説明

種子の殺菌方法及びその殺菌装置

【課題】多数粒の種子を同時に殺菌処理でき且つ殺菌装置の小型化を図ることができる種子の殺菌方法を提供する。
【解決手段】光触媒が担持された円筒状基材10の傾斜した内周面に、前記光触媒の活性化波長光を円筒状基材10の内側に設けたランプ18から照射しつつ、傾斜した前記内周面上に沿って殺菌対象の種子14を滑り或いは転がり落とし、前記光触媒による光酸化反応によって種子14の表面に付着している菌を殺菌することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子表面に付着している菌を殺菌する種子の殺菌方法及び種子の殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の種子には、種々の菌が付着している。かかる菌には、その種子から発芽した植物の病原菌も含まれていることがある。このため、種子の殺菌は従来から実施されており、例えばいもち病防止のため、播種前に種籾を硫酸銅溶液に浸漬処理することが行われている。しかし、種子を薬液に浸漬処理することは、環境面及び安全面から問題がある。このため、紫外線を種子に照射して殺菌する種子の殺菌方法が下記特許文献1に記載されている。
【0003】
かかる種子の殺菌方法は、殺菌すべき種子を一粒ずつ分散させて連続的に落下せしめ、その落下途中でフラッシュランプを瞬間的に発光させて、太陽光よりも紫外線の波長領域を多く含み且つこの種子の表面に対し有効な殺菌力を発揮し得る光強度とした光パルスを照射するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-50706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1に記載された種子の殺菌方法によれば、種子を薬液に浸漬処理することなく殺菌可能である。しかしながら、種子を一粒ずつ分散させて連続的に落下することは、種子が小粒になるほど困難であり、殺菌処理できる種子のサイズが限定される。また、落下する種子全体に万遍なく紫外線を照射するには、種子の落下距離を長くしなければならず、種子の殺菌装置が大型化する。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、多数粒の種子を同時に殺菌処理でき且つ殺菌装置の小型化を図ることができる種子の殺菌方法及びその殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された種子の殺菌方法は、光触媒の担持面に前記光触媒の活性化波長光を照射しつつ、前記担持面上に沿って殺菌対象の種子を滑り或いは転がらせて、前記光触媒による光酸化反応によって前記種子の表面に付着している菌を殺菌することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された種子の殺菌方法は、請求項1に記載されているものであって、前記担持面が傾斜面であり、前記傾斜面上に沿って前記種子を滑り或いは転がり落とすことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された種子の殺菌方法は、請求項2に記載されているものであって、前記傾斜面が、傾斜して設けられた円筒状基材の内周面であり、前記円筒状基材の内側に前記活性化波長光を発光するランプが配設されていることを特徴する。
【0010】
請求項4に記載された種子の殺菌方法は、請求項1に記載されているものであって、前記担持面が水平面であって、前記水平面上に沿って前記種子を滑り或いは転がるように前記水平面を駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された種子の殺菌方法は、請求項1に記載されているものであって、前記光触媒が、酸化チタン(TiO)であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された種子の殺菌方法は、請求項1に記載されているものであって、前記種子が、表面に光触媒を付着した種子であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された種子の殺菌装置は、光触媒が担持された基材面と、前記光触媒の活性化波長光を発光し、前記基材面を照射するランプと、前記基材面に供給された殺菌対象の種子が、前記基材面上に沿って滑り或いは転がるように、前記基材を駆動する駆動手段とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された種子の殺菌装置は、請求項7に記載されているものであって、前記基材面が傾斜面であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載された種子の殺菌装置は、請求項8に記載されているものであって、前記傾斜面が、傾斜して設けられた円筒状基材の内周面であり、前記ランプが前記円筒状基材の内側に配設されていることを特徴する。
【0016】
請求項10に記載された種子の殺菌装置は、請求項7に記載されているものであって、前記基材面が水平面であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載された種子の殺菌装置は、請求項7に記載されているものであって、前記光触媒が、酸化チタン(TiO)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、担持面に担持された光触媒は、その活性化波長の照射によって活性化されている。かかる担持面上に沿って、表面に菌が付着した種子が滑り或いは転がる際に、活性化された光触媒による光酸化反応によって種子の表面に付着した菌が殺菌される。更に、種子が光触媒の担持面を滑り或いは転がる間に、種子の異なる箇所が担持面と接触し、種子の表面が万遍なく殺菌される。また、多数粒の種子を担持面上に同時に供給でき、種子の殺菌装置の小型化を図ることができる。更に、光触媒の担持面を傾斜面とした場合には、傾斜面上に沿って種子の滑り或いは転がり落ちる速度を傾斜面の傾斜角を調整することによって簡単に調整でき、サイズの異なる種々の種子の殺菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る種子の殺菌装置の一例を説明する概略図である。
【図2】図1に示す円筒状基材10の断面図である。
【図3】本発明に係る種子の殺菌装置の他の例を説明する概略図である。
【図4】図3に示すU字状基材22の断面図である。
【図5】本発明に係る種子の殺菌装置の他の例を説明する概略図である。
【図6】図5に示す凹部26の底面上での種子の動きを説明する説明図である。
【図7】本発明に係る種子の殺菌装置の他の例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る種子の殺菌装置の一例の概略図を図1に示す。図1に示す種子の殺菌装置は、クリーンルーム内に設けられており、傾斜して回転可能に設けられた円筒状基材10と、円筒状基材10の上端部近傍に設けられ、種子14を円筒状基材10の傾斜面である内周面の上端縁近傍に供給する供給手段としてのホッパー12と、円筒状基材10の内周面の下端部下方に設けられ、円筒状基材10の内周面上に沿って落下して殺菌処理が施された種子14を収容する収容手段としての収容容器15と、円筒状基材10を回転駆動する駆動装置としての回転装置16を備える。この円筒状基材10は、その横断面図である図2に示すように、内周面には光触媒が担持された光触媒担持層10aが形成されている。この光触媒としては、従来から知られている光触媒を使用でき、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウムリン、ガリウム砒素等を挙げることができる。特に、酸化チタン(TiO)を光触媒として好適に用いることができる。更に、円筒状基材10の中空部20の中心部には、光触媒の活性化波長光を発光し、内周面を照射するランプ18が設けられている。かかるランプ18としては、光触媒担持層10aの光触媒を活性化する波長光を発光するものであればよく、光触媒として酸化チタン(TiO)を用いたときは、波長400nmよりも短波長の紫外線を発光する紫外線ランプを採用できる。
【0022】
図1及び図2に示す円筒状基材10としては、多孔質アルミナセラミック等の多孔質セラミック製を好適に用いることができる。かかる円筒状基材10の内周面を形成する多孔質セラミック面には、その多数の微細凹部内に微細な光触媒が充填されて形成された光触媒担持層10aが強固に密着されている。かかる光触媒担持層10aを形成するには、多孔質セラミック製の円筒状基材10の中空部20を真空状態とし、円筒状基材10を微振動させつつ光触媒スラリーを中心部20内に供給する。多孔質セラミック面の多数の微細凹部に光触媒スラリーが入り込む際に発生する泡は、円筒状基材10に付与した微振動と真空状態の雰囲気とによって除去できる。このため、多孔質セラミック面に形成した光触媒担持層10aが泡の残留に起因して発生する剥離を防止できる。更に、円筒状基材10の中心部20内に光触媒スラリーを充填した後、円筒状基材10の微振動及び光触媒スラリーの供給を停止して所定時間保持し、その後、中心部20に充填した光触媒スラリーを抜き出し、自然乾燥する。
【0023】
図1及び図2に示す殺菌装置を用いて種子14を殺菌処理する際には、円筒状基材10の内周面の上端縁近傍に、ホッパー12から種子14を供給する。この円筒状基材10の内周面は、光触媒担持層10aの表面であって、光触媒の担持面でもあるため、ランプ18から照射される活性化波長光によって光触媒が活性化されている。また、円筒状基材10は、傾斜して取り付けられ、回転装置16によって回転しており、供給された種子14は円筒状基材10の内周面上に分散されて落下する。このため、ホッパー12から多数粒の種子14を円筒状基材10の内周面の上端縁近傍に同時に供給できる。円筒状基材10の内周面の上端縁近傍に供給された種子14は、光触媒が活性化された内周面上を落下し、光触媒による光酸化反応によって種子14の表面に付着した菌が殺菌される。更に、種子14が内周面上を落下する際に、滑り或いは転がって種子14の異なる面が内周面と接触又は近接し、種子14の表面が万遍なく殺菌される。殺菌済みの種子14は、図1に示すように、円筒状基材10の内周面の下端縁から、内面が殺菌処理されている収容容器15に収容される。殺菌済みの種子14は、内面が殺菌処理された袋内に密閉して保存できる。
【0024】
図1に示す殺菌装置では、種子の殺菌の程度に応じて、円筒状基材10の傾斜角及び回転速度の少なくとも一方を調整し、円筒状基材10の内周面の上端縁に供給した種子14の円筒状基材10内での滞留時間を調整する。すなわち、種子の殺菌が除菌程度であれば、種子14の円筒状基材10内での滞留時間を比較的短時間とすることができる。一方、種子の殺菌が滅菌程度の高度殺菌であれば、種子14の円筒状基材10内での滞留時間を比較的長時間とする。本発明者等の検討によれば、光触媒として酸化チタン(TiO)を用い、ランプ18として1mW以上の紫外線ランプを採用した場合、種子14の円筒状基材10の内周面上の滞留時間を30分以上とすることが好ましい。
【0025】
ここで、アルミナセラミック製の円筒状基材10の内周面に、光触媒としての酸化チタン(TiO)を採用した光触媒担持層10aを形成した。この円筒状基材10を傾斜して設け回転装置16によって図1に示す方向に回転した。かかる円筒状基材10の中空部20の中心には、ランプ18として定格ランプ電力40Wの紫外線ランプを設け、波長352nmの紫外線を内周面に照射した。また、種子14として種籾を用い、その円筒状基材10の傾斜角及び回転速度を、円筒状基材10の内周面の上端縁にホッパー12から供給した種籾の滞留時間が20分となるように調整した。円筒状基材10の内周面の下端縁から排出された殺菌済みの種籾について、その表面を擦り付けた寒天培地を所定時間培養したところ、寒天培地の表面にコロニーの発生は確認できなかった。一方、円筒状基材10に供給前の種籾の表面を擦り付けて同一時間培養した寒天培地からは、多数の大きなコロニーが出現した。
【0026】
図1及び図2に示す殺菌装置は、円筒状基材10を用いているが、図3及び図4に示す殺菌装置のように、U字状基材22を用いることができる。図3及び図4では、図1及び図2に示す殺菌装置と同一部材については同一番号を付して詳細な説明を省略する。図3及び図4に示す殺菌装置では、U字状基材22が傾斜して取り付けられ、駆動装置としての振動装置24によって左右方向に振動される。かかるU字状基材22の内周面の上方には、光触媒の活性化波長光を発光し、内周面を照射するランプ18が設けられており、U字状基材22の内周面に万遍なく光触媒の活性化波長光を照射している。このU字状基材22の内周面には、図4に示すように、光触媒が担持された光触媒担持層22aが形成されている。
【0027】
図3及び図4に示すU字状基材22も、多孔質アルミナセラミック等の多孔質セラミック製を好適に用いることができる。かかるU字状基材22の内周面には、多数の微細凹部内に微細な光触媒が充填されて形成された光触媒担持層22aが強固に密着されている。かかるU字状基材22は、図1及び図2に示す円筒状基材10を切断することによって得ることができる。
【0028】
図3及び図4に示す殺菌装置を用いて種子14を殺菌処理する際には、U字状基材22の内周面の上端縁近傍に、ホッパー12から種子14を供給する。このU字状基材22の内周面には、ランプ18から活性化波長光が照射されている。かかるU字状基材22の内周面は、光触媒担持層22aの表面であって、光触媒の担持面でもあるため、ランプ18から照射される活性化波長光によって光触媒が活性化されている。また、U字状基材22は遥動装置24によって左右方向に遥動されており、供給された種子14はU字状基材22の内周面に分散されつつ、内周面上に沿って落下する。このため、ホッパー12から多数粒の種子14をU字状基材22の内周面の上端縁近傍に同時に供給できる。U字状基材22の内周面の上端縁近傍に供給された種子14は、活性化された光触媒による光酸化反応によって種子14の表面に付着した菌が殺菌される。更に、種子14がU字状基材22の内周面に沿って落下する際に、滑り或いは転がって種子14の異なる面が内周面に接触又は近接し、種子14の表面が万遍なく殺菌される。殺菌済みの種子14は、図3に示すように、U字状基材22の内周面の下端縁から、内面が殺菌処理されている収容容器15に収容される。殺菌済みの種子14は、内面が殺菌処理された袋内に密閉して保存できる。
【0029】
図4に示す殺菌装置では、U字状基材22の内周面の上端縁に供給した種子14がU字状基材22内で十分に殺菌される滞留時間となるように、U字状基材22の傾斜角、遥動数及び遥動幅の少なくとも一つを調整する。尚、図1〜図4に示す殺菌装置を用いて種子に滅菌程度の高度殺菌を施すことを要する場合には、収容容器15に収容された殺菌済みの種子をホッパー12に再供給して、再度、円筒状基材10又はU字状基材22に供給して種子に再殺菌を施してもよい。
【0030】
図1〜図4に示す殺菌装置は、種子に連続的に殺菌を施す連続式殺菌装置であるが、回分式殺菌装置を図5〜図7に示す。図5に示す殺菌装置は、板状基材25内に底面が平坦な凹部26が形成されており、凹部26の内周面には、光触媒が担持された光触媒担持層25aが形成されている。かかる板状基材25は、凹部26の底面が傾斜面となるように傾斜して取り付けられており、駆動装置としての回転装置28によって回転駆動されている。この凹部26の上方には、光触媒の活性化波長光を発光するランプ18が設けられており、凹部26の底面に万遍なく光触媒の活性化波長光を照射している。
【0031】
図5に示す板状基材25も、多孔質アルミナセラミック等の多孔質セラミック製を好適に用いることができる。かかる板状基材25の凹部26の内周面には、多数の微細凹部内に微細な光触媒が充填されて形成された光触媒担持層25aが強固に密着されている。かかる光触媒担持層25aを形成するには、多孔質セラミック製の板状基材25の凹部26を真空状態とし、板状基材250を微振動させつつ光触媒スラリーを凹部26内に供給する。多孔質セラミック面の多数の微細凹部に光触媒スラリーが入り込む際に発生する泡は、板状基材25に付与した微振動と真空状態の雰囲気とによって除去できる。このため、多孔質セラミック面に形成した光触媒担持層25aが泡の残留に起因して発生する剥離を防止できる。更に、板状基材25の凹部26内に光触媒スラリーを充填した後、板状基材26の微振動及び光触媒スラリーの供給を停止して所定時間保持し、その後、凹部26に充填した光触媒スラリーを抜き出し、自然乾燥する。
【0032】
図5に示す殺菌装置を用いて種子14を殺菌処理する際には、傾斜して取り付けられた板状部材24の凹部26内に所定量の種子を供給する。この凹部26の底面には、ランプ18から活性化波長光が照射されている。かかる凹部26の内周面は、光触媒担持層25aの表面であって、光触媒の担持面でもあるため、ランプ18から照射される活性化波長光によって光触媒が活性化されている。また、傾斜して取り付けられた板状部材24は回転装置28によって所定方向(図5の矢印方向)に回転されている。このため、供給された種子14のうち、傾斜している底面下方の種子14は、図6に示すように、板状部材24の回転に伴って底面との摩擦力によって底面上方に移動し、所定高さに到達した後、底面に沿って分散されつつ落下する。かかる種子14の上方への移動及び落下の際に、種子14は底面上に沿って滑り或いは転がって、種子14の異なる面が底面に接触又は近接し、活性化された光触媒による光酸化反応によって種子14の表面に付着した菌が万遍なく殺菌される。このような種子の殺菌処理は、板状部材24の凹部26内に供給した種子の全量の殺菌が終了したとき、回転装置28の回転を停止して終了する。殺菌処理時間は、殺菌対象の種子に要求される殺菌程度で異なり、予め実験的に求めておこくことが好ましい。
【0033】
図5及び図6に示す殺菌装置では、板状基材25の傾斜角を大きくすると、種子14が凹部26の底面を落下する際の種子14の分散を良好とすることができ、種子14の殺菌処理速度を向上できる。但し、板状基材25の傾斜角が大きいほど、一回に処理できる種子量が少なくなる傾向にある。
【0034】
図7に示す殺菌装置は、板状基材25を水平に取り付けて凹部26の底面を水平面としたものである。図7では、図5及び図6に示す殺菌装置と同一部材については同一番号を付して詳細な説明を省略する。図7の板状基材25の凹部26内に供給された種子14は、板状基材25の回転装置28による回転によって凹部26の底面上に分散されつつ、滑り或いは転がって種子14の異なる面が底面に接触又は近接し、活性化された光触媒による光酸化反応によって種子14の表面に付着した菌が万遍なく殺菌される。但し、図7に示す殺菌装置では、凹部26内に供給された種子によって凹部26の底面の全面が覆われると、ランプ18からの活性化波長光が凹部26の底面に照射されず、底面の光触媒が活性化されなくなるため、凹部26に供給できる種子量にも制限がある。尚、図5〜図7に示す殺菌装置では、板状部材25を所定方向に回転しているが、板状部材25を正逆反転してもよい。
【0035】
これまで説明してきた種子の殺菌方法では、種子14に何等の処理を施すことなく殺菌装置に供給してきたが、殺菌装置に供給する種子14として、表面に光触媒をコーティングしたものを用いてもよい。表面に光触媒をコーティングした種子14を殺菌装置に供給することによって、種子に付着している基材の担持面の光触媒との相俟っての光酸化反応によって、種子14の表面の殺菌を更に効率的に施すことができる。種子に光触媒をコーティングする方法を、光触媒としての酸化チタンを例に上げて説明すると、クリーンルーム内で容器に収容された酸化チタンスラリー(濃度5〜10%)に種子を投入し、容器を遥動させて種子の表面に酸化チタンを充分に付着させる。次いで、フィルターを用いて種子と酸化チタンスラリーとを分離し、分離した種子を互いに付着しないように熱風乾燥させることによって、酸化チタンによって表面がコーティングされた種子を得ることができる。
【0036】
また、図1〜図7に示す種子の殺菌装置では、多孔質セラミック製の基材を用いているが、プラスチック製や金属製の基材を用い、基材の表面に光触媒が分散された塗装剤を塗布して光触媒担持層を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、殺菌薬剤を用いることなく多数粒の種子を同時に殺菌処理でき且つ殺菌装置の小型化を図ることができるため、種子の殺菌作業を環境面及び安全面から改善できる。
【符号の説明】
【0038】
10は円筒状基材、10a,22a,25aは光触媒担持層、12はホッパー、14は種子、15は収容容器、16,28は回転装置、18はランプ、20は中空部、22はU字状基材、24は遥動装置,25は板状部材、26は凹部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒の担持面に前記光触媒の活性化波長光を照射しつつ、前記担持面上に沿って殺菌対象の種子を滑り或いは転がらせて、前記光触媒による光酸化反応によって前記種子の表面に付着している菌を殺菌することを特徴とする種子の殺菌方法。
【請求項2】
前記担持面が傾斜面であって、前記傾斜面上に沿って前記種子を滑り或いは転がり落とすことを特徴とする請求項1に記載の種子の殺菌方法。
【請求項3】
前記傾斜面が、傾斜して設けられた円筒状基材の内周面であり、前記円筒状基材の内側に前記活性化波長光を発光するランプが配設されていることを特徴する請求項2に記載の種子の殺菌方法。
【請求項4】
前記担持面が水平面であって、前記水平面上に沿って前記種子を滑り或いは転がるように前記水平面を駆動することを特徴とする請求項1に記載の種子の殺菌方法。
【請求項5】
前記光触媒が、酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項1に記載の種子の殺菌方法。
【請求項6】
前記種子が、表面に光触媒を付着した種子であることを特徴とする請求項1に記載の種子の殺菌方法。
【請求項7】
光触媒が担持された基材面と、前記光触媒の活性化波長光を発光し、前記基材面を照射するランプと、前記基材面に供給された殺菌対象の種子が、前記基材面上に沿って滑り或いは転がるように、前記基材を駆動する駆動手段とが設けられていることを特徴とする種子の殺菌装置。
【請求項8】
前記基材面が傾斜面であることを特徴とする請求項7に記載の種子の殺菌装置。
【請求項9】
前記傾斜面が、傾斜して設けられた円筒状基材の内周面であり、前記ランプが前記円筒状基材の内側に配設されていることを特徴する請求項8に記載の種子の殺菌装置。
【請求項10】
前記基材面が水平面であることを特徴とする請求項7に記載の種子の殺菌装置。
【請求項11】
前記光触媒が、酸化チタン(TiO)であることを特徴とする請求項7に記載の種子の殺菌装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175921(P2012−175921A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40327(P2011−40327)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(592219961)リオン熱学株式会社 (1)
【出願人】(311007143)
【Fターム(参考)】