説明

石炭火力発電所の水銀制御用粉末吸着剤の優れた利用方法

【課題】燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去方法及び関連システムを提供する。
【解決手段】排気濾過装置において、逆流クリーニング後においても堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように成形された少なくとも1つのePTFE層76をもつ濾過体を配置し、堆積粒状物に水銀を吸着させることにより排気中の水銀を除去し、これにより水銀吸着除去のための吸着剤、例えば、活性炭の使用量を大幅に削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に空気濾過、特に優れたフライアッシュ及び/又は水銀排出制御を実現する空気濾過に関する。
【背景技術】
【0002】
空気フィルターは、公知であり、石炭火力ボイラーなどの燃焼装置に付随する濾過配置内に用いられる。空気フィルターは、燃焼排気からフライアッシュなどの粒状物質を濾過することができる。
【0003】
ある種の燃焼燃料、例えば石炭は水銀を含有することが知られている。燃焼装置から出、空気フィルターを通り抜ける水銀の量を制御することが望ましい。
【0004】
ある公知のフィルターは空気濾過時に水銀を捕捉するのに十分な能力を有する。また、水銀を捕捉して燃焼排気から水銀を除去する効率を上げるために、アッシュ除去処理の前に活性炭などの吸着剤を燃焼排気ガス中に添加したり、別のアッシュ除去処理を追加することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5505766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃焼排気ガスから除去したフライアッシュは価値をもつ商品であることが知られている。例えば、フライアッシュはセメント製造プロセスで利用することができる。したがって、燃焼装置を備える事業(発電施設)は追加収入源としてフライアッシュを販売することが多い。しかし、水銀制御用吸着剤の存在はフライアッシュの価値に影響を与える傾向がある。一般に水銀の排出を改善することも望ましい。したがって、フライアッシュを生じる燃焼生成物の取扱いや処理の改良及び/又は水銀制御への配慮が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記の発明の概要は、本発明のいくつかの態様を基本的に理解するためのものである。この概要は本発明の包括的全体図ではない。さらに、この概要は、本発明の必須の構成要素を特定するものでも、本発明の範囲を定めるものでもない。この概要は後述する詳細な説明の序文として、本発明のいくつかの概念を単純化した形で示すことを目的としているだけである。
【0008】
1つの態様では、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供する。本システムは、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように構成された少なくとも1つのePTFEの層を有する濾過配置を備える。本システムは、上記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状により濾過配置上に堆積させる配置を備える。
【0009】
別の態様では、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去方法を提供する。本方法では、少なくとも1つのePTFEの層を設け、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように上記ePTFE層を成形することにより濾過配置を設ける。本方法では、上記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状により濾過配置上に堆積させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上記その他の態様は添付図面を参照して以下の説明を読むことで、当業者に明らかになるであろう。
【図1】本発明の少なくとも1つの態様を組み入れた濾過システムの例の線図である。
【図2】図1のシステムのフィルターカートリッジの1例の側面図であり、本発明の少なくとも1つの態様の幾何形状を示す。
【図3】図2の線3−3に沿ったフィルターカートリッジの拡大断面図であり、本発明の少なくとも1つの態様のフィルターカートリッジ上のフライアッシュ及び/又は活性炭の堆積を示す。
【図4】図3の線4−4に沿ったフィルターカートリッジの拡大断面図であり、本発明の少なくとも1つの態様のフィルターカートリッジのePTFE層上のフライアッシュ及び/又は活性炭の堆積を示す。
【図5】図4の5で示す丸で囲んだ領域に相当するフィルターカートリッジのePTFE層の一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つ以上の態様を組み入れた実施形態の例を図に示し、説明する。これら図示の例は本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1つ以上の態様は別の実施形態及び別の種類の装置にも使用することができる。さらに、いくつかの用語は、本明細書で便宜的に用いられているだけであり、本発明の限定と解釈すべきでない。またさらに、図面において、同じ要素には同じ参照番号を用いる。
【0012】
図1に燃焼排気を処理するシステム10、特に燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去を実現するシステム10を模式的に示す。燃焼源からの燃焼排気は粒状物質を含有する。したがって、燃焼自体及び燃焼排気の方向が少なくとも若干の粒状物質をもたらすような機構であるとみなされる。図示例は、燃焼排気から粒子を濾過する濾過配置12を備える。粒子は通常フライアッシュと呼ばれる物質を含有する。普通、フライアッシュの質量平均粒径は10〜20μm程度である。
【0013】
図示例では、濾過配置12はバッグハウス(baghouse)14を有する。バッグハウス14は、密閉ハウジング16により画成することができ、汚染空気プレナム18及び浄化空気プレナム20の2つのセクションに分けることができる。汚染空気プレナム18及び浄化空気プレナム20は、互いに流体連通しており、壁、仕切りなどの管板(tubesheet)22により分離できる。汚染空気プレナム18は、汚染空気入口26と流体連通しており、流れが汚染空気入口26を通してバッグハウス14に入る。したがって、最低でも、汚染空気入口26は、少なくとも一部の粒状物質を濾過配置12中に供給/導入する配置の一部である。浄化空気プレナム20は、浄化空気出口28と流体連通しており、濾過後の空気が浄化空気出口28を通してバッグハウス14から出る。
【0014】
汚染空気プレナム18と浄化空気プレナム20は、管板22に形成した1つ又は2つ以上の円形開口部を介して流体連通になるように配置することができる。それぞれの開口部は、フィルターカートリッジ30を受け入れ、保持する寸法にできる。フィルターカートリッジ30を管板22に挿入することを示すのに、2つのフィルターカートリッジ30を管板から持ち上げてある。管板22は管板からの空気の通過を防ぐ。その代わりに、空気はフィルターカートリッジ30を通って汚染空気プレナム18から浄化空気プレナム20に移動することができる。なお、バッグハウス14は変更することができ、この例を本発明の限定と解釈すべきでない。特に、フィルターカートリッジを示すが、本発明の1つの態様の別の種類のフィルターを用いてもよい。また、フィルターカートリッジ30を6つだけ示すが、濾過配置12は、任意の数(即ち、1つ又は2つ以上)のフィルターカートリッジ30を有することができる。
【0015】
例示のフィルターカートリッジ30は通常、細長く、実質的に垂直状態で(例えば、長手方向軸に対して)互いに平行に配置できる。フィルターカートリッジ30は、空気を濾過して燃焼排気から粒状物質、おそらくフライアッシュなどを除去することができる。
【0016】
図2及び図3に示すように、フィルターカートリッジ30の代表的な例は、本発明の1つの態様の濾過材40を有する。図示例では、濾材40を内側コア42(図3)の周囲に配置する。内側コア42は、フィルターカートリッジ30内部に形成された細長い中心通路44を画成する。中心通路は中心軸46に沿って細長い。内側コア42は、異なる金属材料、例えば鉄鋼、チタンなどから製造でき、フィルターカートリッジ30を支持するのに十分な堅さにすることができる。内側コア42は、表面に開口部があり、内側コアを通って空気が通過できる。例えば、内側コア42は、複数の穿孔、開口、穴などがあり、空気を内側コアの外部から中心通路44に通過させる。
【0017】
図示例(図2及び図3)では、濾材40は、内側コア42を取り囲む管として配置され、複数のプリーツ48を有する。プリーツ48は、中心軸46に平行に細長く、中心軸46に近づいたり、離れたりするジグザグパターンで延在する。プリーツ折れ目の間のセグメントは本質的に平らなセグメントである。濾材40は内表面52及び外表面54を有する。この実施形態では、内表面52の一部がプリーツ48の半径方向内向きの範囲で内側コアに係合及び/又は隣接する。
【0018】
図示例では、フィルターカートリッジ30は、濾材40を所定の位置に保持及び/又は固定するのに用いる1つ又は2つ以上の保持ストラップ58を有する。このような保持ストラップは、高い引張強さをもついくつかの材料、例えば押出ポリマー、ポリエステル織物、金属、耐熱布などを含有することができる。また、このような保持ストラップは、濾材の周囲のいくつかの場所、例えばフィルターカートリッジの底部と頂部の中心位置に固定することができる。同様に、2つ以上の保持ストラップを設けて濾材を固定することができ、図示例では、2つの保持ストラップを用いる。なお、別の構造がフィルターカートリッジ30上に存在してもよい。
【0019】
フィルターカートリッジ30は、フィルターカートリッジの片端部又は両端部に1つ又は2つ以上のエンドキャップ62、64(上部及び下部)を有することができる。エンドキャップ62、64は、フィルターカートリッジの片端部からの空気の通過を可能にするか、防止するように働き、流れが濾材40のみを通ることを確実にして濾過プロセスを助けることができる。当業者に明らかであるように、エンドキャップは、剛性の部材、シール材などとすることができる。また、この例では、下部エンドキャップ64は完全に閉塞でき、一方、上部エンドキャップ62は、外周部をシールでき、中心で開口して空気が中心通路44から外に流れるのを可能にする。
【0020】
図4に本発明の1つの態様による複合材料濾材40の特定の例を示す。濾材40は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜(メンブレン)の層76を有する。なお、ePTFE膜層76は、濾材の別の構造物又は層により支持できる。例えば、濾材は濾材基体層70を有することができる。濾材基体層70は種々の材料及び/又は構成を含むことができる。例えば、濾材基体層70は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ガラス繊維などの材料を含有することができる。また、例えば、濾材基体層70は1つの単一材料層、複数材料層及び/又は他の構造を有することができる。なお、濾材基体層70が本発明で限定される必要はない。
【0021】
なお、濾材基体層70は濾材40に剛性をもたらす。このような剛性は濾材40をある形状に成形し、成形した形状を保持することを可能にする。特に、濾材40は、図2及び図3に示すようにプリーツ状に成形し、その形状に保持できる。
【0022】
再び図4を参照すると、ePTFE膜層76は、複合材料濾材40の「汚染」側に位置する。したがって、濾材40の外表面54はePTFE膜層76に位置し、濾材の内表面は濾材基体層70に位置する。熱貼り合せ、接着貼り合せにより濾材基体層70にePTFE膜層76を貼り合わせることができる。ePTFE膜層76は濾材基体層70に比べ非常に薄い層である。また、ePTFE膜層76はそれだけでは(即ち、濾材基体層70に貼り合せていない場合)、ほとんど又は全く剛性がない。
【0023】
前述のとおり、複合材料濾材はほぼ管状形状に成形され、いくつかのプリーツを有することができる。プリーツの内表面を内側コアに隣接して位置させ、一方、外表面を保持ストラップに隣接して位置させることができる。複合材料濾材は、剛性であり、形状(即ち、円柱状)を保持する。
【0024】
図5に示すように、ePTFE膜層76はほぼ開放した微孔質構成をもつ。ePTFE材料の細孔(ポア)80は微細孔である。ePTFE基体は、フィブリル82が延伸し、ノード84を互いに連結する微細構造を有する(数個だけをそれぞれ参照番号82、84で表示する)。フィブリル82及びノード(結節)84が細孔80を画成する。ある例では、細孔80は直径0.01μm〜10μmの範囲とすることができる。
【0025】
図3及び図4を再び参照すると、ある量の粒状物質100が濾材40の外表面54、特に濾材のePTFE膜層76上に堆積しているのがわかる。なお、粒状物質100は燃焼排気からのフライアッシュを含有することができる。しかし、他の粒状物質がePTFE膜層76上に存在してもよい。図3では、フィルターカートリッジ30のプリーツ48が与える幾何形状が粒状物質100の堆積の場所を提供する。したがって、ePTFE膜層76は、堆積粒状物質100の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように成形される。
【0026】
ePTFE膜層76の存在と、幾何形状(例えば、プリーツ48)による粒状物質100の存在とが相まって、燃焼排気中の水銀の優れた捕獲を実現する。特に、燃焼排気中の水銀は通常、元素水銀である。このような元素水銀はある従来のタイプのフィルター配置を通過することが可能である。しかし、燃焼排気は通常、塩酸(HCl)も含有する。ePTFE膜層76の特定構造(例えば、フィブリル82及びノード84が画成する微細孔)は、燃焼排気中の塩酸を捕集するのに適当な表面積を与えると考えられる。さらに、塩酸は元素水銀を酸化して塩化第二水銀にすることができると考えられる。
【0027】
さらに、幾何形状(例えば、プリーツ48)による粒状物質100の存在が、生成した塩化第二水銀を捕獲する物質をもたらすと考えられる。したがって、濾過配置12により捕捉される水銀の全量は比較的多い。図1の例は、濾過配置12の汚染空気プレナム18内に堆積する粒状物質100’の典型的な堆積を示す。
【0028】
なお、燃焼排気中の水銀を捕獲する従来の方法には、燃焼排気中に吸着剤を導入する方法がある。吸着剤は、水銀を吸収又は捕獲することができる活性炭とすることが多い。
【0029】
図1に示すシステムの例を再び参照すると、所望に応じて、吸着剤202(例えば、活性炭)を導入する配置200を設けることがわかる。明確を期すと、吸着剤202としてのこのような活性炭の導入、即ち投入は任意である。任意の配置200は流れ中の粒状物質の少なくとも一部を堆積させる配置の一部になることができると考えられる。このような配置200の例には、吸着剤(例えば、炭素)を保持する貯蔵ユニット、計量/搬送部品及び同様か相当する部品がある。これらは燃焼排気中に吸着剤を導入する手段の例である。
【0030】
一般に、燃焼排気への活性炭202の導入、即ち投入により、確かに、水銀の捕獲を助けるという利益を得る可能性がある。しかし、このような吸着剤202の導入は何らかの結果をもたらす。特に、導入された活性炭202は、濾過配置12により捕獲されるフライアッシュと混ざり合う。なお、フライアッシュは燃焼排気の濾過の副生成物として価値がある。例えば、フライアッシュはセメント製造に使用するために販売できる。しかし、フライアッシュ中に活性炭が存在すると、結果として、フライアッシュはこのようなセメント製造での使用に望ましくなくなることがある。したがって、活性炭の使用は、フライアッシュの捕集及び販売から生じる収入を低減するという結果になることがある。さらに、活性炭自体の取得コストがある。活性炭の総コストは活性炭の使用量に比例することは容易に理解される。
【0031】
また、活性炭は任意の配置200から粒子として導入される。一般に、活性炭の粒子はフライアッシュの粒子の寸法より小さい寸法をもつ。なお、ePTFE膜層76が存在しない場合、活性炭は濾材基体層70へ浸透し濾材基体層70を閉塞するという問題を引き起こすことがある。しかし、本発明の1つの態様では、ePTFE膜層76は、どちらの粒状物質100(例えば、活性炭(存在する場合)又はフライアッシュ)もePTFE膜層76中に過度の浸透をさせない。対照的に、粒状物質100(例えば、フライアッシュ及び/又は活性炭)はePTFE膜層76の外表面54に大部分が残留し、ePTFE膜層に有意に埋め込まれることはない。特に、粒状物質100(例えば、フライアッシュ及び/又は活性炭)は大きすぎてePTFE膜層76の細孔に有意に浸透することはできない。膜層の細孔が粒子より小さいからである。
【0032】
このようにePTFE膜層76中への有意な浸透を防止することは、フィルターカートリッジの濾材40上の粒状物質100のケーク化に対処するか、ケーク化を軽減できる点で有益である。例えば、図1に示す例を再び参照すると、任意の公知の逆流配置300が模式的に示されているのがわかる。このような配置300は、流体(例えば、空気)302を逆流方向(濾過配置を通って進む燃焼排気からの流れに対して「逆」方向)に供給する能力をもつ。逆流の流体302は、堆積した(例えば、ケーク化した)粒状物質(例えば、フライアッシュ及び/又は活性炭)をフィルターカートリッジ30からはがし、除去することができる。フィルターカートリッジ30からこのように除去した「ケーク」は、その後、参照番号100’で示すように汚染空気プレナム18の底に堆積する。このような配置300の例には、圧縮機、圧縮空気タンク、空気誘導部品及び同様/関連構造がある。これらは、逆流を濾過配置中に導入して堆積粒状物質を除去する手段の例である。
【0033】
「ケーク化」粒子を除去しても、フィルターカートリッジ30の幾何形状(例えば、プリーツ48など)は、逆流クリーニング後に、濾材40、特にePTFE膜層76上に少なくとも一部の粒状物質を残留させる構成である。前述したように、このように粒状物質を存在させることが水銀を効果的に捕獲するプロセスの一部と考えられる。特に、粒状物質がePTFE膜層76のフィブリル及びノードの表面で生成した塩化第二水銀を捕獲すると考えられている。したがって、ePTFE膜層76の幾何形状は、塩化第二水銀を捕集するために、逆流クリーニング後でも少なくとも一部の粒状物質100を保持するように機能すると考えられる。
【0034】
前述したように、活性炭吸着剤202の導入は任意である。任意の炭素の投入量は、排気中のに存在する水銀の体積及び/又は所望の水銀捕獲量(%)に基づいて検討及び調整できる。一般に、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状(例えば、プリーツ48)を有するePTFEの層76を設ける本発明の態様は、炭素導入無しで水銀の約75〜80%を捕獲することができると考えられる。1例では、約78%の水銀が炭素導入無しで捕獲された。活性炭投入量を増加方向に調整すると、一層多量の水銀が捕獲された。1例では、0.3ポンド(lbs)/mmacfの活性炭導入割合により87%の水銀捕獲、0.6lbs/mmacfの活性炭導入割合により92%の水銀捕獲及び2.0lbs/mmacfの活性炭導入割合により96%水銀捕獲が記録された。
【0035】
本発明は非常に効果的に水銀を捕獲できるので、(例えば、任意配置200からの)吸着剤の導入は、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より80%以上少ない吸着剤の導入割合で行うことができると考えられる。さらに、本発明は非常に効果的に水銀を捕獲できるので、(例えば、任意の配置200からの)吸着剤の導入は、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より90%以上少ない吸着剤の導入割合で行うことができると考えられる。さらに、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持するように構成された幾何形状をもつePTFE膜層76は、水銀に関して十分に効果的にすることができるので、活性炭吸着剤202を供給する任意の配置200を必要としない(即ち、任意である)と考えられる。
【0036】
前述のように、活性炭の存在が販売の見込みがあるフライアッシュの品質を低下させるおそれがある。したがって、任意の予備フライアッシュ処理配置400を設けて販売に適したフライアッシュをより大量に得ようとすることも可能である。このような任意の配置400の1例を図1の例に示す。具体的には、任意の予備フライアッシュ処理配置400は燃焼排気が濾過配置12に進入する前に燃焼源から燃焼排気を受け取るように示されている。任意の予備フライアッシュ処理配置400には、いくつかの種類の構造部品、例えば電気集塵器及び/又は第1段階フィルター又は他の同様な構造が含まれる。これらは、濾過配置12の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置12に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質100を除去する、予備手段400の例と考えられる。
【0037】
なお、バッグハウス内で捕獲、堆積される粒状物質、例えばフライアッシュ及び/又は活性炭(存在する場合)は、通常、任意の予備フライアッシュ処理配置400により堆積されるフライアッシュに比べ水銀の割合が高い。また、濾過配置12内で水銀を捕獲するのを助けるための投入物として活性炭を用いた場合、濾過配置12内の粒子堆積100’は活性炭を含有する。何度か述べたように、このような堆積100’は再び販売するのに望ましくない。しかし、この粒子堆積100’は、任意の予備フライアッシュ処理配置400で堆積させることができるフライアッシュから見た場合の全体の粒子堆積に対して比較的少ない部分にすることが可能である。したがって、有益な副生成物であるフライアッシュを得ることができる。
【0038】
要約すれば、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去方法を提供することができる。本方法では、少なくとも1つのePTFEの層を設け、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように上記ePTFE層を成形することにより濾過配置を設ける。本方法では、上記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状により濾過配置上に堆積させる。
【0039】
本方法ではさらに、濾過配置に逆流を導入して堆積粒状物質を除去し、上記ePTFE層は逆流時にePTFE層の幾何形状により堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する。本方法は、燃焼排気中に吸着剤を導入しない、特に吸着剤として活性炭を燃焼排気に導入しないという選択肢を含む。本方法では、濾過配置で燃焼排気から水銀を捕獲するために燃焼排気中に吸着剤を導入してもよい。しかし、本方法では、吸着剤の導入の割合を、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より80%以上、おそらく90%以上少なくすることができる。本方法では、濾過配置の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質を除去する予備手段を設けることができる。
【0040】
さらに要約すれば、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供することができる。本システムは、堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する幾何形状をもつように成形された少なくとも1つのePTFEの層を有する濾過配置を備える。本システムは、上記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状により濾過配置上に堆積させる配置を備える。
【0041】
本システムはさらに、濾過配置に逆流を導入して堆積粒状物質を除去する手段を備え、上記ePTFE層の幾何形状が逆流時に堆積粒状物質の少なくとも一部を保持するようにもできる。本システムはまた、活性炭などの吸着剤を燃焼排気に導入する手段を備えなくてもよい。本システムは、濾過配置の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質を除去する予備手段を備えることができる。本システムは、濾過配置で燃焼排気から水銀を捕獲するために燃焼排気中に吸着剤を導入する手段を備えることができる。吸着剤を導入する手段は、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より80%以上、おそらく90%以上少ない導入割合で吸着剤を供給する手段にすることができる。本システムはさらに、濾過配置の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質を除去する予備手段を備えることができる。
【0042】
以上、本発明をその実施形態について説明した。本明細書を読み、理解することで種々の変更及び改変を当業者が想起することができる。本発明の1つ以上の態様を取り込んだ実施形態は、特許請求の範囲に入るかぎり、このような変更及び改変のすべてを含むものとする。
【符号の説明】
【0043】
10 水銀除去システム
12 濾過配置
14 バッグハウス
16 密閉ハウジング
18 汚染空気プレナム
20 浄化空気プレナム
22 管板
26 汚染空気入口
28 浄化空気出口
30 フィルターカートリッジ
40 濾材
42 内側コア
44 中心通路
46 中心軸
48 プリーツ
52 内表面
54 外表面
58 保持ストラップ
62、64 エンドキャップ
70 濾材基体層
76 ePTFE層
80 細孔
82 フィブリル
84 ノード
100 粒状物質
202 吸着剤
302 逆流の流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排気を含有する流れから水銀を除去するにあたり、
少なくとも1つのePTFEの層(76)を設け、堆積粒状物質(100)の少なくとも一部を保持する幾何形状(48)をもつように前記ePTFEの層(76)を成形する工程を含む、濾過配置(12)を設ける工程と、
前記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状(48)により濾過配置(12)上に堆積させる工程とを含む、
優れた水銀除去方法。
【請求項2】
さらに、逆流(302)を濾過配置(12)に導入して堆積粒状物質を除去する工程を含み、幾何形状(48)を有する前記ePTFE層(76)は逆流(302)時にその幾何形状により堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃焼排気中に吸着剤を導入する工程を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
燃焼排気中に吸着剤として活性炭を導入する工程を含まない、請求項3記載の方法。
【請求項5】
濾過配置(12)で燃焼排気から水銀を捕獲するために、燃焼排気中に吸着剤(202)を導入する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
吸着剤(202)の導入割合が、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より80%以上少ない、請求項5記載の方法。
【請求項7】
吸着剤(202)の導入割合が、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より90%以上少ない、請求項6記載の方法。
【請求項8】
濾過配置(12)の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置(12)に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質を除去する予備手段(400)を設ける工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
燃焼排気を含有する流れから水銀を除去するシステム(10)であって、
堆積粒状物質(100)の少なくとも一部を保持する幾何形状(48)をもつように成形された少なくとも1つのePTFEの層(76)を有する濾過配置(12)と、
前記流れ中の粒状物質の少なくとも一部を幾何形状(48)により濾過配置(12)上に堆積(100)させる配置(例えば、26及び/又は200)とを備える、
改良水銀除去システム(10)。
【請求項10】
さらに、逆流(302)を濾過配置(12)に導入して堆積粒状物質を除去する手段を備え、前記ePTFE層(76)の幾何形状(48)が逆流(302)時に堆積粒状物質の少なくとも一部を保持する、請求項9記載のシステム(10)。
【請求項11】
燃焼排気中に吸着剤を導入する手段を含まない、請求項9記載のシステム(10)。
【請求項12】
燃焼排気中に吸着剤として活性炭を導入する手段を含まない、請求項11記載のシステム(10)。
【請求項13】
濾過配置(12)の上流に位置し、燃焼排気が濾過配置(12)に進入する前に燃焼排気から少なくとも一部の粒状物質を除去する予備手段(400)を備える、請求項9記載のシステム(10)。
【請求項14】
濾過配置(12)で燃焼排気から水銀を捕獲するために燃焼排気中に吸着剤(202)を導入する手段(200)を備える、請求項9記載のシステム(10)。
【請求項15】
吸着剤(202)を導入する前記手段(200)が、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より80%以上少ない導入割合で吸着剤(202)を供給する、請求項14記載のシステム(10)。
【請求項16】
吸着剤(202)を導入する前記手段(200)が、幾何形状構成をもたないePTFE層で燃焼排気から対応する量の水銀を捕獲するのに必要な吸着剤の導入割合より90%以上少ない導入割合で吸着剤(202)を供給する、請求項15記載のシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223759(P2012−223759A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−91492(P2012−91492)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】