説明

移動自在な椅子、机、及びこれらの組み合わせ

【課題】ファン等の電気機器を備えた移動自在な椅子への充電を、手間を要することなく簡単に行うことを実現する。
【手段】背もたれ9の前端部に無線受電部40を設けている。椅子2とセットで使用される机1における天板3の前端部に無線送電部6を設けている。人が離席して椅子2を机1に収納すると、無線受電部40が無線送電部6に近接して、無線送電部6から無線受電部40に送電され、椅子2に設けたバッテリー26が充電される。椅子2の座8や背もたれ9には温度制御用ファンやヒータが内蔵されており、個々人にマッチした作業環境を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、移動自在な椅子、及びこれとセットで使用される机、並びにこれら机と椅子との組み合わせに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力エネルギーを効率的に使用することは我が国に課せられた課題であり、オフィスにおいても効率的な電力利用が求められている。オフィスでの使用電力の大きなウエイトを占めるのが空調設備であり、そこで、室の全体でなくピンポイント的に空調することで消費電力の低減を図ることが提案されている。
【0003】
その一例として例えば特許文献1には、キャスタを有する移動自在な椅子において、座や背もたれの内部にファンを設けて、椅子に加温機能や冷却機能、或いは除湿機能を持たせることが開示されている。
【0004】
室の全体を空調するに過ぎない場合、空気の吹き出し口に近い部位と遠い部位とで温度に違いが生じたり、キャビネット等の什器によって空気の流れが遮られて適切に空調されない等の温度ムラが発生しやすいため、室を使用する全ワーカーの満足度を高め難いことが多いが、特許文献1のように椅子に加温・冷却機能や吸湿等の制御機能を持たせると、単に室の全体を空調する場合に比べて電力の使用量を低減できるだけでなく、個人の好みに応じて温度等を調節し得るため、各ワーカーの満足度にも貢献できる。
【0005】
移動自在な椅子に温度等の制御機能を持たせるに当たって一つの問題は、電源の確保である。床上を自由に移動するという性質上、ケーブルで給電するのは現実的ではなく、バッテリーを設けるのが現実的である。この場合、バッテリーには充電せねばならず、充電方法として、例えば終業時等に充電用プラグを接続しておくことが考えられる。しかし、この方法は、使用者がプラグの接続を忘れた場合に対応できないという問題がある。
【0006】
他方、例えば特許文献2に開示されているように、電磁誘導等を利用したワイヤレス方式(無接点方式、コードレス方式)の送電手段(通電手段)が開発されており、特許文献3,4にはワイヤレス方式通電手段を机(テーブル)に適用して、天板の下面や内部に無線送電部を設けることにより、机上に載置した機器に電力を供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−56173号公報
【特許文献2】特許第4240748号公報
【特許文献3】特開2005−94843号公報
【特許文献4】特開2011−120451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
椅子のバッテリーへの充電方法として、特許文献3〜4のようなワイヤレス方式通電手段を採用することが考えられる。しかし、ワイヤレス方式通電手段では無線送電部と無線受電部とはある程度の距離以内に接近させておかねばならない場合が多い一方、椅子は使用者の意思に基づいて自在に移動するものであるため、通電状態を確保するめの手段を講じる必要がある。
【0009】
その一つとして、例えば床に無線送電部を設けて椅子の脚に無線受電部を設けることが考えられるが、移動式の椅子ではキャスタを設けていることが多いため、無線送電部と無線受電部との間隔を通電許容範囲内に狭めることが困難になることが多い。また、無線送電部を床に設けるのは、安全上の問題も多い。従って、床からの送電方式は汎用性が低いと言える。
【0010】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、椅子に設けたバッテリーに無線通電することを、現実性が高い状態で提供せんとするものである。また、机の上や内部、或いは机の周囲には電気機器が多く使用されており、これら使用者が机を使用しない場合はこれら周辺の電気機器もOFF又はONにせねばならないことがあるが、従来、これら周辺の電気機器は使用者が自らの意思に基づいてスイッチ等を操作しているため、操作を忘れてしまう問題もあった。例えば、机又は袖キャビネットの引出しに電気錠を設けている場合、終業時等に電気錠を施錠せねばならないのにこれを忘れてしまうといった問題である。本願発明はこの問題を解決することも課題の一つにしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
オフィス等において、椅子は机(テーブル)とセットで使用されることが大半である。本願発明者たちはこの点に着目して、本願各請求項の発明を完成させるに至った。すなわち、請求項1の発明は椅子に関するものであり、この発明は、脚で支持された座とバッテリーとを備えた移動自在な椅子において、その適宜部位に、机に設けた無線送電部から送電された電力を受電して前記バッテリーに供給する無線受電部を設けている。
【0012】
請求項2の発明は請求項1の発明を具体化したもので、この発明の椅子は、更に背もたれを備えており、前記背もたれの左右両側部のうち片方又は両方に前記無線受電部を設けていると共に、前記座と背もたれとのうちいずれか一方又は両方に、前記バッテリーで駆動される温度又は湿度の制御手段を設けている。
【0013】
請求項3の発明は机に係るものであり、この机は、天板とこれを支持する支持体とを有しており、前記天板の前端部に、椅子の背もたれに設けた無線受電部に無線給電する無線送電部を設けているか、又は、前記天板の下面部に、前記椅子の座に設けた無線受電部に送電する無線送電部を設けている。
【0014】
請求項4の発明は、天板を有する机と座及び背もたれを有する移動自在な椅子との組み合わせに関するものであり、前記机における天板の前端部に無線送電部を設けている一方、前記椅子はバッテリーを備えており、前記椅子における背もたれの前面部に、当該前面部を前記机における天板の前端部に当接又は近接させると前記無線送電部から受電可能な無線受電部を設けている。
【0015】
請求項5の発明は請求項4の発明の展開例であり、この発明では、前記机の天板と椅子の背もたれとのうちいずれか一方又は両方に、前記無線送電部から無線受電部に通電中であることを視覚的に視認させる表示手段が設けられている。
【0016】
請求項6の発明は請求項4又は5に記載した机と椅子の組み合わせの展開例であり、この発明では、前記椅子をその背もたれが机の天板の前端に当接又は近接するようにセットして前記無線送電部から無線受電部に通電が開始されることにより、前記机の内部に配置した袖キャビネットにおける引出しをロックする電気錠が施錠状態に作動することと、前記机に設けた引出しをロックする電気錠が施錠状態に作動することと、前記机の上に設置した照明スタンドが消灯することと、前記椅子に設けた温度又は湿度の制御装置がOFFになることとのうちの少なくとも1つが実行される。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、机に設けた無線送電部から椅子の無線受電部に給電されるため、移動自在な椅子でありながら、無線方式で安全に給電することができる。また、一般に椅子は不使用時には座や脚を机の内部に収納するものであり、このため、請求項2〜4の構成にすると、終業等によって椅子を机に収納することで通電を開始できるため、充電し忘れることを防止できる。すなわち、人の習慣を利用して充電忘れを防止できるのであり、このためユーザーフレンドリーである。
【0018】
更に、使用されていない椅子が机から離れた位置にランダムな姿勢で放置されていることがあるが、本願発明では、充電のために椅子を机に深く押し込む行為を使用者に促す効果があり、その結果、人が使用していない椅子が乱雑に放置されている状態を無くしてオフィスの整理整頓や美化に貢献できる。
【0019】
さて、椅子に無線受電部を設けるにおいては、例えば座の側縁部に無線受電部を設けて机の脚に無線送電部を設けるといったことも可能であるが、この場合は、座の側縁が机の脚に当接又は近接するように一々確認してセットせねばならないため、使用者に手間を強いることになる。これに対して請求項2〜4の構成を採用すると、椅子の左右位置に関係なく、座が机の内部に入り込むように椅子を押しやるだけで通電状態を確保できるため、使用者に余分な負担を強いることは全くない。この面においてもユーザーフレンドリーである。
【0020】
なお、無線送電部から無線受電部への通電開始のきっかけとしては、無線送電部を常に送電可能な状態にしておいて、無線受電部が通電可能エリアに入ると自動的に通電が開始される構成にすることもできるし、机と椅子とに、椅子を机に収納するとONになるスイッチ手段を設け、スイッチ手段のONによって無線送電部から無線受電部への通電を開始することもできる。スイッチ手段は種々採用できるが、椅子の背もたれに金属片を設けて、この金属片が机の金属製天板に当接することによるショート現象を利用すると構造を簡単化できる利点がある。
【0021】
請求項5のように無線送電中であることを人に視認させる表示手段を設けると、充電されているか否かを使用者や管理者が把握できるため、例えば、無線受電部が無線送電部に十分に近づいておらずに充電がなされていない場合に、椅子を押し込んで通電状態に保持するという行動を採らせることができる。従って、充電忘れをより的確に防止できる。
【0022】
請求項6の構成を採用すると、椅子を机に収納する行為をきっかけとして、椅子自体の機器や机の周辺の機器を制御できる。例えば、袖キャビネットの引出しや机自体の引出しに電器錠を設けている場合に適用すると、終業等に際して施錠せねばならないのに施錠を忘れてしまった場合に、椅子を机に収納する行為に起因して自動的に施錠でき、その結果、オフィスのセキュリティを向上できる。
【0023】
また、席にすぐに戻るつもりで離席したが長時間戻らないということは良くあり、その場合に机上の灯具が点灯したままになっていることがあるが、本願請求項6を適用すると、椅子を机に収納する行為に起因して灯具を自動的に消灯できるため、オフィスの省エネに貢献できる。同様に、椅子に内蔵した温度制御装置をONにしたまま離席して戻らない場合に、温度制御装置がONになったままで電力を無駄に消費してしまうことも防止できる。
【0024】
このように机から椅子への無線送電(通電)に起因して各種の機器を制御することは、無線送電の開始によって即座に行われても良いし、タイマー手段を設けて、椅子を机に収納してからある程度の時間が経過してから実行してもよい。また、請求項6のように机から椅子への無線送電(通電)に起因して各種の機器を制御することは、送電部や受電部の位置等に関係なく独立した発明たり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態を示す図で、(A)は椅子を使用している状態での側面図、(B)は椅子を収納した状態での側面図である。
【図2】第1実施形態を示す図で、(A)は部分平面図、(B)は椅子の正面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)は(B)のD−D視断面図である。
【図3】(A)は図2(B)のIII-III 視概略断面図、(B)は椅子の収納位置確認手段の一例を示す平面図である。
【図4】第1実施形態のブロック図である。
【図5】第2実施形態の平面図である。
【図6】図5のVI-VI 視概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、机については、奥行き方向を前後方向として間口方向を左右方向としており、椅子については、普通に着座した人の向きを基準にしている。
【0027】
(1).第1実施形態の構造
まず、図1〜図4に示す第1実施形態を説明する。本実施形態の机1及び椅子2は、基本構成は従来と同様であり、机1は天板3を左右の脚4で支持した構成であり、天板3の下面には薄い引出し(センター引出し)5を配置している。天板3はスチール製であり、図2(C)にように、前端部はフロント中空部3aになっている。敢えて述べるまでもないが、天板3は木製や合板製であってもよい。脚4は支持体の一例である。支持体として袖キャビネットを使用することも可能である。
【0028】
天板3におけるフロント中空部3aの内部には、電磁誘導等を利用した無線送電部6を設けている。無線送電部6は左右方向に長く延びている。無線送電部6は電波が机の手前側に放射されるように設定している。なお、無線送電部6はフロント中空部3aの内部に隠れているが、フロント中空部3aの前端部に左右横長の溝穴を形成し、この溝穴から手間側に露出させることも可能である。
【0029】
無線送電部6はコアにコイル(送電コイル)を巻いた基本構成でおり、この無線送電部6に、整流回路や発振回路等を有する送電制御部7(図4参照)からケーブルを介して電流が供給される。送電制御部7には建物のコンセントから交流電力が供給される。送電制御部7は、机の適宜部位(例えば背面部に設けた配線ダクトの内部や天板3の下面)に配置されている(送電制御部7をフロント中空部3aに配置することも可能である。)。図1では、無線送電部6は便宜的に露出した状態に表示している。
【0030】
他方、椅子1は座8と背もたれ9とを有しており、座8の下方には脚装置10を配置している。脚装置10は、略水平状に延びる複数本(5本)の枝足11と中央部に位置した脚支柱(ガスシリンダ)12とを有しており、枝足11の先端にはキャスタ13を設けている。従って、椅子2は移動自在及び持ち運び自在である。
【0031】
脚支柱12の上端にはベース14を固定している。ベース14には背フレーム15が後傾動自在に連結されており、この背フレーム15に背もたれ9を取り付けている。図3(A)に概略を示すように、座8は、PP等の樹脂より成る座インナーシェル17とその上に張った座クッション18とを有しており、座インナーシェル17はその下に配置した座アウターシェル19に取り付けられている。
【0032】
座アウターシェル19の前部は、直接に又は中間金具を介してベース14の前部に前後動可能に連結されている一方、座アウターシェル19の後部は、背フレーム15に、直接に又は中間金具を介して相対回動可能に連結されており、このため、座8は背もたれ9の後傾動に連動して後退しつつ後傾する。なお、座アウターシェル19は座8の一部と見ることもできるし、座アウターシェル19を含めた全体を座部と呼ぶことも可能である。
【0033】
座インナーシェル17の相当範囲は上向き開口凹状の座用囲い部材20で下方から覆われており、座インナーシェル17と座用囲い部材20との間は下部通気空間21になっている。座用囲い部材20は非通気構造である一方、座インナーシェル17には穴やスリット等の通気部が多数形成されており、かつ、座クッション18も通気性を有している。
【0034】
下部通気空間21の前部に座用ファンユニット22を配置している。座用ファンユニット22はケース23と座用ファン24とを有しており、座用ファン24で吸引した外部空気を下部通気空間21から座クッション18に送ったり、逆に、座クッション18の表面から空気を吸引したりすることができる。座インナーシェル17は着座によって下向きに沈むように弾性変形し得る。そこで、着座による座インナーシェル17の弾性変形が許容されるように、座用囲い部材20は座アウター18との間には空間が空いている。なお、座用囲い部材20を設けずに、座用アウターシェル19を囲い部材に兼用することも可能である(この点は背もたれ9も同様である。)。
【0035】
加温手段としては、ケース23の開口部に網状のヒータを配置して、温風を下部通気空間21から座インナーシェル17に放散させてもよいし、図3に一点鎖線で示すように、座インナーシェル17の上面等に面状等のヒータ25を配置してもよい。ヒータ25を使用する場合は、加温時に座用ファン24を駆動する必要はない。冷却手段としては、単に座用ファン24で送風又は吸引するだけで足りると言えるが、冷却機能を高めたい場合は小型の冷却ユニットを設けたらよい。冷却ユニットとしては、冷媒を使用したものの他に、ペルチェ素子を使用した電子冷却方式のものも採用できる。
【0036】
除湿機能としては、座用ファン24で座8の表面の空気を吸引するだけで足りると言えるが、より高い除湿機能を得たい場合は、除湿ユニットを配置したらよい。加温機能と冷却機能と除湿機能とを有するエアコン同様の環境制御ユニットを設けることも可能である。
【0037】
座用ファン24には、座アウターシェル19の下面に設けたバッテリー26(図1,図2(B)参照)から給電される。また、座アウターシェル19の右側部に、座用ファン24をON・OFFする座用スイッチ27(図2(B)参照)を設けている。座用スイッチ27は単なるON・OFF機能にとどまらず、温度調節機能を持たせてもよい。例えば座用スイッチ27を回転する摘まみ方式として、基準位置を境にして正転させると加温、逆転させると冷却と設定して、回転角度に応じて加温と冷却との機能がアップするように構成することが可能である。
【0038】
背もたれ9も座8と似た構造である。すなわち、背もたれ9は、PP等の樹脂より成る背インナーシェル29とその上に張った背クッション30とを有しており、背インナーシェル29はその後ろに配置した背アウターシェル31に取り付けられている。背アウターシェル31の背フレーム15に取り付けられている。
【0039】
背インナーシェル29の背面は、その相当範囲が前向き凹状に湾曲した背用囲い部材32で後ろから覆われており、背インナーシェル29と背用囲い部材32との間は上部通気空間33になっている。背用囲い部材32は非通気構造である一方、背インナーシェル29には穴やスリット等の通気部が多数形成されており、かつ、背クッション30も通気性を有している。
【0040】
上部通気空間33の下部に背用ファンユニット34を配置している。背用ファンユニット34はケース35と背用ファン36とを有しており、背用ファン36で吸引した外部空気を上部通気空間33から背クッション30に送ったり、逆に、背クッション30の表面から空気を上部通気空間33に吸引することができる。背もたれ9においても、背インナーシェル29の前面等にヒータ37を配置することが可能である。加温手段及び冷却手段を各種の構造にし得ることは座8の場合と同様である。本実施形態では、ファンユニット22,34と囲い部材20,32が温度又は湿度の制御手段を構成している。
【0041】
背用ファン36にもバッテリー26から給電される。また、座アウターシェル19の左側部に、背用ファン36をON・OFFする背用スイッチ38(図2(B)参照)を設けている。背用スイッチ38についても、単なるON・OFF機能にとどまらず温度調節機能を持たせることが可能である。
【0042】
背もたれ9は平面視で前向き凹状に湾曲しており、従って、椅子2を、座8が机1の内部に入り込むように押し込むと、背もたれ9の左右両側部が天板3の前端に当たる。そこで、図2(D)に示すように、背インナーシェル29の左右両側部に縦長のサイド溝39を形成し、このサイド溝39に無線受電部40を配置することにより、机1の無線送電部6からの無線通電を可能にしている。
【0043】
無線受電部40もコアに受電コイルを巻いた基本構成であり、背クッション30を覆う表皮材30aで前から覆われている。従って、無線受電部40は外部からは見えない(図1や図2では無線受電部40は位置を明確化するため黒く塗っているが、実際には表皮材30aで隠れている。)。背もたれ9は高さ調節可能であるので、どの高さにしても無線送電部6と重合するように、無線受電部40は上下に長い形態になっている。
【0044】
図4に示すように、無線受電部40で受信した電流は出力回路等を有する受電制御部41に送信され、ここで例えば12Vや24V等の直流電源に変換されてからバッテリー26に送電される。受電制御部41は、座8と背もたれ9とのうちいずれに設けてもよい。
【0045】
(2).第1実施形態のまとめ・変形例
既に説明したように、椅子の使用者は座用ファン24を駆動したり背用ファン36を駆動したりすることにより、身体に接する温度環境又は湿度環境を調節することができる。従って、個々人に適応したきめ細かい環境を実現できると共に、室全体の空調は暖房時には高めにしておいて冷房時には低めにしておくか、又はOFFにしておくことができるため、ワーキング環境の維持に要するコストも低減できる。
【0046】
そして、例えば終業によって椅子を机に収納すると、背もたれ9に設けた無線受電部40が机1の無線送電部6に近接して、無線送電部6から無線受電部40への通電が開始する。このため、終業後の時間のように椅子1を使用していない時間を利用して、バッテリー26に自動的に充電することができる。
【0047】
無線送電に際しては、送電制御部7を起動する必要があるが、送電制御部7は常に起動させてスタンバイ状態にしておいてもよいし、椅子2を机に収納することに起因したスイッチ手段によって起動させてもよい。椅子2を机に収納することに起因したスイッチ手段としては、例えば、背もたれ9の前面のうち左右両側部などに天板3の前端に接触し得る金属片や金属箔を設けておいて、金属片や金属箔が接触すると(ショートすると)天板3の電気抵抗が変化することを利用することが可能である。
【0048】
背もたれ9の前面に金属片や金属箔等を設けた場合、無線受電部40も背もたれ9の前面に設けることは可能であるが、無線送電部6から発振された高周波電波の受信が金属片等によって悪影響を受けるおそれがある場合は、図1(B)に一点鎖線で示すように、例えば天板3の下面のうち奥まった部位に無線送電部6を設けて、座8に無線受電部40を設けてもよい。この場合、無線送電部6と無線受電部40との平面視形状や面積、或いは配置位置は任意に設定できる。無線送電部6は左右方向に長く延びる長さとして、無線受電部40は座8の左右側部の片側又は両側の一部だけに設けることも可能である(座8の左右位置が不揃いであっても、必ず送電される。)。
【0049】
図2(A)に模式的に示すように、天板3の前端面や背もたれ9の上面に、無線送電部6から無線受電部40への通電が行われていることを視認せしめる表示手段の一例としてパイロットランプ43を設けることが可能である。パイロットランプ43はLED方式が好適であり、天板3と背もたれ9とのうち片方だけに設けてもよい。
【0050】
なお、天板3のパイロットランプ43は天板3の前端から突出した状態に表示しているが、天板3の前面と同一面に設定するのが好ましい。パイロットランプ43は通電中は(充電中は)点灯しっぱなしでも良いし、通電中は点滅する方式としてもよい。充電中と充電終了後とで色を変えるのが好ましい。
【0051】
無線送電部6から無線受電部40に無線送電するにおいては、方式等によって違いはあるものの送電可能な(或いは効率良く送電できる)間隔(距離)は限度があり、距離がある程度以上広がると無線送電できなくなったり効率が低下したりする。従って、椅子は無線送電が可能な適正位置に収める必要があり、そのためには、無線送電に適正な位置であることを使用者に視認させる手段を講じるのが好ましい。
【0052】
この認識手段としては、図3(B)に示すように、天板3の上面又は床面Fに、座8の前端が位置しておらねばならない限度位置を表示するラインLを設けたり、座8の上面に、適正位置において天板3の前端の真下に位置しておらねばならない範囲の後端を表示するラインLを設けておく、といった方法を採用できる。椅子2の奥行き寸法は概ね判っているので、天板3の上面にラインLを設けておいても使用者の認識機能は問題ないと言える。また、天板3の下方の床Fも斜めから視認できるで、床FにラインLを設けていても視認性にはさほどの問題はないと推測される。
【0053】
床Fに認識手段を設ける場合、横長の突起することも可能である。また、横長の突起を床に設ける場合、キャスタ13が突起を乗り越えると適正位置であると認識させることも可能である(椅子の使用状態では、椅子2は机1の奥まで入り込むことはないため、使用状態でキャスタ13が突起に当たることはなく、従って、使用の障害にはならない。)。座8にラインLを設けることは視認性において優れていると言える。ラインの具体的な手段としては、座8を構成する表皮材の色とは異なる色の糸を縫い込んだり、ラインLの前後で表皮材の色を異ならせるといったことが考えられる。
【0054】
(3).他の実施形態
図5及び図6では、請求項6を具体化した実施形態を示している。この実施形態では、天板3の下方の空間にワゴン方式等の袖キャビネット44を配置している。袖キャビネット44は前向きに開口した本体45とその内部に配置した複数段の引出し46とを有しており、例えば、上段の引出し46の前部に設けた中空鏡板47の内部に電気錠48を配置している。
【0055】
電気錠48は電磁ソレノイド方式であり、上向きに突出したデッドボルト48aを有している。デッドボルト48aが本体45の框部49に形成した係合穴50に嵌まることで、上段の引出し46は前進動不能にロックされる(実際には、デッドボルト48aは電磁ソレノイドの可動鉄心と別に構成されている。)。そして、天板3の下面部(例えば補強3bの内部)に無線送電部51を設ける一方、袖キャビネット44における本体45の上面部には無線受電部52を設け、無線受電部52から受電制御部53とバッテリー54とを介して電気錠48に給電している。引出し46は前後動するので、バッテリー54からはフレキシブルなケーブル55を介して電気錠48に給電している。
【0056】
さて、終業時には引出し45をロックせねばならないが、忘れてしまうことがある。そこで、本実施形態では、電気錠48が解錠状態のままであると、椅子2を机1に押し込んで天板2の前端部の無線送電部6から椅子の無線受電部40への送電が開始されると、その電流の流れをトリガーとして、電気錠48を施錠する。このため、引出し46のロック忘れを防止できる。すなわち、椅子2を机1に押し込み収納するという行為に基づいて電気錠48が自動的に施錠されるのである。
【0057】
なお、椅子2と電気錠48との関係は図4のブロック図でも表示している。電気錠48の制御信号は無線で行うことも可能であるが、電源線を利用するのが好ましい。離席してからファン24,36のスイッチを切り忘れることがあり得る。この点についても、図4に一点鎖線で示すように、回路にスイッチ制御部55を設けて、机1から椅子2への無線送電を契機として、スイッチ27,38がONのままであった場合にOFFにする。図1(A)に部分的に示す照明装置(スタンド)57が点灯したままになっている場合に、これをOFFにすることも可能である。
【0058】
(4).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば椅子はロッキング椅子には限らず、各種の移動式椅子に適用できる。キャスタを備えていない椅子にも適用できる。無線送電部を起動させる手段としては、机の天板等に赤外線方式等の人検知センサを設けておいて、人が離席したことを検知したら無線送電部が起動させるように設定することも可能である。
【0059】
椅子のバッテリーは、温度制御装置のように使用者の作業環境を良くするための機器に給電することには限らない。例えば、小テーブルを有する椅子において、テーブルに載せて使用するノートパソコンや携帯端末のための電源として使用することもできる。或いは、電動指圧器のような器具の電源とすることも可能である。ファンユニットを設ける場合、例えば座の前後中間部や後端部に配置したり、背もたれの上下中間部や上端部に配置したりすることも可能である。図1(A)に一点鎖線で示すように椅子に肘掛け装置を設けている場合、肘当ての前端部や上端部に無線受電部を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は机と椅子に実際に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 机
2 椅子
6 机の無線送電部
7 机の送電制御部
8 座
9 背もたれ
10 脚装置
13 キャスタ
17 座インナーシェル
18 座クッション
19 座アウターシェル
20 囲い部材
21 下部通気空間
22 座用ファンユニット(制御手段)
25 座用ヒータ
29 背インナーシェル
30 背クッション
31 背アウターシェル
32 囲い部材
33 上部通気空間
34 背用ファンユニット(制御手段)
37 背用ヒータ
40 椅子の無線受電部
41 椅子の受電制御部
43 表示手段の一例としてパイロットランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚で支持された座とバッテリーとを備えた移動自在な椅子であって、その適宜部位に、机に設けた無線送電部から送電された電力を受電して前記バッテリーに供給する無線受電部を設けている、
移動自在な椅子。
【請求項2】
更に背もたれを備えており、前記背もたれと座とのうちいずれか一方又は両方に、前記無線受電部を設けていると共に、前記バッテリーで作動する温度又は湿度の制御手段を段けている、
請求項1に記載した移動自在な椅子。
【請求項3】
天板とこれを支持する支持体とを有しており、前記天板の前端部に、前記椅子の背もたれに設けた無線受電部に送電する無線送電部を設けているか、又は、前記天板の下面部に、前記椅子の座に設けた無線受電部に送電する無線送電部を設けている、
机。
【請求項4】
天板を有する机と座及び背もたれを有する移動自在な椅子との組み合わせであって、前記机における天板の前端部に無線送電部を設けている一方、前記椅子はバッテリーを備えており、前記椅子における背もたれの前面部に、当該前面部を前記机における天板の前端部に当接又は近接させると前記無線送電部から受電可能な無線受電部を設けている、
机と椅子との組み合わせ。
【請求項5】
前記机の天板と椅子の背もたれとのうちいずれか一方又は両方に、前記無線送電部から無線受電部に通電中であることを視覚的に視認させる表示手段が設けられている、
請求項4に記載した机と椅子の組み合わせ。
【請求項6】
前記椅子をその背もたれが机の天板の前端に当接又は近接するようにセットして前記無線送電部から無線受電部に通電が開始されることにより、
前記机の内部に配置した袖キャビネットにおける引出しをロックする電気錠が施錠状態に作動することと、前記机に設けた引出しをロックする電気錠が施錠状態に作動することと、前記机の上に設置した照明スタンドが消灯することと、前記椅子に設けた温度又は湿度の制御装置がOFFになることとのうちの少なくとも1つが実行される、
請求項4又は5に記載した机と椅子の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46548(P2013−46548A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184677(P2011−184677)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】