説明

移動車両給電システム

【課題】給電効率の低下を抑制できる移動車両給電システムの提供。
【解決手段】給電エリアX内に位置する移動車両Mに対して非接触給電を行う移動車両給電システムAであって、移動車両Mに設けられた受電コイルm1と、給電エリアX内において互いに異なる位置に配設された複数の給電コイル1a1等と、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出する位置検出手段及び該位置検出手段の検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1等のうち、受電コイルm1に対応する位置に配設された給電コイル1a1を選択し、該選択した給電コイル1a1から非接触給電を行わせる制御手段を具備する制御装置4と、を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動車両給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車等の移動車両は、搭載バッテリーの性能等の問題から長距離の走行が困難な場合等があるため、近年、自宅等での給電の他に、移動車両が走行する途中の種々の場所、例えば停留所、ガソリンスタンド、坂道、交差点等に給電エリアを設けることが提案されている。例えば、下記特許文献1には、交通信号機と連携し、移動車両に対して非接触給電を行う移動車両給電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−193657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接触給電を行う場合、移動車両に設けられた受電手段と給電エリア内に設けられた給電手段との位置関係が、その給電効率に影響する。
例えば自宅駐車場等、移動車両の位置がある程度決まっている場所では問題はないが、上記従来技術のように、移動車両が走行する途中で非接触給電を行う場合には、給電エリア内における移動車両の位置がドライバーの意思によって任意的になり易く、受電手段と給電手段の位置ズレが大きくなって、給電効率が低下する。また、乗用車やトラック等の車種等によって、それぞれ受電手段が設けられる位置が異なる場合があり、このことも給電効率の低下に繋がる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、給電効率の低下を抑制できる移動車両給電システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、給電エリア内に位置する移動車両に対して非接触給電を行う移動車両給電システムであって、上記移動車両に設けられた受電手段と、上記給電エリア内において互いに異なる位置に配設された複数の給電手段と、上記給電エリア内における上記受電手段の位置を検出する位置検出手段と、上記位置検出手段の検出結果に基づいて、上記複数の給電手段のうち、上記受電手段に対応する位置に配設された給電手段を選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせる制御手段と、を有するという構成を採用する。
【0007】
また、本発明においては、上記制御手段は、上記位置検出手段の検出結果に基づいて、上記複数の給電手段のうち、上記受電手段に最も近い位置に配設された給電手段を選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせるという構成を採用する。
【0008】
また、本発明においては、上記位置検出手段が、上記給電エリア内において複数の上記受電手段の位置を検出した場合、上記制御手段は、上記位置検出手段の検出結果に基づいて、上記複数の給電手段のうち、複数の上記受電手段のそれぞれに対応する位置に配設された給電手段をそれぞれ選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせるという構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、上記給電手段は給電コイルを備えると共に上記受電手段は受電コイルを備え、上記給電手段は、上記給電コイルを上記受電コイルに電磁気的に結合させることによって非接触給電を行うという構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、上記位置検出手段として、上記給電コイルと上記受電コイルとを用いるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電エリア内に複数の給電手段を用意し、給電エリア内における移動車両に設けられた受電手段の位置を検出して、複数の給電手段のうち、非接触給電に関し最適な位置に配設されている給電手段を選択して給電を行うことができる。したがって、本発明によれば、給電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における移動車両給電システムAの機構構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施形態における移動車両給電システムAの設置例を示す模式図である。
【図3】本発明の別実施形態における移動車両給電システムAの機構構成を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態における移動車両給電システムAの機構構成を示すシステム構成図である。
本移動車両給電システムAは、図1に示すように、給電エリアX内に位置する移動車両Mに対して非接触給電を行うものである。給電エリアX内には、複数の給電コイル(給電手段)1a1,1a2,1a3が設けられている。また、移動車両Mには、受電コイル(受電手段)m1が設けられている。
【0015】
受電コイルm1は、上記給電コイル1a1等と対向可能に移動車両Mの底部に設けられている。この受電コイルm1は、給電コイル1a1等と略同一のコイル径を有し、給電コイル1a1等と電磁気的に結合することによって交流電力を非接触で受電する。換言すると、本移動車両給電システムAは、給電コイル1a1等を移動車両Mの受電コイルm1に電磁気的に結合させることによって移動車両Mに非接触給電を行う電力供給システムとなっている。
【0016】
ここで、本移動車両給電システムAにおける給電コイル1a1等から受電コイルm1への非接触給電は、磁界共鳴方式に基づいて行われる。すなわち、給電コイル1a1等と受電コイルm1とには各々に共振回路を構成するための共振用コンデンサ(図示略)が接続されている。また、例えば共振用コンデンサの静電容量は、給電コイル1a1等と共振用コンデンサとからなる給電側共振回路の共振周波数と受電コイルm1と共振用コンデンサとからなる受電側共振回路の共振周波数とは同一周波数となるように設定されている。
【0017】
移動車両Mには、受電コイルm1の他に、充電回路m2と、蓄電池m3と、充電制御部m4とが設けられている。受電コイルm1は、給電コイル1a1から受電した交流電力(受電電力)を充電回路m2に出力する。
充電回路m2は、充電制御部m4から入力される充電制御信号に基づいて上記受電電力を直流電力に変換して蓄電池m3に供給する電力変換回路(コンバータ)である。すなわち、この充電回路m2は、充電制御信号に基づいて蓄電池m3の充電状態に応じた充電電流を蓄電池m3に供給することにより蓄電池m3を充電する。
【0018】
蓄電池m3は、移動車両Mの駆動動力源をして十分な電力を蓄えることが可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等である。この蓄電池m3は、充電回路m2から供給される直流電力を充電すると共に、図示しない駆動用電力変換器に走行駆動用電力を供給(放電)する。
充電制御部m4は、充電回路m2の電力変換動作を制御することにより蓄電池m3の充電制御を行う制御装置である。充電制御部m4は、受電コイルm1による給電コイル1a1等からの交流電力の受電を例えば受電コイルm1の端子間電圧の変化に基づいて検知すると、充電回路m2を作動させて蓄電池m3に直流電力を充電させる。
【0019】
給電コイル1a1,1a2,1a3は、移動車両Mが走行する路面に設定された所定領域である給電エリアX内において互いに異なる位置に配設されている。より詳細には、給電コイル1a1,1a2,1a3は、移動車両Mの車幅方向において、間隔をあけて配設されている。給電コイル1a1は、路面の中央に配設され、給電コイル1a2,1a3は、給電コイル1a1の両側に間隔をあけて配設されている。これら給電コイル1a1,1a2,1a3は、路面の近傍に埋設されている。なお、当該給電コイルの設置数及び配置は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0020】
給電変換器3aは、給電コイル1a1等に、制御装置(位置検出手段、制御手段)4から入力される制御信号に基づいて給電用交流電力を供給する装置である。より詳細には、給電変換器3aは、選択スイッチ2aを介して、給電コイル1a1,1a2,1a3のいずれかひとつに給電用交流電力を供給する。給電変換器3aは、50Hzあるいは60Hzの商用電力を移動車両Mへの給電に適した周波数(例えば数百Hz〜数MHz)の交流電力に変換して各給電コイル1a1等に出力する。
【0021】
選択スイッチ2aは、制御装置4から入力される制御信号に基づいて給電変換器3aと電気的に接続される回路を切り替える装置である。選択スイッチ2aは、給電コイル1a1,1a2,1a3のいずれかひとつと電気的に接続可能に構成されている。選択スイッチ2aを設けることにより、給電コイル1a1,1a2,1a3のそれぞれに専用の給電変換器3aを設けずとも良くなり、本移動車両給電システムAにおける構成機器及び制御系のスマート化及び効率化が可能となる。
【0022】
制御装置4は、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出すると共に、該検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1,1a2,1a3のうち、受電コイルm1に対応する位置に配設された給電コイル1a1を選択し、該選択した給電コイル1a1から非接触給電を行わせる。すなわち、制御装置4は、受電コイルm1の位置信号を検出すると、選択スイッチ2aを切り替えて非接触給電に関し最適な位置に配設されている給電コイル1a1を選択し、給電変換器3aからの交流電力を、該選択した給電コイル1a1に供給させる。このような制御装置4は、本移動車両給電システムAにおける位置検出手段及び制御手段に相当する。
【0023】
制御装置4は、位置検出手段として、給電コイル1a1等と受電コイルm1とを用いる。より詳細には、給電コイル1a1等及び受電コイルm1を信号伝送に流用することにより給電コイル1a1等と受電コイルm1とを介して制御装置4と充電制御部m4との無線通信を可能とし、当該無線通信によって移動車両Mに搭載された受電コイルm1の位置に関する情報を送受信し、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出する。この場合、給電コイル1a1等及び受電コイルm1は無線通信のためのアンテナとして機能し、制御装置4及び充電制御部m4は、このようなアンテナを用いた通信手段として機能する。また、当該無線通信によって移動車両Mの停車状態を判定したり、給電開始に先立って給電の要非を確認したり、あるいは給電に関する課金情報の送受信、等々を行ってもよい。
【0024】
また、制御装置4は、蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量に基づいて、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出してもよい。例えば、制御装置4は、受電コイルm1の位置を探索するため、所定時間毎に選択スイッチ2aを切り替えて、給電コイル1a1,1a2,1a3に順次電力を供給させる。充電制御部m4は、蓄電池m3の充電量をモニタリングし、その所定時間毎に蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量を算出し、その中で最も効率が高かったものの情報を、制御装置4に送信する。非接触給電の場合、受電コイルm1との位置ズレが小さいものほど給電効率が高くなるため、制御装置4は、その情報から受電コイルm1の位置を検出することができる。
【0025】
制御装置4は、受電コイルm1の上記位置検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1,1a2,1a3のうち、受電コイルm1に対応する位置に配設された給電コイル1a1を選択し、該選択した給電コイル1a1から非接触給電を行わせる。より詳細には、充電制御部m4からの無線通信によって移動車両Mに搭載された受電コイルm1の位置に関する情報を取得した場合、制御装置4は、受電コイルm1の位置情報と、予め記憶している給電コイル1a1等の配設情報とを対応付けて、受電コイルm1に最も近い位置に配設されているもの(給電コイル1a1)を選択する。また、蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量に基づいて受電コイルm1の位置に関する情報を取得した場合、制御装置4は、単純に給電効率が最も高かったもの(給電コイル1a1)を選択する。
【0026】
図2は、本発明の実施形態における移動車両給電システムAの設置例を示す模式図である。
図2は、本移動車両給電システムAの給電エリアXを、例えば道路の停車帯に設定した場合を示している。この給電エリアXは、移動車両Mを複数台停車可能な大きさ(例えば乗用車であれば3台分の大きさ)に設定されており、道路を走行するあらゆる車種の移動車両Mが停車可能となっている。例えば、図2に示すように、先頭の移動車両Mの受電コイルm1と、後続の移動車両Mの受電コイルm1の位置とは異なっている。
【0027】
給電エリアXには、給電コイル1a1,1a2,1a3の他に、給電コイル1b1,1b2,1b3、給電コイル1c1,1c2,1c3が配設されている。なお、当該給電コイルの設置数及び配置は、一例であり、道路の停車帯のような給電エリアXの場合、例えば、複数の給電コイルを所定間隔でマトリックス状(行列状)に配列してもよい。
また、この給電エリアXには、給電コイル1b1,1b2,1b3に対応する選択スイッチ2b及び給電変換器3bと、給電コイル1c1,1c2,1c3に対応する選択スイッチ2c及び給電変換器3cとがそれぞれ設けられており、それらは制御装置4と電気的に接続される構成となっている。
【0028】
制御装置4は、上述した位置検出手段によって、給電エリアX内において複数の受電コイルm1の位置を検出した場合に、当該位置検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1等のうち、検出して複数の受電コイルm1のそれぞれに対応する位置に配設された給電コイル(図2においては、給電コイル1a1、給電コイル1b3、給電コイル1c2)をそれぞれ選択し、該選択した給電コイルから非接触給電を行わせる。これにより、給電エリアX内に位置する複数台の移動車両Mに対して同時に非接触給電を行う。
【0029】
次に、このように構成された移動車両給電システムAの一連の動作について説明する。
本移動車両給電システムAでは、道路の停車帯に給電エリアXを設定している。したがって、給電エリアX内における移動車両Mの停車位置は、ドライバーの運転操作に依存するので、ばらつきを持つ。また、この給電エリアXには、道路を走行するあらゆる車種の移動車両Mが停車可能であるため、各移動車両Mにおける受電コイルm1の位置は、移動車両M毎にそれぞれ異なる場合がある。
【0030】
給電コイル1a1等から受電コイルm1に非接触伝送される交流電力は、受電コイルm1が給電コイル1a1等の直上に正対した状態、つまり受電コイルm1と給電コイル1a1等とが最も近接した状態において最大となる。しかしながら、上述した様な事情から、受電コイルm1と所定の給電コイル1a1等とが正対することは期待できない。そこで、本移動車両給電システムAでは、給電エリアX内において互いに異なる位置に給電コイル1a1等を複数配設している。
【0031】
制御装置4は、給電コイル1a1等をアンテナとして用い、移動車両Mの受電コイルm1を介して充電制御部m4と無線通信を試みることにより、給電エリアX内に移動車両Mが停車しているか否かを常時監視する。例えば、充電制御部m4との通信接続がない場合には、給電エリアX内に移動車両Mが停車していないと判断し、充電制御部m4との通信接続があった場合には、給電エリアX内に移動車両Mが停車していると判断する。
【0032】
給電エリアX内に移動車両Mが停車していると判断した場合、制御装置4は、その移動車両Mの受電コイルm1の位置を検出する。より詳細には、給電コイル1a1等と受電コイルm1とを介しての制御装置4と充電制御部m4との無線通信によって、移動車両Mに搭載された受電コイルm1の位置に関する情報を送受信し、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出する。または、所定時間毎に選択スイッチ2a等を切り替えて、給電コイル1a1,1a2,1a3等に順次電力を供給させ、実際に蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量に基づいて、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出する。
【0033】
あるいは、それら両手段を用いて、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出してもよい。例えば、図2に示す2番目の移動車両Mの場合には、先ず無線通信によって、移動車両Mに搭載された受電コイルm1の位置に関する情報を送受信して、受電コイルm1の大体の位置情報(車体右側に受電コイルm1がある等の情報)を交換する。次に、当該位置に対応する給電コイル1b1,1b2とで蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量を比較すれば、正確且つ短時間に受電コイルm1の位置を検出することができる。すなわち、給電コイル1b1,1b2,1b3等に順次電力を供給して探索すれば、受電コイルm1の位置は正確に検出できるが、時間がかかるため、ある程度のあたりを付けて探索範囲を絞ることで、探索時間を短縮することが可能となる。
【0034】
給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出したら、制御装置4は、当該検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1等のうち、受電コイルm1に対応する位置に配設された給電コイル1a1等を選択し、該選択した給電コイル1a1等から非接触給電を行わせる。制御装置4は、例えば、図2に示す先頭の移動車両Mの受電コイルm1が給電コイル1a1の上方近傍に位置することを検出した場合、当該給電コイル1a1を選択し、選択スイッチ2aを切り替えて、給電変換器3aから給電コイル1a1に電力供給させる。
【0035】
移動車両Mの受電コイルm1は、給電コイル1a1と電磁気的に結合する。この結果、各給電変換器3aから給電コイル1a1に供給された交流電力の一部が給電コイル1a1から移動車両Mの受電コイルm1に非接触伝送される。本移動車両給電システムAでは、磁界共鳴方式を採用するので、給電コイル1a1等から受電コイルm1に非接触伝送される交流電力の伝送効率は高い。
【0036】
制御装置4は、充電制御部m4と通信接続されている期間、給電コイル1a1を介した移動車両Mへの非接触給電を継続する。そして、制御装置4は、充電制御部m4との通信接続が途切れたときに、移動車両Mが給電エリアX外に移動したと判断し、給電コイル1a1への電力供給を停止させる。その後は、初期の待機状態に戻り、給電エリアX内に移動車両Mが停車しているか否かを監視する。
【0037】
このような本実施形態によれば、給電エリアXに設定された道路の停車帯に停止する移動車両Mに対して、当該移動車両Mの停車を利用して所定時間、電力を非接触給電することができる。したがって、本実施形態によれば、移動車両Mが走行する途中の場所での移動車両Mへの給電を実現することが可能であり、よって電力を動力源として移動する移動車両Mの普及促進や利便性の向上を実現することができる。
【0038】
したがって、上述の本実施形態によれば、給電エリアX内に位置する移動車両Mに対して非接触給電を行う移動車両給電システムAであって、移動車両Mに設けられた受電コイルm1と、給電エリアX内において互いに異なる位置に配設された複数の給電コイル1a1等と、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出する位置検出手段及び該位置検出手段の検出結果に基づいて、複数の給電コイル1a1等のうち、受電コイルm1に対応する位置に配設された給電コイル1a1等を選択し、該選択した給電コイル1a1等から非接触給電を行わせる制御手段を具備する制御装置4と、を有するという構成を採用することによって、複数の給電コイル1a1等のうち、非接触給電に関し最適な位置に配設されている給電コイル1a1等を選択して給電を行うことができる。
したがって、本実施形態では、移動車両Mが走行する途中で非接触給電を行う場合であっても、給電効率の低下を抑制できる移動車両給電システムAを得ることができる。
【0039】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0040】
(1)本実施形態では、図2に示すように、給電エリアX内に配置された給電コイル1a1等、1b1等、1c1等を所定間隔で埋設したが、本発明はこれに限定されない。例えば、先頭の移動車両Mや後続の移動車両Mの大きさ(車長)は当然に様々であり、よって移動車両Mの停車位置に符合する位置は当然に変わるので、後続の移動車両M用の給電コイル1a1等は、例えば車長が最も短い移動車両Mの車長間隔で埋設してもよい。また、その車長間隔毎に、選択スイッチ2a等及び給電変換器3a等を設け、その間隔毎に非接触給電可能としてもよい。なお、給電エリアXにおける給電コイル1a1等の個数は、給電エリアXが設定される場所、環境等に応じて適宜設定される。
【0041】
(2)本実施形態では、給電コイル1a1等を道路上に埋設すると共に受電コイルm1を移動車両Mの底部に設けることにより給電コイル1a1等と受電コイルm1とを上下方向に対向させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、受電コイルm1を移動車両Mの側部(乗降ドア)に設けると共に、給電コイル1a1等を道路の路肩に移動車両Mの側部(乗降ドア)と対峙するように中心軸線が水平かつ車線の軸線に直交する姿勢で設けてもよい。または、例えば、受電コイルm1を移動車両Mの天井に設けると共に、当該移動車両Mの天井と対峙するように給電コイル1a1等を道路の上方に設けてもよい。
【0042】
(3)本実施形態では、図1に示すように、給電変換器3aは、選択スイッチ2aを介して、給電コイル1a1,1a2,1a3のいずれかひとつに給電用交流電力を供給したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3に示すように、それぞれの給電コイル1a1、1a2、1a3に対し独立した給電変換器3a1、3a2、3a3を直結し、各給電変換器へ供給される50Hzあるいは60Hzの商用電力を選択スイッチ2aで切り替えるように構成しても良い。
【0043】
(4)本実施形態では、位置検出手段として、給電コイル1a1等及び受電コイルm1を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、これに代えて、個別の通信機能を移動車両給電システムA(地上設備)及び移動車両Mに設けてもよい。例えば周知の光ビーコンを個別の通信機能として用いること、電波を用いた無線通信機を個別の通信機能として用いることが考えられるが、個別の通信機能としては、移動車両給電システムA(地上設備)と移動車両Mとの間の通信、つまり比較的近距離な通信が可能であればよいので、専用に設計された通信システムを用いてもよい。また、例えば、GPSで移動車両Mの緯度・経度を測定する、あるいは、道路に歪ゲージを埋め込み加重を測定する、また、あるいは、3次元レーザーレーダーで距離を測定する等して、移動車両Mの停止位置及び停止状態(姿勢)を検出し、この検出結果から紐付けて受電コイルm1の位置を検出する構成であってもよい。
【0044】
(5)本実施形態では、給電コイル1a1等と受電コイルm1とを介しての制御装置4と充電制御部m4との無線通信、また、蓄電池m3に蓄電された単位時間当りの充電量に基づいて、給電エリアX内における受電コイルm1の位置を検出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、受電コイルm1は移動車両Mの決められた位置、たとえば前後方向には運転席の位置、左右方向には車体中央に取り付けることにしておき、給電エリアX全体を撮影できるような位置、たとえば斜め上方から見下ろすように3次元レーザーレーダーないしステレオカメラを設置し、撮影した画像から3次元の形状マッチングにより車両の位置を検出し、間接的に受電コイルm1の位置を求めることができる。
【0045】
(6)本実施形態では、給電エリアXを道路の停止帯に設定したが、本発明はこれに限定されない。給電エリアXを設定し得る場所は、道路の停止帯の他にも、例えば、道路(公道)上に設けられた交通信号機前のエリア、線路の遮断機前のエリア、ショッピングセンターの駐車場、店舗等におけるドライブスルー用地、ガソリンスタンドの停車用地、等々であってもよい。また、公道や私道等に限定されず、自宅駐車場等の私有地に設定してもよい。
【0046】
(7)本実施形態では、給電エリアX内に位置する移動車両M(停車車両)に無条件で給電したが、給電コイル1a1等及び受電コイルm1を信号伝送に流用して制御装置4と充電制御部m4との無線通信を可能とし、当該無線通信によって給電開始に先立って給電の要非を確認したり、あるいは給電に関する課金情報の送受信、等々を行ってもよい。この場合、給電コイル1a1等及び受電コイルm1は無線通信のためのアンテナとして機能し、制御装置4及び充電制御部m4は、このようなアンテナを用いた通信手段として機能する。また、給電コイル1a1等及び受電コイルm1を信号伝送に流用するのではなく、別途個別に設けた通信手段を用いて無線通信を行ってもよい。
【0047】
(8)本実施形態では、移動車両Mに給電された電力は蓄電池m3の充電に使われると説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、移動車両M内の照明装置や空調装置の駆動に使用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
A…移動車両給電システム、M…移動車両、m1…受電コイル(受電手段)、X…給電エリア、1a1,1a2,1a3,1b1,1b2,1b3,1c1,1c2,1c3…給電コイル(給電手段)、4…制御装置(位置検出手段,制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電エリア内に位置する移動車両に対して非接触給電を行う移動車両給電システムであって、
前記移動車両に設けられた受電手段と、
前記給電エリア内において互いに異なる位置に配設された複数の給電手段と、
前記給電エリア内における前記受電手段の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の給電手段のうち、前記受電手段に対応する位置に配設された給電手段を選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせる制御手段と、
を有することを特徴とする移動車両給電システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の給電手段のうち、前記受電手段に最も近い位置に配設された給電手段を選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせることを特徴とする請求項1に記載の移動車両給電システム。
【請求項3】
前記位置検出手段が、前記給電エリア内において複数の前記受電手段の位置を検出した場合、
前記制御手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記複数の給電手段のうち、複数の前記受電手段のそれぞれに対応する位置に配設された給電手段をそれぞれ選択し、該選択した給電手段から非接触給電を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の移動車両給電システム。
【請求項4】
前記給電手段は給電コイルを備えると共に前記受電手段は受電コイルを備え、
前記給電手段は、前記給電コイルを前記受電コイルに電磁気的に結合させることによって非接触給電を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の移動車両給電システム。
【請求項5】
前記位置検出手段として、前記給電コイルと前記受電コイルとを用いることを特徴とする請求項4に記載の移動車両給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−66291(P2013−66291A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203318(P2011−203318)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】