説明

空気入りタイヤ

【課題】氷雪路面におけるトラクション性能の向上させること。
【解決手段】空気入りタイヤ10は、トレッド踏面部11におけるタイヤ赤道部CL付近からタイヤ幅方向Wの両端部に向かうに従い漸次、タイヤ周方向Cの一方側から他方側に向けて各別に延在する第1ラグ溝21および第2ラグ溝22がそれぞれ、タイヤ周方向Cに間隔をあけて複数配設され、トレッド踏面部11には、タイヤ幅方向Wに延在する横サイプ41が多数配設され、多数の横サイプ41のうちの少なくとも一部は、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向Wの端部から、タイヤ幅方向Wの内側に向けて延在しタイヤ赤道部CLを跨ぐ横断サイプ42である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、トレッド踏面部におけるタイヤ赤道部付近からタイヤ幅方向の両端部に向かうに従い漸次、タイヤ周方向の一方側から他方側に向けて各別に延在する第1ラグ溝および第2ラグ溝がそれぞれ、タイヤ周方向に間隔をあけて複数配設された空気入りタイヤが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−204804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、氷雪路面におけるトラクション性能の向上に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、氷雪路面におけるトラクション性能の向上させることができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド踏面部におけるタイヤ赤道部付近からタイヤ幅方向の両端部に向かうに従い漸次、タイヤ周方向の一方側から他方側に向けて各別に延在する第1ラグ溝および第2ラグ溝がそれぞれ、タイヤ周方向に間隔をあけて複数配設された空気入りタイヤであって、前記トレッド踏面部には、タイヤ幅方向に延在する横サイプが多数配設され、多数の前記横サイプのうちの少なくとも一部は、前記トレッド踏面部におけるタイヤ幅方向の端部から、タイヤ幅方向の内側に向けて延在しタイヤ赤道部を跨ぐ横断サイプであることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、トレッド踏面部に前記横サイプが多数配設されているので、これらの横サイプのエッジ効果により、当該空気入りタイヤの氷雪路面におけるトラクション性能を向上させることができる。
また、多数の横サイプのうちの少なくとも一部が、前記横断サイプなので、走行時に、トレッド踏面部におけるタイヤ赤道部付近、およびトレッド踏面部におけるタイヤ幅方向の端部のうちのいずれか一方において局所的に横サイプのエッジ効果を発揮させるのではなく、トレッド踏面部におけるタイヤ赤道部付近からタイヤ幅方向の端部まで、タイヤ幅方向の広範囲にわたって横断サイプのエッジ効果を発揮させることが可能になり、例えば第1ラグ溝および第2ラグ溝の位置や形状などによらず、当該空気入りタイヤの氷雪路面におけるトラクション性能を確実に向上させることができる。
【0008】
また、前記第1ラグ溝と前記第2ラグ溝とは、タイヤ周方向に互いにずらされていてもよい。
【0009】
この場合、第1ラグ溝と第2ラグ溝とが、タイヤ周方向に互いにずらされているので、走行時に、タイヤ周方向に隣り合う第1ラグ溝の間に区画される第1陸部が接地するタイミングと、タイヤ周方向に隣り合う第2ラグ溝の間に区画される第2陸部が接地するタイミングと、をずらすことが可能になり、当該非空気入りタイヤに発生する振動を低く抑えることができる。
【0010】
また、前記横サイプは、当該空気入りタイヤをタイヤ径方向の外側から見たタイヤ平面視において、タイヤ周方向に交互に屈曲していてもよい。
【0011】
この場合、横サイプが、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向に交互に屈曲しているので、トレッド踏面部において横サイプをタイヤ周方向に挟んで位置する各部分を、タイヤ幅方向に互いに係合させることが可能になり、トレッド踏面部に横サイプを形成することにより、タイヤ幅方向に対するトレッド踏面部の剛性が低下するのを抑えることができる。
また、横サイプが、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向に交互に屈曲することにより、トレッド踏面部における横サイプの開口縁が、タイヤ幅方向を向くことになり、横サイプのエッジ効果によりコーナリング性能も向上させ易くすることができる。
なお、横サイプを画成する側壁面が、タイヤ径方向およびタイヤ周方向の両方向に沿う縦断面視においても、タイヤ周方向に交互に屈曲しており、横サイプが、いわゆる3Dサイプに形成されている場合には、トレッド踏面部において横サイプをタイヤ周方向に挟んで位置する各部分を、タイヤ幅方向に互いに確実に係合させることができる。
【0012】
また、前記トレッド踏面部におけるトレッドパターンは、タイヤ周方向に沿ったピッチ長が長い複数の大ピッチパターン部、およびピッチ長が短い複数の小ピッチパターン部が、タイヤ周方向に連設されてなり、これらの大ピッチパターン部または小ピッチパターン部を構成する全ての前記横サイプは、前記横断サイプであってもよい。
【0013】
この場合、複数の前記大ピッチパターン部、および複数の前記小ピッチパターン部が、タイヤ周方向に連設されることで、トレッド踏面部におけるトレッドパターンが構成されるので、パターン加振音が発生する周波数帯を分散させることが可能になり、特定の周波数帯におけるパターン加振音が大きくなるのを抑えることができる。
また、大ピッチパターン部または小ピッチパターン部を構成する全ての横サイプが、前記横断サイプとなっており、つまり、大ピッチパターン部および小ピッチパターン部のうち、一方を構成する全ての横サイプが、前記横断サイプである一方で、他方を構成する全ての横サイプのうちの少なくとも一部が、横断サイプとは異なるサイプとなっているので、前述のようにパターン加振音が大きくなるのを抑えながら、横サイプのバリエーションを多様にして設計の自由度を確保し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、氷雪路面におけるトラクション性能の向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおけるトレッド踏面部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10を説明する。なおこの空気入りタイヤ10を、例えば氷雪路面を走行する冬用空気入りタイヤ(スノータイヤ)等として採用してもよい。また空気入りタイヤ10を、例えば欧州におけるアウトバーン等の高速道路での走行に採用してもよい。
【0017】
空気入りタイヤ10には、例えば公知のビードコア、カーカスプライおよびスチールベルト等が埋設されている。この空気入りタイヤ10には、トレッド踏面部11におけるタイヤ赤道部CL付近(例えば、トレッド踏面部11において、タイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向Wの両側それぞれに向けて、トレッド踏面部11のタイヤ幅方向Wに沿った全長の約10%以内の範囲)から、タイヤ幅方向Wの両端部に向かうに従い漸次、タイヤ周方向Cの一方側から他方側に向けて各別に延在する第1ラグ溝21および第2ラグ溝22がそれぞれ、タイヤ周方向Cに間隔をあけて複数配設されている。さらに本実施形態では、トレッド踏面部11には、タイヤ赤道部CL上に、タイヤ周方向Cの全長にわたって連続して延在する周方向主溝23が配設されている。
【0018】
ここでトレッド踏面部11とは、空気入りタイヤ10を、「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着し、かつ該タイヤ10に、「JATMA Year Book」での適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧(以下、規定内圧という)を充填して最大負荷能力を負荷した状態でのトレッド部の接地面をいう。なおトレッド踏面部11は、空気入りタイヤ10が生産または使用される地域が日本国以外の地域の場合には、その地域に適用されている産業規格(例えば、アメリカ合衆国の「TRA Year Book」、欧州の「ETRTO Standard Manual」等)に準拠した状態でのトレッド部の接地面をいう。
また、空気入りタイヤ10の外表面には、該タイヤ10が装着された車両が前進するときのタイヤ回転方向が特定可能な例えば矢印等の図示されない明示部が形成されており、タイヤ回転方向の前側は、タイヤ周方向Cの一方側とされている。
【0019】
周方向主溝23は、第1ラグ溝21および第2ラグ溝22よりも浅くなっている。なお本実施形態では、この周方向主溝23により、当該空気入りタイヤ10のコーナリング性能が向上されている。
第1ラグ溝21のタイヤ幅方向Wの内端部は、周方向主溝23に接続されており、第1ラグ溝21のタイヤ幅方向Wの外端部は、タイヤ幅方向Wの外側に向けて非開口となっている。また第1ラグ溝21を画成する壁面のうち、タイヤ周方向Cを向く側壁面は、当該空気入りタイヤ10をタイヤ径方向の外側から見たタイヤ平面視において、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる曲線状をなしている。
第2ラグ溝22のタイヤ幅方向Wの内端部は、周方向主溝23に接続されており、第2ラグ溝22のタイヤ幅方向Wの外端部は、タイヤ幅方向Wの外側に向けて非開口となっている。また第2ラグ溝22を画成する壁面のうち、タイヤ周方向Cを向く側壁面は、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる曲線状をなしている。
そして、これらの第1ラグ溝21と第2ラグ溝22とは、タイヤ周方向Cに互いにずらされるとともに、互いに非交差となっている。
【0020】
ここで、タイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21は、タイヤ周方向Cに延在するとともにタイヤ幅方向Wの内側に位置する第1内接続溝24、およびタイヤ幅方向Wの外側に位置する第1外接続溝25により各別に接続されている。さらに、タイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22は、タイヤ周方向Cに延在するとともにタイヤ幅方向Wの内側に位置する第2内接続溝26、およびタイヤ幅方向Wの外側に位置する第2外接続溝27により各別に接続されている。
なお図示の例では、各接続溝24〜27は、タイヤ周方向Cの一方側から他方側に向かうに従い漸次、タイヤ幅方向Wの内側から外側に向けて延在しており、これらの接続溝24〜27により、当該空気入りタイヤ10の排水性能が向上されている。
【0021】
そしてトレッド踏面部11には、第1ラグ溝21または第2ラグ溝22により区画された陸部31〜36が配設されている。陸部31〜36には、トレッド踏面部11においてタイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21の間に区画される第1陸部31〜33と、トレッド踏面部11においてタイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22の間に区画される第2陸部34〜36と、が備えられている。
【0022】
第1陸部31〜33としては、タイヤ幅方向Wの内側から外側に向けて、第1内陸部31、第1中陸部32および第1外陸部33が配設されている。第1内陸部31は、タイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21、周方向主溝23および第1内接続溝24により区画され、第1中陸部32は、タイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21、第1内接続溝24および第1外接続溝25により区画され、第1外陸部33は、タイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21および第1外接続溝25により区画されている。
また第2陸部34〜36としては、タイヤ幅方向Wの内側から外側に向けて、第2内陸部34、第2中陸部35および第2外陸部36が配設されている。第2内陸部34は、タイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22、周方向主溝23および第2内接続溝26により区画され、第2中陸部35は、タイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22、第2内接続溝26および第2外接続溝27により区画され、第2外陸部36は、タイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22および第2外接続溝27により区画されている。
【0023】
そして本実施形態では、トレッド踏面部11には、タイヤ幅方向Wに沿って延在する横サイプ41が多数配設されており、これらの多数の横サイプ41のうちの一部が、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向Wの端部から、タイヤ幅方向Wの内側に向けて延在しタイヤ赤道部CLをタイヤ幅方向Wに跨ぐ横断サイプ42となっている。
ここでサイプとは、空気入りタイヤ10を前述の標準リムに装着し、かつ該タイヤ10に前述のように規定内圧を充填して最大負荷能力を負荷した状態で、接地面内で閉塞する溝幅の細溝のことをいう。またサイプは、空気入りタイヤ10が生産または使用される地域が日本国以外の地域の場合には、その地域に適用されている産業規格に準拠した状態で、接地面内で閉塞する溝幅の細溝のことをいう。
【0024】
なお図示の例では、前記タイヤ平面視において、横サイプ41は、タイヤ周方向Cに交互に屈曲しており、図示の例では、多数の横サイプ41のうち、複数の前記横断サイプ42も、横断サイプ42以外の横サイプ41(以下、非横断サイプ43という)も含めた全ての横サイプ41の一部分が、タイヤ周方向Cに交互に屈曲している。
さらに図示の例では、横サイプ41のタイヤ幅方向Wの外端部は、第1ラグ溝21または第2ラグ溝22のタイヤ幅方向Wの外端部よりもタイヤ幅方向Wの内側に位置し、トレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向Wの外端部に非開口となっている。
【0025】
ここで横サイプ41は、トレッド踏面部11における陸部31〜36に限定的に配設されており、図示の例では、各陸部31〜36の頂面に配設された小サイプ部44により構成されている。
小サイプ部44は、陸部31〜36の頂面にタイヤ幅方向Wに沿って延設されるとともに、タイヤ周方向Cに間隔をあけて複数配設されている。なお図示の例では、複数の陸部31〜36のうち、第1内陸部31、第1中陸部32、第2内陸部34および第2中陸部35に配設された小サイプ部44は、タイヤ幅方向Wの両側に向けて開口しており、第1外陸部33および第2外陸部36に配設された小サイプ部44は、タイヤ幅方向Wの内側に向けて開口するとともに外側に向けて非開口となっている。さらに図示の例では、第1内陸部31、第1中陸部32、第2内陸部34および第2中陸部35の頂面にはそれぞれ、タイヤ周方向Cに延在し、タイヤ周方向Cに隣り合う小サイプ部44を接続する縦サイプ45が配設されている。
【0026】
また小サイプ部44は、陸部31〜36にタイヤ周方向Cに同等の間隔をあけて配設されており、かつこの間隔は、全ての陸部31〜36において同等となっている。そして複数の陸部31〜36のうち、タイヤ周方向Cの位置が重複する陸部31〜36では、小サイプ部44の配設周期の位相が互いに合わされている。これにより、前記タイヤ周方向Cの位置が重複する陸部31〜36において、小サイプ部44のタイヤ周方向Cの位置が互いに同等となり、これらの小サイプ部44により前記横サイプ41が構成されている。
【0027】
なお、多数の横サイプ41のうちの前記横断サイプ42が配置されるタイヤ周方向Cの位置では、タイヤ周方向Cの位置が重複する全ての陸部31〜36における小サイプ部44の配設周期の位相が互いに合わされている。そして、前記タイヤ周方向Cの位置が重複する全ての陸部31〜36において、タイヤ周方向Cの位置が互いに同等とされた小サイプ部44により、横断サイプ42が構成されている。
さらに、多数の横サイプ41のうちの前記非横断サイプ43が配置されるタイヤ周方向Cの位置では、タイヤ周方向Cの位置が重複する全ての陸部31〜36のうち、一部の陸部31〜36における小サイプ部44の配設周期の位相が互いに合わされる一方で、該一部の陸部31〜36以外の他の陸部31〜36における前記位相が、前記一部の陸部31〜36と異なっている。そして前記一部の陸部31〜36において、タイヤ周方向Cの位置が互いに同等とされた小サイプ部44により、非横断サイプ43が構成されている。
【0028】
ここで本実施形態では、トレッド踏面部11におけるトレッドパターンPは、タイヤ周方向Cに沿ったピッチ長L1が長い複数の大ピッチパターン部P1、およびピッチ長L2が短い複数の小ピッチパターン部P2が、タイヤ周方向Cに連設されてなる。
トレッドパターンPは、トレッド踏面部11に形成された第1ラグ溝21、第2ラグ溝22、周方向主溝23、接続溝24〜27、横サイプ41および縦サイプ45により構成されている。
大ピッチパターン部P1および小ピッチパターン部P2はそれぞれ、前記平面視においてタイヤ幅方向Wに長い帯状をなしており、複数の大ピッチパターン部P1のパターン形状は互いに同等とされ、複数の小ピッチパターン部P2のパターン形状は互いに同等となっている。
【0029】
大ピッチパターン部P1および小ピッチパターン部P2は、例えば周波数変調理論などに基づいてパターン加振音(タイヤ騒音)を低減するピッチ・バリエーションの手法に従って配設されている。なお本実施形態では、ピッチ・バリエーションの手法とは、大ピッチパターン部P1と小ピッチパターン部P2とを、トレッド踏面部11に沿って適切に配置することによって、トレッドパターンPが単一のピッチパターン部により構成された場合に特定の周波数帯に集中するパターン加振音の音圧レベルを他の周波数帯に分散させて、音圧レベルのピークを低減させるタイヤ設計手法を意味する。
【0030】
大ピッチパターン部P1および小ピッチパターン部P2それぞれにおいて、他のピッチパターン部と接続されるタイヤ周方向Cの接続縁Aは、タイヤ幅方向Wに延在しており、1つの第1ラグ溝21および1つの第2ラグ溝22をタイヤ幅方向Wに横断するとともに、横サイプ41とは非交差となっている。
また、大ピッチパターン部P1において、接続縁Aから、該接続縁Aにタイヤ周方向Cに隣接する各小サイプ部44までのタイヤ周方向Cの距離D1は、互いに同等となっている。また、小ピッチパターン部P2において、接続縁Aから、該接続縁Aにタイヤ周方向Cに隣接する各小サイプ部44までのタイヤ周方向Cの距離D2は、互いに同等となっている。さらに、これらの距離D1と距離D2とは互いに同等となっている。これにより、接続縁Aをタイヤ周方向Cに挟んで隣り合う小サイプ部44のタイヤ周方向Cの間隔が、大ピッチパターン部P1と小ピッチパターン部P2との組み合わせによらず同等となる。
【0031】
そして、大ピッチパターン部P1を構成する全ての横サイプ41は、前記横断サイプ42となっている。また、小ピッチパターン部P2を構成する全ての横サイプ41のうちの一部は、前記非横断サイプ43となっている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、トレッド踏面部11に前記横サイプ41が多数配設されているので、これらの横サイプ41のエッジ効果により、当該空気入りタイヤ10の氷雪路面におけるトラクション性能や登坂性能を向上させることが可能になり、当該空気入りタイヤ10のスノー性能およびアイス性能を向上させることができる。
また、多数の横サイプ41のうちの少なくとも一部が、前記横断サイプ42なので、走行時に、トレッド踏面部11におけるタイヤ赤道部CL付近、およびトレッド踏面部11におけるタイヤ幅方向Wの端部のうちのいずれか一方において局所的に横サイプ41のエッジ効果を発揮させるのではなく、トレッド踏面部11におけるタイヤ赤道部CL付近からタイヤ幅方向Wの端部まで、タイヤ幅方向Wの広範囲にわたって横断サイプ42のエッジ効果を発揮させることが可能になり、例えば第1ラグ溝21および第2ラグ溝22の位置や形状などによらず、当該空気入りタイヤ10の氷雪路面におけるトラクション性能を確実に向上させることができる。
【0033】
また、第1ラグ溝21と第2ラグ溝22とが、タイヤ周方向Cに互いにずらされているので、走行時に、前記第1陸部31〜33が接地するタイミングと、前記第2陸部34〜36が接地するタイミングと、をずらすことが可能になり、当該非空気入りタイヤ10に発生する振動を低く抑えることができる。
【0034】
また、横サイプ41が、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向Cに交互に屈曲しているので、トレッド踏面部11において横サイプ41をタイヤ周方向Cに挟んで位置する各部分を、タイヤ幅方向Wに互いに係合させることが可能になり、トレッド踏面部11に横サイプ41を形成することにより、タイヤ幅方向Wに対するトレッド踏面部11の剛性が低下するのを抑えることができる。
また、横サイプ41が、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向Cに交互に屈曲することにより、トレッド踏面部11における横サイプ41の開口縁が、タイヤ幅方向Wを向くことになり、横サイプ41のエッジ効果によりコーナリング性能も向上させ易くすることができる。
なお、横サイプ41を画成する側壁面が、タイヤ径方向およびタイヤ周方向Cの両方向に沿う縦断面視においても、タイヤ周方向Cに交互に屈曲しており、横サイプ41が、いわゆる3Dサイプに形成されている場合には、トレッド踏面部11において横サイプ41をタイヤ周方向Cに挟んで位置する各部分を、タイヤ幅方向Wに互いに確実に係合させることができる。
【0035】
また、複数の前記大ピッチパターン部P1、および複数の前記小ピッチパターン部P2が、タイヤ周方向Cに連設されることで、トレッド踏面部11におけるトレッドパターンPが構成されるので、パターン加振音が発生する周波数帯を分散させることが可能になり、特定の周波数帯におけるパターン加振音が大きくなるのを抑えることができる。
また、大ピッチパターン部P1を構成する全ての横サイプ41が、前記横断サイプ42となっており、つまり、大ピッチパターン部P1および小ピッチパターン部P2のうち、一方を構成する全ての横サイプ41が、前記横断サイプ42である一方で、他方を構成する全ての横サイプ41の一部が、横断サイプ42とは異なる非横断サイプ43となっているので、前述のようにパターン加振音が大きくなるのを抑えながら、横サイプ41のバリエーションを多様にして設計の自由度を確保し易くすることができる。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、縦サイプ45はなくてもよい。
【0037】
また前記実施形態では、多数の横サイプ41のうちの一部が、横断サイプ42であるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば全ての横サイプ41が、横断サイプ42であってもよい。
さらに前記実施形態では、横サイプ41が、前記タイヤ平面視において、タイヤ周方向Cに交互に屈曲しているものとしたが、これに限られず、例えばタイヤ幅方向Wに沿って直線上に延在していてもよい。
【0038】
また前記実施形態では、小ピッチパターン部P2を構成する全ての横サイプ41の一部が、前記非横断サイプ43となっているものとしたが、これに限られず、例えば、小ピッチパターン部P2を構成する全ての横サイプ41が、非横断サイプ43であってもよい。
さらに非横断サイプ43は、前記実施形態に示したものに限られず、例えば、非横断サイプ43が、1つの小サイプ部44により構成されていてもよい。
【0039】
また前記実施形態では、大ピッチパターン部P1を構成する全ての横サイプ41が、横断サイプ42であるものとしたが、大ピッチパターン部または小ピッチパターン部を構成する全ての横サイプが横断サイプとされた他の構成に適宜変更してもよい。例えば、小ピッチパターン部を構成する全ての横サイプが、横断サイプであってもよい。
さらに前記実施形態では、トレッド踏面部11におけるトレッドパターンPは、タイヤ周方向Cに沿ったピッチ長L1が長い複数の大ピッチパターン部P1、およびピッチ長L2が短い複数の小ピッチパターン部P2が、タイヤ周方向Cに連設されてなるものとしたが、これに限られない。例えば、トレッドパターンを単一のピッチパターン部をタイヤ周方向に複数連設することにより構成してもよい。
【0040】
また、第1ラグ溝21および第2ラグ溝22は、前記実施形態に示したものに限られない。例えば、第1ラグ溝21のタイヤ幅方向Wの外端部から、タイヤ幅方向Wの外側に向かうに従い漸次、タイヤ周方向Cの他方側から一方側に向けて延在する延長溝が形成されていてもよい。
さらに前記実施形態では、第1ラグ溝21と第2ラグ溝22とは、非交差となっているものとしたが、これに限られるものではなく、交差していてもよい。
【0041】
また前記実施形態では、前記タイヤ平面視において、第1ラグ溝21を画成する側壁面が、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる曲線状をなしており、第1ラグ溝21が、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる湾曲形状をなしているものとしたが、これに限られない。例えば、第1ラグ溝において、タイヤ幅方向の中央部よりもタイヤ幅方向の内側に位置する内側部分と、タイヤ幅方向の中央部よりもタイヤ幅方向の外側に位置する外側部分と、が、タイヤ周方向に互いにずらされていてもよい。
さらに前記実施形態では、前記タイヤ平面視において、第2ラグ溝22を画成する側壁面が、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる曲線状をなしており、第2ラグ溝22が、タイヤ周方向Cの他方側に向けて突となる湾曲形状をなしているものとしたが、これに限られない。
【0042】
また前記実施形態では、第1ラグ溝21のタイヤ幅方向Wの内端部は、周方向主溝23に接続されているものとしたが、これに限られない。例えば、第1ラグ溝のタイヤ幅方向の内端部が、タイヤ赤道部よりもタイヤ幅方向の外側に位置しており、周方向主溝に非接続であってもよい。また、第1ラグ溝のタイヤ幅方向の内端部が、タイヤ赤道部をタイヤ幅方向に跨るように配置されていてもよい。
さらに前記実施形態では、第1ラグ溝21のタイヤ幅方向Wの外端部が、タイヤ幅方向Wの外側に向けて非開口となっているものとしたが、開口していてもよい。
さらにまた、前記実施形態では、第2ラグ溝22のタイヤ幅方向Wの内端部は、周方向主溝23に接続され、また、第2ラグ溝22のタイヤ幅方向Wの外端部が、タイヤ幅方向Wの外側に向けて非開口となっているものとしたが、これに限られない。
【0043】
また前記実施形態では、トレッド踏面部11には、周方向主溝23が配設されているものとしたが、周方向主溝23はなくてもよい。
さらに、トレッド踏面部11におけるタイヤ赤道部CL上に、タイヤ周方向Cの全長にわたって連続して延在する中央陸部が配設されていてもよい。
【0044】
また前記実施形態では、接続溝24〜27は、タイヤ周方向Cの一方側から他方側に向かうに従い漸次、タイヤ幅方向Wの内側から外側に向けて延在するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、接続溝は、前記タイヤ平面視において、タイヤ幅方向Wの外側または内側に向けて突となる湾曲形状をなしていてもよい。
さらに前記実施形態では、タイヤ周方向Cに隣り合う第1ラグ溝21、およびタイヤ周方向Cに隣り合う第2ラグ溝22はそれぞれ、接続溝24〜27により接続されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、接続溝がなくてもよく、トレッド踏面部に、第1ラグ溝または第2ラグ溝に交差するようにタイヤ周方向の全長にわたって延在する周溝部が形成されていてもよい。
【0045】
また前記実施形態では、陸部31〜36は、第1ラグ溝21または第2ラグ溝22により区画されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、第1ラグ溝と第2ラグ溝とが交差している場合、陸部が、第1ラグ溝および第2ラグ溝の両方により区画されていてもよく、つまり陸部は、第1ラグ溝および第2ラグ溝のうちの少なくとも一方により区画されていてもよい。
【0046】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 空気入りタイヤ
11 トレッド踏面部
21 第1ラグ溝
22 第2ラグ溝
41 横サイプ
42 横断サイプ
C タイヤ周方向
CL タイヤ赤道部
L1、L2 ピッチ長
P トレッドパターン
P1 大ピッチパターン部
P2 小ピッチパターン部
W タイヤ幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面部におけるタイヤ赤道部付近からタイヤ幅方向の両端部に向かうに従い漸次、タイヤ周方向の一方側から他方側に向けて各別に延在する第1ラグ溝および第2ラグ溝がそれぞれ、タイヤ周方向に間隔をあけて複数配設された空気入りタイヤであって、
前記トレッド踏面部には、タイヤ幅方向に延在する横サイプが多数配設され、
多数の前記横サイプのうちの少なくとも一部は、前記トレッド踏面部におけるタイヤ幅方向の端部から、タイヤ幅方向の内側に向けて延在しタイヤ赤道部を跨ぐ横断サイプであることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
請求項1記載の空気入りタイヤであって、
前記第1ラグ溝と前記第2ラグ溝とは、タイヤ周方向に互いにずらされていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気入りタイヤであって、
前記横サイプは、当該空気入りタイヤをタイヤ径方向の外側から見たタイヤ平面視において、タイヤ周方向に交互に屈曲していることを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−112056(P2013−112056A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257901(P2011−257901)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)