説明

硬化性組成物

本発明は、反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体を用いた硬化性組成物の塗布作業性や強度、接着性、意匠性を低下させることなく表面タックを改善することを目的とする。解決手段の一態様として、(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体100重量部、(B)シランカップリング剤0.1〜20重量部、(C)エポキシ基含有化合物0.1〜80重量部、(D)3級アミン0.1〜60重量部、(E)融点20℃以上の1級または2級アミン0.1〜30重量部からなることを特徴とする硬化性組成物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用途や土木用途、工業用途等におけるシール材、コーティング材、接着剤、注入材、コンクリート等の表面処理材、パテ材、制振材、防音材等に有用な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を有するポリオキシアルキレン系重合体を用いた室温硬化性組成物は、その取り扱いの容易さや適度な硬化性、幅広い温度領域での硬化物のゴム弾性、被着体との良好な密着性等により、従来はエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂が使用されていた建築用途や土木用途、工業用途等において、シール材やコーティング材、接着剤、注入材、コンクリート等の表面処理材、パテ材、制振材、防音材等として幅広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を用いた硬化性組成物は、表面が硬化した後も表面がベトついた状態が長時間続く為、塗工後、塵や埃が付着したりし表面が汚れてしまうことが問題であった。
【0004】
こうした反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体を用いた組成物の表面タックに関し、融点が10〜200℃のアミン、アミド、アルコール、脂肪酸エステルを添加する改善方法が提案されているが(特許文献2)、いずれも効果が不十分であったり、強度が低下したり被着体との接着性が低下してしまう等の問題があった。
【0005】
さらに、上記改良剤は添加量が少ないとタックが消失するのに長時間を要し、また添加量を増やすとその時間は短縮されるが硬化物表面に多量の白粉(炭酸化物)が析出し意匠性が低下する等の問題があった。
【特許文献1】特許第1396791号
【特許文献2】特開平9−100408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体を用いた硬化性組成物の塗布作業性や強度、接着性、意匠性を低下させることなく塗工後の表面タックを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する為に本発明者らが鋭意検討した結果、以下の成分、即ち反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体、シランカップリング剤、エポキシ基含有化合物、3級アミン、融点20℃以上の1級または2級アミン、場合によっては水を含有する硬化性組成物を使用することにより、上記課題を改善できることを見出し、本発明に到達するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体100重量部、(B)シランカップリング剤0.1〜20重量部、(C)エポキシ基含有化合物0.1〜80重量部、(D)3級アミン0.1〜60重量部、(E)融点20℃以上の1級または2級アミン0.1〜30重量部からなることを特徴とする硬化性組成物に関する。
【0009】
また、さらに、(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体x重量部、(B)シランカップリング剤0.1〜20重量部、(D)3級アミン0.1〜60重量部、(E)融点20℃以上の1級または2級アミン0.1〜30重量部を含有するA剤(ただし、0<x≦100)と、(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体100−x重量部、(C)エポキシ基含有化合物0.1〜80重量部、(F)水0.1〜5重量部を含有するB剤からなることを特徴とする2液型硬化性組成物に関する。
【0010】
好ましくは、上記組成物の粘度は23℃で50Pa・s以上200Pa・s以下であり、構造粘性指数は4.0以上10以下である。
【0011】
また、好ましくは、さらに(G)無機充填材50〜300重量部を含有する。
【0012】
また、(E)成分としては1級アミンが好ましい。
【0013】
さらに、一実施態様として、本発明は上記の硬化性組成物からなるコーティング材を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
塗布作業性や強度、接着性、意匠性を低下させることなく塗工後の表面タックが改善された硬化性組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明に使用される(A)成分の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体の反応性ケイ素基としては、特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと一般式(1)で表わされる基が挙げられる。
−Si(R3−a)X (1)
(Rは炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基または炭素数7から20のアラルキル基を示し、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは1、2または3を示す。)
上記Xの例としては水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられるが、加水分解性が穏やかで取り扱い易いという点からメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0017】
この水酸基や加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、反応性ケイ素基中に2個以上存在する場合には、それらは同一であっても異なっていても良い。
【0018】
上記一般式(1)におけるRの具体例としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。Rとしてはメチル基が特に好ましい。
【0019】
本発明に使用される(A)成分のポリオキシプロピレン系重合体の主鎖構造は、−CH(CH)CH−O−で示される構造を繰り返し単位とする重合体であるが、これ以外にも−CHCH−O−、−CH(C)CH−O−、−C(CHCH−O−、−CHCHCHCH−O−といった繰り返し単位との共重合体であっても良い。更に、主鎖中に分岐構造を有していても良い。
【0020】
(A)成分のポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、例えば開始剤と触媒の存在下、モノエポキシドを開環重合することによって得られる。
【0021】
開始剤としては1価のアルコールや2価アルコール、多価アルコール、水酸基を有する各種のオリゴマー等が挙げられ、モノエポキシドとしては、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類やブチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;アリルグリシジルエーテル類;アリールグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、触媒としてはKOH、NaOH等のアルカリ触媒、トリフルオロボラン−エーテラート等の酸性触媒、アルミノポルフィリン金属錯体やシアン化コバルト亜鉛−グライム錯体触媒等の複合金属シアン化物錯体触媒等が用いられる。特に、副反応が少ない点からは複合金属シアン化物錯体触媒が好ましいがそれ以外のものであってもよい。
【0022】
この他、ポリオキシプロピレン系重合体の主鎖骨格は、水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体を塩基性化合物、例えばKOH、NaOH、KOCH、NaOCH等の存在下、2官能以上のハロゲン化アルキル、例えばCHCl、CHBr等による鎖延長等によっても得ることができる。また、2官能や3官能のイソシアネート化合物によって水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体を鎖延長する方法等も挙げられる。
【0023】
反応性ケイ素基をポリオキシプロピレン系重合体中に導入する方法としては、例えば、1分子中に一般式(2):
CH=C(R)−R−O− (2)
(式中Rは炭素数1から20の2価の有機基、Rは水素原子または炭素数10以下の炭化水素基)で示される不飽和基を末端に有するポリオキシプロピレン系重合体と、一般式(3):
H−Si(R3−a)X (3)
(式中R,X,aは前記に同じ。)で示される反応性ケイ素基含有化合物とを、VIII族遷移金属触媒の存在下で反応させる方法が好ましい。
【0024】
これ以外にも、水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物との反応や、イソシアネート基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有アミン化合物との反応、イソシアネート基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有メルカプタン化合物との反応等によっても得ることができる。
【0025】
末端に一般式(2)で示される不飽和基を有するポリオキシプロピレン系重合体の製造法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば水酸基末端ポリオキシプロピレン系重合体に不飽和結合を有する化合物を反応させて、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合等により結合させる方法等が挙げられる。例えばエーテル結合により不飽和基を導入する場合は、ポリオキシプロピレン重合体の水酸基末端のメタルオキシ化により−OM(MはNaまたはK等)を生成した後、一般式(4):
CH=−C(R)−R−X (4)
(式中R,Rは前記に同じ。Xはハロゲン原子)で示される不飽和基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0026】
一般式(4)で示される不飽和基含有化合物の具体例としては、CH=CH−CH−Cl、CH=CH−CH−Br、CH=CH−C−Cl、CH=C(CH)−CH−Cl等が挙げられが、反応性の点よりCH=CH−CH−Cl、CH=C(CH)−CH−Clが特に好ましい。
【0027】
不飽和基の導入方法としては、これ以外にCH=CH−CH−基やCH=C(CH)−CH−基等を有するイソシアネート化合物、カルボン酸、エポキシ化合物を用いることもできる。
【0028】
VIII族遷移金属触媒としては、例えば、HPtCl・6HO、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、Ptメタル、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、PdCl・2HO、NiCl等が挙げられるが、ヒドロシリル化の反応性の点から、HPtCl・6HO、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体のいずれかであることが特に好ましい。
【0029】
この様な製造法は、例えば、特許第1396791号、特許第1727750号、特許第2135751号、特許第2995568号等の各公報に記載されている。
【0030】
ポリオキシプロピレン系重合体の分子量には特に制限はないが、GPCにおけるポリスチレン換算での数平均分子量が500から100,000であることが好ましい。更には1,000から70,000であることが、取り扱いの容易さ等の点から好ましい。
【0031】
本発明の(B)成分であるシランカップリング剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシルエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシルメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;アミノ基含有シラン類と各種ケトンとの脱水縮合により得られるケチミン化シラン類;アミノ基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物;メルカプト基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物;アミノ基含有シラン類とエポキシ樹脂との反応物;メルカプト基含有シラン類とエポキシ樹脂との反応物;テトラエトキシシラン、テトラエトキシシラン4量体、テトラエトキシシラン6量体等のエチルシリケート類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン類等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。また、使用量は(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜20重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜10重量部程度の範囲が好ましい。0.1重量部未満では接着性の低下や貯蔵安定性の低下を招き、20重量部を超えると硬化阻害が起こったりするので好ましくない。
【0032】
本発明の(C)成分であるエポキシ基含有化合物としては、従来公知のものを広く使用でき、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂やこれらを水添したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンあるいはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類等が挙げられる。これらのエポキシ基含有化合物は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。これらエポキシ基含有化合物の中では、作業性や硬化性、接着性、接着強度等からエポキシ樹脂が好ましく、更に耐水性、耐久性等からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ基含有化合物は、(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜80重量部程度の範囲、好ましくは1〜60重量部の範囲で使用されるのが良い。0.1重量部未満では接着性や接着強度が不十分となり、80重量部を超えると硬化物の伸びが不十分となる為好ましくない。
【0033】
本発明の(D)成分である3級アミンとしては、従来公知のものを広く使用することができる。例えば、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等の脂肪族アミン類;N,N’−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N´,N´−テトラメチルイソホロンジアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルノルボルナンジアミン、ビス(4−ジメチルアミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ジメチルアミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環族アミン類;N,N,N´,N´−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等の芳香族アミン類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミン類;N−メチルモルホリン等のエーテル結合を有するアミン類;等が挙げられる。これらの3級アミンは、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。これら3級アミンの中では、硬化性や接着性等の物性バランスより、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが好ましい。使用量は、(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜60重量部程度の範囲、好ましくは1〜40重量部程度の範囲が好ましい。0.1重量部未満ではエポキシ樹脂の硬化が不十分となり接着強度や接着性が低下する。また、60重量部を超えると界面へのブリード等が起こって接着性が低下し好ましくない。
【0034】
なお、(D)成分として反応性ケイ素基を含有する3級アミンを使用する場合、得られる硬化物の力学特性が低下する等の恐れがあるので、(D)成分としては反応性ケイ素基を含有しない3級アミンが好ましい。
【0035】
本発明の(E)成分である融点20℃以上の1級または2級アミンとしては、次のようなものが例として挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、(E)成分の融点の上限については特に規定する必要はないが、一般的な数値範囲として200℃以下が挙げられる。このような1級アミンとしては、ラウリルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ノナデシルアミン等の脂肪族系モノアミン類;1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,20−ジアミノエイコサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族系ジアミン類;フェニレンジアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族系ジアミン類を挙げることができる。2級アミンとしては、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン等の脂肪族系モノアミン類等が挙げられる。1級アミンと2級アミンでは、前者の方がより短時間で表面タックが消失する為好ましい。また、1級アミンの中では、タック消失効果やコスト等の点から、セチルアミンやステアリルアミンといった脂肪族系モノアミン類の使用が好ましい。使用量は、(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜30重量部程度の範囲、好ましくは1〜20重量部程度の範囲が好ましい。0.1重量部未満ではタックが消失するのに時間がかかり、また30重量部を超えると白粉が多量に析出したり貯蔵中の粘度上昇が見られたりするので好ましくない。但し、0.1〜30重量部の範囲で使用しても表面には白粉が析出するが、本発明では(C)成分であるエポキシ基含有化合物との併用によりそれが解消され、短時間でのタック消失と意匠性とをバランスさせることが可能となる。
【0036】
尚、(E)成分として反応性ケイ素基を含有する融点が20℃以上の1級または2級アミンを使用する場合、得られる硬化物の力学特性が低下する等の恐れがあるので、(E)成分としては反応性ケイ素基を含有しない融点が20℃以上の1級または2級アミンが好ましい。
【0037】
本発明の(F)成分である水は、(A)成分の硬化過程における加水分解および縮合反応に必要であり、一般的な水道水や工業用水、純水等が用いられる。また、冬場における使用では、凝固点降下作用のある各種塩類やアルコール等を添加することも可能である。添加量は、(A)成分100重量部に対し、通常0.1〜5重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜4重量部の範囲が良い。0.1重量部未満では内部硬化性が不十分となり、5重量部を超えると接着性の低下等が起こり好ましくない。
【0038】
本発明の(G)成分である無機充填材の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、カオリン、タルク、マイカ、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸等)、酸化チタン、珪藻土等が挙げられる。これらの無機充填材は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。特に、作業性やコスト、物性バランス等の点から、重質炭酸カルシウムや膠質炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。使用量は、(A)成分100重量部に対し、通常50〜300重量部程度の範囲、好ましくは70〜200重量部程度の範囲で使用されるのが良い。50重量部未満では組成物の粘度が低下し、糸切れ性が悪くなる為好ましくない。また、300重量部を超えると組成物の粘度が上昇し、作業性が低下する為好ましくない。
【0039】
本発明の硬化性組成物が2液型の場合、(G)成分はA剤とB剤の両方に配合しても良いし、いずれか一方のみに配合しても良い。また、A剤とB剤の両方に配合する場合、各々異なる組成の(G)成分を配合しても良い。これらのいずれの場合であっても、(G)成分は(A)成分の総量(A剤中の(A)成分とB剤中の(A)成分の総量)に対して、通常50〜300重量部程度の範囲、好ましくは70〜200重量部程度の範囲で使用されるのが良い。
【0040】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じ、縮合触媒や可塑剤、チクソ性付与剤、反応性希釈剤、安定剤、着色剤等を添加することができる。
【0041】
縮合触媒の具体例としては、反応性ケイ素基含有重合体の縮合に用いられる従来公知のものを広く使用でき、例えば、ジブチルスズジラウレート、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジアセテート、2−エチルヘキサン酸スズ、ナフテン酸スズ、バーサチック酸スズ、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズオキサイドとマレイン酸エステルとの反応物、ジブチルスズオキサイドとエチルシリケートとの反応物、ジブチルスズビスアセチルアセトナート等の有機スズ化合物類;テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート);オクチル酸亜鉛;オクチルアミン、ラウリルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、あるいはこれらのカルボン酸塩;酸性リン酸エステル;酸性リン酸エステルとアミンの反応物;等のシラノール縮合触媒、更には他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。これら縮合触媒の中では、硬化性や貯蔵安定性、物性バランスの点から、有機錫系化合物が好ましい。特に硬化速度や貯蔵安定性の点より、4価のスズ触媒が好ましい。使用量は、(A)100重量部に対し、通常0.1〜10重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜6重量部の範囲が良い。0.1重量部未満では硬化性が不十分となり、10重量部を超えると接着性の低下等が起こり好ましくない。
【0042】
なお、本発明の硬化性組成物が2液型で、B剤に(A)成分が含有されている場合には、縮合触媒をB剤に配合すると、B剤単独で硬化反応が進むため、縮合触媒はA剤に配合するのが好ましい。
【0043】
可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。可塑剤を用いる場合の使用量は、限定されないが、(A)成分100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、100重量部を越えると硬化物の機械強度が不足し好ましくない。
【0044】
チクソ性付与剤の具体例としては、例えば、ポリアミドワックス類、水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらチクソ性付与剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0045】
本発明の硬化性組成物は、全ての配合成分を予め密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1液型として調製しても良く、(A)成分の内部硬化に必要な水分を予めB剤側に配合しておき、使用直前に(A)成分を含有するA剤と混合する2液型として調整しても良い。2成分型にすると、組成物の内部硬化性が大幅に向上することから、例えば、工場ラインで使用した場合に塗工物を短時間で次工程へ移動させることが可能となる。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、被着体へビード状に塗布しても良いし、スプレーで塗布しても良く、場合によっては流し出したり、ハケ塗りしても良い。また、塗工した後、加熱によって硬化させても良いし、室温下で放置し硬化させても良い。
【0047】
本発明の硬化性組成物の粘度や構造粘性指数については、ビード塗布やスプレー塗布、流し込み、ハケ塗り等種々の塗工形態に合わせて任意に調製することができる。特に、2液型に調整した組成物をスタティックミキサー等で塗布する場合は、粘度が23℃で50Pa・s以上であることがA剤とB剤の混ざり易さの点で好ましく、200Pa・s以下であることが塗布作業性の点から好ましい。また、構造粘性指数は4.0以上であることが組成物のたれ難さの点で好ましく、10以下であることが塗布作業性の点から好ましい。この場合の粘度とは、BH型粘度計での7号ローターによる20rpmでの粘度を指し、また、構造粘性指数とは、2rpmで測定した粘度値を20rpmで測定した粘度値で除した値を指す。更に、本発明の硬化性組成物が2液型の場合は、A剤とB剤を混合した直後の配合物についての測定値を指す。
【0048】
本発明の硬化性組成物を用いる用途は特に限定されず、建築用途や土木用途、工業用途、電子材料用途、医療材料用途等に幅広く使用できる。建築用途においては各種金属パネル・サイジングボード等の外装材の目地用シール材、コーティング材、プライマー等、外装材・下地材・天井材と内装材の間に使用するシール材、接着剤、注入材、制振材、防音材、電磁波遮蔽用導電性材料、パテ材等、外壁材・下地材へのタイル・石材接着用の接着剤、各種床への木質フローリング材・高分子材料系床シート床タイル接着用の接着剤、粘着剤等、各種外装材・内装材のクラック補修用注入材等が挙げられる。土木用途においては、道路・橋梁・トンネル・防波堤・各種コンクリート製品の目地用シール材、コーティング材、プライマー、塗料、注入材、パテ材、型取材、吹付材等が挙げられる。工業用途においては、自動車ボディーのシール材、コーティング材、緩衝材、制振材、防音材、吹付材等、自動車内装用の接着剤、粘着材、コーティング材、発泡材料等、自動車部品のシール材、接着剤等、トラック・バス等の各種鋼板継ぎ目用のシール材、接着剤、コーティング材等が挙げられる。その他用途においては、各種電気・電子製品の部品用接着剤、シール材、太陽電池裏面封止材等の電気・電子部品材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材等の電気絶縁材料、熱伝導性材料、ホットメルト材料、電気電子用ポッティング剤、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材、食品包装材・フィルム・ガスケット各種成形材料・電機部品・各種機械部品等において使用される液状シール剤等の様々な用途が挙げられる。
【実施例】
【0049】
本発明をより一層明らかにする為に、以下具体的な実施例を揚げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(合成例1)
平均分子量約3,000のポリプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、平均分子量12,000のポリオキシプロピレントリオールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。続いて、得られた重合体500gに対しヘキサン10gを加えて90℃で共沸脱水を行い、ヘキサンを減圧下留去した後、窒素置換した。これに対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のキシレン溶液)30μlを加え、撹拌しながら、ジメトキシメチルシラン(DMS)9.25gをゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のDMSを減圧下留去し反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体を得た。得られた重合体のH−NMR分析より、末端への反応性ケイ素基導入率は83%であることを確認した(ポリマーA)。
【0051】
(実施例1〜8および比較例1〜7)
表1に示す組成で配合物を作製し、塗布作業性、表面タック、ダンベル引張り物性、接着性の評価を実施した。
(1)塗布作業性:BH形粘度計を使用し、2rpmと20rpmでの粘度を測定した(7号ローター、温度23℃)。また、2rpmで測定した粘度値を20rpmで測定した粘度値で除し、構造粘性指数を算出した。
判定では、20rpm粘度が200Pa・s以下でかつ構造粘性指数が4.0以上を満足した場合を○、満足しなかった場合を×とした。
(2)表面タック:配合物を突出した後、経時で配合物表面を指で押さえ、タックが消失するまでの時間を測定した(温度23℃、相対湿度50%)。
判定では、タックが30分以内に消失した場合を○、消失しなかった場合を×とした。
(3)意匠性:配合物を突出した後表面を平滑にし、1晩静置した後の白粉の析出状態を観察した(温度23℃、相対湿度50%)。
硬化物表面を指で触り、白粉が付着しなかった場合を○、付着した場合を×とした。
(4)ダンベル引張り物性:厚さ約2mmの配合物シートを作製し、23℃で3日間、50℃で4日間養生した後、JIS K6251に記載の3号形ダンベル試験片を打ち抜き、引張り試験により強度(TB)と伸び(EB)を求めた。引張り速度200mm/分。
(5)接着性:水中へ一晩浸漬したモルタル(70×70×20mm)の表面を拭き取り、配合物をビード状に塗布し、23℃で7日間養生した。この際水位を約10mmに調整して系を密閉し表面の湿潤状態を保持した。養生後、硬化物を引き剥がして接着状態を観察した。
基材側へ硬化物が残った場合を○、残らなかった場合を×とした。
【0052】
配合組成および評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例の硬化性組成物は、塗布作業性や強度、接着性、意匠性が良好でかつ表面タックが短時間で消失したが、比較例の組成物ではそれらのバランスは確保できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体100重量部、
(B)シランカップリング剤0.1〜20重量部、
(C)エポキシ基含有化合物0.1〜80重量部、
(D)3級アミン0.1〜60重量部、
(E)融点20℃以上の1級または2級アミン0.1〜30重量部
からなることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体x重量部、
(B)シランカップリング剤0.1〜20重量部、
(D)3級アミン0.1〜60重量部、
(E)融点20℃以上の1級または2級アミン0.1〜30重量部
を含有するA剤(ただし、0<x≦100)と、
(A)反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体100−x重量部、
(C)エポキシ基含有化合物0.1〜80重量部、
(F)水0.1〜5重量部
を含有するB剤
からなることを特徴とする2液型硬化性組成物。
【請求項3】
組成物の粘度が23℃で50Pa・s以上200Pa・s以下、構造粘性指数が4.0以上10以下であることを特徴とする請求項1または2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(G)無機充填材50〜300重量部
を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(E)成分が1級アミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物からなるコーティング材。

【国際公開番号】WO2005/059000
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516297(P2005−516297)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018350
【国際出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】