説明

穴明け加工機における加工不良防止方法

【課題】 レーザ加工機においてプリント基板に穴明け加工を行う際の加工不良を防止することである。
【解決手段】 テーブル13上に載置された被加工物12に穴明け加工を行う際の加工不良防止方法において、テーブル13上における被加工物12が載置される位置に予めマーク17を設け、テーブル13上に被加工物12を載置する前に、マーク17が視認できるか否かを確認することによってテーブル13上の被加工物12の有無を判別し、被加工物12を重ねて載置することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に穴明け加工を行う穴明け加工機における、被加工物の意図しない重ね加工による加工不良の防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化の進展により、プリント基板(ワーク)等においても高密度化、小型化、多層化が進んでいる。従って、例えばプリント基板のスルーホールおよびブラインドホール(ビアホール)の生産性に優れ且つ高精度な穴明け加工が要求されている。スルーホールはドリルにより、ブラインドホールはレーザにより穴明け加工することが一般的である。
【0003】
レーザ穴明け加工を行うためのレーザ加工機は、XYテーブル上に被加工物であるプリント基板を供給するワーク搬入装置(ローダ)と、穴明け加工が終了したプリント基板をXYテーブル上から回収するワーク搬出装置(アンローダ)とを備えている。
【0004】
特許文献1には、板状のワークを、ワーク移載手段によって第1のワーク載置部から第2のワーク載置部に移載し、第2のワーク載置部に載置されたワークが1枚であるか否かをワーク厚みによって検知し、ワークが複数枚載置されている場合には、1枚になるまで余分なワークを第1のワーク載置部に移載する板状ワーク供給装置を備えたレーザ加工装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3819197号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
XYテーブル上にプリント基板が既に載置された状態で、ワーク搬入装置からXYテーブル上にさらにプリント基板を供給してしまうことがある。例えば特許文献1に開示されたレーザ加工装置においては、ワークをXYテーブルに搬入する前にXYテーブル上に既にワークが載置されているか否かを確認していない。
【0007】
本発明の目的は、穴明け加工機において、XYテーブルへのプリント基板供給の動作前に、XYテーブル上のプリント基板の有無を検出することによって、プリント基板を重ねて載置することを防止する加工不良防止法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるテーブル上に載置された被加工物に穴明け加工を行う際の加工不良防止方法は、前記テーブル上における前記被加工物が載置される位置に予めマークを設け、前記テーブル上に前記被加工物を載置する前に、前記マークが視認できるか否かを確認することによって前記テーブル上の被加工物の有無を判別し、前記被加工物を重ねて載置することを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
穴明け加工機におけるプリント基板の意図しない重ね加工による加工不良を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るレーザ加工機の構成図である。レーザ加工機は、機械装置部14、NC装置部5、ワーク搬入装置15およびワーク搬出装置16から構成されている。NC装置部5は、CRT1、キーボード2、演算装置3および記憶装置4等から構成されている。記憶装置4には、予め加工条件や加工プログラム等が入力されている。また、記憶装置4には、加工ロットにおいてセットした基板枚数、加工した基板枚数および不良基板枚数(不良基板ラックに搬出された基板枚数)が記憶される。機械装置部14は、レーザ発振器6、レーザ発振器6から発振されたレーザ光の強度等を変化させるための波形整形装置7、プリント基板12のアライメントマークおよび加工穴等を撮像するためのカメラ9、照明8、レーザ発振器6から発振されたレーザビームをプリント基板12の加工部に導くための光学系(ガルバノミラー10、fθレンズ11)などから構成されている。また、ワーク搬出装置16は、その内部に加工済みラック(図示せず)と不良基板ラック(図示せず)とを有している。
【0011】
図2は、本実施例におけるレーザ加工機の加工不良防止方法を実施する為の概略構成図である。ここで、図1と同じ構成のものについては同じ参照番号を付している。光源19は、照明8の照度調整を行う。検出マーク17がXYテーブル13上に設けられおり、当該検出マーク17は、XYテーブル13上にプリント基板12が載置されているか否かを判定するために用いられる。すなわち、検出マーク17は、XYテーブル13において被加工物であるプリント基板12が必ずその上に載置されるような位置に設けられる。また、検出マーク17のXYテーブル13表面からの高さは、当該表面と同じであるか或いは僅かに低くしても良い。画像処理装置18は、カメラ9によって撮像された検出マーク17の中心のXY座標を求める。また、画像処理装置18は、NC装置5に接続されている。本実施例において、検出マーク17の中心のXY座標は、レーザ加工機の機械座標系に基づいて示される。
【0012】
図3は、XYテーブル13の平面図である。XYテーブル13には、例えばφ3−4mmの吸着用の穴として用いられる貫通穴が一面に設けられており、XYテーブル13上に載置されたプリント基板12は、吸着によりXYテーブル13に固定される。本実施例においては、この貫通穴の1つを検出マークとして定める。
【0013】
図4、図5は、本実施例におけるレーザ加工機の加工不良防止方法を示すフローチャートである。
まず、図4に基づいて説明する。
プリント基板12を、ワーク搬入装置15内部のラック(図示せず)にセットする(S100)。ここでは、一枚ずつ加工されるプリント基板の複数枚がラックにセットされ、当該複数枚のプリント基板をまとめて1加工ロットと称する。加工ロットにおいてセットされる複数枚のプリント基板は同一加工条件で加工される。その後、NC装置5において検出マーク17の設定を行う(S105)。当該設定においては、検出マーク17の中心のXY座標値、検出マーク17の形状、色(黒または白)およびサイズ等の設定を行う。本実施例において使用する検出マーク17である貫通穴の色は黒として認識される。ステップ105において設定されたデータは、画像処理装置18に送られる。次に、加工プログラムおよび加工条件ファイルを呼び出した後(S110)、レーザ加工機のスタート釦をONする(S115)。加工プログラムには、その加工ロットにおける加工穴の中心のXY座標情報が含まれている。次に、XYテーブル13を移動させて、検出マーク17の中心にカメラ9の光軸を位置決めした後(S120)、カメラ9で検出マーク17を撮像し(S125)、画像処理装置18に記憶されている検出マーク17のデータと照合して検出マーク17が視認できるか否かを確認する(S130)。
【0014】
カメラ9によって検出マーク17が検出されない場合にはXYテーブル13上に基板があると判定され、検出マーク17が検出された場合にはXYテーブル13上に基板がないと判定される。検出マーク17が視認できるか否かを判定するためのXYテーブル13の移動量が小さくなるような位置に検出マーク17を設けることによって、加工能率が更に向上する。
【0015】
検出マーク17が視認できない場合は、XYテーブル13上に既に載置された基板があるので、図5におけるステップ200の処理を行う。検出マーク17が視認できる場合は、ワーク搬入装置15のラックからXYテーブル13上に未加工のプリント基板12を搬入して載置し(S135)、プリント基板の加工を行う(S140)。当該加工終了後、加工済みプリント基板をワーク搬出装置16内部の加工済みラックに搬出する(S145)。次に、ワーク搬入装置15のラックに未加工プリント基板が残っているか否かを確認し(S150)、未加工基板が残っている場合にはステップ135の処理を行い、未加工基板が残っていない場合には、次の加工ロットがあるか否かを確認する(S155)。次の加工ロットがある場合には、ステップ100の処理を行い、次の加工ロットがない場合には加工を終了する。
【0016】
次に、図5に基づいてステップ200〜ステップ255の処理を説明する。ここで、本実施例のレーザ加工機においては、電源を切った場合でも、直前の加工ロットの加工プログラム、加工条件がNC装置部5の記憶装置4に記憶され、直前の加工ロットにおける最初の(1穴目の)加工穴および最後の加工穴の中心のXY座標を呼び出すことが可能である。ここでは、最初の加工穴および最後の加工穴の中心のXY座標はレーザ加工機の機械座標系に基づいて示される。
【0017】
ワーク搬入装置15のラックから、次にXYテーブル13に搬入されるべきプリント基板12が、当該ラックの1枚目の(最初の)基板であるか否かをNC装置5によって確認する(S200)。ラックの1枚目の基板でない場合には、XYテーブル13を移動させて、現在の加工ロットにおける最初の加工穴の中心のXY座標にカメラ9の光軸を位置決めした後(S205)、カメラ9で当該最初の加工穴を撮像し(S210)、XYテーブル13上に載置されている基板において最初の加工穴が視認できるか否かを確認する(S215)。最初の加工穴が視認できない場合には、図4におけるステップ140の処理が行われる。最初の加工穴が視認できる場合には、XYテーブル13を移動させて、最後の加工穴の中心のXY座標にカメラ9の光軸を位置決めした後(S220)、カメラ9で当該最後の加工穴を撮像し(S225)、最後の加工穴が視認できるか否かを確認する(S230)。最後の加工穴が有ることを確認した場合には、XYテーブル13上に載置されている基板は良品であると判定され、図4におけるステップ145の処理が行われる。最後の加工穴が無いことを確認した場合には、XYテーブル13上に載置されている基板は不良品であると判定され、ワーク搬出装置16内部の不良基板ラックにプリント基板を搬出した後(S235)、図4におけるステップ150の処理を行う。
【0018】
ステップ200において、ラックの1枚目の加工である場合、すなわち加工ロットの1枚目の加工である場合には、XYテーブル13上に載置されているプリント基板12は、前の加工ロットにおいてラックにセットされた基板であると考えられる。従って、前の加工ロットにおける最初の加工穴の中心のXY座標を記憶装置4から呼び出し、XYテーブル13を移動させて、カメラ9の光軸を当該呼び出されたXY座標に合わせる(S240)。次に、前の加工ロットにおける最初の加工穴をカメラ9で撮像し(S245)、最初の加工穴が視認できるか否かを確認する(S250)。最初の加工穴が視認できる場合には、ステップ235の処理を行う。最初の加工穴が視認できない場合には、前の加工ロットの加工プログラム、加工条件を呼び出して穴明け加工を行った後(S255)、ステップ235の処理を行う。
【0019】
図5において、ステップ250からステップ235への処理によってワーク搬出装置16の不良基板ラックに搬出された基板の中には、最後の加工穴の穴明けが終了しており、良品とみなされる基板も搬出される。また、ステップ255からステップ235への処理によってワーク搬出装置16の不良基板ラックに搬出された基板は良品である。すなわち、前の加工ロットにおける良品が、現加工ロットにおいて、ワーク搬出装置16の不良基板ラックに搬出される。ここでは、現加工ロットのプリント基板と前の加工ロットのプリント基板とが加工済みラックにおいて混在するのを防ぐために、前の加工ロットにおける良品が不良基板ラックに搬出される。オペレータは、不良基板ラックに搬出された基板の中から良品を選択し、前の加工ロットの加工済み基板と合わせることが可能である。
【0020】
本願の実施例においては、検出マーク17をXYテーブル13における1つの貫通穴に定めたが、加工ロット毎に、異なる位置の吸着用の穴として用いられる貫通穴を検出マーク17として使用することとしても良い。
【0021】
また、本願の実施例においては、検出マーク17としてXYテーブル13の貫通穴を使用したが、これに限定されるものではなく、XYテーブル13上にマークを別途に設け、当該マークを検出マーク17として使用しても良い。
【0022】
さらに、本願の実施例においてはレーザ加工機を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他の穴明け加工機においても応用できることは言うまでもない。
【0023】
本発明に係るレーザ加工機における加工不良防止方法によれば、これから加工するプリント基板をXYテーブル上に載置する前に、XYテーブル上に別のプリント基板が載置されているか否かを確認するから、プリント基板が複数枚重なった状態で加工が行われることを防止することができる。結果として、歩留まりが高く、生産性に優れた加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るレーザ加工機の概略構成図である。
【図2】本発明に係るレーザ加工機における加工不良防止方法を実施するための概略構成図である。
【図3】本発明に係るレーザ加工機におけるXYテーブルの上面図である。
【図4】本発明に係る加工不良防止方法のフローチャートである。
【図5】本発明に係る加工不良防止方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
4 記憶装置
5 NC装置
9 カメラ
12 プリント基板
13 XYテーブル
15 ワーク搬入装置
16 ワーク搬出装置
17 検出マーク
18 画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に載置された被加工物に穴明け加工を行う際の加工不良防止方法において、
前記テーブル上における前記被加工物が載置される位置に、その上面が前記テーブルの表面以下になるようにしたマークを予め設け、
前記テーブル上に前記被加工物を載置する前に、前記マークが視認できるか否かを確認し、
前記マークが視認できる場合には、前記被加工物を前記テーブル上に載置して穴明け加工を行い、
前記マークが視認できない場合には、前記被加工物の前記テーブル上への載置を行わず、前記テーブル上に載置されている被加工物の処理を行うことを特徴とする加工不良防止方法。
【請求項2】
同一加工条件で1枚ずつ加工する被加工物を複数枚まとめて1加工ロットとし、当該1加工ロット毎に加工条件を定めて加工を行う場合、前記マークが視認できない場合における前記テーブル上に載置されている被加工物の処理は、
次に搬入しようとする被加工物が現在の加工ロットにおける何枚目であるかを確認し、
次に搬入しようとする被加工物が、前記現在の加工ロットにおける2枚目以降である場合は、現在の加工条件における最初の加工穴を観測し、
前記最初の加工穴が視認できない場合には、前記テーブル上に載置された被加工物を前記現在の加工条件で加工を行い、
前記最初の加工穴が視認できる場合には、前記テーブル上に載置された被加工物を搬出する、
ことを特徴とする請求項1記載の加工不良防止方法。
【請求項3】
請求項2において前記最初の加工穴が視認できる場合には、前記現在の加工条件における最後の加工穴を観測し、
前記最後の加工穴が視認できない場合には、前記テーブル上に載置された被加工物が不良品であると、また、前記最後の加工穴が視認できる場合には、前記テーブル上に載置された被加工物が良品であると、それぞれ判定して、前記テーブル上から搬出する、
ことを特徴とする請求項2記載の加工不良防止方法。
【請求項4】
同一加工条件で1枚ずつ加工する被加工物を複数枚まとめて1加工ロットとし、当該1加工ロット毎に加工条件を定めて加工を行う場合、現在の加工ロットにおいて、直前の加工ロットにおける加工条件、穴明け加工の最初および最後の加工穴の穴位置座標を記憶させておき、
前記マークが視認できない場合における前記テーブル上に載置されている被加工物の処理は、
次に搬入しようとする被加工物が、前記現在の加工ロットにおける1枚目である場合は、直前の加工ロットの加工条件における最初の加工穴を観測し、
前記最初の加工穴が視認できない場合には、前記直前の加工ロットの加工条件で前記テーブル上に載置されている被加工物の加工を行い、
前記最初の加工穴が視認できる場合には、前記テーブル上に載置されている被加工物を前記テーブル上から搬出する、
ことを特徴とする請求項1記載の加工不良防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119541(P2009−119541A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293946(P2007−293946)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】