移動壁収納構造
【課題】 移動壁を吊り下げる一対の取付部材(吊下軸)の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁を収納室から出し入れ搬送できる移動壁収納構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3に吊り下げられる移動壁18を備え、レール1が本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設される移動壁収納構造に於て、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有する。さらに、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定したものである。
【解決手段】 レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3に吊り下げられる移動壁18を備え、レール1が本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設される移動壁収納構造に於て、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有する。さらに、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切り用の移動壁を収納室から出し入れ搬送する移動壁収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
展示場や会議室等の室空間を用途や収容人員等に応じて仕切るために、天井に配設されたレールに沿って移動する移動壁(パネル)があり、そして、移動壁を使用しない時は、移動壁を収納室内に収納していた。
従来の移動壁収納構造は、レール(本線レール)を走行する前後一対の吊車に移動壁を吊り下げ、本線レールから湾曲レールを介して直交方向に延びる2本の収納レールを収納室内へ配設していた。そして、移動壁を収納室から出し入れ搬送する際は、吊車が湾曲レールをカーブ走行して本線レールと収納レールを往復移動していた。さらに、移動壁は吊車の垂下状の取付部材(吊下軸)に取り付けられており、吊車の走行時は、取付部材(吊下軸)がレールに形成されたガイドスリットに沿って摺動し移動するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−184248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の移動壁収納構造では、移動壁を収納室から出し入れ搬送する際、一対の吊車がほぼ同時にカーブ走行するように設定されていた。言い換えると、平面視にて、取付部材(吊下軸)の中心間の距離を、収納レールのそれぞれの幅方向中心線間の距離と同じになるように設定していた。従って、それぞれの取付部材の間隔が少しでも狭くなると、湾曲レールのガイドスリットを形成する縁に取付部材が干渉してカーブ走行が困難になったり、又は、カーブ走行が不可能になる問題があった。そして、取付部材の間隔が所定寸法より狭くなる原因としては、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)の寸法誤差や、使用しているうちに取付部材の付設位置がずれること等がある。
また、上記の問題は、ガイドスリットを有するレールを備えたタイプの移動壁収納構造だけでなく、例えば、レールがH字型鋼材等から成るタイプの場合も生じる。
そこで、本発明は、一対の取付部材(吊下軸)の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁を収納室から出し入れ搬送できる移動壁収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動壁収納構造は、レールに沿って走行する前後一対の吊車に吊り下げられる移動壁を備え、上記レールが本線レールを有し、さらに、平面視にて該本線レールから直交方向に連続状に延びる一対の収納レールが、互いに平行に収納室内へ配設される移動壁収納構造に於て、上記吊車は上記移動壁の上端部に付設された吊下軸を有し、平面視にて、該吊下軸の中心間の距離を、上記収納レールのそれぞれの幅方向中央線間の距離の 105%〜 115%になるように設定した。
【0005】
また、上記本線レールの上記一対の収納レールとの連結部近傍に方向変換ガイド部材を配設した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る移動壁収納構造よれば、一対の吊下軸の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁を収納室から出し入れ搬送できる。言い換えると、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)に吊下軸の取付位置のばらつき(間隔寸法誤差)が生じた場合や、移動壁を使用しているうちに吊下軸の付設位置がずれた場合であっても、平面視にて移動壁を一対の収納レールに対し斜めに搬送することで、そのばらつき(誤差・ずれ)を吸収できる。
また、手動でも移動壁をスムースかつ手軽に収納室から出し入れできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に於て、1は、展示場、会議室、ホテル、式場、店舗、美術館、各種イベント会場等の天井に配設されたレールであり、レール1には(後述する)吊車3が走行可能に取り付けられている。そして、レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3には移動壁18が吊り下げられている。さらに、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有する。
レール1は本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設されている。
【0008】
図2に示すように、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定している。吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aが、収納レール12,12の幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%未満になると、製造時(移動壁18と吊下軸16の取付時)の寸法誤差等で、中心X,X間の距離Aが幅方向中央線Y,Y間の距離Bより小さくなることがあり、この場合、吊車3,3(移動壁18)が本線レール11と収納レール12間を往復移動しにくくなる。また、中心X,X間の距離Aが 115%より大きくなると、移動壁18が収納室13の奥壁面に対する傾斜度が大きくなり、移動壁18の収納枚数が少なくなる。なお、平面視にて、収納室13の奥壁面は収納レール12と直交して配置されており、レール1には移動壁18が複数枚備えられている。
【0009】
次に、図6と図7に於て、レール1は、下方に開口するスリット部10を切り欠いた横断面矩形状で、例えば、アルミニウムの押出型材から成る。なお、レール1の材質としては、鉄鋼材、ステンレス等を用いるも自由であり、また、(プレス)折曲加工材としてもよい。
具体的には、レール1は、吊車3が走行する走行空間20を内部に有する。さらに、レール1は、上面を吊車3が走行する左右一対の走行用下板部9,9を有し、その下板部9,9の内端縁部19,19にてスリット部10が形成されている。
【0010】
一対の収納レール12,12は、第1収納レール12aと第2収納レール12bとから成り、第1収納レール12aは、本線レール11の(収納室13側の)一端部に直交して連結されており、第2収納レール12bは、第1収納レール12aと所定間隔離れて本線レール11に直交して連結されている。
そして、スリット部10は、本線レール11と第1収納レール12aとの連結部8a近傍に於て、湾曲して形成され、本線レール11と第2収納レール12bとの連結部8b近傍に於て、略T字状に分岐している。
また、本線レール11の一対の収納レール12a,12bとの連結部8a,8b近傍に方向変換ガイド部材7が配設されている。それぞれの方向変換ガイド部材7,7は、本線レール11の走行空間20内に設けられ、連結部8b近傍のガイド部材7bは、連結部8a近傍のガイド部材7aより高い位置に配置されている。
【0011】
吊車3は基台部2を有し、さらに、吊車3は、基台部2の左右に配設されレール1の左右一対の走行用下板部9,9の上面を転動する重量支持用の車輪4を有する。図例のように、基台部2の左右に、それぞれ前後一対の車輪4を配設すると、吊車3が安定して走行可能となる。
前後一対の吊車3,3は、第1収納レール12aを走行する第1吊車3aと、第2収納レール12bを走行する第2吊車3bと、から成り、第1吊車3aの基台部2の上部には、(低い位置にある)方向変換ガイド部材7aと接触する方向変換ローラ6a,6aを備え、第2吊車3bの基台部2の上部には(高い位置にある)方向変換ガイド部材7bと接触する方向変換ローラ6b,6bを備えている。つまり、第2吊車3bの方向変換ローラ6bは、第1吊車3aの方向変換ローラ6aよりその高さ寸法が高く(厚さ寸法が大きく)設定され、さらに、第1吊車3aは(高い位置にある)方向変換ガイド部材7bの下を通過できるように、第1吊車3aの方向変換ローラ6aの上面は、そのガイド部材7bの下面より低い位置になるように設定されている。
【0012】
図8〜図11に於て、吊車3(3a,3b)は、基台部2の下部に前後一対のガイドローラ5,5を備え、ガイドローラ5,5は鉛直軸心L廻りに回転自在であり、かつ、スリット部10を形成する一対の下板部9,9の内端縁部19,19に沿って転動するようになっている。さらに、ガイドローラ5の直径は、スリット部10の幅寸法より僅かに小さく設定されている。また、基台部2の下部のガイドローラ5,5の間に吊下軸16が垂設され、吊下軸16は、基台部2又は移動壁18のうち少なくとも一方に対し軸中心に回転自在となっている。
また、基台部2の上部の方向変換ローラ6,6(6a,6a及び6b,6b)は、鉛直軸心M廻りに回転自在となっており、この一対の方向変換ローラ6,6は、既述の一対のガイドローラ5,5と平面視に於て同一位置に配設されると共に、方向変換ローラ6,6及びガイドローラ5,5が、同一外径寸法に設定されるのが好ましい。
【0013】
方向変換ガイド部材7(7a,7b)は、所定厚さ寸法を有する板体から成り、側面に方向変換ローラ6と接触しつつ誘導して吊車3を(本線レール11と収納レール12とに)相互に乗り移らせるための平面視凹曲面状誘導湾曲部23を有する。さらに、具体的には、誘導湾曲部23は四分の一の円弧状に形成され、両端がそれぞれ本線レール11及び収納レール12の長手方向へと向くようにして、方向変換ガイド部材7は配設される。
【0014】
スリット部10は、本線レール11と第1収納レール12aとの連結部8a近傍に於て、本線レール11の(収納室13と反対側の)他端部側から第1収納レール12aへ円弧状に曲がって形成され、また、本線レール11と第2収納レール12bとの連結部8b近傍に於て、本線レール11の他端部側から第2収納レール12bへ円弧状に曲がって略T字状に分岐している。 即ち、図10に示すように、連結部8b近傍に於て、本線レール11の走行用下板部9,9のうち一の下板部9Aが折曲部14,14をもって第2収納レール12bの一対の下板部9,9に連続するように形成されている。そして、この折曲部14,14のうち、吊車3の内輪側の折曲部14のコーナー部は、円弧状に形成されている。かつ、他の(吊車3の外輪側の)折曲部14は、そのコーナー部に湾曲状ガイド突出部15を有する。
また、連結部8a近傍に於て、本線レール11の走行用下板部9,9が、折曲部14,14をもって第1収納レール12aの一対の下板部9,9に円弧状に連続するように形成されている(図6参照)。さらに、それぞれの連結部8a,8b近傍の外輪側の折曲部14の湾曲面を、平面視に於て対応する方向変換ガイド部材7の一部又は全部と同一湾曲状に形成すれば、吊車3がスムースにカーブ走行する。
【0015】
また、本発明の移動壁収納構造は設計変更自由であり、レール1と吊車3の構造は上記実施の形態に限らず、例えば、レール1が横断面横向きH字型(I型)鋼材から成り、吊車3の車輪4がそのH字型レール1の下リブ部の上面を走行する構造であってもよい。
また、移動壁18は手動で搬送するようになっているが、吊車3にモータ等を搭載し、移動壁18をその吊車3によって電動等で搬送するようにしてもよい。
【0016】
上述した本発明である移動壁収納構造の使用方法(作用)について説明する。
まず、移動壁18を収納室13内に収納する場合について説明する。
図2〜図5に於て、移動壁18の進行方向前端部(第1吊車3a側)を手で引っ張って本線レール11に沿って本線レール11の一端側(図2に於て右側)へ移動させ、第1吊車3aを、本線レール11の第1収納レール12aとの連結部8a近傍まで走行させる。そして、移動壁18の前端部を収納室13へ向かって移動させると、第1吊車3aは第1収納レール12aを走行し、第2吊車3bはこの動きに追随して本線レール11の第2収納レール12bとの連結部8b近傍まで走行する。さらに、移動壁18を収納室13の奥(収納位置)へ移動させると、第1吊車3aは第1収納レール12aを走行し、第2吊車3bは第2収納レール12bを走行する。この時、移動壁18は、平面視にて、収納レール12と直交して配置された収納室13の奥壁面に対し約20°〜30°傾斜して収納されている。
【0017】
吊車3が本線レール11から収納レール12へ移動する場合について、さらに詳しく説明する。
まず、第1吊車3aは収納室13に向かって本線レール11に沿って走行し、連結部8a近傍にて、方向変換ローラ6aが方向変換ガイド部材7aの誘導湾曲部23に接触すると共に、ガイドローラ5が折曲部14に接触する。そして、第1吊車3aがこの誘導湾曲部23と折曲部14に従って向きを変えながら走行し、第1収納レール12aに乗り移り走行する。
次に、第2吊車3bも収納室13に向かって本線レール11に沿って走行し、連結部8b近傍にて、方向変換ローラ6bが方向変換ガイド部材7bの誘導湾曲部23に接触すると共に、ガイドローラ5が折曲部14(ガイド突出部15)に接触する(図10及び図11参照)。そして、第2吊車3bがこの誘導湾曲部23と折曲部14に従って向きを変えながら走行し、第2収納レール12bに乗り移り走行する。
【0018】
次に、移動壁18を収納室13内から出す場合は、移動壁18の進行方向前端部(第2吊車3b側)を手で引っ張って、第2吊車3bを連結部8b近傍まで走行させる。そして、第2吊車3bを本線レール11に沿って本線レール11の他端側(図4に於て左側)へ走行させると、第1吊車3aは追随して連結部8a近傍まで走行する。さらに、第2吊車3bと第1吊車3aを本線レール11の他端側へ走行させ、移動壁18を所望の位置まで移動させる。
【0019】
以上のように、本発明である移動壁収納構造は、レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3に吊り下げられる移動壁18を備え、レール1が本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設される移動壁収納構造に於て、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有し、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定したので、一対の吊下軸16,16の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁18を収納室13から出し入れ搬送できる。言い換えると、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)に吊下軸の取付位置のばらつき(間隔寸法誤差)が生じた場合や、移動壁を使用しているうちに吊下軸の付設位置がずれた場合であっても、平面視にて移動壁を一対の収納レールに対し斜めに搬送することで、そのばらつき(誤差・ずれ)を吸収できる。
また、手動でも移動壁18をスムースかつ手軽に収納室13から出し入れできる。
【0020】
また、本線レール11の一対の収納レール12,12との連結部8,8近傍に方向変換ガイド部材7を配設したので、吊車3は連結部8近傍にて引っ掛かることなく、非常に滑らかにカーブして本線レール11と収納レール12間を乗り移りできる。そして、移動壁18を一層スムースに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】平面図である。
【図4】平面図である。
【図5】平面図である。
【図6】要部斜視図である。
【図7】要部背面図である。
【図8】要部断面背面図である。
【図9】要部断面背面図である。
【図10】要部断面平面図である。
【図11】要部断面底面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 レール
3 吊車
7 方向変換ガイド部材
8 連結部
11 本線レール
12 収納レール
13 収納室
16 吊下軸
18 移動壁
A 吊下軸の中心間の距離
B 収納レールの幅方向中央線間の距離
X 吊下軸の中心
Y 収納レールの幅方向中央線
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切り用の移動壁を収納室から出し入れ搬送する移動壁収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
展示場や会議室等の室空間を用途や収容人員等に応じて仕切るために、天井に配設されたレールに沿って移動する移動壁(パネル)があり、そして、移動壁を使用しない時は、移動壁を収納室内に収納していた。
従来の移動壁収納構造は、レール(本線レール)を走行する前後一対の吊車に移動壁を吊り下げ、本線レールから湾曲レールを介して直交方向に延びる2本の収納レールを収納室内へ配設していた。そして、移動壁を収納室から出し入れ搬送する際は、吊車が湾曲レールをカーブ走行して本線レールと収納レールを往復移動していた。さらに、移動壁は吊車の垂下状の取付部材(吊下軸)に取り付けられており、吊車の走行時は、取付部材(吊下軸)がレールに形成されたガイドスリットに沿って摺動し移動するようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−184248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の移動壁収納構造では、移動壁を収納室から出し入れ搬送する際、一対の吊車がほぼ同時にカーブ走行するように設定されていた。言い換えると、平面視にて、取付部材(吊下軸)の中心間の距離を、収納レールのそれぞれの幅方向中心線間の距離と同じになるように設定していた。従って、それぞれの取付部材の間隔が少しでも狭くなると、湾曲レールのガイドスリットを形成する縁に取付部材が干渉してカーブ走行が困難になったり、又は、カーブ走行が不可能になる問題があった。そして、取付部材の間隔が所定寸法より狭くなる原因としては、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)の寸法誤差や、使用しているうちに取付部材の付設位置がずれること等がある。
また、上記の問題は、ガイドスリットを有するレールを備えたタイプの移動壁収納構造だけでなく、例えば、レールがH字型鋼材等から成るタイプの場合も生じる。
そこで、本発明は、一対の取付部材(吊下軸)の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁を収納室から出し入れ搬送できる移動壁収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動壁収納構造は、レールに沿って走行する前後一対の吊車に吊り下げられる移動壁を備え、上記レールが本線レールを有し、さらに、平面視にて該本線レールから直交方向に連続状に延びる一対の収納レールが、互いに平行に収納室内へ配設される移動壁収納構造に於て、上記吊車は上記移動壁の上端部に付設された吊下軸を有し、平面視にて、該吊下軸の中心間の距離を、上記収納レールのそれぞれの幅方向中央線間の距離の 105%〜 115%になるように設定した。
【0005】
また、上記本線レールの上記一対の収納レールとの連結部近傍に方向変換ガイド部材を配設した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る移動壁収納構造よれば、一対の吊下軸の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁を収納室から出し入れ搬送できる。言い換えると、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)に吊下軸の取付位置のばらつき(間隔寸法誤差)が生じた場合や、移動壁を使用しているうちに吊下軸の付設位置がずれた場合であっても、平面視にて移動壁を一対の収納レールに対し斜めに搬送することで、そのばらつき(誤差・ずれ)を吸収できる。
また、手動でも移動壁をスムースかつ手軽に収納室から出し入れできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1に於て、1は、展示場、会議室、ホテル、式場、店舗、美術館、各種イベント会場等の天井に配設されたレールであり、レール1には(後述する)吊車3が走行可能に取り付けられている。そして、レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3には移動壁18が吊り下げられている。さらに、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有する。
レール1は本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設されている。
【0008】
図2に示すように、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定している。吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aが、収納レール12,12の幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%未満になると、製造時(移動壁18と吊下軸16の取付時)の寸法誤差等で、中心X,X間の距離Aが幅方向中央線Y,Y間の距離Bより小さくなることがあり、この場合、吊車3,3(移動壁18)が本線レール11と収納レール12間を往復移動しにくくなる。また、中心X,X間の距離Aが 115%より大きくなると、移動壁18が収納室13の奥壁面に対する傾斜度が大きくなり、移動壁18の収納枚数が少なくなる。なお、平面視にて、収納室13の奥壁面は収納レール12と直交して配置されており、レール1には移動壁18が複数枚備えられている。
【0009】
次に、図6と図7に於て、レール1は、下方に開口するスリット部10を切り欠いた横断面矩形状で、例えば、アルミニウムの押出型材から成る。なお、レール1の材質としては、鉄鋼材、ステンレス等を用いるも自由であり、また、(プレス)折曲加工材としてもよい。
具体的には、レール1は、吊車3が走行する走行空間20を内部に有する。さらに、レール1は、上面を吊車3が走行する左右一対の走行用下板部9,9を有し、その下板部9,9の内端縁部19,19にてスリット部10が形成されている。
【0010】
一対の収納レール12,12は、第1収納レール12aと第2収納レール12bとから成り、第1収納レール12aは、本線レール11の(収納室13側の)一端部に直交して連結されており、第2収納レール12bは、第1収納レール12aと所定間隔離れて本線レール11に直交して連結されている。
そして、スリット部10は、本線レール11と第1収納レール12aとの連結部8a近傍に於て、湾曲して形成され、本線レール11と第2収納レール12bとの連結部8b近傍に於て、略T字状に分岐している。
また、本線レール11の一対の収納レール12a,12bとの連結部8a,8b近傍に方向変換ガイド部材7が配設されている。それぞれの方向変換ガイド部材7,7は、本線レール11の走行空間20内に設けられ、連結部8b近傍のガイド部材7bは、連結部8a近傍のガイド部材7aより高い位置に配置されている。
【0011】
吊車3は基台部2を有し、さらに、吊車3は、基台部2の左右に配設されレール1の左右一対の走行用下板部9,9の上面を転動する重量支持用の車輪4を有する。図例のように、基台部2の左右に、それぞれ前後一対の車輪4を配設すると、吊車3が安定して走行可能となる。
前後一対の吊車3,3は、第1収納レール12aを走行する第1吊車3aと、第2収納レール12bを走行する第2吊車3bと、から成り、第1吊車3aの基台部2の上部には、(低い位置にある)方向変換ガイド部材7aと接触する方向変換ローラ6a,6aを備え、第2吊車3bの基台部2の上部には(高い位置にある)方向変換ガイド部材7bと接触する方向変換ローラ6b,6bを備えている。つまり、第2吊車3bの方向変換ローラ6bは、第1吊車3aの方向変換ローラ6aよりその高さ寸法が高く(厚さ寸法が大きく)設定され、さらに、第1吊車3aは(高い位置にある)方向変換ガイド部材7bの下を通過できるように、第1吊車3aの方向変換ローラ6aの上面は、そのガイド部材7bの下面より低い位置になるように設定されている。
【0012】
図8〜図11に於て、吊車3(3a,3b)は、基台部2の下部に前後一対のガイドローラ5,5を備え、ガイドローラ5,5は鉛直軸心L廻りに回転自在であり、かつ、スリット部10を形成する一対の下板部9,9の内端縁部19,19に沿って転動するようになっている。さらに、ガイドローラ5の直径は、スリット部10の幅寸法より僅かに小さく設定されている。また、基台部2の下部のガイドローラ5,5の間に吊下軸16が垂設され、吊下軸16は、基台部2又は移動壁18のうち少なくとも一方に対し軸中心に回転自在となっている。
また、基台部2の上部の方向変換ローラ6,6(6a,6a及び6b,6b)は、鉛直軸心M廻りに回転自在となっており、この一対の方向変換ローラ6,6は、既述の一対のガイドローラ5,5と平面視に於て同一位置に配設されると共に、方向変換ローラ6,6及びガイドローラ5,5が、同一外径寸法に設定されるのが好ましい。
【0013】
方向変換ガイド部材7(7a,7b)は、所定厚さ寸法を有する板体から成り、側面に方向変換ローラ6と接触しつつ誘導して吊車3を(本線レール11と収納レール12とに)相互に乗り移らせるための平面視凹曲面状誘導湾曲部23を有する。さらに、具体的には、誘導湾曲部23は四分の一の円弧状に形成され、両端がそれぞれ本線レール11及び収納レール12の長手方向へと向くようにして、方向変換ガイド部材7は配設される。
【0014】
スリット部10は、本線レール11と第1収納レール12aとの連結部8a近傍に於て、本線レール11の(収納室13と反対側の)他端部側から第1収納レール12aへ円弧状に曲がって形成され、また、本線レール11と第2収納レール12bとの連結部8b近傍に於て、本線レール11の他端部側から第2収納レール12bへ円弧状に曲がって略T字状に分岐している。 即ち、図10に示すように、連結部8b近傍に於て、本線レール11の走行用下板部9,9のうち一の下板部9Aが折曲部14,14をもって第2収納レール12bの一対の下板部9,9に連続するように形成されている。そして、この折曲部14,14のうち、吊車3の内輪側の折曲部14のコーナー部は、円弧状に形成されている。かつ、他の(吊車3の外輪側の)折曲部14は、そのコーナー部に湾曲状ガイド突出部15を有する。
また、連結部8a近傍に於て、本線レール11の走行用下板部9,9が、折曲部14,14をもって第1収納レール12aの一対の下板部9,9に円弧状に連続するように形成されている(図6参照)。さらに、それぞれの連結部8a,8b近傍の外輪側の折曲部14の湾曲面を、平面視に於て対応する方向変換ガイド部材7の一部又は全部と同一湾曲状に形成すれば、吊車3がスムースにカーブ走行する。
【0015】
また、本発明の移動壁収納構造は設計変更自由であり、レール1と吊車3の構造は上記実施の形態に限らず、例えば、レール1が横断面横向きH字型(I型)鋼材から成り、吊車3の車輪4がそのH字型レール1の下リブ部の上面を走行する構造であってもよい。
また、移動壁18は手動で搬送するようになっているが、吊車3にモータ等を搭載し、移動壁18をその吊車3によって電動等で搬送するようにしてもよい。
【0016】
上述した本発明である移動壁収納構造の使用方法(作用)について説明する。
まず、移動壁18を収納室13内に収納する場合について説明する。
図2〜図5に於て、移動壁18の進行方向前端部(第1吊車3a側)を手で引っ張って本線レール11に沿って本線レール11の一端側(図2に於て右側)へ移動させ、第1吊車3aを、本線レール11の第1収納レール12aとの連結部8a近傍まで走行させる。そして、移動壁18の前端部を収納室13へ向かって移動させると、第1吊車3aは第1収納レール12aを走行し、第2吊車3bはこの動きに追随して本線レール11の第2収納レール12bとの連結部8b近傍まで走行する。さらに、移動壁18を収納室13の奥(収納位置)へ移動させると、第1吊車3aは第1収納レール12aを走行し、第2吊車3bは第2収納レール12bを走行する。この時、移動壁18は、平面視にて、収納レール12と直交して配置された収納室13の奥壁面に対し約20°〜30°傾斜して収納されている。
【0017】
吊車3が本線レール11から収納レール12へ移動する場合について、さらに詳しく説明する。
まず、第1吊車3aは収納室13に向かって本線レール11に沿って走行し、連結部8a近傍にて、方向変換ローラ6aが方向変換ガイド部材7aの誘導湾曲部23に接触すると共に、ガイドローラ5が折曲部14に接触する。そして、第1吊車3aがこの誘導湾曲部23と折曲部14に従って向きを変えながら走行し、第1収納レール12aに乗り移り走行する。
次に、第2吊車3bも収納室13に向かって本線レール11に沿って走行し、連結部8b近傍にて、方向変換ローラ6bが方向変換ガイド部材7bの誘導湾曲部23に接触すると共に、ガイドローラ5が折曲部14(ガイド突出部15)に接触する(図10及び図11参照)。そして、第2吊車3bがこの誘導湾曲部23と折曲部14に従って向きを変えながら走行し、第2収納レール12bに乗り移り走行する。
【0018】
次に、移動壁18を収納室13内から出す場合は、移動壁18の進行方向前端部(第2吊車3b側)を手で引っ張って、第2吊車3bを連結部8b近傍まで走行させる。そして、第2吊車3bを本線レール11に沿って本線レール11の他端側(図4に於て左側)へ走行させると、第1吊車3aは追随して連結部8a近傍まで走行する。さらに、第2吊車3bと第1吊車3aを本線レール11の他端側へ走行させ、移動壁18を所望の位置まで移動させる。
【0019】
以上のように、本発明である移動壁収納構造は、レール1に沿って走行する前後一対の吊車3,3に吊り下げられる移動壁18を備え、レール1が本線レール11を有し、さらに、平面視にて本線レール11から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール12,12が、互いに平行に収納室13内へ配設される移動壁収納構造に於て、吊車3は移動壁18の上端部に付設された吊下軸16を有し、平面視にて、吊下軸16,16の中心X,X間の距離Aを、収納レール12,12のそれぞれの幅方向中央線Y,Y間の距離Bの 105%〜 115%になるように設定したので、一対の吊下軸16,16の間隔寸法のばらつきがあっても、スムースに移動壁18を収納室13から出し入れ搬送できる。言い換えると、組み立て時(移動壁と吊下軸の取付時)に吊下軸の取付位置のばらつき(間隔寸法誤差)が生じた場合や、移動壁を使用しているうちに吊下軸の付設位置がずれた場合であっても、平面視にて移動壁を一対の収納レールに対し斜めに搬送することで、そのばらつき(誤差・ずれ)を吸収できる。
また、手動でも移動壁18をスムースかつ手軽に収納室13から出し入れできる。
【0020】
また、本線レール11の一対の収納レール12,12との連結部8,8近傍に方向変換ガイド部材7を配設したので、吊車3は連結部8近傍にて引っ掛かることなく、非常に滑らかにカーブして本線レール11と収納レール12間を乗り移りできる。そして、移動壁18を一層スムースに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】平面図である。
【図4】平面図である。
【図5】平面図である。
【図6】要部斜視図である。
【図7】要部背面図である。
【図8】要部断面背面図である。
【図9】要部断面背面図である。
【図10】要部断面平面図である。
【図11】要部断面底面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 レール
3 吊車
7 方向変換ガイド部材
8 連結部
11 本線レール
12 収納レール
13 収納室
16 吊下軸
18 移動壁
A 吊下軸の中心間の距離
B 収納レールの幅方向中央線間の距離
X 吊下軸の中心
Y 収納レールの幅方向中央線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール(1)に沿って走行する前後一対の吊車(3)(3)に吊り下げられる移動壁(18)を備え、上記レール(1)が本線レール(11)を有し、さらに、平面視にて該本線レール(11)から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール(12)(12)が、互いに平行に収納室(13)内へ配設される移動壁収納構造に於て、
上記吊車(3)は上記移動壁(18)の上端部に付設された吊下軸(16)を有し、平面視にて、該吊下軸(16)(16)の中心(X)(X)間の距離(A)を、上記収納レール(12)(12)のそれぞれの幅方向中央線(Y)(Y)間の距離(B)の 105%〜 115%になるように設定したことを特徴とする移動壁収納構造。
【請求項2】
上記本線レール(11)の上記一対の収納レール(12)(12)との連結部(8)(8)近傍に方向変換ガイド部材(7)を配設した請求項1記載の移動壁収納構造。
【請求項1】
レール(1)に沿って走行する前後一対の吊車(3)(3)に吊り下げられる移動壁(18)を備え、上記レール(1)が本線レール(11)を有し、さらに、平面視にて該本線レール(11)から直交方向に連続状に延びる一対の収納レール(12)(12)が、互いに平行に収納室(13)内へ配設される移動壁収納構造に於て、
上記吊車(3)は上記移動壁(18)の上端部に付設された吊下軸(16)を有し、平面視にて、該吊下軸(16)(16)の中心(X)(X)間の距離(A)を、上記収納レール(12)(12)のそれぞれの幅方向中央線(Y)(Y)間の距離(B)の 105%〜 115%になるように設定したことを特徴とする移動壁収納構造。
【請求項2】
上記本線レール(11)の上記一対の収納レール(12)(12)との連結部(8)(8)近傍に方向変換ガイド部材(7)を配設した請求項1記載の移動壁収納構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−144293(P2006−144293A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333151(P2004−333151)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(504374849)株式会社泉陽商会 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(504374849)株式会社泉陽商会 (16)
【Fターム(参考)】
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