空気入りタイヤ
【課題】サイドウォール表面に存在する凹凸を十分に目立たなくさせることができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤのサイドウォール部は、周りの領域と視認可能に識別される模様を有する。この模様は、タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成る。複数の線状部のそれぞれは、前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有する。複数の傾斜模様部のそれぞれは、前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられる。
【解決手段】空気入りタイヤのサイドウォール部は、周りの領域と視認可能に識別される模様を有する。この模様は、タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成る。複数の線状部のそれぞれは、前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有する。複数の傾斜模様部のそれぞれは、前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤにおいて、軽量化、低転がり抵抗化を達成するために、サイドウォールの厚さ(以下、サイドゲージともいう)を薄くすることが行われている。しかし、サイドゲージを薄くすると、サイドウォール表面に外観不良が高い確率で発生する傾向がある。この外観不良は、タイヤの耐久性や他の運動性能では悪影響を与えないものであるが、ユーザに、タイヤの耐久性や他の運動性能が低い不良品ではないか、との心配を与える。
【0003】
具体的には、タイヤ製造時の成型工程において、シート状のカーカス部材がタイヤ成型ドラム上で一周巻き回され、巻き始め端と巻き終わり端とが一部重なってジョイントされる。このため、重なった部分の厚さが厚くなって、この部分が最終的なタイヤにおいてサイドウォール表面に凹凸となって現れる。特に、カーカス部材が1枚用いられるラジアルタイヤでは、この凹凸が顕著に目立つ。
【0004】
一方、タイヤのサイドウォール表面に生じる凹凸を目立たなくする空気入りタイヤが知られている(特許文献1)。
上記空気入りタイヤの外表面にタイヤ周方向に帯状に延びる装飾部には、所定のピッチでタイヤ径方向に延びるように配置された複数のリッジから成る、第1リッジ群及び第2リッジ群が形成される。第1リッジ群の各リッジと第2リッジ群の各リッジとが交差することにより形成されたモアレ模様によって、サイドウォール表面に存在する凹凸を目立たなくさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−37388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、サイドウォール表面に存在する凹凸を目立たなくさせる空気入りタイヤについては、前記特許文献に記載された技術の他にも様々な工夫がなされており、当該凹凸を十分に目立たなくさせるために、技術や工夫の更なる改善がもとめられている。
【0007】
そこで、本発明は、サイドウォール表面に存在する凹凸を十分に目立たなくさせることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤである。
当該空気入りタイヤは、
サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有し、
前記模様は、
タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成り、
前記複数の線状部のそれぞれは、
前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有し、
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、
前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられている。
【0009】
前記複数の線状部の前記方向Bにおける間隔は周期的に変動する、ことが好ましい。
また、前記複数の傾斜模様部の前記方向Aにおける長さは周期的に変動する、ことが好ましい。
【0010】
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有する四角形状の複数の微小領域の一辺を前記方向Aに沿って配置して、前記複数の微小領域を前記方向Aに沿って段状に配置することにより形成され、
前記サイドウォール表面のうち前記模様を除く部分の表面粗さをRaとし、前記複数の傾斜模様部のうち第1傾斜模様部の表面粗さをRa1とし、第1傾斜模様部と前記方向Aに隣り合う第2傾斜模様部の表面粗さをRa2としたとき、前記表面粗さRaは、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有する、ことが好ましい。
【0011】
前記複数の微小領域は、前記サイドウォール表面をみたとき、互いに点接触又は線接触している、ことが好ましい。
また、前記第1傾斜模様部の表面粗さRa1と第2傾斜模様部の表面粗さRa2との差は、前記複数の線状部毎に異なるとともに、前記方向Bに沿って周期的に変動する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様の空気入りタイヤによれば、サイドウォール表面に存在する凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部の表面を示した図である。
【図2】第1実施形態の空気入りタイヤの一部を示す半断面図である。
【図3】タイヤのサイドウォール表面に現れる凹凸の原因となるカーカス部材の重なりを説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。
【図5】(a),(b)は、線状部の断面の一例を示す図である。
【図6】(a),(b)は、線状部に施される微小凹凸の一例を説明する図である。
【図7】第2実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部の表面を示した図である。
【図8】(a)〜(c)は、第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の線状部を説明する図である。
【図9】(a),(b)は、第2実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。
【図10】(a),(b)は、図9に示した模様の他の例を説明する図である。
【図11】(a),(b)は、図8に示した線状部の他の例を説明する図である。
【図12】第3実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【図13】第4実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【図14】第5実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明する。以降で記載するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸の周りにトレッド部を回転させたときのトレッド部の回転方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸から放射状に延びる方向をいう。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)1のサイドウォール部3(図2参照)の表面を示した図である。図1では、トレッド部2は、一点鎖線の円弧で表され、ビード部4は、一点鎖線の円弧で表されている。
【0016】
タイヤ1は、図2に示すように、トレッド部2と、サイドウォール部3と、ビード部4と、カーカス層5と、ベルト層6とを有する。図2は、タイヤ1の一部を示す半断面図である。この他に、図示されないが、タイヤ1は、インナライナ層等を有する。また、ビード部4は、ビードコア7を有する。サイドウォール部3及びビード部4は、トレッド部2を挟むようにタイヤ幅方向の両側に配されて対を成している。
【0017】
サイドウォール部3には、図1に示されるように、サイド模様表示領域3aと標章表示領域(図示省略)とがタイヤ周上に設けられている。標章表示領域は、タイヤの製品名、ブランド名、タイヤ製造業者名、さらには、サイズ等の文字、記号、あるいは数字等が記載されている。標章表示領域の周りには、サイド模様表示領域3aが標章表示領域を取り囲むように設けられている。以下で説明するサイド模様表示領域3aは、タイヤ1の幅方向一方のサイドウォール部3に設けられてもよいし、タイヤ1の幅方向両側のサイドウォール部3に設けられてもよい。
【0018】
サイドウォール表面のサイド模様表示領域3aは、サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有する。この模様は、図1に示すように、タイヤ径方向に沿って延びる複数の線状部10を有し、各線状部10を、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔D(図4(b),(c)に示す)をあけて設けることにより形成されている。
このような模様を設けるのは、タイヤ1を見た者が、当該模様によって錯視を受けることで、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるためである。サイドウォール表面に現れる凹凸とは、例えば、図3に示されるように、カーカス層5の巻き終わり端5aが巻き始め端5bと、部分5cで重なることにより、タイヤ径方向に沿って段差ができることに起因して形成されたものである。
【0019】
次に、図4を参照して、サイド模様表示領域3aの模様の詳細について説明する。図4(a)〜(c)は、サイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。なお、以降の図示では、タイヤ径方向及びタイヤ周方向を紙面の縦方向及び横方向に対応させて便宜上図示するが、タイヤ径方向及びタイヤ周方向は、上述した定義により定まる方向である。
図4(a)に示すように、線状部10は、直線部11と、複数の傾斜模様部12とを有している。直線部11及び複数の傾斜模様部12は、後述するように、サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別されるように形成されている。線状部10のタイヤ径方向の長さは、サイド模様表示領域3aのタイヤ径方向の長さに応じて適宜設定してもよく、例えば、サイド模様表示領域3aのタイヤ径方向の長さの30〜80%であることが好ましい。また、線状部10のタイヤ周方向の幅Wは、例えば、1.0〜5.0mmであることが好ましい。
直線部11は、タイヤ径方向に沿って直線状に延びるように形成されている。複数の傾斜模様部12のそれぞれは、2つの端部12a,12bを有し、直線部11の延びる方向、すなわちタイヤ径方向に対して傾斜する方向に直線状に延びるように形成されている。なお、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、直線状に形成されることに限られず、例えば曲線状や波線状等に形成されていてもよい。また、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、中心部において直線部11と交差するように設けられている。さらに、図4(a)に示すように、複数の傾斜模様部12のそれぞれと直線部11とがなす鋭角θの絶対値は、0°より大きく、且つ、45°以下であることが好ましい。また、本実施形態のタイヤ1では、複数の傾斜模様部12のそれぞれの幅(傾斜方向に直交する方向の幅)は、直線部11のタイヤ周方向の幅と同一に形成されているが、直線部11のタイヤ周方向の幅よりも小さく、あるいは大きく形成されてもよい。また、複数の傾斜模様部12は、タイヤ径方向に対する傾斜方向が互いに同一になるように設けられてもよいし、例えば図4(b),(c)に示すように、タイヤ径方向に対する傾斜方向が、所定数の傾斜模様部12毎にタイヤ周方向に反転するように設けられてもよい。ここで、傾斜方向がタイヤ周方向に反転するとは、傾斜方向がタイヤ径方向に対して線対称の方向になることをいう。具体的に説明すると、図4(b),(c)に示す模様では、タイヤ径方向を上下方向としたとき、1つの線状部10において、上から1番目〜6番目の傾斜模様部12の傾斜方向が右下に傾く方向になっているが、上から7番目〜12番目の傾斜模様部12の傾斜方向が、右下に傾く方向からタイヤ径方向に対して線対称の方向、すなわち左下に傾く方向になっている。
また、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、図4(a)に示すように、タイヤ周方向の一方の側の端部12aがタイヤ径方向に揃うとともに、タイヤ周方向の他方の側の端部12bがタイヤ径方向に揃うように設けられている。ここで、「揃う」とは、複数の傾斜模様部12のそれぞれのタイヤ周方向の一方の側の端部12aのうち少なくとも2つの端部12aを結ぶ線(あるいは複数の傾斜模様部12のそれぞれのタイヤ周方向の他方の側の端部12bのうち少なくとも2つの端部12bを結ぶ線)と、タイヤ径方向に延びる直線(図4(a)において破線で示す)とがなす鋭角の絶対値が10°以下であることをいい、当該絶対値が0°であることも含まれる。
【0020】
次に、図4(b),(c)を参照して、複数の線状部10間の関係について説明する。各線状部10は、前述したように、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔Dをあけて設けられている。なお、間隔Dは、タイヤ回転軸を中心とした一定の見込み角に従って、タイヤ径方向の位置に応じて変化する。また、間隔Dは、1つの線状部10における複数の傾斜模様部12のタイヤ周方向の他方の側の端部12bと、当該線状部10とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10における複数の傾斜模様部12のタイヤ周方向の一方の側の端部12aとの間のタイヤ周方向の距離を表している。間隔Dは、タイヤ径方向の同じ位置における線状部10のタイヤ周方向の幅Wよりも大きく形成されていることが好ましい。また、図4(b),(c)に示すように、線状部10の複数の傾斜模様部12のそれぞれは、タイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10に設けられた傾斜模様部12との間で、タイヤ径方向の一方の側の端部12aがタイヤ周方向に揃うとともに、タイヤ径方向の他方の側の端部12bがタイヤ周方向に揃うように設けられている。
また、1つの線状部10の1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とは、図4(b)に示すように、互いに同一であってもよいし、図4(c)に示すように、互いにタイヤ周方向に反転してもよい。なお、線状部10の複数の傾斜模様部12のそれぞれの傾斜方向が互いに同一である場合には、当該複数の傾斜模様部12と、当該線状部10とタイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10の複数の傾斜模様部12の傾斜方向とは、互いにタイヤ周方向に反転することが好ましい。
【0021】
図5(a),(b)は、線状部10の断面の一例を示す図である。図5(a),(b)に示す例では、線状部10の表面が凹凸を有することにより、線状部10を含む模様が、周りの領域と視認可能に識別されるようになっている。
図5(a)に示すように、模様が突起で形成される場合には、線状部10の直線部11及び複数の傾斜模様部12が、サイドウォール表面から突出するように設けられる。また、図5(b)に示すように、模様が溝で形成される場合には、線状部10の直線部11及び複数の傾斜模様部12が、サイドウォール表面から凹むように設けられる。模様が突起で形成された場合における線状部10のサイドウォール表面に対する高さ、あるいは模様が溝で形成された場合における線状部10のサイドウォール表面に対する深さは、見る者に効果的な錯視を与えて、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるために、0.3mm〜3.0mmであることが好ましい。
なお、線状部10のサイドウォール表面に対する高さ、あるいは深さは、複数の線状部10毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
図6(a),(b)は、線状部10の表面の好ましい形態を説明する図である。線状部10が突起あるいは溝で形成されているか否かにかかわらず、線状部10の表面、すなわち直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面は、一方向に配列した複数のリッジを用いてセレーション加工が施された微細凹凸面により構成されてもよい。このとき、直線部11及び複数の傾斜模様部12のセレーション加工では、図6(a),(b)に示すように、リッジの密度が同一であることが好ましい。これにより、直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面に入射した光は拡散反射する、あるいは拡散反射の程度が線状部10の周囲に比べて高くなる。したがって、線状部10の表面で拡散反射して、見る者の視野に入る光の光量は、線状部10の周囲から到来し、見る者の視野に入る光の光量に比べて少ない。このため、線状部10は、線状部10の周囲に対して黒く見え、線状部10の周囲に対してより効果的に視認可能に識別することができる。この場合、直線部11及び複数の傾斜模様部12におけるリッジの密度は、例えば1本/mm〜2本/mmである。
また、リッジを多数設けることにより、タイヤ製造段階の加硫工程で空気溜りを発生し難くできるので、外観不良の発生率を低下させることができる。
【0023】
本実施形態では、サイドウォール表面に表面凹凸を設けることにより直線部11及び複数の傾斜模様部12が形成されるが、サイドウォール表面に表面凹凸を設けることなく、異なるセレーション加工が施されることによって差異が生じる光の反射特性を利用して、線状部10を視認可能に識別する構成を用いることもできる。反射特性は、拡散反射による反射の差異を利用する場合の他、異なる反射の向きを利用する場合も含まれる。例えば、直線部11及び複数の傾斜模様部12を平滑面とし、平滑面の向きを傾斜させ、この向きを線状部10の周囲の表面の向きと異ならせる。
なお、線状部10が突起あるいは溝で形成されている場合には、直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面にセレーション加工が施されなくてもよい。
【0024】
以上のように構成された複数の線状部10をタイヤ周方向に間隔Dをあけて設けることにより、図4(a)、さらには図4(b)あるいは図4(c)に示す模様が形成される。ここで、複数の線状部10のそれぞれには、複数の傾斜模様部12が直線部11に対して重なるように設けられているので、複数の線状部10のそれぞれが、タイヤ周方向に傾斜して見えるような知覚が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。具体的に説明すると、図4(b)に示すように、1つの線状部10における1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とが同一になっている場合には、線状部10がタイヤ周方向に波打つように見える錯視効果が得られる。また、図4(c)に示すように、1つの線状部10における1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とがタイヤ周方向に反転する場合には、タイヤ周方向に隣り合う2つの線状部10間の一部が開口しているように見える錯視効果が得られる。なお、複数の線状部10それぞれの全ての傾斜模様部12の傾斜方向が同一の場合でも、複数の線状部10がタイヤ周方向に傾斜して見えるような知覚が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
このため、本実施形態のタイヤ1では、タイヤ1のサイドウォール表面を見た者に対して、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。また、本実施形態のタイヤ1では、直線部11と複数の傾斜模様部12とを有する複数の線状部10が、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔をあけて設けられている、という簡易な構成で模様を形成することができるので、例えば、それぞれ複数のリッジからなる第1リッジ群と第2リッジ群とをタイヤ周方向に亘って互いに交差させることによりモアレ模様を形成する従来の技術の場合と比べて、サイドウォール表面の加工範囲を小さくするとともに、加工内容を容易にすることができる。
【0025】
なお、サイド模様表示領域3aの模様は、タイヤ周方向に沿って互いに同一方向に延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向に間隔をあけて設けることにより形成されてもよい。この場合、線状部の複数の傾斜模様部のそれぞれは、タイヤ径方向の一方の側の端がタイヤ周方向に揃うとともに、タイヤ径方向の他方の側の端がタイヤ周方向に揃うように設けられている。また、線状部の複数の傾斜模様部のそれぞれは、タイヤ径方向に隣り合う他の線状部に設けられた傾斜模様部との間で、タイヤ周方向の一方の側の端がタイヤ径方向に揃うとともに、タイヤ周方向の他方の側の端がタイヤ径方向に揃うように設けられる。
【0026】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のタイヤ1のサイドウォール部3の表面を示した図である。
第2実施形態のタイヤ1の構成は、図2に示す第1実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第2実施形態のタイヤ1が第1実施形態のタイヤ1と異なる点は、線状部20を構成する複数の傾斜模様部21,22(図8参照)のそれぞれが、四角形状の複数の微小領域で形成されている点にある。この微小領域は、表面粗さによって反射特性が異なることで、周囲の領域に対して、傾斜模様部21,22が視認可能となった領域である。したがって、図7〜図14では、異なる反射特性を、白、黒、灰色等の濃淡で表している。
【0027】
図8(a)〜(c)を参照して、線状部20について具体的に説明する。線状部20は、複数の第1傾斜模様部21と、複数の第2傾斜模様部22とを有し、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とをタイヤ径方向に沿って交互に配置することにより、タイヤ径方向に延びるように形成されている。第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、四角形状の複数(本実施形態では3つ)の微小領域の一辺をタイヤ径方向に沿って配置することにより形成されている。ここで、四角形状とは、例えば、正方形や長方形等のように4つの辺からなる形状をいうが、当該4つの辺によって形成される4つの角部が湾曲あるいは斜めに面取りされた形状も含まれる。また、当該4つの辺の全てが直線であってもよいし、少なくとも一つの辺が曲線であってもよい。さらに、各微小領域は、タイヤ径方向の長さHがタイヤ周方向の幅W1よりも大きく形成されていることが好ましい。具体的には、タイヤ径方向の長さHは、例えば、W1<H≦3×W1の範囲内に形成されていることが好ましい。
なお、各微小領域は、第1実施形態の直線部11及び複数の傾斜模様部12と同様に、突起あるいは溝によって形成されてもよいし、セレーション加工が施されることによって形成されてもよい。
【0028】
図8(a)に示すように、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれを構成する3つの微小領域は、タイヤ径方向に互いに隣接して一列に配置されている。すなわち、サイドウォール表面の法線方向に沿ってサイドウォール表面をみたとき、上記3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域は、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に線接触している。
また、サイドウォール表面の法線方向に沿ってサイドウォール表面をみたとき、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とは、タイヤ径方向に互いに線接触している。具体的に説明すると、図8(a)に示すように、第2傾斜模様部22の3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域には、当該第2傾斜模様部22とタイヤ径方向に隣り合う第1傾斜模様部21の3つの微小領域のうち、タイヤ径方向外側あるいはタイヤ径方向内側に位置する微小領域が線接触している。一方、図8(b),(c)に示すように、第1傾斜模様部21の3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域には、当該第1傾斜模様部21とタイヤ径方向に隣り合う第2傾斜模様部22の3つの微小領域のうち、タイヤ径方向外側あるいはタイヤ径方向内側に位置する微小領域が線接触している。
さらに、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、3つの微小領域がタイヤ径方向に沿って段状に配置されていることにより、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されている。具体的に説明すると、3つの微小領域のうちタイヤ径方向外側(図8(a)において上側)に位置する微小領域と、3つの微小領域のうちタイヤ径方向内側(図8(a)において下側)に位置する微小領域とは、3つの微小領域のうち中央に位置する微小領域に対してタイヤ周方向にずれるように配置されている。この場合、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、図8(b)に示すように、タイヤ径方向に対して傾斜する直線Aに沿って延びるように形成されてもよいし、図8(c)に示すように、折れ線Bあるいは折れ線Cに沿って延びるように形成されてもよい。ここで、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれの傾斜角度θの絶対値は、0°より大きく、且つ、45°以下であることが好ましい。ここで、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれの傾斜角度θについて、図8(a)に示した第2傾斜模様部22を参照して説明すると、傾斜角度θとは、第2傾斜模様部22の3つの微小領域のそれぞれを構成する角部のうち第2傾斜模様部22の中心部からタイヤ径方向及びタイヤ周方向に最も離れて位置する角部と当該中心部とを結ぶ線と、当該中心部を通りタイヤ径方向と平行に延びる線とがなす鋭角の角度をいう。
【0029】
また、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれを構成する3つの微小領域は、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有するように形成されている。さらに、本実施形態のタイヤ1では、サイドウォール表面のうち模様を除く部分が所定の表面粗さを有するように形成されている。ここで、表面粗さとは、JIS B 0601にて規定されている算術平均粗さをいう。
本実施形態において、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるためには、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さをRaとし、第1傾斜模様部21の表面粗さをRa1とし、第2傾斜模様部22の表面粗さをRa2としたとき、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有することが好ましい。第1傾斜模様部21の表面粗さRa1は、例えば、3000〜8000μmであることが好ましい。また、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さRaは、例えば、800〜2500μmであることが好ましい。さらに、第2傾斜模様部22の表面粗さRa1は、例えば、250〜600μmであることが好ましい。
【0030】
以上のように構成された複数の線状部20をタイヤ周方向に間隔をあけて設けることにより、図9(a)に示す模様が形成される。この模様では、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とをタイヤ径方向に沿って交互に設ける際に、第2傾斜模様部22の傾斜態様を変更している。この場合、第1傾斜模様部21が所定数(図9(a)に示す例では2つ)設けられる毎に、第1傾斜模様部21の傾斜方向がタイヤ周方向に反転する。この場合、複数の線状部20がタイヤ周方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
このため、本実施形態のタイヤ1では、タイヤ1のサイドウォール表面を見た者に対して、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
また、図9(b)に示すように、それぞれタイヤ周方向に延びる複数の線状部20を、タイヤ径方向に間隔をあけて設けてもよい。この場合には、複数の線状部20がタイヤ径方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
【0031】
次に、図10を参照して、図9に示した模様の他の例について説明する。図10(a),(b)は、図9に示した模様の他の例を説明する図である。
図10(a),(b)に示す模様は、タイヤ径方向に沿って互いに同一方向に延びる複数の線状部20を、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔をあけて設けることにより形成されている。また、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20との間では、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22の傾斜方向がタイヤ周方向に反転している。
図10(a)に示す模様では、1つの線状部20の第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22が、互いに同一方向に傾斜するように設けられている。この場合、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20とが、タイヤ径方向に近接あるいは離間するように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。これにより、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
また、図10(b)に示す模様では、1つの線状部20は、2つの第1傾斜模様部21がタイヤ径方向に沿って設けられる毎に第1傾斜模様部21の傾斜方向がタイヤ周方向に反転するように設けられている。この場合、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20との間の一部が開口するように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。これにより、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
なお、図10(a),(b)に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替え、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20を用いて、上記と同様に模様を構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られる。
【0032】
次に、図11を参照して、図8に示した線状部20の他の例について説明する。図11(a),(b)は、図8に示した線状部20の他の例を説明する図である。
図8(a)に示した例では、3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域が、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に線接触していたが、図11(a)に示すように、3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域が、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に点接触するように設けられてもよい。この場合、図11(b)に示すように、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20を、タイヤ径方向に間隔をあけて設けた場合には、図9(b)に示した模様と同様に、複数の線状部20がタイヤ径方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。したがって、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
なお、微小領域が点接触している場合と比べて錯視効果が向上するという点において、微小領域は線接触していることが好ましい。
【0033】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第3実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第3実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図12に示すように、タイヤ径方向に延びる複数の線状部20のタイヤ周方向における間隔D1,D2,D3,D4が、タイヤ径方向の同じ位置において周期的に変動する点にある。
【0034】
図12を参照して具体的に説明すると、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣り合う他の線状部20との間隔は、線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、D1、D2、D3、D4の順に小さくなり、その後、D4、D3、D2、D1の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。間隔D1,D2,D3,D4の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。また、1つの線状部20のタイヤ周方向の幅Wと、複数の線状部20間の間隔D1,D2,D3,D4とは、例えば、W<D1<D2<D3<D4≦5×Wという関係を有していることが好ましい。
この場合、図12に示す模様は、各線状部20間で間隔が最大となる間隔D1となる位置において、錯視の効果によって、立体的に浮き上がるように見える。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、図12に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20のタイヤ径方向における間隔が周期的に変動するように構成した場合であっても、立体的な錯視効果が得られることから、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。また、第1実施形態の複数の線状部10間の間隔を周期的に変動させた場合にも、上記と同様の錯視効果が得られる。
【0035】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第4実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第4実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図13に示すように、複数の第1傾斜模様部21のタイヤ周方向における長さが周期的に変動する点にある。
【0036】
図13を参照して具体的に説明すると、第1傾斜模様部21を構成する3つの縮小領域を含む複数(図13に示す例では6つ)の縮小領域のうちタイヤ周方向に連続して並ぶ4つの縮小領域のタイヤ周方向の長さをλ1,λ2,λ3としたとき、当該長さλ1,λ2,λ3は、λ1、λ2、λ3の順に小さくなり、その後、λ3、λ2、λ1の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。この場合、複数の縮小領域に含まれる第1傾斜模様部21のタイヤ周方向における長さは、当該長さλ1,λ2,λ3の変動に応じて周期的に変動する。ここで、当該長さλ1,λ2,λ3の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。
この場合、図13に示す模様は、タイヤ周方向に連続して並ぶ4つの縮小領域のタイヤ周方向の長さが最小値λ3となる位置において、線状部20がタイヤ径方向に凹むように見えるとともに、当該長さが最大値λ1となる位置において、線状部20がタイヤ径方向に突出するように見えるという錯視効果が得られる。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、複数の第2傾斜模様部22それぞれのタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られる。
また、図13に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、タイヤ径方向に延びる複数の線状部20を用いて模様を形成したとき、第1傾斜模様部21あるいは第2傾斜模様部22のタイヤ径方向の長さが周期的に変動するように構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られることから、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
【0037】
(第5実施形態)
図14は、第5実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第5実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第5実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図14に示すように、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が、複数の線状部20毎に異なるとともに、タイヤ周方向に沿って周期的に変動する点にある。
【0038】
図14を参照して具体的に説明すると、1つの線状部20において、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と、第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差をRa3としたとき、当該差Ra3は、2つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、大、中、小の順に小さくなり、その後、小、中、大の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。当該差Ra3の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。
この場合、図14に示す模様では、表面粗さの差Ra3が異なる位置毎に線状部20の錯視効果が異なる。具体的には、表面粗さの差Ra3の小さい線状部20と比べて、表面粗さの差Ra3の大きい線状部20がより浮き上がって見えるという錯視効果が得られる。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、本実施形態では、2つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、表面粗さの差Ra3が変動する場合について説明したが、1つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、表面粗さの差Ra3が変動するように構成してもよい。
また、図14に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、複数の線状部20がタイヤ径方向に間隔をおいて設けられる場合には、表面粗さの差Ra3がタイヤ径方向に沿って周期的に変動するように構成してもよい。
また、表面粗さの差Ra3の変動と同期するように複数の線状部20間の間隔D1,D2,D3,D4を変動させてもよい。具体的には、表面粗さの差Ra3が最小となる位置における複数の線状部20間の間隔を最小あるいは最大とし、表面粗さの差Ra3が最大となる位置における複数の線状部20間の間隔が最大あるいは最小となるように構成してもよい。この場合、模様によって得られる立体的な錯視効果がより顕著となる。
【0039】
(実施例)
本実施形態の効果を調べるために、サイドウォール表面の模様を種々変化させて、図2に示すタイヤ1(タイヤサイズ:145R12 6PR)を作製した。作製したタイヤを100人が観察し、実際にサイドウォール表面に存在する、カーカス層5が重なった部分5eに起因して生じる凹凸(以降、BPSスプライス凹凸という)の視認性の評価をした。
【0040】
評価結果として下記評点を用いた。
・評点110:95%以上の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点108:90%以上95%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点106:80%以上90%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点104:70%以上80%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点102:60%以上70%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点100:50%以上60%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点97:50%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
【0041】
評価に用いたサイドウォール表面と、評価結果を下記表に示す。
なお、比較例は、サイド模様表示領域3aがないタイヤである。実施例1では、サイド模様表示領域3aに、複数の線状部20からなる第2の実施形態の模様を設けた。
実施例2では、それぞれタイヤ径方向に延びる複数の線状部20をタイヤ周方向に間隔をあけて設け、各線状部20間のタイヤ周方向の間隔が周期的に変動するように形成した。
また、実施例3では、それぞれタイヤ周方向に延びる複数の線状部20をタイヤ径方向に間隔をあけて設け、第1傾斜模様部21のタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように形成した。
さらに、実施例4〜6では、模様を除く部分の表面粗さRa、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1及び第2傾斜模様部22の表面粗さRa2の大小関係がそれぞれ異なるように形成した。
さらにまた、実施例7では、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が周期的に変動するように形成した。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例、実施例1の比較より、線状部20を有する模様を設けることにより、評価結果が向上することがわかる。これは、複数の線状部20で構成される模様による錯視の効果によるといえる。
また、実施例1,2の比較より、各線状部20間のタイヤ周方向の間隔が周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
さらに、実施例2,3の比較より、第1傾斜模様部21のタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
さらにまた、実施例3〜6の比較より、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さをRaとし、第1傾斜模様部21の表面粗さをRa1とし、第2傾斜模様部22の表面粗さをRa2としたとき、表面粗さRaがRa1>Ra>Ra2となる関係を有するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
また、実施例6,7の比較より、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
【0044】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3a サイド模様表示領域
4 ビード部
5 カーカス層
6 ベルト層
10,20 線状部
11 直線部
12 傾斜模様部
21 第1傾斜模様部
22 第2傾斜模様部
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤにおいて、軽量化、低転がり抵抗化を達成するために、サイドウォールの厚さ(以下、サイドゲージともいう)を薄くすることが行われている。しかし、サイドゲージを薄くすると、サイドウォール表面に外観不良が高い確率で発生する傾向がある。この外観不良は、タイヤの耐久性や他の運動性能では悪影響を与えないものであるが、ユーザに、タイヤの耐久性や他の運動性能が低い不良品ではないか、との心配を与える。
【0003】
具体的には、タイヤ製造時の成型工程において、シート状のカーカス部材がタイヤ成型ドラム上で一周巻き回され、巻き始め端と巻き終わり端とが一部重なってジョイントされる。このため、重なった部分の厚さが厚くなって、この部分が最終的なタイヤにおいてサイドウォール表面に凹凸となって現れる。特に、カーカス部材が1枚用いられるラジアルタイヤでは、この凹凸が顕著に目立つ。
【0004】
一方、タイヤのサイドウォール表面に生じる凹凸を目立たなくする空気入りタイヤが知られている(特許文献1)。
上記空気入りタイヤの外表面にタイヤ周方向に帯状に延びる装飾部には、所定のピッチでタイヤ径方向に延びるように配置された複数のリッジから成る、第1リッジ群及び第2リッジ群が形成される。第1リッジ群の各リッジと第2リッジ群の各リッジとが交差することにより形成されたモアレ模様によって、サイドウォール表面に存在する凹凸を目立たなくさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−37388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、サイドウォール表面に存在する凹凸を目立たなくさせる空気入りタイヤについては、前記特許文献に記載された技術の他にも様々な工夫がなされており、当該凹凸を十分に目立たなくさせるために、技術や工夫の更なる改善がもとめられている。
【0007】
そこで、本発明は、サイドウォール表面に存在する凹凸を十分に目立たなくさせることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤである。
当該空気入りタイヤは、
サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有し、
前記模様は、
タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成り、
前記複数の線状部のそれぞれは、
前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有し、
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、
前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられている。
【0009】
前記複数の線状部の前記方向Bにおける間隔は周期的に変動する、ことが好ましい。
また、前記複数の傾斜模様部の前記方向Aにおける長さは周期的に変動する、ことが好ましい。
【0010】
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有する四角形状の複数の微小領域の一辺を前記方向Aに沿って配置して、前記複数の微小領域を前記方向Aに沿って段状に配置することにより形成され、
前記サイドウォール表面のうち前記模様を除く部分の表面粗さをRaとし、前記複数の傾斜模様部のうち第1傾斜模様部の表面粗さをRa1とし、第1傾斜模様部と前記方向Aに隣り合う第2傾斜模様部の表面粗さをRa2としたとき、前記表面粗さRaは、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有する、ことが好ましい。
【0011】
前記複数の微小領域は、前記サイドウォール表面をみたとき、互いに点接触又は線接触している、ことが好ましい。
また、前記第1傾斜模様部の表面粗さRa1と第2傾斜模様部の表面粗さRa2との差は、前記複数の線状部毎に異なるとともに、前記方向Bに沿って周期的に変動する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記態様の空気入りタイヤによれば、サイドウォール表面に存在する凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部の表面を示した図である。
【図2】第1実施形態の空気入りタイヤの一部を示す半断面図である。
【図3】タイヤのサイドウォール表面に現れる凹凸の原因となるカーカス部材の重なりを説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。
【図5】(a),(b)は、線状部の断面の一例を示す図である。
【図6】(a),(b)は、線状部に施される微小凹凸の一例を説明する図である。
【図7】第2実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部の表面を示した図である。
【図8】(a)〜(c)は、第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の線状部を説明する図である。
【図9】(a),(b)は、第2実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。
【図10】(a),(b)は、図9に示した模様の他の例を説明する図である。
【図11】(a),(b)は、図8に示した線状部の他の例を説明する図である。
【図12】第3実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【図13】第4実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【図14】第5実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール表面に形成される模様の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明する。以降で記載するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸の周りにトレッド部を回転させたときのトレッド部の回転方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸から放射状に延びる方向をいう。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)1のサイドウォール部3(図2参照)の表面を示した図である。図1では、トレッド部2は、一点鎖線の円弧で表され、ビード部4は、一点鎖線の円弧で表されている。
【0016】
タイヤ1は、図2に示すように、トレッド部2と、サイドウォール部3と、ビード部4と、カーカス層5と、ベルト層6とを有する。図2は、タイヤ1の一部を示す半断面図である。この他に、図示されないが、タイヤ1は、インナライナ層等を有する。また、ビード部4は、ビードコア7を有する。サイドウォール部3及びビード部4は、トレッド部2を挟むようにタイヤ幅方向の両側に配されて対を成している。
【0017】
サイドウォール部3には、図1に示されるように、サイド模様表示領域3aと標章表示領域(図示省略)とがタイヤ周上に設けられている。標章表示領域は、タイヤの製品名、ブランド名、タイヤ製造業者名、さらには、サイズ等の文字、記号、あるいは数字等が記載されている。標章表示領域の周りには、サイド模様表示領域3aが標章表示領域を取り囲むように設けられている。以下で説明するサイド模様表示領域3aは、タイヤ1の幅方向一方のサイドウォール部3に設けられてもよいし、タイヤ1の幅方向両側のサイドウォール部3に設けられてもよい。
【0018】
サイドウォール表面のサイド模様表示領域3aは、サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有する。この模様は、図1に示すように、タイヤ径方向に沿って延びる複数の線状部10を有し、各線状部10を、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔D(図4(b),(c)に示す)をあけて設けることにより形成されている。
このような模様を設けるのは、タイヤ1を見た者が、当該模様によって錯視を受けることで、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるためである。サイドウォール表面に現れる凹凸とは、例えば、図3に示されるように、カーカス層5の巻き終わり端5aが巻き始め端5bと、部分5cで重なることにより、タイヤ径方向に沿って段差ができることに起因して形成されたものである。
【0019】
次に、図4を参照して、サイド模様表示領域3aの模様の詳細について説明する。図4(a)〜(c)は、サイドウォール表面に形成される模様の例を説明する図である。なお、以降の図示では、タイヤ径方向及びタイヤ周方向を紙面の縦方向及び横方向に対応させて便宜上図示するが、タイヤ径方向及びタイヤ周方向は、上述した定義により定まる方向である。
図4(a)に示すように、線状部10は、直線部11と、複数の傾斜模様部12とを有している。直線部11及び複数の傾斜模様部12は、後述するように、サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別されるように形成されている。線状部10のタイヤ径方向の長さは、サイド模様表示領域3aのタイヤ径方向の長さに応じて適宜設定してもよく、例えば、サイド模様表示領域3aのタイヤ径方向の長さの30〜80%であることが好ましい。また、線状部10のタイヤ周方向の幅Wは、例えば、1.0〜5.0mmであることが好ましい。
直線部11は、タイヤ径方向に沿って直線状に延びるように形成されている。複数の傾斜模様部12のそれぞれは、2つの端部12a,12bを有し、直線部11の延びる方向、すなわちタイヤ径方向に対して傾斜する方向に直線状に延びるように形成されている。なお、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、直線状に形成されることに限られず、例えば曲線状や波線状等に形成されていてもよい。また、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、中心部において直線部11と交差するように設けられている。さらに、図4(a)に示すように、複数の傾斜模様部12のそれぞれと直線部11とがなす鋭角θの絶対値は、0°より大きく、且つ、45°以下であることが好ましい。また、本実施形態のタイヤ1では、複数の傾斜模様部12のそれぞれの幅(傾斜方向に直交する方向の幅)は、直線部11のタイヤ周方向の幅と同一に形成されているが、直線部11のタイヤ周方向の幅よりも小さく、あるいは大きく形成されてもよい。また、複数の傾斜模様部12は、タイヤ径方向に対する傾斜方向が互いに同一になるように設けられてもよいし、例えば図4(b),(c)に示すように、タイヤ径方向に対する傾斜方向が、所定数の傾斜模様部12毎にタイヤ周方向に反転するように設けられてもよい。ここで、傾斜方向がタイヤ周方向に反転するとは、傾斜方向がタイヤ径方向に対して線対称の方向になることをいう。具体的に説明すると、図4(b),(c)に示す模様では、タイヤ径方向を上下方向としたとき、1つの線状部10において、上から1番目〜6番目の傾斜模様部12の傾斜方向が右下に傾く方向になっているが、上から7番目〜12番目の傾斜模様部12の傾斜方向が、右下に傾く方向からタイヤ径方向に対して線対称の方向、すなわち左下に傾く方向になっている。
また、複数の傾斜模様部12のそれぞれは、図4(a)に示すように、タイヤ周方向の一方の側の端部12aがタイヤ径方向に揃うとともに、タイヤ周方向の他方の側の端部12bがタイヤ径方向に揃うように設けられている。ここで、「揃う」とは、複数の傾斜模様部12のそれぞれのタイヤ周方向の一方の側の端部12aのうち少なくとも2つの端部12aを結ぶ線(あるいは複数の傾斜模様部12のそれぞれのタイヤ周方向の他方の側の端部12bのうち少なくとも2つの端部12bを結ぶ線)と、タイヤ径方向に延びる直線(図4(a)において破線で示す)とがなす鋭角の絶対値が10°以下であることをいい、当該絶対値が0°であることも含まれる。
【0020】
次に、図4(b),(c)を参照して、複数の線状部10間の関係について説明する。各線状部10は、前述したように、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔Dをあけて設けられている。なお、間隔Dは、タイヤ回転軸を中心とした一定の見込み角に従って、タイヤ径方向の位置に応じて変化する。また、間隔Dは、1つの線状部10における複数の傾斜模様部12のタイヤ周方向の他方の側の端部12bと、当該線状部10とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10における複数の傾斜模様部12のタイヤ周方向の一方の側の端部12aとの間のタイヤ周方向の距離を表している。間隔Dは、タイヤ径方向の同じ位置における線状部10のタイヤ周方向の幅Wよりも大きく形成されていることが好ましい。また、図4(b),(c)に示すように、線状部10の複数の傾斜模様部12のそれぞれは、タイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10に設けられた傾斜模様部12との間で、タイヤ径方向の一方の側の端部12aがタイヤ周方向に揃うとともに、タイヤ径方向の他方の側の端部12bがタイヤ周方向に揃うように設けられている。
また、1つの線状部10の1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とは、図4(b)に示すように、互いに同一であってもよいし、図4(c)に示すように、互いにタイヤ周方向に反転してもよい。なお、線状部10の複数の傾斜模様部12のそれぞれの傾斜方向が互いに同一である場合には、当該複数の傾斜模様部12と、当該線状部10とタイヤ周方向に間隔Dをおいて隣り合う他の線状部10の複数の傾斜模様部12の傾斜方向とは、互いにタイヤ周方向に反転することが好ましい。
【0021】
図5(a),(b)は、線状部10の断面の一例を示す図である。図5(a),(b)に示す例では、線状部10の表面が凹凸を有することにより、線状部10を含む模様が、周りの領域と視認可能に識別されるようになっている。
図5(a)に示すように、模様が突起で形成される場合には、線状部10の直線部11及び複数の傾斜模様部12が、サイドウォール表面から突出するように設けられる。また、図5(b)に示すように、模様が溝で形成される場合には、線状部10の直線部11及び複数の傾斜模様部12が、サイドウォール表面から凹むように設けられる。模様が突起で形成された場合における線状部10のサイドウォール表面に対する高さ、あるいは模様が溝で形成された場合における線状部10のサイドウォール表面に対する深さは、見る者に効果的な錯視を与えて、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるために、0.3mm〜3.0mmであることが好ましい。
なお、線状部10のサイドウォール表面に対する高さ、あるいは深さは、複数の線状部10毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
図6(a),(b)は、線状部10の表面の好ましい形態を説明する図である。線状部10が突起あるいは溝で形成されているか否かにかかわらず、線状部10の表面、すなわち直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面は、一方向に配列した複数のリッジを用いてセレーション加工が施された微細凹凸面により構成されてもよい。このとき、直線部11及び複数の傾斜模様部12のセレーション加工では、図6(a),(b)に示すように、リッジの密度が同一であることが好ましい。これにより、直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面に入射した光は拡散反射する、あるいは拡散反射の程度が線状部10の周囲に比べて高くなる。したがって、線状部10の表面で拡散反射して、見る者の視野に入る光の光量は、線状部10の周囲から到来し、見る者の視野に入る光の光量に比べて少ない。このため、線状部10は、線状部10の周囲に対して黒く見え、線状部10の周囲に対してより効果的に視認可能に識別することができる。この場合、直線部11及び複数の傾斜模様部12におけるリッジの密度は、例えば1本/mm〜2本/mmである。
また、リッジを多数設けることにより、タイヤ製造段階の加硫工程で空気溜りを発生し難くできるので、外観不良の発生率を低下させることができる。
【0023】
本実施形態では、サイドウォール表面に表面凹凸を設けることにより直線部11及び複数の傾斜模様部12が形成されるが、サイドウォール表面に表面凹凸を設けることなく、異なるセレーション加工が施されることによって差異が生じる光の反射特性を利用して、線状部10を視認可能に識別する構成を用いることもできる。反射特性は、拡散反射による反射の差異を利用する場合の他、異なる反射の向きを利用する場合も含まれる。例えば、直線部11及び複数の傾斜模様部12を平滑面とし、平滑面の向きを傾斜させ、この向きを線状部10の周囲の表面の向きと異ならせる。
なお、線状部10が突起あるいは溝で形成されている場合には、直線部11及び複数の傾斜模様部12の表面にセレーション加工が施されなくてもよい。
【0024】
以上のように構成された複数の線状部10をタイヤ周方向に間隔Dをあけて設けることにより、図4(a)、さらには図4(b)あるいは図4(c)に示す模様が形成される。ここで、複数の線状部10のそれぞれには、複数の傾斜模様部12が直線部11に対して重なるように設けられているので、複数の線状部10のそれぞれが、タイヤ周方向に傾斜して見えるような知覚が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。具体的に説明すると、図4(b)に示すように、1つの線状部10における1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とが同一になっている場合には、線状部10がタイヤ周方向に波打つように見える錯視効果が得られる。また、図4(c)に示すように、1つの線状部10における1つの傾斜模様部12の傾斜方向と、当該傾斜模様部12とタイヤ周方向に隣り合う他の線状部10の傾斜模様部12の傾斜方向とがタイヤ周方向に反転する場合には、タイヤ周方向に隣り合う2つの線状部10間の一部が開口しているように見える錯視効果が得られる。なお、複数の線状部10それぞれの全ての傾斜模様部12の傾斜方向が同一の場合でも、複数の線状部10がタイヤ周方向に傾斜して見えるような知覚が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
このため、本実施形態のタイヤ1では、タイヤ1のサイドウォール表面を見た者に対して、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。また、本実施形態のタイヤ1では、直線部11と複数の傾斜模様部12とを有する複数の線状部10が、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔をあけて設けられている、という簡易な構成で模様を形成することができるので、例えば、それぞれ複数のリッジからなる第1リッジ群と第2リッジ群とをタイヤ周方向に亘って互いに交差させることによりモアレ模様を形成する従来の技術の場合と比べて、サイドウォール表面の加工範囲を小さくするとともに、加工内容を容易にすることができる。
【0025】
なお、サイド模様表示領域3aの模様は、タイヤ周方向に沿って互いに同一方向に延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向に間隔をあけて設けることにより形成されてもよい。この場合、線状部の複数の傾斜模様部のそれぞれは、タイヤ径方向の一方の側の端がタイヤ周方向に揃うとともに、タイヤ径方向の他方の側の端がタイヤ周方向に揃うように設けられている。また、線状部の複数の傾斜模様部のそれぞれは、タイヤ径方向に隣り合う他の線状部に設けられた傾斜模様部との間で、タイヤ周方向の一方の側の端がタイヤ径方向に揃うとともに、タイヤ周方向の他方の側の端がタイヤ径方向に揃うように設けられる。
【0026】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のタイヤ1のサイドウォール部3の表面を示した図である。
第2実施形態のタイヤ1の構成は、図2に示す第1実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第2実施形態のタイヤ1が第1実施形態のタイヤ1と異なる点は、線状部20を構成する複数の傾斜模様部21,22(図8参照)のそれぞれが、四角形状の複数の微小領域で形成されている点にある。この微小領域は、表面粗さによって反射特性が異なることで、周囲の領域に対して、傾斜模様部21,22が視認可能となった領域である。したがって、図7〜図14では、異なる反射特性を、白、黒、灰色等の濃淡で表している。
【0027】
図8(a)〜(c)を参照して、線状部20について具体的に説明する。線状部20は、複数の第1傾斜模様部21と、複数の第2傾斜模様部22とを有し、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とをタイヤ径方向に沿って交互に配置することにより、タイヤ径方向に延びるように形成されている。第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、四角形状の複数(本実施形態では3つ)の微小領域の一辺をタイヤ径方向に沿って配置することにより形成されている。ここで、四角形状とは、例えば、正方形や長方形等のように4つの辺からなる形状をいうが、当該4つの辺によって形成される4つの角部が湾曲あるいは斜めに面取りされた形状も含まれる。また、当該4つの辺の全てが直線であってもよいし、少なくとも一つの辺が曲線であってもよい。さらに、各微小領域は、タイヤ径方向の長さHがタイヤ周方向の幅W1よりも大きく形成されていることが好ましい。具体的には、タイヤ径方向の長さHは、例えば、W1<H≦3×W1の範囲内に形成されていることが好ましい。
なお、各微小領域は、第1実施形態の直線部11及び複数の傾斜模様部12と同様に、突起あるいは溝によって形成されてもよいし、セレーション加工が施されることによって形成されてもよい。
【0028】
図8(a)に示すように、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれを構成する3つの微小領域は、タイヤ径方向に互いに隣接して一列に配置されている。すなわち、サイドウォール表面の法線方向に沿ってサイドウォール表面をみたとき、上記3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域は、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に線接触している。
また、サイドウォール表面の法線方向に沿ってサイドウォール表面をみたとき、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とは、タイヤ径方向に互いに線接触している。具体的に説明すると、図8(a)に示すように、第2傾斜模様部22の3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域には、当該第2傾斜模様部22とタイヤ径方向に隣り合う第1傾斜模様部21の3つの微小領域のうち、タイヤ径方向外側あるいはタイヤ径方向内側に位置する微小領域が線接触している。一方、図8(b),(c)に示すように、第1傾斜模様部21の3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域には、当該第1傾斜模様部21とタイヤ径方向に隣り合う第2傾斜模様部22の3つの微小領域のうち、タイヤ径方向外側あるいはタイヤ径方向内側に位置する微小領域が線接触している。
さらに、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、3つの微小領域がタイヤ径方向に沿って段状に配置されていることにより、タイヤ径方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されている。具体的に説明すると、3つの微小領域のうちタイヤ径方向外側(図8(a)において上側)に位置する微小領域と、3つの微小領域のうちタイヤ径方向内側(図8(a)において下側)に位置する微小領域とは、3つの微小領域のうち中央に位置する微小領域に対してタイヤ周方向にずれるように配置されている。この場合、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれは、図8(b)に示すように、タイヤ径方向に対して傾斜する直線Aに沿って延びるように形成されてもよいし、図8(c)に示すように、折れ線Bあるいは折れ線Cに沿って延びるように形成されてもよい。ここで、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれの傾斜角度θの絶対値は、0°より大きく、且つ、45°以下であることが好ましい。ここで、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれの傾斜角度θについて、図8(a)に示した第2傾斜模様部22を参照して説明すると、傾斜角度θとは、第2傾斜模様部22の3つの微小領域のそれぞれを構成する角部のうち第2傾斜模様部22の中心部からタイヤ径方向及びタイヤ周方向に最も離れて位置する角部と当該中心部とを結ぶ線と、当該中心部を通りタイヤ径方向と平行に延びる線とがなす鋭角の角度をいう。
【0029】
また、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22のそれぞれを構成する3つの微小領域は、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有するように形成されている。さらに、本実施形態のタイヤ1では、サイドウォール表面のうち模様を除く部分が所定の表面粗さを有するように形成されている。ここで、表面粗さとは、JIS B 0601にて規定されている算術平均粗さをいう。
本実施形態において、サイドウォール表面に現れる凹凸を目立たなくさせるためには、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さをRaとし、第1傾斜模様部21の表面粗さをRa1とし、第2傾斜模様部22の表面粗さをRa2としたとき、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有することが好ましい。第1傾斜模様部21の表面粗さRa1は、例えば、3000〜8000μmであることが好ましい。また、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さRaは、例えば、800〜2500μmであることが好ましい。さらに、第2傾斜模様部22の表面粗さRa1は、例えば、250〜600μmであることが好ましい。
【0030】
以上のように構成された複数の線状部20をタイヤ周方向に間隔をあけて設けることにより、図9(a)に示す模様が形成される。この模様では、第1傾斜模様部21と第2傾斜模様部22とをタイヤ径方向に沿って交互に設ける際に、第2傾斜模様部22の傾斜態様を変更している。この場合、第1傾斜模様部21が所定数(図9(a)に示す例では2つ)設けられる毎に、第1傾斜模様部21の傾斜方向がタイヤ周方向に反転する。この場合、複数の線状部20がタイヤ周方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
このため、本実施形態のタイヤ1では、タイヤ1のサイドウォール表面を見た者に対して、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
また、図9(b)に示すように、それぞれタイヤ周方向に延びる複数の線状部20を、タイヤ径方向に間隔をあけて設けてもよい。この場合には、複数の線状部20がタイヤ径方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。
【0031】
次に、図10を参照して、図9に示した模様の他の例について説明する。図10(a),(b)は、図9に示した模様の他の例を説明する図である。
図10(a),(b)に示す模様は、タイヤ径方向に沿って互いに同一方向に延びる複数の線状部20を、互いに交差することなくタイヤ周方向に間隔をあけて設けることにより形成されている。また、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20との間では、第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22の傾斜方向がタイヤ周方向に反転している。
図10(a)に示す模様では、1つの線状部20の第1傾斜模様部21及び第2傾斜模様部22が、互いに同一方向に傾斜するように設けられている。この場合、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20とが、タイヤ径方向に近接あるいは離間するように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。これにより、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
また、図10(b)に示す模様では、1つの線状部20は、2つの第1傾斜模様部21がタイヤ径方向に沿って設けられる毎に第1傾斜模様部21の傾斜方向がタイヤ周方向に反転するように設けられている。この場合、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣接する他の線状部20との間の一部が開口するように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。これにより、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
なお、図10(a),(b)に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替え、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20を用いて、上記と同様に模様を構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られる。
【0032】
次に、図11を参照して、図8に示した線状部20の他の例について説明する。図11(a),(b)は、図8に示した線状部20の他の例を説明する図である。
図8(a)に示した例では、3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域が、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に線接触していたが、図11(a)に示すように、3つの微小領域のうちタイヤ径方向及びタイヤ周方向の中央に位置する微小領域が、3つの微小領域のうち他の2つの微小領域とタイヤ径方向に点接触するように設けられてもよい。この場合、図11(b)に示すように、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20を、タイヤ径方向に間隔をあけて設けた場合には、図9(b)に示した模様と同様に、複数の線状部20がタイヤ径方向に曲がりくねっているように見える錯視効果が得られることに起因して、見る者に錯視を与えることができる。したがって、サイドウォール表面に現れる凹凸を十分に目立たなくさせることができる。
なお、微小領域が点接触している場合と比べて錯視効果が向上するという点において、微小領域は線接触していることが好ましい。
【0033】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第3実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第3実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図12に示すように、タイヤ径方向に延びる複数の線状部20のタイヤ周方向における間隔D1,D2,D3,D4が、タイヤ径方向の同じ位置において周期的に変動する点にある。
【0034】
図12を参照して具体的に説明すると、1つの線状部20と、当該線状部20に対してタイヤ周方向に隣り合う他の線状部20との間隔は、線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、D1、D2、D3、D4の順に小さくなり、その後、D4、D3、D2、D1の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。間隔D1,D2,D3,D4の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。また、1つの線状部20のタイヤ周方向の幅Wと、複数の線状部20間の間隔D1,D2,D3,D4とは、例えば、W<D1<D2<D3<D4≦5×Wという関係を有していることが好ましい。
この場合、図12に示す模様は、各線状部20間で間隔が最大となる間隔D1となる位置において、錯視の効果によって、立体的に浮き上がるように見える。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、図12に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、タイヤ周方向に延びる複数の線状部20のタイヤ径方向における間隔が周期的に変動するように構成した場合であっても、立体的な錯視効果が得られることから、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。また、第1実施形態の複数の線状部10間の間隔を周期的に変動させた場合にも、上記と同様の錯視効果が得られる。
【0035】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第4実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第4実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図13に示すように、複数の第1傾斜模様部21のタイヤ周方向における長さが周期的に変動する点にある。
【0036】
図13を参照して具体的に説明すると、第1傾斜模様部21を構成する3つの縮小領域を含む複数(図13に示す例では6つ)の縮小領域のうちタイヤ周方向に連続して並ぶ4つの縮小領域のタイヤ周方向の長さをλ1,λ2,λ3としたとき、当該長さλ1,λ2,λ3は、λ1、λ2、λ3の順に小さくなり、その後、λ3、λ2、λ1の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。この場合、複数の縮小領域に含まれる第1傾斜模様部21のタイヤ周方向における長さは、当該長さλ1,λ2,λ3の変動に応じて周期的に変動する。ここで、当該長さλ1,λ2,λ3の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。
この場合、図13に示す模様は、タイヤ周方向に連続して並ぶ4つの縮小領域のタイヤ周方向の長さが最小値λ3となる位置において、線状部20がタイヤ径方向に凹むように見えるとともに、当該長さが最大値λ1となる位置において、線状部20がタイヤ径方向に突出するように見えるという錯視効果が得られる。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、複数の第2傾斜模様部22それぞれのタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られる。
また、図13に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、タイヤ径方向に延びる複数の線状部20を用いて模様を形成したとき、第1傾斜模様部21あるいは第2傾斜模様部22のタイヤ径方向の長さが周期的に変動するように構成した場合であっても、上記と同様の錯視効果が得られることから、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
【0037】
(第5実施形態)
図14は、第5実施形態のタイヤ1のサイドウォール表面に形成される模様の一例を示す図である。
第5実施形態のタイヤ1の構成は、上記実施形態のタイヤ1の構成と同じである。第5実施形態のタイヤ1が上記実施形態のタイヤ1と異なる点は、図14に示すように、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が、複数の線状部20毎に異なるとともに、タイヤ周方向に沿って周期的に変動する点にある。
【0038】
図14を参照して具体的に説明すると、1つの線状部20において、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と、第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差をRa3としたとき、当該差Ra3は、2つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、大、中、小の順に小さくなり、その後、小、中、大の順に大きくなるという周期的な変動を繰り返す。当該差Ra3の変動は、正弦波状、方形波状、三角波状あるいは鋸波状等に従った変動であってもよい。
この場合、図14に示す模様では、表面粗さの差Ra3が異なる位置毎に線状部20の錯視効果が異なる。具体的には、表面粗さの差Ra3の小さい線状部20と比べて、表面粗さの差Ra3の大きい線状部20がより浮き上がって見えるという錯視効果が得られる。このため、サイドウォール表面に現れる凹凸をより目立たなくすることができる。
なお、本実施形態では、2つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、表面粗さの差Ra3が変動する場合について説明したが、1つの線状部20がタイヤ周方向に沿って設けられる毎に、表面粗さの差Ra3が変動するように構成してもよい。
また、図14に示すタイヤ周方向とタイヤ幅方向とを互いに入れ替えるとともに、複数の線状部20がタイヤ径方向に間隔をおいて設けられる場合には、表面粗さの差Ra3がタイヤ径方向に沿って周期的に変動するように構成してもよい。
また、表面粗さの差Ra3の変動と同期するように複数の線状部20間の間隔D1,D2,D3,D4を変動させてもよい。具体的には、表面粗さの差Ra3が最小となる位置における複数の線状部20間の間隔を最小あるいは最大とし、表面粗さの差Ra3が最大となる位置における複数の線状部20間の間隔が最大あるいは最小となるように構成してもよい。この場合、模様によって得られる立体的な錯視効果がより顕著となる。
【0039】
(実施例)
本実施形態の効果を調べるために、サイドウォール表面の模様を種々変化させて、図2に示すタイヤ1(タイヤサイズ:145R12 6PR)を作製した。作製したタイヤを100人が観察し、実際にサイドウォール表面に存在する、カーカス層5が重なった部分5eに起因して生じる凹凸(以降、BPSスプライス凹凸という)の視認性の評価をした。
【0040】
評価結果として下記評点を用いた。
・評点110:95%以上の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点108:90%以上95%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点106:80%以上90%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点104:70%以上80%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点102:60%以上70%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点100:50%以上60%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
・評点97:50%未満の観察者がBPSスプライス凹凸を明確に確認できない。
【0041】
評価に用いたサイドウォール表面と、評価結果を下記表に示す。
なお、比較例は、サイド模様表示領域3aがないタイヤである。実施例1では、サイド模様表示領域3aに、複数の線状部20からなる第2の実施形態の模様を設けた。
実施例2では、それぞれタイヤ径方向に延びる複数の線状部20をタイヤ周方向に間隔をあけて設け、各線状部20間のタイヤ周方向の間隔が周期的に変動するように形成した。
また、実施例3では、それぞれタイヤ周方向に延びる複数の線状部20をタイヤ径方向に間隔をあけて設け、第1傾斜模様部21のタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように形成した。
さらに、実施例4〜6では、模様を除く部分の表面粗さRa、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1及び第2傾斜模様部22の表面粗さRa2の大小関係がそれぞれ異なるように形成した。
さらにまた、実施例7では、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が周期的に変動するように形成した。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例、実施例1の比較より、線状部20を有する模様を設けることにより、評価結果が向上することがわかる。これは、複数の線状部20で構成される模様による錯視の効果によるといえる。
また、実施例1,2の比較より、各線状部20間のタイヤ周方向の間隔が周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
さらに、実施例2,3の比較より、第1傾斜模様部21のタイヤ周方向の長さが周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
さらにまた、実施例3〜6の比較より、サイドウォール表面のうち模様を除く部分の表面粗さをRaとし、第1傾斜模様部21の表面粗さをRa1とし、第2傾斜模様部22の表面粗さをRa2としたとき、表面粗さRaがRa1>Ra>Ra2となる関係を有するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
また、実施例6,7の比較より、第1傾斜模様部21の表面粗さRa1と第2傾斜模様部22の表面粗さRa2との差が周期的に変動するように形成することにより、評価結果が向上することがわかった。
【0044】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3a サイド模様表示領域
4 ビード部
5 カーカス層
6 ベルト層
10,20 線状部
11 直線部
12 傾斜模様部
21 第1傾斜模様部
22 第2傾斜模様部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、
サイドウォール部は、
サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有し、
前記模様は、
タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成り、
前記複数の線状部のそれぞれは、
前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有し、
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、
前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられる、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数の線状部の前記方向Bにおける間隔は周期的に変動する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数の傾斜模様部の前記方向Aにおける長さは周期的に変動する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有する四角形状の複数の微小領域の一辺を前記方向Aに沿って配置して、前記複数の微小領域を前記方向Aに沿って段状に配置することにより形成され、
前記サイドウォール表面のうち前記模様を除く部分の表面粗さをRaとし、前記複数の傾斜模様部のうち第1傾斜模様部の表面粗さをRa1とし、第1傾斜模様部と前記方向Aに隣り合う第2傾斜模様部の表面粗さをRa2としたとき、前記表面粗さRaは、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数の微小領域は、前記サイドウォール表面をみたとき、互いに点接触又は線接触している、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1傾斜模様部の表面粗さRa1と第2傾斜模様部の表面粗さRa2との差は、前記複数の線状部毎に異なるとともに、前記方向Bに沿って周期的に変動する、請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項1】
サイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、
サイドウォール部は、
サイドウォール表面の凹凸あるいは光の反射特性により、周りの領域と視認可能に識別される模様を有し、
前記模様は、
タイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか一方の方向Aに沿って延びる複数の線状部を、互いに交差することなくタイヤ径方向及びタイヤ周方向の何れか他方の方向Bに間隔をあけて設けて成り、
前記複数の線状部のそれぞれは、
前記方向Aに対して傾斜する方向に延びる複数の傾斜模様部を有し、
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、
前記方向Bの一方の側の端が前記方向Aに揃うとともに、前記方向Bの他方の側の端が前記方向Aに揃うように設けられ、且つ、前記方向Bに隣り合う線状部に設けられた傾斜模様部との間で、前記方向Aの一方の側の端が前記方向Bに揃うとともに、前記方向Aの他方の側の端が前記方向Bに揃うように設けられる、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数の線状部の前記方向Bにおける間隔は周期的に変動する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数の傾斜模様部の前記方向Aにおける長さは周期的に変動する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数の傾斜模様部のそれぞれは、周りの領域と表面粗さが異なり、且つ、互いに同一の表面粗さを有する四角形状の複数の微小領域の一辺を前記方向Aに沿って配置して、前記複数の微小領域を前記方向Aに沿って段状に配置することにより形成され、
前記サイドウォール表面のうち前記模様を除く部分の表面粗さをRaとし、前記複数の傾斜模様部のうち第1傾斜模様部の表面粗さをRa1とし、第1傾斜模様部と前記方向Aに隣り合う第2傾斜模様部の表面粗さをRa2としたとき、前記表面粗さRaは、Ra1>Ra>Ra2となる関係を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数の微小領域は、前記サイドウォール表面をみたとき、互いに点接触又は線接触している、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1傾斜模様部の表面粗さRa1と第2傾斜模様部の表面粗さRa2との差は、前記複数の線状部毎に異なるとともに、前記方向Bに沿って周期的に変動する、請求項4または5に記載の空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−103631(P2013−103631A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249499(P2011−249499)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
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