説明

積層シート製造装置および積層シートの製造方法

【課題】 所望の積層シートを得ることができる積層シート製造装置、および積層シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】加熱装置30Bは、繊維基材2と、繊維基材2の片面または両面に供給された、樹脂層3,4(3A,4A)とを備える積層シート(加熱装置30Bで加熱する前の積層シート40(40A)を加熱して、加熱された積層シート40(40A)を製造する積層シート製造装置である。この加熱装置30Bは、積層シート40(40A)が通過するチャンバ91と、チャンバ91内を加熱して、積層シート40(40A)を加熱する加熱手段92と、積層シート40(40A)のチャンバ91内の通過経路の長さを可変にする経路長可変手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート製造装置および積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品・電子機器等を小型化・薄膜化すべく、これに用いられる回路基板等を小型化・薄膜化することが要求されている。この要求に答えるために、多層構造の回路基板を用い、その各層を薄くすることが行なわれている。
【0003】
多層構造の回路基板には、例えば、繊維基材の両面に、樹脂組成物シート(樹脂層)を配置してラミネート接着させたシートが使用されている(たとえば特許文献1参照)。
このシートは、繊維基材の両面に、Bステージ樹脂組成物シートを重ね合わせ、この積層体を加圧することで、製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−340952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシートを製造する際に、Bステージ樹脂組成物シートを加熱することがある。たとえば、Bステージ樹脂組成物シートを加熱して、Bステージ樹脂組成物シートの硬化の程度を調整することがある。この場合、Bステージ樹脂組成物シートの樹脂組成物の組成や、Bステージ樹脂組成物シートの樹脂層の厚みによっては、樹脂層が所望の硬化の程度となるまでにかかる加熱時間が異なることがある。加熱炉内に、Bステージ樹脂組成物シートを通過させるだけでは、所望のBステージ樹脂組成物シートを得ることが困難であることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
可撓性を有する帯状の基材と、該基材の片面または両面に供給された、樹脂組成物とを備える積層シートを加熱して積層シートを製造する積層シート製造装置であって、
前記積層シートが通過するチャンバと、
前記チャンバ内を加熱して、前記積層シートを加熱する加熱手段と、
前記積層シートが前記チャンバ内を通過する際の通過経路の長さを可変にする経路長可変手段とを備えることを特徴とする積層シート製造装置が提供される。
【0007】
本発明の積層シートの製造装置は、積層シートのチャンバ内の通過経路の長さを可変とする経路長可変手段を備えている。経路長可変手段で積層シートのチャンバ内の通過経路の長さを変更することで、積層シートのチャンバ内を通過する時間を調整でき、積層シートの加熱時間を調整できるため、所望の積層シートを得ることができる。
【0008】
また、本発明によれば、
積層シートを製造する積層シートの製造方法であって、
可撓性を有する帯状の無機織布または有機繊維基材である基材と、該基材の片面または両面に供給された樹脂組成物とを備える第一の積層シートを第一の通過経路の長さでチャンバ内を通過させながら加熱を行なう第一の加熱工程と、
可撓性を有する帯状の無機織布または有機繊維基材である基材と、該基材の片面または両面に供給された樹脂組成物とを備える第二の積層シートを前記第一の通過経路の長さと異なる第二の通過経路の長さで前記チャンバ内を通過させながら加熱を行なう第二の加熱工程とを含む積層シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、所望の積層シートを得ることができる積層シート製造装置、および積層シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
【図1】本発明の積層シート製造装置の実施形態を示す概略断面側面図(本発明の積層シートを製造する際の製造過程を順に示す図)である。
【図2】本発明の積層シート製造装置の実施形態を示す概略断面側面図(本発明の積層シートを製造する際の製造過程を順に示す図)である。
【図3】本発明の積層シート製造装置の実施形態を示す概略断面側面図(本発明の積層シートを製造する際の製造過程を順に示す図)である。
【図4】図1中のA−A線断面図である。
【図5】図1中のB−B線断面図である。
【図6】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大図である。
【図7】図2および図3に示す積層シート製造装置での硬化炉の分解斜視図である。
【図8】本発明の積層シートを示す断面図である。
【図9】図8に示す積層シートを用いて製造された基板を示す断面図である。
【図10】図9に示す基板を用いて製造された半導体装置を示す断面図である。
【図11】(a)、(b)は、チャンバ内でのローラの移動状態を示す平面図である。
【図12】(a)〜(c)は、チャンバ側面側から見た図であり、ローラの移動に伴い遮蔽部材が移動する様子を示す図である。
【図13】(a)、(b)は、本願発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
【0013】
以下、本発明の積層シート製造装置および積層シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1〜12を参照して、本実施形態について説明する。
図1〜図3は、それぞれ、本発明の積層シート製造装置の実施形態を示す概略断面側面図(本発明の積層シートを製造する際の製造過程を順に示す図)、図4は、図1中のA−A線断面図、図5は、図1中のB−B線断面図、図6は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大図、図7は、図2および図3に示す積層シート製造装置での硬化炉の分解斜視図、図8は、本発明の積層シートを示す断面図、図9は、図8に示す積層シートを用いて製造された基板を示す断面図、図10は、図9に示す基板を用いて製造された半導体装置を示す断面図である。なお、以下の説明では、図1〜図10中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」として説明する。また、図8〜図10は、厚さ方向(図中の上下方向)に大きく誇張して示してある。また、図2、図3、図7中の左右方向をx軸方向、x軸方向に対し垂直な方向をy軸方向と言うことがある。
図11は、チャンバ内でのローラの移動状態を示す平面図である。図12は、チャンバ側面側から見た図であり、ローラの移動に伴い遮蔽部材が移動する様子を示す図である。
【0015】
図1〜図3に示す積層シート製造装置30は、図8に示す構成の積層シート40(40A)を製造する装置である。
【0016】
<積層シート>
まず、積層シート40(40A)について、図8を参照しつつ説明する。なお、積層シート40(40A)をその長手方向の途中で所定の寸法に切断すると、プリプレグ1が得られる。
【0017】
図8に示す積層シート(第一の積層シート)40は、可撓性を有する薄板状(帯状)の繊維基材(基材)2と、繊維基材2の一方の面(上面)側に位置し、固形または半固形の第1の樹脂組成物で構成される第1の樹脂層(樹脂層)3と、繊維基材2の他方の面(下面)側に位置し、固形または半固形の第2の樹脂組成物で構成される第2の樹脂層(樹脂層)4とを有する。この積層シート40は、所定の寸法に切断されて使用される。各樹脂層3,4は、B−ステージ状態である。
図8に示す積層シート(第二の積層シート)40Aは、積層シート40と同様の繊維基材(基材)2で構成されているが、樹脂層3A,4Aの組成が樹脂層3,4とは異なっているが他の点は樹脂層3,4と同様である。
なお、図8では図示していないが、樹脂層3,4(3A,4A)の表面には、支持基材52(図1参照)が設けられていてもよい。ただし、支持基材52が樹脂フィルム等で構成される場合には、後述する基板10の製造の際に、支持基材52を樹脂層から剥離する。
【0018】
繊維基材2は、積層シート40(40A)の機械的強度を向上する機能を有する。
この繊維基材2としては、例えば、
ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、
ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維や全芳香族ポリアミド樹脂繊維等を含むアラミド繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、フッ素樹脂繊維等のいずれかを主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、
クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等のいずれかを主成分とする紙繊維基材等のいずれかの繊維基材等が挙げられる。
なお、繊維基材は、上述した繊維のいずれか1種を使用してもよいし、2種以上を使用したものであってもよい。なかでも、繊維基材2としては、無機織布基材または有機繊維基材のいずれかであることが好ましい。
【0019】
これらの中でも、繊維基材2は、無機織布基材であるガラス織布基材であるのが好ましい。かかるガラス織布基材を用いることにより、積層シート40(40A)を切断して得られたプリプレグ1の機械的強度をより向上することができる。また、プリプレグ1の熱膨張係数を小さくすることもできるという効果もある。
【0020】
ガラス繊維を構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス、石英ガラス等のいずれかが挙げられる。これらの中でも、ガラスは、石英ガラス、Sガラス、または、Tガラスであるのが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の熱膨張係数を比較的小さくすることができ、このため、積層シート40をその熱膨張係数ができる限り小さいものとすることができる。
【0021】
繊維基材2の平均厚さは、特に限定されないが、150μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、10〜20μm程度であるのがさらに好ましい。かかる厚さの繊維基材2を用いることにより、プリプレグ1(積層シート40(40A))の機械的強度を確保しつつ、その薄型化を図ることができる。さらには、プリプレグ1の加工性を向上することもできる。
【0022】
この繊維基材2の一方の面側には、第1の樹脂層3(3A)が設けられ、また、他方の面側には、第2の樹脂層4(4A)が設けられている。また、第1の樹脂層3(3A)と、第2の樹脂層4(4A)は、同じ樹脂組成物で構成されていてもよく、異なる樹脂組成物で構成されていてもよい。本実施形態では同じ組成物とする。
【0023】
図8に示すように、本実施形態では、繊維基材2の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物(第1の樹脂層3(3A))が含浸され(以下この部分を「第1の含浸部31」と言う)、繊維基材2の第1の樹脂組成物が含浸されていない残り部分に、第2の樹脂組成物(第2の樹脂層4(4A))が含浸されている(以下この部分を「第2の含浸部41」と言う)。これにより、第1の樹脂層3(3A)の一部である第1の含浸部31と第2の樹脂層4(4A)の一部である第2の含浸部41とが繊維基材2内に位置する。そして、繊維基材2内において、第1の含浸部31(第1の樹脂層3の下面)と第2の含浸部41(第2の樹脂層4の上面)とが接触している。
本実施形態では、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは等しい。
さらに、第1の樹脂層3(3A)の第1の含浸部31を除く部分(第1の非含浸部32)の厚みと、第2の樹脂層4(4A)の第2の含浸部41を除く部分(第2の非含浸部42)の厚みとは等しい。第1の非含浸部32の厚み、第2の非含浸部42の厚みは、たとえば、2〜20μmである。なお、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは異なっていてもよく、また、第1の非含浸部32の厚みと、第2の非含浸部42の厚みとが異なっていてもよい。なお、符号20は、含浸部31,41間の境界を模式的に示す。
【0024】
図1に示すように、第1の樹脂層3(3A)は、薄板状の第1のシート5aとして、積層シート製造装置30に供給される。このシート5aは、第1の樹脂層3(3A)と、この樹脂層3(3A)を支持する支持基材52と、第1の樹脂層3を保護する保護シート51とを備える。支持基材52は、第1の樹脂層3(3A)を挟んで保護シート51とは反対側に設けられている。したがって、図1では、第2のローラ72aには、支持基材52を介して第1の樹脂層3(3A)が接触している。
同様に、第2の樹脂層4(4A)は、薄板状の第2のシート5bとして、積層シート製造装置30に供給される。このシート5bは、第2の樹脂層4(4A)と、この樹脂層4(4A)を支持する支持基材52と、第2の樹脂層4を保護する保護シート51とを備える。支持基材は、第2の樹脂層4(4A)を挟んで保護シート51とは反対側に設けられている。したがって、図1では、第2のローラ72bには、支持基材52を介して第2の樹脂層4(4A)が接触している。
【0025】
保護シート51としては、例えば、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン等のいずれかが挙げられる。そして、樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、これらの中でも、耐熱性に優れ、安価であることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂フィルムは、その樹脂フィルムの樹脂層側の面に剥離可能な処理が施されたものであることが好ましい。これにより、後述するように保護シート51と樹脂層とを容易に分離することができる。
支持基材52としては、保護シート51と同様のものを使用することができる。また、支持基材52は、銅箔等の金属層であってもよい。
【0026】
保護シート51や支持基材52の平均厚さは、特に限定されないが、8〜70μm程度であるのが好ましく、12〜40μm程度であるのがより好ましい。
【0027】
樹脂層3、3A,4、4Aは、次のような樹脂組成物で構成される。
【0028】
各樹脂層3、3A,4、4Aは、例えば、硬化性樹脂を含み、必要に応じて、硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)および無機充填材のうちの少なくとも1種を含んで構成される。
【0029】
硬化性樹脂としては、例えば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、嫌気硬化性樹脂などのいずれかが挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂は、ガラス転移温度が200℃以上になる組合せが好ましい。例えば、スピロ環含有、複素環式、トリメチローラ型、ビフェニル型、ナフタレン型、アントラセン型、ノボラック型の2または3官能以上のエポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂のいずれかを用いるのが好ましい。
【0030】
前記硬化性樹脂の中でも、熱硬化性樹脂を用いることにより、さらに、後述する基板10(図9参照)を作製した後において、硬化後の樹脂層3、3A,4、4A中において架橋密度が増加するので、硬化後の樹脂層3、3A,4、4A(得られる基板)の耐熱性の向上を図ることができる。
【0031】
前記熱硬化性樹脂と充填材を併用することにより、プリプレグ1の熱膨張係数を小さくすること(以下、「低熱膨張化」と言うこともある)ができる。さらに、プリプレグ1の電気特性(低誘電率、低誘電正接)等の向上を図ることもできる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等のいずれかが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、エポキシ樹脂は、ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂のいずれかであることが好ましい。ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂を用いることにより、硬化後の樹脂層3、4(得られる基板)において、吸湿半田耐熱性(吸湿後の半田耐熱性)および難燃性を向上させることができる。ナフタレン型エポキシとしては、DIC(株)製のHP−4700、HP−4770、HP−4032D、HP−5000、HP-6000、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられ、アリールアルキレン型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製のNC−3000、NC−3000L、NC−3000−FH、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に芳香族基とメチレン等のアルキレン基の組合せを一つ以上含むエポキシ樹脂のことをいい、耐熱性、難燃性、および機械的強度が優れる。また、ハロゲンフリーの配線板に対応する上では、実質的にハロゲンを含まないエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
前記シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0034】
前記シアネート樹脂は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等のいずれかを挙げることができる。
【0035】
また、前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型等のいずれかの多価フェノール類とハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類とハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂のいずれか1種以上が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネート樹脂が架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0036】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0037】
これらシアネート樹脂を用いることにより、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。
【0038】
また、前記硬化性樹脂は、2種以上を併用して用いることもできる。例えば、硬化性樹脂として前記エポキシ樹脂を用いる場合、より難燃性を向上させる上で、前記シアネート樹脂を併用することができ、また、より耐熱性を向上させる上で、前記マレイミド化合物を併用することができる。さらに、硬化性樹脂として、前記シアネート樹脂を用いる場合は、より耐熱性や難燃性などを向上させる上で、前記エポキシ樹脂を併用することができる。
【0039】
硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、硬化性樹脂の種類等によっては、樹脂組成物のワニスの粘度が低くなりすぎ、プリプレグ1を形成するのが困難となる場合がある。一方、硬化性樹脂の含有量が前記上限値を超えると、他の成分の量が少なくなり過ぎるため、硬化性樹脂の種類等によっては、プリプレグ1の機械的強度が低下する場合がある。
【0040】
また、樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。これにより、プリプレグ1を薄型化(例えば、厚さ35μm以下)しても、機械的強度に優れる基板10を得ることができる。さらに、基板10の低熱膨張化を向上することもできる。
【0041】
無機充填材としては、例えば、タルク、アルミナ、ガラス、溶融シリカのようなシリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、無機充填材の使用目的に応じて、破砕状、球状のものが適宜選択される。これらの中でも、低熱膨張性に優れる観点からは、無機充填材は、シリカであるのが好ましく、溶融シリカ(特に球状溶融シリカ)であるのがより好ましい。
【0042】
また、樹脂層3、3A,4、4Aは、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック、アントラキノン類等の着色剤等を挙げることができる。
【0043】
<積層シート製造装置(積層シートの製造方法)>
次に、積層シート40、40Aの製造に用いる積層シート製造装置30について、図1〜図7、図11,12を参照しつつ説明する。
【0044】
図1〜図3に示すように、積層シート製造装置30は、図1に示す圧着装置30Aと、この圧着装置30Aよりも、積層シート搬送方向下流側に配置される加熱装置30B(図2参照)とを備える。
圧着装置30Aは、ハウジング6と、ハウジング6内に収納された第1のローラ71a、71b、第2のローラ(供給用ローラ)72a、72bおよび第3のローラ73a、73bと、ハウジング6内を減圧する減圧手段8とを備える。
加熱装置30Bは、樹脂層3,4(3A,4A)を加熱して、各樹脂層3,4(3A,4A)の硬化を進める硬化炉9を備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0045】
はじめに、圧着装置30Aについて説明する。この圧着装置30Aは、樹脂層3(3A)を繊維基材2の一方の面側に圧着させるとともに、樹脂層4(4A)を繊維基材2の他方の面側に圧着させる装置である。より具体的には、圧着装置30Aは、繊維基材2の表裏面に、樹脂層3(3A)、樹脂層4(4A)を圧着し、かつ、樹脂層3(3A)、樹脂層4(4A)を繊維基材2に含浸させる。
図4に示すように、ハウジング6は、間隔をおいて互いに対向配置された一対の壁部61を有する、例えば箱状をなすものである。壁部61の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属、またはこれらを含む合金が挙げられる。
【0046】
ハウジング6の2つの壁部61間には、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとがそれぞれ架設されている。これらのローラは互いに平行配置されている。これらのローラは、例えば、多数の歯車が配置された歯車機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)と連結されている。そして、このモータが作動すると、その動力が歯車機構を介して伝達され、各ローラがそれぞれ回転することとなる。なお、これらのローラは、太さが異なること以外は同一の構成であり、同様の構造で壁部61に支持されている。以下、第1のローラ71aの構成について代表的に説明する。
【0047】
図4に示すように、第1のローラ71aは、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の中間部に位置する本体部74と、本体部74の両端側にそれぞれ位置する軸75とで構成されている。各軸75は、それぞれ、その外径が本体部74の外径よりも縮径している。
【0048】
この第1のローラ71aは、各軸75がそれぞれ壁部61に設置された軸受け(ベアリング)76に挿入されており、当該軸受け76により回転可能に支持されている。
【0049】
なお、第1のローラ71aは、図1、図4に示す構成では中実体のものであるが、これに限定されず、例えば、中空体のものであってもよい。
【0050】
また、第1のローラ71aの構成材料としては、特に限定されず、例えば、壁部61の構成材料で挙げたような材料を用いることができる。この場合、第1のローラ71aの本体部74の外周面741には、外周面741が摩耗するのを防止する処理が施されていてもよい。この処理としては、例えば、外周面741にDLC(Diamond Like Carbon)の被膜を形成する方法が挙げられる。
【0051】
第1のローラ71aと第1のローラ71bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本体部74の外周面741同士が互いに当接し(圧接し)合っている(図4参照)。そして、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらの間で繊維基材2を図1中の左側から右側へ搬送することができる。
【0052】
第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、第1のローラ71a、71bと異なる位置、すなわち、第1のローラ71a、71bに対し繊維基材2の搬送方向前方(下流側)に配置されている。また、第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本体部74の外周面741同士が互いに当接し(圧接し)合っている。そして、第2のローラ72aと第2のローラ72bとが回転すると、これらの間を繊維基材2と、未硬化あるいは半硬化(いずれもの状態においても、半固形状態または液状状態)の樹脂組成物からなる第1の樹脂層3(3A)と、未硬化あるいは半硬化(いずれの状態においても、半固形状態または液状状態)の樹脂組成物からなる第2の樹脂層4(4A)とが挟まれた状態で一括して通過することとなる。その際に繊維基材2に第1の樹脂層3(3A)と第2の樹脂層4(4A)とがそれぞれ圧着する(接合する)(図1参照)。そして、この接合体、すなわち、未硬化あるいは半硬化の積層シート40が硬化炉9(チャンバ91)に向かって送り出される。
【0053】
第3のローラ73aは、第1のローラ71aと、第2のローラ72aとの間に配置され、第3のローラ73bは、第1のローラ71bと、第2のローラ72bとの間に配置されている。また、第3のローラ73aと第3のローラ73bとは、互いに上下方向(鉛直方向)に離間し、水平方向には平行に対向配置されている。そして、第3のローラ73aが回転すると、第1のシート5aの第1の樹脂層3から保護シート51を剥離する(巻き取る)ことができる(図1参照)。これと同様に、第3のローラ73bが回転すると、第2のシート5bの第2の樹脂層4から保護シート51を剥離することができる(図1参照)。
【0054】
さらに、第3のローラ73aは、その本体部74の外周面741が、第1のローラ71aの本体部74の外周面741と、第2のローラ72aの本体部74の外周面741とにそれぞれ当接している。一方、第3のローラ73bは、その本体部74の外周面741が、第1のローラ71bの本体部74の外周面741と、第2のローラ72bの本体部74の外周面741とにそれぞれ当接している。このような配置により、積層シート製造装置30では、ハウジング6の各壁部61と、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間70が形成される。空間70は、減圧手段8の作動により減圧される(図5参照)。
【0055】
図4に示すように、第1のローラ71aおよび71b(第2のローラ72aおよび72b、第3のローラ73aおよび73bについても同様)のそれぞれの本体部74の両端と、各壁部61との間には、シール材62が介在している。各シール材62は、それぞれ、リング状の弾性体で構成され、壁部61に形成されたリング状の凹部612に圧縮状態で挿入されている。これにより、空間70の気密性が確実に維持され、よって、減圧手段8で空間70を減圧した際、その減圧が迅速かつ確実に行なわれる。
【0056】
シール材62の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
図1に示すように、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとは、互いに本体部74の外径(大きさ)が異なっている。本実施形態では、その大小関係は、(第3のローラ)<(第1のローラ)<(第2のローラ)となっている。また、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとの各ローラの大きさは任意であるが、例えばローラに可撓性を有するシート材を沿わせたときに当該シート材に皺が生じない程度に、できる限り小さいのが好ましい。具体的には、直径が75〜300mmであるのが好ましく、100〜200mmであるのがより好ましい。
【0058】
図5に示すように、減圧手段8は、ポンプ81と、ポンプ81と各壁部61にそれぞれ形成された開口部611とを接続する接続管82とを有している。
ポンプ81は、ハウジング6の外側に設置され、例えば真空ポンプが適用される。
【0059】
各接続管82は、それぞれ、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成された硬質管である。
【0060】
各開口部611は、それぞれ、空間70に向かって開口している。なお、図5に示す構成では双方の壁部61にそれぞれ開口部611が形成されているが、これに限定されず、例えば、一方の壁部61にのみ開口部611が形成されていてもよい。
【0061】
そして、ポンプ81を作動させることにより、各開口部611から空間70内の空気Gを吸引することができ、よって、空間70を減圧することができる。また、これにより、隣接するローラ同士が互いに近づこうとする力が生じてさらに圧接し合い、よって、空間70の気密性がより確実に維持される。
【0062】
第2のローラ72a、72bに対し積層シート40の搬送方向前方(搬送方向下流側)には、図2に示すように、加熱装置30Bの硬化炉9が配置されている。硬化炉9は、樹脂層3,4(3A,4A)の硬化を進める装置である。
ここで加熱装置30Bについて説明する。
はじめに加熱装置30Bの概要について説明する。
加熱装置30Bは、可撓性を有する帯状の無機織布または有機繊維基材である基材(繊維基材2)と、該基材(繊維基材2)の片面または両面に供給された、樹脂組成物(樹脂層3,4(3A,4A))とを備える積層シート(加熱装置30Bで加熱する前の積層シート40(40A))を加熱して、加熱された積層シート40(40A)を製造する積層シート製造装置である。
この加熱装置30Bは、前記積層シートが通過するチャンバ91と、チャンバ91内を加熱して、前記積層シートを加熱する加熱手段92と、前記積層シートの前記チャンバ91内の通過経路の長さを可変にする経路長可変手段とを備える。
【0063】
加熱装置30Bは、長尺の積層シート40(40A)を加熱するものであり、加熱装置30Bには連続的に積層シート40(40A)が搬送される。
図2、図3に示すように、硬化炉9は、チャンバ(炉本体)91と、チャンバ91内を加熱する加熱手段としてのヒータ92と、チャンバ91内に位置する第1のローラ93a、93b、第2のローラ94a、94b、第3のローラ95とを有している。ローラ93a、94a、94b、95は、積層シート40(40A)をチャンバ91内で搬送するための搬送手段である。
【0064】
チャンバ91は、長方形あるいは正方形の箱状をなし、その内部空間96を、樹脂層3,4(3A,4A)が供給された繊維基材2、すなわち、積層シート40(40A)が通過することができる。
【0065】
チャンバ91の互いに対向する一対の壁部911、912には、積層シート40(繊維基材2)が入る入口913と、積層シート40(40A)が出る出口914とがそれぞれ1つずつ形成されている。入口913と出口914とが内部空間96を介して互いに反対側に位置していることにより、例えば積層シート40(40A)からプリプレグ1を得る際に積層シート40(40A)を切断する切断装置(図示せず)をする場合、積層シート40(40A)の搬送方向前方、すなわち、積層シート40(40A)の流れの下流側に切断装置を設置することができ、装置のレイアウトを容易に行なうことができる。
【0066】
チャンバ91の入口913の高さ位置(y軸方向の位置)は、出口914の高さ位置(y軸方向の位置)と異なっており、本実施形態では、入口913は、出口914よりもy軸正方向位置している。
チャンバ91の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属、またはこれらを含む合金が挙げられる。
【0067】
チャンバ91の内部には、複数のヒータ92が配置されている。ヒータ92は、樹脂層3,4(3A,4A)を加熱する加熱手段(熱板)であり、本実施形態では、この加熱により、樹脂層3,4(3A,4A)がそれぞれ硬化する。
図2において、各ヒータ92は、積層シート40の搬送方向に沿って延在している。
なお、図2には、ヒータ92を示したが、図3では見易さを考慮して、ヒータ92を省略している。
【0068】
なお、ヒータ92は、例えばニクロム線等のような電熱線で構成されたものである。
また、ヒータ92によるチャンバ91内の加熱温度は、例えば、100〜350℃であることが好ましく、150〜300℃であるのがより好ましい。
【0069】
図2、図3に示すように、加熱装置30Bは、チャンバ91内に配置された第1のローラ93a、93b、第2のローラ94a、94b、第3のローラ95を備える。これらのローラは、回転可能に設置されており、これらのローラは回転することで、チャンバ91内で積層シート40(40A)を搬送する。これらのローラは、積層シート40(40A)に当接する送りローラである。各ローラは、それぞれ、その長手方向が積層シート40(40A)の搬送方向に対して直交するように、配置されている。
【0070】
第1のローラ93a、93b、第2のローラ94a、94b、第3のローラ95とは、y軸方向の互いの位置(互いの高さ位置)が異なっている。硬化炉9では、第1のローラ93a、93bが最もy軸正側に(最も高い位置に)配置され、第3のローラ95が最もy軸負側に(最も低い)位置に配置され、第2のローラ94a、94bが第1のローラ93a、93bと第3のローラ95との間に配置されている。また、第1のローラ93aと第1のローラ93bとでも、y軸方向の互いの位置が異なるように配置されており、第1のローラ93aが第1のローラ93bよりもy軸正側にある。これと同様に、第2のローラ94aと第2のローラ94bとでも、y軸方向の互いの位置が異なるように配置されており、第2のローラ94aが第2のローラ94bよりもy軸正側にある。
【0071】
そして、積層シート40(40A)は、第1のローラ93a、93b、第2のローラ94a、94b、第3のローラ95の順に架け渡され、各ローラが回転することにより搬送される。
ローラ93a、94a、95は、積層シート40(40A)の一方の面側に当接し、ローラ93b、94bは、積層シート40(40A)の他方の面側に当接する。
【0072】
なお、これらのローラ93a、93b、94a、94b、95は、同一の構成であるため、以下、第1のローラ93aの構成を代表として説明する。
【0073】
図7に示すように、第1のローラ93aは、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の中間部に位置する本体部97と、本体部97の両端側にそれぞれ位置する軸部98とで構成されている。各軸部98は、それぞれ、その外径が本体部97の外径よりも縮径している。
【0074】
なお、第1のローラ93aの本体部97は、図2、図3に示す構成では中実体のものであるが、これに限定されず、例えば、中空体のものであってもよい。
【0075】
また、本体部97は、積層シート40(40A)に当接する部分である。本体部97の構成材料としては、特に限定されず、例えば、チャンバ91の構成材料で挙げたような材料を用いることができる。この場合、第1のローラ93aの本体部97の外周面971には、積層シート40(40A)との摩擦を低減する摩擦低減処理が施されている。これにより、外周面971が摩耗するのが防止される。この摩擦低減処理としては、例えば、外周面971にフッ素、DLC(Diamond Like Carbon)等の被膜を形成する方法が挙げられる。
各ローラ93b、94a、94b、95も、ローラ93aと同様の本体部97と、軸部98とを備える。
【0076】
ここで、前述したローラ93a、93b、94a、94b、95のうち、ローラ93a、94aは、チャンバ91内を移動可能となっている。一方で、ローラ93b、94b、95はチャンバ91内を移動することなく、チャンバ91に対する位置が固定されている。
ローラ93aは、ローラ93bへ向けて積層シート40(40A)を鉛直方向(y軸方向)に搬送する。そして、図2、図3、図11に示すように、第1のローラ93aは、チャンバ91の壁部917,918に形成された一文字状のカム溝(案内溝)915により当該チャンバ91に対しx軸方向(水平方向)に移動可能に支持されている。第1のローラ93bは、そのチャンバ91に対する位置が固定されている。そして、第1のローラ93aが移動することにより、第1のローラ93aと第1のローラ93bとがx軸に沿って互いに接近・離間し、軸間距離を変更することができる。
本実施形態では、積層シート40の搬送方向下流側の端部に積層シート40Aの搬送方向上流側の端部が接続された一連の長尺な積層シートを加熱処理するが、ローラ93aをローラ93a上における長尺な前記積層シートの搬送方向(ここでは、ローラ93aによる積層シートの搬送方向、すなわち、y軸方向)と交差(直交)し、かつ、長尺な前記積層シートの幅方向と直交する方向であるx軸方向に移動させることで、ローラ93aおよびローラ93b間の長尺な前記積層シートのx軸方向(ローラ93aの移動方向)における搬送距離が変更される。
なお、第1のローラ93aの各軸部98は、それぞれ、チャンバ91の壁部917,918に形成された各カム溝915に挿入されている。各カム溝915は、チャンバ91の各壁部917,918を貫通した貫通孔である。
【0077】
また、第2のローラ94aは、ローラ94bへ向けて積層シート40(40A)を鉛直方向に搬送するものである。そして、ローラ94aは、チャンバ91の壁部917,918に形成された一文字状のカム溝916によりチャンバ91に対しx軸方向に移動可能に支持され、第2のローラ94bは、そのチャンバ91に対する位置が固定されている。そして、第2のローラ94aが移動することにより、第2のローラ94aと第2のローラ94bとが互いに接近・離間、軸間距離を変更することができる。換言すると、ローラ94a上における長尺な前記積層シートの搬送方向(ローラ94aによる積層シートの搬送方向、ここでは、y軸方向)と交差(直交)し、かつ、長尺な前記積層シートの幅方向と直交する方向であるx軸方向にローラ94aを移動させることで、ローラ94aおよびローラ94b間の長尺な前記積層シートのx軸方向(ローラ94aの移動方向)における搬送距離が変更される。
なお、第2のローラ94aの各軸部98は、それぞれ、チャンバ91の壁部917,918に形成された各カム溝916に挿入されている。各カム溝916は、チャンバ91の各壁部917,918を貫通した貫通孔である。
【0078】
第3のローラ95は、第1のローラ93bや第2のローラ94bと同様に、チャンバ91に対する位置が固定されている。ただし、ローラ93b、94b、95はその軸部98に図示しないモータが接続されており、モータにより回転駆動可能に構成されている。このモータは、後述するモータ90と同様、チャンバ91の外部に配置されていてもよく、また、チャンバ91内部に配置されていてもよい。チャンバ91外部に配置される場合には、ローラ93b、94b、95の軸部98は、チャンバ91の壁部917,918を貫通する。
【0079】
また、図7、図11に示すように、第1のローラ93aは、ローラ93aを移動させるための移動手段であるリニアガイド99によりカム溝915に沿って円滑に移動することができる。この構成は、第2のローラ94aについても同様である。
【0080】
リニアガイド99は、ローラ93aの各端部側にそれぞれ配置されている。具体的には、ローラ93aの一方の軸部98側、他方の軸部98側にそれぞれ配置され、チャンバ91の対向する一対の壁部917,918の外側にそれぞれ配置されている。
リニアガイド99は、長尺な一対のガイドレール991と、ガイドレール991上を移動するスライダ(移動体)992とで構成されている。ガイドレール991は、チャンバ91に対し固定されている。一対のガイドレール991間には、ネジ軸993が配置されている。このネジ軸993の端部には、ネジ軸993を回転駆動するためのモータ994が接続されている。また、ネジ軸993には、スライダ992に設けられたナット995が螺合している。ネジ軸993とナット995とでボールネジ構造を構成しており、ネジ軸993を回転させることで、ナット995およびスライダ992がネジ軸993を直線移動することとなる。
【0081】
また、ローラ93aを移動させるための1対のリニアガイド99のうち、一方のリニアガイド99のスライダ992上には、第1のローラ93aが回転する際の駆動源としてのモータ90が固定されている。モータ90は、スライダ992が移動することで、第1のローラ93aとともに移動する。このモータ90は、第1のローラ93aの一方の軸部98と連結されている。そして、モータ90が作動することにより、第1のローラ93aが確実に回転する。
なお、他方のリニアガイド99のスライダ992上には、第1のローラ93aの軸部を回転可能に支持する軸受け(図示略)が配置されている。軸受けも、スライダ992が移動することで、第1のローラ93aとともに移動する。
【0082】
ガイドレール991およびネジ軸993は、カム溝915と平行に延在している。モータ994を駆動することで、ネジ軸993が回転し、ナット995およびスライダ992がネジ軸993上を移動する。これに伴い、ローラ93aの軸部98がカム溝915内を移動し、ローラ93aがチャンバ91内で移動することとなる。
【0083】
第2のローラ94aも、移動手段であるリニアガイド99によりカム溝916に沿って円滑に移動することができる。
第2のローラ94aの一方の軸部98は、リニアガイド99上のモータ90に連結されている。また、第2のローラ94aの他方の軸部98は、他方のリニアガイド99上の軸受け(図示略)に挿入されている。そして、リニアガイド99のガイドレール991およびネジ軸993は、カム溝916と平行に延在している。モータ994を駆動することで、ネジ軸993が回転し、ナット995およびスライダ992がネジ軸993上を移動する。これに伴い、ローラ94aの軸部98がカム溝916内を移動し、ローラ94aがチャンバ内で移動することとなる。
【0084】
ここで、本実施形態では、カム溝915、916は、チャンバ91の壁部917,918に形成されており、壁部917,918を貫通している。チャンバ91内部の温度変化を防止するために、図11,12に示すように、チャンバ91の壁部917,918外側には、カム溝915,916をそれぞれ閉鎖する被覆部材900が配置されている。図11は、チャンバ91の内部を上面側から見た図であり、図12はチャンバ91を側面側から見た図である。
【0085】
この被覆部材900は、カム溝915(916)の長手方向に沿って延在し、カム溝915(916)を完全に被覆している。被覆部材900には、ローラ93a(94a)の軸部98を通す貫通孔が形成されており、ローラ93b(94b)の軸部98は、カム溝915(916)、被覆部材900の貫通孔を介して、モータ90あるいは軸受けに接続されることとなる。被覆部材900の軸部98を通す貫通孔は、チャンバ91の壁部917(918)側からの側面視において、カム溝915(916)と重なるように形成される(図12参照)。
【0086】
被覆部材900は、その長手方向に沿った端部が、チャンバの壁部917(918)外側に設けられたレールRにはめ込まれている。このレールRは、カム溝915(916)の長手方向に沿って延在しており、被覆部材900は、レールR上を摺動する。
【0087】
このような被覆部材900を設けることで、カム溝915(916)が遮蔽されて、カム溝915(916)を介してチャンバ91の空気が外部に流出したり、外部の空気がチャンバ91内部に流入したりしてしまうことを防止できる。これにより、チャンバ91内部の温度を安定的に維持することができる。
【0088】
はじめに図11(a)、図12(a)に示すように、ローラ93a(94a)の軸部98は、カム溝915(916)の一方の端部側に位置している。
次に、モータ994を駆動すると、前述したように、ローラ93a(94a)の軸部98がカム溝915(916)内を移動する。これに伴って、図12(b)に示すように、被覆部材900がレールR上を摺動する。被覆部材900の長手方向の長さ(x軸方向の長さ)は、カム溝915(916)の長手方向の長さ(x軸方向の長さ)よりも長いため、ローラ93a(94a)が移動した場合であっても、カム溝915(916)を被覆することができる。
【0089】
そして、図11(b)、図12(c)に示すように、ローラ93a(94a)の軸部98がカム溝915(916)の他方の端部まで移動する。この状態においても、被覆部材900によりカム溝915(916)全体を被覆することができる。
【0090】
ここで、被覆部材900の材料としては特に限定されないが、被覆部材900は、チャンバ91と同様の金属等の材料で構成することができる。
なお、本実施形態では、被覆部材900は、チャンバ91の壁部917,918の外側に設けられ、外側からカム溝915(916)を被覆していたが、これに限らず、チャンバ91の壁部917,918の内側に被覆部材を設け、チャンバ91の内側からカム溝915(916)を被覆してもよい。
ただし、本実施形態のように、チャンバ91の外側に被覆部材900を設けた場合には、被覆部材900の壁部への取り付けが容易となる。
【0091】
以上のような構成の硬化炉9は、前述した移動手段により、ローラ93a、94aの少なくともいずれか一方を積層シート40(40A)の厚さ方向に移動させることで積層シートの通過経路の長さが可変となるように構成されている。
より詳細に説明すると、本実施形態では、第1のローラ93aと第1のローラ93bとの軸間距離と、第2のローラ94aと第2のローラ94bとの軸間距離と双方または片方を変更することにより、積層シート40がチャンバ91内を通過する際の通過経路の長さ(以下「経路長」と言う)、すなわち、チャンバ91内での積層シートの入口913から出口914までの全長が可変となる。
図2に示すように、第1のローラ93aおよび第2のローラ94aがそれぞれ図中の最も右側に位置する状態(この位置を「第1の位置」と言う)では、第1のローラ93aと第1のローラ93bとの軸間距離と、第2のローラ94aと第2のローラ94bとの軸間距離とがそれぞれ最大となり、経路長が最長となる。図3に示すように、第1のローラ93aおよび第2のローラ94aがそれぞれ図中の最も左側に位置する状態(この位置を「第2の位置」と言う)では、第1のローラ93aと第1のローラ93bとの軸間距離と、第2のローラ94aと第2のローラ94bとの軸間距離とがそれぞれ最小となり、経路長が最短となる。また、第1のローラ93a、第2のローラ94aは、それぞれ、第1の位置と第2の位置との間にも位置することができ、この場合、経路長は、最長と最短との中間の大きさとなる。
【0092】
このように、本実施形態では、移動不能なローラ93b、94bと、移動可能な第1のローラ93aおよび第2のローラ94aと、これらのローラを案内するカム溝915、916と、リニアガイド99とにより、経路長を可変にする経路長可変手段が構成されているということができる。本実施形態では、経路長可変手段は経路長を変更する変更手段である。
【0093】
ところで、樹脂層の組成によっては、硬化するまでの加熱時間が異なる場合がある。この場合、積層シートの搬送速度が一定であり、経路長も一定に規制されているのであれば、チャンバ91内での各樹脂層に対する加熱時間が変わらず、結果、硬化が不十分であったり、過剰に硬化したりする。たとえば、本実施形態のように、樹脂層の組成が異なる積層シート40、40Aを連続して形成し、加熱処理する場合、樹脂層の硬化に過不足が生じる。
【0094】
チャンバ91内での積層シートの搬送速度を変える、例えば、遅くしてしまうと、チャンバ91より上流側にある積層シートが滞ってしまい、当該滞った積層シートのための待機場所が必要となる。この場合、待機場所にある積層シート40では、各樹脂組成物の硬化が不本意に始まってしまうことがあり、チャンバ91に搬送される際の硬化度にばらつきが生じ、得られる積層シート40の品質が一定とならない。
【0095】
そこで、経路長を可変にすることにより、積層シートの搬送速度を一定にしたままで、チャンバ91内での各樹脂組成物に対する加熱時間を容易かつ確実に変更することができる。これにより、各樹脂層の組成に応じて適度に加熱することができ、よって、各樹脂層を過不足なく硬化することができる。
【0096】
例えば、硬化条件(加熱時間)の異なる樹脂組成物が積層された積層シート40、40Aを連続的に製造したい場合、積層シート40、40Aとが一連となった長尺な積層シートの搬送速度を一定に維持するように、チャンバ91内の各ローラの回転を制御しながら、経路長を可変して、その製造を容易に行なうこともできる。
この場合には、加熱装置30Bは、ローラ93a、94aを回転するためのモータ90および、ローラ93a、94aを移動させるためのモータ994の駆動を制御する制御部(図示略)を有する。作業者がローラ93a、94aを移動させるための信号を加熱装置30Bに入力すると、制御部がモータ90の駆動を停止せずに、ローラ93a、94aを移動させるためのモータ994を駆動させる。そして、図示しない検出手段でローラ93a、94aの位置を検出し、検出手段が検出した位置が所定の位置であるか否かを制御部が判断する。所定の位置であると判断した場合には、制御部は、モータ994の駆動を停止し、ローラ93a、94aの移動を停止する。所定の位置でないと判断した場合には、制御部は、モータ994の駆動を維持する。ただし、いずれの場合にも、制御部はローラ93a、94aを回転するモータ90の駆動は停止しない。
【0097】
図2、図3に示すように、カム溝915は、x軸方向において、第1のローラ93bに対し、x軸負側から正側に向かって延在している。すなわち、カム溝915は、図2、図3中の右側から第1のローラ93bを越えて、左側まで延在している。これにより、第1のローラ93aは、第1のローラ93bをまたぐように移動することができ、第1のローラ93aの可動範囲をできる限り大きく確保することができる。
ただし、ローラ93aは、ローラ93bよりも積層シート40Aの厚さ分だけ、x軸負側に移動可能となっており、チャンバ91内に供給される積層シート40(40A)は、ローラ93a、93bのいずれにも接触するようになっている。
【0098】
また、カム溝916も、x軸方向において、第2のローラ94bに対し、x軸負側から正側に向かって延在している。すなわち、カム溝916も、図中の右側から第2のローラ94bを越えて、左側まで延在している。これにより、第2のローラ94aは、第2のローラ94bをまたぐように移動することができ、第2のローラ94aの可動範囲をできる限り大きく確保することができる。
ただし、ローラ94aは、ローラ94bよりも積層シート40Aの厚さ分のみ、x軸負側に移動可能となっており、チャンバ91内に供給される積層シートは、ローラ94a、94bのいずれにも接触するようになっている。
【0099】
従って、経路長の可変量も大となり、多種の樹脂組成物に応じて、その加熱時間を最適な時間に調整することができる。また、チャンバ91を小型化、低コスト化できるという利点もある。
【0100】
また、前述したように、リニアガイド99を用いて第1のローラ93aや第2のローラ94aを移動させている。たとえば、あらかじめ、モータ994の駆動量を複数設定しておき(すなわち、ローラ93a、94aの配置位置を複数設定しておき)、モータ994の駆動量を適宜選択することで、ローラ93a、94aの移動距離を設定することができる。
また、あらかじめモータ994の駆動量を設定せずに、作業者がモータ994を駆動させて所望の位置に第1のローラ93aや第2のローラ94aを移動させることもできる。
【0101】
また、第1のローラ93aと第1のローラ93bとは、互いに大きさが同じものであり、第2のローラ94aと第2のローラ94bも互いに大きさが同じものである。本実施形態では、第1のローラ93a、93b、第2のローラ94a、94b、第3のローラ95は、互いに大きさが同じものである。これにより、経路長の長さがどの程度であるのかを容易に把握することができる。
【0102】
次に、積層シート製造装置30により積層シート40、40Aが製造される状態(製造過程)について、図1〜図3、図6を参照しつつ説明する。
【0103】
積層シート製造装置30の圧着装置30Aでは、第1のローラ71a、71bと、第2のローラ72a、72bと、第3のローラ73a、73bとが回転するのに先立ち、減圧手段8を作動させ、空間70内を減圧しておく。また、加熱装置30Bにおいては、ヒータ92を作動させてチャンバ91内を所定温度、すなわち、積層シート40、40Aの樹脂層3、3A、4、4Aが硬化する温度にまで加熱しておく。また、チャンバ91内での経路長を所定量、すなわち、積層シート40の樹脂層3,4が硬化するのに適した量に調整しておく。例えば、硬化炉9を図2に示す状態、図3に示す状態、または、図2と図3に示す状態との中間の状態のいずれかの状態にする。
本実施形態では、モータ994を駆動して、ネジ軸993を回転させ、スライダ992をガイドレール991上で摺動させる。スライダ992上に設置されたモータ90や軸受けに第一ローラ93aの軸部98が接続されているため、スライダ992の摺動に伴い、ローラ93aの軸部98が溝915内を移動する。そして、本実施形態では、図2に示すように、ローラ93aを溝915の一方の端部側に配置する。
同様に、モータ994を駆動して、ネジ軸993を回転させ、スライダ992をガイドレール991上で摺動させる。スライダ992上に設置されたモータ90や軸受けに第二ローラ94aの軸部98が接続されているため、スライダ992の摺動に伴い、ローラ94aの軸部が溝916内を移動する。そして、本実施形態では、図2に示すように、ローラ94aを溝916の一方の端部側に配置する。
【0104】
図1に示すように、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらのローラ間から繊維基材2が空間70内に送り出される(連続的に供給される)。繊維基材2は供給ローラに巻回されており、この供給ローラから連続的にローラ71a、71b間に供給される。
【0105】
また、第2のローラ72aと第3のローラ73aとが回転すると、これらのローラ間から第1のシート5aが空間70内に送り出される(連続的に供給される)。この第1のシート5aは、保護シート51が第3のローラ73aに巻き取られ(引張られ)、これにより、第1の樹脂層3から保護シート51が剥離される。保護シート51が剥離した第1の樹脂層3は、第2のローラ72aに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された保護シート51は、第1のローラ71aと第3のローラ73aとの間から外側(空間70外)に向かって送り出される。
【0106】
また、第2のローラ72bと第3のローラ73bとが回転すると、これらのローラ間から第2のシート5bが空間70内に送り出される。この第2のシート5bは、保護シート51が第3のローラ73bに巻き取られ、これにより、第2の樹脂層4から保護シート51が剥離される。保護シート51が剥離した第2の樹脂層4は、第2のローラ72bに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された保護シート51は、第1のローラ71bと第3のローラ73bとの間から外側に向かって送り出される。
【0107】
このように第1の樹脂層3および第2の樹脂層4がそれぞれ繊維基材2と圧着される直前(以前)に空間70内で保護シート51が剥離することができることにより、当該保護シート51が各樹脂層の圧着の邪魔になるのを防止することができるとともに、圧着直前まで保護シート51で各樹脂層を保護することができる。
【0108】
そして、繊維基材2と第1の樹脂層3と第2の樹脂層4とは、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間を一括して通過することとなる。このとき、図6に示すように、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間の圧接力(当接力)F1により、第1の樹脂層3が上側から繊維基材2と圧着されるとともに、第2の樹脂層4が下側から繊維基材2と圧着される。
【0109】
また、前述したように、空間70は、減圧手段8の作動により減圧されている。これにより、図6に示すように、空間70内に生じた減圧力F2が、繊維基材2と第1の樹脂層3との圧着と、繊維基材2と第2の樹脂層4との圧着とを補助することができる。
【0110】
このような圧接力F1による圧着と減圧力F2による圧着とが相まって、繊維基材2と第1の樹脂層3との接合と、繊維基材2と第2の樹脂層4との接合とが強化される。これにより、繊維基材2内部に樹脂層3,4を含浸させることができる。そして、例えば第1の樹脂層3や第2の樹脂層4の厚さや組成によらず、当該各樹脂層が繊維基材2に確実かつ強固に接合された積層シート40を製造することができる。
さらに、第2のローラ72aと第2のローラ72bを加熱ローラとすることで、樹脂層3,4を繊維基材2内部に確実に含浸させることができる。
【0111】
また、積層シート製造装置30では、減圧すべき空間を、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間70として、できる限り小さくすることができる。これにより、減圧手段8を作動させた際、その減圧を迅速に行なうことができる。また、高真空化も可能である。
【0112】
また、繊維基材2と第1の樹脂層3とが接合する際、これらの間に空気が溜まっていたとしても圧接力F1によりその空気を押し出すことができ、よって、空気が溜まったまま接合がなされてしまうのを確実に防止することができる(繊維基材2と第2の樹脂層4との接合時についても同様)。
【0113】
一対のローラ72a、72bから送り出された積層シート40は、図2に示すように、チャンバ91の入口913からチャンバ91内部に連続的に送り込まれることとなる。チャンバ内部のローラ93a、93b、94a、94b、95がモータにより回転することで、積層シート40はチャンバ91内部を移動する。そして、チャンバ91の出口914からチャンバ91外部に連続的に送り出される。
より具体的には、入口913から送り込まれた積層シート40は、ローラ93aにより、チャンバ91内での搬送方向が折り返され、ローラ93bに到達する。そしてローラ93bにより、チャンバ91内での搬送方向が折り返され、ローラ94aに到達する。次に、ローラ94aにより、チャンバ91内での搬送方向が折り返され、ローラ94bに到達する。さらにローラ94bにより、チャンバ91内での搬送方向が折り返され、ローラ95に到達し、出口914からチャンバ91外部に排出されることとなる。
積層シート40は、チャンバ91内で停止することなく、チャンバ91内を通過しながら、加熱され、樹脂層3,4の硬化が促進される。チャンバ91内での積層シート40の経路長が各樹脂層3,4の硬化に適した大きさとなっているため、当該硬化が過不足なく行なわれる。そして、チャンバ91から出た積層シート40は、各樹脂層3、4が適度に硬化したものとなる。
【0114】
次に、チャンバ91へ向けて積層シート40が搬送されている間に、圧着装置30Aに供給される樹脂層の種類を樹脂層3,4から樹脂層3A、4Aに変更する。これにより、圧着装置30Aのローラ72a、72b間からは積層シート40Aが送りされることとなる。なお、積層シート40Aは、積層シート40と、樹脂層の組成物が異なるが、その他の点は、積層シート40と同様である。この積層シート40Aは、積層シート40に連続して設けられる。たとえば、積層シート40の端部と、積層シート40Aの端部との間には、繊維基材2が露出した領域があり、この領域を介して、積層シート40と積層シート40Aとが接続されていてもよい。また、積層シート40の端部と積層シート40Aの端部とが接していてもよい。
積層シート40と積層シート40Aとは一連の連続した長尺な積層シートを構成することとなる。
一方で、前述した移動手段を駆動して、チャンバ91内のローラ93a、94aの配置を変更する。積層シート40および積層シート40Aを含んで構成される前述した一連の長尺な積層シートをローラ93b、94bに当接させた状態で、長尺な前記積層シートに当接しているローラ93a、94aの配置を変更する。
たとえば、積層シート40の搬送方向後端側の端部と積層シート40Aの端部との境界部分がチャンバ91の入口913に到達した段階、すなわち、積層シート40がチャンバ91内部に位置する状態で、積層シート40,40Aを搬送しながら、チャンバ91内のローラ93a、94aの配置を変更する。具体的には積層シート40とローラ93b、94bとを当接させた状態で、積層シート40に当接しているローラ93a、94aの配置を変更する。
なお、ローラ93a、94aの配置の変更のタイミングはこれに限らず、積層シート40Aがチャンバ91内部に入り、積層シート40Aとローラ93b、94bとを当接させた状態で、積層シート40Aに当接するローラ93a、94aの配置を変更してもよい。
さらには、積層シート40,40A間に、一定長さの繊維基材2のみの領域を形成し、この繊維基材2のみの領域をチャンバ91内に送り込み、チャンバ91内部に繊維基材2のみが存在する状態で、積層シート40,40Aを搬送しながら、ローラ93a、94aの配置変更を行なってもよい。
なお、積層シート40,40Aを含む一連の長尺な積層シートの搬送を停止させて、チャンバ内に長尺な前記積層シートの一部が位置する状態で、ローラ93a、94aの配置を変更してもよい。
【0115】
本実施形態では、図3に示すようなローラ93a、94aの配置とする。モータ994を駆動して、ネジ軸993を回転させ、スライダ992をガイドレール991上で摺動させる。スライダ992上に設置されたモータ90や軸受けに第一ローラ93aの軸部98それぞれが接続されているため、スライダ992の摺動に伴い、ローラ93aの軸部98が溝915内を移動する。これにより、ローラ93aは、チャンバ91内に位置しており、ローラ93aに当接している積層シート40の厚さ方向(本実施形態ではx軸方向)に沿って移動する。そして、図3に示すように、ローラ93aを溝915の他方の端部側に配置する。
なお、ローラ93aは、溝915の他方の端部側に移動するものの、ローラ93aが搬送する積層シート40Aがローラ93bに接触するようにローラ93aは移動する。これにより、積層シート40Aを確実に搬送することができる。
【0116】
同様に、モータ994を駆動して、ネジ軸993を回転させ、スライダ992をガイドレール991上で摺動させる。スライダ992上に設置されたモータ90や軸うけに第二ローラ94aの軸部98がそれぞれ接続されているため、スライダ992の摺動に伴い、ローラ94aの軸部が溝916内を移動する。これにより、ローラ94aは、チャンバ91内に位置し、ローラ94aに接触している積層シート40の厚さ方向(本実施形態ではx軸方向)に沿って移動する。そして、本実施形態では、図3に示すように、ローラ94aを溝916の他方の端部側に配置する。
【0117】
なお、ローラ94aは、溝916の他方の端部側に移動するものの、ローラ94aが搬送する積層シート40Aがローラ94bに接触できるようにローラ94aは移動する。これにより、積層シートを確実に搬送することができる。
【0118】
以上のようなローラ93a、94aの配置調整を行なう工程においては、チャンバ91を開くことなく、チャンバ91を閉じた状態で、ローラ93a、94aの位置を変更する。
各ローラが回転することで、入口913から積層シート40Aがチャンバ91内に連続的に送り込まれる。積層シート40Aは、ローラ93aにより搬送方向がx軸方向からy軸方向に変更され、ローラ93b、ローラ94aの順に当接する。そして、ローラ94bにより搬送方向がy軸方向からx軸方向に変更され、ローラ95により、出口914から連続的に排出されることとなる。
【0119】
積層シート40Aは、チャンバ91内で停止することなく、チャンバ91内を通過しながら加熱され、樹脂層3A,4Aの硬化が促進される。チャンバ91内での積層シート40Aの経路長が各樹脂層3A,4Aの硬化に適した大きさとなっているため、当該硬化が過不足なく行なわれる。そして、チャンバ91から出た積層シート40Aは、各樹脂層3A、4Aが適度に硬化したものとなる。
【0120】
本実施形態では、モータ994が外部に設けられているので、たとえ、モータ994を手動で駆動させる必要があったとしても、モータ994を駆動させてローラ93a、94aの位置を変更する際に、チャンバ91を開く必要がない。
そのため、チャンバ91内部の温度が変化してしまうことを防止でき、積層シート40に引き続き、迅速に積層シート40Aを加熱処理することができる。
【0121】
本実施形態では、リニアガイド99で構成される移動手段をチャンバ91外部に配置しているので、チャンバ91を小さくすることができる。これにより、チャンバ91内の温度を安定的に保つことが容易となる。
【0122】
また、本実施形態では、複数のローラ93a、93b、94a、94b、95のうち、積層シートの搬送方向下流側に配置される2つのローラ94b、95を、チャンバ91に対する位置が固定された固定ローラとしている。このようにすることで、チャンバ91からの積層シート40(40A)の排出位置を固定することができ、チャンバ91に形成する積層シート40(40A)の出口を一つとすることができる。これにより、チャンバ91内の温度安定性を高めることができる。
【0123】
さらに、本実施形態では、加熱装置30Bは、チャンバ91内を移動可能なローラを複数備えている。具体的には、チャンバ91内には、ローラ93a、94aが配置されている。このように、チャンバ91内を移動可能なローラを複数設けることで、チャンバ91内の積層シートの経路長を様々な距離に設定することができる。
【0124】
なお、加熱装置30Bにおいて、積層シート40、40Aが加熱されることで、樹脂層3,4(3A,4A)の繊維基材への含浸が進行してもよい。
【0125】
<基板>
次に、積層シート40を切断して構成されるプリプレグ1を用いた基板10について、図9を参照しつつ説明する。この図9に示す基板10は、積層体11と、この積層体11の両面に設けられた金属層12とを有している。
なお、ここでは、積層シート40を切断して構成されるプリプレグ1を用いた基板10について、説明するが、積層シート40Aを切断して同様の基板10を構成することもできる。
【0126】
積層体11は、第2の樹脂層4同士を内側にして配置された2つのプリプレグ1と、第2の樹脂層4同士間で挟持された内層回路基板13とを備える。
【0127】
内層回路基板13は、電気回路(図示せず)を備えた基板である。また、本実施形態では、第2の樹脂層4は、前述したような特性(可撓性)を有するため、内層回路基板13の少なくとも一部は、第2の樹脂層4に確実に埋め込まれる(埋設される)。
【0128】
金属層12は、配線部に加工される部分であり、例えば、銅箔、アルミ箔等の金属箔を積層体11に接合すること、銅、アルミニウムを積層体11の表面にメッキすること等により形成される。
【0129】
金属層12と第1の樹脂層3とのピール強度は、0.5kN/m以上であるのが好ましく、0.6kN/m以上であるのがより好ましい。これにより、金属層12を配線部に加工し、得られる半導体装置100(図10参照)における接続信頼性をより向上させることができる。
【0130】
このような基板10は、第1の樹脂層3上に金属層12を形成したプリプレグ1を2つ用意し、これらのプリプレグ1で内層回路基板13を挟持した状態で、例えば、真空プレス、常圧ラミネータおよび真空下で加熱加圧するラミネータを用いて積層する方法が挙げられる。真空プレスは、平板に挟んで通常のホットプレス機等で実施できる。このような装置としては、例えば、名機製作所社製の真空プレス、北川精機社製の真空プレス、ミカドテクノス社製の真空プレス等が挙げられる。また、ラミネータ装置としては、ニチゴー・モートン社製のバキュームアップリケーター、名機製作所社製の真空加圧式ラミネータ、日立テクノエンジニアリング社製の真空ロール式ドライコータ等のような市販の真空積層機、またはベルトプレス等が挙げられ、これらを用いて製造することができる。
【0131】
なお、基板10は、内層回路基板13が省略され、2つのプリプレグ1が第2の樹脂層4同士を直接接合してなる積層体を含むものであってもよく、金属層12が省略されたものであってもよい。
【0132】
<半導体装置>
次に、基板10を用いた半導体装置100について、図10を参照しつつ説明する。なお、図10中では、繊維基材2、内層回路基板13を省略して示し、第1の樹脂層3および第2の樹脂層4を一体として示してある。
【0133】
図10に示す半導体装置100は、多層基板200と、多層基板200の上面に設けられたパッド部300と、多層基板200の下面に設けられた配線部400と、パッド部300にバンプ501を接続することにより、多層基板200上に搭載された半導体素子500とを有している。
【0134】
多層基板200は、コア基板として設けられた基板10と、この基板10の上側に設けられた3つのプリプレグ1a、1b、1cと、基板10の下側に設けられた3つのプリプレグ1d、1e、1fとを備えている。プリプレグ1a〜1cをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番と、プリプレグ1d〜1fをそれぞれ構成する繊維基材2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4の基板10からの配置順番とは、同じとなっている。すなわち、プリプレグ1a〜1cとプリプレグ1d〜1fとは、互いに上下反転したもの同士となっている。
【0135】
また、多層基板200は、プリプレグ1aとプリプレグ1bとの間に設けられた回路部201aと、プリプレグ1bとプリプレグ1cとの間に設けられた回路部201bと、プリプレグ1dとプリプレグ1eとの間に設けられた回路部201dと、プリプレグ1eとプリプレグ1fとの間に設けられた回路部201eとを有している。
【0136】
さらに、多層基板200は、各プリプレグ1a〜1fをそれぞれ貫通して設けられ、隣接する回路部同士や、回路部とパッド部とを電気的に接続する導体部202とを備えている。
【0137】
基板10の各金属層12は、それぞれ、所定のパターンに加工され、当該加工された金属層12同士は、基板10を貫通して設けられた導体部203により電気的に接続されている。
【0138】
なお、半導体装置100(多層基板200)は、基板10の片面側に、4つ以上のプリプレグ1を設けるようにしてもよい。さらに、半導体装置100は、本発明のプリプレグ1以外のプリプレグを含んでいてもよい。
【0139】
以上、本発明の積層シート製造装置および積層シートを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、積層シート製造装置および積層シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0140】
また、積層シート製造装置は、図1に示す構成では一対の第3のローラが1組設置されているが、これに限定されず、例えば、2組以上設置されていてもよい。
【0141】
また、各第1のローラと各第2のローラと各第3のローラとは、図1に示す構成では互いに本体部の外径が異なっているが、これに限定されず、例えば、互いに本体部の外径が同一であってもよい。
【0142】
また、図2、図3では、移動するローラと、移動が規制されたローラとが2組図示されているが、組数はこれに限定されず、例えば、1組または3組以上であってもよい。
【0143】
また、積層シートは、図8に示す構成では繊維基材の両面にそれぞれ樹脂層が接合されたものであるが、これに限定されず、繊維基材の片面にのみ樹脂層が接合されたものであってもよい。このような構成の積層シートも積層シート製造装置で製造することができる。
【0144】
また、前記実施形態では、被覆部材900は、ローラの移動に伴って、レールR上を移動するとしたが、これに限られるものではない。たとえば、カム溝と略同じ長さの被覆部材を用意してもよい。この場合には、ローラの位置が確定した後、被覆部材をチャンバの壁部に取り付ける。ローラを移動させる際には、被覆部材をチャンバの壁部から取り外す。
【0145】
さらに、前記実施形態では、ローラ93a、94aはチャンバ91内を移動可能とされていたが、これに限られるものではない。図13に示すように、チャンバ91に複数の出口を設けることで、積層シートの経路長を変更可能な加熱装置としてもよい。図13(a)に示すように、ローラ93a、93b、94a、94b、95の順に積層シートを架け渡す。その後、積層シート40を搬送しながら加熱する。このときには、出口914から積層シート40を排出する。
次に、チャンバ91を開き、ローラ93a、93b、94aに積層シート40Aを架け渡し、積層シートの経路長を変更する。その後、図13(b)に示すように、積層シート40Aを搬送しながら加熱する。このときには、出口914Aから積層シート40Aを排出する。
この変形例においては、ローラ93a、93b、94a、94b、95と、複数の出口914,914Aとで経路長可変手段が構成されることとなる。
また、この変形例においては積層シート40、40Aは一連の連続したシートでなくてもよい。
さらに、前記実施形態においても、積層シート40,40Aを一連の連続したシートとしなくてもよい。
【0146】
さらに、前記実施形態では、加熱装置30Bにおいて、樹脂層の硬化を行なったが、これに限らず、加熱装置は樹脂層の乾燥を行なう乾燥であってもよい。
【0147】
また、前記実施形態では、積層シート40と、この積層シート40とは樹脂層の組成が異なる積層シート40Aとを加熱装置30Bで処理したが、これに限らず、積層シート40のみを加熱装置で処理してもよい。たとえば、図2に示すローラの配置で積層シート40のうち搬送方向上流側部分(第一の積層シート)を加熱処理した後、図3に示すローラの配置で積層シート40のうち搬送方向下流側部分(第二の積層シート)を加熱処理してもよい。このようにすることで、樹脂層の硬化度の異なる複数の領域を有する積層シートを連続的に製造することができる。
【0148】
また、前記実施形態では、チャンバ91内で積層シートが水平方向に搬送されていたが、これに限らず、チャンバ91内で垂直方向(鉛直方向)に沿って積層シートを搬送してもよい。たとえば、図2の壁部911をチャンバの底面側、壁部912をチャンバ91の上面側としてもよい。この場合には、ローラ93a、94aは鉛直方向に移動することとなる。
さらに、前記実施形態では、ローラ93a、94aはモータ90により回転駆動する搬送ローラであったが、これに限らず、積層シートの搬送に追従して回転する補助ローラ(従動ローラ)としてもよい。
【0149】
本発明は、以下の形態を含む。
(1)可撓性を有する帯状の基材と、該基材の片面または両面に供給された、液状または半固形状の樹脂組成物を加熱して積層シートを製造する積層シート製造装置であって、前記樹脂組成物が供給された状態の前記基材が通過するチャンバと、前記チャンバ内を加熱して、前記樹脂組成物の硬化を進める加熱手段と、前記基材が前記チャンバ内を通過する際、その通過経路の長さを可変にする経路長可変手段とを備えることを特徴とする積層シート製造装置。
(2)前記経路長可変手段は、前記チャンバ内に設置され、前記基材が架け渡され、搬送される少なくとも一対のローラを有し、前記一対のローラは、互いに接近・離間可能であり、その軸間距離を変更することにより、前記通過経路の長さが可変となるよう構成されている(1)に記載の積層シート製造装置。
(3)前記一対のローラのうちの一方のローラは、その前記チャンバに対する位置が固定され、他方のローラは、前記チャンバに対し移動可能に支持され、前記経路長可変手段は、前記他方のローラが移動する際に該他方のローラを案内するカム溝を有する(2)に記載の積層シート製造装置。
(4)前記軸間距離は、多段階または無段階に変更可能である(2)または(3)に記載の積層シート製造装置。
(5)前記一対のローラは、互いに大きさが同じものである(2)ないし(4)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
(6)前記加熱手段は、前記チャンバの壁部に内蔵されたヒータを有する(2)ないし(5)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
(7)前記樹脂組成物は、液状または半固形状態で前記基材に供給されるものであり、前記基材と前記樹脂組成物とを挟んで圧着させつつ、前記チャンバに向かって送り出す一対の供給用ローラをさらに備える(1)ないし(6)のいずれかに記載の積層シート製造装置。
この出願は、2011年7月22日に出願された日本特許出願2011−161020を基礎とする優先権を主張し、その開示をすべてここに取り込む。
【符号の説明】
【0150】
1 プリプレグ
1a プリプレグ
1d プリプレグ
1a プリプレグ
1b プリプレグ
1c プリプレグ
1d プリプレグ
1e プリプレグ
1f プリプレグ
2 繊維基材
3A,4A 樹脂層
3,4 樹脂層
5a シート
5b シート
6 ハウジング
8 減圧手段
9 硬化炉
10 基板
11 積層体
12 金属層
13 内層回路基板
20 境界
30A 圧着装置
30B 加熱装置
30 積層シート製造装置
31,41 含浸部
32 非含浸部
40 積層シート
40A 積層シート
42 非含浸部
51 保護シート
52 支持基材
61 壁部
62 シール材
70 空間
71a ローラ
71b ローラ
72a ローラ
72b ローラ
73a ローラ
73b ローラ
74 本体部
75 軸
81 ポンプ
82 接続管
90 モータ
91 チャンバ
92 ヒータ
93a ローラ
93b ローラ
94a ローラ
94b ローラ
95 ローラ
96 内部空間
97 本体部
98 軸部
99 リニアガイド
100 半導体装置
200 多層基板
201a 回路部
201b 回路部
201d 回路部
201e 回路部
202 導体部
203 導体部
300 パッド部
400 配線部
500 半導体素子
501 バンプ
611 開口部
612 凹部
741 外周面
900 被覆部材
911 壁部
912 壁部
913 入口
914 出口
914A 出口
915 カム溝
916 カム溝
917,918 壁部
971 外周面
991 ガイドレール
992 スライダ
993 ネジ軸
994 モータ
995 ナット
F1 圧接力
F2 減圧力
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する帯状の基材と、該基材の片面または両面に供給された、樹脂組成物とを備える積層シートを加熱して積層シートを製造する積層シート製造装置であって、
前記積層シートが通過するチャンバと、
前記チャンバ内を加熱して、前記積層シートを加熱する加熱手段と、
前記積層シートが前記チャンバ内を通過する際の通過経路の長さを可変にする経路長可変手段とを備えることを特徴とする積層シート製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層シート製造装置において、
前記樹脂組成物は、熱硬化性であり、
前記加熱手段は前記積層シートの前記樹脂組成物を加熱して硬化を進める積層シート製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層シート製造装置において、
前記基材は、無機織布または有機繊維基材である積層シート製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
前記経路長可変手段は、前記チャンバ内に配置された第一ローラと、
前記第一ローラを前記チャンバ内で移動させる移動手段とを備え、
当該積層シート製造装置は、前記積層シートが前記第一ローラに向けて搬送されるように構成されており、
前記経路長可変手段は、前記第一ローラ上における前記積層シートの前記搬送方向と交差する方向に、前記移動手段により前記第一ローラを移動させることで、前記積層シートの通過経路の長さを可変とする積層シート製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
前記経路長可変手段は、前記チャンバ内に配置され、前記積層シートに当接する第一ローラと、
前記第一ローラを前記チャンバ内で移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、前記チャンバ内に搬送された前記積層シートの前記第一ローラに当接している部分の厚さ方向に沿って、前記第一ローラを移動させ、
前記経路長可変手段は、前記移動手段により、前記第一ローラを前記積層シートの厚さ方向に移動させることで前記積層シートの通過経路の長さを可変とする積層シート製造装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の積層シート製造装置において、
前記経路長可変手段は、前記積層シートの一方の面に当接する前記第一ローラと、前記積層シートの他方の面に当接する第二ローラとを備え、
前記移動手段により、前記第一ローラを移動させることで、前記積層シートの一方の面に当接する前記第一ローラおよび前記積層シートの他方の面に当接する前記第二ローラ間の軸間距離が変更され、前記通過経路の長さが可変となるよう構成されている積層シート製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の積層シート製造装置において、
前記第二ローラは、前記第一ローラよりも、前記積層シートの搬送方向下流側に配置されており、
前記第二ローラは、前記チャンバに対する位置が固定されている積層シート製造装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
前記チャンバの壁部には、前記第一ローラの移動を案内するとともに、前記壁部を貫通した案内溝が形成されており、
前記経路長可変手段の前記移動手段は、前記チャンバの外部に配置されている積層シート製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の積層シート製造装置において、
前記移動手段は、
レールと、
このレール上に配置され、前記第一ローラに接続されたスライダと、
このスライダを前記レール上で移動させるためのモータとを備え、
前記モータにより、前記スライダを前記レール上で移動させることで、前記第一ローラが移動するように構成されている積層シート製造装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の積層シート製造装置において、
前記第一ローラは、積層シートに接する本体部と、この本体部に設けられた軸部とを有し、
前記軸部は前記案内溝を介して前記移動手段に接続され、
前記軸部が貫通するとともに、前記案内溝を前記壁部の外側あるいは内側から被覆する被覆部材を備える積層シート製造装置。
【請求項11】
請求項4乃至10のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
当該積層シート製造装置は、前記チャンバ内で前記積層シートを搬送しながら、前記積層シートに当接した前記第一ローラを前記移動手段により移動するように構成されている積層シート製造装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の積層シート製造装置において、
前記加熱手段は、前記積層シートを加熱して前記基材に前記樹脂組成物を含浸させるものである積層シート製造装置。
【請求項13】
前記樹脂組成物は、液状または半固形状態で前記基材に供給されるものであり、
前記基材と前記樹脂組成物とを挟んで圧着させつつ、前記チャンバに向かって送り出す一対の供給用ローラをさらに備える請求項1ないし12のいずれかに記載の積層シート製造装置。
【請求項14】
第一の積層シートと第二の積層シートとを備える積層シートの製造方法であって、
可撓性を有する帯状の無機織布または有機繊維基材である基材と、該基材の片面または両面に供給された樹脂組成物とを備える第一の積層シートを第一の通過経路の長さでチャンバ内を通過させながら加熱を行なう第一の加熱工程と、
可撓性を有する帯状の無機織布または有機繊維基材である基材と、該基材の片面または両面に供給された樹脂組成物とを備える第二の積層シートを前記第一の通過経路の長さと異なる第二の通過経路の長さで前記チャンバ内を通過させながら加熱を行なう第二の加熱工程とを含む積層シートの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の積層シートの製造方法であって、
前記第二の積層シートは、前記第一の積層シートに連続して設けられており、
前記第一の加熱工程と前記第二の加熱工程との間で、
前記チャンバを開かずに、前記チャンバ内に配置され、前記第一の積層シートあるいは前記第二の積層シートに当接している第一のローラを前記第一の積層シートあるいは前記第二の積層シートの厚さ方向に移動させて、通過経路の長さを前記第一の通過経路の長さから、第二の通過経路の長さに変更する工程を実施する積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−46997(P2013−46997A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161152(P2012−161152)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】