説明

研削方法

【課題】被加工物が硬質材からなる場合においても加工時間を短縮することができる研削方法を提供する。
【解決手段】被加工物10に対して透過性を有するレーザー光線31bを照射することで被加工物10の研削仕上げ厚みTに至らない裏面101側に脆弱層102a等を形成し、その後、研削砥石を有する研削手段を用いて脆弱層102a等が形成された被加工物10の裏面101を研削仕上げ厚みTまで研削して薄化する。被加工物10の裏面101側に脆弱層102a等を形成した後に研削を行うようにしたため、硬質材からなる被加工物10の研削が容易となり、従来よりも研削に要する時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材からなる被加工物の裏面を研削する研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばLED(Light Emitting Diode)の製造工程では、インゴットから切り出されたサファイアや炭化ケイ素等の基板に対して研削装置を用いた研削や研磨装置を用いた研磨といった加工を施すことにより、結晶成長用基板が形成され、結晶成長用基板にエピタキシャル成長によって窒化ガリウム(GaN)等からなる発光層が形成される。
【0003】
これらサファイアや炭化ケイ素等、硬質材からなる被加工物の研削に使用される研削装置としては、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒をガラスや樹脂、金属等で固めて構成される研削砥石を含む研削手段を備えた研削装置が広く使用されている(例えば特許文献1参照)。このような研削装置では、保持テーブルに保持された被加工物の裏面(被研削面)に研削砥石を当接させつつ、保持テーブルと研削砥石とをそれぞれ回転させながら互いに近接する方向へ相対的に研削送りすることで、被研削面の研削が遂行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−222986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被加工物がサファイア、炭化ケイ素、石英ガラス、窒化ガリウム等、硬質材からなる場合には、研削に非常に時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたもので、その目的は、被加工物が硬質材からなる場合においても加工時間を短縮することができる研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬質材からなる被加工物の裏面を研削する方法に関するもので、被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射することで被加工物の研削仕上げ厚みに至らない裏面側に脆弱層を形成するステップと、研削砥石を有する研削手段を用いて脆弱層が形成された被加工物の裏面を研削仕上げ厚みまで研削して薄化するステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、被加工物の裏面側に脆弱層を形成した後に研削を行うようにしたため、硬質材からなる被加工物の研削が容易となり、従来よりも研削に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】レーザー加工装置を用いて脆弱層を形成する状態を示す斜視図である。
【図2】被加工物の内部に脆弱層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図3】被加工物の内部に複数の脆弱層を形成する状態を略示的に示す断面図である。
【図4】被加工物の裏面を研削する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)脆弱層形成ステップ
図1に示すレーザ加工装置1は、被加工物を保持する保持手段2と、保持手段2に保持された被加工物にレーザー光線を照射して加工を行うレーザー加工手段3とを備えており、保持手段2と加工手段3とは水平方向(X方向及びY方向)に相対移動可能となっている。図1の例では、保持手段2がX方向に可動であり、レーザー加工手段3がY方向に可動である構成となっている。
【0011】
レーザー加工手段3は、被加工物の加工すべき位置を撮像して検出する撮像手段30と、レーザー光線を下方に出射するレーザーヘッド31とを備えている。一方、保持手段2においては、表面100側が保持され、被研削面である裏面101が露出した状態で、硬質材からなる被加工物10が保持される。硬質材からなる被加工物10としては、例えば、サファイア、炭化ケイ素、石英ガラス、窒化ガリウムなどがある。
【0012】
脆弱層形成ステップでは、まず、被加工物10の端部の上方にレーザーヘッド31を位置付ける。例えば、被加工物10に形成されたオリエンテーションフラット10aの延長線上にレーザーヘッド31が位置するようにする。
【0013】
そして、保持手段2をX方向に移動させるとともに、レーザーヘッド31から、被加工物10に対して透過性を有するレーザー光線を出射し、例えば図2に示すように、被加工物10の内部にそのレーザー光線31aを集光し照射する。そうすると、被加工物10の内部のレーザー光線が集光された部分には、X方向に沿って脆弱層102aが形成される。レーザー光線31aとして、マルチビームレーザーを使用してもよい。
【0014】
レーザー光線31aの集光位置(脆弱層102aが形成される厚み方向の位置)は、被加工物10の表面100を基準として仕上がり厚みTまでに至らない位置である。脆弱層102aは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態となったためにレーザー光線の照射前よりも脆弱となった改質層であり、例えば、溶融処理領域、クラック領域や絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。
【0015】
保持手段2の一度のX方向の送りで一直線状の脆弱層が形成された後は、レーザー加工手段3を少しずつY方向に送りながら、図1に示したように、同様の深さに脆弱層102aを順次形成していく。このようにして、被加工物10内部のほぼ一定の深さに脆弱層102aが一面にわたって形成される。なお、脆弱層102aは、必ずしもある深さの全面に形成することを要せず、水平方向に隙間がある状態で形成してもよい。
【0016】
つぎに、図3に示すように、レーザー光線31bを脆弱層100aよりも上の位置に集光し、前記と同様の方法により一面に脆弱層102b、102c、102dを順次形成していく。図3の例では、脆弱層102a、102b、102c、102dが隙間なく形成されているが、厚み方向に隣り合う脆弱層の間に隙間があってもよい。また、最上部の脆弱層は、裏面101上に露出していてもよいし、内部にあってもよい。脆弱層の数も任意であり、後の研削ステップにおける研削量及び被加工物10の硬度等に応じて適宜定めることができる。
【0017】
(2)研削ステップ
図4に示す研削装置4は、被加工物を保持して回転可能な保持テーブル40と、保持テーブル40に保持された被加工物を研削する研削手段41とを備えており、脆弱層形成ステップによって内部に脆弱層が形成された被加工物10は、次に、表面100が研削装置4の保持テーブル40に保持され、裏面101が露出した状態となる。
【0018】
研削手段41は、鉛直方向の軸心を有する回転可能なスピンドル410の下端にマウント411を介して研削ホイール412が装着されて構成されており、研削ホイール412の下面には円弧上に複数の研削砥石413が固着されている。
【0019】
このように構成される研削装置4においては、被加工物10を保持した保持テーブル40を矢印Aの方向に回転させるとともに、スピンドル410を矢印Bの方向に回転させ、その状態で研削手段41を降下させ、回転する研削砥石413を被加工物10の裏面101に接触させて押圧することにとり、裏面101を研削する。このとき、研削砥石413の回転軌道が被加工物10の回転中心を通るようにする。こうして裏面101の研削を行うことにより、被加工物が薄化される。そして、図2及び図3に示した研削仕上げ厚みTまで研削が行われた時点で研削を終了する。
【0020】
研削ステップでは、被加工物10の裏面101側に脆弱層が形成されているため、研削による薄化が進行しやすく、脆弱層を形成せずに研削を行う場合と比べて研削に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0021】
1:レーザー加工装置
2:保持手段
3:加工手段
30:撮像手段 31:レーザーヘッド 31a:レーザー光線
4:研削装置
40:保持テーブル
41:研削手段
410:スピンドル 411:マウント 412:研削ホイール 413:研削砥石
10:被加工物 100:表面 101:裏面
10a:オリエンテーションフラット
102a、102b、102c、102d:脆弱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材からなる被加工物の裏面を研削する方法であって、
被加工物に対して透過性を有するレーザー光線を照射することで、被加工物の研削仕上げ厚みに至らない裏面側に脆弱層を形成するステップと、
研削砥石を有する研削手段を用いて該脆弱層が形成された被加工物の裏面を研削仕上げ厚みまで研削して薄化するステップと
を備える研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51069(P2012−51069A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195565(P2010−195565)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】