持する能力を示す指標でもある。
【0040】
即ち、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定にて得られた損失弾性率が低いと、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造に必要とする発泡圧によって気泡膜が伸長された場合、気泡膜が容易に破れてしまうことがある。一方、ポリ乳酸系樹脂の動的粘弾性測定により得られた損失弾性率が高いと、発泡力が気泡膜によって熱エネルギーに変換されてしまい、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造時に気泡膜を円滑に伸長させることが難しくなり、気泡を膨張させることが困難になることがある。
【0041】
このように、ポリ乳酸系樹脂を発泡させて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造するにあたっては、発泡過程において、発泡圧によって気泡膜が破れることなく適度に伸長するための弾性力、即ち、貯蔵弾性率を有していることが好ましい。加えて、発泡圧によって気泡膜が破れることなく円滑に伸長し、所望大きさに膨張した気泡をその大きさに発泡圧の経時的な減少にかかわらず維持しておくための粘性力、即ち、損失弾性率を有していることが好ましい。
【0042】
つまり、押出発泡工程において、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率および損失弾性率の双方が押出発泡に適した値を有していることが好ましく、このような押出発泡に適した貯蔵弾性率および損失弾性率を押出発泡工程においてポリ乳酸系樹脂に付与するために、ポリ乳酸系樹脂における動的粘弾性測定にて得られた、貯蔵弾性率曲線と損失弾性率曲線との交点における温度T(以下「温度T」という)と、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが、好ましくは下記式1を満たすように、より好ましくは式2を満たすように調整される。この調整により、貯蔵弾性率および損失弾性率をそれらのバランスをとりながら押出発泡性を良好なものとし、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を安定的に製造できる。
〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−40℃〕
≦交点における温度T≦ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)・・・式1
〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−35℃〕
≦交点における温度T≦〔ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)−10℃〕・・・式2
【0043】
さらに、温度Tと、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが前記式1を満たすように調整するのが好ましい理由を下記に詳述する。
【0044】
まず、温度Tが、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも40℃を越えて低い場合には、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の損失弾性率が貯蔵弾性率に比して大き過ぎるために、損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまう。
【0045】
そこで、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、粘性に合わせた発泡力とすると、弾性力に対する発泡力が大き過ぎ、気泡膜が破れて破泡を生じて良好な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得られないことがある。逆に、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、弾性に合わせた発泡力とすると、粘性力に対する発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が発泡しにくくなり、良好な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得られないことがある。
【0046】
また、温度Tが、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)よりも高いと、押出発泡時におけるポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率が損失弾性率に比して大き過ぎることになる。そのため、上述と同様に損失弾性率と貯蔵弾性率とのバランスが崩れてしまうことがある。
【0047】
そこで、ポリ乳酸系樹脂の貯蔵弾性率に適した発泡力、即ち、弾性に合わせた発泡力とすると、粘性力に対する発泡力が大き過ぎ、気泡膜が破れて破泡を生じ良好な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得られないことがある。逆に、ポリ乳酸系樹脂の損失弾性率に適した発泡力、即ち、粘性に合わせた発泡力とすると、弾性力に対する発泡力が小さく、ポリ乳酸系樹脂が一旦発泡したとしても、経時的な発泡力の低下に伴って気泡が収縮してしまって、やはり良好な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得られないことがある。
【0048】
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が高くなるに従って、温度Tが高くなる。よって、温度Tと、ポリ乳酸系樹脂の融点(mp)とが前記式1を満たすように調整するには、ポリ乳酸系樹脂の重合時に反応時間あるいは反応温度を調整することによって、得られるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を調整する方法、押出発泡前にあるいは押出発泡時にポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を増粘剤や架橋剤を用いて調整する方法が挙げられる。
【0049】
(着色剤)
本発明において着色剤としては、所望の物性等に影響を与えない限り、公知の有機系染料、有機系顔料、無機系顔料等をいずれも使用することができる。
有機系染料としては、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、インジゴイド系、キノンイミン系、カルボニウム系、ニトロ系、ニトロソ系等が挙げられる。
有機系顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、キクナドリン系、ジオキサジン系、イソインドリン系等が挙げられる。
無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム、ウルトラマリン等が挙げられる。
本発明においては、樹脂成分への良好な分散性と発色性を得ることができるため、着色剤は2μm以下の平均粒子径を有することが好ましく、1μm以下の平均粒子径を有することがより好ましく、0.5μm以下の粒子径を有することが特に好ましい。
また、着色剤の平均粒径が2μmを超えると、着色剤粒子が発泡体の気泡膜厚よりも大きくなり、気泡膜を突き破って連気率が高くなることがある。
着色剤の粒子径は、例えばレーザー回析散乱法やコールター法、動的光散乱法などを用いて測定できる。
【0050】
本発明においては、着色剤は熱可塑性樹脂と着色剤との合計量100重量部に対して、3〜50重量部、好ましくは4〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部含まれる。着色剤は熱可塑性樹脂と着色剤との合計量100重量部に対して3重量部より少ない場合、十分な着色性を得ることができないことがあり、他方、50重量部より多い場合、着色剤が十分に分散しないことに起因する色むらが問題となることがある。
【0051】
また、本発明においては、樹脂熱可塑性樹脂と着色剤との合計量がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001〜30重量部であることが好ましく、0.01〜20重量部であることがより好ましい。樹脂熱可塑性樹脂と着色剤との合計量がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001重量部より少ない場合、着色剤不足に起因して十分な着色性を得ることができない場合があり、他方、30重量部より多い場合、着色剤が十分に分散しないことに起因する色むらが問題となったり、ポリ乳酸系樹脂成分不足に起因して十分な発泡性を得ることができない場合がある。
【0052】
本発明において着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用することもできる。また同色であっても、2種以上を併用することもできる。
【0053】
(揮発性発泡剤)
【0054】
揮発性発泡剤としては、従来から汎用されているものを用いることができる。例えば、 プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等の物理発泡剤等が挙げられる。この内、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体への高い発泡性付与の観点から、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましい。発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、揮発性発泡剤を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
揮発性発泡剤量が少ない場合、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を所望発泡倍率まで発泡できないことがある。一方、揮発性発泡剤量が多い場合、揮発性発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態の樹脂成分の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好な着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができないことがある。加えて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡倍率が高くなり過ぎる場合がある。よって、溶融混練時投入される揮発性発泡剤量は、熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂および着色剤の合計量100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましい。なお、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体中には安全面、取扱い面から揮発性発泡剤が実質的に含まれていないことが好ましいが、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体100重量部中に2重量部以下の揮発性発泡剤が含まれることがある。
【0056】
本発明においては、溶融混練時、気泡調整剤が添加されることが好ましいが、気泡調整剤の多くは、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶核剤として作用するため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進しない気泡調整剤を用いることが好ましく、このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末が挙げられる。
【0057】
また、供給される気泡調整剤の量が少ない場合、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の気泡が粗大となり、得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観が低下することがある。一方、供給される気泡調整剤の量が多い場合、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の独立気泡率が低下することがある。このため、気泡調整剤の量は、熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂および着色剤の合計量100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。
【0058】
さらに、タルク、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等のその他の気泡調整剤;トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステル等のリン系難燃剤等、ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモシクロオクタン、テトラブロモシクロオクタン、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素系難燃剤等の難燃剤;モノカルボジイミド、ポリカルボジイミド等の加水分解抑制剤を含んでいてもよい。
【0059】
本発明においては、所望の物性に影響を与えない限り、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、他に油剤、粉体、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線防御剤(有機系、無機系を含む。UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤等の各種成分を含むこともできる。
【0060】
(2)着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、公知の方法によって製造できる。具体的には、市販の押出機を使用して、揮発性発泡剤の存在下、熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂および着色剤を含む樹脂組成物を溶融押出しを行いつつ、発泡させ、次いで水中カット、ストランドカット等で造粒することによって、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造することができる。造粒方法にもよるが、通常得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の形状は、球状、略球状(楕円球状または卵状)、ペレット状またはグラニュラー状である。
【0061】
本発明においては、発泡性、成形性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を容易に得ることができるため、
ポリ乳酸系樹脂と、熱可塑性樹脂および着色剤を含む着色熱可塑性樹脂組成物とを押出機に供給して溶融混練し、押出機の途中で揮発性発泡剤を圧入し、さらに混練することによって着色ポリ乳酸系樹脂押出物を得る溶融混練工程と、
押出機の前端に取り付けたノズル金型から着色ポリ乳酸系樹脂組成物を押出し、着色ポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら、180〜235℃のノズル金型の温度で、ノズル金型の前端面に接触させつつ、2000〜10000rpmの回転数で回転する回転刃によって切断して着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造し、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を切断応力によって飛散させる押出発泡工程と、
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体をノズル金型の前方に配設した冷却部材に衝突させて冷却する冷却工程と
を含む着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法を用いることが好ましい。
【0062】
以下、本発明で用い得る製造方法の一例を挙げて説明するが、本発明は以下の製造方法に限定されるものではない。
まず、ポリ乳酸系樹脂と、前記熱可塑性樹脂および前記着色剤を含む着色熱可塑性樹脂組成物とを図1および2に示す押出機に供給して溶融混練し、押出機の途中で揮発性発泡剤を圧入しさらに混練する。この後、押出機の前端に取り付けたノズル金型から着色ポリ乳酸系樹脂押出物を押出し、この着色ポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら、180〜235℃のノズル金型の温度で、ノズル金型の前端面に接触させ、次いで2000〜10000rpmの回転数で回転する回転刃によって切断して着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造し、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を切断応力によって飛散させる。なお、前記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されない。例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられる。
【0063】
着色剤は、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体中で均一に分散させるために、熱可塑性樹脂と着色剤とを含む着色熱可塑性樹脂組成物としてマスターバッチ(カラーマスターバッチ)化し、次いでポリ乳酸系樹脂と溶融混練することが好ましい。この場合、多量の着色剤を熱可塑性樹脂中に分散し、次いでポリ乳酸系樹脂と溶融混練することもできる。また、マスターバッチ化の方法としては、二軸押出機、ラボブラストミル、ハイスピードミル等の一般的な押出機、造粒機を用いて造粒する製造方法を挙げることができる。
【0064】
そして、ノズル金型1から押出された着色ポリ乳酸系樹脂押出物は引き続き切断工程に入る。着色ポリ乳酸系樹脂押出物の切断は、回転軸2をモータ3により回転させ、ノズル金型1の前端面1aに配設された回転刃5を2000〜10000rpmの一定の回転数で回転させて行うことが好ましい。
【0065】
全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら回転している。ノズル金型1から押出発泡された着色ポリ乳酸系樹脂押出物は、回転刃5と、ノズル金型1におけるノズルの出口部11端縁との間に生じる剪断応力によって、一定の時間毎に大気中において切断されて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体とされる。この時、着色ポリ乳酸系樹脂押出物の冷却が過度とならない範囲内において、着色ポリ乳酸系樹脂押出物に水を霧状に吹き付けてもよい。
【0066】
ノズル金型1のノズル内においてポリ乳酸系樹脂が発泡しないことが好ましい。そのため、ポリ乳酸系樹脂は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後は、未だに発泡しておらず、吐出されてから僅かな時間が経過した後に発泡を始める。従って、着色ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する、未発泡部に先んじて押出された発泡途上の発泡部とからなる。
【0067】
ノズル金型1のノズルの出口部11から突出されてから発泡を開始するまでの間、未発泡部はその状態を維持する。この未発泡部が維持される時間は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力や、揮発性発泡剤量等によって調整できる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力が高いと、着色ポリ乳酸系樹脂押出物はノズル金型1から押出されてから直ぐに発泡することはなく未発泡の状態を維持する。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの口径、押出量、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度および溶融張力によって調整できる。揮発性発泡剤量を適正な量に調整することによって金型内部においてポリ乳酸系樹脂が発泡することを防止し、未発泡部を確実に形成できる。
【0068】
本発明においては、好ましくは180〜235℃の、より好ましくは190〜230℃のノズル金型の温度下で着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡を行う。ノズル金型の温度が180℃より低い場合、ノズルが樹脂で目詰まりし安定して生産できなくなることがある。また235℃より高い場合、ポリ乳酸系樹脂が熱分解して発泡に必要な溶融張力が得られなくなり、良好な発泡体が得られなくなることがある。ここで、ノズル金型の温度とは、金型直近の流路から7mmの位置の温度を意味する。
【0069】
全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で着色ポリ乳酸系樹脂押出物を切断していることから、着色ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部において切断されて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が製造される。
【0070】
得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、着色ポリ乳酸系樹脂押出物をその未発泡部で切断していることから、切断部の表面には気泡断面は存在しない。そして、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の表面全面は、気泡断面の存在しない表皮層で被覆されている。
【0071】
また、回転刃5は一定の回転数で回転していることが好ましい。回転刃5の回転数は、2000〜10000rpmが好ましく、3000〜9000rpmがより好ましく、4000〜8000rpmがさらに好ましい。
【0072】
これは、2000rpmを下回ると、着色ポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって確実に切断しがたくなる。そのため、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体同士が合体することがあり、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の形状が不均一となることもある。一方、10000rpmを上回ると下記の問題点を生じることがある。第一の問題点は、回転刃による切断応力が大きくなって、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体がノズルの出口部から冷却部材に向かって飛散される際に、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の初速が速くなる。その結果、着色ポリ乳酸系樹脂押出物を切断してから、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が冷却部材に衝突するまでの時間が短くなり、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡が不充分となることである。第二の問題点は、回転刃および回転軸の摩耗が大きくなって回転刃および回転軸の寿命が短くなることである。
【0073】
さらに、押出機の吐出量と回転数とは式3:
【数1】

(式中、
Dn:金型のノズル径(cm)
Q:一穴あたりの吐出量(g/hr)
R:カッター刃回転数(rpm)
N:カッター刃枚数(枚)
X:得られる発泡粒の倍数(g/cm3))
を満たすことが好ましい。式3の関係を満たさない場合、同様に、所望の球状ないし略球状の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造することができず、成形性等に影響を与えることがある。
【0074】
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、回転刃5による切断応力によって切断と同時に外方あるいは前方に向かって飛散され、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に直ちに衝突する。着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、冷却ドラム41に衝突するまでの間も発泡をし続けており、発泡によって球状ないし略球状に成長している。
【0075】
次いで、得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体をノズル金型の前方に配設した冷却部材を衝突させて冷却する。具体的には、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面は全面的に冷却液42で被覆されており、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に衝突した着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は直ちに冷却されて、発泡が停止する。このように、着色ポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって切断した後に、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を直ちに冷却液42によって冷却していることで、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が上昇するのを防止できると共に、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が過度に発泡するのを防止できる。
【0076】
従って、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、型内発泡成形時に優れた発泡性および熱融着性を発揮する。型内発泡成形時に着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶化度を上昇させて、ポリ乳酸系樹脂の耐熱性を向上でき、得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた耐熱性を有している。
【0077】
なお、冷却液42の温度は、低いと、冷却ドラム41の近傍に位置するノズル金型が過度に冷却されて、ポリ乳酸系樹脂の押出発泡に悪影響が生じることがある。一方、高いと、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度が高くなり、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の熱融着性が低下することがある。よって、温度は、0〜45℃が好ましく、5〜40℃がより好ましく、10〜35℃が特に好ましい。
【0078】
前記製造方法を用いるため、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は球状ないし略球状である。本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は前記形状を有するため、例えば、柱状、円筒状、針状、燐片状のような形状の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体と比べて、流動性に優れ、発泡成形機への充填性等に優れ、その結果、成形性にも優れる。さらに、所望の複雑な形状の着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体も容易に製造することができる。球状ないし略球状とは、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の投射図が真球形の粒子から楕円形の粒子までを含むことを意味する。
【0079】
また、粒子の投射図において、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の最も長い直径(長径)と最も短い直径(短径)との比(短径/長径)は、好ましくは1.0〜1.3の範囲、より好ましくは1.0〜1.2の範囲である。短径/長径が1.0〜1.3の範囲に含まれない場合、発泡成形機への充填性の点で問題となる場合があり、その結果、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体間でのばらつきを生じ、所望の成形性を得ることができないことがある。なお、短径/長径=1は真球を意味する。
【0080】
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下の連続気泡率を有する。連続気泡率が25%を超える場合、成形時に必要な発泡性が得られず、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができないことがある。また、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体同士の融着性が低くなり、得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の機械的強度が低下することがある。着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の連続気泡率の調整は、押出機からのポリ乳酸系樹脂の押出発泡温度、押出機への揮発性発泡剤の供給量等を調整することによって行うこともできる。
【0081】
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、好ましくは嵩密度0.06〜0.5g/cm3、より好ましくは嵩密度0.08〜0.4g/cm3を有する。嵩密度が0.5g/cm3より大きいと得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の重量が高くなり、実用性に乏しい場合がある。一方、嵩密度が0.06g/cm3より小さいと得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度が低くなり、構造部材等への使用が困難となる場合がある。
【0082】
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の平均粒子径は1.0〜5.0mmが好ましく、1.5〜4.0mmがより好ましい。平均粒子径が5.0mmより大きい場合、発泡成形機への着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の充填性が低下することがあり、得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度が低下することがある。また、1.0mmより小さい場合、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の嵩比重に影響を与えることがある。
【0083】
このようにして得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、不活性ガスを含浸し発泡力を向上させた後に、加熱発泡して高倍の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体としても良い。上記不活性ガスとしては、二酸化炭素、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムが挙げられる。着色ポリ乳酸系樹脂発泡体に不活性ガスを含浸させる方法としては、例えば、圧力容器中で常圧以上の圧力を有する不活性ガス雰囲気下に着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を置くことによって着色ポリ乳酸系樹脂発泡体中に不活性ガスを含浸させる方法が挙げられる。なお、不活性ガスが二酸化炭素である場合、0.1〜1.5MPaの二酸化炭素雰囲気中に着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を20分〜24時間に亘って放置することが好ましい。
【0084】
不活性ガスを含浸された着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は圧力容器から取り出された後、直ちに加熱発泡される。着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を加熱する加熱媒体としては、水蒸気など水分を含んでいる加熱媒体では結晶化度が上がり易く好ましくないので、乾燥した空気が好ましい。通常は空気を加熱しただけの熱風で十分である。
【0085】
上記高倍化工程を経ることにより、嵩密度0.06〜0.5g/cm3の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、嵩密度が0.02〜0.2g/cm3の着色ポリ乳酸系樹脂高倍発泡体となる。
【0086】
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶化度は30%以下に限定され、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。結晶化度が30%を超える場合、成形時に着色ポリ乳酸系樹脂発泡体同士が融着しなくなり良好な成形品が得られなくなる。着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶化度は、ノズル金型1から着色ポリ乳酸系樹脂押出物が押出されてから着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が冷却液42に衝突するまでの時間や、冷却液42の温度によって調整することもできる。
【0087】
(3)着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法
次いで、得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を、公知の型内成形機を用いて加熱処理することによって、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体同士を熱融着させ、所望の着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体に型内成形することができる。
【0088】
本発明においては、発泡性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を用いるため、所望の嵩比重を有し、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。このため、本発明の着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、土木、建築、園芸分野等での構造部材、自動車分野での内装材、外装材等として使用することができる。
【実施例】
【0089】
以下実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<熱可塑性樹脂のメルトフローレート>
メルトフローレート(MFR)の測定はJIS K7210により行う。測定装置および測定条件を下記する。
測定装置:東洋精機製作所製 メルトインデクサー
測定温度:190℃
測定荷重:21.2N
オリフィス径:2.09mm
ポリ乳酸系樹脂5gを予め190℃に予熱したメルトインデクサー内に入れ、4分間放置する。次に21.2Nの重りをピストンに載せ、オリフィス径2.09mmよりポリ乳酸系樹脂を押し出し測定する。
【0090】
<熱可塑性樹脂の軟化点>
JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルムおよびシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法により測定する。即ち、熱可塑性樹脂粒子を熱プレスして、厚み2mmに潰した後、縦10mm×横20mm×厚み2mmの平面長方形状のフィルム状試験片を作製し、熱・応力・歪み測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「TMA/SS6200」)を用い、針入り試験モード(針の先端面積1mm2
、荷重50gとし、フィルム状試験片に針を当てて、昇温速度5℃/分で温度を上げていき、フィルム状試験片の歪みが発生した時の温度をこの樹脂粒子の軟化点とする。
【0091】
<着色ポリ乳酸系樹脂発泡体のD体またはL体の乳酸含有量>
ポリ乳酸系樹脂中におけるD体またはL体の乳酸含有量は以下の方法によって測定することができる。
ポリ乳酸系樹脂を凍結粉砕し、ポリ乳酸系樹脂の粉末200mgを三角フラスコ内に供給した後、三角フラスコ内に1Nの水酸化ナトリウム水溶液30mlを加える。そして、三角フラスコを振りながら65℃に加熱してポリ乳酸系樹脂を完全に溶解させる。しかる後に、1N塩酸を三角フラスコ内に供給して中和し、pHが4〜7の分解溶液を作製し、メスフラスコを用いて所定の体積とする。次に、分解溶液を0.45μmのメンブレンフィルタで濾過した後、液体クロマトグラフィを用いて分析し、得られたチャートに基づいてD体およびL体由来のピーク面積から面積比を存在比としてD体量およびL体量を算出する。そして、前記と同様の要領を5回繰り返して行い、得られたD体量およびL体量をそれぞれ相加平均して、ポリ乳酸系樹脂のD体量およびL体量とする。
液体クロマトグラフィの測定条件
HPLC装置(液体クロマトグラフィ):日本分光社製 製品名PU−2085 Plus型システム
カラム:住友分析センター社製 製品名SUMICHIRAL OA5000(4.6mmφ×250mm)
カラム温度:25℃
移動相:2mM CuSO4水溶液と2−プロパノールとの混合液(CuSO4水溶液:2−プロパノール(体積比)=95:5)
移動相流量:1.0ml/分
検出器:UV 254nm
注入量:20μl
【0092】
<着色ポリ乳酸系樹脂発泡体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の嵩密度>
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体および着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて試料の嵩密度を測定する。
試料の嵩密度(g/cm3
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0093】
<着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡粒径測定>
着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の粒径は、各着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の切断面における最も長い直径(長径)をおよび最も短い直径(短径)を、ノギスを用いて測定すると共に、各着色ポリ乳酸系樹脂発泡体における切断面に直交する方向の長さを測定し、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の長径、短径および長さの相加平均値を着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の粒径とする。
【0094】
(実施例1)
(高濃度カラーマスターバッチの製造)
口径が32mmの二軸押出機に表1に示した熱可塑性樹脂60重量部および表2に示した着色剤40重量部を供給し溶融混練した。なお、二軸押出機内において、熱可塑性樹脂を始めは180℃にて溶融混練した後に220℃まで昇温させながら溶融混練した。二軸押出機の先端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルから、樹脂ストランドを引き取り水槽にて冷却後、ペレタイザーにてカットし高濃度カラーマスターバッチを得た。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
(溶融混練)
図1および図2に示した製造装置を用いて型内発泡成形用着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造した。先ず、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製、商品名「TERRAMAC HV−6250H」、融点(mp):169.1℃、D体比率:1.2モル%、L体比率:98.8モル%)100重量部および気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製、商品名「フルオンL169J」)0.1重量部および高濃度カラーマスターバッチ0.1重量部を口径が65mmの単軸押出機に供給して溶融混練した。なお、単軸押出機内において、ポリ乳酸系樹脂を始めは190℃にて溶融混練した後に220℃まで昇温させながら溶融混練することによって着色樹脂組成物を得た。続いて、単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%およびノルマルブタン65重量%からなるブタンを着色樹脂組成物100重量部に対して1.2重量部となるように溶融状態の着色樹脂組成物に圧入して、着色樹脂組成物中に均一に分散させた。
【0098】
(押出発泡)
しかる後、溶融状態の着色樹脂組成物を冷却した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型1の各ノズルから剪断速度7621sec-1で着色樹脂組成物を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型1は、出口部11の直径が1.0mmのノズルを10個有しており、ノズルの出口部11は全て、マルチノズル金型1の前端面1aに想定した、直径が139.5mmの仮想円A上に等間隔毎に配設されていた。マルチノズル金型1は200℃に保持されていた。そして、回転軸2の後端部外周面には、四枚の回転刃5が回転軸2の周方向に等間隔毎に一体的に設けられており、各回転刃5はマルチノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で仮想円A上を移動するように構成されていた。さらに、冷却部材4は、正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設され且つ内径が315mmの円筒状の周壁部41bとからなる冷却ドラム41を備えていた。そして、供給管41dおよびドラム41の供給口41cを通じて冷却ドラム41内に冷却水42が供給されており、周壁部41bの内面全面には、この内面に沿って20℃の冷却水42が前方に向かって螺旋状に流れていた。
【0099】
そして、マルチノズル金型1の前端面1aに配設した回転刃5を4800rpmの回転数で回転させてあり、マルチノズル金型1の各ノズルの出口部11から押出発泡された着色ポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃5によって切断して略球状の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造した。ポリ乳酸系樹脂押出物は、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。そして、ポリ乳酸系樹脂押出物は、ノズルの出口部11の開口端において切断されており、ポリ乳酸系樹脂押出物の切断は未発泡部において行われていた。なお、上述の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造にあたっては、先ず、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付けず且つ冷却部材4をマルチノズル金型1から退避させておいた。この状態で、押出機からポリ乳酸系樹脂押出物を押出発泡させ、ポリ乳酸系樹脂押出物が、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなることを確認した。次に、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付け且つ冷却部材4を所定位置に配設した後、回転軸2を回転させ、ポリ乳酸系樹脂押出物をノズルの出口部11の開口端において回転刃5で切断して着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造した。
【0100】
(冷却)
この着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、回転刃5による切断応力によって外方或いは前方に向かって飛ばされ、冷却部材4の冷却ドラム41の内面に沿って流れている冷却水42に衝突して直ちに冷却された。冷却された着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、冷却ドラム41の排出口41eを通じて冷却水42と共に排出された後、脱水機にて冷却水42と分離された。
【0101】
得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、粒径が2.2〜2.6mm、嵩密度が0.20g/cm3、結晶化度が17〜19%であった。
【0102】
(高倍化)
この着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を10リットルの圧力容器内に供給して密閉し、この圧力容器内に二酸化炭素を1.0MPa(G)の圧力で圧入して25℃にて6時間に亘って放置して着色ポリ乳酸系樹脂発泡体に二酸化炭素を含浸した。上記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を圧力容器から取り出して、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を直ちに撹拌機付きの熱風乾燥機に供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡体を撹拌しながら54℃の乾燥した熱風で3分間に亘って加熱して発泡させ、嵩密度が0.052g/cm3高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡体を得た。
【0103】
(成形)
次に、得られた高発泡倍率の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を密閉容器内に供給して、この密閉容器内に二酸化炭素を0.8MPa(G)の圧力にて圧入して常温にて24時間に亘って放置して着色ポリ乳酸系樹脂発泡体に二酸化炭素を含浸させた。続いて、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体をアルミニウム製の金型キャビティ内に充填した。なお、金型のキャビティの内寸は、縦300mm×横300mm×高さ30mmの直方体形状であった。又、金型に、この金型のキャビティ内と金型外部とを連通させるために、直径が8mmの円形状の供給口を20mm間隔毎に合計252個、形成した。なお、各供給口には、開口幅が1mmの格子部を設けてあり、金型内に充填した着色ポリ乳酸系樹脂発泡体がこの供給口を通じて金型外に流出しないように形成されている一方、金型の供給口を通じて金型外からキャビティ内に水を円滑に供給することができるように構成されていた。
【0104】
そして、加熱水槽内に85℃に維持された水を溜め、この加熱水槽内の水中に着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を充填した金型を完全に40秒間に亘って浸漬して、金型の供給口を通じて金型のキャビティ内の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体に水を供給し、着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を加熱、発泡させて着色ポリ乳酸系樹脂発泡体同士を熱融着一体化させた。次に、加熱水槽内から金型を取り出した。そして、別の冷却水槽に20℃に維持された水を溜め、この冷却水槽内に金型を完全に2分間に亘って浸漬して、金型内の着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した。金型を冷却水槽から取り出して金型を開放して直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、着色剤の分散性も良く色ムラもない非常に優れた外観を有していた。性能評価の結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
(着色剤の分散性)
着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体から全面表皮無しとした5gの切片を切り出し、次いで、2枚のテフロンシートで切片を挟み込み、220℃に加熱したプレス機(東洋精機製作所社製:ラボプレス101)で15MPaにてプレスし、着色ポリ乳酸系樹脂フィルムを作製した。このフィルムの中央部に10mm角の正方形を記し、100倍のルーペで拡大して、該正方形の範囲中(100mm2)にある最大径が2μm以上の着色剤粒子の個数を数える。
判定は、5個未満を○、10個未満を△、10個以上を×とする。
【0107】
(実施例2)
(低濃度カラーマスターバッチの製造)
実施例1(高濃度カラーマスターバッチの製造)と同様にして、表1に示した熱可塑性樹脂96重量部および表2に示した着色剤4重量部から低濃度カラーマスターバッチを得た。
また、ポリ乳酸系樹脂100重量部に添加する高濃度カラーマスターバッチ0.1重量部を、低濃度カラーマスターバッチ4.0重量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして、着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、着色剤の分散性も良く色ムラもない非常に優れた外観を有していた。性能評価の結果を表4に示す。
【0108】
【表4】

【0109】
(実施例3)
ポリ乳酸系樹脂100重量部に添加するカラーマスターバッチを表4に示したF−1の低濃度カラーマスターバッチ25重量部とした以外は実施例1と同様にして着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を得た。得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は、粒径が2.2〜2.6mm、嵩密度が0.20g/cm3、結晶化度が14%であった。この着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を実施例1と同様にして高倍化したところ、0.053g/cm3の着色ポリ乳酸系樹脂高倍発泡体を得た。更に実施例1と同様にして着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、着色剤の分散性も良好で色ムラもない非常に優れた外観であった。
【0110】
(比較例1)
熱可塑性樹脂をポリ乳酸系樹脂(ネイチャーワークス社製 「Ingeo 8051D」とした以外は実施例1(高濃度カラーマスターバッチの製造)と同様にして押出したが、ストランドのドローダウンが大きくストランドを引けず、マスターバッチペレットを作製できなかった。
【0111】
(比較例2)
熱可塑性樹脂を30重量部、着色剤を70重量部とした以外は実施例1(高濃度カラーマスターバッチの製造)と同様にして押出したが、熱可塑性樹脂と着色剤とが均一に混合出来ず、ストランドの切断が頻繁に発生してマスターバッチペレットを作製できなかった。
【0112】
表3および4より、実施例1〜3で得られた着色ポリ乳酸系樹脂発泡体は比較例のものと比べて、発泡性、成形性に優れ、色むらの少ない着色ポリ乳酸系樹脂発泡体であることを示している。
【0113】
従って、本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は土木、建築、園芸分野等での構造部材、自動車分野での内装材、外装材等として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 ノズル金型
1a ノズル金型1の前端面
2 回転軸
3 駆動部材(モータ)
4 冷却部材
5 回転刃
11 ノズルの出口部
41 冷却ドラム
41a 冷却ドラムの前部
41b 冷却ドラムの周壁部
41c 冷却ドラムの供給口
41d 冷却ドラムの供給管
41e 冷却ドラムの排出口
41f 冷却ドラムの排出管
42 冷却ドラムの冷却液
A 回転刃フォルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート0.5〜15g/10分および軟化点60〜180℃の熱可塑性樹脂、ポリ乳酸系樹脂ならびに着色剤を含み、
前記着色剤を、前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量100重量部に対して3〜50重量部含むことを特徴とする着色ポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系樹脂が、構成単量体成分としてD体およびL体の双方の光学異性体を含有しかつD体またはL体のうち少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、または、構成単量体成分としてD体またはL体のうちのいずれか一方の光学異性体のみを含有するポリ乳酸系樹脂である請求項1に記載の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体が、前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して前記熱可塑性樹脂と前記着色剤との合計量を0.001〜30重量部含む請求項1または2に記載の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンのいずれかである請求項1〜3のいずれか1つに記載の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を成形することによって得られる着色ポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法であって、
前記ポリ乳酸系樹脂と、前記熱可塑性樹脂および前記着色剤を含む着色熱可塑性樹脂組成物とを押出機に供給して溶融混練し、押出機の途中で揮発性発泡剤を圧入し、さらに混練することによって着色ポリ乳酸系樹脂押出物を得る溶融混練工程と、
前記押出機の前端に取り付けたノズル金型から前記着色ポリ乳酸系樹脂組成物を押出し、前記着色ポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら、180〜235℃のノズル金型の温度で、前記ノズル金型の前端面に接触させつつ、2000〜10000rpmの回転数で回転する回転刃によって切断して前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造し、前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を切断応力によって飛散させる押出発泡工程と、
前記着色ポリ乳酸系樹脂発泡体を前記ノズル金型の前方に配設した冷却部材に衝突させて冷却する冷却工程と
を含む着色ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77181(P2012−77181A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223071(P2010−223071)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】