磁気冷暖房装置
【課題】駆動力の変動を小さくする。
【解決手段】磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fと磁性体10A−10Fの熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する熱輸送器50−1を、間隔を設けて複数並列に配置する熱輸送ユニット1000Aと、熱輸送ユニット1000Aの各磁性体10A−10Fと対峙し各磁性体10A−10Fに選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、対向して配置する熱輸送ユニット1000A及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方を熱輸送器50−1の配置方向に相対的に移動させるモータと、を備え、熱輸送ユニット1000Aの熱輸送器50−1と熱輸送器50−2と間には、磁性体10A−10Fの透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部60を形成する。
【解決手段】磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fと磁性体10A−10Fの熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する熱輸送器50−1を、間隔を設けて複数並列に配置する熱輸送ユニット1000Aと、熱輸送ユニット1000Aの各磁性体10A−10Fと対峙し各磁性体10A−10Fに選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、対向して配置する熱輸送ユニット1000A及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方を熱輸送器50−1の配置方向に相対的に移動させるモータと、を備え、熱輸送ユニット1000Aの熱輸送器50−1と熱輸送器50−2と間には、磁性体10A−10Fの透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部60を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気冷暖房装置に係り、特に、駆動力の変動を小さくできる磁気冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている室温域の冷凍機、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの冷凍機の大半は、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒の相変化を利用している。最近では、フロンガスの排出に伴うオゾン層破壊の問題が露呈し、さらに、代替フロンガスの排出に伴う地球温暖化への影響も懸念されている。このため、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒を用いた冷凍機に代わる、クリーンでかつ熱輸送能力の高い、革新的な冷凍機の開発が強く望まれている。
【0003】
このような背景から、最近になって注目されるようになった冷凍技術が磁気冷凍技術である。磁性体の中には、その磁性体に印加する磁界の大きさが変化すると、その変化に応じて自身の温度を変化させる、いわゆる磁気熱量効果を発現するものがある。この磁気熱量効果を発現する磁性体を利用して熱を輸送する冷凍技術が磁気冷凍技術である。
【0004】
磁気冷凍技術を応用した冷凍機としては、例えば、下記特許文献1に記載されているような、固体物質の熱伝導を利用して熱を輸送する磁気冷凍機がある。この磁気冷凍機は以下のような構成によって熱を伝導させる。
【0005】
磁気を印加すると温度が上昇する正の磁性体と、磁気を印加すると温度が下降する負の磁性体とを、所定の間隔で交互に複数一方向に並べて配置する。正負一対の磁性体で1つの磁性体ブロックを形成する。一方向に並ぶ複数の磁性体ブロックを環状に複数配置して磁性体ユニットを形成する。この磁性体ユニットと同心で内径と外径が略等しいハブ状の回転体に永久磁石を配置して磁気ユニットを形成する。正負の磁性体との間を挿脱する熱伝導部材を正負の磁性体との間で摺動自在となるように配置する。
【0006】
永久磁石が配置されている磁気ユニットを磁性体ユニットと対向するように配置して磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。正負の磁性体との間で挿脱される熱伝導部材を磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。磁気ユニットの回転によって正負の磁性体に同時に磁気が印加されまた除去される。また、熱伝導部材が回転方向に並ぶ正負の磁性体との間で挿脱される。永久磁石と熱伝導部材が回転することで、磁気熱量効果により磁性体が発生する熱を磁性体が配置される一方向に熱伝導部材を介して輸送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−147209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている発明の場合、磁性体ユニットにおいて磁気ユニットの回転方向に隣り合う磁性体間には、熱伝導を遮断するため空隙が形成されている。そのため、磁性体間を永久磁石が通過するときには磁気ユニットに瞬間的に大きな反力がかかり、磁気ユニットの駆動力が変動する。磁性体間を永久磁石が通過するときには磁力線に乱れが生じるからである。
【0009】
また、磁性体ユニットと磁気ユニットとは複数積層され、各磁性体ユニットの磁性体の配置と各磁気ユニットの永久磁石の配置が積層方向で全て同一であり、たとえば、前述の磁性体間の空隙の位置が積層方向で一列に並んでいる。そのため、前述の磁気ユニットの駆動力の変動は、積層した磁気ユニットの数だけ累積され、無視できないほど大きくなる。
【0010】
磁気ユニットの駆動力の変動は次のような不具合を生じさせる。
【0011】
まず、磁気ユニットを駆動するモータの容量は、駆動力の変動分を考慮して大き目のものを用いることになる。このため、モータは大型になり、消費電力が大きくなり、冷凍機の小型化、冷凍機のエネルギー効率に悪影響を与える。また、駆動力の変動は磁気ユニットが一回転する間に周期的に生じるため、冷凍機の騒音や振動の発生原因となる。
【0012】
本発明は、上記のような従来の数々の不具合を軽減するために成されたものであり、駆動力の変動を小さくできる磁気冷暖房装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送ユニット、磁気ユニット及びモータを備える。
【0014】
熱輸送ユニットは、磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、間隔を設けて複数並列に配置する。磁気ユニットは、熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し当該各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する。モータは、対向して配置する熱輸送ユニット及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方を熱輸送器の配置方向に相対的に移動させる。熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間には、磁性体の透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、熱輸送ユニットまたは磁気ユニットの駆動力の変動を小さくできるので、磁気冷暖房装置を駆動するためのモータを小型化でき、モータの消費電力を小さくできる。そのため、磁気冷暖房装置のエネルギー効率を高めることができ、磁気冷暖房装置の低騒音化、低振動化をも達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の熱輸送器を配置した熱輸送ユニットの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した上側の磁気ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した下側の磁気ユニットの構成を示す図である。
【図4】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図5】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図6】本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。
【図7】本発明に係る磁気冷暖房装置の効果を示すグラフである。
【図8】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。
【図9】図8の熱輸送ユニットを挟む上側の磁気ユニットの構成図である。
【図10】図8の熱輸送ユニットを挟む下側の磁気ユニットの構成図である。
【図11】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の断面図である。
【図12】図11の磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットと両磁気ユニットの断面図である。
【図13】熱輸送ユニットに設けた透磁性断熱部の効果の説明に供する図である。
【図14】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。
【図15】図14の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【図16】図14の磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
【図17】実施形態2に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。
【図18】各熱輸送ユニットを積層方向に位相差を持たせて配置した場合の効果の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各実施形態を説明する前に本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理を説明する。
(磁気冷暖房装置の動作原理)
<熱輸送ユニットの構成>
図1は複数の熱輸送器を配置した熱輸送ユニットの構成を示す図である。円形状の熱輸送ユニットは分離部130A−130Dで区分した4つの熱輸送器1−4を有する。各熱輸送器は低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱を伝導させる。各熱輸送器は磁性体と熱伝導部を交互に配置して形成する。磁性体には、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。熱伝導部には、電圧の印加、除去により熱伝導率が大きく変化する特性を持つ材料を用いる。熱伝導部は、電圧を印加(ON)すると熱伝導率が大きくなり、電圧を除去(OFF)すると熱伝導率が小さくなる。このため、熱伝導部は、電圧の印加、除去を制御することで磁性体に熱を伝導させたりさせなかったりすることができ、磁性体の並び方向に向けて効率的に熱を伝達させることができる。
【0018】
たとえば、熱輸送器1は、磁性体100A−100Eと熱伝導部300A−300Gとを交互に配置している。具体的には、低温側熱交換部400Aから熱伝導部300A−磁性体100A−熱伝導部300B−磁性体100B−熱伝導部300C−磁性体100C−熱伝導部300D−磁性体100D−熱伝導部300E−磁性体100E−熱伝導部300F−磁性体100F−熱伝導部300Gの順に配置して高温側熱交換部400Bに至る。低温側熱交換部400Aと熱伝導部300A、熱伝導部300Aから熱伝導部300Gまでの各熱伝導部と磁性体、熱伝導部300Gと高温側熱交換部400Bは相互に隙間なく接続してある。熱輸送器2−4の構成も熱輸送器1の構成と同一である。
【0019】
<磁気ユニットの構成>
図2及び図3に示す磁気ユニットは、図1に示した熱輸送ユニットを上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。磁気ユニットの構成は下記のとおりである。
【0020】
図2は、複数の磁気印加除去部を配置した上側の磁気ユニットの構成を示す図である。円形状の上側の磁気ユニットは分離部200AU−200DUで区分した4つの磁気印加除去部1U−4Uを有する。図2に示す上側の磁気ユニットは、図の表側を図1に示す熱輸送ユニットの表側に対向して位置させ、上側の磁気ユニットの中心を熱輸送ユニットの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図2は、熱輸送ユニットに対向して位置させた上側の磁気ユニットを熱輸送ユニットに向かって上から透視した状態を表している。
【0021】
磁気印加除去部1Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Uが対峙する時刻T1の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石210A、磁性体100Cに対向する永久磁石210C、磁性体100Eに対向する永久磁石210Eを有する。
【0022】
磁気印加除去部2Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Uが対峙する時刻T2の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石220B、磁性体100Dに対向する永久磁石220D、磁性体100Fに対向する永久磁石220Fを有する。
【0023】
磁気印加除去部3Uと磁気印加除去部4Uは上側の磁気ユニットの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部2Uと同一である。磁気印加除去部3Uは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Uは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0024】
図3は、複数の磁気印加除去部を配置した下側の磁気ユニットの構成を示す図である。円形状の下側の磁気ユニットは分離部200AD−200DDで区分した4つの磁気印加除去部1D−4Dを有する。図3に示す下側の磁気ユニットは、図の表側を図1に示す熱輸送ユニットの裏側に対向して位置させ、下側の磁気ユニットの中心を熱輸送ユニットの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図3は、熱輸送ユニットに対向して位置させた下側の磁気ユニットを熱輸送ユニット側から見た状態を表している。
【0025】
磁気印加除去部1Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Dが対峙する時刻T1の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石260A、磁性体100Cに対向する永久磁石260C、磁性体100Eに対向する永久磁石260Eを有する。
【0026】
磁気印加除去部2Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Dが対峙する時刻T2の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石270B、磁性体100Dに対向する永久磁石270D、磁性体100Fに対向する永久磁石270Fを有する。
【0027】
磁気印加除去部3Dと磁気印加除去部4Dは下側の磁気ユニットの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dと磁気印加除去部2Dと同一である。磁気印加除去部3Dは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Dは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0028】
上側の磁気ユニットの各磁気印加除去部1U−4Uと下側の磁気ユニットの各磁気印加除去部1D−4Dは熱輸送ユニットの各熱輸送器1−4を介して上下方向で対向する。上側の磁気ユニットと下側の磁気ユニットは、上側の磁気ユニットの分離部200AU−200DUと下側の磁気ユニットの分離部200AD−200DDが常に対向するように、相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0029】
<熱輸送の原理>
図4及び図5は、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。図4は、時刻T1と時刻T2の2つの状態を示す。時刻T1の状態は、図1の熱輸送ユニットのA−A線が図2及び図3の上側と下側の磁気ユニットのA−A線と一致している状態である。つまり、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部1Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部1Dに対峙している状態である。また、時刻T2の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部2Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部2Dに対峙している状態である。図5は、時刻T3と時刻T4の2つの状態を示す。時刻T3の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部3Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部3Dに対峙している状態である。また、時刻T4の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部4Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部4Dに対峙している状態である。
【0030】
時刻T1では、図4に示す通り、磁性体100Aに永久磁石210Aと260Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石210Cと260Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石210Eと260Eが位置する。時刻T1では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0031】
時刻T2では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T1から90度時計方向に回転するので、図4に示す通り、磁性体100Bに永久磁石220Bと270Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石220Dと270Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石220Fと270Fが位置する。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0032】
時刻T3では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T2からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Aに永久磁石230Aと280Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石230Cと280Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石230Eと280Eが位置する。時刻T3では、時刻T1と同じく、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0033】
時刻T4では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T3からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Bに永久磁石240Bと290Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石240Dと290Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石240Fと290Fが位置する。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0034】
このように、永久磁石の位置関係を追うと、時刻T1からT4に移行する間に、時刻T1とT2における、永久磁石、磁性体、熱伝導部の同じ位置関係が2回繰り返される。
【0035】
上記のように、各磁性体には正の磁性体を用いているので、磁気が印加されると発熱し、磁気が除去されると吸熱する。また、熱伝導部には磁気の印加除去によって熱伝導率が変化する材料を用いているので、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる。
【0036】
したがって、時刻T1からT4に移行するにしたがって、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに向けて熱が移動し、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間に温度差ができる。温度差ができる原理は次のとおりである。
【0037】
図6は、本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。熱が移動していく様子は図4と図5を参照しながら説明する。
【0038】
まず前提として、全ての磁性体が同一材料で形成されており、全ての磁性体の磁気熱量効果が同一の種類であって、温度変化量が5℃のものを用いた場合を想定する。具体的には、全ての磁性体は、磁気が印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると5℃温度が下降する特性を持っていると想定する。また、全ての熱伝導部材も電圧の印加、除去によって同じように熱伝導率が大きくなりまた小さくなる特性を持っていると想定する。
【0039】
まず、初期の時刻T1の状態では全ての磁性体100A−100F及び熱伝導部300A−300Gが室温の20℃になっている。低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間で、交互に配置した磁性体と熱伝導部は熱輸送器を形成する。
【0040】
次に、時刻T2の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T1で示す状態から時刻T2で示すような状態になる。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6に示すように、磁性体100Aの温度が5℃下降し、熱伝導部300Aによる熱伝導が可能になって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動する。また、磁性体100B、100Dの温度が5℃上昇し、磁性体100C、100Eの温度が5℃下降し、熱伝導部300C、300Eによる熱伝導が可能になって、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動する。また、磁性体100Fの温度が5℃上昇し、熱伝導部300Gによる熱伝導が可能になって、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0041】
時刻T2の状態では、磁気が除去された磁性体100A、100C、100Eの温度が15℃に下降し、磁気が印加された磁性体100B、100D、100Fの温度が25℃に上昇する。このため、図6に示すように、熱伝導部300A、300C、300E、300Gを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0042】
この熱の移動によって、図6のT2´の状態で示すように、磁性体100Aと低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100Fと高温側熱交換部400Bの温度が22.5℃になる。
【0043】
次に、時刻T2´の状態からT3の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4及び図5の時刻T2に示す状態から時刻T3で示すような状態になる。時刻T3では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加する。その結果、磁性体100A、100C、100Eの温度が5℃上昇し、磁性体100B、100D、100Fの温度が5℃下降し、熱伝導部300B、300D、300Fによる熱伝導が可能になって、磁性体100Aから磁性体100Bに、磁性体100Cから磁性体100Dに、磁性体100Eから磁性体100Fに熱が移動する。
【0044】
時刻T3の状態では、磁気が印加された磁性体100A、100C、100Eの温度が22.5℃または25℃に上昇し、磁気が除去された磁性体100B、100D、100Fの温度が15℃または17.5℃に下降する。このため、図6に示すように、熱伝導部300B、300D、300Fを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0045】
この熱の移動によって、図6のT3´に示すように、低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100A、100Bの温度が18.75℃になる。磁性体100C、100Dの温度が20℃になり、磁性体100E、100Fの温度が21.25℃になる。高温側熱交換部40Bの温度は22.5℃のままである。
【0046】
次に、時刻T3´の状態からT4の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T2で示した状態と同一の状態になる。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6のT2. T4に示すような状態となって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動し、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動し、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0047】
以上の通り、上側の磁気ユニットと下側の磁気ユニットが同期して1回転する度に、時刻T1の状態から時刻T4の状態が繰り返されて、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。時間が経過するにしたがって、図7に示すように、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が大きくなっていく。最終的には、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が安定する。この状態で、低温側熱交換部400Aの熱を利用して、たとえば室内の温度を下げることができ、高温側熱交換部400Bの熱を利用して、たとえば室内の温度を上げることができる。
【0048】
なお、図1−図7の説明は、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いた場合に当てはまる。発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として負の磁性体を用いた場合には、熱の移動方向は図4−図6に示した方向とは逆になる。したがって、負の磁性体を用いた場合、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの位置が図1、図4−図6とは逆になる。
【0049】
次に、本発明に係る磁気冷暖房装置の実施形態を、[実施形態1]と[実施形態2]に分けて説明する。[実施形態1]に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間に磁気ユニットの駆動力を低減させる透磁性断熱部を形成する。[実施形態2]に係る磁気冷暖房装置は、複数の熱輸送ユニットを、磁気ユニットの駆動力を低減させるため、各々回転方向に少しずつずらして配置する。
【0050】
[実施形態1]
次に、図8−図12を参照して実施形態1に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。以下に説明する実施形態1に係る磁気冷暖房装置の動作原理は上述の熱輸送の原理と同一である。図8は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。図9は、図8の熱輸送ユニットを挟む上側の磁気ユニットの構成図である。図10は、図8の熱輸送ユニットを挟む下側の磁気ユニットの構成図である。図11は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の断面図である。図12は、図11の磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットと両磁気ユニットの断面図である。
【0051】
(磁気冷暖房装置の構成)
<熱輸送ユニットの構成>
図8に示すように、磁気冷暖房装置の熱輸送ユニット1000Aは中空の円形状に形成する。熱輸送ユニット1000Aの中空の部分には円筒状の高温側熱交換部40Bを配置し、高温側熱交換部40Bを取り囲むように低温側熱交換部40Aを設ける。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の空間に1mm程度の厚みの熱輸送器配置板150(図12参照)をはめ込み、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとで固定する。高温側熱交換部40B内にはベアリング45を介して回転自在にロータ310が取り付けてある。
【0052】
熱輸送器配置板150上の中心角30度の扇状の空間に、図8及び図12に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gで1つの熱輸送器50−1を構成する。熱輸送器50−1に隣接する中心角30度の扇状の空間に、図8に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体11A−11Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部31A−31Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体11A−11Fと熱伝導部31A−31Gで1つの熱輸送器50−2を構成する。熱輸送器50−1、50−2、…は熱輸送器配置板150上に間隔を設けて複数並列に環状に配置する。熱輸送器配置板150上で環状に間隔を設けて熱輸送器50−1、50−2、…を配置したものが熱輸送ユニット1000となる。
【0053】
図8、図12に示すように、熱輸送器50−1、50−2、…は、熱輸送器配置板150上に中心角30度ごとに並列に合計12個配置される。なお、12個の熱輸送器50−1、50−2、…のそれぞれは間隔を設けて配置する。隣り合う熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間には、それぞれの熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10F、磁性体11A−11Fの透磁率と同等の透磁率を有し、隣り合う熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との熱伝導を遮断できる透磁性断熱部60を形成する。熱輸送器50−1、熱輸送器50−2間の熱伝導を透磁性断熱部60で遮断すると、冷暖房に寄与しない熱の放出量が減少し、磁気冷暖房装置の熱効率が向上する。
【0054】
透磁性断熱部60は隣り合う熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10Fと磁性体11A−11Fとの間を埋めるように形成する。透磁性断熱部60は、隣り合う熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10Fと磁性体11A−11Fとの間に入り込み、磁性体10A−10Fと磁性体11A−11F同士の間に空隙がなくなって磁気ユニットの駆動力のピークが平準化される。平準化される理由については後で詳しく説明する。透磁性断熱部60は、断熱性樹脂などの断熱性を備える材料内にその断熱性が阻害されない程度に鉄などの透磁率の大きな金属粉を混ぜ込んで形成する。透磁性断熱部60を複数の材料を配合して形成すると、熱伝導率と透磁率を狙いの値に近づけることができ、透磁性断熱部60の作成も容易になる。
【0055】
なお、熱輸送器配置板150は、熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…が輸送している熱を奪わないように、断熱性の高い材料で形成する。また、熱輸送器配置板150は磁性体に印加される磁束を減少させてはならないので、磁束を通過させやすい材料で形成することが好ましい。熱輸送器50−1、50−2、…は熱輸送器配置板150の上側に設けたが、熱輸送器配置板150の下側に設けても良い。また、熱輸送器50−1、50−2、…は上下の熱輸送器配置板150に挟まれるように設けても良い。
【0056】
低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bには、熱交換のための冷媒を流通させる冷媒通路41と42(図8、図11参照)を形成してある。冷媒通路41と42に流通させる冷媒は液体でも気体でも良い。本実施形態では冷媒に空気を用いる。低温側熱交換部40Aの冷媒通路41には、冷却される空気が図示矢印方向に吸入されて、冷却された空気が図示矢印方向に排出される。高温側熱交換部40Bの冷媒通路42には、取り入れた空気が暖められて図8の裏側から表方向(図11の矢印方向)に排出される。
【0057】
<磁性体>
磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…は、本実施形態では同一材料で形成しており、同一材料として正の磁性体を用いる。正の磁性体は、磁気を印加していないときには常磁性状態(磁気スピンが無秩序の状態)となり、磁気を印加すると強磁性状態(磁気スピンが一方向に揃う状態)となる、常磁性状態と強磁性状態が可逆的に生じる材料を用いて製造する。
【0058】
正の磁性体の材料は、GdやGdをベースとした合金である、Gd−Y系、Gd−Dy系、Gd−Er系、Gd−Ho系、La(Fe,Si)13やLa(Fe,Al)13などの磁性材料を用いることができる。
【0059】
一方、本実施形態では用いていないが、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…に同一材料として負の磁性材料を用いることもできる。負の磁性体の材料としては、FeRh合金、CoMnSiGe系、NiMnSn系などの磁性材料を用いることができる。
【0060】
一般的に、正の磁性体と負の磁性体は、磁気の印加に対して、熱発生が、発熱するか、吸熱するか反対なので、正の磁性体と負の磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさは相違する。したがって、本実施形態のように、正か負のどちらか一方の磁性体を用いた場合には、全ての磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさが同一になる。したがって、磁気冷暖房装置全体として安定した熱伝達特性が得られ熱輸送効率が向上する。また、正の磁性体の磁気熱量効果に比較して負の磁性体の磁気熱量効果の方が小さいので、熱輸送効率を考慮すると、正の磁性体を用いることが好ましい。さらに、負の磁性体の材料は正の磁性体の材料に比較して希少な材料を用いることになるので、コストの面でも正の磁性体を用いることが好ましい。
【0061】
また、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…に正または負の磁性体を用い、さらにこれらの磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…の作動温度を全て同一のものとすることができる。しかし、これに限らず、磁性体の作動温度が異なるものを配置することもできる。例えば、高温側熱交換部40Bに隣り合う磁性体10Fから低温側熱交換部40Aに隣り合う磁性体10Aに向けて段階的に作動温度が低い磁性体を配置することもできる。ここで、作動温度が高い磁性体と作動温度が低い磁性体との相違は、磁気熱量効果を発現する温度域が高い温度であるか低い温度であるかという点にある。
【0062】
このように、熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…内において、磁性体の位置に応じて最適な作動温度を選択すると、均一の作動温度の磁性体を用いた熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…よりも、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で、より大きな温度差を得ることができ、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
<熱伝導部>
図8、図12に示したように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送器50−1では、低温側熱交換部40Bと磁性体10Aとの間に熱伝導部30Aを接続する。磁性体10A−10Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部30B−30Fを接続する。磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間に熱伝導部30Gを接続する。熱輸送器50−2では、低温側熱交換部40Bと磁性体11Aとの間に熱伝導部31Aを接続する。磁性体11A−11Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部31B−31Fを接続する。磁性体11Fと高温側熱交換部40Bとの間に熱伝導部31Gを接続する。その他の熱輸送器の構成も熱輸送器50−1、熱輸送器50−2と同様である。
【0063】
本実施形態に係る熱伝導部30A−30G、31A−31G、…は金属/絶縁相転移体によって構成される。熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…とそれらの間に配置する磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…とは接合又は接着によって取り付ける。したがって熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…は一体化されたものとなる。
【0064】
金属/絶縁相転移体は、電圧を印加すると絶縁体から金属に相転移し、熱伝導率が大きくなる性質を持つものである。逆に、電圧を遮断すると金属から絶縁体に相転移し、熱伝導率が小さくなる性質を持つものである。金属と絶縁体の相互間の相転移を示す絶縁体には、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体がある。無機酸化物モット絶縁体は少なくとも遷移金属元素を含む。モット絶縁体としては、LaTiO3、SrRuO4、BEDT−TTF(TCNQ)が知られている。金属と絶縁体の相互間の相転移が可能なデバイスとして現在知られているものは、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子がある。熱は、熱電子および格子結晶によって移送することができる。ZnO単結晶薄膜電気二重層FET及びTMTSF/TCNQ積層型FET素子は、電圧を印加すると熱電子が活発に移動するようになる性質を利用する。本実施形態では、金属/絶縁相転移体に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子など、電圧の印加除去によって熱伝導率が大きく変化するものを用いる。
【0065】
金属/絶縁相転移体の対向する両面に直流電圧Vを印加すると、金属/絶縁相転移体の熱伝導率が相対的に大きくなって、磁性体間で熱の移動が起こる。一方、直流電圧Vを除去すると、金属/絶縁相転移体の熱伝導率が相対的に小さくなって、磁性体間の熱の移動が阻止される。したがって、熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…は、電圧の印加、除去によって熱の移動を制御する熱スイッチとなる。
【0066】
熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…の熱伝導の断続は、電圧の印加、除去によって制御できるので、磁性体間に熱伝導部を摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、熱伝導部に摺動の耐久性を持たせる必要がなく、熱伝導部の信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、熱伝導部を駆動させるための損失を低減できる。さらに、熱伝導部は磁性体との並び方向にのみ熱を輸送でき、熱伝導部の熱伝導率は摺動型のものに比較して大きくできるので、熱の輸送に際して熱的な損失を小さくできる。加えて、熱伝導部は、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間を全ての接触面を使って接続できるので、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【0067】
熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…のぞれぞれの熱伝導部に電極を設けることで、金属/絶縁相転移体に容易に電圧を印加することができる。また、金属/絶縁相転移体に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子を用いると、熱伝導率の変化の応答性が良好になる。
【0068】
なお、本実施形態では、電圧の印加、除去によって、熱伝導率が変化する金属/絶縁相転移体を用いた熱伝導部を例示した。しかし、熱伝導部は、電圧を印加することによって熱伝導率が大きくなり、電圧を遮断することによって熱伝導率が小さくなる性質を有するものであればどのような構成のものでも使用できる。また、本実施形態では、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…及び熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…の形状を、扇を径方向に一定の幅で切り取ったような形状とした。しかし、これ以外の形状、例えば、球状、楕円体状、立方体状、円柱状、楕円柱状などの形状を採用しても良い。
【0069】
<磁気ユニットの構成>
図9及び図10に示す磁気ユニットは、図8に示した熱輸送ユニット1000Aを上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。磁気ユニットの構成は下記のとおりである。
【0070】
円形状の上側の磁気ユニット2000Aは、図9の表側を図8に示す熱輸送ユニット1000Aの表側に対向して位置させ、上側の磁気ユニット2000Aの中心を熱輸送ユニット1000Aの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図9は、熱輸送ユニット1000Aに対向して位置させた上側の磁気ユニット2000Aを熱輸送ユニット1000Aに向かって上から透視した状態を表している。
【0071】
図9に示す磁気印加除去部1Uは、ある時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Aの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石21A、磁性体10Cに対向する永久磁石21C、磁性体10Eに対向する永久磁石21Eを有する。
【0072】
図9に示す磁気印加除去部2Uは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Aの外周から内周に向けて、磁性体11Bに対向する永久磁石22B、磁性体11Dに対向する永久磁石22D、磁性体11Fに対向する永久磁石22Fを有する。
【0073】
磁気ユニット2000Aに存在するその他の磁気印加除去部は、磁気ユニット2000Aの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uまたは磁気印加除去部2Uと同一である。
【0074】
円形状の下側の磁気ユニット2000Bは、図10の表側を図8に示す熱輸送ユニット1000Aの裏側に対向して位置させ、下側の磁気ユニット2000Bの中心を熱輸送ユニット1000Aの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図10は、熱輸送ユニット1000Aに対向して位置させた下側の磁気ユニット2000Bを熱輸送ユニット1000側から見た状態を表している。
【0075】
図10に示す磁気印加除去部1Dは、上記と同じ時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Bの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石26A、磁性体10Cに対向する永久磁石26C、磁性体10Eに対向する永久磁石26Eを有する。
【0076】
図10に示す磁気印加除去部2Dは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Bの外周から内周に向けて、磁性体11Bに対向する永久磁石27B、磁性体11Dに対向する永久磁石27D、磁性体11Fに対向する永久磁石27Fを有する。
【0077】
磁気ユニット2000Bに存在するその他の磁気印加除去部は、磁気ユニット2000Bの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dまたは磁気印加除去部2Dと同一である。
【0078】
上側の磁気ユニット2000Aの各磁気印加除去部1U、2U、…と下側の磁気ユニット2000Bの各磁気印加除去部1D、2D、…は熱輸送ユニット1000の各熱輸送器50−1、50−2、…を介して上下方向で対向する。上側の磁気ユニット2000Aと下側の磁気ユニット2000Bは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部1Dを対峙させた状態で相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0079】
磁気ユニット2000A、2000Bは中空の円形状に形成され、その内周部には高温側熱交換部40Bの内部に形成した冷媒通路42(図8、図12)に空気を流通させるためのファン210を設けてある。冷媒通路42は熱輸送ユニット1000Aと磁気ユニット2000A、2000Bの積層方向に連通する円筒状の通路である。ファン210の内周面は、アウターローターモータ350(図11参照)のローター(回転軸)310に固定してある。したがって、ローター310が回転すると、磁気ユニット2000A、2000Bが回転し、ファン210によって冷媒通路42の下から上に向けて空気を流通させる。ファン210のブレード212は、磁気ユニット2000A、2000Bの回転によって空気流が生じるように、水平に対して最適な角度に曲げてある。アウターローターモータ350とすることによって、磁気冷暖房装置を小型化することができる。
【0080】
磁気ユニット2000A、2000Bの外周部には、低温側熱交換部40Aに形成してある冷媒通路41に空気を流通させるためのファン215を設けてある。冷媒通路41は、熱輸送ユニット1000A及び磁気ユニット2000Aの外周部に個々に形成した冷媒通路を直列に連通させこの冷媒通路を流れる冷媒を積層方向に流通させる通路である。ファン215には多数のブレード214が形成してある。したがって、ローター310が回転すると、磁気ユニット2000A、2000Bが回転し、ブレード214によって冷媒通路41内の空気を熱輸送ユニット1000Aの外周に沿って流通させる。ブレード214は磁気ユニット2000A、2000Bの回転によって冷媒通路41内の空気を効率的に移動させるように、水平に対して直角に曲げてある。このように、磁気ユニット2000A、2000Bの内周部及び外周部にファン210、215を設けると、磁気ユニット2000A、2000Bに、単に磁気を印加・除去する役割だけではなく、冷媒を流通させるためのファンとしての役割も担わせることができる。また、冷媒通路41、42によって効率的に冷媒を流通させることができる。
【0081】
本実施形態では、図12に示すように、磁気ユニット2000Aの基準位置を検出するための基準位置検出センサ250を設けてある。また、図11に示したアウターローターモータ350の回転位置を検出するための回転位置検出センサをアウターローターモータ350に内蔵してある。
【0082】
図9、図10及び図12に示すように、磁気ユニット2000A、2000B…の両面に、環状かつ放射状に磁石を配置する。磁気ユニット2000Aに配置する磁石は、図12に示すように、N極とS極とが対峙するように極性を考慮して配置する。
【0083】
熱輸送ユニット1000A、1000B、…と磁気ユニット2000A、2000B、…は、図7に示すように、一定の間隔を設けて複数交互に積層する。熱輸送ユニット1000A、1000B、…と磁気ユニット2000A、2000B、…を複数積層すると、磁気冷暖房装置の熱容量を大きくすることができ、小さなスペースで効率的に熱を移動させることができる。熱輸送ユニット1000Aは、図8に示すように、ローター310にベアリング45を介して固定する。したがって、積層された全ての熱輸送ユニット1000A、1000B、…はローター310が回転しても回転することなく静止している。一方、磁気ユニット2000A、2000B、…は、図8−図12に示すように、ローター310に取り付ける。したがって、積層された全ての磁気ユニット2000A、2000Bはローター310の回転と共に回転する。
【0084】
なお、本実施形態では、磁気ユニット2000A、2000B、…をアウターローターモータ350で回転させる形態を説明したが、磁気ユニット2000A、2000B、…は固定し、熱輸送ユニット1000A、1000B、…を回転させるようにしても良い。磁気ユニット2000A、2000B、…と熱輸送ユニット1000A、1000B、…の両方を相対的に回転させるようにしても良い。さらに、熱輸送器50−1、50−2、…は本実施形態のように環状に配置するのではなく、円筒の外周面に直線状に並列に配置するようにしてもよい。この場合、磁気ユニット2000Aは、熱輸送器50−1、50−2、…と同心状に熱輸送器50−1、50−2、…の外側に位置させた円筒の内周面に磁石を配置したものとなる。なお、磁気ユニット2000A、2000B、…に配置する磁石は永久磁石であることが好ましいが、電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合には、各磁気ユニット2000A、2000B、…の構造が複雑になる。回転した状態で、電磁石への給電がきるように配線する必要があるからである。したがって、本実施形態では、永久磁石を用いている。
【0085】
磁気ユニット2000A、2000B、…が回転すると、熱輸送ユニット1000A、1000B、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。このとき、磁気ユニット2000A、2000B、…の磁石は、回転方向に隣り合う一方の熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体から他方の熱輸送器50の磁性体に乗り移る。しかし、本実施形態では磁性体と磁性体との間には、透磁性断熱部60が存在するので、磁気ユニット2000A、2000B、…の駆動力の変動はわずかなものとなる。駆動力の変動については図13に基づいて説明する。
【0086】
図13は熱輸送ユニット1000Aに設けた透磁性断熱部60の効果の説明に供する図である。図に示すように、磁石が図示の移動方向に移動し、磁石が磁性体を上下方向から挟む位置にあるときには、磁石の磁力線が磁性体を通り抜けて磁性体を発熱させる。このときには、磁気ユニット2000A、2000Bに図示のような磁石の移動方向と反対方向の反力がかかる。磁石が移動し続けて、磁石の前部が磁性体と磁性体との間に存在する空隙にさしかかると(図示a位置)、反力が次第に大きくなる。本実施形態で設けてある透磁性断熱部60がないと、図示するように、反力はFAmaxまで大きくなる。磁石の後部がその空隙を抜ける場合には逆向きの反力が生じる(図示b位置)。この反力の変動は、磁気ユニット2000A、2000Bを駆動するアウターローターモータ350の必要容量を増加させる。アウターローターモータ350の駆動力は、最低限FAmax以上の反力以上でなければならないからである。また、反力の変動は、磁石が熱輸送器間を通過する度に生じるので、騒音や振動の発生原因ともなる。
【0087】
ところが、本実施形態では、熱輸送器間に磁性体と同じ透磁率の透磁性断熱部60を形成してあるので、図13の下側の図に示す通り、上記のような反力の変動はかなり小さくなる。このため、磁気ユニット2000A、2000Bは比較的スムースに回転でき、アウターローターモータ350の駆動力は磁石と磁性体との間に生じる反力よりも大きければ良くなる。このため、アウターローターモータ350は必要以上に大きなものを用意しなくても済み、磁気冷暖房装置の小型化が可能になる。また、騒音や振動も極端に少なくなって、静粛性を有する磁気冷暖房装置を実現できる。
【0088】
熱輸送ユニット1000A、1000B、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。つまり、各熱輸器50−1、50−2、…において、磁性体10A、10C、10Eに磁気が印加される状態と、磁性体10B、10D、10Fに磁気が印加される状態とが交互に起こる。このため、磁気ユニット2000Aが30度回転するごとに、各熱輸器50−1、50−2、…の磁性体が発熱と吸熱を繰り返す。磁性体の単位時間当たりの発熱量は、磁気ユニット2000Aの回転速度によって変化する。発熱量を大きくしたければ磁気ユニット2000A、2000B、…の回転速度を速くする。大きな発熱量が必要なければ磁気ユニット2000A、2000B、…の回転速度を遅くする。
【0089】
各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体が発熱しまた吸熱するときの熱を、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに伝達させるには、最適なタイミングで各熱伝導部に電圧を印加または除去しなければならない。全ての熱伝導部の電圧の印加または除去のタイミングを制御するものが、図14以降に示す制御系である。
【0090】
図14は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。また、図15は、図14の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【0091】
図14に示すように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系は、基準位置検出センサ250、空調情報入力部460、アウターローターモータ350、モータ制御部380、熱伝導部30Aから30G、電圧印加制御部38、空調制御部450を有する。アウターローターモータ350は、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370を備えている。
【0092】
基準位置検出センサ250は磁気ユニット2000A(図11、図12参照)に設定した基準位置を検出する。基準位置は磁気ユニット2000Aの外周に設ける。例えば、光を反射する反射体を磁気ユニット2000Aの外周に取り付けた場合には、その反射体の取り付け位置が基準位置となる。この場合、基準位置検出センサ250には受発光素子を用い、反射体が受発光素子からの光を反射すると、基準位置が検出される。
【0093】
空調情報入力部460は空調に必要な情報を入力する。空調に必要な情報は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度である。空調情報入力部460の具体的な説明は、後述の図15に基づいて行う。
【0094】
アウターローターモータ350は、熱輸送器50−1、50−2、…の各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するため磁石を駆動するモータである。具体的には、アウターローターモータ350は、図12に示したように磁石が配置してある全ての磁気ユニット2000A、…を同時に回転させる。アウターローターモータ350には、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370を設けてある。回転位置検出センサ370で検出した回転位置は、磁気ユニット2000A、…の回転速度を制御するために用いる。
【0095】
モータ制御部380は、回転位置検出センサ370で検出した回転位置と、基準位置検出センサ250で検出した基準位置を用いて、アウターローターモータ350の回転を制御する。
【0096】
熱伝導部30A−30Gは、上述の通り、電圧が印加されると熱伝導率が大きくなり、電圧が除去されると熱伝導率が小さくなる。熱輸送器50−1の磁性体間の熱伝導を断続させるものである。
【0097】
電圧印加制御部38は、アウターローターモータ350の回転位置に応じて、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。アウターローターモータ350の回転位置は、回転位置検出センサ370で検出した回転位置と、基準位置検出センサ250で検出した基準位置によって判別できる。つまり、各磁石の位置が、各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体に対してどの位置にあるのかが認識できる。電圧印加制御部38は、各磁石の位置が各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体の位置に対して最適な位置となったときに、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。このように、電圧印加制御部38は、磁石が各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するタイミングと同期させて各熱伝導部に電圧を印加し除去することにより、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を輸送させる。
【0098】
電圧印加制御部38は、運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングを用いて、各熱伝導部30A−30Gに電圧を印加し除去する。運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングは、磁気冷暖房装置の運転に伴って、最適なタイミングに書き換える。運転条件は、熱輸送器50−1、50−2、…の要求熱量、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差または磁石の駆動パターンの少なくともいずれかである。
【0099】
空調制御部450は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を総括的に制御する。空調制御部450の具体的な説明については、後述の図15に基づいて行う。
【0100】
図15に示すように、空調情報入力部460は、温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を有する。
【0101】
温度設定部462は、磁気冷暖房装置が空調する車室内の温度を設定するコントローラである。低温側熱交換部入口温度センサ464は、図8に示した熱輸送ユニット1000A、1000B、…の低温側熱交換部40Aに供給される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部入口温度センサ464は、低温側熱交換部40Aの冷媒入口部分に設ける。
【0102】
低温側熱交換部出口温度センサ466は、図8に示した熱輸送ユニット1000A、1000B、…の低温側熱交換部40Aから排出される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部出口温度センサ466は、低温側熱交換部40Aの冷媒出口部分に設ける。高温側熱交換部入口温度センサ468は、図11、図12に示した高温側熱交換部40Bに供給される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部入口温度センサ468は、高温側熱交換部40Bの冷媒入口部分に設ける。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bから排出される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bの冷媒出口部分に設ける。
【0103】
温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を設けるのは、熱輸送ユニット1000A、1000B、…でどの程度の熱量を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動させなければならないかを知るためである。移動させなければならない熱量がわかれば、アウターローターモータ350の回転速度や、熱伝達部30A−30G、31A−31G、…の電圧のON、OFFのタイミングを調整することができる。
【0104】
空調制御部450は、スイッチング制御部452とスイッチングパターン記憶部454を有する。スイッチング制御部452は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度を用いて、各熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に印加する電圧のON、OFFのスイッチングを制御する。スイッチングパターン記憶部454は、各熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に印加する電圧のON、OFFのスイッチングのパターンを記憶する。
【0105】
次に、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を、図16のフローチャートに基づいて簡単に説明する。図16は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
(磁気冷暖房装置の動作)
まず、操作者は、温度設定部462から車室内の設定温度を入力する。設定温度が入力されると、空調制御部450は、要求熱量と要求温度差を入力する(S1)。空調制御部450は、車室内の空間容量、現在の車室内の温度、車室内の設定温度を参照して、車室内を設定温度にするために必要な要求熱量を求める。また、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの温度差を求める。この求めた値を、要求熱量、要求温度差として入力する。
【0106】
次に、空調制御部450は、入力した要求熱量と要求温度差をあらかじめ記憶しているマップと照合して磁気印加周波数fを求め、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンをスイッチングパターン記憶部454から取得する(S2)。スイッチングパターンのTSsは、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…をONさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に電圧を印加するタイミングである。一方、スイッチングパターンのTSeは、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…による熱伝導をOFFさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30Gから電圧を除去するタイミングである。
【0107】
空調制御部450は磁気冷暖房装置を運転する(S3)。つまり、空調制御部450は、求めた磁気印加周波数fを実現するために、モータ制御部380に回転数の指示を出す。磁気印加周波数は、1つの磁性体に対して1秒間に何回磁気の印加除去をするかを示すものである。例えば、磁気印加周波数fが6Hzであったとすると、図8−図12に示す構成の磁気冷暖房装置の場合、磁気ユニット2000A、2000B、…が1秒間に1回転すると6回磁気の印加除去が行われるので、磁気ユニット2000A、2000B、…に要求される回転数は60rpmである。モータ制御部380には、磁気ユニット2000A、2000B、…が60rpmで回転するために必要なアウターローターモータ350の回転数を指示する。また、空調制御部450は、スイッチングパターン記憶部454から取得したスイッチングパターンを再現するために、電圧印加制御部38にスイッチングパターンを送る。
【0108】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクル行われたか否かを判断する(S4)。図7に示したように、磁気冷暖房装置の運転が開始された直後から、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間に次第に温度差が拡大していく。この温度差が要求温度差に達するまでには、あらかじめ規定してあるサイクルだけ磁気の印加、除去を繰り返さなければならない。本実施形態の磁気冷暖房装置の場合、磁気ユニット2000A、2000B、…が1回転すると各熱輸送器50−1、50−2、…に磁気の印加、除去が6回繰り返される。したがって、例えば、規定サイクルが1200サイクルに設定されていたとすると、磁気ユニット2000A、2000B、…が200回転したか否かが判断される。
【0109】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクルまで達していなければ(S4:NO)、S3のステップの処理を繰り返す。一方、ステップS3の運転が規定のサイクルに達したら(S4:YES)次のステップの処理に進む。
【0110】
次に、空調制御部450は、出力熱量と出力温度差を演算する(S5)。出力熱量は、低温側熱交換部入口温度センサ464が検出した冷媒の低温側熱交換部入口温度Tciと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した低温側熱交換部出口冷媒の温度Tcoとの温度差を求め、その温度差に冷媒の質量mcと比熱Cpを掛けることによって求める。また、出力温度差は、高温側熱交換部出口温度センサ468が検出した冷媒の高温側熱交換部出口温度Thoと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した冷媒の温度低温側熱交換部出口Tcoとの温度差である。
【0111】
次に、空調制御部450は、ステップS1で入力した要求熱量とステップS5で求めた出力熱量との差を演算する。また、ステップS1で入力した要求温度差とステップS5で求めた出力温度差との差を演算する(S6)。
【0112】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であるかを判断する(S7)。
【0113】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であれば(S7:YES)、ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンを更新してスイッチングパターン記憶部454に記憶させる。ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンを用いて、磁気冷暖房装置の運転を継続する(S8)。
【0114】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内でなければ、ステップS2で求めた磁気印加周波数fをf+Δfにし、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンのTSsをTSs+ΔT
Ssに、TSeをTSe+ΔTSeに、それぞれ設定する(S9)。そして、ステップS
3からステップS7までの処理を繰り返す。このようにして、最適な磁気印加周波数f及び最適なスイッチングパターンを学習させると、磁性体ごとに異なる熱発生特性及び熱伝導部ごとに異なる熱伝達特性のばらつきを補正することができる。
【0115】
以上のように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置では、磁石が配置されている磁気ユニット2000A、2000B、…を回転させ、スイッチングパターンに沿って熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に電圧を印加するだけで、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに向けて熱を移動させることができる。また、磁気ユニット2000A、2000B、…の内周部に形成されているファン210によって高温側熱交換器40Bの冷媒通路42に磁気ユニット2000A、2000B、…積層方向に空気が流通し暖かい空気を生成する。また、磁気ユニット2000A、2000B、…の外周部に形成されているファン215によって低温側熱交換部40Aの冷媒通路41に磁気ユニット2000A、2000B、…の回転方向に空気が流通し冷たい空気を生成する。
【0116】
[実施形態2]
図17、図18を参照して実施形態2に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。本実施形態に係る磁気冷暖房装置は、図11及び図12に示す構成において、熱輸送ユニット1000A、1000B、1000C、1000Dのそれぞれを回転方向に僅かにずらして(位相差を持たせて)配置している。実施形態2に係る磁気冷暖房装置の動作は実施形態1に係る磁気冷暖房装置の動作と同一である。
【0117】
図17は、実施形態2に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。図18は、各熱輸送ユニットの配置に位相差を持たせた場合の効果の説明に供する図である。
【0118】
図17に示す熱輸送ユニット1000A−1000Dは、実施形態1の熱輸送ユニット1000A、1000B、…とは異なって、透磁性断熱部60を設けていない。このため、各熱輸送ユニット1000A−1000Dに、図8で説明したようなFmaxの反力が発生する。単に熱輸送ユニット1000A−1000Dを積層したのでは、すべての熱輸送ユニット100に発生する反力の総和が大きくなってしまう。本実施形態では、この反力の総和を小さくしている。
【0119】
図11、図12に示したように、熱輸送ユニット1000A−1000D、…は磁気ユニット2000A、2000B、…と交互に積層される。本実施形態では、熱輸送ユニット1000A−1000D、…を積層するときには、図17に示すように、積層方向上から順番に、7.5度ずつ回転方向にずらして配置する。
【0120】
図17に示すように、最初に配置する熱輸送ユニット1000Aは、回転方向に位相をずらすことなく配置する。熱輸送ユニット1000Aの下には熱輸送ユニット1000Bを7.5度回転方向に位相をずらして配置する。熱輸送ユニット1000Bの下に積層する熱輸送ユニット1000C、1000D、…も同様に、真上の熱輸送ユニットに対して7.5度回転方向に位相をずらして配置する。このように、各熱輸送ユニット1000A−1000D、…を配置すると、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間の空隙(図8参照)を積層方向に重ねずに複数枚の熱輸送ユニット1000A−1000D、…を配置することができる。
【0121】
磁気ユニット2000A、2000B、…が回転すると、熱輸送ユニット1000A、1000B、1000C、1000D、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体10A−10F、11A−11F、…は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。このとき、磁気ユニット2000A、2000B、…の磁石は、回転方向に隣り合う一方の熱輸送器の磁性体から他方の熱輸送器の磁性体に乗り移る。しかし、本実施形態では熱輸送ユニット1000A−1000Dをそれぞれ相互に位相をずらして配置しているので、それぞれの熱輸送ユニット1000A−1000Dの駆動力の変動は分散される。駆動力の変動については図18に基づいて説明する。
【0122】
図18に示すように、磁石が図示の移動方向に移動し、磁性体と重複する位置にあるときには、磁石の磁力線が磁性体を通り抜けて磁性体を発熱させる。このときには、磁気ユニット2000A、2000Bに図示のような磁石の移動方向と反対方向の反力がかかる。磁石が移動し続けて、磁石の前部が磁性体と磁性体との間に存在する空隙にさしかかると(図示a位置)、反力が次第に大きくなって、4枚の熱輸送ユニット1000A−1000Dによって、反力はFAmax(単層の場合の4倍の大きさの反力)まで大きくなる。続いて磁石の後部がその空隙を抜ける場合には逆向きに同じ大きさの反力が生じる(図示b位置)。この反力の変動は、磁気ユニット2000A、2000Bを駆動するアウターローターモータ350の必要容量を増加させる。アウターローターモータ350の駆動力は、最低限FAmax以上の反力以上でなければならないからである。また、反力の変動は、磁石が熱輸送器50−1、50−2間を通過する度に生じるので、騒音や振動の発生原因ともなる。
【0123】
本実施形態のように、各熱輸送ユニット1000A−1000Dを積層方向で位相差を持たせて配置するようにすると、図18の下側の図に示すように、単層の場合と同一の反力はあるものの、それぞれの反力は分散さる。このため、磁気ユニット2000A、2000Bは位相差を持たない場合よりも比較的スムースに回転でき、アウターローターモータ350の駆動力は単層の場合に生じる反力よりも大きければ良くなる。このため、アウターローターモータ350は必要以上に大きなものを用意しなくても済み、磁気冷暖房装置の小型化が可能になる。また、騒音や振動も極端に少なくなって、静粛性を有する磁気冷暖房装置を実現できる。
【0124】
なお、本実施形態では、熱輸送ユニット1000A−1000Dの配置に位相差を持たせたが、磁気ユニット2000A−2000Dの配置に位相差を持たせてもよい。また、熱輸送ユニット1000A−1000Dと磁気ユニット2000A−2000Dの両方の配置に位相差を持たせてもよい。
【0125】
以上のように、本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、磁気ユニット2000A、…の駆動力の変動を小さくできるので、磁気冷暖房装置を駆動するためのモータを小型化することができる。したがってモータの消費電力を小さくできる。したがって、磁気冷暖房装置のエネルギー効率を高めることができ、磁気冷暖房装置を低騒音化、低振動化することができる。
【0126】
以上の実施形態では、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間に透磁性遮断部60を設けたものと設けないものとを別々に例示した。透磁性遮断部60を設けたもの(実施形態1)は積層方向で位相を変えずに配置し、透磁性遮断部60を設けないもの(実施形態2)は積層方向で位相を変えて配置した。しかし、これ以外にも、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間に透磁性遮断部60を設け、さらに積層方向で位相を変えて配置する形態も構成できる。この場合には、実施形態1及び実施形態2の場合よりもさらにモータの消費電力を小さくできる。
【符号の説明】
【0127】
10A−10F、11A−11F 磁性体、
21A−21F、22A−22F、26A−26F、27A−27F 永久磁石、
30A−30G、31A−31G 熱伝導部、
40A 低温側熱交換部、
40B 高温側熱交換部、
50−1、50−2 熱輸送器、
60 透磁性遮断部、
1000A−1000D 熱輸送ユニット、
2000A,2000B 磁気ユニット、
210、215 ファン、
250 基準位置検出センサ、
350 アウターローターモータ(モータ)、
310 ローター(回転軸)、
450 空調制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気冷暖房装置に係り、特に、駆動力の変動を小さくできる磁気冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている室温域の冷凍機、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンなどの冷凍機の大半は、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒の相変化を利用している。最近では、フロンガスの排出に伴うオゾン層破壊の問題が露呈し、さらに、代替フロンガスの排出に伴う地球温暖化への影響も懸念されている。このため、フロンガスや代替フロンガスなどの気体冷媒を用いた冷凍機に代わる、クリーンでかつ熱輸送能力の高い、革新的な冷凍機の開発が強く望まれている。
【0003】
このような背景から、最近になって注目されるようになった冷凍技術が磁気冷凍技術である。磁性体の中には、その磁性体に印加する磁界の大きさが変化すると、その変化に応じて自身の温度を変化させる、いわゆる磁気熱量効果を発現するものがある。この磁気熱量効果を発現する磁性体を利用して熱を輸送する冷凍技術が磁気冷凍技術である。
【0004】
磁気冷凍技術を応用した冷凍機としては、例えば、下記特許文献1に記載されているような、固体物質の熱伝導を利用して熱を輸送する磁気冷凍機がある。この磁気冷凍機は以下のような構成によって熱を伝導させる。
【0005】
磁気を印加すると温度が上昇する正の磁性体と、磁気を印加すると温度が下降する負の磁性体とを、所定の間隔で交互に複数一方向に並べて配置する。正負一対の磁性体で1つの磁性体ブロックを形成する。一方向に並ぶ複数の磁性体ブロックを環状に複数配置して磁性体ユニットを形成する。この磁性体ユニットと同心で内径と外径が略等しいハブ状の回転体に永久磁石を配置して磁気ユニットを形成する。正負の磁性体との間を挿脱する熱伝導部材を正負の磁性体との間で摺動自在となるように配置する。
【0006】
永久磁石が配置されている磁気ユニットを磁性体ユニットと対向するように配置して磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。正負の磁性体との間で挿脱される熱伝導部材を磁性体ユニットに対し相対的に回転させる。磁気ユニットの回転によって正負の磁性体に同時に磁気が印加されまた除去される。また、熱伝導部材が回転方向に並ぶ正負の磁性体との間で挿脱される。永久磁石と熱伝導部材が回転することで、磁気熱量効果により磁性体が発生する熱を磁性体が配置される一方向に熱伝導部材を介して輸送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−147209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている発明の場合、磁性体ユニットにおいて磁気ユニットの回転方向に隣り合う磁性体間には、熱伝導を遮断するため空隙が形成されている。そのため、磁性体間を永久磁石が通過するときには磁気ユニットに瞬間的に大きな反力がかかり、磁気ユニットの駆動力が変動する。磁性体間を永久磁石が通過するときには磁力線に乱れが生じるからである。
【0009】
また、磁性体ユニットと磁気ユニットとは複数積層され、各磁性体ユニットの磁性体の配置と各磁気ユニットの永久磁石の配置が積層方向で全て同一であり、たとえば、前述の磁性体間の空隙の位置が積層方向で一列に並んでいる。そのため、前述の磁気ユニットの駆動力の変動は、積層した磁気ユニットの数だけ累積され、無視できないほど大きくなる。
【0010】
磁気ユニットの駆動力の変動は次のような不具合を生じさせる。
【0011】
まず、磁気ユニットを駆動するモータの容量は、駆動力の変動分を考慮して大き目のものを用いることになる。このため、モータは大型になり、消費電力が大きくなり、冷凍機の小型化、冷凍機のエネルギー効率に悪影響を与える。また、駆動力の変動は磁気ユニットが一回転する間に周期的に生じるため、冷凍機の騒音や振動の発生原因となる。
【0012】
本発明は、上記のような従来の数々の不具合を軽減するために成されたものであり、駆動力の変動を小さくできる磁気冷暖房装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送ユニット、磁気ユニット及びモータを備える。
【0014】
熱輸送ユニットは、磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、間隔を設けて複数並列に配置する。磁気ユニットは、熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し当該各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する。モータは、対向して配置する熱輸送ユニット及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方を熱輸送器の配置方向に相対的に移動させる。熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間には、磁性体の透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部を形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、熱輸送ユニットまたは磁気ユニットの駆動力の変動を小さくできるので、磁気冷暖房装置を駆動するためのモータを小型化でき、モータの消費電力を小さくできる。そのため、磁気冷暖房装置のエネルギー効率を高めることができ、磁気冷暖房装置の低騒音化、低振動化をも達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の熱輸送器を配置した熱輸送ユニットの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した上側の磁気ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理の説明に供する図であり、複数の磁気印加除去部を配置した下側の磁気ユニットの構成を示す図である。
【図4】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図5】本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。
【図6】本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。
【図7】本発明に係る磁気冷暖房装置の効果を示すグラフである。
【図8】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。
【図9】図8の熱輸送ユニットを挟む上側の磁気ユニットの構成図である。
【図10】図8の熱輸送ユニットを挟む下側の磁気ユニットの構成図である。
【図11】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の断面図である。
【図12】図11の磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットと両磁気ユニットの断面図である。
【図13】熱輸送ユニットに設けた透磁性断熱部の効果の説明に供する図である。
【図14】実施形態1に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。
【図15】図14の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【図16】図14の磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
【図17】実施形態2に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。
【図18】各熱輸送ユニットを積層方向に位相差を持たせて配置した場合の効果の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各実施形態を説明する前に本発明に係る磁気冷暖房装置の動作原理を説明する。
(磁気冷暖房装置の動作原理)
<熱輸送ユニットの構成>
図1は複数の熱輸送器を配置した熱輸送ユニットの構成を示す図である。円形状の熱輸送ユニットは分離部130A−130Dで区分した4つの熱輸送器1−4を有する。各熱輸送器は低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱を伝導させる。各熱輸送器は磁性体と熱伝導部を交互に配置して形成する。磁性体には、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いる。熱伝導部には、電圧の印加、除去により熱伝導率が大きく変化する特性を持つ材料を用いる。熱伝導部は、電圧を印加(ON)すると熱伝導率が大きくなり、電圧を除去(OFF)すると熱伝導率が小さくなる。このため、熱伝導部は、電圧の印加、除去を制御することで磁性体に熱を伝導させたりさせなかったりすることができ、磁性体の並び方向に向けて効率的に熱を伝達させることができる。
【0018】
たとえば、熱輸送器1は、磁性体100A−100Eと熱伝導部300A−300Gとを交互に配置している。具体的には、低温側熱交換部400Aから熱伝導部300A−磁性体100A−熱伝導部300B−磁性体100B−熱伝導部300C−磁性体100C−熱伝導部300D−磁性体100D−熱伝導部300E−磁性体100E−熱伝導部300F−磁性体100F−熱伝導部300Gの順に配置して高温側熱交換部400Bに至る。低温側熱交換部400Aと熱伝導部300A、熱伝導部300Aから熱伝導部300Gまでの各熱伝導部と磁性体、熱伝導部300Gと高温側熱交換部400Bは相互に隙間なく接続してある。熱輸送器2−4の構成も熱輸送器1の構成と同一である。
【0019】
<磁気ユニットの構成>
図2及び図3に示す磁気ユニットは、図1に示した熱輸送ユニットを上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。磁気ユニットの構成は下記のとおりである。
【0020】
図2は、複数の磁気印加除去部を配置した上側の磁気ユニットの構成を示す図である。円形状の上側の磁気ユニットは分離部200AU−200DUで区分した4つの磁気印加除去部1U−4Uを有する。図2に示す上側の磁気ユニットは、図の表側を図1に示す熱輸送ユニットの表側に対向して位置させ、上側の磁気ユニットの中心を熱輸送ユニットの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図2は、熱輸送ユニットに対向して位置させた上側の磁気ユニットを熱輸送ユニットに向かって上から透視した状態を表している。
【0021】
磁気印加除去部1Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Uが対峙する時刻T1の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石210A、磁性体100Cに対向する永久磁石210C、磁性体100Eに対向する永久磁石210Eを有する。
【0022】
磁気印加除去部2Uは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Uが対峙する時刻T2の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石220B、磁性体100Dに対向する永久磁石220D、磁性体100Fに対向する永久磁石220Fを有する。
【0023】
磁気印加除去部3Uと磁気印加除去部4Uは上側の磁気ユニットの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部2Uと同一である。磁気印加除去部3Uは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Uは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0024】
図3は、複数の磁気印加除去部を配置した下側の磁気ユニットの構成を示す図である。円形状の下側の磁気ユニットは分離部200AD−200DDで区分した4つの磁気印加除去部1D−4Dを有する。図3に示す下側の磁気ユニットは、図の表側を図1に示す熱輸送ユニットの裏側に対向して位置させ、下側の磁気ユニットの中心を熱輸送ユニットの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図3は、熱輸送ユニットに対向して位置させた下側の磁気ユニットを熱輸送ユニット側から見た状態を表している。
【0025】
磁気印加除去部1Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部1Dが対峙する時刻T1の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Aに対向する永久磁石260A、磁性体100Cに対向する永久磁石260C、磁性体100Eに対向する永久磁石260Eを有する。
【0026】
磁気印加除去部2Dは、熱輸送器1に磁気印加除去部2Dが対峙する時刻T2の時に、磁気ユニットの外周から内周に向けて、磁性体100Bに対向する永久磁石270B、磁性体100Dに対向する永久磁石270D、磁性体100Fに対向する永久磁石270Fを有する。
【0027】
磁気印加除去部3Dと磁気印加除去部4Dは下側の磁気ユニットの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dと磁気印加除去部2Dと同一である。磁気印加除去部3Dは時刻T3の時に熱輸送器1と対峙し、磁気印加除去部4Dは時刻T4の時に熱輸送器1と対峙する。
【0028】
上側の磁気ユニットの各磁気印加除去部1U−4Uと下側の磁気ユニットの各磁気印加除去部1D−4Dは熱輸送ユニットの各熱輸送器1−4を介して上下方向で対向する。上側の磁気ユニットと下側の磁気ユニットは、上側の磁気ユニットの分離部200AU−200DUと下側の磁気ユニットの分離部200AD−200DDが常に対向するように、相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0029】
<熱輸送の原理>
図4及び図5は、本発明に係る磁気冷暖房装置の動作説明に供する図である。図4は、時刻T1と時刻T2の2つの状態を示す。時刻T1の状態は、図1の熱輸送ユニットのA−A線が図2及び図3の上側と下側の磁気ユニットのA−A線と一致している状態である。つまり、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部1Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部1Dに対峙している状態である。また、時刻T2の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部2Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部2Dに対峙している状態である。図5は、時刻T3と時刻T4の2つの状態を示す。時刻T3の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部3Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部3Dに対峙している状態である。また、時刻T4の状態は、熱輸送ユニットの熱輸送器1が上側の磁気ユニットの磁気印加除去部4Uと下側の磁気ユニットの磁気印加除去部4Dに対峙している状態である。
【0030】
時刻T1では、図4に示す通り、磁性体100Aに永久磁石210Aと260Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石210Cと260Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石210Eと260Eが位置する。時刻T1では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0031】
時刻T2では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T1から90度時計方向に回転するので、図4に示す通り、磁性体100Bに永久磁石220Bと270Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石220Dと270Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石220Fと270Fが位置する。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0032】
時刻T3では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T2からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Aに永久磁石230Aと280Aが位置する。また、磁性体100Cに永久磁石230Cと280Cが位置する。また、磁性体100Eに永久磁石230Eと280Eが位置する。時刻T3では、時刻T1と同じく、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加して、隣り合う磁性体100A−100B、100C−100D、100E−100F間で熱伝導できるようにする。
【0033】
時刻T4では、上側と下側の磁気ユニットが時刻T3からさらに90度時計方向に回転するので、図5に示す通り、磁性体100Bに永久磁石240Bと290Bが位置する。また、磁性体100Dに永久磁石240Dと290Dが位置する。また、磁性体100Fに永久磁石240Fと290Fが位置する。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加して、低温側熱伝導部400Aと磁性体100A、磁性体100B−100C、100D−100E、磁性体100Fと高温側熱伝導部400Bそれぞれの間で熱伝導できるようにする。
【0034】
このように、永久磁石の位置関係を追うと、時刻T1からT4に移行する間に、時刻T1とT2における、永久磁石、磁性体、熱伝導部の同じ位置関係が2回繰り返される。
【0035】
上記のように、各磁性体には正の磁性体を用いているので、磁気が印加されると発熱し、磁気が除去されると吸熱する。また、熱伝導部には磁気の印加除去によって熱伝導率が変化する材料を用いているので、磁気が印加されると熱伝導率が相対的に大きくなり、磁気が除去されると熱伝導率が相対的に小さくなる。
【0036】
したがって、時刻T1からT4に移行するにしたがって、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに向けて熱が移動し、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間に温度差ができる。温度差ができる原理は次のとおりである。
【0037】
図6は、本発明に係る磁気冷暖房装置において熱が移動していく様子の説明に供する図である。熱が移動していく様子は図4と図5を参照しながら説明する。
【0038】
まず前提として、全ての磁性体が同一材料で形成されており、全ての磁性体の磁気熱量効果が同一の種類であって、温度変化量が5℃のものを用いた場合を想定する。具体的には、全ての磁性体は、磁気が印加されると5℃温度が上昇し、磁気が除去されると5℃温度が下降する特性を持っていると想定する。また、全ての熱伝導部材も電圧の印加、除去によって同じように熱伝導率が大きくなりまた小さくなる特性を持っていると想定する。
【0039】
まず、初期の時刻T1の状態では全ての磁性体100A−100F及び熱伝導部300A−300Gが室温の20℃になっている。低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間で、交互に配置した磁性体と熱伝導部は熱輸送器を形成する。
【0040】
次に、時刻T2の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T1で示す状態から時刻T2で示すような状態になる。時刻T2では、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6に示すように、磁性体100Aの温度が5℃下降し、熱伝導部300Aによる熱伝導が可能になって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動する。また、磁性体100B、100Dの温度が5℃上昇し、磁性体100C、100Eの温度が5℃下降し、熱伝導部300C、300Eによる熱伝導が可能になって、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動する。また、磁性体100Fの温度が5℃上昇し、熱伝導部300Gによる熱伝導が可能になって、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0041】
時刻T2の状態では、磁気が除去された磁性体100A、100C、100Eの温度が15℃に下降し、磁気が印加された磁性体100B、100D、100Fの温度が25℃に上昇する。このため、図6に示すように、熱伝導部300A、300C、300E、300Gを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0042】
この熱の移動によって、図6のT2´の状態で示すように、磁性体100Aと低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100Fと高温側熱交換部400Bの温度が22.5℃になる。
【0043】
次に、時刻T2´の状態からT3の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4及び図5の時刻T2に示す状態から時刻T3で示すような状態になる。時刻T3では、熱伝導部300B、300D、300Fに電圧を印加する。その結果、磁性体100A、100C、100Eの温度が5℃上昇し、磁性体100B、100D、100Fの温度が5℃下降し、熱伝導部300B、300D、300Fによる熱伝導が可能になって、磁性体100Aから磁性体100Bに、磁性体100Cから磁性体100Dに、磁性体100Eから磁性体100Fに熱が移動する。
【0044】
時刻T3の状態では、磁気が印加された磁性体100A、100C、100Eの温度が22.5℃または25℃に上昇し、磁気が除去された磁性体100B、100D、100Fの温度が15℃または17.5℃に下降する。このため、図6に示すように、熱伝導部300B、300D、300Fを介して温度の高い方から温度の低いほうに熱が移動する。
【0045】
この熱の移動によって、図6のT3´に示すように、低温側熱交換部400Aの温度が17.5℃になり、磁性体100A、100Bの温度が18.75℃になる。磁性体100C、100Dの温度が20℃になり、磁性体100E、100Fの温度が21.25℃になる。高温側熱交換部40Bの温度は22.5℃のままである。
【0046】
次に、時刻T3´の状態からT4の状態に移行すると、永久磁石、磁性体、熱伝導部の位置関係が、図4の時刻T2で示した状態と同一の状態になる。時刻T4では、時刻T2と同じく、熱伝導部300A、300C、300E、300Gに電圧を印加する。その結果、図6のT2. T4に示すような状態となって、低温側熱交換部400Aから磁性体100Aに熱が移動し、磁性体100Bから磁性体100Cに、磁性体100Dから磁性体100Eに熱が移動し、磁性体100Fから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。
【0047】
以上の通り、上側の磁気ユニットと下側の磁気ユニットが同期して1回転する度に、時刻T1の状態から時刻T4の状態が繰り返されて、低温側熱交換部400Aから高温側熱交換部400Bに熱が移動する。時間が経過するにしたがって、図7に示すように、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が大きくなっていく。最終的には、低温側熱交換部400Aと高温側熱交換部400Bとの間の温度差が安定する。この状態で、低温側熱交換部400Aの熱を利用して、たとえば室内の温度を下げることができ、高温側熱交換部400Bの熱を利用して、たとえば室内の温度を上げることができる。
【0048】
なお、図1−図7の説明は、発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として正の磁性体を用いた場合に当てはまる。発現される磁気熱量効果の種類が同じ同一材料の磁性体として負の磁性体を用いた場合には、熱の移動方向は図4−図6に示した方向とは逆になる。したがって、負の磁性体を用いた場合、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bの位置が図1、図4−図6とは逆になる。
【0049】
次に、本発明に係る磁気冷暖房装置の実施形態を、[実施形態1]と[実施形態2]に分けて説明する。[実施形態1]に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間に磁気ユニットの駆動力を低減させる透磁性断熱部を形成する。[実施形態2]に係る磁気冷暖房装置は、複数の熱輸送ユニットを、磁気ユニットの駆動力を低減させるため、各々回転方向に少しずつずらして配置する。
【0050】
[実施形態1]
次に、図8−図12を参照して実施形態1に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。以下に説明する実施形態1に係る磁気冷暖房装置の動作原理は上述の熱輸送の原理と同一である。図8は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。図9は、図8の熱輸送ユニットを挟む上側の磁気ユニットの構成図である。図10は、図8の熱輸送ユニットを挟む下側の磁気ユニットの構成図である。図11は、実施形態1に係る磁気冷暖房装置の断面図である。図12は、図11の磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットと両磁気ユニットの断面図である。
【0051】
(磁気冷暖房装置の構成)
<熱輸送ユニットの構成>
図8に示すように、磁気冷暖房装置の熱輸送ユニット1000Aは中空の円形状に形成する。熱輸送ユニット1000Aの中空の部分には円筒状の高温側熱交換部40Bを配置し、高温側熱交換部40Bを取り囲むように低温側熱交換部40Aを設ける。低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の空間に1mm程度の厚みの熱輸送器配置板150(図12参照)をはめ込み、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとで固定する。高温側熱交換部40B内にはベアリング45を介して回転自在にロータ310が取り付けてある。
【0052】
熱輸送器配置板150上の中心角30度の扇状の空間に、図8及び図12に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体10A−10Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部30A−30Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体10A−10Fと熱伝導部30A−30Gで1つの熱輸送器50−1を構成する。熱輸送器50−1に隣接する中心角30度の扇状の空間に、図8に示すように、磁気熱量効果を有する磁性体11A−11Fとこれらの磁性体の熱を輸送する熱伝導部31A−31Gとを交互に配置する。交互に配置した磁性体11A−11Fと熱伝導部31A−31Gで1つの熱輸送器50−2を構成する。熱輸送器50−1、50−2、…は熱輸送器配置板150上に間隔を設けて複数並列に環状に配置する。熱輸送器配置板150上で環状に間隔を設けて熱輸送器50−1、50−2、…を配置したものが熱輸送ユニット1000となる。
【0053】
図8、図12に示すように、熱輸送器50−1、50−2、…は、熱輸送器配置板150上に中心角30度ごとに並列に合計12個配置される。なお、12個の熱輸送器50−1、50−2、…のそれぞれは間隔を設けて配置する。隣り合う熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間には、それぞれの熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10F、磁性体11A−11Fの透磁率と同等の透磁率を有し、隣り合う熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との熱伝導を遮断できる透磁性断熱部60を形成する。熱輸送器50−1、熱輸送器50−2間の熱伝導を透磁性断熱部60で遮断すると、冷暖房に寄与しない熱の放出量が減少し、磁気冷暖房装置の熱効率が向上する。
【0054】
透磁性断熱部60は隣り合う熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10Fと磁性体11A−11Fとの間を埋めるように形成する。透磁性断熱部60は、隣り合う熱輸送器50−1、熱輸送器50−2の磁性体10A−10Fと磁性体11A−11Fとの間に入り込み、磁性体10A−10Fと磁性体11A−11F同士の間に空隙がなくなって磁気ユニットの駆動力のピークが平準化される。平準化される理由については後で詳しく説明する。透磁性断熱部60は、断熱性樹脂などの断熱性を備える材料内にその断熱性が阻害されない程度に鉄などの透磁率の大きな金属粉を混ぜ込んで形成する。透磁性断熱部60を複数の材料を配合して形成すると、熱伝導率と透磁率を狙いの値に近づけることができ、透磁性断熱部60の作成も容易になる。
【0055】
なお、熱輸送器配置板150は、熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…が輸送している熱を奪わないように、断熱性の高い材料で形成する。また、熱輸送器配置板150は磁性体に印加される磁束を減少させてはならないので、磁束を通過させやすい材料で形成することが好ましい。熱輸送器50−1、50−2、…は熱輸送器配置板150の上側に設けたが、熱輸送器配置板150の下側に設けても良い。また、熱輸送器50−1、50−2、…は上下の熱輸送器配置板150に挟まれるように設けても良い。
【0056】
低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bには、熱交換のための冷媒を流通させる冷媒通路41と42(図8、図11参照)を形成してある。冷媒通路41と42に流通させる冷媒は液体でも気体でも良い。本実施形態では冷媒に空気を用いる。低温側熱交換部40Aの冷媒通路41には、冷却される空気が図示矢印方向に吸入されて、冷却された空気が図示矢印方向に排出される。高温側熱交換部40Bの冷媒通路42には、取り入れた空気が暖められて図8の裏側から表方向(図11の矢印方向)に排出される。
【0057】
<磁性体>
磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…は、本実施形態では同一材料で形成しており、同一材料として正の磁性体を用いる。正の磁性体は、磁気を印加していないときには常磁性状態(磁気スピンが無秩序の状態)となり、磁気を印加すると強磁性状態(磁気スピンが一方向に揃う状態)となる、常磁性状態と強磁性状態が可逆的に生じる材料を用いて製造する。
【0058】
正の磁性体の材料は、GdやGdをベースとした合金である、Gd−Y系、Gd−Dy系、Gd−Er系、Gd−Ho系、La(Fe,Si)13やLa(Fe,Al)13などの磁性材料を用いることができる。
【0059】
一方、本実施形態では用いていないが、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…に同一材料として負の磁性材料を用いることもできる。負の磁性体の材料としては、FeRh合金、CoMnSiGe系、NiMnSn系などの磁性材料を用いることができる。
【0060】
一般的に、正の磁性体と負の磁性体は、磁気の印加に対して、熱発生が、発熱するか、吸熱するか反対なので、正の磁性体と負の磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさは相違する。したがって、本実施形態のように、正か負のどちらか一方の磁性体を用いた場合には、全ての磁性体の磁気熱量効果による温度変化の大きさが同一になる。したがって、磁気冷暖房装置全体として安定した熱伝達特性が得られ熱輸送効率が向上する。また、正の磁性体の磁気熱量効果に比較して負の磁性体の磁気熱量効果の方が小さいので、熱輸送効率を考慮すると、正の磁性体を用いることが好ましい。さらに、負の磁性体の材料は正の磁性体の材料に比較して希少な材料を用いることになるので、コストの面でも正の磁性体を用いることが好ましい。
【0061】
また、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…に正または負の磁性体を用い、さらにこれらの磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…の作動温度を全て同一のものとすることができる。しかし、これに限らず、磁性体の作動温度が異なるものを配置することもできる。例えば、高温側熱交換部40Bに隣り合う磁性体10Fから低温側熱交換部40Aに隣り合う磁性体10Aに向けて段階的に作動温度が低い磁性体を配置することもできる。ここで、作動温度が高い磁性体と作動温度が低い磁性体との相違は、磁気熱量効果を発現する温度域が高い温度であるか低い温度であるかという点にある。
【0062】
このように、熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…内において、磁性体の位置に応じて最適な作動温度を選択すると、均一の作動温度の磁性体を用いた熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…よりも、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間で、より大きな温度差を得ることができ、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
<熱伝導部>
図8、図12に示したように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置は、熱輸送器50−1では、低温側熱交換部40Bと磁性体10Aとの間に熱伝導部30Aを接続する。磁性体10A−10Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部30B−30Fを接続する。磁性体10Fと高温側熱交換部40Bとの間に熱伝導部30Gを接続する。熱輸送器50−2では、低温側熱交換部40Bと磁性体11Aとの間に熱伝導部31Aを接続する。磁性体11A−11Fのそれぞれの磁性体間に熱伝導部31B−31Fを接続する。磁性体11Fと高温側熱交換部40Bとの間に熱伝導部31Gを接続する。その他の熱輸送器の構成も熱輸送器50−1、熱輸送器50−2と同様である。
【0063】
本実施形態に係る熱伝導部30A−30G、31A−31G、…は金属/絶縁相転移体によって構成される。熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…とそれらの間に配置する磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…とは接合又は接着によって取り付ける。したがって熱輸送器50−1、熱輸送器50−2、…は一体化されたものとなる。
【0064】
金属/絶縁相転移体は、電圧を印加すると絶縁体から金属に相転移し、熱伝導率が大きくなる性質を持つものである。逆に、電圧を遮断すると金属から絶縁体に相転移し、熱伝導率が小さくなる性質を持つものである。金属と絶縁体の相互間の相転移を示す絶縁体には、無機酸化物モット絶縁体または有機モット絶縁体がある。無機酸化物モット絶縁体は少なくとも遷移金属元素を含む。モット絶縁体としては、LaTiO3、SrRuO4、BEDT−TTF(TCNQ)が知られている。金属と絶縁体の相互間の相転移が可能なデバイスとして現在知られているものは、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子がある。熱は、熱電子および格子結晶によって移送することができる。ZnO単結晶薄膜電気二重層FET及びTMTSF/TCNQ積層型FET素子は、電圧を印加すると熱電子が活発に移動するようになる性質を利用する。本実施形態では、金属/絶縁相転移体に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子など、電圧の印加除去によって熱伝導率が大きく変化するものを用いる。
【0065】
金属/絶縁相転移体の対向する両面に直流電圧Vを印加すると、金属/絶縁相転移体の熱伝導率が相対的に大きくなって、磁性体間で熱の移動が起こる。一方、直流電圧Vを除去すると、金属/絶縁相転移体の熱伝導率が相対的に小さくなって、磁性体間の熱の移動が阻止される。したがって、熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…は、電圧の印加、除去によって熱の移動を制御する熱スイッチとなる。
【0066】
熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…の熱伝導の断続は、電圧の印加、除去によって制御できるので、磁性体間に熱伝導部を摺動させずに熱を輸送させることができる。このため、熱伝導部に摺動の耐久性を持たせる必要がなく、熱伝導部の信頼性が向上する。また、摩擦による機械的な損失をなくすことができ、熱伝導部を駆動させるための損失を低減できる。さらに、熱伝導部は磁性体との並び方向にのみ熱を輸送でき、熱伝導部の熱伝導率は摺動型のものに比較して大きくできるので、熱の輸送に際して熱的な損失を小さくできる。加えて、熱伝導部は、電圧の印加、除去に応じて、磁性体間を全ての接触面を使って接続できるので、熱輸送能力及び熱輸送効率を向上させることができる。
【0067】
熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…のぞれぞれの熱伝導部に電極を設けることで、金属/絶縁相転移体に容易に電圧を印加することができる。また、金属/絶縁相転移体に、少なくとも遷移金属元素を含む無機酸化物モット絶縁体、有機モット絶縁体、ZnO単結晶薄膜電気二重層FET、TMTSF/TCNQ積層型FET素子を用いると、熱伝導率の変化の応答性が良好になる。
【0068】
なお、本実施形態では、電圧の印加、除去によって、熱伝導率が変化する金属/絶縁相転移体を用いた熱伝導部を例示した。しかし、熱伝導部は、電圧を印加することによって熱伝導率が大きくなり、電圧を遮断することによって熱伝導率が小さくなる性質を有するものであればどのような構成のものでも使用できる。また、本実施形態では、磁性体10A−10F、磁性体11A−11F、…及び熱伝導部30A−30G、熱伝導部31A−31G、…の形状を、扇を径方向に一定の幅で切り取ったような形状とした。しかし、これ以外の形状、例えば、球状、楕円体状、立方体状、円柱状、楕円柱状などの形状を採用しても良い。
【0069】
<磁気ユニットの構成>
図9及び図10に示す磁気ユニットは、図8に示した熱輸送ユニット1000Aを上下方向の両側から一定の隙間を設けて挟む。磁気ユニットの構成は下記のとおりである。
【0070】
円形状の上側の磁気ユニット2000Aは、図9の表側を図8に示す熱輸送ユニット1000Aの表側に対向して位置させ、上側の磁気ユニット2000Aの中心を熱輸送ユニット1000Aの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図9は、熱輸送ユニット1000Aに対向して位置させた上側の磁気ユニット2000Aを熱輸送ユニット1000Aに向かって上から透視した状態を表している。
【0071】
図9に示す磁気印加除去部1Uは、ある時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Aの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石21A、磁性体10Cに対向する永久磁石21C、磁性体10Eに対向する永久磁石21Eを有する。
【0072】
図9に示す磁気印加除去部2Uは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Aの外周から内周に向けて、磁性体11Bに対向する永久磁石22B、磁性体11Dに対向する永久磁石22D、磁性体11Fに対向する永久磁石22Fを有する。
【0073】
磁気ユニット2000Aに存在するその他の磁気印加除去部は、磁気ユニット2000Aの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Uまたは磁気印加除去部2Uと同一である。
【0074】
円形状の下側の磁気ユニット2000Bは、図10の表側を図8に示す熱輸送ユニット1000Aの裏側に対向して位置させ、下側の磁気ユニット2000Bの中心を熱輸送ユニット1000Aの中心と一致させて、時計回りに回転自在に支持する。図10は、熱輸送ユニット1000Aに対向して位置させた下側の磁気ユニット2000Bを熱輸送ユニット1000側から見た状態を表している。
【0075】
図10に示す磁気印加除去部1Dは、上記と同じ時刻で、図8に示した熱輸送器50−1に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Bの外周から内周に向けて、磁性体10Aに対向する永久磁石26A、磁性体10Cに対向する永久磁石26C、磁性体10Eに対向する永久磁石26Eを有する。
【0076】
図10に示す磁気印加除去部2Dは、上記と同じ時刻で図8に示した熱輸送器50−2に対峙する。その時刻では、磁気ユニット2000Bの外周から内周に向けて、磁性体11Bに対向する永久磁石27B、磁性体11Dに対向する永久磁石27D、磁性体11Fに対向する永久磁石27Fを有する。
【0077】
磁気ユニット2000Bに存在するその他の磁気印加除去部は、磁気ユニット2000Bの中心と点対称であるので、永久磁石の並びは、磁気印加除去部1Dまたは磁気印加除去部2Dと同一である。
【0078】
上側の磁気ユニット2000Aの各磁気印加除去部1U、2U、…と下側の磁気ユニット2000Bの各磁気印加除去部1D、2D、…は熱輸送ユニット1000の各熱輸送器50−1、50−2、…を介して上下方向で対向する。上側の磁気ユニット2000Aと下側の磁気ユニット2000Bは、磁気印加除去部1Uと磁気印加除去部1Dを対峙させた状態で相対的な位置を変えずに同期して回転する。
【0079】
磁気ユニット2000A、2000Bは中空の円形状に形成され、その内周部には高温側熱交換部40Bの内部に形成した冷媒通路42(図8、図12)に空気を流通させるためのファン210を設けてある。冷媒通路42は熱輸送ユニット1000Aと磁気ユニット2000A、2000Bの積層方向に連通する円筒状の通路である。ファン210の内周面は、アウターローターモータ350(図11参照)のローター(回転軸)310に固定してある。したがって、ローター310が回転すると、磁気ユニット2000A、2000Bが回転し、ファン210によって冷媒通路42の下から上に向けて空気を流通させる。ファン210のブレード212は、磁気ユニット2000A、2000Bの回転によって空気流が生じるように、水平に対して最適な角度に曲げてある。アウターローターモータ350とすることによって、磁気冷暖房装置を小型化することができる。
【0080】
磁気ユニット2000A、2000Bの外周部には、低温側熱交換部40Aに形成してある冷媒通路41に空気を流通させるためのファン215を設けてある。冷媒通路41は、熱輸送ユニット1000A及び磁気ユニット2000Aの外周部に個々に形成した冷媒通路を直列に連通させこの冷媒通路を流れる冷媒を積層方向に流通させる通路である。ファン215には多数のブレード214が形成してある。したがって、ローター310が回転すると、磁気ユニット2000A、2000Bが回転し、ブレード214によって冷媒通路41内の空気を熱輸送ユニット1000Aの外周に沿って流通させる。ブレード214は磁気ユニット2000A、2000Bの回転によって冷媒通路41内の空気を効率的に移動させるように、水平に対して直角に曲げてある。このように、磁気ユニット2000A、2000Bの内周部及び外周部にファン210、215を設けると、磁気ユニット2000A、2000Bに、単に磁気を印加・除去する役割だけではなく、冷媒を流通させるためのファンとしての役割も担わせることができる。また、冷媒通路41、42によって効率的に冷媒を流通させることができる。
【0081】
本実施形態では、図12に示すように、磁気ユニット2000Aの基準位置を検出するための基準位置検出センサ250を設けてある。また、図11に示したアウターローターモータ350の回転位置を検出するための回転位置検出センサをアウターローターモータ350に内蔵してある。
【0082】
図9、図10及び図12に示すように、磁気ユニット2000A、2000B…の両面に、環状かつ放射状に磁石を配置する。磁気ユニット2000Aに配置する磁石は、図12に示すように、N極とS極とが対峙するように極性を考慮して配置する。
【0083】
熱輸送ユニット1000A、1000B、…と磁気ユニット2000A、2000B、…は、図7に示すように、一定の間隔を設けて複数交互に積層する。熱輸送ユニット1000A、1000B、…と磁気ユニット2000A、2000B、…を複数積層すると、磁気冷暖房装置の熱容量を大きくすることができ、小さなスペースで効率的に熱を移動させることができる。熱輸送ユニット1000Aは、図8に示すように、ローター310にベアリング45を介して固定する。したがって、積層された全ての熱輸送ユニット1000A、1000B、…はローター310が回転しても回転することなく静止している。一方、磁気ユニット2000A、2000B、…は、図8−図12に示すように、ローター310に取り付ける。したがって、積層された全ての磁気ユニット2000A、2000Bはローター310の回転と共に回転する。
【0084】
なお、本実施形態では、磁気ユニット2000A、2000B、…をアウターローターモータ350で回転させる形態を説明したが、磁気ユニット2000A、2000B、…は固定し、熱輸送ユニット1000A、1000B、…を回転させるようにしても良い。磁気ユニット2000A、2000B、…と熱輸送ユニット1000A、1000B、…の両方を相対的に回転させるようにしても良い。さらに、熱輸送器50−1、50−2、…は本実施形態のように環状に配置するのではなく、円筒の外周面に直線状に並列に配置するようにしてもよい。この場合、磁気ユニット2000Aは、熱輸送器50−1、50−2、…と同心状に熱輸送器50−1、50−2、…の外側に位置させた円筒の内周面に磁石を配置したものとなる。なお、磁気ユニット2000A、2000B、…に配置する磁石は永久磁石であることが好ましいが、電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合には、各磁気ユニット2000A、2000B、…の構造が複雑になる。回転した状態で、電磁石への給電がきるように配線する必要があるからである。したがって、本実施形態では、永久磁石を用いている。
【0085】
磁気ユニット2000A、2000B、…が回転すると、熱輸送ユニット1000A、1000B、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。このとき、磁気ユニット2000A、2000B、…の磁石は、回転方向に隣り合う一方の熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体から他方の熱輸送器50の磁性体に乗り移る。しかし、本実施形態では磁性体と磁性体との間には、透磁性断熱部60が存在するので、磁気ユニット2000A、2000B、…の駆動力の変動はわずかなものとなる。駆動力の変動については図13に基づいて説明する。
【0086】
図13は熱輸送ユニット1000Aに設けた透磁性断熱部60の効果の説明に供する図である。図に示すように、磁石が図示の移動方向に移動し、磁石が磁性体を上下方向から挟む位置にあるときには、磁石の磁力線が磁性体を通り抜けて磁性体を発熱させる。このときには、磁気ユニット2000A、2000Bに図示のような磁石の移動方向と反対方向の反力がかかる。磁石が移動し続けて、磁石の前部が磁性体と磁性体との間に存在する空隙にさしかかると(図示a位置)、反力が次第に大きくなる。本実施形態で設けてある透磁性断熱部60がないと、図示するように、反力はFAmaxまで大きくなる。磁石の後部がその空隙を抜ける場合には逆向きの反力が生じる(図示b位置)。この反力の変動は、磁気ユニット2000A、2000Bを駆動するアウターローターモータ350の必要容量を増加させる。アウターローターモータ350の駆動力は、最低限FAmax以上の反力以上でなければならないからである。また、反力の変動は、磁石が熱輸送器間を通過する度に生じるので、騒音や振動の発生原因ともなる。
【0087】
ところが、本実施形態では、熱輸送器間に磁性体と同じ透磁率の透磁性断熱部60を形成してあるので、図13の下側の図に示す通り、上記のような反力の変動はかなり小さくなる。このため、磁気ユニット2000A、2000Bは比較的スムースに回転でき、アウターローターモータ350の駆動力は磁石と磁性体との間に生じる反力よりも大きければ良くなる。このため、アウターローターモータ350は必要以上に大きなものを用意しなくても済み、磁気冷暖房装置の小型化が可能になる。また、騒音や振動も極端に少なくなって、静粛性を有する磁気冷暖房装置を実現できる。
【0088】
熱輸送ユニット1000A、1000B、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。つまり、各熱輸器50−1、50−2、…において、磁性体10A、10C、10Eに磁気が印加される状態と、磁性体10B、10D、10Fに磁気が印加される状態とが交互に起こる。このため、磁気ユニット2000Aが30度回転するごとに、各熱輸器50−1、50−2、…の磁性体が発熱と吸熱を繰り返す。磁性体の単位時間当たりの発熱量は、磁気ユニット2000Aの回転速度によって変化する。発熱量を大きくしたければ磁気ユニット2000A、2000B、…の回転速度を速くする。大きな発熱量が必要なければ磁気ユニット2000A、2000B、…の回転速度を遅くする。
【0089】
各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体が発熱しまた吸熱するときの熱を、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに伝達させるには、最適なタイミングで各熱伝導部に電圧を印加または除去しなければならない。全ての熱伝導部の電圧の印加または除去のタイミングを制御するものが、図14以降に示す制御系である。
【0090】
図14は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系のブロック図である。また、図15は、図14の空調制御部と空調情報入力部のさらに具体的な制御系のブロック図である。
【0091】
図14に示すように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の制御系は、基準位置検出センサ250、空調情報入力部460、アウターローターモータ350、モータ制御部380、熱伝導部30Aから30G、電圧印加制御部38、空調制御部450を有する。アウターローターモータ350は、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370を備えている。
【0092】
基準位置検出センサ250は磁気ユニット2000A(図11、図12参照)に設定した基準位置を検出する。基準位置は磁気ユニット2000Aの外周に設ける。例えば、光を反射する反射体を磁気ユニット2000Aの外周に取り付けた場合には、その反射体の取り付け位置が基準位置となる。この場合、基準位置検出センサ250には受発光素子を用い、反射体が受発光素子からの光を反射すると、基準位置が検出される。
【0093】
空調情報入力部460は空調に必要な情報を入力する。空調に必要な情報は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度である。空調情報入力部460の具体的な説明は、後述の図15に基づいて行う。
【0094】
アウターローターモータ350は、熱輸送器50−1、50−2、…の各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するため磁石を駆動するモータである。具体的には、アウターローターモータ350は、図12に示したように磁石が配置してある全ての磁気ユニット2000A、…を同時に回転させる。アウターローターモータ350には、自身の回転位置を検出する回転位置検出センサ370を設けてある。回転位置検出センサ370で検出した回転位置は、磁気ユニット2000A、…の回転速度を制御するために用いる。
【0095】
モータ制御部380は、回転位置検出センサ370で検出した回転位置と、基準位置検出センサ250で検出した基準位置を用いて、アウターローターモータ350の回転を制御する。
【0096】
熱伝導部30A−30Gは、上述の通り、電圧が印加されると熱伝導率が大きくなり、電圧が除去されると熱伝導率が小さくなる。熱輸送器50−1の磁性体間の熱伝導を断続させるものである。
【0097】
電圧印加制御部38は、アウターローターモータ350の回転位置に応じて、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。アウターローターモータ350の回転位置は、回転位置検出センサ370で検出した回転位置と、基準位置検出センサ250で検出した基準位置によって判別できる。つまり、各磁石の位置が、各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体に対してどの位置にあるのかが認識できる。電圧印加制御部38は、各磁石の位置が各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体の位置に対して最適な位置となったときに、各熱伝導部30A−30Gに選択的に電圧を印加し除去する。このように、電圧印加制御部38は、磁石が各磁性体に選択的に磁気を印加し除去するタイミングと同期させて各熱伝導部に電圧を印加し除去することにより、低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに熱を輸送させる。
【0098】
電圧印加制御部38は、運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングを用いて、各熱伝導部30A−30Gに電圧を印加し除去する。運転条件ごとに定めた、電圧の印加、除去のタイミングは、磁気冷暖房装置の運転に伴って、最適なタイミングに書き換える。運転条件は、熱輸送器50−1、50−2、…の要求熱量、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間の温度差または磁石の駆動パターンの少なくともいずれかである。
【0099】
空調制御部450は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を総括的に制御する。空調制御部450の具体的な説明については、後述の図15に基づいて行う。
【0100】
図15に示すように、空調情報入力部460は、温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を有する。
【0101】
温度設定部462は、磁気冷暖房装置が空調する車室内の温度を設定するコントローラである。低温側熱交換部入口温度センサ464は、図8に示した熱輸送ユニット1000A、1000B、…の低温側熱交換部40Aに供給される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部入口温度センサ464は、低温側熱交換部40Aの冷媒入口部分に設ける。
【0102】
低温側熱交換部出口温度センサ466は、図8に示した熱輸送ユニット1000A、1000B、…の低温側熱交換部40Aから排出される冷媒の温度を検出する。低温側熱交換部出口温度センサ466は、低温側熱交換部40Aの冷媒出口部分に設ける。高温側熱交換部入口温度センサ468は、図11、図12に示した高温側熱交換部40Bに供給される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部入口温度センサ468は、高温側熱交換部40Bの冷媒入口部分に設ける。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bから排出される冷媒の温度を検出する。高温側熱交換部出口温度センサ470は、高温側熱交換部40Bの冷媒出口部分に設ける。
【0103】
温度設定部462、低温側熱交換部入口温度センサ464、低温側熱交換部出口温度センサ466、高温側熱交換部入口温度センサ468、高温側熱交換部出口温度センサ470を設けるのは、熱輸送ユニット1000A、1000B、…でどの程度の熱量を低温側熱交換部40Aから高温側熱交換部40Bに移動させなければならないかを知るためである。移動させなければならない熱量がわかれば、アウターローターモータ350の回転速度や、熱伝達部30A−30G、31A−31G、…の電圧のON、OFFのタイミングを調整することができる。
【0104】
空調制御部450は、スイッチング制御部452とスイッチングパターン記憶部454を有する。スイッチング制御部452は、設定温度、低温側熱交換部入口温度、低温側熱交換部出口温度、高温側熱交換部入口温度、高温側熱交換部出口温度を用いて、各熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に印加する電圧のON、OFFのスイッチングを制御する。スイッチングパターン記憶部454は、各熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に印加する電圧のON、OFFのスイッチングのパターンを記憶する。
【0105】
次に、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作を、図16のフローチャートに基づいて簡単に説明する。図16は、本実施形態に係る磁気冷暖房装置の動作フローチャートである。
(磁気冷暖房装置の動作)
まず、操作者は、温度設定部462から車室内の設定温度を入力する。設定温度が入力されると、空調制御部450は、要求熱量と要求温度差を入力する(S1)。空調制御部450は、車室内の空間容量、現在の車室内の温度、車室内の設定温度を参照して、車室内を設定温度にするために必要な要求熱量を求める。また、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの温度差を求める。この求めた値を、要求熱量、要求温度差として入力する。
【0106】
次に、空調制御部450は、入力した要求熱量と要求温度差をあらかじめ記憶しているマップと照合して磁気印加周波数fを求め、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンをスイッチングパターン記憶部454から取得する(S2)。スイッチングパターンのTSsは、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…をONさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に電圧を印加するタイミングである。一方、スイッチングパターンのTSeは、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…による熱伝導をOFFさせるタイミング、換言すれば熱伝導部30A−30Gから電圧を除去するタイミングである。
【0107】
空調制御部450は磁気冷暖房装置を運転する(S3)。つまり、空調制御部450は、求めた磁気印加周波数fを実現するために、モータ制御部380に回転数の指示を出す。磁気印加周波数は、1つの磁性体に対して1秒間に何回磁気の印加除去をするかを示すものである。例えば、磁気印加周波数fが6Hzであったとすると、図8−図12に示す構成の磁気冷暖房装置の場合、磁気ユニット2000A、2000B、…が1秒間に1回転すると6回磁気の印加除去が行われるので、磁気ユニット2000A、2000B、…に要求される回転数は60rpmである。モータ制御部380には、磁気ユニット2000A、2000B、…が60rpmで回転するために必要なアウターローターモータ350の回転数を指示する。また、空調制御部450は、スイッチングパターン記憶部454から取得したスイッチングパターンを再現するために、電圧印加制御部38にスイッチングパターンを送る。
【0108】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクル行われたか否かを判断する(S4)。図7に示したように、磁気冷暖房装置の運転が開始された直後から、低温側熱交換部40Aと高温側熱交換部40Bとの間に次第に温度差が拡大していく。この温度差が要求温度差に達するまでには、あらかじめ規定してあるサイクルだけ磁気の印加、除去を繰り返さなければならない。本実施形態の磁気冷暖房装置の場合、磁気ユニット2000A、2000B、…が1回転すると各熱輸送器50−1、50−2、…に磁気の印加、除去が6回繰り返される。したがって、例えば、規定サイクルが1200サイクルに設定されていたとすると、磁気ユニット2000A、2000B、…が200回転したか否かが判断される。
【0109】
空調制御部450はステップS3の運転が規定のサイクルまで達していなければ(S4:NO)、S3のステップの処理を繰り返す。一方、ステップS3の運転が規定のサイクルに達したら(S4:YES)次のステップの処理に進む。
【0110】
次に、空調制御部450は、出力熱量と出力温度差を演算する(S5)。出力熱量は、低温側熱交換部入口温度センサ464が検出した冷媒の低温側熱交換部入口温度Tciと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した低温側熱交換部出口冷媒の温度Tcoとの温度差を求め、その温度差に冷媒の質量mcと比熱Cpを掛けることによって求める。また、出力温度差は、高温側熱交換部出口温度センサ468が検出した冷媒の高温側熱交換部出口温度Thoと低温側熱交換部出口温度センサ466が検出した冷媒の温度低温側熱交換部出口Tcoとの温度差である。
【0111】
次に、空調制御部450は、ステップS1で入力した要求熱量とステップS5で求めた出力熱量との差を演算する。また、ステップS1で入力した要求温度差とステップS5で求めた出力温度差との差を演算する(S6)。
【0112】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であるかを判断する(S7)。
【0113】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内であれば(S7:YES)、ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンを更新してスイッチングパターン記憶部454に記憶させる。ステップS2で求めた磁気印加周波数fと、熱伝導部30A−30G、31A−31G、…のON、OFFのスイッチングパターンを用いて、磁気冷暖房装置の運転を継続する(S8)。
【0114】
空調制御部450は、要求熱量と出力熱量との差と、要求温度差と出力温度差との差が規定範囲以内でなければ、ステップS2で求めた磁気印加周波数fをf+Δfにし、熱伝導部30A−30GのON、OFFのスイッチングパターンのTSsをTSs+ΔT
Ssに、TSeをTSe+ΔTSeに、それぞれ設定する(S9)。そして、ステップS
3からステップS7までの処理を繰り返す。このようにして、最適な磁気印加周波数f及び最適なスイッチングパターンを学習させると、磁性体ごとに異なる熱発生特性及び熱伝導部ごとに異なる熱伝達特性のばらつきを補正することができる。
【0115】
以上のように、本実施形態に係る磁気冷暖房装置では、磁石が配置されている磁気ユニット2000A、2000B、…を回転させ、スイッチングパターンに沿って熱伝導部30A−30G、31A−31G、…に電圧を印加するだけで、低温側熱交換器40Aから高温側熱交換器40Bに向けて熱を移動させることができる。また、磁気ユニット2000A、2000B、…の内周部に形成されているファン210によって高温側熱交換器40Bの冷媒通路42に磁気ユニット2000A、2000B、…積層方向に空気が流通し暖かい空気を生成する。また、磁気ユニット2000A、2000B、…の外周部に形成されているファン215によって低温側熱交換部40Aの冷媒通路41に磁気ユニット2000A、2000B、…の回転方向に空気が流通し冷たい空気を生成する。
【0116】
[実施形態2]
図17、図18を参照して実施形態2に係る磁気冷暖房装置の構成について説明する。本実施形態に係る磁気冷暖房装置は、図11及び図12に示す構成において、熱輸送ユニット1000A、1000B、1000C、1000Dのそれぞれを回転方向に僅かにずらして(位相差を持たせて)配置している。実施形態2に係る磁気冷暖房装置の動作は実施形態1に係る磁気冷暖房装置の動作と同一である。
【0117】
図17は、実施形態2に係る磁気冷暖房装置の熱輸送ユニットの構成図である。図18は、各熱輸送ユニットの配置に位相差を持たせた場合の効果の説明に供する図である。
【0118】
図17に示す熱輸送ユニット1000A−1000Dは、実施形態1の熱輸送ユニット1000A、1000B、…とは異なって、透磁性断熱部60を設けていない。このため、各熱輸送ユニット1000A−1000Dに、図8で説明したようなFmaxの反力が発生する。単に熱輸送ユニット1000A−1000Dを積層したのでは、すべての熱輸送ユニット100に発生する反力の総和が大きくなってしまう。本実施形態では、この反力の総和を小さくしている。
【0119】
図11、図12に示したように、熱輸送ユニット1000A−1000D、…は磁気ユニット2000A、2000B、…と交互に積層される。本実施形態では、熱輸送ユニット1000A−1000D、…を積層するときには、図17に示すように、積層方向上から順番に、7.5度ずつ回転方向にずらして配置する。
【0120】
図17に示すように、最初に配置する熱輸送ユニット1000Aは、回転方向に位相をずらすことなく配置する。熱輸送ユニット1000Aの下には熱輸送ユニット1000Bを7.5度回転方向に位相をずらして配置する。熱輸送ユニット1000Bの下に積層する熱輸送ユニット1000C、1000D、…も同様に、真上の熱輸送ユニットに対して7.5度回転方向に位相をずらして配置する。このように、各熱輸送ユニット1000A−1000D、…を配置すると、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間の空隙(図8参照)を積層方向に重ねずに複数枚の熱輸送ユニット1000A−1000D、…を配置することができる。
【0121】
磁気ユニット2000A、2000B、…が回転すると、熱輸送ユニット1000A、1000B、1000C、1000D、…の各熱輸送器50−1、50−2、…の磁性体10A−10F、11A−11F、…は、30度回転するごとに、1つおきに交互に磁気が印加または除去される。このとき、磁気ユニット2000A、2000B、…の磁石は、回転方向に隣り合う一方の熱輸送器の磁性体から他方の熱輸送器の磁性体に乗り移る。しかし、本実施形態では熱輸送ユニット1000A−1000Dをそれぞれ相互に位相をずらして配置しているので、それぞれの熱輸送ユニット1000A−1000Dの駆動力の変動は分散される。駆動力の変動については図18に基づいて説明する。
【0122】
図18に示すように、磁石が図示の移動方向に移動し、磁性体と重複する位置にあるときには、磁石の磁力線が磁性体を通り抜けて磁性体を発熱させる。このときには、磁気ユニット2000A、2000Bに図示のような磁石の移動方向と反対方向の反力がかかる。磁石が移動し続けて、磁石の前部が磁性体と磁性体との間に存在する空隙にさしかかると(図示a位置)、反力が次第に大きくなって、4枚の熱輸送ユニット1000A−1000Dによって、反力はFAmax(単層の場合の4倍の大きさの反力)まで大きくなる。続いて磁石の後部がその空隙を抜ける場合には逆向きに同じ大きさの反力が生じる(図示b位置)。この反力の変動は、磁気ユニット2000A、2000Bを駆動するアウターローターモータ350の必要容量を増加させる。アウターローターモータ350の駆動力は、最低限FAmax以上の反力以上でなければならないからである。また、反力の変動は、磁石が熱輸送器50−1、50−2間を通過する度に生じるので、騒音や振動の発生原因ともなる。
【0123】
本実施形態のように、各熱輸送ユニット1000A−1000Dを積層方向で位相差を持たせて配置するようにすると、図18の下側の図に示すように、単層の場合と同一の反力はあるものの、それぞれの反力は分散さる。このため、磁気ユニット2000A、2000Bは位相差を持たない場合よりも比較的スムースに回転でき、アウターローターモータ350の駆動力は単層の場合に生じる反力よりも大きければ良くなる。このため、アウターローターモータ350は必要以上に大きなものを用意しなくても済み、磁気冷暖房装置の小型化が可能になる。また、騒音や振動も極端に少なくなって、静粛性を有する磁気冷暖房装置を実現できる。
【0124】
なお、本実施形態では、熱輸送ユニット1000A−1000Dの配置に位相差を持たせたが、磁気ユニット2000A−2000Dの配置に位相差を持たせてもよい。また、熱輸送ユニット1000A−1000Dと磁気ユニット2000A−2000Dの両方の配置に位相差を持たせてもよい。
【0125】
以上のように、本発明に係る磁気冷暖房装置によれば、磁気ユニット2000A、…の駆動力の変動を小さくできるので、磁気冷暖房装置を駆動するためのモータを小型化することができる。したがってモータの消費電力を小さくできる。したがって、磁気冷暖房装置のエネルギー効率を高めることができ、磁気冷暖房装置を低騒音化、低振動化することができる。
【0126】
以上の実施形態では、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間に透磁性遮断部60を設けたものと設けないものとを別々に例示した。透磁性遮断部60を設けたもの(実施形態1)は積層方向で位相を変えずに配置し、透磁性遮断部60を設けないもの(実施形態2)は積層方向で位相を変えて配置した。しかし、これ以外にも、熱輸送器50−1と熱輸送器50−2との間に透磁性遮断部60を設け、さらに積層方向で位相を変えて配置する形態も構成できる。この場合には、実施形態1及び実施形態2の場合よりもさらにモータの消費電力を小さくできる。
【符号の説明】
【0127】
10A−10F、11A−11F 磁性体、
21A−21F、22A−22F、26A−26F、27A−27F 永久磁石、
30A−30G、31A−31G 熱伝導部、
40A 低温側熱交換部、
40B 高温側熱交換部、
50−1、50−2 熱輸送器、
60 透磁性遮断部、
1000A−1000D 熱輸送ユニット、
2000A,2000B 磁気ユニット、
210、215 ファン、
250 基準位置検出センサ、
350 アウターローターモータ(モータ)、
310 ローター(回転軸)、
450 空調制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、間隔を設けて複数並列に配置する熱輸送ユニットと、
前記熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し前記各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、
対向して配置する前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの少なくともいずれか一方を前記熱輸送器の配置方向に相対的に移動させるモータと、を備え、
前記熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間には、前記磁性体の透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部を形成したことを特徴とする磁気冷暖房装置。
【請求項2】
前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットとを間隔を設けて複数交互に積層し、前記モータは、積層した複数の熱輸送ユニット及び積層した複数の磁気ユニットの少なくともいずれか一方を相対的にかつ一体的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項3】
前記透磁性断熱部は隣り合う熱輸送器の磁性体と磁性体との間を埋めるように形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項4】
前記透磁性断熱部は、断熱性を備える材料内にその断熱性が阻害されない程度に透磁率の大きな金属粉を混ぜ込んで形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項5】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、複数並列に空隙を設けて配置する熱輸送ユニットと、
前記熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し前記各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、を備え、
前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットとを間隔を設けて交互に複数積層した磁気冷暖房装置であって、
少なくとも一部の熱輸送ユニットを他の熱輸送ユニットに対して前記熱輸送器の配置方向にずらして配置するか、少なくとも一部の磁気ユニットを他の磁気ユニットに対して前記熱輸送器の配置方向にずらして配置し、
前記複数積層した熱輸送ユニット及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方をモータで一体的に、前記熱輸送器の配置方向に相対的に移動させることを特徴とする磁気冷暖房装置。
【請求項6】
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットは中空の円形状に形成され前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの少なくともいずれかは回転自在に支持されて前記モータで回転し、
前記熱輸送ユニットの前記熱輸送器の一端に前記熱伝導部を介して配置する低温側熱交換部と、
前記熱輸送器の他端に前記熱伝導部を介して配置する高温側熱交換部と、
をさらに有し、
回転する前記熱輸送ユニット又は前記磁気ユニットの内周部又は外周部には、前記低温側熱交換部または前記高温側熱交換部の冷媒通路に冷媒を供給するファンを設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項7】
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの内周部に前記高温側熱交換部を配置し、
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの外周部に前記低温側熱交換部を配置し、
前記高温側熱交換部の冷媒通路は前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの積層方向に連通する円筒状であり、前記低温側熱交換部の冷媒通路は前記熱輸送ユニットの外周部又は前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットのそれぞれの外周部に個々に形成した冷媒通路を直列に連通する形状を有していることを特徴とする請求項6に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項8】
前記モータは、前記磁気ユニットを一体的に回転させる回転軸をローターとするアウターローターモータであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項9】
前記磁気熱量効果を有する磁性体は、磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体、又は、磁気を印加すると吸熱し除去すると発熱する負の磁性体の、いずれか一方の磁性体であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項1】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、間隔を設けて複数並列に配置する熱輸送ユニットと、
前記熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し前記各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、
対向して配置する前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの少なくともいずれか一方を前記熱輸送器の配置方向に相対的に移動させるモータと、を備え、
前記熱輸送ユニットの熱輸送器と熱輸送器との間には、前記磁性体の透磁率と同等の透磁率を有し、熱伝導を遮断する透磁性断熱部を形成したことを特徴とする磁気冷暖房装置。
【請求項2】
前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットとを間隔を設けて複数交互に積層し、前記モータは、積層した複数の熱輸送ユニット及び積層した複数の磁気ユニットの少なくともいずれか一方を相対的にかつ一体的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項3】
前記透磁性断熱部は隣り合う熱輸送器の磁性体と磁性体との間を埋めるように形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項4】
前記透磁性断熱部は、断熱性を備える材料内にその断熱性が阻害されない程度に透磁率の大きな金属粉を混ぜ込んで形成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項5】
磁気熱量効果を有する磁性体と当該磁性体の熱を輸送する熱伝導部とを交互に配置する熱輸送器を、複数並列に空隙を設けて配置する熱輸送ユニットと、
前記熱輸送ユニットの各磁性体と対峙し前記各磁性体に選択的に磁気を印加し除去する磁石を複数配置する磁気ユニットと、を備え、
前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットとを間隔を設けて交互に複数積層した磁気冷暖房装置であって、
少なくとも一部の熱輸送ユニットを他の熱輸送ユニットに対して前記熱輸送器の配置方向にずらして配置するか、少なくとも一部の磁気ユニットを他の磁気ユニットに対して前記熱輸送器の配置方向にずらして配置し、
前記複数積層した熱輸送ユニット及び磁気ユニットの少なくともいずれか一方をモータで一体的に、前記熱輸送器の配置方向に相対的に移動させることを特徴とする磁気冷暖房装置。
【請求項6】
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットは中空の円形状に形成され前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの少なくともいずれかは回転自在に支持されて前記モータで回転し、
前記熱輸送ユニットの前記熱輸送器の一端に前記熱伝導部を介して配置する低温側熱交換部と、
前記熱輸送器の他端に前記熱伝導部を介して配置する高温側熱交換部と、
をさらに有し、
回転する前記熱輸送ユニット又は前記磁気ユニットの内周部又は外周部には、前記低温側熱交換部または前記高温側熱交換部の冷媒通路に冷媒を供給するファンを設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項7】
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの内周部に前記高温側熱交換部を配置し、
前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの外周部に前記低温側熱交換部を配置し、
前記高温側熱交換部の冷媒通路は前記熱輸送ユニット及び前記磁気ユニットの積層方向に連通する円筒状であり、前記低温側熱交換部の冷媒通路は前記熱輸送ユニットの外周部又は前記熱輸送ユニットと前記磁気ユニットのそれぞれの外周部に個々に形成した冷媒通路を直列に連通する形状を有していることを特徴とする請求項6に記載の磁気冷暖房装置。
【請求項8】
前記モータは、前記磁気ユニットを一体的に回転させる回転軸をローターとするアウターローターモータであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【請求項9】
前記磁気熱量効果を有する磁性体は、磁気を印加すると発熱し除去すると吸熱する正の磁性体、又は、磁気を印加すると吸熱し除去すると発熱する負の磁性体の、いずれか一方の磁性体であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の磁気冷暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−108728(P2013−108728A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256444(P2011−256444)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
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