説明

硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム及び処理方法

【課題】排ガス中に含まれる硫黄酸化物を中和除去するアンモニアのうち未反応の残留アンモニアを効率的に後処理することができる硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム及び処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム10は、排ガス中の硫酸ミストを捕集する電気集塵手段を備えた硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム10であって、前記電気集塵手段に前記排ガスを導入する前段で前記排ガス中にアンモニアを含有する無機炭酸を供給する無機炭酸供給手段70と、前記電気集塵手段の廃液に含まれる前記アンモニアを微生物で生物処理する廃液処理手段60と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス中の硫酸ミストを電気集塵機で除去する硫黄酸化物を含有する排ガスの処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、重油等を燃料とするボイラー、燃焼炉等で発生する排ガス中には、二酸化硫黄、三酸化硫黄などの硫黄酸化物が含まれている。特に硫黄成分を高濃度に含む重質油燃焼排ガスは、排ガス中のSOの含有率が高くなる。SOは所定温度でミスト化して排ガス処理装置の各種機器及び配管に付着すると、腐食する問題がある。
【0003】
従来の排ガス中の三酸化硫黄を除去する方法として、排ガス中にアンモニアを注入している。アンモニアと三酸化硫黄の中和反応によって、安定した硫酸アンモニウムを発生させて後段の電気集塵機で捕集することができる。
【0004】
硫酸アンモニウムの生成反応は、理論上、SOとアンモニアのモル比が1:2で反応させることができる。しかし、アンモニアの注入量が不足すると化学反応が不完全となり硫酸水素アンモニウムが発生してしまう。硫酸水素アンモニウムは腐食性があり、電気集塵機の放電極等を腐食させる問題がある。
そこでアンモニアの注入量を増やして、硫酸水素アンモニウムの発生を抑制している。
【0005】
特許文献1の排ガスのSO捕集方法は、電気集塵機の上流側において、排ガス中のSOに対してアンモニア水中のアンモニアの量をモル比で2以上とし、かつ排ガス温度が150℃以下となるようにアンモニア水を注入している。このように排ガス中のSOとアンモニアのモル比は、アンモニアが2倍以上と過剰に供給しているが、SOを硫酸アンモニウムの固体状として捕集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−265618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
過剰なアンモニア供給によって排ガス中の硫黄酸化物の中和反応を行うと、硫酸ミストを捕集することができる。しかしながら、SOと過剰なアンモニアによる中和反応に使用されなかった残留(リーク)アンモニアは、乾式電気集塵機の後段から排出される廃水中に含まれる。そのため、中和反応に使用しない残留アンモニアを回収して処理する後処理設備が必要となる。排ガスとともに廃液処理も含めた適切な運転制御が必要である。
【0008】
処理設備は例えばアンモニアストリッピング法又は生物処理法により行われている。このうち生物処理法は、生物反応槽を用いている。生物反応槽には、添加薬剤として無機炭酸の供給手段を設ける必要がある。また設置箇所の省スペース化の要請から処理システム全体の小型化が望まれている。
【0009】
そこで本発明は上記従来技術の問題点を解決するため、排ガス中に含まれるSOを中和除去するアンモニアのうち中和反応に使用されなかった残留(リーク)アンモニアを効率的に後処理することができる硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム及び処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムは、排ガス中の硫酸ミストを捕集する電気集塵手段を備えた硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムであって、前記電気集塵手段に前記排ガスを導入する前段で前記排ガス中にアンモニアを含有する無機炭酸を供給する無機炭酸供給手段と、前記電気集塵手段の廃液に含まれる前記アンモニアを微生物で生物処理する廃液処理手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成により電気集塵手段からの廃液中には無機炭酸が含まれているため廃液手段の生物処理を効率良く行うことができる。また廃液手段に無機炭酸の供給手段を設ける必要がないため、システム全体を小型化して設置箇所の省スペース化を図ることができる。
【0012】
この場合において、前記無機炭酸供給手段は、前記硫酸ミストとアンモニアのモル比が1:2.0〜4.0、好ましくは2.2〜3.0となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給し、前記アンモニアを含有する無機炭酸が供給された排ガス温度を160℃以下にするとよい。
これにより、硫酸ミストの捕集効率を高めることができる。
【0013】
この場合において、前記無機炭酸供給手段は、前記硫酸ミストと前記無機炭酸の重量比が1:0.1〜0.8となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給するとよい。
これにより未反応のアンモニアを効率的に廃液処理手段で後処理することができ、廃液処理手段に新たに無機炭酸供給のための設備を設ける必要がない。
【0014】
この場合において、前記無機炭酸供給手段は、アンモニア水と炭酸水素アンモニア水の混合液を供給するとよい。
これによりアンモニアに対する無機炭酸の供給量を減らすことができる。
【0015】
本発明の排ガス処理方法は、排ガス中の硫酸ミストにアンモニアを供給して電気集塵手段で捕集する硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法であって、前記電気集塵手段に導入する前段でアンモニアを含有する無機炭酸を前記排ガスに供給したことを特徴としている。
【0016】
これにより電気集塵手段からの廃液中に無機炭酸が含まれているため廃液手段の生物処理を効率良く行うことができる。また廃液手段に無機炭酸の供給手段を設ける必要がないため、システム全体を小型化して設置箇所の省スペース化を図ることができる。
【0017】
この場合において、前記硫酸ミストと前記アンモニアのモル比が1:2.0〜4.0、好ましくは2.2〜3.0となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給し、前記アンモニアを含有する無機炭酸が供給された排ガス温度を160℃以下にするとよい。
これにより硫酸ミストの捕集効率を高めることができる。
【0018】
この場合において前記硫酸ミストと前記無機炭酸の重量比が1:0.1〜0.8となるとよい。
これにより未反応のアンモニアを効率的に廃液処理手段で後処理することができ、廃液処理手段に新たに無機炭酸供給のための設備を設ける必要がない。
【0019】
この場合において、前記排ガスにアンモニア水と、アンモニアを含有する無機炭酸の水溶液を供給するとよい。
これによりアンモニアに対する無機炭酸の供給量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成により、排ガス中のSOを除去すると共に、ガス温度を制御することで安定した乾式電気集塵手段の運転を可能とし、さらに無機炭酸(CO32−、HCO3−)が後段から排出される廃水中に予め含まれており、これが生物反応処理に使用されることで、安定した排ガス処理とともに排水処理にかかる薬剤コストの低減化を図ることができる。
【0021】
また廃液手段に硝化反応に必要な無機炭酸の供給手段を取り付ける必要がなく装置全体の小型化が図れるため、設置箇所の省スペース化が望まれる場所に適用することができる。
【0022】
また炭酸水素アンモニウム水溶液を噴霧して、かつ排ガス温度を140℃から160℃に制御することにより、放電極へのSOとアンモニアから生成される硫酸アンモニウムの付着を低減することができる。さらに廃液処理手段において未反応のアンモニアが溶解した廃水の処理に必要な添加薬剤の大幅な削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムの構成概略を示す図である。
【図2】アンモニアガスと炭酸水素アンモニウム水溶液を排ガスに注入したときの電流低下率を示す説明図である。
【図3】注入薬剤の注入量の比較の説明図である。
【図4】放電線とダスト固着の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム及び処理方法の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムの構成概略を示す図である。本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム10は、排ガス中の硫酸ミストを捕集する電気集塵手段を備えた硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム10であって、前記電気集塵手段に前記排ガスを導入する前段で前記排ガス中にアンモニアを含有する無機炭酸を供給する無機炭酸添加手段と、前記電気集塵手段の廃液に含まれる前記アンモニアを微生物で生物処理する廃液処理手段と、を備えている。
【0025】
具体的に本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム10は、図示のようにガスヒーター20と、乾式電気集塵手段30と、湿式脱硫手段40と、湿式電気集塵手段50と、廃液処理手段60と、無機炭酸供給手段70と、を主な基本構成としている。
【0026】
ガスヒーター20は、石油、重油等を燃料とするボイラーから排出された排ガスが導入され、排ガスの温度調整を行う手段である。ガスヒーターは熱交換器を備え、高温の排ガスを熱交換器の熱交換によってガス温度を所定のガス温度に低下させるとともに、熱交換された熱媒体を他の加熱手段に利用している。
【0027】
乾式電気集塵手段30は、放電極及び集塵板を備え、コロナ放電により排ガス中に含有する塵埃などを除去する集塵機である。
湿式脱硫手段40は、排ガス中に含有する二酸化硫黄(SO)を除去する装置である。具体的に湿式脱硫手段は、内部で消石灰や、水酸化マグネシウム等のスラリーを噴霧することにより、排ガス中の二酸化硫黄などの硫黄酸化物を吸収して除去している。
【0028】
湿式電気集塵手段50は、湿式脱硫手段から排出される排ガス中の硫酸ミストや塵埃を捕集して除去する電気集塵手段である。湿式電気集塵手段は、放電極と集塵板が所定間隔を開けて対向するように配置され、集塵板面に散水しながら放電極と集塵板との間に排ガスを導入させてガス中の硫酸ミストや塵埃を負の極性に荷電し、正の極性の集塵板に捕集させて除去することができる。
【0029】
湿式脱硫手段40及び湿式電気集塵手段50は、二酸化硫黄や硫酸ミストなどの捕集物を噴霧によって除去しているため、廃液が生じる。このため湿式脱硫手段40と、湿式電気集塵手段50には廃液を処理する廃液処理手段60が設けられている。
【0030】
また本実施形態の排ガス処理システム10は、排ガスにアンモニアを過剰に注入しているため、未反応のアンモニアが湿式脱硫手段40及び湿式電気集塵手段50の噴霧工程で水中に溶解して廃液中に混入する。
【0031】
廃液処理手段60は、一例として生物反応槽を用いることができる。生物反応はアンモニアから亜硝酸や硝酸を生じる微生物による硝化反応である。生物反応槽は、一例として膜分離槽と、硝化槽と、脱窒槽とから構成されている。膜分離槽ではアンモニアを含有する廃水のダスト分離処理を行っている。硝化槽では硝化菌固定化担体を有し、硝化反応を行っている。脱窒槽では脱窒反応を行っている。
【0032】
無機炭酸供給手段70は、アンモニアを含有する無機炭酸を排ガス中に供給する供給手段である。本実施形態の無機炭酸供給手段70は、ガスヒーター20と乾式電気集塵手段30の間の配管経路に接続している。
【0033】
またアンモニアを含有する無機炭酸は、一例として炭酸アンモニウム((NHCO)、炭酸水素アンモニウム(NHHCO)等を適用することができる。無機炭酸供給手段70はアンモニアを含有する無機炭酸を水溶液として排ガス中に噴霧することにより排ガス中にアンモニアを供給して、硫酸ミストを中和させることができる。
【0034】
上記構成による本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムを用いた排ガス処理方法について以下説明する。
ボイラー(不図示)から排出された排ガスは、ガスヒーター20によって百数十℃まで冷却される。具体的に本実施形態ではガスヒーター20によって排ガスのガス温度を140℃から160℃に調整している。
【0035】
次に温度調整された排ガスに対し、無機炭酸供給手段70からアンモニアを含有する無機炭酸を供給する。具体的に無機炭酸供給手段70は、炭酸水素アンモニウムの水溶液をスプレー等により排ガス中に散布している。また無機炭酸供給手段70は、硫酸ミストとアンモニアのモル比が1:2.8となるように供給している。硫酸ミストの濃度は、例えば重油等の燃料を燃焼したボイラーからの排ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度により予め求めることができる。
【0036】
排ガスのガス温度が140℃から160℃に調整されて、アンモニアを含有する無機炭酸が供給された排ガスは後段の乾式電気集塵手段30に導入される。乾式電気集塵手段30ではコロナ放電によって排ガス中の塵埃を捕集している。
【0037】
次に排ガスが導入された湿式脱硫手段40では、装置内部で消石灰や水酸化マグネシウム等のスラリーが噴霧されて、排ガス中の二酸化硫黄が吸収除去される。
脱硫された排ガスは、湿式電気集塵手段50に導入されて、硫酸ミストや固形成分が除去された後、外部に排出される。
【0038】
無機炭酸供給手段70から供給されるアンモニアを含有する無機炭酸は、硫酸ミストに対してアンモニアのモル比が1:2.8の量を供給し、排ガスのガス温度を140℃から160℃に調整しているため、排ガス中の硫酸ミストから硫酸アンモニウムを効率良く発生させることができる。
【0039】
硫酸ミストの中和反応で未反応のアンモニアは、湿式脱硫手段40及び湿式電気集塵手段50の散布工程で水溶液に溶解して廃液中に混入する。また排ガス中に注入した炭酸水素アンモニウムのうち、無機炭酸(CO32−、HCO3−)は硫酸ミストの中和反応に関与することなく、未反応のアンモニアとともに、湿式脱硫手段40及び湿式電気集塵手段50の散布工程で水溶液に溶解して廃液中に混入する。
【0040】
よって廃液処理手段60に導入された湿式脱硫手段40及び湿式電気集塵手段50からの廃液中には、未反応のアンモニア及び無機炭酸(CO32−、HCO3−)が含まれている。廃液処理手段60では、まず膜分離槽で廃水のダスト分離処理を行っている。次に硝化槽では硝化菌固定化担体を有し、硝化反応を行っている。
【0041】
ここで微生物による硝化反応(1)は一般に以下の反応式で表すことができる。
(化1)
NH+0.103CO+1.86O→0.0182CNO+0.00245CNO+0.979NO+1.98H+0.938HO………(1)
【0042】
硝化細菌の増殖に必要な無機炭酸と処理すべきアンモニア性窒素との重量比は約0.1g−C/g−Nとなる。本実施形態のアンモニアを含有する無機炭酸は、硫酸ミストに対して2.8モルを供給している。このうち、硫酸ミストの中和反応に用いられるアンモニアの理論モル比は、2モルであり、0.8モルが未反応のアンモニアとなる。これに対して無機炭酸(CO32−、HCO3−)は2.8モルがそのまま廃液に含まれていることになる。本実施形態の無機炭酸供給手段は、硫酸ミストと無機炭酸の重量比が1:0.1〜0.8となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給するように構成している。従って、廃液中には、未反応のアンモニアに対して充分な無機炭酸が含まれているため、廃液処理手段60には、硝化反応に必要な無機炭酸を供給する必要がない。次いで脱窒槽では脱窒反応を行っている。
【0043】
図2は、アンモニアガスと炭酸水素アンモニウム水溶液を排ガスに注入したときの電流低下率を示す説明図である。グラフの縦軸は電気集塵手段の電流低下率(%)を示し、電気集塵機の稼動初期を100%としている。横軸は経過日数(日)を示している。また丸プロットは排ガスのガス温度が155℃で炭酸水素アンモニウム水溶液を排ガス中に注入した場合であり、四角プロットは排ガスのガス温度が170℃でアンモニアガスを排ガス中に注入した場合である。排ガスのガス温度が170℃でアンモニアガスを注入した場合、電流低下率は経過日数60日で60%、経過日数100で約50%まで低下してしまう。これは、排ガスに注入したアンモニアガスと硫酸ミストの中和反応により硫酸水素アンモニウムが発生し、放電線に付着してしまう。付着した硫酸水素アンモニウムは、槌打手段によって除去することができない。このため放電線が肥大して、電流低下率が低下してしまうと考えられる。
【0044】
一方、排ガスのガス温度を150℃で炭酸水素アンモニウム水溶液を注入した場合、電気低下率は経過日数が100日経過した後であっても、略90%を維持している。これは排ガスに注入したアンモニアガスと硫酸ミストの中和反応により硫酸アンモニウムが発生し、放電線に付着しても、槌打手段によって容易に除去することができる。このため放電線が肥大することなく、電流が低下することがないと考えられる。また排ガスのガス温度が160℃以下でも同様の効果が得られている。そこで本発明では、排ガスのガス温度を160℃以下に設定している。
【0045】
図3は注入薬剤の注入量の比較の説明図である。グラフの縦軸は使用試薬比を示し、横軸は、アンモニア添加量、無機炭酸添加量、総添加試薬量を示している。またAは排ガスのガス温度が170℃でアンモニアガスを注入した場合であり、Bは排ガスのガス温度が155℃で炭酸水素アンモニウム水溶液を注入した場合である。まず、排ガス中に注入するアンモニア添加量は、アンモニアガスを100%とした場合、炭酸水素アンモニウムは約50%の添加量にすることができる。これは排ガス温度が高温の場合、アンモニアが過剰に存在しないと硫酸水素アンモニウムが発生してしまうため、アンモニアの使用量が増加するためである。
【0046】
また無機炭酸添加量は、アンモニウムガスの場合には廃液処理手段で硝化反応に必要な無機炭酸を添加しなければならない。一方、炭酸水素アンモニウム水溶液の場合には、廃液中に硝化反応に必要な無機炭酸が混入しているため、無機炭酸を新たに注入する必要がない。
次に上記結果から総添加試薬量は、アンモニアガスを100%とした場合、炭酸水素アンモニウム水溶液を用いた場合には使用試薬比を約30%に抑えることができる。
【0047】
図4は放電線とダスト固着の影響を示すグラフである。なおグラフ中の横軸は温度(℃)、縦軸はNH/SOモル比をそれぞれ示している。また破線以下は放電線に付着したダストの全体固化を示し、実線以上は放電線に付着したダストの固化が生じない状態を示している。実線と破線の間は、放電線に付着したダストの内部のみ固化してその表面は槌打によって落下する状態を示している。
【0048】
モル比2.0以下では硫酸アンモニウムを生成することができない。また図4に示すように、ガス温度150℃から160℃のときモル比が3.0以下であればダストが固着することがない。またガス温度150℃から160℃でモル比2.0では若干のダスト固着が発生する。そこで本発明の無機炭酸供給手段は、硫酸ミストとアンモニアのモル比が1:2.0〜4.0、好ましくは2.2〜3.0となるアンモニアを含有する無機炭酸を供給するように構成している。
【0049】
なお硫酸ミストとアンモニアのモル比が1:2.8とすると、未反応のアンモニアに対して無機炭酸が過剰に存在することになる。このため無機炭酸供給手段70が排ガスに注入する無機炭酸にアンモニア水を混入させて注入するようにしても良い。これにより無機炭酸の使用量を任意に設定変更することができ、使用量を低減することができる。
【0050】
このような本実施形態の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム及び処理方法によれば、ガス中のSOを除去すると共に、ガス温度を140℃から160℃に制御することで安定した乾式電気集塵手段の運転を可能とし、さらに炭酸イオンが後段から排出される排水の生物処理に使用されることで、安定した排ガス処理とともに排水処理にかかる薬剤コストの低減化を図ることができる。
【0051】
また廃液手段に硝化反応に必要な無機炭酸の供給手段を取り付ける必要がなく装置全体の小型化が図れるため、設置箇所の省スペース化が望まれる場所に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10………排ガス処理システム、20………ガスヒーター、30………乾式電気集塵手段、40………湿式脱硫手段、50………湿式電気集塵手段、60………廃液処理手段、70………無機炭酸供給手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の硫酸ミストを捕集する電気集塵手段を備えた硫黄酸化物を含有する排ガス処理システムであって、
前記電気集塵手段に前記排ガスを導入する前段で前記排ガス中にアンモニアを含有する無機炭酸を供給する無機炭酸供給手段と、
前記電気集塵手段の廃液に含まれる前記アンモニアを微生物で生物処理する廃液処理手段と、
を備えたことを特徴とする硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム。
【請求項2】
前記無機炭酸供給手段は、前記硫酸ミストとアンモニアのモル比が1:2.0〜4.0、好ましくは2.2〜3.0となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給し、前記アンモニアを含有する無機炭酸が供給された排ガス温度を160℃以下にすることを特徴とする請求項1に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム。
【請求項3】
前記無機炭酸供給手段は、前記硫酸ミストと前記無機炭酸の重量比が1:0.1〜0.8となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給することを特徴とする請求項1に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム。
【請求項4】
前記無機炭酸供給手段は、アンモニア水と炭酸水素アンモニア水の混合液を供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理システム。
【請求項5】
排ガス中の硫酸ミストにアンモニアを供給して電気集塵手段で捕集する硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法であって、
前記電気集塵手段に導入する前段でアンモニアを含有する無機炭酸を排ガスに供給したことを特徴とする硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法。
【請求項6】
前記硫酸ミストと前記アンモニアのモル比が1:2.0〜4.0、好ましくは2.2〜3.0となる前記アンモニアを含有する無機炭酸を供給し、前記アンモニアを含有する無機炭酸が供給された排ガス温度を160℃以下にすることを特徴とする請求項5に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法。
【請求項7】
前記硫酸ミストと前記無機炭酸の重量比が1:0.1〜0.8となることを特徴とする請求項5に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法。
【請求項8】
前記排ガスにアンモニア水と、アンモニアを含有する無機炭酸の水溶液を供給することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の硫黄酸化物を含有する排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223718(P2012−223718A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94411(P2011−94411)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】