説明

硬性鏡

【課題】レンズ支持枠の内部に複数のレンズを簡単に固定でき、しかも各レンズの光軸のずれ量を極めて小さくすることが可能な硬性鏡を提供する。
【解決手段】操作部11と挿入部60の内部に固定した、ねじ孔を備える複数のレンズ支持枠40、62、91と、各レンズ支持枠の内部に配設した、リレーレンズ系の構成要素であり、かつレンズ支持枠の内周面より小径である複数のレンズL2、L3、L4、L5、L6と、同じ周方向位置に位置させた複数の上記ねじ孔に螺合した、その端部で対応する各レンズの周面を押圧し、各レンズをレンズ支持枠の内周面に接触させる複数の調整ねじB2、B4、B6、B8、B9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーレンズ系を内蔵した硬性鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
硬性鏡の従来例としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
この硬性鏡の内部には金属パイプによって構成した複数の鏡枠が固定してあり、各鏡枠の内周面にレンズを固定している。これらのレンズは、硬性鏡の挿入部の先端部に固定した対物レンズと操作部に設けた接眼部の間に位置するリレーレンズ系の構成要素である。
対物レンズを透過した観察像は、リレーレンズ系を通って接眼部に導光されるので、術者は接眼部を通して観察像を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鏡枠の内径とレンズの外径を同じにすると、レンズが鏡枠に挿入できないため、レンズの外径は鏡枠の内径より小径となるように設計するのが一般的である。しかしながら、その場合は鏡枠の内部に固定したときにレンズが傾いたり、挿入しずらくなるという問題が生じる。
さらに、レンズの外径と鏡枠の内径に大きな差が生じる場合は、複数のレンズを鏡枠に固定した際に各レンズ間の光軸位置にずれが生じるおそれが高い。仮にこのような事態になると、レンズが所望の光学性能を発揮できなくなるので、観察像を鮮明に観察できなくなってしまう。特に接眼部の代わりにフルスペックハイビジョン3CCDカメラを取り付けた場合は、得られた観察画像の画質に大きな影響が出てしまう。
しかし、鏡枠の内径を設計値通りに正確に加工するのは難しく、特に鏡枠が(長手寸法が長い)パイプ状のものである場合は寸法公差を抑えるのが難しくなるため、上記の問題が発生し易い。
【0005】
本発明は、レンズ支持枠の内部に複数のレンズを簡単に固定でき、しかも各レンズの光軸のずれ量を極めて小さくすることが可能な硬性鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の硬性鏡は、操作部、及び、該操作部から延びる挿入部と、該挿入部の先端に設けた対物レンズと、上記操作部に設けた、上記対物レンズを透過した像を撮像する撮像手段または該像を観察可能な接眼部と、上記操作部及び挿入部に内蔵した、上記対物レンズを透過した観察像を上記撮像手段または接眼部に導光するリレーレンズ系と、を備える硬性鏡において、上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に上記挿入部の軸線方向に並べて固定した、該軸線を中心とする断面円形の内周面を備える環状部材であり、ねじ孔を備える複数のレンズ支持枠と、各レンズ支持枠の内部に配設した、上記リレーレンズ系の構成要素であり、かつ上記内周面より小径かつ自身の光軸を中心とする回転対称形状である複数のレンズと、同じ周方向位置に位置させた複数の上記ねじ孔に螺合した、その端部で対応する上記レンズの周面を押圧し、該レンズの周面における反対側の部分を上記レンズ支持枠の内周面に接触させる複数の調整ねじと、を備えることを特徴としている。
【0007】
この場合は、上記各レンズ支持枠に、上記光軸方向に離間する複数の上記ねじ孔を同じ周方向位置に位置させて形成し、上記レンズ支持枠の内部の上記各ねじ孔と対応する部分に上記レンズをそれぞれ配設し、複数の上記ねじ孔に上記調整ねじをそれぞれ螺合して、各調整ねじの端部で対応する上記レンズの周面を押圧するのが好ましい。
【0008】
本発明の硬性鏡は、別の態様によると、操作部、及び、該操作部から延びる挿入部と、該挿入部の先端に設けた対物レンズと、上記操作部に設けた、上記対物レンズを透過した像を撮像する撮像手段または該像を観察可能な接眼部と、上記操作部及び挿入部に内蔵した、上記対物レンズを透過した観察像を上記撮像手段または接眼部に導光するリレーレンズ系と、を備える硬性鏡において、上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に固定した、上記挿入部の軸線を中心とする断面円形の内周面を備える環状部材であり、かつ、上記光軸方向に離間すると共に同じ周方向位置に位置する複数のねじ孔を備えるレンズ支持枠と、該レンズ支持枠の内部に配設した、上記リレーレンズ系の構成要素であり、かつ上記内周面より小径かつ自身の光軸を中心とする回転対称形状である複数のレンズと、複数の上記ねじ孔に螺合した、その端部で対応する上記レンズの周面を押圧し、該レンズの周面における反対側の部分を上記レンズ支持枠の内周面に接触させる複数の調整ねじと、を備えることを特徴としている。
【0009】
この場合は、上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に複数の上記レンズ支持枠を同軸状態で固定し、各レンズ支持枠の内部に複数の上記レンズを配設し、複数の上記ねじ孔を同じ周方向位置に位置させた上で、各ねじ孔に上記調整ねじを螺合して、各調整ねじの端部で対応する上記レンズの周面を押圧するのが好ましい。
【0010】
いずれの態様でも、上記調整ねじがその端部に、上記レンズの周面に当接する樹脂部材を具備するのが好ましい。
【0011】
また、上記レンズ支持枠の内部に配設した、該レンズ支持枠の内周面より小径で、かつ、一方の面を上記レンズの表面に接触するレンズ当付環と、該レンズ支持枠の内周面に形成した雌ねじ溝に螺合した、上記レンズ当付環の他方の面を上記レンズ側に押圧するレンズ押さえ環と、を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各レンズをレンズ支持枠の内径より小径としているので、各レンズをレンズ支持枠の内部に簡単に挿入できる。
また、レンズ支持枠に対する各レンズの固定は、調整ねじの端部によってレンズを特定の方向(調整ねじの軸線方向)に押圧し、各レンズの周面における調整ねじと反対側の部分をレンズ支持枠の内周面に接触させることにより行っている。レンズはレンズ支持枠の内径に比べて外径精度が出し易いので、このような方法によって同一外径の複数のレンズをレンズ支持枠に対して固定すれば、各レンズの中心軸(光軸)のずれを極力抑えることが可能である。
【0013】
請求項5のように、調整ねじが樹脂部材を具備する場合は、調整ねじによってレンズの周面が傷つくのを確実に防止できる。
【0014】
請求項6のように、レンズ支持枠の内部で径方向に移動自在なレンズ当付環をレンズの表面に接触させているので、レンズ当付環をレンズの表面に対して(片当たりすることなく)適格に当てることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の硬性鏡の挿入部が直線状態にあるときの側面図である。
【図2】硬性鏡の挿入部が屈曲状態にあるときの側面図である。
【図3】挿入部の縦断側面図である。
【図4】屈曲部及びその周辺部の横断平面図である。
【図5】図3のV−V矢線に沿う断面図である。
【図6】図3のVI−VI矢線に沿う断面図である。
【図7】図6のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】図3のIX−IX矢線に沿う断面図である。
【図10】図3のX−X矢線に沿う断面図である。
【図11】挿入部の先端部と屈曲部の接続部の拡大縦断側面図である。
【図12】図11のXII−XII矢線に沿う断面図である。
【図13】挿入部の外皮チューブを外して示す、直線状態にあるときの先端部と屈曲部の接続部の拡大側面図である。
【図14】挿入部の外皮チューブを外して示す、屈曲状態にあるときの先端部と屈曲部の接続部の拡大側面図である。
【図15】操作部の拡大縦断側面図である。
【図16】図15のXVI−XVI矢線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII矢線に沿う断面図である。
【図18】図15のXVIII−XVIII矢線に沿う断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX矢線に沿う断面図である。
【図20】カム機構の平面図である。
【図21】カム環の展開図である。
【図22】挿入部が直線状態にある親内視鏡の内部管路に挿入部が直線状態にある硬性鏡を挿入した状態を、親内視鏡を断面視して示す側面図である。
【図23】同じく、挿入部が屈曲状態にある親内視鏡の内部管路に挿入部が屈曲状態にある硬性鏡を挿入したときの図23と同様の側面図である。
【図24】患者の腹部に穿けた孔を通して、親内視鏡及び硬性鏡の挿入部を患者の体内に挿入した状態を表す図である。
【図25】親内視鏡及び硬性鏡の挿入部を曲げたときの図24と同様の図である。
【図26】栓部材を取り外し、強制スライド用部材を利用して第1の移動環を強制的にスライドさせる状態を示す、図15と同様の図である。
【図27】第1の変形例の硬性鏡の側面図である。
【図28】第2の変形例の硬性鏡の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1から図26を参照しながら詳しく説明する。
本実施形態の硬性鏡10は、大きな構成要素として操作部11と、その基端部が操作部11の前端部に接続する挿入部60と、を具備している。
先ず、操作部11の詳しい構造について主に図15から図21を利用して説明する。
金属製の略円筒形状部材であるケース12の外周面の前端部には、ケース12の軸線を中心とする環状部材である金属製の第1の調整環(操作手段)14が該軸線回りに回転可能かつ該軸線方向に移動不能として装着してある。この第1の調整環14の内周面には、該軸線を中心とする環状部材であるカム環15が固定してある。カム環15にはその周方向に向かって延びるカム溝16が貫通溝として形成してあり、カム溝16の後側の側面が該周方向に対して傾斜するカム面17となっている。このカム環15は、ケース12の外周面の前端部近傍部に凹設した環状凹部18に回転可能に嵌合している。さらに、ケース12には平面視においてカム溝16と重なる直進案内溝20が、ケース12の軸線方向に延びる貫通長孔として穿設してある。
ケース12の内部空間には、ケース12の軸線を中心とする金属製の環状部材である第1の移動環(移動部材)23が、該軸線方向にスライド可能として収納してある。第1の移動環23の上面には、ケース12の径方向外側に向かって延びる略円柱形状のカムピン24が突設してあり、カムピン24の先端部の外周面には回転リング25が回転可能に嵌合している。図15、図20及び図21に示すように、カムピン24の中間部はケース12の直進案内溝20に嵌合しており(直進案内溝20の両側面に接触している)、回転リング25はカム環15のカム溝16に嵌合している。さらに、図15に示すように、第1の移動環23の前端面とケース12の前端開口部に固定した接続環106の後端面の間には圧縮コイルばねS1が縮接してあるので、第1の移動環23、カムピン24及び回転リング25は常に後方(操作部11の基端側)に向かって移動付勢されている。そのため、図20及び図21に示すように、回転リング25は常にカム溝16のカム面17に接触している。
また、図15、図18及び図19に示すように、第1の移動環23の内周面の前端部にはワイヤ固定部材27が2つの固定ねじB1によって固定してある。このワイヤ固定部材27は後述する操作ワイヤWの後端部を固定状態で支持している。第1の移動環23の下面の後端部近傍部には係合孔28が貫通孔として穿設してある。
ケース12の係合孔28と対応する部分には断面円形の貫通孔31が穿設してあり、この貫通孔31にはゴム製の栓部材33が水密状態で着脱可能に嵌合してある。また、ケース12にはねじ孔34が貫通孔として穿設してある。このねじ孔34には、ケース12の径方向に延びる金属製の第1の固定ねじ(保持手段)35が螺合している。この第1の固定ねじ35の先端は円錐形であり、第1の移動環23に圧接することにより第1の移動環23の位置を保持する。
【0017】
ケース12の内部には第1の移動環23の後方に位置させて、ケース12の軸線を中心とする金属製の筒状部材である第2の移動環40が、その前端部が第1の移動環23の内部に位置する態様で、ケース12の軸線方向にスライド可能として収納してある。
第2の移動環40の内周面は段差のある円筒面であり、その前端部近傍部分及び後端部近傍部分には調整レンズL5と調整レンズL6がそれぞれ設けてある。調整レンズL5及び調整レンズL6は共に自身の光軸を中心とする同一形状の回転対称形状物であり、その外径は第2の移動環40の前端部近傍部及び後端部近傍部の内径より若干小径である。第2の移動環40の前端部近傍部分と後端部近傍部分の上部には共に前後一対のねじ孔が形成してあり、各ねじ孔には固定ねじB2が挿入してある。そして、各固定ねじB2の下端部には樹脂部材(固定ねじB2〜B9の端部には樹脂部材が固定してあるが、図5に開示した固定ねじB6の樹脂部材固定ねじB6a以外は図示略)が固定してあり、この樹脂部材が調整レンズL5と調整レンズL6の上面に当接している。この樹脂部材は調整レンズL5と調整レンズL6を下方に押圧しているので、調整レンズL5及び調整レンズL6の下面は第2の移動環40の内周面の底部に接触している。このように、調整レンズL5及び調整レンズL6を固定ねじB2と第2の移動環40の内周面の底部で挟む込むことにより、調整レンズL5及び調整レンズL6を第2の移動環40に対して固定している。
第2の移動環40の内部の前後方向の中間部は断面略正方形の空間であり、当該空間には略角柱形状のドーブプリズムP2が収納してある。第2の移動環40の中間部の上面部、下面部、及び左右両側部には前後一対のねじ孔が形成してあり、各ねじ孔には固定ねじB3が螺合してある。一方、固定ねじB3に対応するドーブプリズムP2の各面には金属製のカバー板C1が貼り付けてある。そして、各固定ねじB3の先端部がカバーに接触することにより、ドーブプリズムP2を第2の移動環40に対して光軸位置を調整可能として固定している。
【0018】
第2の移動環40の下面の後端部近傍部には、カムピン24と同じ形状のカムピン42が突設してあり、カムピン42の下端部には回転リング25と同じ形状の回転リング43が回転可能に嵌合してある。カムピン42及び回転リング43は、ケース12の下面の後端部近傍部に穿設した直進案内溝20と同じ平面形状である直進案内溝45を貫通しており、カムピン42の基端部(上半部)は直進案内溝45の左右両側面に接触している。
ケース12の外周面の後端部近傍部分にはねじ溝が形成してあり、このねじ溝には、ケース12の軸線を中心とする環状部材である金属製の第2の調整環47の内周面に形成したねじ溝が螺合している。この第2の調整環47の内周面には環状段部48が凹設してある。
ケース12の後端にはケース12と同心をなす支持環50が固定してあり、支持環50がその内周側に位置する回転環51を回転可能かつケース12の軸線方向に移動不能として支持している。回転環51の後端部には図1及び図2に仮想線で示したフルスペックハイビジョン3CCDカメラ52が固定してある。なお、フルスペックハイビジョン3CCDカメラ52は図示を省略したハイビジョンテレビモニタに接続しており、その側端面には透明なカバーガラスを接着固定してある。さらに、支持環50の上部にはねじ孔53が穿設してあり、ねじ孔53には第2の固定ねじ54が螺合している。従って、ねじ孔53に対する第2の固定ねじ54の螺合量を調整して、第2の固定ねじ54の先端(下端)を回転環51の上面に圧接すれば、回転環51及びフルスペックハイビジョン3CCDカメラ52を所望の回転位置に固定できる。
また、図15に示すように、回転環51の前端面と第2の移動環40の後端面の間には圧縮コイルばねS2が縮接してあるので、第2の移動環40は常に前方に向かって移動付勢されている。そのため、カムピン42に設けた回転リング43は常に第2の調整環47の環状段部48に接触している。
【0019】
続いて、挿入部60の構造について主に図3から図14を利用して説明する。
挿入部60は、先端部61と、最も基端側の導中部90と、先端部61と導中部90の間に位置する屈曲部75とからなっている。
まず先端部61の構造について説明する。
金属製の略円筒形状部材であるレンズ支持筒62の内周面は断面円形である。当該内周面の中では後端部が最も大径であり、その直前に位置する雌ねじ溝67は後端部より若干小径で、かつ雌ねじ溝67より前方に位置する部分より大径である。
レンズ支持筒62の前端部には自身の光軸を中心とする回転対称形状物であり、かつ、レンズ支持筒62の前端部の内径より若干小径である対物レンズL1が設けてある。レンズ支持筒62の前端部近傍部分の上部には前後一対のねじ孔が同じ周方向位置に形成してあり、各ねじ孔に螺合した固定ねじB4の下端部に固定した樹脂部材が対物レンズL1の上面を下方に押圧している。対物レンズL1の下面はレンズ支持筒62の内周面の底部に接触しているので、対物レンズL1がレンズ支持筒62の前端部に固定されている。
対物レンズL1の直後にはレンズ支持筒62と同心をなし、かつ、レンズ支持筒62の中間部の内径より若干小径である金属製のレンズ押さえ筒64が収納してあり、レンズ押さえ筒64の前端面が対物レンズL1の後面に接触している。レンズ支持筒62の前後方向の中間部には、固定ねじB4が螺合するねじ孔と同じ周方向位置に位置する前後一対のねじ孔が穿設してあり、これらのねじ孔に固定ねじB5が螺合している。そして、前後の固定ねじB5の下端部に固定した樹脂部材がレンズ押さえ筒64の上面を下方に押圧し、レンズ押さえ筒64の下面をレンズ支持筒62の内周面の底部に接触させることにより、レンズ押さえ筒64をレンズ支持筒62に対して固定している。
さらに、レンズ押さえ筒64の直後にはレンズ支持筒62と同心をなし、かつ対物レンズL1と同径であるリレーレンズL2が収納してある。リレーレンズL2の前面はレンズ押さえ筒64の後端面に接触している。レンズ支持筒62の後端部近傍部には、固定ねじB4及び固定ねじB5が螺合する各ねじ孔と同じ周方向位置に位置する前後一対のねじ孔が穿設してあり、これらのねじ孔に固定ねじB6が螺合している。そして、前後の固定ねじB6の下端部に固定した樹脂部材B6aがリレーレンズL2の上面を下方に押圧し、リレーレンズL2の下面をレンズ支持筒62の内周面の底部に接触させることにより、リレーレンズL2をレンズ支持筒62に対して固定している。
リレーレンズL2の直後には、レンズ支持筒62の内周面における雌ねじ溝67より前方に位置する部分よりも若干小径の環状部材であるレンズ当付環66が位置している。さらに、レンズ支持筒62の雌ねじ溝67には、レンズ当付環66より大径の環状部材であるレンズ押さえ環68が螺合している。レンズ押さえ環68はレンズ当付環66の後面を前方に押圧しており、レンズ当付環66の前面がリレーレンズL2の後面に接触している。
このようにレンズ支持筒62の内径より小径でありかつ互いの外径が同一である対物レンズL1とリレーレンズL2を、同じ周方向位置に位置する固定ねじB4と固定ねじB5を利用してレンズ支持筒62の内周面の底部に接触させているので、対物レンズL1とリレーレンズL2は同心状態(両者の光軸が一致する状態)となる。さらに、レンズ押さえ環68を利用して、レンズ支持筒62の内径より小径であるレンズ当付環66の前面をリレーレンズL2の後面に接触させているので、レンズ当付環66の内周孔の前縁部をリレーレンズL2の後面に確実に接触させることができる。
レンズ支持筒62の後端部の内周面には、レンズ支持筒62と同心をなす金属製の環状部材である第1の回転接続部材(硬質部材)70が嵌合固定してある。第1の回転接続部材70の後端面はレンズ支持筒62の軸線に対して直交する平面となっている。第1の回転接続部材70の後端部には左右一対の腕片71が後ろ向きに突設してあり、左右の腕片71の対向面には互いに同軸をなす連結ピン(回転接続機構)72が突設してある。さらに、図7に示すように、第1の回転接続部材70の下部には、操作部11及び挿入部60の内部を操作部11及び挿入部60の軸線に沿って延びる金属製の操作ワイヤWの前端が固定してある。この操作ワイヤWは湾曲可能であるものの機械的強度が高いため、操作部11及び挿入部60の内部において座屈を起こすことはない。
さらに、レンズ支持筒62の外周面にはステンレス等からなる保護パイプ74を嵌合し接着固定してある。なお、保護パイプ74の代わりにFEP等の熱収縮チューブを被せても良い。レンズ支持筒62の外周面の両端近傍部には水密性をより確実に保持するためのOリングRを設けるのが好ましい(図3参照)。
以上説明した各部材が先端部61の構成要素である。
【0020】
次いで、屈曲部75の構造について説明する。
屈曲部75は、図8に示す断面形状であり前後方向に延びる金属製のレンズ支持枠(硬質部材)76と、図8に示す断面形状でありレンズ支持枠76と同じ長さである金属製の蓋部材77と、を備えており、レンズ支持枠76の上面に蓋部材77を固定状態で被せることにより両者の間に断面略正方形の空間を形成している。この内部空間には、該内部空間と略同じ断面形状であるプリズムP1が収納してある。図3及び図8に示すように、レンズ支持枠76の前端部近傍部と後端部近傍部における下部と左右両側部にはねじ孔が形成してあり、各ねじ孔には固定ねじB7が螺合してある。そして、各固定ねじB7がプリズムP1の下面と左右両側面に貼り付けたカバー板78に押圧することにより、プリズムP1をレンズ支持枠76に対して固定している。
【0021】
レンズ支持枠76は前後対称形状であり、その前端部及び後端部の左右両側面には左右一対の連結用凹部(回転接続機構)79が凹設してある。そして、第1の回転接続部材70の左右の連結ピン72が外側から前側の左右の連結用凹部79にそれぞれ回転可能に嵌合しているので、レンズ支持枠76及び蓋部材77は第1の回転接続部材70(先端部61)に対して左右の連結ピン72回りに回転可能である。
図3及び図11に示すように、レンズ支持枠76の前端面及び後端面の下半部は側面視においてレンズ支持枠76と蓋部材77の内部空間の軸線に対して傾斜する傾斜端面80となっており、レンズ支持枠76の前端面及び後端面の上半部はレンズ支持枠76の軸線に対して直交する平面となっている。図3、図11及び図12に示すように、傾斜端面80の下端部にはレンズ支持枠76と蓋部材77の内部空間の軸線と平行なねじ孔81が形成してあり、ねじ孔81には第1の調整ねじ83が螺合している。第1の調整ねじ83の頭部84の周面には周方向に90°間隔で4つの挿入孔85が形成してあり、各挿入孔85は頭部84の内部において互いに連通している。
また、図7に示すように、レンズ支持枠76の前端部と後端部の間の下面には、ねじ孔81とは周方向位置を若干ずらして切欠部86が形成してある。操作ワイヤWにおける屈曲部75内に位置する部分には操作ワイヤWが摺動自在に挿入されるステンレス等からなる案内パイプ88が設けてある。この案内パイプ88は切欠部86内に位置すると共にレンズ支持枠76の前端部及び後端部の下端部に形成した貫通孔87に接着等で固定されている。
さらに、レンズ支持枠76及び蓋部材77の外周面にはフッ素ゴム等からなる外皮チューブ89が被せてあり、外皮チューブ89の両端部は固定用糸T(図11参照)で水密的に緊縛固定されている。なお、固定用糸Tの外周には緩み止めとして接着剤等を塗布しても良い。
以上説明した各部材が屈曲部75の構成要素である。
【0022】
続いて、導中部90の構造について説明する。
金属製の略円筒形状部材であるレンズ支持筒91の内周面は断面円形であり、その後端部には雌ねじ溝97が形成してある(図15参照)。そして、レンズ支持筒91の内周面の前端部と雌ねじ溝97を除く部分の内径はレンズ支持筒62の雌ねじ溝67より前方に位置する部分の内径と同一である。
レンズ支持筒91の内周面の前端部にはレンズ支持筒91と同心をなす金属製の環状部材である第2の回転接続部材(硬質部材)92が嵌合固定してある。第2の回転接続部材92の前端面はレンズ支持筒91の軸線に対して直交する平面である。また、第2の回転接続部材92の前端面の左右両側部には腕片71が前向きに突設してあり、左右の腕片71の対向面には互いに同軸をなす連結ピン72が突設してある。そして、この左右の連結ピン72がレンズ支持枠76の後端部に形成した左右の連結用凹部79に回転可能に嵌合しているので、第2の回転接続部材92及びレンズ支持筒91は屈曲部75に対して回転可能である。
レンズ支持筒91の内部空間には、第2の回転接続部材92の直後に位置させて第2の回転接続部材92の内径より若干小径のレンズ押さえ環94が配設してある。さらに、レンズ押さえ環94の直後には自身の光軸を中心とする回転対称形状物であり、かつ、レンズ支持筒91の(前端部と雌ねじ溝97を除く部分の)内径より若干小径かつ対物レンズL1及びリレーレンズL2と外径が等しいリレーレンズL3が設けてある。レンズ支持筒91の前端部近傍部分の上部には前後一対のねじ孔が同じ周方向位置に形成してあり、各ねじ孔に螺合した固定ねじB8の下端部に固定した樹脂部材がリレーレンズL3の上面を下方に押圧している。リレーレンズL3の下面はレンズ支持筒91の内周面の底部に接触しているので、リレーレンズL3はレンズ支持筒91の前端部に固定されている。
リレーレンズL3の直後にはレンズ支持筒91と同心をなし、かつ、レンズ支持筒91の中間部の内径より若干小径である金属製のレンズ押さえ筒95が収納してあり、レンズ押さえ筒95の前端面がリレーレンズL3の後面に接触している。図示は省略してあるが、レンズ支持筒91の前後方向の中間部には、固定ねじB8が螺合するねじ孔と同じ周方向位置に位置する前後一対のねじ孔が穿設してあり、これらのねじ孔に固定ねじが螺合している。そして、前後の固定ねじの下端部に固定した樹脂部材がレンズ押さえ筒95の上面を下方に押圧し、レンズ押さえ筒95の下面をレンズ支持筒91の内周面の底部に接触させているので、レンズ押さえ筒95はレンズ支持筒91に対して固定されている。
図15に示すように、レンズ押さえ筒95の直後にはリレーレンズL3と同じ形状であるリレーレンズL4が収納してあり、リレーレンズL4の前面はレンズ押さえ筒95の後端面に接触している。レンズ支持筒91の後端部近傍部には、固定ねじB8が螺合する各ねじ孔と同じ周方向位置に位置する前後一対のねじ孔が穿設してあり、これらのねじ孔に固定ねじB9が螺合している。そして、前後の固定ねじB9の下端部に固定した樹脂部材がリレーレンズL4の上面を下方に押圧し、リレーレンズL4の下面をレンズ支持筒91の内周面の底部に接触させることにより、リレーレンズL4をレンズ支持筒91に対して固定している。
リレーレンズL4の直後には、レンズ支持筒91の内周面における雌ねじ溝97より前方に位置する部分よりも若干小径の環状部材であるレンズ当付環99が位置している。さらに、レンズ支持筒91の雌ねじ溝97には、レンズ当付環99より大径の環状部材であるレンズ押さえ環100が螺合している。レンズ押さえ環100はレンズ当付環99の後面を前方に押圧しており、レンズ当付環99の前面がリレーレンズL4の後面に接触している。
このようにレンズ支持筒91の内径より小径でありかつ互いの外径が同一であるリレーレンズL3とリレーレンズL4を、同じ周方向位置に位置する固定ねじB8と固定ねじB9を利用してレンズ支持筒91の内周面の底部に接触させているので、リレーレンズL3とリレーレンズL4は互いに同心状態(光軸が一致する状態)となる。
【0023】
レンズ支持筒91の前端部と後端部の下部における貫通孔87と同じ周方向位置にはそれぞれ貫通孔101が穿設してあり、レンズ支持筒91の前端部と後端部の下部の間は切欠部102となっている。操作ワイヤWの導中部90内部に位置する部分には、案内パイプ88と同じ材質の案内パイプ104が設けられている。案内パイプ104の両端は、レンズ支持筒91の前後に設けた貫通孔101に嵌合され、接着等で固定されている。
図15に示すように、レンズ支持筒91の外周面にはステンレス等からなる保護パイプ105が被せてあり、レンズ支持筒91の外周面の後端部にはレンズ支持筒91の軸線を中心とする環状部材である接続環106が嵌合固定してある。なお、保護パイプ105の両端近傍には、水密性を保持するために、シリコン等からなる充填剤を内部に塗布することが望ましい。また、保護パイプ105の代わりにFEP等からなる熱収縮チューブを被覆してもよい。
以上説明した各部材が導中部90の構成要素である。
導中部90は、接続環106を操作部11のケース12の前端開口部に嵌合固定することにより操作部11の前端部に固定してある。そして、このようにして導中部90を操作部11に接続するとリレーレンズL3及びリレーレンズL4の光軸が調整レンズL5及び調整レンズL6の光軸と一致する。
【0024】
以上構造の硬性鏡10は次のように動作する。
第1の固定ねじ35を緩めることにより第1の固定ねじ35の先端を第1の移動環23から離間させると、第1の移動環23がスライド可能となる。従って、この状態で第1の調整環14を正面視で(先端側から見たときに)時計方向に回転させれば、圧縮コイルばねS1の付勢力によってカム溝16のカム面17に当接したカムピン24(回転リング25)が直進案内溝20に沿って後方に移動するので、ケース12の内部において操作ワイヤWの基端部が第1の移動環23と一緒に後方に移動する。
逆に、第1の調整環14を正面視で(先端側から見たときに)反時計方向に回転させると、カム溝16のカム面17から力を受けたカムピン24(回転リング25)が直進案内溝20に沿って前方に移動するので、ケース12の内部において操作ワイヤWの基端部が第1の移動環23と一緒に圧縮コイルばねS1の付勢力に抗して前方に移動する。すると、操作ワイヤWの先端部が第1の回転接続部材70をレンズ支持枠76に対して連結ピン72を中心とするD1方向(図13及び図14を参照)に回転付勢するので、第1の回転接続部材70はその後端面がレンズ支持枠76の前端面の上半部に当接する図13の位置まで回転する。すると、先端部61と屈曲部75が同軸をなし両者が同一直線状に並ぶ(図1参照)。
さらに、操作ワイヤWの移動力が先端部61を介して屈曲部75に伝わるので、屈曲部75のレンズ支持枠76の後端部が導中部90の第2の回転接続部材92に対して第2の回転接続部材92の連結ピン72回りにD1と同じ方向に回転し、レンズ支持枠76の後端面の上半部が第2の回転接続部材92の前端面の上半部に接触するまで回転する。すると、屈曲部75と導中部90が同軸をなし両者が同一直線状に並ぶので(図1参照)、挿入部60は先端部61、屈曲部75及び導中部90が同一線状に並び、かつ、レンズ支持筒62、レンズ支持筒91及び第2の移動環40が同軸状態となる直線状態(図1の状態)となる。挿入部60が直線状態となった後に第1の固定ねじ35を回転させることにより第1の固定ねじ35の先端を第1の移動環23に圧接すれば、第1の移動環23のスライド動作が規制されるので、挿入部60は直線状態に保持される。この場合、対物レンズL1、リレーレンズL2、リレーレンズL3、リレーレンズL4、調整レンズL5及び調整レンズL6の光軸は同一直線上に位置するが、プリズムP1とドーブプリズムP2は直前に位置するレンズを透過した観察像を直後に位置するレンズに導光できないので、フルスペックハイビジョン3CCDカメラ52は対物レンズL1が観察した観察像を撮像することはできない。
【0025】
一方、第1の固定ねじ35を緩めた上で前述のように第1の調整環14を正面視で時計方向に回転させると、第1の移動環23が圧縮コイルばねS1の付勢力を受けながら後方に移動する。すると、操作ワイヤWの先端部が先端部61の第1の回転接続部材70を屈曲部75のレンズ支持枠76に対して図13及び図14のD2方向に回転付勢するので、第1の回転接続部材70はその後端面の下半部がレンズ支持枠76の前端部に固定した第1の調整ねじ83の頭部84に当接する図14の位置まで回転する。さらに、操作ワイヤWの移動力が先端部61を介して屈曲部75に伝わるので、屈曲部75が導中部90に対してD2と同じ方向に回転し、レンズ支持枠76の後端側の第1の調整ねじ83の頭部84が第2の回転接続部材92の前端面の下半部に当接する。導中部90がこのような屈曲状態(図2の状態)になると、対物レンズL1及びリレーレンズL2の光軸とリレーレンズL3及びリレーレンズL4の光軸と調整レンズL5及び調整レンズL6の光軸は同一直線上に並ばなくなる。しかし、対物レンズL1及びリレーレンズL2を透過した観察像はプリズムP1によって一度反転させられた後にリレーレンズL3及びリレーレンズL4を透過し、さらに調整レンズL5を透過した後にドーブプリズムP2によって左右反転させられて調整レンズL6を透過するので、フルスペックハイビジョン3CCDカメラ52は元の状態で観察像を撮像可能になる。
第2の調整環47をケース12に対して回転させながらケース12に対して前方または後方に移動させると、環状段部48から力を受けたカムピン42(回転リング43)が直進案内溝45に沿って前後動するので、第2の移動環40がケース12の内部を前後動する。すると、第2の移動環40によって支持された調整レンズL5、ドーブプリズムP2、及び調整レンズL6の位置が変化するので最良ピント位置の調整が行われる。
【0026】
次に、硬性鏡10を親内視鏡110と一緒に使用する要領について主に図22から図25を用いて説明する。
図22から図25に示す親内視鏡110は、硬性鏡10より大型かつ挿入部111が硬性鏡10の挿入部60より大径である腹腔鏡である。挿入部111の先端部近傍分である湾曲部112は、親内視鏡110の操作部(図示略)に設けた湾曲操作レバーの回転操作によって湾曲する。図22及び図23に示すように、挿入部111の内部には挿入部60より僅かに径が大きい処置具挿通管路113が形成してある。図示は省略してあるが、挿入部111には他にも複数の処置具挿通管路が存在する。
硬性鏡10を親内視鏡110に挿入するには、まず親内視鏡110の挿入部111を直線状態にした上で、硬性鏡10の第1の調整環14を反時計方向いっぱいまで回転させて第1の固定ねじ35によって直線状態を保持した硬性鏡10の挿入部60を親内視鏡110の処置具挿通管路113に挿入し、先端部61を挿入部111の先端から突出させる(図24参照)。さらに、親内視鏡110の他の処置具挿通管路に別の処置具115、処置具116を挿入する。
次いで、硬性鏡10の第1の固定ねじ35を緩めて第1の固定ねじ35の先端部を第1の移動環23から離間させ、第1の調整環14を時計方向に回転させると、圧縮コイルばねS1の付勢力によって第1の移動環23が操作部11の基端側にスライドしようとする。しかし、直線状態にある挿入部111の処置具挿通管路113内に位置している挿入部60は処置具挿通管路113の内面によって屈曲状態への変形が規制されているので、この状態では挿入部60が屈曲状態に変形することはない。しかし、図25に示すように挿入部111(湾曲部112)を挿入部60の屈曲形状に合わせて湾曲させると、圧縮コイルばねS1の付勢力によって操作部11の基端側に引っ張られた操作ワイヤWの牽引力によって挿入部60が処置具挿通管路113の湾曲状態に合わせて屈曲状態に移行する。この後に第1の固定ねじ35によって第1の移動環23の位置及び第1の調整環14の回転位置を固定すれば、挿入部60は屈曲状態に保持される。さらに、挿入部60の対物レンズL1が観察した観察像をフルスペックハイビジョン3CCDカメラ52が撮像し、撮像した画像が上記ハイビジョンテレビモニタに映し出される。
従って、患者Aの腹部にあけた孔A1を通して親内視鏡110の挿入部111の先端部を患者Aの体内に挿入し、硬性鏡10の対物レンズL1が観察した患部Xの観察像をフルスペックハイビジョン3CCDカメラ52で撮像すれば、術者はテレビモニタにハイビジョン画像として映し出された患部Xを観察しながら患部Xの処置を行なうことができる。
【0027】
硬性鏡10の親内視鏡110からの抜去作業は、上記挿入手順と逆の手順によって行うことが可能である。
なお、親内視鏡110の挿入部111を患者Aの体内に挿入した状態で硬性鏡10を親内視鏡110から緊急に引き抜きたい場合は、はじめに第1の固定ねじ35を緩めて第1の移動環23をスライド可能な状態にする。次に親内視鏡110の挿入部111を直線状態にすると、硬性鏡10の先端部61及び屈曲部75は、親内視鏡110に合わせて直線状態になろうとする。このときカムピン24(回転リング25)は、直進案内溝20に沿って、圧縮コイルばねS1の付勢力に抗してカム面17から離間し、カム溝16内を前方へ移動する。そのため、挿入部60が直線状態に変形可能となり、挿入部60を親内視鏡110から体外に引き抜くことができる。この場合、第1の調整環14を反時計方向に回して挿入部60を完全に直線状態にした上で第1の固定ねじ35によって挿入部60の直線状態を固定すればより確実に引き抜くことが可能になる。
【0028】
また、例えばカム溝16、直進案内溝20、カムピン24、及び回転リング25からなるカム機構が故障した場合は、第1の調整環14によって挿入部60を直線状態と屈曲状態に切り替えることが出来なくなる。仮に挿入部111及び挿入部60を湾曲(屈曲)状態で患者Aの体内に挿入したときに上記カム機構が故障してしまうと、挿入部60を親内視鏡110から抜去できなくなったり、挿入部111を直線状態に復帰できなくなってしまう。
このような場合は、図26に示すようにケース12の貫通孔31から栓部材33を取り除いた後に、貫通孔31を通して棒状部材である強制スライド用部材120の係合ピン121をケース12の内部に挿入する。そして、係合ピン121を第1の移動環23の係合孔28に係合し、強制スライド用部材120を貫通孔31内において前方にスライドさせる。すると、強制スライド用部材120の力によって第1の移動環23が圧縮コイルばねS1の付勢力に抗して前方にスライドするので、挿入部60を直線状態に戻すことが可能である。
一方、貫通孔31に栓部材33を装着する場合は、貫通孔31を通してケース12の内部に外部の水分が侵入するのを防止できる。
【0029】
以上説明したように本実施形態では、挿入部60が直線状態となったときに互いに同軸をなすと共に各レンズ支持枠(レンズ支持筒62、91及び第2の移動環40)の内部に対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6をそれぞれ挿入し、同じ周方向位置に設けた各ねじ孔に螺合した固定ねじB2、B4、B6、B8、B9を利用して対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6を同一方向に押圧し、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6の各ねじ孔と反対側の部分をレンズ支持筒62、91及び第2の移動環40の内周面に接触させることにより、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6をレンズ支持筒62、91及び第2の移動環40に対して固定している。ガラスや樹脂によって成形される対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6は金属製の長尺状筒部材であるレンズ支持筒62、91及び第2の移動環40に比べて形状精度(外径精度)が出しやすいので、このような固定方法によれば、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6の間の中心軸(光軸)の位置ずれを極力抑えることが可能になる。従って、フルハイスペックハイビジョン3CCDカメラ52は対物レンズL1が観察した観察像を鮮明な画像として撮像できる。
さらに、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6はレンズ支持筒62、91及び第2の移動環40の内径より小径なので、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6のレンズ支持筒62、91及び第2の移動環40の内部への挿入(組み付け)は容易である。
また、例えば各レンズ支持枠(レンズ支持筒62、91及び第2の移動環40)に単一径のパイプ材を用いて、レンズ支持枠の内径と対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6の外径を等しくすれば、より中心軸(光軸)の位置ずれを抑えることが可能になる。
【0030】
さらに、ねじ孔81に対する第1の調整ねじ83の螺合量を調整することにより、屈曲状態における挿入部60の屈曲角度を調整できる。そのため、屈曲状態における対物レンズL1、リレーレンズL2、プリズムP1、リレーレンズL3、リレーレンズL4の位置関係を最適な状態にすることができるので、フルスペックハイビジョン3CCDカメラ52のピント状態を最適な状態にすることができる。
しかも、図12に示すように、屈曲部75に外皮チューブ89を被せない状態において、棒状部材である回転角度調整部材118を頭部84の挿入孔85に挿入し、回転角度調整部材118によって頭部84を第1の調整ねじ83の軸線回りに回転させれば、ねじ孔81に対する第1の調整ねじ83の螺合量調整を行える。そのため、第1の調整ねじ83の螺合量調整は簡単に行うことができる。
【0031】
以上、本発明について上記各実施形態を利用して説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、図27及び図28に示した硬性鏡10’、10’’のように、挿入部60A、60Bを変形不能として実施してもよい。図27は挿入部60Aを直線形状として成形した例であり、図28は挿入部60Bを中間部が曲がった形状として成形した例である。このうち、硬性鏡10’の内部には、対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6が配設してあり、硬性鏡10’’の内部には対物レンズL1、リレーレンズL2、L3、L4、調整レンズL5、L6とプリズムP1、P2が上記と同様の態様で配設してある。
なお、このように挿入部60A、60Bを変形不能とする場合は、挿入部60A、60Bの内部にリレーレンズ系(レンズ、プリズム)を支持する、筒状をなす単一の支持部材を固定してもよい。また、挿入部60A、60Bと操作部11の内部に跨る筒状をなす単一の支持部材を固定してもよい。
さらに、操作部11と挿入部60、60A、60Bの一方の内部においてのみ本発明を適用し、他方には適用しない態様で実施することも可能である。
また、操作部11の回転環51にフルスペックハイビジョン3CCDカメラ52ではなく通常の撮像素子(撮像手段)や接眼レンズ(接眼部)を設けても良い。
【符号の説明】
【0032】
10 10’ 10’’ 硬性鏡
11 操作部
12 ケース
14 第1の調整環(操作手段)(調整環)
15 カム環
16 カム溝(カム機構)
17 カム面
18 環状凹部
20 直進案内溝(カム機構)(操作手段)
23 第1の移動環(移動部材)(操作手段)
24 カムピン(カム機構)(操作手段)
25 回転リング(カム機構)(操作手段)
27 ワイヤ固定部材
28 係合孔
31 貫通孔
33 栓部材
34 ねじ孔
35 第1の固定ねじ(保持手段)
40 第2の移動環(レンズ支持枠)
42 カムピン
43 回転リング
45 直進案内溝
47 第2の調整環
48 環状段部
50 支持環
51 回転環
52 フルハイスペックハイビジョン3CCDカメラ(撮像手段)
53 ねじ孔
54 第2の固定ねじ
60 60A 60B 挿入部
61 先端部
62 レンズ支持筒(レンズ支持枠)
64 レンズ押さえ筒
66 レンズ当付環
67 雌ねじ溝
68 レンズ押さえ環
70 第1の回転接続部材(硬質部材)
71 腕片
72 連結ピン(回転接続機構)
74 保護パイプ
75 屈曲部
76 レンズ支持枠(硬質部材)
77 蓋部材
78 カバー板
79 連結用凹部(回転接続機構)
80 傾斜端面
81 ねじ孔
83 第1の調整ねじ
84 頭部
85 挿入孔
86 切欠部
87 貫通孔
88 案内パイプ
89 外皮チューブ
90 導中部
91 レンズ支持筒(レンズ支持枠)
92 第2の回転接続部材(硬質部材)
94 レンズ押さえ環
95 レンズ押さえ筒
97 雌ねじ溝
99 レンズ当付環
100 レンズ押さえ環
101 貫通孔
102 切欠部
104 案内パイプ
105 保護パイプ
106 接続環
110 親内視鏡
111 挿入部
112 湾曲部
113 処置具挿通管路
115 116 処置具
118 回転角度調整部材
120 強制スライド用部材
121 係合ピン
A 患者
A1 孔
L1 対物レンズ
L2 L3 L4 リレーレンズ(光学部品)(リレーレンズ系)
L5 L6 調整レンズ(光学部品)(リレーレンズ系)
P1 プリズム(光学部品)(リレーレンズ系)
P2 ドーブプリズム(光学部品)(リレーレンズ系)
B1 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 固定ねじ
B6a 樹脂部材
S1 S2 圧縮コイルばね
W 操作ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部、及び、該操作部から延びる挿入部と、
該挿入部の先端に設けた対物レンズと、
上記操作部に設けた、上記対物レンズを透過した像を撮像する撮像手段または該像を観察可能な接眼部と、
上記操作部及び挿入部に内蔵した、上記対物レンズを透過した観察像を上記撮像手段または接眼部に導光するリレーレンズ系と、
を備える硬性鏡において、
上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に上記挿入部の軸線方向に並べて固定した、該軸線を中心とする断面円形の内周面を備える環状部材であり、ねじ孔を備える複数のレンズ支持枠と、
各レンズ支持枠の内部に配設した、上記リレーレンズ系の構成要素であり、かつ上記内周面より小径かつ自身の光軸を中心とする回転対称形状である複数のレンズと、
同じ周方向位置に位置させた複数の上記ねじ孔に螺合した、その端部で対応する上記レンズの周面を押圧し、該レンズの周面における反対側の部分を上記レンズ支持枠の内周面に接触させる複数の調整ねじと、
を備えることを特徴とする硬性鏡。
【請求項2】
請求項1記載の硬性鏡において、
上記各レンズ支持枠に、上記光軸方向に離間する複数の上記ねじ孔を同じ周方向位置に位置させて形成し、
上記レンズ支持枠の内部の上記各ねじ孔と対応する部分に上記レンズをそれぞれ配設し、
複数の上記ねじ孔に上記調整ねじをそれぞれ螺合して、各調整ねじの端部で対応する上記レンズの周面を押圧した硬性鏡。
【請求項3】
操作部、及び、該操作部から延びる挿入部と、
該挿入部の先端に設けた対物レンズと、
上記操作部に設けた、上記対物レンズを透過した像を撮像する撮像手段または該像を観察可能な接眼部と、
上記操作部及び挿入部に内蔵した、上記対物レンズを透過した観察像を上記撮像手段または接眼部に導光するリレーレンズ系と、
を備える硬性鏡において、
上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に固定した、上記挿入部の軸線を中心とする断面円形の内周面を備える環状部材であり、かつ、上記光軸方向に離間すると共に同じ周方向位置に位置する複数のねじ孔を備えるレンズ支持枠と、
該レンズ支持枠の内部に配設した、上記リレーレンズ系の構成要素であり、かつ上記内周面より小径かつ自身の光軸を中心とする回転対称形状である複数のレンズと、
複数の上記ねじ孔に螺合した、その端部で対応する上記レンズの周面を押圧し、該レンズの周面における反対側の部分を上記レンズ支持枠の内周面に接触させる複数の調整ねじと、
を備えることを特徴とする硬性鏡。
【請求項4】
請求項3記載の硬性鏡において、
上記操作部と挿入部の少なくとも一方の内部に複数の上記レンズ支持枠を同軸状態で固定し、
各レンズ支持枠の内部に複数の上記レンズを配設し、
複数の上記ねじ孔を同じ周方向位置に位置させた上で、各ねじ孔に上記調整ねじを螺合して、各調整ねじの端部で対応する上記レンズの周面を押圧した硬性鏡。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の硬性鏡において、
上記調整ねじがその端部に、上記レンズの周面に当接する樹脂部材を具備する硬性鏡。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の硬性鏡において、
上記レンズ支持枠の内部に配設した、該レンズ支持枠の内周面より小径で、かつ、一方の面を上記レンズの表面に接触するレンズ当付環と、
該レンズ支持枠の内周面に形成した雌ねじ溝に螺合した、上記レンズ当付環の他方の面を上記レンズ側に押圧するレンズ押さえ環と、
を備える硬性鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−158412(P2010−158412A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2847(P2009−2847)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(590001452)国立がんセンター総長 (80)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】