説明

積層シート及び積層シートの製造方法

【課題】ガラス繊維織物からのウレタン樹脂の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することのできる積層シート及び積層シートの製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔2の両面にウレタン樹脂3を積層させると共に、それぞれのウレタン樹脂3の外面に、単位重量150〜500g/mであり通気度20cm/cm/sec以下のガラス繊維織物4を積層させることによって積層シート1を形成する。ガラス繊維織物4の目抜きの度合い(通気度)を低くすることによって、ガラス繊維織物4からウレタン樹脂3を染み出させることなく、ガラス繊維織物4、ウレタン樹脂3及び金属箔2同士を加圧ローラなどで加圧する際の圧力を上げ、各々の部材同士の接着力を向上させることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超低温タンクの断熱補強材として用いられる積層シート及び積層シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層シートとして、金属箔シートにシランカップリング剤による前処理を施し、当該金属箔シートの両面にポリウレタン樹脂製の接着剤シートを介在させて、ガラス繊維織物からなる補強材シートで挟み込み、加圧ローラで加圧した後、熱処理することによって形成されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開昭60−176757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上記積層シートにあっては、ガラス繊維織物とポリウレタン樹脂との接着力が十分でなく、特に、液化天然ガス用のタンクの断熱補強材として用いた場合などにあっては積層シートが超低温になるので、各部材間の熱収縮差などが原因となり、十分な剥離強度を得られないという問題があった。しかも、剥離強度を向上させるために、単に熱処理の温度を高くしてもフクレが発生してしまい、所望の剥離強度を得ることは困難であった。
【0004】
また、ガラス繊維織物とポリウレタン樹脂との接着力を向上させるためには、ガラス繊維織物、ポリウレタン樹脂及び金属箔シート同士を加圧ローラなどで加圧する際の圧力を上げる方法が考えられるが、上記積層シートに当該方法を適用した場合、ガラス繊維織物からポリウレタン樹脂が染み出してしまい、積層シートと他の部材(例えば、タンクの断熱材として用いられる発泡ウレタンなど)との接着力が低下してしまうという問題があった。
【0005】
ここで、ガラス繊維織物からポリウレタン樹脂が染み出してしまった場合に他の部材との接着力を確保するため、離型シートを積層させて加圧する方法が考えられる。しかし、上記積層シートに当該方法を適用した場合、可塑剤などがポリウレタン樹脂に混入してしまい、超低温下において金属箔シート及びガラス繊維織物との接着力が低下してしまうため、離型シートを用いることは極力避ける必要があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ガラス繊維織物からのウレタン樹脂の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することのできる積層シート及び積層シートの製造方法を提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層シートは、金属箔の両面にウレタン樹脂を積層させると共に、それぞれのウレタン樹脂の外面にガラス繊維織物を積層させることによって形成される積層シートであって、ガラス繊維織物は単位重量150〜500g/mであり、通気度が20cm/cm/sec以下であることを特徴とする。
【0008】
この積層シートでは、ガラス繊維織物の目抜きの度合い(通気度)を低くすることによって、ガラス繊維織物からウレタン樹脂を染み出させることなく、ガラス繊維織物、ウレタン樹脂及び金属箔同士を加圧ローラなどで加圧する際の圧力を上げ、各々の部材同士の接着力を向上させることができる。これによって、ガラス繊維織物からのウレタン樹脂の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することができる。
【0009】
本発明に係る積層シートにおいて、ガラス繊維織物は、合成樹脂系サイズ剤を付着させたガラス繊維束を経糸及び緯糸として製織されていることが好ましい。一般的に、ガラス繊維織物を製織する際にガラス繊維束に付着させるサイズ剤としてデンプン系サイズ剤が用いられるが、当該デンプン系サイズ剤を適用した場合は、ウレタン樹脂との接着力を確保するため加熱による脱油処理を行う必要があり、この脱油処理による熱劣化によってガラス繊維織物の引張強度が低下してしまうという問題がある。しかし、本発明のように、ガラス繊維束に付着させるサイズ剤として合成樹脂系サイズ剤を用いることによって、加熱による脱油処理を施さなくてもガラス繊維織物とウレタン樹脂との接着力を確保することができ、これによって、ガラス繊維織物の引張強度の低下を防止することができる。
【0010】
本発明に係る積層シートにおいて、ガラス繊維織物の経糸及び緯糸の少なくともいずれかのガラス繊維束が、ガラス繊維合撚糸であることが好ましい。このようにすれば、ガラス含有量の高いガラス繊維合撚糸を経糸及び/又は緯糸として用いることによって、ガラス繊維織物の引張強度を向上させることができる。また、通常のガラス繊維束に比して毛羽立ちの生じ難いガラス繊維合撚糸を用いることで、毛羽立ち防止のための2次サイズ剤を用いることを不要とし、これによって、サイズ剤によるガラス繊維織物とウレタン樹脂との接着力の低下を防止でき、積層シートの剥離強度を向上させることができる。
【0011】
具体的には、ガラス繊維織物には、0.4重量%以下の合成樹脂系サイズ剤が付着していることが好ましい。
【0012】
本発明に係る積層シートの製造方法は、金属箔の両面にウレタン樹脂を積層させると共に、それぞれのウレタン樹脂の外面に、単位重量が150〜500g/mであり通気度が20cm/cm/sec以下のガラス繊維織物を積層させ、積層物を表面温度が100℃以下の加圧面で加圧してシート化するシート化工程と、シート化した積層物を加熱するアフターキュア工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この製造方法では、ガラス繊維織物の目抜きの度合い(通気度)を低くすることによって、ガラス繊維織物からウレタン樹脂を染み出させることなく、ガラス繊維織物、ウレタン樹脂及び金属箔同士を積層させた積層物を加圧ローラなどで加圧する際の圧力を上げ、各々の部材同士の接着力を向上させることができる。また、積層物を表面温度が100℃以下の加圧面で加圧することによって、更にウレタン樹脂を染み出し難くすることができる。以上によって、ガラス繊維織物からのウレタン樹脂の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することができる。
【0014】
本発明に係る積層シートにおいて、アフターキュア工程では、シート化した積層物を60〜120℃の雰囲気下で加熱することが好ましい。このようにすれば、アフターキュア工程における温度を60〜120℃の低温とすることにより、金属箔、ウレタン樹脂及びガラス繊維織物の熱膨張率の差による皺の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス繊維織物からのウレタン樹脂の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することのできる積層シート及び積層シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る積層シート及びその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[積層シート]
図1には、一部が切り出された積層シートが拡大して示されている。図1に示すように、積層シート1は、金属箔2の両面にウレタン樹脂3を積層させると共に、それぞれのウレタン樹脂3の外面にガラス繊維織物4を積層させることによって形成される。このように形成された積層シート1は、超低温タンクの断熱補強材として用いられ、断熱材としての発泡ウレタン5を介してステンレス製のタンク壁面6に貼り付けられる。なお、積層シート1は、接着剤によって発泡ウレタン5に接着している。以下、積層シート1の各構成要素について詳しく説明する。
【0018】
(a)金属箔
金属箔2は、積層シート1の中間層となる薄膜フィルムであり、その材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、アンバー合金などを用いることができ、特にアルミニウムが最適である。また、その厚さは、薄すぎる場合は衝撃に対する強度の問題があり、厚すぎる場合は柔軟性が損なわれるという問題があるため、50〜250μmとすることが好適であり、60〜100μmとすることが更に好適である。
【0019】
金属箔2の両面には、フェノキシ樹脂及びシラン化合物を含有する樹脂組成物が付着しており、これによって、ウレタン樹脂3との接着力を著しく向上させることができ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することができる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンから製造され、分子量10000以上であり、100000以下であることが好ましい。シラン化合物としては、公知のものを用いることができるが、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシランやアミノプロピルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。樹脂組成物中のフェノキシ樹脂とシラン化合物の質量比(フェノキシ樹脂質量/シラン化合物質量)は1/2〜2/1であることが好ましい。また。樹脂組成物の金属箔への付着量は、0.5〜15.0g/mとすることが好適である。
【0020】
(b)ウレタン樹脂
ウレタン樹脂3は、上述のフェノキシ樹脂及びシラン化合物を含有する樹脂組成物によって金属箔2の両面に強固に接着された樹脂層を形成している。その材質としては、公知の溶融熱可塑性ウレタンを用いることができ、特にポリエステル系ウレタンやポリエーテル系ウレタンを用いることが好ましい。これらの材質の溶融温度は160〜230℃である。また、積層シート1中のウレタン樹脂3の量は50〜400g/mとすることが好ましい。
【0021】
(c)ガラス繊維織物
ガラス繊維織物4は、複数のガラス繊維からなるガラス繊維束を経糸及び緯糸として製織された織物である。織り組織は特に限定されないが、特に平織りが好ましい。ガラス繊維織物4の単位質量は150〜500g/mとすることが好ましく、300〜400g/mとすることが特に好ましい。また、糸番手は40〜300tex、密度は20〜40本/25mmとする。
【0022】
ガラス繊維織物4の通気度(クロスの目抜き度合い)は極力低くすることが好ましく、具体的には20cm/cm/sec以下とすることが望ましい。このように、ガラス繊維織物4の通気度を低くすることによって、ガラス繊維織物4からウレタン樹脂3を染み出させることなく、ガラス繊維織物4、ウレタン樹脂3及び金属箔2同士を加圧ローラで加圧する際の圧力を上げ、各々の部材同士の接着力を向上させることができる。これによって、ガラス繊維織物4からのウレタン樹脂3の染み出しを防止しつつ、超低温下にあっても十分な剥離強度を確保することができる。なお、通気度を下げる方法としては、例えば、製織時の打ち込み本数を多くする方法、撚り数の少ないガラス繊維束で製織する方法、及び製織後に開繊処理をする方法が挙げられる。
【0023】
開繊処理の方法として、高圧噴射水による開繊処理、バイブロウォッシャーによる噴流水による開繊処理、水中での超音波振動による開繊処理などを挙げることができる。このような開繊処理を施すと、ガラス繊維織物4の通気度を下げると同時にガラス繊維に付着しているサイズ剤も洗い流され、サイズ剤の付着量を低下させることができ、ガラス繊維織物4とウレタン樹脂3との接着力を確保することができる。そのため、本発明においては、開繊処理を施し通気度を下げることが好ましい。なお、ガラス繊維織物4の通気度は「JIS R3420 ガラス繊維一般試験方法 7.14クロスの通気性」により測定することができる。
【0024】
ガラス繊維織物4は、ガラス繊維合撚糸を経糸及び緯糸として製織されている。図2は、ガラス繊維合撚糸の拡大図であり、図2に示すように、ガラス繊維束22同士を撚り合わせることによって毛羽立ちが少なくガラス含有量の高いガラス繊維合撚糸21を形成することができる。
【0025】
ガラス繊維織物4の製織時に、ガラス含有量の高いガラス繊維合撚糸を経糸及び緯糸に用いることによって、ガラス繊維織物の引張強度を向上させることができる。また、通常のガラス繊維束に比して毛羽立ちの生じ難いガラス繊維合撚糸を用いることで、製織時の毛羽立ち防止のための2次サイズ剤を用いることを不要とし、これによって、サイズ剤によるガラス繊維織物とウレタン樹脂との接着力の低下を抑制でき、積層シートの剥離強度を向上させることができる。なお、経糸及び緯糸のいずれか一方にのみガラス繊維合撚糸を用いてもよいが、少なくとも経糸をガラス繊維合撚糸とすることが好ましい。さらに、経糸緯糸の両方とも合撚糸であることがより好ましい。
【0026】
ガラス繊維織物4の経糸及び緯糸には、紡糸時に1次サイズ剤が付着される。なお、ガラス繊維合撚糸を用いなかった場合は、整経時に2次サイズ剤が付着される。サイズ剤は、デンプン系サイズ剤よりも、合成樹脂系サイズ剤であることが好ましい。
【0027】
ここで、デンプン系サイズ剤を適用した場合は、ガラス繊維織物4とウレタン樹脂3との接着力を確保するために、製織後、加熱による脱油処理を行う必要が生じ、ガラス繊維が熱劣化してしまい、ガラス繊維織物4の引張強度が低下してしまうという問題がある。一方、サイズ剤として合成樹脂系サイズ剤を用いた場合は、加熱による脱油処理を行わなくてもガラス繊維織物4とウレタン樹脂3との接着力を確保することができ、これによって、ガラス繊維織物4の引張強度の低下を防止することができる。
【0028】
サイズ剤の被膜形成剤としての合成樹脂は、例えば、水溶性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、サイズ剤にはシラン化合物が含まれていることが望ましい。なお、このシラン化合物としては、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシランやアミノプロピルトリメトキシシランが適している。合成樹脂系サイズ剤は、ガラス繊維重量に対し0.05〜3.0重量%付着させるが、ガラス繊維織物4とウレタン樹脂3との剥離強度の低下を抑制すべく、0.4重量%以下とすることがより好ましい。さらにサイズ剤の付着量はガラス繊維重量に対し0.2質量%以下であることが好ましい。付着量を0.2重量%以下にするには、上述の開繊処理を施すことにより達成することができる。
【0029】
[積層シートの製造方法]
次に、図3を参照して、上述の積層シート1を製造するための製造方法について説明する。図3には、上述の積層シート1を製造するための製造装置10が概略的に示されている。
【0030】
製造装置10は、所定の薄膜フィルムのフィルムロールを回転させることで当該薄膜フィルムを加圧ローラ14へ供給するフィルム供給部11と、フィルム供給部11に配設されると共に薄膜状のウレタン樹脂3を押出成型する成型機13と、成型機13に配設されると共にガラス繊維織物4の織物ロールを回転させることでガラス繊維織物4を加圧ローラ14へ供給する織物供給部12と、供給された所定の薄膜フィルム、ウレタン樹脂3及びガラス繊維織物4同士を加圧する加圧ローラ14と、加圧ローラ14で加圧された積層物を巻き取って回収する回収部16とを備えて構成される。
【0031】
まず、帯状の金属箔2の両面に予めフェノキシ樹脂及びシラン化合物を含有する樹脂組成物を付着させ(樹脂組成物付着工程)、所定の温度で乾燥させた後、巻き取ってフィルム供給部11へ配置する。なお、金属箔2がフィルム供給部11から加圧ローラ14へ供給されるまでの間で、金属箔2に樹脂組成物を付着させてもよい。
【0032】
次に、フィルム供給部11、成型機13及び織物供給部12から、加圧ローラ14へ向かってそれぞれ金属箔2、ウレタン樹脂3及びガラス繊維織物4を供給する。なお、成型機13内では、ウレタン樹脂3は160〜230℃程度の高温に加熱されているため、成型機13から供給された薄膜状のウレタン樹脂3も高温である。
【0033】
次に、加圧ローラ14で、金属箔2、ウレタン樹脂3及びガラス繊維織物4同士を加圧する。このとき、ウレタン樹脂3がガラス繊維織物4から染み出してしまうことを防止するため、加圧ローラ14の加圧面の表面温度を100℃以下に温度制御することがより好ましい。さらに、加圧面を60℃以下に制御することがより好ましい。ウレタン樹脂の染み出しを抑えることにより、加圧ローラ表面への樹脂付着を防ぐばかりでなく、シート化工程での圧力を高くすることができ、積層シートの剥離強度を向上させることができる。
【0034】
加圧ローラ14で加圧した積層物を回収部16で巻き取ってロール状にして回収する。このとき、回収の前段階で所定の冷却手段(図示せず)で積層物を冷却することが好ましい。
【0035】
回収した積層物ロールをフィルム供給部11に配置し、積層物の金属箔2側の面に、更にウレタン樹脂3及びガラス繊維織物4を積層させ、当該積層物を加圧ローラ14で加圧してシート化し(シート化工程)、冷却後回収部16で回収する。
【0036】
シート化された積層物の回収ロールを炉に入れて、60〜120℃の雰囲気下で12〜120時間加熱する(アフターキュア工程)。このように、アフターキュア工程における温度を60〜120℃の低温とすることにより、金属箔2、ウレタン樹脂3及びガラス繊維織物4の熱膨張率の差による皺の発生を防止することができる。アフターキュア工程が終了した後、炉から出して冷却することによって、積層シートの製造工程が終了する。
【0037】
なお、上述の製造装置に更にフィルム供給部及び成型機を追加して、金属箔2と一対のウレタン樹脂3及び一対のガラス繊維織物4同士を一度に加圧することによって積層シート1を製造してもよい。
【実施例】
【0038】
(積層シートの作成)
[実施例1]
(1)金属箔
フェノキシ樹脂としてビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成されたポリビスフェノールA−ヒドロキシプロピルエーテル(東都化成株式会社製フェノトートYP−50S、重量平均分子量50000〜70000)10質量部、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10質量部、メチルエチルケトン60質量部、2−メトキシエタノール20質量部をヘンシェルミキサーにて撹拌することによって、フェノキシ樹脂とγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランが混合した樹脂組成物を得て、この樹脂組成物に厚さ70μm、幅1070mmの1N−30軟質アルミ箔をディッピングさせ150℃にて乾燥させ、樹脂組成物が5.0g/m付着した金属箔を得た。
【0039】
(2)ガラス繊維織物
ガラス繊維織物の経糸及び緯糸のガラス繊維束として、ガラス繊維重量100重量部に対し、0.3重量部の水溶性エポキシ樹脂系の1次サイズ剤が付着しているガラス繊維合撚糸(ECG75 1/2 3.3S)を用いて、経糸29本/25mm、緯糸32本/25mmの平織り組織に製織し、バイブロウオッシャーにより開繊処理を施し、ガラス繊維織物(質量345g/m、厚さ0.25mm)を得た。なお、ガラス繊維重量に対する1次サイズ剤の付着量は、開繊処理前では0.3重量%、開繊処理後では0.1重量%であった。またガラス繊維織物の通気度は、開繊処理前では40cm/cm/sec、開繊処理後では15cm/cm/secであった。
【0040】
(3)ウレタン樹脂
ポリエーテルウレタン樹脂(BASFジャパン株式会社製ET880)のペレットをエクストルーダ機(成型機)に投入し、T−ダイノズルの出口から約200℃で溶融された状態で供給した。
【0041】
(4)積層シートの作製
上述の金属箔及びガラス繊維織物を連続的に供給しながらその間に上述のウレタン樹脂を供給し、加圧ローラで加圧してその後冷却硬化させることによって、金属箔の片側の表面のみにウレタン樹脂及びガラス繊維織物が積層された積層物を得た。次いで、上述と同様の方法で金属箔のもう一方の表面にもウレタン樹脂及びガラス繊維織物を積層させた。この際、加圧ローラの表面を30〜40℃に保つように温度制御した。このようにして得られた積層物を115℃雰囲気下で48時間アフターキュアを行った後、常温に放置して積層シートA1を得た。
【0042】
[実施例2]
ガラス繊維織物の緯糸のガラス繊維束として、水溶性エポキシ樹脂系の1次サイズ剤がガラス繊維重量100重量部に対し、0.3重量部付着しているガラス繊維単糸(ECG37 1/0 1.0Z)を用い、経糸のガラス繊維束として、この1次サイズ剤を施したガラス繊維単糸にさらに、水溶性エポキシ樹脂系の2次サイズ剤をガラス繊維重量100重量部に対し、1.0重量部付着させる処理を施したガラス繊維単糸を用いた。それ以外は実施例1の積層シートA1の作製に準じて実施し、積層シートA2を得た。なお、開繊処理前のガラス繊維織物の通気度は30cm/cm/sec、開繊処理後では10cm/cm/secであった。また、開繊処理後のサイズ剤の付着量は、ガラス繊維重量に対し、0.15重量%であった。
【0043】
[比較例1]
開繊処理を施さないガラス繊維織物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層シートB1を得た。
【0044】
[比較例2]
積層シートの作製において、加圧ローラの表面を特に温度制御せず、加圧して積層シートを作製した。なお、この際の加圧ローラの表面温度は110〜130℃であった。それ以外は実施例1の積層シートA1の作製に準じて、積層シートB2を得た。
【0045】
[比較例3]
樹脂組成物にフェノキシ樹脂が含まれていないこと、及び160℃雰囲気下で5分間アフターキュアを行ったこと以外は積層シートA1の作製に準じて実施し、積層シートB3を得た。
【0046】
(積層シートの評価)
上記実施例1及び実施例2、並びに比較例1〜3の積層シートについてそれぞれ外観評価、引張強度評価及び剥離強度評価を行った。
【0047】
[外観評価]
積層シート100mにおいて、金属箔とガラス繊維織物との間の直径10mm以上の膨れ部分を剥離不良箇所として数え、表面状態を観察した。
【0048】
比較例3では約100箇所の膨れ部分があったが、実施例1,2、比較例1,2では全く認められなかった。これによって、アフターキュアを低温で行えば、積層シートの皺の発生を防止できることが確認された。また、実施例1、2では、ガラス繊維織物の繊維束の隙間からウレタン樹脂の染み出しは認められなかったが、比較例1、2では、ウレタン樹脂の染み出しが観察され、比較例2のほうが、比較例1より染み出しの程度はひどかった。
【0049】
[引張強度]
それぞれの積層シートを縦方向及び横方向について幅50mm×長さ400mmで5片ずつ切り出し、それぞれの試験片の両面の長さ方向の端部に接着剤を塗布して合板を貼り、常温雰囲気下(23℃)及び低温雰囲気下(−196℃)で引張試験機により5mm/minで引張試験を行った。各5片について得られた結果の平均値を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
[剥離強度]
それぞれの積層シートを縦方向及び横方向について幅25mm×長さ300mmで5片ずつ切り出し、それぞれの試験片の片面に全面に渡り接着剤を塗布して鉄治具を貼り、常温雰囲気下(23℃)及び低温雰囲気下(−196℃)、並びに海水に浸して6週間経過した後に、濡れた状態のまま常温雰囲気下でISO4578に従い引張試験機により100mm/minで引き剥がし試験を行った。各5片について得られた結果の平均値を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表1、表2からわかるように、ガラス繊維織物とウレタン樹脂の接着性が大きく影響する引張強度は、実施例1,2と比較例1〜3とでは大差ない。しかし、ウレタン樹脂と金属箔の接着性が大きく影響する剥離強度は、実施例1,2と比較例1〜3では大きく異なり、各比較例では低温雰囲気下及び海水浸漬後での低下も著しいことが判る。特に、実施例1,2に比して比較例1の剥離強度が低下していることから、ガラス繊維織物の通気度を下げることによって、十分な剥離強度を確保できることが確認された。また、実施例1,2に比して比較例2の剥離強度が低下していることから、加圧ローラの表面温度を温度制御することによって、十分な剥離強度を確保できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る積層シートの、一部を切り出した拡大図である。
【図2】ガラス繊維合撚糸の拡大図である。
【図3】図1に示す積層シートを製造するための製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1…積層シート、2…金属箔、3…ウレタン樹脂、4…ガラス繊維織物、21ガラス繊維合撚糸、22…ガラス繊維束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の両面にウレタン樹脂を積層させると共に、それぞれの前記ウレタン樹脂の外面にガラス繊維織物を積層させることによって形成される積層シートであって、
前記ガラス繊維織物は単位重量150〜500g/mであり、通気度が20cm/cm/sec以下であることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記ガラス繊維織物は、合成樹脂系サイズ剤を付着させたガラス繊維束を経糸及び緯糸として製織されていることを特徴とする請求項1記載の積層シート。
【請求項3】
前記ガラス繊維織物の経糸及び緯糸の少なくともいずれかのガラス繊維束が、ガラス繊維合撚糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層シート。
【請求項4】
前記ガラス繊維織物には、0.4重量%以下の合成樹脂系サイズ剤が付着していることを特徴とする請求項1〜3記載の積層シート。
【請求項5】
金属箔の両面にウレタン樹脂を積層させると共に、それぞれの前記ウレタン樹脂の外面に、単位重量が150〜500g/mであり通気度が20cm/cm/sec以下のガラス繊維織物を積層させ、積層物を表面温度が100℃以下の加圧面で加圧してシート化するシート化工程と、
前記シート化した積層物を加熱するアフターキュア工程と、
を備えることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項6】
前記アフターキュア工程では、前記シート化した積層物を60〜120℃の雰囲気下で加熱することを特徴とする請求項5記載の積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−241476(P2009−241476A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92229(P2008−92229)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】