説明

稚魚用の完全飼料およびその製造方法

【課題】稚魚類用の完全飼料配合物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】飼料乾燥成分の10〜20重量%の範囲のリン脂質分、および飼料乾燥成分の40〜60重量%の範囲の総たんぱく質分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稚魚類(fish larvae)用の完全飼料配合物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
稚魚類、とりわけ海水魚類の生産は、現在のところ、ワムシ類(Rotifera)およびブラインシュリンプ類(Artemia)のような生餌を使用する給餌段階を必然的に要する。
孵化場における稚魚生産サイクルにおいて生餌を使用する期間は、海水魚の種類による。この期間は、一般に40〜50日内で変動し、ヨーロッパにおいて成長する魚種においてはおよそ60日程の長期に達し得る。
生餌に代わる代替飼料、いわゆる離乳(weaning)飼料の使用は、孵化後40日以降に連続的、漸次的且つ一般的に行われているだけである。
【0003】
孵化場内での稚魚給餌における生餌、とりわけブラインシュリンプ類の使用は、数多くの不都合を伴う。
稚魚給餌に適する生餌を生産するための副次的育成構造物を使用する必要性は、産業上および経済上両方における第1番目の代表的な不都合ある。
第2に、生餌の品質および生餌の供給機会は、不安定であり、年毎に非常に変動し得る。言うまでも無く、生餌の品質は、生餌を用いて給餌する稚魚の生存率および成長率に直接の結果を与える。
【0004】
従って、生餌に代わる代替飼料の使用は、即ち、代替飼料がより容易に保存および貯蔵でき、稚魚給餌供給物の品質が高度に再現可能であり、従って、量的および質的結果が稚魚育成時においてより一層安定であることから、多くの利点を提供することが見出されている。
生餌に代わる一部または全体的代替物として使用する飼料配合物を製造する幾つかの試みが、従来技術において開示されている。
【0005】
フランス特許第2,572,625号は、生餌を一部置換えるのに適する稚魚用の飼料配合物を開示している。この飼料配合物は、室温で液体の脂質と混合した乾燥卵黄粉末を含む。
他の飼料代替物は、CAHU等の1回目の論文(1998,
Aquaculture, vol. 169, pages 1-7)において開示されており、2種の魚類(バスおよびコイ)の生存および成長を確実にする能力という観点から、3種の飼料代替物を比較している。
その結果は、稚魚の生存率および成長率に関する限りの最良の特性を有する代替配合物は、等割合の粉末酵母(プロチベル(Protibel))と魚たんぱく加水分解物(それぞれ、配合物乾燥成分の40重量%)を含むたんぱく質分、配合物乾燥成分の5重量%の量の大豆レシチン、および魚油の2重量%の形の脂質分を含むことを教示している。
この論文の著者等は、上記の飼料代替物が試験した3種の代替物のうちで最良であったけれども、その栄養特性は、生餌の代替物として使用することを意図するには十分に満足できるものではないと述べている。
【0006】
CAHU等のもう1つの論文(1999, Aquaculture, vol. 171, pages
109-119)は、稚魚用の、それぞれH0、H19、H38およびH58と称する4種の飼料代替物を開示している。
その著者等は、魚粉(フィッシュミール)の形のみならず魚たんぱく質加水分解調製物の形のたんぱく質成分を、それぞれ、H19、H38およびH58代替物の乾燥成分の19%、38.5%および58%の量で供給すること示唆している。
【0007】
これらの飼料代替物は、口が開いた後の5日目(孵化日から数えて10日目)ほどの早期に、これら4種の配合物のいずれかを給餌したバス稚魚において専ら試験されている。
試験結果は、H19配合物が稚魚生存率の観点のみならず稚魚の成長および品質の観点(奇形発生率および稚魚成熟度)において最良の栄養特性を有することを示している。詳細には、H19代替配合物は、乾燥成分の重量%で表して、58%の魚粉、19%の魚可溶性たんぱく質濃縮物、5%の大豆レシチン、4%の魚油、8%のビタミン添加剤、および5%のミネラル添加剤を含む。
この論文は、この論文で試験した各種飼料代替配合物の唯一の変動パラメーターである魚たんぱく質可溶性濃縮物の最適含有量が19%であることを示している。著者等は、そのような正確な割合で魚たんぱく質加水分解物を含ませることにより、骨格奇形発生率を観察して評価した稚魚の品質を向上させ得ると結論付けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によれば、稚魚類とりわけ海水魚の給餌に適する配合物リン脂質分が、そのような配合物の栄養特性に関する限り、さらに詳細には、それら配合物の稚魚の高生存率を維持し、稚魚の高成長率を維持し、且つ特に低い骨格奇形発生率と高度の生理学的成熟度を有する優れた品質の稚魚集団を確保可能にする能力に関する限り、本質的な特徴であることを見出した。
本発明の目的は、飼料配合物乾燥成分の少なくとも8.5重量%以上のリン脂質分を含有することを特徴とする稚魚用の完全混合飼料配合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、従来技術の配合物におけるよりも高いリン脂質供給物が、ワムシ類およびブラインシュリンプ類のような生餌によって得られる生存率および成長率と同等またはそれ以上の生存率および成長率が得られる完全飼料を製造するのに本質的であることを示している。リン脂質は、稚魚胚が外生飼料を摂取できるようになるまでその生長のために消費する卵黄中に存在する。また、リン脂質は、生餌中にも存在する。リン脂質は、稚魚用の完全飼料中に十分な量で存在すべきであるが、そのような供給物は、成魚用の飼料には必要ではない。
【0010】
本発明に従う完全飼料のリン脂質含有量は、飼料乾燥成分の8.5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲にある。
本発明の1つの局面によれば、8.5%以上の飼料中の最終総リン脂質含有量は、植物系からの少なくとも6%のリン脂質を添加し、このリン脂質が他の成分によって供給され得るリン脂質に加わることによって担保される。
大豆レシチン、またはひまわりもしくはセイヨウアブラナのような他の油質植物由来のレシチンのような植物系由来のレシチンを使用できる。
【0011】
“レシチン”なる用語は、リン脂質が総資質分の50%以上である資質混合物を意味する。レシチン中に存在する最も普通のリン脂質群は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルイノシトールである。市販レシチンは、脱油脂形(約90%のリン脂質)または非脱油脂形(約50%のリン脂質)におけるような種々のリン脂質含有量を示し得る。即ち、6%のリン脂質の添加は、7%のレシチンを90%のリン脂質に加えることによっても、また12%のレシチンを50%のリン脂質に加えることによってもなし得る。
【0012】
植物レシチンは、n-3およびn-6の精(essential)脂肪酸系(リノレン酸:18:2n-6およびリノレン酸:18:3n-3)由来のC18脂肪酸を含有するが、アラキドン酸(20:4n-6)、イコサペンタン酸(EPA、20:5n-3)およびドコサヘキサン酸(DHA、22:6n-3)のようなC20およびC22の多不飽和脂肪酸を含まない。このことは、後者の脂肪酸が、添加するレシチンとは別個に、他の飼料成分によって供給され得るので、レシチンの使用を制限するものではない。この後者の脂肪酸は、魚油または魚粉のような魚類からの特定製品を使用して、トリグリセリドまたはリン脂質の形で供給し得る。本発明の完全飼料配合物は、魚粉由来でとりわけ(n-3)系の多不飽和長鎖脂肪酸を含有する中性脂質供給分を含む。(n-3)系脂肪酸は、本発明の飼料中で乾燥成分の2.5重量%存在する。脂肪酸におけるそのような潜在的な補足供給のため、レシチンの脂肪酸組成は臨界的ではなく、水素化レシチンのような変性レシチンも使用できる。
【0013】
本発明のもう1つの局面によれば、本発明飼料の総脂質含有量は、飼料乾燥成分の25重量%以上である。本発明飼料における十分量のリン脂質の存在は、その特異的重要性に加えて、飼料の他の脂質成分の消化、詳細には、中性脂質とりわけトリグリセリドの消化を改善する。飼料脂質含有量を増大させることによる利点の1つは、消化性のエネルギー分を増大させて稚魚のエネルギー要求量を満たすことである。
本発明によれば、本発明の1つの局面に従い17%の非脱油脂大豆レシチン(飼料乾燥成分の%)を含有し且つ12%の総リン脂質含有量(レシチン由来約9%および他の飼料成分由来3%に相当)を含む飼料配合物は、前述のH19代替物による従来技術において得られるよりもはるかに高い生存率と成長率を確保することが示された。
【0014】
さらにまた、本発明による飼料によって得られる生存率と成長率は、生餌によって、即ち最初の給餌日数間はワムシ類によってその後の給餌日数間はブラインシュリンプ類によって得られた生存率と成長率と同等以上であることも示された。
さらなる局面によれば、本発明の完全飼料配合物の非加水分解魚たんぱく質含有量は、飼料乾燥成分の50重量%以上である。
非加水分解たんぱく質供給物は、本発明の完全飼料配合物の1部である魚粉を、好ましくは飼料乾燥成分の45〜60重量%の範囲、より好ましくは約56重量%の量で含む。
【0015】
本発明のもう1つの局面によれば、本発明の完全飼料配合物は、さらに、加水分解たんぱく質分を、好ましくは魚可溶性たんぱく質濃縮物の形で、配合物乾燥成分の8〜25%の範囲、より好ましくは10〜22重量%の範囲、最も好ましくは約14重量%で含む。
【0016】
有利には、本発明による稚魚用の完全飼料の調製用配合物は、ビタミン添加剤をさらに含む。
ビタミン混合物は、ビタミン混合物のキログラム当りで表して、例えば下記のビタミン配合を有するように調製できる:
レチノールアセテート (1 g)
コレカルシフェロール (2.5 mg)
全-ラク-α-トコフェロールアセテート (10 g)
メナジオン (1 g)
チアミン (1 g)
リボフラビン (0.4 g)
D-カルシウムペントセネートピリドキシンHCl (0.3 g)
シアノコバラミン (1 g)
ニアチン (1 g)
コリンクロライド (200 g)
アスコルビン酸 (20 g)
葉酸 (0.1 g)
ビオチン (1 g)
メソ-イノシトール (30 g)
【0017】
本発明による稚魚用の完全飼料配合物は、ミネラル添加剤をさらに含む。
好ましくは、そのようなミネラル添加剤は、ミネラル混合物のキログラム当りで表して、下記の組成を有するミネラル混合物から調製する:
KCl
(90 g);Kl (40 mg);CaHPO4.2H2O
(500 g);NaCl (40 g);CuSO4.5H2O
(3 g);ZnSO4.7H2O (4 g);CoSO4.7H2O (20 mg);FeSO4.7H2O
(20 g);MnSO4.H2O (3 g);CaCO3 (215 g);MgSO4.7H2O
(124 g)およびNaF (1 g)。
【0018】
本発明による完全飼料配合物のビタミンおよびミネラル配合供給物は、そのような配合物の調製において使用する他の原料供給物に由来する最終ビタミンおよびミネラル含有量、例えば、たんぱく質、脂質およびリン脂質源からのビタミンおよびミネラル含有量によって、質的および量的に適応させ得る。
【0019】
有利には、本発明の完全飼料配合物は、少量のベタインのような食込み促進剤も含有し得る。
好ましくは、そのような食込み促進剤は、本発明の配合物中に、配合物乾燥成分の0.5〜3重量%程度、好ましくは約1重量%程度で使用できる。
さらに、本発明の稚魚用の完全飼料配合物の最終水分含有量は、最終配合物の14重量%以下であり、好ましくは7〜10重量%の範囲、最も好ましくは約8重量%である。
【0020】
最も好ましくは、本発明の完全飼料配合物は、乾燥成分の重量で表して、下記の配合を有する:

【0021】
本発明のもう1つの局面によれば、そのような配合物は、乾燥成分の重量で表して、下記の配合を有する:
総たんぱく質(N x 6.25): 56%
総リン脂質: 12%
総脂質: 26%
灰分: 14%
【0022】
本発明の稚魚用の完全飼料配合物は、限定された粒度を有する粒状物の形の稚魚給餌用の完全配合飼料を調製するのに有利に使用できる。
好ましくは、完全配合飼料粒子の粒度は、最大粒度が600μm以下であるような粒度である。粒度は、調整して、種々の成長度の稚魚用または種々の大きさを有する魚種の稚魚用に適するような完全配合飼料を調製することができる。
【0023】
従って、本発明の稚魚用完全配合飼料の第1の実施態様においては、その粒度は、400〜600μmの範囲である。
本発明の稚魚用完全配合飼料の第2の局面においては、その粒度は、200〜400μmの範囲である。
本発明の稚魚用完全配合飼料の第3の局面においては、その粒度は、120〜200μmの範囲である。
最後に、本発明の稚魚用完全配合飼料の第4の局面においては、その粒度は、120μm以下である。
【0024】
上述の稚魚用完全配合飼料は、栄養特性を有し、それによって、広汎に使用するのに、即ち、淡水魚および海水魚の両方を給餌するのに適する。
好ましくは、本発明の稚魚用完全配合飼料は、任意の種類の海水魚の給餌を意図する。事実、本発明の稚魚用完全配合飼料は、バス類、ギルトヘッド(gilthead)類(クロダイ類の食用魚)またはターボット(turbot)類(ヨーロッパ産のカレイ目の1種)のようなヨーロッパ魚の給餌だけでなく、レイト(late)類またはかわひめます(umbra)のような養殖外来魚の給餌にも適する。
【0025】
本発明の稚魚用完全配合飼料は、従来技術に開示された飼料代替物に比較し、今日まで決して達成されなかった稚魚の生存率と成長率の両方、のみならずとりわけ低い形態学的奇形発生率および例外的な成熟度を有する稚魚の生産を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、稚魚用の完全配合飼料の製造方法を提供することも目的とし、その方法は、下記の各工程を含むことを特徴とする:
a) 水と少なくとも3種の下記の割合の原料とを混合することによってペーストを得ること:
i) 最終混合物の50〜65重量%範囲の割合の魚粉;
ii) 最終混合物の8〜25重量%範囲の割合の魚可溶性たんぱく質濃縮物;
iii) 最終混合物の7〜25重量%範囲の割合の大豆レシチン;
b) 上記のようにして得られたフィラメント形のペーストを湿式により粒状化すること;
c) 上記のペーストフィラメントを、低温で、好ましくは−80℃よりも低い温度で深凍結させること;
d) 工程c)の深凍結ペーストのフィラメントを破砕および/または粉砕すること;
e) 上記破砕工程で得られた粒状物をふるい処理すること。
【0027】
押出フィラメントの粉砕または破砕工程は、予備の深凍結工程のために、とりわけ容易となる。事実、各原料と添加水との混合物から得られる初期ペーストは、重要な脂質濃度を有し、飼料粒子を製造するのに用いる粉砕装置とふるいの閉塞をもたらす。
対照的に、予備の深凍結工程は、初期配合物を、とりわけ粉砕およびその後のふるい工程に適する固形のもろい形状にすることを可能にする。
【0028】
本発明方法は、水を、工程a)の初期混合時に、混合物重量の10〜15%の量で添加することをさらに特徴とする。この特定の工程の機能は、各種原料成分粒子の結合を可能にして混合初期工程終了時に均質なペーストを得ることである。
本発明方法は、さらに有利には、粒状化工程b)の後の得られたペーストフィラメントの乾燥工程を含み、フィラメント配合物の水分を14%以下の値、好ましくは7〜10%の範囲の値、最も好ましくは約8%の値に調整する。
乾燥工程は、50℃の温度、20分で有利に実施できた。
乾燥工程は、深凍結工程前に実施する;乾燥工程は、好ましくは、湿式による粒状化工程b)に対してさらに実施する。
【0029】
また、本発明は、稚魚に、上述の完全飼料を用い、1日および稚魚2500匹当り1〜4gの範囲の量で給餌することを特徴とする稚魚の育成方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、限定することなしに、添付図面および実施例によって、さらに具体的に説明する。
【0031】
実施例1
本発明による魚用完全配合飼料の製造
第1の段階において、使用する各原料、とりわけ魚粉を混合する前にふるい掛けして、160μm未満の粒度を有する各々の原料粒子を得た。
各原料は、下記のとおりである:
・魚粉は、乾燥物の78重量%以上のたんぱく質含有量を有する商品名 NORSETM LT94としてNORSILDMEL社から市販されている魚粉である。
・魚可溶性たんぱく質濃縮物(魚たんぱく質加水分解物)は、SOPROPECHE社から市販されているCPSPTM special Gである。
・D10と称する大豆レシチンは、SAPA-DAFA社から市販されている。
・ベタインは、99%以上の純度を有する塩化水素物形を有し、Sigma社から参照番号B3501として市販されている。
・使用したビタミン混合物は、UPAE-INRA社から参照番号762として市販されている。
・使用したミネラル混合物は、UPAE-INRA社から参照番号763として市販されている。
【0032】
上述の各原料を、各成分の粒子結合を得るための水10%(初期混合物重量基準)を加えた後、機械アームで駆動させたスチールボール内で混合した。
次いで、各原料の均質混合物を紡糸金口に通して3mm径の長い円筒状フィラメント(“スパゲッティー”)を形成させた。
その後、得られた原料フィラメントを乾燥させて、水分を最終混合物の約8%にする。乾燥工程は、50℃の熱気流乾燥室内で20分間実施した。
次に、水分を調整した3mm径フィラメントを、液体窒素深凍結工程に約10秒間供した。
【0033】
さらに、得られた深凍結フィラメントを、グラインダー内での破砕工程に供し、公知の手段を用いて粒状物に成型した。好ましくは、この工程の間、低温を維持してグラインダーが閉塞するのを防止する。
次に、上記工程において得られた粒状物を液体窒素中で深凍結させ、ふるいに通した。複数の連続ふるいを用いて、それぞれ400〜600μ、200〜400μm、120〜200μmの範囲および最後は120μm以下の粒度を有する各種画分に粒子を分別した。
【0034】
このようにして得られた各粒子は、乾燥物の8%の水分を含んでいた。得られた完全飼料配合物の正確な配合は、下記のとおりである:

得られた粒子の配合は、飼料乾燥成分で表して、下記のとおりである:
*総たんぱく質(N x 6.25): 56%
*総リン脂質: 12%
*総脂質: 26%
*灰分: 14%
【0035】
実施例2
9〜40日の日齢のバス稚魚における、本発明の完全配合飼料で給餌した稚魚の生存率および成長率、並びに従来技術の代表的飼料代替物との比較
バス稚魚(Dicentrarchus labrax)を、35リットルのプール内に稚魚60匹/リットルの量で分布させた。稚魚に、ワムシ (Brachionus plicatilis)を用いて口開き後の3日間給餌した。
その後、稚魚を4ロット2群に分割し、稚魚の生存と成長を孵化後9日目から40日目まで(即ち、口開き後の4日目から35日まで)観察した。
【0036】
4ロットの第1群は、ブラインシュリンプ(Artemia nauplii)で専ら給餌した。4ロット第2群は、実施例1による本発明の完全配合飼料を用いて専ら給餌した。
残りの育成条件を、各プールにおいて標準化し、水温20℃、塩度35 ppmに維持した。各プールは、絶えず照明した。
稚魚の給餌は、プール上に取付けた走行ベルトタイプの自動分配器を用いて行い、飼料を稚魚に絶えず供給した(24/24)。
【0037】
本発明の完全配合飼料の日量は、給餌サイクルの初期は稚魚2500匹当り1g/日であり、給餌サイクル末(孵化後40日)に稚魚2500匹当り4 g/日まで次第に増大させた。
上記の給餌量は、稚魚に対して飼料粒子または生餌の絶え間ない食込みを与える過剰の分布に相当する。
上記の選択された飼料分布方法によれば、本発明の完全配合飼料は、カラム内にゆっくり沈降し、稚魚がこのゆっくりした沈降段階で飼料粒子を捕食するのを可能にする。
プール底に堆積する過剰の飼料と排泄物は、毎日、再度懸濁させることなく除去した。
【0038】
32日間(孵化後40日間)給餌した後、平均±標準偏差として表した結果は、下記のとおりである:

従来技術を代表するH19飼料代替物(CAHU等、1999年)を用いて同じ育生条件下で得られた結果も、比較のために提示する。
【0039】
上記の生存率は、孵化後2日に生存していた初期稚魚数のパーセントで表した実験終了時(孵化後40日目)の稚魚数に相当する(図2)。
個々の平均体重は、同じ試験ロットの各プールにおいて4ロットの各10匹の稚魚から算出した。
稚魚の成長は、孵化後9日目から40日目まで観察し、試験結果は、図1に示している。
図1の結果は、稚魚成長に対する本発明の完全配合飼料の効果が、Artemia naupliiの特性に全く匹敵するか、或いは同等でさえあることを示している。
【0040】
孵化後40日において、本発明の完全配合飼料で給餌した稚魚は、体重(32mg)を有し、ブラインシュリンプで給餌した稚魚の体重(35mg)と有意差はない。
一方、従来技術のH19飼料代替物を用いて給餌した稚魚は、この代替物で給餌した40日目の稚魚体重が約5mg、即ち、本発明の完全配合飼料を用いて得られた稚魚体重よりも6倍も低い体重であるので、極めて低い成長率を示している。
孵化後60日で、ブラインシュリンプを全く受けなかった稚魚は、平均で300mgに達し、とりわけ骨格レベルにおいて調和した発育を示していた。
【0041】
上記表の結果は、ブラインシュリンプまたはH19飼料代替物で給餌した稚魚よりも本発明の完全配合飼料を受けた稚魚における有意に高い生存率を示している。
これらの結果は、本発明の完全配合飼料がバス稚魚の育成段階においてブラインシュリンプと有利に置換わること、およびこの飼料代替物は生餌系の稚魚給餌を用いて得られた生存率よりも有意に高い生存率を与えさえすることを明らかに示している。
【0042】
実施例3
5〜10日齢の稚魚における本発明の完全配合飼料で給餌したバス稚魚の生存率および成長率
バス稚魚の一般育成条件は、実施例2において示した条件であった。口開き後、即ち、孵化後5日に、稚魚を2群に分け、第1群の4ロットをワムシで専ら給餌し、一方、第2群4ロットを本発明の完全配合飼料で給餌した。飼料粒子は、120μm以下の粒度を有していた。
【0043】
給餌5日後、平均体重は、本発明の完全配合飼料で給餌した稚魚においては0.85±0.07 mgであったのに対し、ワムシで給餌した稚魚においては0.76±0.10 mgに達したのみであった。生存率は、両群において同等であった(92%)。
本実施例は、本発明の完全配合飼料がワムシ類と有利に置換わり、稚魚の全育成段階において単独飼料として使用できることを示している。
本発明の飼料は、ターボットまたはギルトヘッドのような長期のワムシ類を使用して稚魚を育成する魚種においても興味がある。
【0044】
実施例4
本発明の完全配合飼料またはH19飼料代替物で給餌したバス稚魚の品質および成熟度の比較試験
生理学的パラメーターを、実施例2で述べた試験からの稚魚において測定した。
発育40日目において、本発明の完全配合飼料で給餌した稚魚の僅かに3.8±1.5%が骨格奇形を示した。この割合は、CAHU等の1999年の論文においてH19と称する飼料代替物で給餌した稚魚においては6±1.2%であった。
消化機能の成熟度は、2つのパラメーター、即ち、膵臓酵素の分泌、および腸細胞羽毛形成端における成魚タイプの典型的な消化酵素、アルカリホスファターゼの発現を用いて評価した。
【0045】
本発明の飼料で給餌した稚魚は、H19と称する飼料代替物のトリプシン分泌率43±4.9%よりも高い55±5.5%のトリプシン分泌率を示した。
アルカリホスファターゼ活性は、H19飼料代替物で給餌した稚魚においては、308±10.7 mU/mgたんぱく質に達した。
本発明の飼料の使用は、良好な形態学および生理学的品質を有する稚魚を生産するのに有利である。さらに詳細には、稚魚期間中の消化機能の成熟は、良好なその後の魚対発育にとって不可欠である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】生餌または各飼料代替物で給餌したバス稚魚の成長を示すグラフである:縦軸は、湿潤物体のmgで表した稚魚体重を示し;横軸は、孵化後の日数で表した稚魚の日齢を示す。 成長は、専ら生餌(ブラインシュリンプ)、本発明の完全飼料配合物または従来技術のH19配合物(CAHU等、1999年)で9日目から40日目まで給餌した稚魚において、孵化後9日目から40日目までを観察した。各々のドットは、10匹の稚魚4ロットの平均±標準偏差の結果を示す。
【図2】孵化後40日目の稚魚の生存率を示すグラフである:縦軸は、孵化後2日目の生存稚魚数に対する40日目の生存稚魚数の比によって計算した、生存稚魚のパーセントで表した稚魚生存率を示す。 生存率は、専ら生餌(ブラインシュリンプ)、従来技術のH19配合物および本発明の完全飼料配合物で給餌した稚魚について算定した。各々のドットは、4ロットの平均±標準偏差の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料乾燥成分の10〜20重量%の範囲のリン脂質分、および飼料乾燥成分の40〜60重量%の範囲の総たんぱく質分を含有することを特徴とする稚魚用の完全飼料配合物。
【請求項2】
飼料乾燥成分の少なくとも6%の植物系由来のリン脂質分を含有することを特徴とする請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
飼料乾燥成分の25重量%以上の総脂質分を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
飼料乾燥成分の50重量%である総たんぱく質分を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の配合物。
【請求項5】
飼料乾燥成分の8〜25重量%の範囲の加水分解たんぱく質を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の配合物。
【請求項6】
ビタミン添加剤混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の配合物。
【請求項7】
ミネラル添加剤混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の配合物。
【請求項8】
ベタインのような食込み促進剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の配合物。
【請求項9】
最終配合物の14重量%以下の水分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の配合物。
【請求項10】
下記の配合を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の配合物:

【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の配合物を含む粒状物から製造した稚魚用の完全配合飼料。
【請求項12】
粒状物の粒度が600μm以下であることを特徴とする請求項11記載の飼料。
【請求項13】
a) 水と少なくとも3種の下記の割合の原料とを混合することによってペーストを得ること:
i) 最終混合物の50〜65重量%範囲の割合の魚粉;
ii) 最終混合物の8〜25重量%範囲の割合の魚可溶性たんぱく質濃縮物;
iii) 最終混合物の7〜25重量%範囲の割合の大豆レシチン;
b) 上記のようにして得られたフィラメント形のペーストを湿式により粒状化すること;
c) 上記のペーストフィラメントを、低温で深凍結させること;
d) 工程c)からの上記深凍結ペーストフィラメントを破砕および/または粉砕すること;
e) 上記破砕工程で得られた粒状物をふるい処理すること;
の各工程を含むことを特徴とする請求項11〜12のいずれか1項記載の完全飼料の製造方法。
【請求項14】
水を、混合工程a)において、混合物の10〜15重量%の範囲の量で加えることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
粒状化工程b)の後、上記フィラメントの水分を14%以下の値に調整するための乾燥工程を行うことを特徴とする請求項13および14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
稚魚に、請求項11および12のいずれか1項記載の完全飼料を用い、稚魚2500匹当り1日1〜4gの範囲の量で給餌することを特徴とする稚魚の育成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−24588(P2011−24588A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203877(P2010−203877)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2000−613276(P2000−613276)の分割
【原出願日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(506299250)
【出願人】(501409522)
【Fターム(参考)】