説明

積層壁紙およびその製造方法

【課題】
表面強度に優れ、汚れが付きにくく、汚れが落ちやすいといった表面特性と施工性に優れた積層壁紙を提供する。
【解決手段】
紙質基材1表面に発泡塩化ビニル樹脂層2を設け、この上にウレタン樹脂層3を設けたことを特徴とする積層壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面特性(表面強度、耐汚染性)と施工性に優れた積層壁紙およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パルプ等からなる紙質基材から構成された壁紙は、安価であるが、汚れやすく、表面強度が低いといった欠点があった。壁紙の耐汚染性と表面強度を改善するために、紙質基材にエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムを貼り合わせた、積層壁紙が広く用いられてきた。
【0003】
しかしながら、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルムを貼り合わせた積層壁紙は、汚れが付きにくく、汚れが落ちやすいといった耐汚染性に優れるが、製造工程での貼り合わせスピードが遅いため生産性が低く、商品特性としてカールしやすいため、施工性が低いといった欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述したような従来の積層壁紙の問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、表面強度に優れ、汚れが付きにくく、汚れが落ちやすいといった表面特性と施工性に優れた積層壁紙とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、発泡塩化ビニル樹脂層のうえにウレタン樹脂層を設ければよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下を要点とするものである。
(1) 紙質基材表面に発泡塩化ビニル樹脂層を設け、この上にウレタン樹脂層を設けたことを特徴とする積層壁紙。
(2) 紙質基材表面に熱分解型の発泡剤を含む塩化ビニル樹脂層を発泡剤の熱分解温度以下で形成し、その上に水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、発泡剤の熱分解温度以上で加熱して、熱分解型の発泡剤を発泡させ、水性ウレタン樹脂を乾燥固化させることを特徴とする積層壁紙の製造方法。
(3) 紙質基材表面に熱分解型の発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物をコーティングし熱分解温度以下で加熱乾燥させ、その上に水性ウレタン樹脂組成物を塗布して発泡剤の熱分解温度以下で加熱乾燥した後、発泡剤の熱分解温度以上で加熱して熱分解型の発泡剤を発泡させることを特徴とする積層壁紙の製造方法。
(4) 水性ウレタン樹脂層を艶消し処理することを特徴とする(2)または(3)に記載の積層壁紙の製造方法。
(5) さらにエンボス加工を施したことを特徴とする(2)ないし(4)のいずれか1項に記載の積層壁紙の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成を採用することにより、表面特性(表面強度、耐汚染性)と施工性に優れた積層壁紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の積層壁紙の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態につき説明する。図1は、本発明の積層壁紙の断面模式図である。図1において、1は紙質基材を、2は発泡塩化ビニル樹脂層を、3は水性ウレタン樹脂層を表す。
【0010】
以下、本発明の構成要件を説明する。
【0011】
本発明における紙質基材としては、特に限定されず、従来の壁紙裏打紙として知られているものが使用できる。例えば普通紙(木材セルロース成分集合体)などが挙げられる。紙質基材の坪量は特に限定的でないが、好ましくは、60g〜120g/m程度である。
【0012】
紙質基材の上に、発泡塩化ビニル樹脂層を形成するには、熱分解型発泡剤を含む軟質塩化ビニル樹脂組成物をカレンダーロールによりシート状に加熱成形して、紙質基材上に熱分解型発泡剤を含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を貼り合わせるか、熱分解型発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物をコーターでコーティングすればよい。
【0013】
カレンダーロールによる方法の場合、カレンダー加工は熱分解型発泡剤が分解発泡する温度以下で行い、後述するように、水性ウレタン樹脂組成物を塗布し加熱乾燥した後、熱分解型発泡剤が発泡する温度以上に加熱し、紙質基材のうえに発泡塩化ビニル樹脂層を形成する。カレンダー加工温度は配合する熱分解型発泡剤の種類により異なるが、例えば120℃〜150℃の範囲で行えばよい。
【0014】
コーティング法の場合は、コーティング液(ペースト状塩化ビニル樹脂組成物)の塗布物のセット温度は熱分解型発泡剤の分解発泡する温度以下で行い、後述するように水性ウレタン樹脂組成物を塗布し加熱乾燥させた後、熱分解型発泡剤が発泡する温度以上に加熱し、紙質基材上に発泡塩化ビニル樹脂層を形成させる。
【0015】
熱分解型発泡剤を含む塩化ビニル樹脂層の厚みは、限定的ではないが0.1〜0.3mmの間で適宜選択すればよい。
【0016】
熱分解型発泡剤を含む塩化ビニル樹脂組成物としては、塩化ビニル樹脂、安定剤、滑剤等の助剤、熱分解型発泡剤、着色剤、充填剤、可塑剤からなる組成物を挙げることができる。
【0017】
熱分解型発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物としては、塩化ビニル樹脂、安定剤、滑剤等の助剤、熱分解型発泡剤、着色剤、充填剤、希釈剤からなる組成物を挙げることができる。
【0018】
本発明で用いる安定剤、助剤、着色剤、充填剤、よび可塑剤は、塩化ビニル樹脂の加工に常用されている成分であればその種類と配合量は特に限定されない。希釈剤とは、コーティング液の粘度調整のために用い、通常粘度15±5dPasになるように配合する者であり、ノルマルパラフィンを挙げることができる。
【0019】
発泡樹脂層に含まれる発泡剤として、熱分解型発泡剤が好ましい。例えば、アゾジカルボンアミドが挙げられる。
【0020】
紙質基材上に熱分解型発泡剤を含む塩化ビニル樹脂層を形成した後、塩化ビニル樹脂層の表面に水性ウレタン樹脂組成物を塗布する。
【0021】
水性ウレタン樹脂組成物とは、ポリウレタンを乳化剤で乳化したエマルジョンや、ポリウレタンを変性して水溶性を付与した変性ポリウレタンの水溶液などを挙げられるが、ポリウレタンが水中に乳化、分散または溶解したものであればよい。
【0022】
水性ウレタン樹脂組成物を塩化ビニル樹脂層に塗布するには、噴霧法、ブラッシング法、コーターを用いる方法、印刷機を用いる方法が挙げられる。特に印刷機を用いる方法が、塗布の効率化および既存設備の利用ができる点で好ましい。
【0023】
水性ウレタン樹脂は、5〜15g/mとなるように塗布し、110℃〜130℃、好ましくは120℃で電気炉で乾燥することにより水性ウレタン樹脂層を形成させる。
【0024】
さらに、水性ウレタン樹脂層に水性艶消し剤を塗布し、艶消し処理をすることも好ましい。艶消し処理をすることにより、デザインの多様性に対応することが可能となる。
【0025】
水性艶消し剤としては、例えば、塩化ビニル系重合体エマルジョン(シリカ含有)が挙げられる。
【0026】
次いで、原反を熱分解型発泡剤が熱分解する温度以上に加熱して、塩化ビニル樹脂組成物に含まれた熱分解型発泡剤を分解発泡させる。熱分解型発泡剤を発泡させるには、最終加熱温度が200〜250℃となるように加熱する。
【0027】
最後に、必要に応じて発泡原反にエンボス加工を行う。発泡した原反を再度加熱し、任意の凹凸模様が付与されたロールに押し当て加圧、賦形後、冷却すればよい。
【0028】
実施例1
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示した塩化ビニル樹脂組成物をミキサーで混合し、押出機でゲル化を進めた後、ミキシングロールを経由して混練物をカレンダーロールへ供給し、ロール温度135℃で、厚さ0.12mmのシート状に成形し、紙質基材(普通紙)上に塩化ビニル樹脂組成物を貼り合わせ、巻き取った。
【0031】
水性ウレタン樹脂組成物(三芳化学株式会社製、商品名:SFB−H080307)を水性グラビア印刷機で、塩化ビニル樹脂層へ全面印刷して炉内乾燥後、水性艶消し剤(日信化学工業株式会社製、商品名:ビニブラン)を水性ウレタン樹脂表面へ印刷し、炉内乾燥した。乾燥温度は120℃であった。
【0032】
次いで、入口温度70℃、出口温度250℃に設定した加熱炉により加熱し、発泡剤を発泡させた。
【0033】
さらに、エンボスロール圧力6〜8kg/cm、エンボスロール温度40〜60℃、エンボステンション30〜50kgでエンボス加工した。
【0034】
実施例2
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示したペースト状塩化ビニル樹脂組成物をミキサーで混合し、コーターで紙質基材(普通紙)にコーティングした(200g/m)。コーティング後、連続的に135〜165℃で加熱セットして巻き取った。
【0037】
水性ウレタン樹脂組成物(三芳化学株式会社製、商品名:SFB−H080307)を水性グラビア印刷機で、塩化ビニル樹脂層へ全面印刷して炉内乾燥後、水性艶消し剤(日信化学工業株式会社製、商品名:ビニブラン)を水性ウレタン樹脂表面へ印刷し、炉内乾燥した。乾燥温度は120℃であった。
【0038】
次いで、入口温度70℃、出口温度220℃に設定した加熱炉により加熱し、発泡剤を発泡させた。
【0039】
さらに、エンボスロール圧力6〜8kg/cm、エンボスロール温度40〜60℃、エンボステンション30〜50kgでエンボス加工した。
【0040】
比較例1
紙質基材上に塩化ビニル樹脂層のみを設けた壁紙を比較例とした。
【0041】
実施例3
実施例1、2で調製した積層壁紙と比較例1の紙質基材上に塩化ビニル樹脂層のみを設けた壁紙を、汚れ防止性と耐摩耗性を測定し、その結果を表3、表4に示した。
【0042】
なお汚れ防止試験は、壁紙工業会発行の汚れ防止壁紙性能規定に従った。また、耐摩耗性試験はJIS A6921に基づくものである。
【0043】
(汚れ防止試験)
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
表3及び表4に示した結果より明らかなとおり、本発明の壁紙は、ウレタンを塗装していない壁紙と比して、汚れ防止性と耐摩耗性に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の壁紙は、表面特性(表面強度、耐汚染性)と施工性に優れ、有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 紙質基材
2 発泡塩化ビニル樹脂層
3 水性ウレタン樹脂層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材表面に発泡塩化ビニル樹脂層を設け、この上にウレタン樹脂層を設けたことを特徴とする積層壁紙。
【請求項2】
紙質基材表面に熱分解型の発泡剤を含む塩化ビニル樹脂層を発泡剤の熱分解温度以下で形成し、その上に水性ウレタン樹脂組成物を塗布して発泡剤の熱分解温度以下で加熱乾燥した後、発泡剤の熱分解温度以上で加熱して熱分解型の発泡剤を発泡させることを特徴とする積層壁紙の製造方法。
【請求項3】
紙質基材表面に熱分解型の発泡剤を含むペースト状塩化ビニル樹脂組成物をコーティングし熱分解温度以下で加熱乾燥させ、その上に水性ウレタン樹脂組成物を塗布して発泡剤の熱分解温度以下で加熱乾燥した後、発泡剤の熱分解温度以上で加熱して熱分解型の発泡剤を発泡させることを特徴とする積層壁紙の製造方法。
【請求項4】
水性ウレタン樹脂層を艶消し処理することを特徴とする請求項2または3に記載の積層壁紙の製造方法。
【請求項5】
さらにエンボス加工を施したことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の積層壁紙の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180521(P2010−180521A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105213(P2009−105213)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510065713)日本ピー・アール・オー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】