説明

磁性粉除去装置

【課題】大きな費用を掛けず、人手も掛けず、作業を中断することなく、自動で含水率の低い磁性粉を連続的に除去する。
【解決手段】 磁性粉除去装置は、汚液槽11と、磁性粉Sを汚液槽11内から汚液槽11外まで搬送するためのコンベヤ12とを備えている。コンベヤ12は、搬送面に複数の横桟31がベルト移動方向に一定間隔で設けられているベルト25を有している。ベルト25は、汚液槽11内を前向きにのびた送り側経路32を有している。送り側経路32を移動中のベルト25の上方に磁石73が配置されている。磁石73に吸引された磁性粉は、送り側経路32を移動中のベルト25の横桟31によって掻取られうるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、工作機械の研削等で用いるクーラント等の汚液からスラッジ等の磁性粉を除去する磁性粉除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚液槽内に磁石を入れて、磁性粉を磁石で吸引し、一定量の磁性粉が吸引されると、磁性粉を吸引したままで磁石を汚液槽外に出して、そこで、磁石から磁性粉を除去することが一般的に行われている。
【0003】
上記のやり方は、汚液槽に対する磁石の出入を、短時間で多頻度で行うことが必要であり、人手が掛かったり、費用が掛かる割には能率が悪い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、大きな費用を掛けず、人手も掛けず、作業を中断することなく、連続的に自動で磁性粉を除去することのできる磁性粉除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明による磁性粉除去装置は、汚液槽と、磁性粉を汚液槽内から汚液槽外まで搬送するためのコンベヤとを備えており、コンベヤは、搬送面に複数の横桟がベルト移動方向に一定間隔で設けられているベルトを有しており、ベルトは、汚液槽内を前向きにのびた送り側経路を有しており、送り側経路を移動中のベルトの上方に磁気手段が配置されており、磁気手段に吸引された磁性粉が、送り側経路を移動中のベルトの横桟によって掻取られうるようになされているものである。
【0006】
この発明による磁性粉除去装置では、汚液槽内において磁気手段にを吸引させ、これをベルトの横桟によって掻取り、掻取られた磁性粉をベルトによって汚液槽外まで搬送するようにしている。したがって、大きな費用を掛けず、人手も掛けず、作業を中断することなく、連続的に自動で磁性粉を除去することができる。
【0007】
さらに、汚液槽内が垂直仕切壁によって前後に区画されており、送り側経路を移動中のベルトの搬送面および仕切壁の下縁間には磁気間隙が形成されており、磁気手段が、仕切壁の下縁にそって取付られた複数の磁石よりなると、磁石によって磁性粉を確実に吸引することができる。
【0008】
また、汚液槽内の仕切壁の前側に汚液を流入させ、その後側から流出させる流出入手段を備えていると、汚液が磁気間隙を一方向に後向きに流れることになって、磁性粉を除去する前の汚液と、除去した後の汚液とが混合されることなく、磁性粉の吸引を効率良く行うことができる。
【0009】
また、コンベヤの搬送面に、これを押圧しうるようにプレスローラが配置されていると、ベルトで受止めた磁性粉をベルトの搬送面上にプレスして脱水することができ、脱水された磁性粉をベルトの搬送面から脱落させることなく、確実に汚液槽外まで搬送することができる。
【0010】
また、プレスローラ外面が、隣り合う2つの横桟にまたがりうる大きさ以上に形成されていると、横桟の移動がプレスローラに邪魔されることなく、ベルトをプレスローラの回りを移動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、大きな費用を掛けず、人手も掛けず、作業を中断することなく、連続的に自動で磁性粉を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0013】
以下の説明において、前後とは、図1の左側を後、これと反対側を前といい、左右とは、後方より見て、その左右の側を左右(図2の左右)というものとする。
【0014】
磁性粉除去装置は、上方開放箱形状汚液槽11と、汚液槽11内からその外まで磁性粉Sを搬送するためのコンベヤ12と、汚液槽11外でコンベヤ12から磁性粉Sを掻取る可動スクレーパブレード13と、ブレード13が先端に取付けられている上下揺動アーム14と、汚液槽11の前方に配置されかつ掻き取った磁性粉Sを入れるためのバスケット15と、掻取られた磁性粉Sをバスケット15まで案内するシュート16とを備えている。
【0015】
汚液槽11内には垂直板状前仕切壁11Aおよび後仕切壁11Bが設けられ、これにより、汚液槽11が前後方向に連続して並んだ3つの槽に区画されている。前仕切壁11Aおよび後仕切壁11Bの下縁部は、汚液槽11の底面には達しておらず、双方の間には間隙が生じている。前仕切壁11Aの前側に汚液流入管11Cの出口が臨ませられている。汚液槽11の後側壁の上端近くには汚液流出管11Dの入口が接続されている。
【0016】
コンベヤ12は、汚液槽11左右両側壁近くに相対するように汚液槽11の内外にわたって立てられている左右一対の逆L字垂直板状フレーム21と、フレーム21の垂直部上端近くに渡されている駆動プーリ22と、フレーム21の水平部後端近く渡されている第1従動プーリ23Aと、フレーム21の水平部前端近くに渡されている第2従動プーリ23Bと、フレーム21の垂直部の高さの中程に渡されている第3従動プーリ23Cと、駆動プーリ22および第1〜第3従動プーリ23A〜23Cに順次巻き掛けられかつ汚液槽11の内外にわたってのびているエンドレス・ベルト25と、駆動プーリ22の右端部に出力軸を連結している減速機付モータ26と備えている。
【0017】
駆動プーリ22に近接してベルト移動方向下流に第1絞りプーリ27が、そこからさらに下流に第2絞りプーリ28がそれぞれ配置されている。
【0018】
ベルト25の搬送面には多数の横桟31が一定間隔で設けられている。ベルト25の搬送面の両縁部には、桟31の無い部分があり、この部分を第1および第2絞りプーリ27、28が走行するようになっている。
【0019】
ベルト25は、送り側経路32および戻り側経路33を有している。送り側経路32は、側方より見て、略逆L字をなして、前仕切壁11Aおよび後仕切壁11Bの下を潜って汚液槽11の底面近くを水平にのびた前向き経路32Aと、前向き経路32Aの前端から駆動プーリ22までのびた上向き経路32Bとよりなる。戻り側経路33は、送り側経路32と同様に略逆L字をなしかつ上向き経路32Bと対応する下向き経路33Aおよび前向き経路32Aと対応する後向き経路33Bよりなる。
【0020】
前向き経路32Aおよび上向き経路32Bの境界にプレスローラ61がベルト25を搬送面側から押圧するように配置されている。プレスローラ61は、ベルトの全幅にほぼ等しい長さを有している(図2参照。)。プレスローラ61の外径は、図3に示すように、少なくとも、隣り合う2つの桟にまたがりうる大きさに形成されている。したがって、プレスローラ61の外面は、ベルト搬送面に直接的に接触することはない。このため、ベルトがプレスローラ61の周囲を通過する際に、桟31がプレスローラ61に当接し、これによって、ベルト25にブレーキが掛けられることはない。プレスローラ61の外径は、例えば、プレスローラ61の外面が連続する3つの桟31に同時に乗ることができる大きさでも良い。
【0021】
可動スクレーパブレード13は、左右方向にのびた略垂直帯板状のもので、その上縁部を掻き刃41としている。駆動プーリ22に巻き掛けられてその周囲を移動するベルト25の搬送面に掻き刃41が押圧されている。掻き刃41の押圧位置は、駆動プーリ22の軸線レベルのやや下方となっている。
【0022】
アーム14は、ほぼ水平姿勢をなすように前後方向にのびかつ前端にブレード13が渡された左右一対のアーム部材42よりなる。両アーム部材42の後端部は、左右方向にのびた水平支持軸43に支持されている。支持軸43は、駆動プーリ22の後方斜め下に位置するようにフレーム21に渡されている。各アーム部材42の長さの中程には、上端を対応するフレーム21に掛け止めた引張コイルばね44の下端が掛け止められている。ばね44により、アーム14は、上向きに揺動するように付勢されており、これが、ベルト25に対する掻き刃41の押圧力となっている。
【0023】
フレーム21の頂部には送風ファン51が装備されている。送風ファン51は、ベルト上向き経路32Bの搬送面に向けられた下向き吹出口52を有している。
【0024】
後仕切壁11Bの下渕部にはこれにそって水平帯板状磁石保持部材71が設けられている。磁石保持部材71の下面には複数の円形状保持孔72が一列に並んであけられている。各保持孔72には円板状磁石73が収納されている。各磁石73の下面には樹脂製カバー74が被覆されている。磁石73の一方の平面がN極であり、他方の平面がS極である。隣り合う2つの磁石73は、N極とS極が逆となるように配列されている。各磁石73の下面とベルト搬送面間の間隙が磁気間隙Cである。
【0025】
流入管11Cからは、処理前の汚液が汚液槽11に供給される。処理後の汚液は、流出管11Dから排出される。これにより、磁気間隙Cには後向きの汚液流れが生じる。
【0026】
モータ26によって駆動プーリ22が図1中時計方向に駆動される。これにより、ベルト25が移動させられる。ベルト25の移動速度は、0.5m/min以下であることが好ましい。
【0027】
汚液に含まれた磁性粉Sは、時間の経過とともに、沈殿していき、ベルト25の前向き経路32A上において堆積される。一方、磁気間隙Cを流れる汚液に含まれた磁性粉Sは、磁気間隙Cを通過させられる際に、磁石73に吸引される。吸引された磁性粉Sは、やがて葡萄の房のようになつて磁石73から垂れ下がる。これを、前向き経路32Aを移動させられるベルト25の桟31が磁気間隙Cを通過する際に、掻取る。掻取られた磁性粉Sは桟31の上流側に堆積させられる。
【0028】
ベルト25上に堆積された磁性粉Sがプレスローラ61のところに差掛かると、これを、プレスローラ61がベルト搬送面に対しプレスして脱水する。
【0029】
脱水された磁性粉Sは、前向き経路32Aから上向き経路32Bに差し掛かり、桟31の上昇とともに磁性粉Sも上昇させられる。この間に、脱水された磁性粉Sは、汚液中を移動させられることになるが、一旦、脱水されて堆積された磁性粉Sには、容易に汚液が浸透することはなく、脱水状態は維持される。
【0030】
桟31上の磁性粉Sには、上昇させられる過程において、送風ファン51から風が吹き付けられる。これにより、同磁性粉Sの脱水が促進され、含水率の低い磁性粉Sの回収に貢献する。
【0031】
桟31上の磁性粉Sは、駆動プーリ22の周囲を移動し、駆動プーリ22を乗り越えようとし、ブレード13のところに達すると、ブレード13によって掻き取られる。この様子が、図6に詳細に示されている。
【0032】
図6(a)は、桟31上の磁性粉Sがブレード13のところに至る直前の状態を示すものである。ブレード13の掻き刃41はベルト25搬送面の桟31の無い部分に押圧されている。この状態で、ブレード13は、垂直線からわずかだけ前方に倒れるように傾斜させられている。また、アーム14は、先端部を基端部よりも若干高くするように傾斜させられている。
【0033】
図6(b)に示すように、桟31がブレード13のところに達すると、桟31の基部にブレード13の掻き刃41が当接させられる。この状態で、桟31は、駆動プーリ22の軸線と同レベルで、水平姿勢となっている。掻き刃41は、桟31に付着した磁性粉Sに食い込んでいる。このままの状態で、桟31が移動していくと、桟31によってブレード13は下向きに揺動させられる。これにより、ブレード13は、下向きに移動しながら、アーム14が傾斜させられた分だけ、前向きに移動させられる。一方、絞りプーリ28によってベルト25が絞られていることにより、桟31がブレード13に当接した後は、桟31は、下向きに移動しながら、後向きに移動させられる。桟31およびブレード13の前後逆方向に離れていく相対的移動の結果、ブレード13の掻き刃41は、桟31と接触させられたままその基部から先端方向に滑って行き、桟31に付着していた磁性粉Sは掻き取られていく。掻き取られた磁性粉Sは、シュート16を介してバスケット15内に落下する。
【0034】
やがて、図6(c)に示すように、桟31は、ブレード13の掻き刃41を乗り越える。図6(b)および(c)に、桟移動経路Pが鎖線で示されている。図6(b)では、ブレード13は桟移動経路P内に進入させられた掻取位置に位置させられている。図6(c)では、ブレード13が桟移動経路Pから退去させられた退去位置に位置させられている。
【0035】
ブレード13の位置は、上記の位置に限定されない。また、アーム14の位置は、桟31がブレード13を適切に回避しうる位置に設定されるべきである。また、アーム14を付勢する手段としては、ばね44に代えて、錘を用いるようにしてもよい。
【0036】
上記において、スラッジが鉄等であれば、磁性粉そのものであるが、スラッジが非磁性体である場合、これを担磁(磁性を付与する)すれば、処理可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明による磁性粉除去装置の垂直縦断面図である。
【図2】図1のII−II線にそう垂直横断面図である。
【図3】同装置のプレスローラによるプレス動作を示す説明図である。
【図4】図1のIV−IV線にそう断面図である。
【図5】図4のV−V線にそう断面図である。
【図6】同装置のブレード13による掻き取り動作説明図である。
【符号の説明】
【0038】
11 汚液槽
12 コンベヤ
25 ベルト
31 桟
32 送り側経路
73 磁石
S 磁性粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚液槽と、磁性粉を汚液槽内から汚液槽外まで搬送するためのコンベヤとを備えており、コンベヤは、搬送面に複数の横桟がベルト移動方向に一定間隔で設けられているベルトを有しており、ベルトは、汚液槽内を前向きにのびた送り側経路を有しており、送り側経路を移動中のベルトの上方に磁気手段が配置されており、磁気手段に吸引された磁性粉が、送り側経路を移動中のベルトの横桟によって掻取られうるようになされている磁性粉除去装置。
【請求項2】
汚液槽内が垂直仕切壁によって前後に区画されており、送り側経路を移動中のベルトの搬送面および仕切壁の下縁間には磁気間隙が形成されており、磁気手段が、仕切壁の下縁にそって取付られた複数の磁石よりなる請求項1に記載の磁性粉除去装置。
【請求項3】
汚液槽内の仕切壁の前側に汚液を流入させ、その後側から流出させる流出入手段を備えている請求項2に記載の磁性粉除去装置。
【請求項4】
コンベヤの搬送面を押圧しうるようにプレスローラが配置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の沈殿物除去装置。
【請求項5】
プレスローラ外面が、隣り合う2つの横桟にまたがりうる大きさ以上に形成されている請求項4に記載の磁性粉除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−229430(P2008−229430A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69838(P2007−69838)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000241555)豊菱産業株式会社 (15)
【出願人】(396014212)
【Fターム(参考)】