説明

磁気ビーズを用いた被検物質の検出方法

[要約]
[課題] 試料中の被検物質の有無あるいは量を高感度かつ簡便に検出・測定する新規測定方法を提供する。
[解決手段] 被検物質に対して特異的に結合する物質を、スペーサーを介して特定の磁気ビーズと結合してなる標識化特異的結合物質に、被検物質が結合した結合体の、該結合体から得られる磁気シグナルを検出することで、被検物質の検出を行うことを特徴とする、被検物質の検出方法。
[選択図]なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の被検物質の有無あるいは量を高感度かつ簡便に検出・測定する被検物質の検出方法に関する。さらに詳しくは、スペーサーとしてのポリアルキレングリコールを介して磁気ビーズと、被検物質(例えば抗原)に対して特異的結合をする物質(例えば抗体)が結合した標識化特異的結合物質を用いて、該標識化特異的結合物質と被検物質との特異的反応を利用して被検物質の有無判断、及び定量を該標識化特異的結合物質より発せられる磁気シグナルを磁気センサーを用いて行う方法に関する。従って、本発明は生命科学分野、特に医療分野、臨床検査分野において有用である。
【背景技術】
【0002】
本発明の被検物質の検出方法として代表的なものは、被検物質として抗原を用いるイムノアッセイ(免疫測定法、免疫定量法ともいう)をあげることができ、該イムノアッセイでは、抗原の検出を、抗体に結合させた標識物質から得られる情報から行うことは従来より知られている。そして、該標識物質に磁気ビーズを用いる方法も同様に、従来から知られている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に開示された方法では、標識物質として直径で数ナノメーター〜数ミクロンの磁気ビーズが抗体と結合した抗体(二次抗体)は、抗体に対して磁気ビーズが大きなサイズであり、かつ、磁気ビーズの比重が大きいことにより、二次抗体の運動性、拡散性が極端に低く、抗原抗体反応のスピードが低下し、検出感度が維持できないという問題点があった。しかも実際には、磁気ビーズは磁気シグナル検出に用いられる関係上、サイズが大きいほど検出感度の上で有利であるため、通常のイムノクロマトグラフィーなどに用いられる金コロイド、ラテックス、ポリスチレンビーズに較べると直径で数倍から10倍以上大きな径が用いられている。このことも、標識物質に磁気ビーズを用いる上で大きな問題となっている。
【0003】
一方、イムノアッセイの別の態様として、標識物質として利用しない磁気ビーズに結合した抗体(一次抗体)に抗原を結合させ、該抗原に、さらに標識物質として蛍光、酵素などを結合した別の抗体(二次抗体)を結合させた(一次抗体)−(抗原)−(二次抗体)の構造を有するサンドイッチ構造体として、該一次抗体が有する磁気ビーズの特性を利用して選択的に該構造体を凝集させた後(BF(Binding Free)分離)、蛍光、酵素といった標識物質から抗原の検出を行うものもある(特許文献2)。
また、スペーサーを介して磁気ビーズに抗体を結合させた結合体に、さらに、抗原を結合させたものを、磁気ビーズの特性を利用して抗原を回収する磁気分離・磁気輸送に用いるものもある(特許文献3)。
しかしながら、該サンドイッチ構造体を用いたイムノアッセイ法、磁気分離・磁気輸送方法ともに、磁気ビーズを標識物質として用いるものではないため、磁気ビーズの規格、特に大きさについては規定がなく、特許文献2の場合、具体的には直径0.01μm程度の磁気ビーズを用いることを開示している。このような磁気ビーズの大きさの場合、磁気ビーズを標識物質として用いると、磁気ビーズが小さいために、得られるシグナルが小さく被検物質の検出が困難となってしまう問題が生じている。
【0004】
即ち、標識物質として検出に充分な磁気シグナルを発生し得る磁気ビーズを用い、かつ、該磁気ビーズ上に配置された被検物質に対して特異的に結合する物質が結合した、標識化特異的結合物質であって、被検物質と反応効率の優れる物は、現在、存在していない。
【0005】
【特許文献1】特表2001-524675号公報
【特許文献2】特開平4-323560号公報
【特許文献3】特開2002-131320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、磁気ビーズによって標識化された被検物質に対して特異的に結合する物質(標識化特異的結合物質)に、被検物質を結合させて得られる結合体の、該結合体中の磁気ビーズから得られるシグナルを検出することで被検物質を検出する被検物質の検出方法において、被検物質と反応効率が良く、かつ、検出に充分な磁気シグナルを得られる標識化特異的結合物質の提供と、それを用いた被検物質の検出方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、標識物質として特定の大きさを有する磁気ビーズを用いて、該磁気ビーズに特定の長さを有するスペーサーを介して、被検物質と特異的に結合する物質を結合させた標識化特異的結合物質を用いることで被検物質を精度良く検出することを可能にせしめたものである。
【0008】
即ち、本発明は、
1、被検物質に対して特異的に結合する物質を、スペーサーを介して直径0.1〜10μmの磁気ビーズと結合してなる標識化特異的結合物質。
2、該スペーサーがポリアルキレングリコールであることを特徴とする1、に記載の標識化特異的結合物質。
3、該ポリアルキレングリコールの繰り返し単位の個数が2〜500個であることを特徴とする2、に記載の標識化特異的結合物質。
4、該ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであることを特徴とする3、に記載の標識化特異的結合物質。
5、該スペーサーがアビジン・ビオチン結合で該磁気ビーズと結合してなることを特徴とする1、〜4、のいずれかに記載の標識化特異的結合物質。
6、該被検物質が抗原で、該被検物質に対して特異的に結合する物質が抗体であることを特徴とする1、〜5、のいずれかに記載の標識化特異的結合物質。
7、1、〜6、のいずれかに記載の標識化特異的結合物質を有することを特徴とする該被検物質の検出用キット。
8、1、〜7、のいずれかに記載の標識化特異的結合物質に、被検物質が結合した結合体の、該結合体から得られる磁気シグナルを検出することで、被検物質の検出を行うことを特徴とする、被検物質の検出方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明を採用することにより、磁気ビーズ標識化二次抗体のような標識化特異的結合物質の、被検物質との反応速度を向上させることができ、かつ、高感度な磁気センシングによる高感度磁気センサー測定の両立を実現可能とすることができる。
そして、本発明によって提供される被検物質の検出技術は種々の抗原や、リガンドといった被検物質の定性・定量に応用することが可能である。特にイムノアッセイによる血液、各種体液およびぬぐい液等に含まれる抗原検査などの医療診断、検査薬領域に好適な技術として適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明において、被検物質にはレセプターに対するリガンドや、抗体に対する抗原のごとく、特異的結合を達成し得る一対の物質の、一方の物質であって、特に、医療分野、臨床検査分野で直接検出することが困難な物質をいい、先述のリガンド、抗原や、相補的DNAなどをあげることができる。
以下の説明では、被検物質に抗原を用いた場合について説明するが、これをもって本発明の被検物質が抗原に限られるものではない。尚、以下の説明中、抗原が被検物質、抗体が被検物質に対して特異的に結合する物質、標識化二次抗体が標識化特異的結合物質に相当する。
【0011】
抗原、抗体の例としては、一般にいう抗原抗体反応に関与するものであれば構わず、例えば、C-polysaccharide抗原とAnti-C-polysaccharide抗体(デンマーク国スタッテンツセルミンスタット社製、ウサギポリクローナル抗体)のproteinGカラム精製抗体画分の組合せ、あるいは欧州特許第1104772号明細書に開示されている検出対象となる細菌に対するリボゾーム蛋白質L7/L12抗体とそれに対応する検出対象となる細菌のリボゾーム蛋白質L7/L12抗原などが挙げられ、さらに具体的には同特許明細書に開示されている抗マイコプラズマニューモニア抗体AMMP−1とマイコプラズマニューモニアのリボゾーム蛋白質L7/L12の組合せ、抗マイコプラズマニューモニア抗体AMMP−1の生産株MPRB-1の兄弟株MPRB-2〜5から得られる抗マイコプラズマニューモニア抗体AMMP-2〜5とマイコプラズマニューモニアのリボゾーム蛋白質L7/L12の組合せ、抗ヘモフィルスインフルエンザ抗体HIRB-2とヘモフィルスインフルエンザのリボゾーム蛋白質L7/L12の組合せ、抗ストレプトコッカスニューモニア抗体AMSP-2とストレプトコッカスニューモニアのリボゾーム蛋白質L7/L12の組合せ、抗クラミジアニューモニア抗体AMCP-1とクラミジアニューモニアのリボゾーム蛋白質L7/L12の組合せなどがあげることができるが本発明に適用しうる抗体と抗原の組み合わせはこれらの組み合わせになんら限定されるものではない。
尚、上記の抗マイコプラズマニューモニア抗体AMMP-1〜5のうちAMMP-1は、高い反応性でマイコプラズマニューモニアとのみ一対一の結合をするので好ましい。
【0012】
本発明では、抗原と特異的結合をする抗体に標識物質を結合させた二次抗体(標識化二次抗体)の構造に特徴を有するので次に、本発明で用いることができる標識化二次抗体について説明する。
本発明に用いることができる標識化二次抗体は、標識物質に磁気ビーズを用いることを特徴とする。
本発明に用いることのできる磁気ビーズとは、少なくとも外部から磁界を作用させている間は磁化する粒子であれば良い。この磁気ビーズとしては、磁性体を単独で粒子状に成形した粒子、磁性体を核としてその表面をポリスチレン、シリカゲル、ゼラチン、若しくはポリアクリルアミドなどの高分子物質で被覆した粒子、ポリスチレン、シリカゲル、ゼラチン、若しくはアクリルアミドなどの高分子物質の粒子を核として磁性体を被覆した粒子、赤血球、リポソーム若しくはマイクロカプセルなどの閉じた袋状の物質に磁性体を封入した粒子等を挙げることができる。本発明では、後述するように、磁気ビーズ表面上に抗体等を結合させて標識化二次抗体とする必要性から、抗体等を結合させやすい磁性体を核としてその表面をポリスチレン、シリカゲル、ゼラチン、若しくはポリアクリルアミドなどの高分子物質で被覆した粒子が好ましい。
【0013】
尚、前記の磁性体としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属やそれらを含む合金、非磁性体中に前記強磁性金属やそれらを含む合金を含有するもの、前記強磁性金属中若しくは前記強磁性金属を含む合金中に非磁性体を含有するもの等を挙げることができる。
また、本発明で用いることができる磁気ビーズは、一般的に超常磁性体といわれるもので、外部から磁石を作用させている間は磁化し、外部からの磁石の遮断により速やかに減磁する性質を持つものであることが特に好ましい。
以上のような物性を有する磁気ビーズとしては、例えば、ノルウェー国Dynal社製Dynabeads M-450、M-270、M-280(Dynabeadsは登録商標)、Dynabeads Myone(登録商標)、米国Seradyn社製Sera-mag(登録商標)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
磁気ビーズの粒子径は、小さいと抗原と結合した二次抗体磁性体含有量の絶対量が少なくなることから磁気センサーで充分な感度が得られない。従って、本発明の磁気ビーズの粒子径としては0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。また、粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、多面体形状とすることができる。
【0014】
本発明に用いることができる標識化二次抗体は、標識物質としての磁気ビーズに抗体を結合した構造を有するが、抗原と抗体とを反応効率よく特異的結合をさせる効果を奏させるためには、スペーサーを介して磁気ビーズと抗体を結合させた構造とするのが好ましい。
本発明で用いることができるスペーサーは、親水性を有するものであれば構わず、例えば、ポリアルキレングリコール、糖鎖、リン脂質といったものをあげることができる。中でも、スペーサー同士が絡み合うことが低いと推察されるポリアルキレングリコールが好ましい。
本発明で用いることができるポリアルキレングリコールは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど種々の該当する化合物が挙げられるが、その中でも特に、ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0015】
本発明に用いられるスペーサーは種々の長さの物を用いることができるが、より効果を奏するためには、特定の長さを有することが好ましく、10Å〜2000Åが好ましく、より好ましくは200Å〜2000Åである。このような長さは、例えば、ポリアルキレングリコール(以下、PALGと省略することがある)を例にとれば、PALGのモノマーが2〜500個繰り返された構造、特に50〜500個繰り返された構造により達成することが可能であり、ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール(以下PEGと記載する)であれば重量平均分子量2200〜22000であれば達成することが可能であり、好ましくは重量平均分子量が2500〜4000の3000前後である。
本発明では、標識物質の磁気ビーズの大きさと、スペーサーの長さは上記の条件を満足すればよいが、より効果を奏するには、磁気ビーズの大きさ(R)とスペーサーの長さ(L)との間にR/Lが0.5〜10000、より好ましくは2.5〜500の関係がある場合である。
【0016】
本発明では、スペーサーは、磁気ビーズと、それに結合する抗体との間に位置する直鎖上の親水性化合物であり、該スペーサーを有することで抗体が反応液中でより自由に稼動可能となり、標識化二次抗体として抗原との反応性が増大し、結果的に、磁気ビーズで標識された標識化二次抗体の抗原抗体反応速度を飛躍的に向上させることができると推察される。これにより、磁気ビーズが大きく、また比重が大きい場合であっても、高い検出感度で、抗原と標識化二次抗体の抗原抗体反応速度を向上せしめたのである。従って、今後、磁気特性の向上により磁気ビーズの小径化が可能となった場合は、小径化による抗体の移動自由度の増大と相俟って、より一層抗原と抗体の反応速度の向上が達成可能となる。
【0017】
本発明では、標識化二次抗体は、磁気ビーズに磁性体を核としてその表面をポリスチレン、シリカゲル、ゼラチン、若しくはポリアクリルアミドなどの高分子物質で被覆した磁気ビーズを用いた場合、磁気ビーズ表面のCOOH基やNH2基などの官能基を利用してスペーサーと共有結合で結合させる方法を用いても構わないが、さらに好適にはビオチン化されたスペーサーとアビジン化された磁気ビーズを用いてアビジン−ビオチン結合により標識化二次抗体とするのが望ましい。
【0018】
以下に、PEGをスペーサーに用い、磁気ビーズとアビジン・ビオチン結合で結合して得られる標識化二次抗体の製造方法の一例を示す。
先ず初めに、末端のうち一方がビオチンであり、他方が−NHS、マレイミドなどの官能基であるPEGを用いて抗体にPEG鎖およびビオチンを導入する。
Phosphate Buffered Saline(以下PBSと称する)、Tetoraborateなどの緩衝液中において、抗体0.1mg〜10mg(6.7×10−7mmol〜6.7×10−5mmol)に蒸留水で溶解したBiotin-PEG-CO2-NHS(米国シェアーウオーター社製、MW3400)試薬3〜10倍モル等量を添加し、4℃〜室温で2時間〜12時間反応させる。上記反応液を遠心型限外ろ過又はゲルろ過によって精製し、PEG-biotin化抗体液とする。
得られたPEG-biotin化抗体液の分子あたりのビオチン化量をHABA試薬(米国ピアース社製)により定量し、Biotin化度が1〜10個/抗体1分子であることを確認する。
【0019】
次にDynabeads M-270 streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径2.8μm)0.1mg〜10mgの磁気ビーズを用意し、磁気ビーズとPEG-biotin化抗体の組成比が重量比で、PEG-biotin化抗体/磁気ビーズ=1/1〜1/100となるように前記のPEG-biotin化抗体を添加し、4℃〜室温で1時間〜12時間攪拌しながら反応を行う。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液から磁気ビーズ標識化二次抗体のみを磁石を用いて回収し、2〜3回PBSで洗浄した後、最終的に1%BSA/PBS溶液(BSA:牛血清アルブミン)で調整した磁気ビーズ標識化二次抗体のビーズ濃度として0.01%〜1%濃度に調整する。
以上、本発明に用いることができる標識化二次抗体の製造方法の一例について説明した。
【0020】
本発明では、該標識化二次抗体を抗原と抗原抗体反応させて得られた結合体から抗原の有無、量を直接検出することも可能であるが、高い検出精度を得るために、さらに、該結合体中の抗原を、いわゆる検出エリア内に固定化した一次抗体中の抗体に抗原抗体反応させることで検出エリア内に、(標識化二次抗体)−(抗原)−(固定化一次抗体)なる構造からなるサンドイッチ構造体となし、検出エリア内に固定化された該構造体中の磁気ビーズから得られる磁気シグナルを検出することによって抗原の検出を行うことが好ましい。
【0021】
そこで次に、検出エリア内に固定化した一次抗体について説明する。
一次抗体に用いられる抗体は、二次抗体に用いられる抗体と同じであっても異なっても良いが、被検物質としての抗原に対して特異的に結合するものであることが必要である。 そして、一次抗体は通常のイムノアッセイ用一次抗体吸着基板として用いられるポリスチレン、ポリジメチルシロキサンコートシリコン、ニトロセルロース、ガラス繊維などさまざまな材料を用いて固定化することが可能であり、また一次抗体のNH2残基、COOH残基、SH基などを利用した共有結合法によりさらに多様な材料、例えば官能基を表面に保持するガラス基板・ポリスチレン・ポリジメチルシロキサンコートシリコン、ニトロセルロース、ガラス繊維などに一次抗体を共有結合で固定化して、本発明の検出エリアとすることが可能である。
【0022】
以下に、一次抗体が固定化された検出エリアの製造方法の一例を示す。
ポリスチレン基板上へ1μg/ml〜50μg/ml濃度になるよう燐酸ナトリウム緩衝液など適当な緩衝液中へ溶解したAnti-C-polysaccharide抗体(デンマーク国スタッテンツセルミンスタット社製、ウサギポリクローナル抗体)を1〜50μlスポットし、4℃〜室温で湿潤箱中にて30分〜24時間反応させる。蒸留水にて平板表面を洗浄後、1%BSA/PBS溶液1μl〜50μlをスポットしさらに4℃〜室温で湿潤箱中にて30分〜24時間反応させる。蒸留水にて平板表面を洗浄し表面を乾燥させ、一次抗体固定化基板を作製する。
【0023】
次に、上記の標識化二次抗体、検出エリアに固定化された一次抗体を用いた、抗原の検出方法について説明する。
初めに、検出に用いる試料の製造方法について説明する。
先ず、抗原を含有するPBSなどの緩衝液を、検出エリアに固定化された一次抗体にスポットし、4℃〜室温、5分〜1時間放置して抗原と一次抗体とを反応させ、一次抗体に抗原を結合させる。
引き続き、磁気ビーズ標識化二次抗体のビーズ濃度としてを0.01%〜1%含む試薬を検出エリアに1〜50μl滴下した後、4℃〜室温、5分〜1時間放置して一次抗体に結合させた抗原と標識化二次抗体とを反応させ、その後蒸留水等で未反応の二次抗体を洗い流すことにより、(標識化二次抗体)−(抗原)−(固定化一次抗体)なるサンドイッチ構造体を得ることができる。
本発明では、以上のようにして製造した検出エリア内に固定化された該サンドイッチ構造体を有する試料を用いて検出を行う。
【0024】
尚、上記の試料を、以下に示す一連の工程を一つのキット内で実施しうる検出用キットを利用して製造することも可能である。
即ち、該検出用キットは、予め標識化二次抗体がグラスファイバー、不織布、ニトロセルロースなどのような担体上に担持された標識化二次抗体担持エリアと、一次抗体が固定化された検出エリアとを備え、抗原を含有するPBSなどの緩衝液を、先ず、標識化二次抗体担持エリアを通過させるように設定する。この際、標識化二次抗体と抗原とが結合し、さらに抗原と結合した標識化二次抗体は担体から遊離して、次なる検出エリアに達するよう設定する。引き続き、検出エリアに達した標識化二次抗体と結合した抗原は、検出エリアに固定化された一次抗体と結合してサンドイッチ構造体を構成し、検出用の試料となる。
【0025】
本発明では、上記のようにして製造した試料を用い、検出エリア内に固定化されたサンドイッチ構造体を構成する磁気ビーズから得られる磁気シグナルを検出することで、抗原の有無判断、定量を行うので以下に磁気シグナルの検出方法について説明する。
【0026】
本発明の磁気シグナル検知用の磁気センサーは、市販されている通常の磁気センサーを使用することが出来、例えば、ホール素子、半導体MR素子(SMR素子)、GMR (Giant magnetoresistance)素子等である。これらの磁気センサーは被検出物質の数、検出方法に応じて、単独で用いてもいいし、複数個を配置して用いることも出来る。また場合よっては、各素子を微小化して、これらをアレー状に配置して測定することも出来る。採用されるセンサーチップは、被検出物質に応じた感度、同チップのコスト、測定の信頼性、安定性等を考慮して選択される。中でも、半導体SMR素子は価格と検出感度の面から好ましい。
【0027】
そこで、以下に半導体SMR素子(以下、磁気抵抗素子センサーと称する)を用いて磁気シグナルを検出する方法について説明する。
具体的には、図1示す磁気測定装置及び図2示す信号処理装置を用いて測定する。ここに図1は本発明の磁気シグナル検知システムの実施形態を模式的に示した図である。101は二次元回転中心を示し、102は回転中心101に対して法線方向に磁界を発生する磁場発生装置である。103は磁場発生装置102によって生じる磁場に対して垂直に設置された磁気抵抗素子センサーである。104は磁気抵抗素子センサー103と磁気を測定する試料105を平行に対峙させるための試料設置台である。106は磁場発生装置102と磁気抵抗素子センサー103が固定され二次元回転中心101を持つ固定テーブルである。107は試料設置台104が固定され二次元回転中心101を中心に回転可能な回転テーブルである。回転テーブル107は回転中心101を中心として駆動機能1030、及び駆動回転中心1010、駆動伝達機能1020によって固定テーブル106と二次元同心円状に相対運動可能である。
【0028】
本発明に用いる磁気測定装置をさらに具体的に説明すると、永久磁石を内蔵した磁気抵抗素子センサーとして日本国村田製作所株式会社製磁気抵抗素子BS05を用い、SUS304で作成した固定テーブルに設置したものを用い、アルミ製の回転テーブルにプラスチック製の試料設置台を固定し、試料と磁気抵抗素子センサーの二次元同心円状の相対運動を実現する。増幅器は米国ナショナルセミコンダクター社製オペアンプLF−356Mを2個使った負帰還の2段増幅器を使用し、電圧増幅率5万〜500万倍となるよう回路定数を決定する。
そして、駆動機能及び駆動伝達機能に日本国オリエンタルモーター社製M315-401に同社製ギアヘッド3GN15Kを取り付けたスピードコントロールモーター及びタイミングベルトを用いて磁気抵抗素子センサーの感度、電圧増幅率、ノイズの発生状況を考慮して最適な回転数を決定する。
【0029】
以上のような磁気測定装置から得られた信号は以下に説明する信号処理装置による処理によって抗原の有無、量が検出される。
図2は、本発明におけるシグナル検知システムの処方の結果を示した図であり、磁気抵抗素子センサーから得られた磁気測定信号を利用可能な形態に変換する信号変換装置、および磁場発生装置および磁気抵抗素子センサーに対して、試料が選択された回転中心を中心として二次元同心円状に回転運動可能な駆動機能を制御する為の工程をブロック図で示したものである。
【0030】
増幅器201は、磁気抵抗素子センサーの出力信号を増幅するものである。センサーの種類によって、電流増幅または電圧増幅を使い分けることができる。位置検出手段202は必須のものではないが、たとえば信号処理において平均化処理等の手法を採ったり、試料位置に同期させて信号を取り込むといった信号対雑音比の向上を図る場合は設置することが好ましい。位置検出手段としては、二次元回転中心や回転テーブルに取り付けた磁石を検知する磁気センサー、二次元回転中心や回転テーブルに取り付けたマーカーを検知する光学センサー、二次元回転中心や回転テーブルに取り付けた突起を検出するスイッチ等一般的なものが利用可能である。
【0031】
アナログ/デジタル変換手段203は、増幅器201により増幅されたアナログ信号を演算処理及び記憶処理が可能な形態であるデジタル信号に変換する手段であり、一般的な回路が利用可能である。駆動制御機能204は駆動機能を制御するものであって、二次元回転中心や回転テーブルの回転数を制御したり、位置検出手段202と同調して回転数の微調整を行う手段である。
【0032】
中央演算処理205は、デジタル化された信号の演算、記憶、表示手段への送信、外部機器との通信を実現するものである。外部機器との通信手段206は、得られた測定結果をコンピューターや可搬型記憶媒体やプリンター等に転送するためのものである。電源207は信号処理装置全体に電源を供給する手段である。表示手段208は処理された信号を可視化する手段で液晶表示、プラズマ表示、発光ダイオード、ネオン管、ブラウン管等が用いられる。なお、本発明では、日本国岩通計測株式会社製DS−4264デジタルオシロスコープを用いている。
記憶媒体209は、信号処理中の信号を一時的に蓄積したり信号処理結果を一時的に蓄積する手段であり半導体記憶素子を用いることが好ましい。記憶媒体の必要に応じ蓄積情報をバックアップするための電池210が必要に応じて採用される。
以上、本発明で用いることが可能な磁気シグナルの検出方法について説明した。
尚、上記の記載では磁気抵抗素子センサーの周囲を試料が回転する態様で、抗原の検出を行う方法方法を示したが、このほかにも、磁気センサーの近傍を試料が往復する態様を用いて抗原を検出する方法を用いても構わない。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
〔PEG鎖を介した磁気ビーズによる抗肺炎球菌二次抗体の標識化〕
まず、PEG鎖を介した磁気ビーズによる抗肺炎球菌2次抗体標識化の最初のステップとしてBiotin-PEG-CO2-NHS(米国シェアーウオーター社製、MW3400)を用いて抗体にPEG鎖を以下のように結合させた。
【0034】
Biotin-PEG-CO2-NHS(米国シェアーウオーター社製、MW3400)試薬6.8mgを計量し、100μlの蒸留水に溶解し、20mM水溶液を作成する。
Anti-C-polysaccharide抗体(デンマーク国スタッテンツセルミンスタット社製、ウサギポリクローナル抗体)のproteinGカラム(スウェーデン国ファルマシア社製)精製抗体画分をPBSに脱塩・buffer交換したもの(抗体濃度9.26mg/ml)108μlと先に調整したBiotin-PEG-CO2-NHS 20mM水容液3.3μlとを混合し、室温で2時間反応させた。
上記反応液を米国ミリポア社製遠心型限外ろ過膜(分子量3万カット)によって回転数7500回転で10分間濃縮し、さらに濃縮液にPBS3mlを添加して、同限外ろ過膜で同様の条件で再び濃縮した。さらに、PBS3mlを添加して同様の条件で濃縮する操作を2回繰り返し、未反応のBiotin-PEG-CO2-NHSを除去した精製PEG-biotin化抗体液を取得した。
得られたPEG-biotin化抗体液の分子あたりのBiotin標識率をEZ-link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit試薬(米国ピアース社製)中のbiotin定量試薬により定量したところ抗体1分子あたりのbiotin標識数は2.8分子であった(IgG濃度は3mg/ml)。
【0035】
次にDynabeads M-270 streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径2.8μm)の1%PBS溶液100μlをエッペンドルフチューブに計量し、前記のPEG-biotin化抗体溶液を33μl添加しさらにPBS 367μlでtotal液量500μlにメスアップしたのち、室温で1時間攪拌しながら反応を行った。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液からノルウェー国Dynal社製固定磁石を用いて磁気ビーズ標識化二次抗体のみ回収し、上澄みを除去した。さらにPBS 1mlを添加し同様な操作でPEG鎖を介した磁気ビーズ標識化二次抗体のみを回収・洗浄し最終的に1%BSA/PBS溶液に調整したビーズを0.5%濃度になるように溶解した。
以上のようにして調整したPEG鎖を介した磁気ビーズ標識化二次抗体を実施例2のイムノアッセイ試験に供した。
【0036】
また、比較実験用としてPEGを介さずに同じ磁気ビーズ(Dynabeads M-270 streptavidin)を二次抗体に結合させたビーズの調整も実施した。
この場合、米国ピアース社製のEZ-link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit試薬を用いて仕様書の説明に従い二次抗体のビオチン化を行った。具体的には先に使用したAnti-C-polysaccharide抗体(デンマーク国スタッテンツセルミンスタット社製、ウサギポリクローナル抗体)のproteinGカラム(スウェーデン国ファルマシア社製)精製抗体画分をPBSに脱塩・buffer交換したもの(抗体濃度9.26mg/ml)1mlに、20mg/mlのSulfo-NHS-Biotin水溶液を20μl加え室温にて30分反応させた。得られた反応液をキットに添付のD-salt Dextran Desalting Columnにて3倍ベットボリュームのPBS溶媒にて脱塩置換した。
得られたビオチン化抗体の分子あたりのBiotin標識率をキット付属のbiotin定量試薬により定量したところ抗体1分子あたりのbiotin標識数は3.5分子であった(IgG濃度は4mg/mlであった)。
【0037】
次にDynabeads M-270 streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径2.8μm)の1%PBS溶液を100μlをエッペンドルフチューブに計量し、それに前記のbiotin化抗体溶液を25μl添加しさらにPBS 375μlでtotal液量500μlにメスアップしたのち、室温で1時間攪拌しながら反応を行った。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液からノルウェー国Dynal社製固定磁石を用いて磁気ビーズ標識化二次抗体のみ回収し、上澄みを除去した。
さらにPBS 1mlを添加し同様な操作で磁気ビーズ標識化二次抗体のみを回収・洗浄し最終的に1%BSA/PBS溶液に調整したビーズを0.5%濃度になるように溶解して比較試験用のPEG鎖を持たない磁気ビーズ標識化二次抗体試薬を得た。
【0038】
〔実施例2〕
〔磁気ビーズ標識化二次抗体によるC-polysaccharideイムノアッセイと磁気抵抗素子センサーによるシグナルの検出〕
ポリスチレン平板(面積先1cm角、厚み1mm)上に0.1Mの燐酸ナトリウムbuffer(pH7)に10μg/ml濃度になるよう溶解したAnti-C-polysaccharide抗体(デンマーク国スタッテンツセルミンスタット社製、ウサギポリクローナル抗体のproteinGカラム精製抗体画分)を50μlスポットし、室温・湿潤箱中にて1時間反応させた。
蒸留水にて平板表面を洗浄後、1%牛血清アルブミンの0.1Mの燐酸ナトリウムbuffer(pH7)溶液50μlをスポットしさらに室温・湿潤箱中にて1時間反応させた。
蒸留水にて平板表面を洗浄し10分間ドラフトにて表面を風乾後、10(ng/ml),100(ng/ml),1000(ng/ml)の濃度のC-polysaccharide抗原の生理食塩水希釈液を一次抗体固定化位置内に20μlスポットし室温にて10分間反応させた。再び蒸留水にて表面を洗浄し、ペーパーパッドにて軽く表面の水分をふき取った。
【0039】
次に抗原が補足された平板表面部に実施例1で2種類の方法で調整した磁気ビーズ標識化二次抗体の0.5%溶液をそれぞれ10μlスポットし、室温にて10分間反応させた。
反応終了後の平板表面を結合したビーズがはがれないように蒸留水で洗浄し、風乾後ビーズの平板表面への結合状態を斜めからの散乱光存在下での10倍拡大状態のCCDカメラで観察・判定するとともに磁気抵抗素子センサーにより平板表面の磁気ビーズに由来する磁気シグナルを測定し、磁気シグナルの強度比較測定した。これらの測定結果を表1、表2に示す。
尚、磁気シグナルの強度は、図1および図2に示した、磁気測定装置、信号処理装置を用い、50RPMで駆動させ、10万倍の電圧増幅倍率となるように設定して測定した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
〔実施例3〕
〔PEG鎖を介した磁気ビーズによる抗マイコプラズマ精製蛋白二次抗体の標識化〕
まず、PEG鎖を介した磁気ビーズによる抗マイコプラズマ精製蛋白二次抗体標識化の最初のステップとしてBiotin-PEG-CO2-NHS(米国シェアーウオーター社製、MW3400)を用いて抗体にPEG鎖を結合させた。Biotin-PEG-CO2-NHS(米国シェアーウオーター社製、MW3400)試薬2.9mgを計量し、200μlの蒸留水に溶解し、4.26mM水溶液を作成した。
欧州特許第1104772号明細書に開示されている抗マイコプラズマ抗体AMMP-1をPBSに脱塩・buffer交換したもの(抗体濃度6.99mg/ml)1.5mlと先に調整したBiotin-PEG-CO2-NHS 4.26mM水容液 49.2μlとを混合し、室温で4時間反応させた。
上記反応液を米国ミリポア社製遠心型限外ろ過膜(分子量3万カット)によって回転数7500回転で10分間濃縮し、さらに濃縮液にPBS 3mlを添加して、同限外ろ過膜で同様の条件で再び濃縮した。さらに、PBS 3mlを添加して同様の条件で濃縮する操作を2回繰り返し、未反応のBiotin-PEG-CO2-NHSを除去した精製PEG-biotin化抗体液を取得した。
得られたPEG-biotin化抗体液の分子あたりのBiotin標識率をEZ-link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit試薬(米国ピアース社製)中のbiotin定量試薬により定量したところ抗体1分子あたりのbiotin標識数は1.3分子であった(IgG濃度は10.5mg/ml)。
【0043】
次にDynabeads MyOne streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径1.0μm)の1%PBS溶液100μlをエッペンドルフチューブに計量し、それに前記のPEG-biotin化抗体溶液を40μl添加しさらにPBS 460μlでtotal液量500μlにメスアップしたのち、室温で4時間攪拌しながら反応を行った。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液からノルウェー国Dynal社製固定磁石を用いて磁気ビーズ標識化二次抗体のみ回収し、上澄みを除去した。
さらにPBS 1mlを添加し同様な操作でPEG鎖を介した磁気ビーズ標識化二次抗体のみを回収・洗浄し最終的に1%BSA/PBS溶液に調整したビーズを0.05%濃度になるように溶解した。
以上のようにして調整したPEG鎖を介した磁気ビーズ標識化二次抗体(以下、磁気ビーズ標識PEG化二次抗体1と記載する)を実施例4のイムノアッセイ試験に供した。
【0044】
また、より低分子量のPEGを介して同じ磁気ビーズ(Dynabeads MyOne streptavidin)を二次抗体に結合させたビーズの調整も実施した。
具体的には先に使用した抗マイコプラズマ抗体AMMP-1(5.18mg/ml)250μlを公知文献の手法に従って−SH化したものを用い(Anal.Biochem. 132, 68-73参照)、53.3mMのBiotin-PEG-Maleimide(米国ピアース社製)を7.1μl添加、室温にて2時間反応させた。得られた反応液を米国ミリポア社製遠心型限外ろ過膜(分子量3万カット)によって回転数7500回転で10分間濃縮し、さらに濃縮液にPBS 3mlを添加、同条件により脱塩・洗浄を3回繰り返し、1.4mg/mlの低分子量PEG-biotin化抗体溶液を得た。得られたビオチン化抗体の分子あたりのBiotin標識率を上記キット付属のbiotin定量試薬により定量したところ抗体1分子あたりのbiotin標識数は6.8分子であった。
【0045】
次にDynabeads MyOne streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径1.0μm)の1%PBS溶液を100μlをエッペンドルフチューブに計量し、それに前記の低分子量PEG-biotin化抗体溶液を306.6μl添加しさらにPBS 193.4μlでtotal液量500μlにメスアップしたのち、室温で4時間攪拌しながら反応を行った。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液からノルウェー国Dynal社製固定磁石を用いて磁気ビーズ標識化二次抗体のみ回収し、上澄みを除去した。
さらにPBS 1mlを添加し同様な操作で磁気ビーズ標識化二次抗体のみを回収・洗浄し最終的に1%BSA/PBS溶液に調整したビーズを0.05%濃度になるように溶解して低分子量PEG鎖磁気ビーズ標識化二次抗体試薬(以下、磁気ビーズ標識PEG化二次抗体2と記載する)を得た。
【0046】
さらに、比較実験用にPEGを介さずに同じ磁気ビーズ(Dynabeads MyOne streptavidin)を二次抗体に結合させたビーズの調整も実施した。
この場合、米国ピアース社製のEZ-link Sulfo-NHS-Biotinylation Kit試薬を用いて仕様書の説明に従い二次抗体のビオチン化を行った。具体的には先に使用した抗マイコプラズマ抗体AMMP-1をPBSに脱塩・buffer交換したもの(抗体濃度6.99mg/ml)200μlに、14.0mMのSulfo-NHS-Biotin水溶液を4.5μl加え室温にて3時間反応させた。得られた反応液をキットに添付のD-salt Dextran Desalting Columnにて3倍ベットボリュームのPBS溶媒にて脱塩置換してbiotin化抗体溶液を得た。
得られたビオチン化抗体の分子あたりのBiotin標識率をキット付属のbiotin定量試薬により定量したところ抗体1分子あたりのbiotin標識数は1.6分子であった(IgG濃度は2.05mg/mlであった)。
【0047】
次にDynabeads MyOne streptavidin(ノルウェー国Dynal社製、直径1.0μm)の1%PBS溶液100μlをエッペンドルフチューブに計量し、それに前記のbiotin化抗体溶液を204.8μl添加しさらにPBS 295.2μlでtotal液量500μlにメスアップしたのち、室温で4時間攪拌しながら反応を行った。この反応で得られた磁気ビーズ標識化二次抗体液からノルウェー国Dynal社製固定磁石を用いて磁気ビーズ標識化二次抗体のみ回収し、上澄みを除去した。
さらにPBS 1mlを添加し同様な操作で磁気ビーズ標識化二次抗体のみを回収・洗浄し最終的に1%BSA/PBS溶液に調整したビーズを0.05%濃度になるように溶解して比較試験用のPEG鎖を持たない磁気ビーズ標識化二次抗体試薬(以下、磁気ビーズ標識二次抗体3と記載する)を得た。
【0048】
〔実施例4〕
〔磁気ビーズ標識化二次抗体によるマイコプラズマ精製蛋白イムノアッセイと磁気抵抗素子センサーによるシグナルの検出〕
ポリスチレン平板(面積先1cm角、厚み1mm)上に0.1Mの燐酸ナトリウムbuffer(pH7)に10μg/ml濃度になるよう溶解した欧州特許第1104772号明細書に開示されている抗マイコプラズマ抗体AMMP-3(同明細書中のMPRB-3より得られる)を50μlスポットし、室温・湿潤箱中にて1時間反応させた。
蒸留水にて平板表面を洗浄後、1%牛血清アルブミンの0.1Mの燐酸ナトリウムbuffer(pH7)溶液50μlをスポットしさらに室温・湿潤箱中にて1時間反応させた。
蒸留水にて平板表面を洗浄し10分間ドラフトにて表面を風乾後、10(ng/ml),100(ng/ml),1000(ng/ml)の濃度の精製抗原(マイコプラズマニューモニアのリボゾーム蛋白質L7/L12)の生理食塩水希釈液を1次抗体固定化位置内に20μlスポットし室温にて10分間反応させた。再び蒸留水にて表面を洗浄し、ペーパーパッドにて軽く表面の水分をふき取った。
【0049】
次に抗原が補足された平板表面部に実施例3で調整した3種類の方法で調整した磁気ビーズ標識化二次抗体の0.05%溶液をそれぞれ5μlスポットし、室温にて10分間反応させた。
反応終了後の平板表面を結合したビーズがはがれないように蒸留水で洗浄し、風乾した。ビーズの平板表面への結合状態を斜めからの散乱光存在下での10倍拡大状態のCCDカメラで観察・判定するとともに磁気抵抗素子センサーにより平板表面の磁気ビーズに由来する磁気シグナルを測定し、磁気シグナルの強度比較測定した。これらの測定結果を表3、表4に示す。
尚、磁気シグナルの強度は、実施例2と同様に、図1および図2に示した磁気測定装置、信号処理装置を用い、50RPMで駆動させ、10万倍の電圧増幅倍率となるように設定して測定した。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、高感度な新規被検物質の検出技術として、種々の被検物質の有無判断・定性・定量に応用することが可能である。特にイムノアッセイによる血液、各種体液およびぬぐい液等に含まれる抗原検査などの医療診断、検査薬領域に好適な技術として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のシグナル検知システム(磁気測定装置)の実施形態を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施例2および4におけるシグナル検知システム(信号処理装置)の処方の方法を示した図である。
【符号の説明】
【0054】
101 二次元回転中心
102 磁場発生装置
103 磁気センサー
104 試料設置台
106 固定テーブル
107 回転テーブル
1030 駆動機能
1010 駆動回転中心
1020 駆動伝達機能
201 増幅器201
202 位置検出手段
203 アナログ/デジタル変換手段
204 駆動制御機能
205 中央演算処理装置
206 通信手段
207 電源
208 表示手段
209 記憶媒体
210 電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質に対して特異的に結合する物質を、スペーサーを介して直径0.1〜10μmの磁気ビーズと結合してなる標識化特異的結合物質。
【請求項2】
該スペーサーがポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載の標識化特異的結合物質。
【請求項3】
該ポリアルキレングリコールの繰り返し単位の個数が2〜500個であることを特徴とする請求項2に記載の標識化特異的結合物質。
【請求項4】
該ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項3に記載の標識化特異的結合物質。
【請求項5】
該スペーサーがアビジン・ビオチン結合で該磁気ビーズと結合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の標識化特異的結合物質。
【請求項6】
該被検物質が抗原で、該被検物質に対して特異的に結合する物質が抗体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の標識化特異的結合物質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の標識化特異的結合物質を有することを特徴とする該被検物質の検出用キット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の標識化特異的結合物質に、被検物質が結合した結合体の、該結合体から得られる磁気シグナルを検出することで、被検物質の検出を行うことを特徴とする、被検物質の検出方法。


【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/075997
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517704(P2005−517704)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001504
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)