説明

研削装置

【課題】表面に凸部が形成されたウェーハであっても、研削前の保持テーブルへの吸引保持が行われていることを確認することができる研削装置を提供する。
【解決手段】ウェーハ(ワーク)1の内側1bに対応する部分を吸着する内部吸引部22と、内部吸引部22を囲繞しウェーハ1の外側1aを吸着する外部吸引部23と、内部吸引部22に吸引力を発生させた際の圧力を測定する圧力測定器24とを有する保持テーブル21とする。保持テーブル21にウェーハ1を設置した後、内部吸引部22および外部吸引部23に吸引力を発生させる前に、内部吸引部22のみに吸引力を発生させ、圧力測定器24により測定される圧力が所定の閾値の負圧を検出した際は研削可能と判定し、該所定の閾値の負圧を検出しない場合は研削不能と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の板状物を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、ICやLSI等による多数の電子回路が表面に形成された半導体ウェーハは、チップに分割される前に裏面が研削装置によって研削され、所定の厚さに薄化されている。半導体ウェーハの裏面研削を行う研削装置としては、ワークの着脱領域と加工領域に沿って回転可能に配設されたターンテーブルと、該ターンテーブルに配設されて順次加工領域に移動させられ、ワークを負圧作用で吸引保持する複数の保持テーブルと、加工領域に配設され、該加工領域に位置付けられた保持テーブル上に保持したワークの裏面を研削する研削ホイールを備えた加工手段とを有するものが知られている(特許文献1等参照)。裏面が研削されるワークは、表面側が保持テーブルに吸引保持されるが、電子回路を保護するために表面には保護テープが貼着される。したがってワークは保護テープを介して保持テーブルに吸引保持される。
【0003】
この種の研削装置にあっては、保持テーブル上にワークを設置した後、ワークの研削を開始する前にワークを保持テーブルに吸引して吸引力を発生させている圧力を測定し、測定した圧力が所定の閾値まで下がっているか否かを監視することが行われている。この監視作業によって測定した圧力が閾値を下回らない場合には、保持テーブルのワーク吸着面の全面にワーク(厳密には保護テープ)が吸着されておらず空気漏れが起こり、したがってワークが正常に設置されていないと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−86048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、保護テープが貼着されている表面に例えば電極(バンプ)などの凸部が突出して形成されているワークの場合には、裏面を研削する最中においてはワーク全体が保持テーブルに押し付けられるため、保護テープの全面が保持テーブルに密着してワークは正常に保持される。しかしながら、ワークの表面に貼着された保護テープは、通常状態にあっては凸部が形成されている内側の方が凸部が形成されていない外側の方よりも凸部の影響で厚みがある。このため、保護テープを介してワークを保持テーブルに載せて設置すると、保護テープの外側(凸部が形成されていない部分)の表面が保持テーブルに当接せず隙間が空くことになる。
【0006】
ここで、保持テーブルが、該隙間に対向する部分も空気を吸引する吸着面となっていると、ワーク全体が保持テーブルに押し付けられていない研削の開始前においてワークを吸引した際に、その隙間により空気漏れが起こり、このため吸引力を発生させる圧力が十分に下がらないことになってワークの設置状態を確認することができなくなるという問題が起こっていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、表面に凸部が形成されたワークであっても、研削前の保持テーブルへの吸引保持が行われていることを確認することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研削装置は、ワークの表面側に貼着された保護テープを介してワークを吸引保持する保持テーブルと、該保持テーブルを制御する制御部と、を有する保持手段と、該保持テーブルに保持されたワークの裏面側を研削加工する加工手段と、を有する研削装置であって、前記保持テーブルは、ワークの内側に対応する部分を吸着する内部吸引部と、該内部吸引部を囲繞しワークの外側を吸着する外部吸引部と、該内部吸引部に吸引力を発生させた際の圧力を測定する圧力測定器と、を有し、前記制御部は、前記保持テーブルの前記内部吸引部および前記外部吸引部に吸引力を発生させる前に、該内部吸引部に吸引力を発生させて所定の閾値の負圧を検出した際は研削可能と判定し、該所定の閾値の負圧を検出しない場合は研削不能と判定し、研削可能と判定した際は、該内部吸引部および該外部吸引部に吸引力を発生させて該保持テーブル上のワーク全体を保持し研削を開始することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、保持テーブルに設置されるワークは、内側が保持テーブルの内部吸引部に吸引保持され、外側が保持テーブルの外部吸引部に吸引保持され、この状態で加工手段により裏面側が研削される。本発明では、ワークの内側に上記凸部が形成され、これによって保持テーブルに設置された際に保護テープにおけるワークの外側への貼着部分が外部吸引部から離れて隙間が生じる場合でも、保護テープにおけるワークの内側への貼着部分が内部吸引部に密着する。このため、研削を開始する前において保持テーブルの内部吸引部のみに吸引力を発生させて圧力測定器により圧力を測定することにより、吸引力が十分に発生していることを確認することができる。保護テープにおけるワークの外側への貼着部分が外部吸引部から離れていても、外部吸引部には吸引力を発生させていないため空気漏れという現象は起こらない。
【0010】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコン、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等からなる半導体ウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、板状金属や樹脂の延性材料、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの平坦度(TTV:total thickness variation−ワークの被研削面を基準として厚さ方向に測定した高さのワークの被研削面全面における最大値と最小値の差)が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面に凸部が形成されたワークであっても、研削前の保持テーブルへの吸引保持が行われていることを確認することができる研削装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】裏面に保護テープが貼着された半導体ウェーハの(a)全体側面図、(b)一部拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る研削装置の斜視図である。
【図3】同装置において加工位置に位置付けられたワークと加工手段の位置関係を示す平面図である。
【図4】同装置が具備する保持テーブルの斜視図である。
【図5】ワークを保持テーブルに保持する直前の状態を示す一部拡大断面図である。
【図6】保持テーブルの内部吸引部のみに吸引力を発生させてワークの内側のみを保持テーブルに保持させている状態を示す一部拡大断面図である。
【図7】保持テーブルの内部吸引部と外部吸引部の双方に吸引力を発生させてワーク全体を保持テーブルに保持させている状態を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)半導体ウェーハ
図1(a)の符号1は、一実施形態のワークである円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハと略称)を示している。このウェーハ1の表面1Aには、図1(b)に示すようにICやLSIからなる電子回路を有する多数のデバイス2が形成されている。各デバイス2の表面には複数の凸部3が突出して形成されている。これら凸部3は、バンプと呼ばれる電極である。凸部3は、図1(c)に示すウェーハ1における表面1Aの円環状の外側1aを残した円形状の内側1bの領域(二点鎖線の内側)に形成されている(図1(c)ではデバイス2および凸部3を図示略)。
【0014】
ウェーハ1の厚さは例えば700μm程度であり、裏面1Bが研削されて目的厚さ(例えば100μm程度)に薄化される。そして薄化されたウェーハ1は、多数のデバイス2(半導体チップ)に分割される。ウェーハ1の裏面1Bを研削する際には、デバイス2の電子回路や凸部3を保護するために、表面1Aに保護テープ5が貼着される。保護テープ5は、ウェーハ1の表面1A全面を覆う円形状のものである。
【0015】
図1(b)に示すように、保護テープ5は、ポリエチレン等の合成樹脂からなる基材5aの片面に粘着層5bが形成されたもので、粘着層5bをウェーハ1の表面1Aに合わせて貼着される。ウェーハ1の表面1Aから突出する凸部3は、保護テープ5の粘着層5b内に埋没した状態となる。そして保護テープ5は、凸部3が形成されている内側1bの方が凸部3が形成されていない外側1aの方よりも凸部3の影響で厚みがあり、内側1bと外側1aとではギャップdが生じる。ウェーハ1は、このように表面1Aに保護テープ5が貼着された状態で、図2に示す一実施形態に係る研削装置10によって裏面1Bが研削されて薄化処理される。
【0016】
(2)研削装置の概要
図2および図3により、研削装置10の基本的な構成および動作を説明する。この研削装置10では、ウェーハ1が真空チャック式の保持テーブル21上に裏面1Bを上方に露出した状態で水平に保持され、裏面1Bが加工手段30により研削される。研削のための動作は、制御部25により制御される。
【0017】
図2の符号11は、X方向に長い直方体状の装置台である。この装置台11には、矩形状のテーブルベース12がX方向に移動可能に設けられており、このテーブルベース12に、保持手段20を構成する円板状の保持テーブル21がZ方向(鉛直方向)を回転軸方向として回転可能に支持されている。ウェーハ1は、保持テーブル21の直径と同等の直径を有するものとされる。
【0018】
保持テーブル21は、図2においてテーブルベース12がX方向に移動することにより、手前側(X1側)の搬入出位置から奥側(X2側)の加工位置の間を往復移動する。装置台11にはテーブルベース12をX方向に移動させる移動機構が設けられており、テーブルベース12には保持テーブル21を回転させる回転駆動機構が設けられている(いずれも図示略)。テーブルベース12の移動方向の両側には、テーブルベース12の移動路を覆って研削屑等が装置台11内に落下することを防ぐ伸縮自在な蛇腹状のカバー13が設けられている。
【0019】
ウェーハ1は、オペレータにより、搬入出位置に位置付けられた保持テーブル21上に保護テープ5を介して同心状に載せて設置される。そして保持テーブル21が真空運転され、吸引力が発生した保持テーブル21にウェーハ1が吸引保持される。次いで、テーブルベース12が図2においてX2方向に移動し、ウェーハ1が加工位置に位置付けられて上方の加工手段30に対向配置させられる。
【0020】
図2に示すように、加工手段30は、装置台11の後端部(X2側の端部)に立設されたコラム13の前面側に配設されている。コラム13の前面には、一対のZ軸ガイド14を介してスライダ15がZ方向に沿って昇降可能に取り付けられており、このスライダ15に、加工手段30が固定されている。
【0021】
加工手段30は、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング31内にスピンドルシャフト32が同軸的、かつ回転自在に組み込まれ、該スピンドルシャフト32の下端に設けられたフランジ状のホイールマウント33に研削ホイール34が着脱自在に固定された構成のものである。スピンドルハウジング31の上端部にはモータ部35が設けられており、このモータ部35によってスピンドルシャフト32が回転駆動される。
【0022】
研削ホイール34は、ホイールマウント33の下面に着脱可能に固定される円環状の基台部341と、基台部341の下面の外周部に円環状に並べて固着された多数の砥石342とを有している。砥石342はワークすなわちウェーハ1に応じたものが用いられ、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めて成形したダイヤモンド砥石等が用いられる。研削ホイール34は、モータ部35によってスピンドルシャフト32と一体に回転駆動される。
【0023】
加工手段30は、ホイールマウント33が下方に配されて軸方向がZ方向と平行な状態で、スピンドルハウジング31がホルダ36を介してスライダ15に固定されている。スライダ15は、一対のZ軸ガイド14間に配設されてスライダ15に螺合した状態で連結されたZ方向に延びるボールねじ371と、ボールねじ371を回転駆動するサーボモータ372とを備えた加工送り手段37によって昇降駆動される。したがって、加工手段30は加工送り手段37によってスライダ15と一体に昇降する。
【0024】
上記加工位置に位置付けられたウェーハ1は、上方に露出させられた裏面1Bが加工手段30によって研削され、目的厚さに薄化される。加工手段30による研削は、モータ部35を作動させて研削ホイール34を回転させながら、かつ保持テーブル21を一方向に回転させてウェーハ1を自転させながら、加工送り手段37によりスライダ15とともに加工手段30を下降させ、回転する研削ホイール34の砥石342をウェーハ1の裏面1Bに当接させることによりなされる。
【0025】
図3は、加工位置に位置付けられた保持テーブル21上のウェーハ1と研削ホイール34の水平方向における位置関係を示している。同図に示すように、研削ホイール34の研削外径(砥石342の回転軌跡の最外径)は、ウェーハ1の直径と同程度に設定される。また、ウェーハ1の加工位置は、砥石342の下面である刃先が、自転するウェーハ1の回転中心を通過する位置に設定される。そして、保持テーブル21を一方向に回転させてウェーハ1を自転させながら研削ホイール34の砥石342をウェーハ1の裏面1Bに当接させることにより、裏面1B全面が研削される。
【0026】
研削中のウェーハ1の厚さは、図示せぬ厚さ測定手段で測定される。加工送り手段37による加工手段30の加工送り動作は、該厚さ測定手段で逐一測定される厚さ測定値に基づいて制御される。そして、厚さ測定値が目的値になったら加工手段30が上昇して砥石342がウェーハ1から離れ、研削が終了となる。研削終了後は、テーブルベース12が図2のX1方向に移動してウェーハ1が搬入出位置まで戻され、かつ保持テーブル21の回転が停止する。そして、保持テーブル21によるウェーハ1の吸引保持が解除される。この後、ウェーハ1はオペレータにより保持テーブル21上から搬出され、次の工程に移される。
【0027】
以上が研削装置10の基本的な構成および動作であるが、この研削装置10においては、はじめに保持テーブル21上にウェーハ1を設置した際には、ウェーハ1が保持テーブル21上に正常に設置されているか否かを監視する作業が行われる。以下に、その監視のための保持テーブル21を含む保持手段20の構成および動作を説明する。
【0028】
(3)保持手段
保持テーブル21は、図4に示すように、多孔質セラミックからなる内部吸引部22および内部吸引部22を囲繞する外部吸引部23と、内部吸引部22内の圧力を測定する圧力測定器24とを備えている。内部吸引部22は円板状で、直径はウェーハ1の凸部3が形成された領域である内側1bの直径と同等の寸法である。この内部吸引部22の周囲に、円環状の仕切り211を隔てて円環状の外部吸引部23が配設されている。そして外部吸引部23は、ウェーハ1の直径と同等の直径を有する円環状の外枠体212で囲まれている。
【0029】
ウェーハ1は、平面に形成された保持テーブル21の上面に同心状に設置され、その設置状態で、内側1bが内部吸引部22に対応し、外側1aが外部吸引部23に対応した状態となる。各吸引部22,23は、空気吸引通路を介して空気吸引源に連通されている(いずれも図示略)。空気吸引源を作動させると各吸引部22,23内の空気が吸引されて上面が負圧となり、吸引力が発生する。該空気吸引路には、内部吸引部22のみに吸引力を発生させたり、内部吸引部22と外部吸引部23の双方に吸引力を発生させたりすることができる弁装置が設けられている。
【0030】
圧力測定器24は、内部吸引部22に吸引力を発生させた際の圧力(負圧)を測定するものである。この圧力測定器24で測定された圧力の測定値は制御部25に供給される。制御部25は、内部吸引部22の圧力に対する所定の閾値を保有しており、圧力測定器24から供給された内部吸引部22の圧力をその閾値と比較し、比較した結果に基づいて保持テーブル21を制御する。閾値は、ウェーハ1を十分に吸引保持して裏面1Bの研削を確実に遂行することができる負圧とされ、例えば−80kPa程度とされる。本実施形態では、保持手段20は保持テーブル21と制御部25とを含む構成であり、以下、制御部25による保持テーブル21の制御に関して説明する。
【0031】
(4)制御部による保持テーブルの制御
ウェーハ1は、図5に示すように、保持テーブル21の直上に同心状、かつ水平に位置付けられてから矢印のように下ろされて図6に示すように保持テーブル21の上面に設置される。ここで、上述の如く凸部3の影響で保護テープ5におけるウェーハ1の外側1aへの貼着部分の厚みが内側1bへの貼着部分よりも薄くなっていることから、保持テーブル21に設置されたウェーハ1においては図6に示すように、保護テープ5の外側1aへの貼着部分の表面が保持テーブル21に当接せず、上記dに相当する隙間が空くことになる。これに対し保護テープ5の内側1bへの貼着部分の表面は、仕切り211内の内部吸引部22の上面全面に密着した状態となる。保持テーブル21にウェーハ1を設置したら、保持テーブル21は制御部25により以下のように制御される。
【0032】
まず、内部吸引部22のみに吸引力を発生させる(一次吸引動作)。また、圧力測定器24により内部吸引部22に吸引力を発生させている圧力(負圧)を測定する。内部吸引部22に吸引力が発生することにより、ウェーハ1の内側1bが内部吸引部22に吸引保持される。内部吸引部22においては、上面全面に保護テープ5におけるウェーハ1の内側1bへの貼着部分が密着して塞がっているため空気漏れは起こらず、十分な吸引力で内側1bは保護テープ5を介して内部吸引部22に吸引保持される。なお、この一次吸引動作の際に保持テーブル21上に水を供給すると、水の表面張力により保護テープ5による内部吸引部22の上面の密閉性が上がり、圧力の検出がさらに行いやすくなる。
【0033】
内部吸引部22に吸引力が発生すると、圧力測定器24の測定値は下がる。そして所定の閾値の負圧が検出されると、制御部25により研削可能と判定される。このときには、ウェーハ1の内側1bが正常に保持テーブル21に設置されている。なお、保護テープ5におけるウェーハ1の外側1aへの貼着部分は保持テーブル21の外部吸引部23から離れているが、外部吸引部23には吸引力を発生させていないため空気漏れという現象は起こらない。
【0034】
研削可能と判定されたら、ウェーハ1を上記加工位置に移動させて加工手段30により裏面1Bの研削を開始する。研削の際には、下方に加工送りされる加工手段30によってウェーハ1全体が保持テーブル21に押し付けられるため、保護テープ5におけるウェーハ1の外側1aへの貼着部分の外部吸引部23への密着性が上がる。したがって研削を開始した後には、制御部25は内部吸引部22とともに外部吸引部23にも吸引力を発生させる(二次吸引動作)。これにより図7に示すように、保護テープ5におけるウェーハ1の外側1aへの貼着部分が外部吸引部23に吸引されて密着し、したがってウェーハ1全体が保護テープ5を介して保持テーブル21上に吸引保持される。研削が進むにつれウェーハ1の裏面1Bは研削され、図7に示すように薄化される。
【0035】
上記一次吸引動作の際に、圧力測定器24で測定される圧力が所定の閾値の負圧を検出しない場合、制御部25は研削不能と判定する。研削不能と判定すると、ウェーハ1を加工位置に移動させず、内部吸引部22に吸引力を発生させる真空運転を停止させる。この時に警告音を発するなど研削不能である旨を周囲に報知する手段を設けることは、好ましい形態である。研削不能と判定された場合には、例えばウェーハ1の設置位置がずれていて内部吸引部22の上面全面が内側1bで覆われていなかったり、設置位置は正しくても保護テープ5と内部吸引部22との間に異物が挟まっていたりしてウェーハ1が正常に設置されておらず、空気漏れが起こって十分な負圧が発生していないということである。そこで研削不能の判定後は、保持テーブル21に対するウェーハ1の設置状態を確認し、改めて正常に設置し直すなどの処置を行う。
【0036】
本実施形態によれば、表面1Aに凸部3が形成されており、これによって表面1Aに貼着されている保護テープ5の、外側1aへの貼着部分の厚みが凸部3を覆っている内側1bへの貼着部分よりも薄くなっており、保持テーブル21に設置した状態で外側1aにおいて空気漏れが起こるウェーハ1でも、まず上記一次吸引動作で内側1bのみを内部吸引部22で吸引することにより、研削前のウェーハ1が保持テーブル21に吸引保持されていることを確認することができる。その結果、空気漏れが生じていてウェーハ1が保持テーブル21に正常に設置していないといった誤った判定をすることが防止される。
【符号の説明】
【0037】
1…ウェーハ(ワーク)
1A…ウェーハの表面
1B…ウェーハの裏面
5…保護テープ
10…研削装置
20…保持手段
21…保持テーブル
22…内部吸引部
23…外部吸引部
24…圧力測定器
25…制御部
30…加工手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面側に貼着された保護テープを介してワークを吸引保持する保持テーブルと、該保持テーブルを制御する制御部と、を有する保持手段と、
該保持テーブルに保持されたワークの裏面側を研削加工する加工手段と、
を有する研削装置であって、
前記保持テーブルは、
ワークの内側に対応する部分を吸着する内部吸引部と、該内部吸引部を囲繞しワークの外側を吸着する外部吸引部と、該内部吸引部に吸引力を発生させた際の圧力を測定する圧力測定器と、を有し、
前記制御部は、
前記保持テーブルの前記内部吸引部および前記外部吸引部に吸引力を発生させる前に、該内部吸引部に吸引力を発生させて所定の閾値の負圧を検出した際は研削可能と判定し、該所定の閾値の負圧を検出しない場合は研削不能と判定し、
研削可能と判定した際は、該内部吸引部および該外部吸引部に吸引力を発生させて該保持テーブル上のワーク全体を保持し研削を開始する
ことを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20374(P2012−20374A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160300(P2010−160300)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】