説明

空気入りタイヤ

【課題】不整路面走行時でもサイドウォール部が損傷しにくくパンクしにくい空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、トレッド部、並びに一対のサイドウォール部およびビード部を具えるとともに、少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスおよびビード部に埋設したビードコアを具えるタイヤにおいて、タイヤ側面部のカーカスプライの少なくとも1枚が、ビードフィラー部よりタイヤ半径方向外側の領域の一部で、前記カーカスプライ(カーカスプライ1)の直下のカーカスプライ(カーカスプライ2)より離間していることを特徴とする空気入りタイヤである。カーカスプライ1およびカーカスプライ2は同一層であっても良いし、異なる層であっても良い。この離間している部分(離間部分)はタイヤの周方向に連続または断続して形成され、さらに離間部がタイヤ表面から突状に張り出し突出部を形成している

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整路面走行時でもサイドウォール部が損傷しにくくパンクしにくい空気入りタイヤの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車は平坦な舗装路だけでなく、砂利道や凸凹道等の未舗装路や泥濘地を含む不整地悪路などの不整路面を走行することも多い。このような不整路面走行時には、通常は接地しないタイヤのサイドウォール部、特にバットレス部に砂利や石などがぶつかりタイヤが損傷し、程度がひどい時にはタイヤがパンクしてしまい、車が走行することができなくなることがある。また、舗装路でも運転ミス等により、道路の縁石とタイヤのサイドウォール部、特にバットレス部と接触して、タイヤが損傷したりパンクしたりすることも多い。
【0003】
このように不整路面走行時等に路面の突起等によりサイドウォール部、特にバットレス部が損傷しカーカスが切断されたりパンクしたりする問題が起こるので、サイドウォール部のゴムを厚くしたり、サイドウォール部に補強層を追加するなどの対策がなされている。
【0004】
図12は、バットレス部にゴム状の突起を設けてゴムを厚くした従来例を示す図である。すなわち、一対のビードコア13と、ビードコア13を巻回しトロイダル形状を成すカーカス12と、カーカス12のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルト層19と、ベルト層19よりタイヤ半径方向外側に配置されたトレッドゴム15とを備えた空気入りラジアルタイヤ16において、バットレス部Bに複数の突起17がタイヤ周方向Rに間隔をおいて配置されている。この複数の突起によりバットレス部のゴムが厚くなり外部からの衝撃に対して耐久性および耐外傷性を持たせるものである。(特許文献1)
【0005】
図13は、サイドウォール部に補強層を配置してサイドウォール部を強化した従来例を示す図である。タイヤTのサイドウォール外表面にサイドプロテクター8が配置され、サイドプロテクター8の外表面にタイヤ周方向に沿って形成された複数本の環状リブ9を備えている。サイドプロテクター8には、カーカス5との間で離間してテキスタイルコード層11が配置されていて、該コード層11はバットレス部分10とカーカス折返し部5Bを覆う範囲で配置されている。サイドプロテクター8はテキスタイルコードを持つ補強層でありサイドウォールを強化している。タイヤTのサイドウォールが岩石等の障害物に遭遇したとき環状リブ9が弾性変形することによってサイドウォールからの入力を負担して入力を緩和しているとともにサイドプロテクター8に亀裂が発生した場合には、環状リブ9により亀裂成長を防止するというものである。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−039961
【特許文献2】特開平07−290911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドウォール部全体のゴムを厚くする方法では、タイヤの重量が増大してしまう。また、ゴム自体は強度が低く外部からの衝撃に弱いので、サイドウォール部の損傷やパンクには効果が小さい。図12に示すようなサイドウォール部にゴムの突起を設ける方法は、タイヤの重量の増大はある程度押さえることはできるが、ゴム自体の強度が低いことに変わりがないため、やはり外部からの衝撃に弱く、サイドウォール部の損傷やパンクには効果が小さい。図13に示すようなサイドウォール部にコード入り補強層を配置する方法は、サイドウォール部の強化には有効であるものの、カーカスの他にコード入りゴム部材を用いるためにその分の重量が増えることと、全体の厚みがさらに増してしまい、タイヤ全体の重量が増大してしまう。図13に示すような環状リブを含む場合は、図12に示すような突起を備えたことと同様の問題、すなわちさらにタイヤの重量を増すとともに、材質がゴム(コードなし)であるため強度が小さく、タイヤ重量が増した割には外部からの衝撃に対して耐久性および耐外傷性が向上しないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記問題点を解消し、補強層を付加せずにサイドウォール部、特に不整路面等の異物によりダメッジを受けやすいバットレス部を効率的にかつ容易に強化する空気入りタイヤの構造を提供する。具体的には本発明の空気式タイヤは下記(1)および(2)の特徴を有する。
(1)本発明は、トレッド部、並びに一対のサイドウォール部およびビード部を具えるとともに、少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスおよびビード部に埋設したビードコアを具えるタイヤにおいて、タイヤ側面部のカーカスプライの少なくとも1枚が、ビードフィラー部よりタイヤ半径方向外側の領域の一部において、前記カーカスプライ(カーカスプライ1)の直下のカーカスプライ(カーカスプライ2)より離間していることを特徴とする空気入りタイヤである。カーカスプライ1およびカーカスプライ2は同一層であっても良いし、異なる層であっても良い。この離間している部分(離間部分)はタイヤの周方向に連続または断続して形成される。
(2)本発明は、さらに離間部によりタイヤ表面から突状に飛び出した突出部を形成していることを特徴とする。この突出部は特にタイヤ幅方向接地端からタイヤ最大幅位置までの間に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の離間部は不整路面走行時に異物等からの衝撃を受け損傷しやすくパンクしやすいサイドウォール部、特にバットレス部にカーカス層の離間部を設けてその離間部上をカーカスプライ層で覆っているので、通常のサイドウォールゴム層だけのときよりも芯材となるコードを有するカーカス層がタイヤ表面付近に近づくことにより、その部分の破断強度が向上する。さらに、カーカス層が離間部の厚いゴム層を覆ってタイヤ内側をプロテクトするので、タイヤ内側に存在するカーカス層まで衝撃が及びにくくなりタイヤ内側の損傷を防止できパンクしにくい空気入りタイヤを作製できる。さらに、サイドウォール部表面に離間部による突出部を設けることによって離間部のゴム層をさらに厚くできるので、外部からのサイドウォール部への衝撃をさらに緩和できる。また、不整路面からの異物を突出部で防止できるので、他の部分、特に突出部よりタイヤ径内側への異物の衝突等も防ぐことが可能となる。この結果、本発明の離間部および突出部を備えることによりパンクしにくい空気入りタイヤを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す図である。
【図2】図2は、離間部の近傍の構造を模式的に示した図である。
【図3】図3は、本発明の離間部付近の模式図を示す図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態を示す図である。
【図5】図5は、離間部による突出部およびリムプロテクトバーを含む本発明の別の実施形態を示す図である。
【図6】図6は、サイドウォール部の離間部に補強層を配置した本発明の空気入りタイヤの実施形態を示す図である。
【図7】図7は、2層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の別の実施形態を示す図である。
【図8】図8は、1層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の別の実施形態を示す図である。
【図9】図9は、2層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の他の実施形態を示す図である。
【図10】図10は、2層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明のさらに別の実施形態を示す図である。
【図11】図11は、本発明の離間部を有する空気入りタイヤの作製方法を説明する図である。
【図12】図12は、バットレス部にゴム状の突起を設けてゴムを厚くした従来例を示す図である。
【図13】図13は、サイドウォール部に補強層を配置してサイドウォール部を強化した従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、補強層を付加せずにサイドウォール部、特に不整路面等の走行時に異物によりダメッジを受けやすいバットレス部を効率的にかつ容易に強化する空気入りタイヤの構造に関する。本発明の主要な構成要素は、サイドウォール部、特にバットレス部にカーカス層同士の離間部分を設け、カーカス層の一部をタイヤ表面に近づけて、その部分を強化するとともに、その表面に近づいたカーカス層が損傷を受けても離間部分でダメッジを緩和して、内側のタイヤ内部の空気層を防護するカーカス層にダメッジが及ばないようにしたものである。
【0012】
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す図である。図1に示す空気入りタイヤ31はトレッド部33、トレッド部33と隣接するサイドウォール部35、およびサイドウォール部35と隣接するタイヤビード部37から構成されている。図1に示す実施形態では2枚のカーカスプライ41、42を具えており、各カーカスプライ41、42は帯状の形状であり、タイヤ周方向に連続的または断続的に形成されている。連続的という意味はタイヤ周方向全体に離間部が存在するということであり、断続的という意味はタイヤ周方向に対して離間部が存在する部分と離間部がない部分が繰り返し現われるということである。タイヤ内側の保護という点では離間部が連続的に形成されていることが望ましいが、離間部があればタイヤの内側の保護効果が出てくるので、離間部が断続的であっても良い。また、離間部が断続的である方が、離間部が全体的にある場合よりも、タイヤ重量は当然小さくなる。トレッド部33において、カーカスプライ41および42は密着して積層され、タイヤ内側にカーカスプライ41、タイヤ外側にカーカスプライ42が配置されている。また、カーカスプライ42の外側にベルト層43が密着して積層している。ベルト層43は2層以上(図1では2層)のコード交差層からなり、トレッド部33を強化する。ベルト層43はトレッドゴム36で被覆され、トレッド溝34が形成されている。尚、本出願では単に内側と記載した場合はタイヤ幅方向中心側、外側と記載した場合はタイヤ表面側を言う。
【0013】
カーカスプライ41および42は密着した状態でタイヤ内側においてトレッド部33からサイドウォール部35を介してビード部37へトロイダル状に延び、タイヤビード部37のビードコア45でビード部37の外側へ折り返される。カーカスプライ41および42は折り返された後位置関係が逆転し、カーカスプライ42がタイヤの内側となり、カーカスプライ41がタイヤの外側となる。図1に示す実施形態では、カーカスプライ42はビードコア45で折り返された後ビードフィラー47の中途で終端しており、カーカスプライ41はビードコア45で折り返された後もビードフィラー47の上端48の上方へ延び、カーカスプライ42に接触してタイヤ半径方向外側へ延びている。カーカスプライがビードコアで折り返された場合に位置関係を明確にするために、タイヤの内側にある方をA、タイヤの表面側にある方をBと名づける。図1に示す場合は41A、41B、42A、42Bとなり、カーカスプライ42Bは上述のようにビードフィラーの中途で終端している。またカーカスプライ41Bはビードフィラー上端48の上方でカーカスプライ42Aに接触し、密着して積層しながらタイヤ半径方向外側へ延びている。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスプライ41Bは、タイヤ幅方向の最大幅となる点(タイヤ最大幅位置)51を越える位置までカーカスプライ42Aに接触しながら延びて、図1に示すように、タイヤの最大幅の点51からタイヤ幅方向接地端49の間でカーカスプライ42Aと離間してタイヤ表面側に突状に張り出し、突状の離間部50に沿って曲がり、再度カーカスプライ42Aに近づく。図1においては、カーカスプライ41Bは突状の離間部50の中途斜面上の位置53で終端しているが、再度カーカスプライ42Aと接触しても良いし、ゴム層を介してトレッド部33の方へ延伸しても良い。或いは、幅方向接地端49までの間に複数の離間部50を具えても良い。また、サイドウォール部35において、カーカスプライ41および42は離間部50上も含めてサイドウォールゴム層38で被覆されている。また、図1における離間部50はサイドウォール部35の表面より突出せずにサイドウォール部35内部に留まり、かつサイドウォール部表面も突出していない。尚、図1に示すカーカス構造は2−0構造であり、カーカスプライ1枚が離反した離間構造である。
【0015】
図2は、図1における離間部の近傍の構造を模式的に示した図である。離間部50にはゴム材料が充填されている。離間部50の厚み、すなわち離間部50におけるカーカスプライ41Bとその直下のカーカスプライ42Aとの距離をL1、離間部50上のカーカスプライ41Bとタイヤ表面との距離をL2、離間部50がないとしたとき(かつ、カーカスプライ41Bがカーカスプライ42Aに接触して(密着して)いるとき)におけるカーカスプライ41Bとタイヤ表面との距離をL0としたとき、これらの両者においてタイヤ表面のレベルは同じ(でその上下とスムーズに接続していて、タイヤ表面に凹凸がない)とすれば、L0=L1+L2である。この場合には離間部の存在の有無において、ゴム材料の量は変化がないので、タイヤ重量の変化もない。L1は離間部50のゴム厚みで、L2は離間部50を覆うカーカスプライ上のゴム厚みと考えて良い。
【0016】
しかし、離間部を具えることにより(すなわち、L1>0)離間部上部のタイヤ表面に異物が衝突したときの衝撃力を緩和することができ、かつタイヤの破損を少なくすることにもなりパンクに至る確率も小さくできる。すなわち、異物による大抵の衝撃は離間部50を覆うコード入りのカーカスプライ41Bで防止される。カーカスプライ41Bを超えた衝撃は離間部へ伝達しても離間部50を構成するゴム層で吸収されて緩和され、離間部50の下のカーカスプライ42Aまで達することは少ないし、達しても衝撃力はかなり小さくなっている。従って、カーカス層41Aおよび42Aが損傷したりすることは殆どなく、パンクに至ることも非常に少なくなる。
【0017】
少しでも離間部を設けることにより上記効果は出て来るが、効果を大きくするにはL1が1mm以上必要であり、好適には3mm以上必要である。また、L2は余り薄いとカーカスがタイヤ表面に出て来るので、L2は1mm以上必要である。2mm程度あればゴム材料の強度もカーカスプライ41Bによってさらに強化されるので望ましい。しかし、余り厚くなるとカーカスプライ41Bによるゴム層の強化も小さくなるので、5mm程度までが良い。
【0018】
離間部50の幅W1、すなわち、タイヤ径方向長さは少しでもあれば効果が出てくるが、L1以上の部分が5mm以上あれば効果も大きくなる。ただし、15mm以上になるとタイヤの弾力性が小さくなるので、乗り心地や操作性が悪くなる。また、W1が大きくなることはカーカスの長さも長くなるので、タイヤ重量も増しコストも増大する。離間部の形状は略台形状が望ましい。すなわち、カーカスプライ42Aとカーカスプライ41Bが密着して離間する点からカーカスプライ42Aとカーカスプライ41Bのなす内側角度αが90°より小さく立ち上がることが望ましい。これによりカーカスの形状変化がスムーズになり、ゴム層に及ぼす応力が緩和される。また、カーカスプライ41Bがたち下がる部分の内側角度γは90°より大きくなることが望ましい。これによりカーカスの形状変化によりゴム層に及ぼす応力が緩和される。
【0019】
本発明のカーカスプライの離間部は、図1に示すように、タイヤの最大幅の点51からタイヤ幅方向接地端49の間、すなわちサイドウォールの上側(タイヤの半径方向外側)に形成される。この部分は通常のタイヤ空気圧で平坦な舗装路を走行しているときには、路面等に接触しないので衝撃を受けることはないが、不整路面走行時には種々の異物が接触しダメッジを受けパンク等が発生する。特に、タイヤの最大幅の点51から幅方向接地端49の間を略三等分した際の中央領域、いわゆるバットレス部39はドレッド部側の領域よりゴムも薄くなり衝撃に弱い部分なので、本発明の離間部を具えることにより衝撃に対して格段に強くなり、離間部の効果が大きい。すなわち、離間部具備構造により、カーカス繊維による補強効果でタイヤ表面付近のゴムの破断強度を向上させ、悪路走行時の外傷等により破壊やパンクに至りやすいバットレス部39を効率的に保護することが可能となる。
【0020】
図1に示す実施形態では、カーカスプライが2層の場合を示したが、カーカスプライが1層の場合も離間部を形成することができる。この場合のタイヤ内側のカーカスプライを41Aとすれば、カーカスプライ41Aは、タイヤ内側においてトレッド部33からサイドウォール部35を介してビード部37へ延び、タイヤビード部のビードコア45でビード部37の外側へ折り返される。さらにカーカスプライ41はビードコア45で折り返された後(この折り返された後のカーカスプライを41Bとする)もビードフィラー47の上端48の上方へ延び、カーカスプライ41Aに接触し、密着し積層しながらタイヤ半径方向外側へ延びる。さらに、カーカスプライ41Bは、タイヤ幅方向の最大幅となる点51を越える位置までカーカスプライ41Aに積層しながら延びて、タイヤの最大幅の点51から幅方向接地端49の間でカーカスプライ41Aと離間してタイヤ表面側に突状に張り出し、突状の離間部50に沿って曲がり、再度カーカスプライ41Aに近づく。
【0021】
このようにカーカスプライが1層のときはビード部で折り返された後、同じカーカスと接触し密着し離間する。カーカスプライが2層以上の場合は、一般的に離間するカーカスプライとその直下のカーカスプライとは層が異なるが、同じ層となる場合もある。そこで、本発明の離間部を有する空気入りタイヤについて本質的な構成要件を説明する。図3は、本発明の離間部付近の模式図を示す図である。図3(a)はカーカスプライが2枚の場合、図3(b)および図3(c)はカーカスプライが3枚の場合を示す。Gの矢印方向がタイヤ半径方向内側、すなわちビード部側、Hの矢印方向がタイヤ半径方向外側、すなわちトレッド部側である。図3(a)は、図1に示した図と類似する図であるが、他の図と比較のために一般化して説明する。
【0022】
図3(a)において、カーカスプライ201とカーカスプライ202がビード部側で接触し密着し積層しているが、離間部203においてカーカスプライ202はカーカスプライ201と離間してタイヤ表面205側に近づく。(このときのカーカスプライ202を離反カーカスと呼んでも良い。)さらにカーカスプライ202は離間部203の形状に沿って延びてタイヤ表面205側からタイヤ内側に近づき、カーカスプライ201と再び接触し密着する。
【0023】
カーカスプライ202とカーカスプライ201との距離をLx、カーカスプライ202とタイヤ表面205との距離をLyとする。(すなわち、Lxは離間部203のゴム層の厚さであり、Lyはサイドウォール部のゴム層204の厚さである。)カーカスプライ202とカーカスプライ201が接触し密着している場合には、Lx=0となる。カーカスプライ202とカーカスプライ201が離間している場合は、Lx>0で、図2のL1(カーカスプライ201と離反カーカスプライ202との距離、すなわち離間部203のゴム層厚み)およびL2(タイヤ表面から離反カーカスまでの距離、すなわち離反カーカス上のサイドウォールゴムの厚み)を使えばLx=L1となり、Ly=L2となる。すなわち、L1は離間部203のゴム層の厚さであり、L2は離間部203上のサイドウォール部のゴム層204の厚さである。また、離間部203の隣接部におけるLyは、図2のL0を使えばLy=L0となる。すなわち、L0はカーカスプライ201および202が密着して積層している場合のサイドウォール部のゴム層204の厚さである。
【0024】
図2において説明したように、離間部203の存在によって充分な効果を得るには一定程度の離間距離が必要である。離間部203上においても密着部におけるカーカスプライ202の厚みが変わらないので、L0=L1+L2となる。図2において説明した様に、L1は1mm以上必要であり、好適には3mm以上である。また、離間部203が略台形形状の場合L1の部分の長さをW1としたとき、5mm以上あれば効果も大きくなる。ただし、15mm以上になるとサイドウォール部のタイヤの弾力性が小さくなるので、乗り心地や操作性が悪くなる。尚、L2は1mm以上あると良い。好ましくは2mm以上である。ただし5mm以上になるとサイドウォールゴム層の強度が弱くなる。ただし、サイドウォール部のゴム層の厚みL0が厚い時はL2が5mm以上になる場合もあるので、その時の条件はL1の50%以下とする。このような構造により、カーカスコードによる補強効果でタイヤ表面付近のサイドウォールゴムの破断強度を向上させることができ、さらに離間部の存在により外部衝撃を緩和することもできるので、悪路走行時の外傷により破壊やパンクに至りやすいサイドウォール部、特にバットレス部を効率的に保護することが可能となる。
【0025】
カーカスプライ202が離間部203でカーカスプライ201と離間する点をE、またカーカスプライ202が再びカーカスプライ201と接触し密着する点をFとする。図1および図2の場合では離間部に沿って伸びてきたカーカスプライは離間部の斜面を下りるときにその斜面の中途で終端となっているが、その場合には終端となっているカーカスプライを延長して直下のカーカスプライとの交点をFと考えれば良い。E点におけるカーカスプライ202とカーカスプライ201とのなす角度をαとすると、図2において説明した様に、α<90°が望ましい。同様に、F点におけるカーカスプライ202とカーカスプライ201とのなす角度をβとすると、β<90°が望ましい。
【0026】
本発明の離間部はL1>0であれば効果が出てくるので、離間部203の形状は略3角形形状、略半円形状や略楕円形状等でも良い。また、図3(a)に示す図は、カーカスプライ201およびカーカスプライ202は異なったカーカスプライとして記載したが、同じカーカスプライであっても良い。上述したように1層のカーカスプライでも離間部を形成できる。たとえば、上に重なり離間するカーカスプライ202は、折り返されてきたカーカスプライ201Bで、下になるカーカスプライはタイヤ内側の201Aとなるケースである。
【0027】
あるいは、このカーカスプライ202も内側を構成するカーカスプライとしても良い。すなわち、カーカスプライ201および202が密着して積層しH側から延びて、F点でカーカスプライ202がカーカスプライ201と離間して離間部203を形成し、E点で再び密着し積層してG側へ延びていく場合でも良い。この場合は、一般にはビード部で折り返されたカーカスプライは離間部203までは延びずに途中で終端している。ただし、折り返されたカーカスプライが離間部203の方へ延びて、さらに離間部のカーカスプライ202の上に密着して積層することもできる。
【0028】
あるいは、ビード部で折り返された2層のカーカスプライ201および202が積層したままタイヤ半径方向外側へ延びてきた場合にも本発明の離間部を適用することができる。すなわち、カーカスプライ201はその下のカーカスプライと密着しており、カーカスプライ202は、E点でカーカスプライ201と離間して、離間部に沿って延びてF点で、その下のカーカスプライと密着しながら延びてきたカーカスプライ202と再び接触する。以上のケースでも離間部を形成する効果は離間部がない場合と比較して大きい。尚、カーカスプライ202が折り返されて延びてきた場合には、図1および図2に示したように、離間部203の斜面の途中で終端しても良い。サイドウォール部において、離間部の上部をカーカス層が覆っていれば、完全に離間部を被覆していなくても、外部衝撃に対して充分な効果がある。
【0029】
図3(b)は、離間部の構造が図3(a)とは異なるタイプの構造を示す図である。すなわち、離間部203のG側においてカーカスプライは3層構造で密着して積層しており、離間部203のH側においてカーカスプライは2層構造で密着している場合である。たとえば、タイヤの内側に配置されているカーカスプライ層(カーカスプライ層本体と呼んでも良い)のうちのタイヤ外側(表面側)のカーカスプライ201(すなわち、201A)があって、ビード部で折り返された他のカーカスプライ206(この場合、206Bとなるが201Bでも良い)がカーカスプライ201と密着しながら延びてきてE点でカーカスプライ201と離間し離間部203の最初または中途で終端する。しかも、カーカスプライ206上に密着し積層して一緒に折り返されて延びてきたカーカスプライ202(この場合は、201Bとは異なる)が、離間部203を形成する場合である。このときは、図3(b)から分かるようにL1+L2>L0となる。もっと正確に記載すれば、カーカスプライ206の厚みをt0とするとL1+L2=L0+t0となる。このような場合でも本発明の離間部を形成できるので、サイドウォール部を強化できる。また、カーカスプライ206は折り返されて延びてくるカーカスプライ層であるが、カーカスプライ202は、H側ではタイヤ内側のカーカスを構成するカーカスプライであっても良い。あるいは、201、206および202の3つのカーカスプライがビード部で折り返されてきたカーカスプライであっても良い。
【0030】
図3(c)は、図3(b)のバリエーションとも言えるタイプである。すなわち、離間部203の上部は2層のカーカスプライ202および207で形成される。この場合は、L1+L2=L0が成立する。また、離間部203の上部は2層のカーカスプライ202および207で防護されているので、離間部203およびその下のカーカスプライ201はかなり強固に保護される。この場合もカーカスプライの関係は種々選択することができる。たとえば、カーカスプライ202および207は折り返されて延びてきたカーカスプライであっても良いし、カーカスプライ201および202は内側カーカス層を構成するカーカスプライとしても良い。
【0031】
以上から明白なように、本発明の離間部は、サイドウォール部においてカーカスプライが2層以上重なって積層されている部分の一部において、カーカスプライが離間している部分である。離間部はカーカスプライ積層部分の端部側にあっても良いし中間部にあっても良い。この離間した2層のカーカスプライは同じ層の場合もあるし、異なる層の場合もある。また、離間する2層のカーカスプライは、両方がタイヤ内側を構成するカーカスプライの少なくとも一部である場合もあれば、下側(タイヤ内側の方)がタイヤ内側を構成するカーカスプライであり、上側(タイヤ外側の方)のカーカスプライがタイヤ外側を構成するカーカスプライ(すなわち折り返されたカーカスプライ)である場合もあるし、両方がタイヤ外側を構成するカーカスプライの少なくとも一部である場合もある。さらに、カーカスプライ層は3層よりも多くても良いことも明白である。
【0032】
このように種々のタイプの離間部でも、サイドウォール部のタイヤ表面にコード入りのカーカスプライを近づけることにより、単純にゴム層の厚みを増加するよりも芯材となるカーカスがタイヤ表面付近にくるようにすることで、最も損傷しやすいサイドウォール部や特にバットレス部の破壊強度を向上させ、上述したサイドウォール部を強化する効果を発揮することができる。後述するようにサイドウォール部、たとえばバットレス部に突出部を設けるなどして、厚くした形状を使い、その盛り上げ部(突出部等)内に離反カーカスプライを配置するとサイドウォール部を強化する効果がさらに大きくなる。この結果サイドウォール部や特にバットレス部の耐カット性も向上した空気入りタイヤを実現できる。
【0033】
図4は、本発明の別の実施形態を示す図である。図4に示す実施形態において、カーカスプライは1層であり、しかも離間部がタイヤ表面より突状に飛び出して突出部を形成している。図4に示すように、1層のカーカスプライ61(61A)は、空気入りタイヤ60の内側においてトレッド部33からサイドウォール部35を介してビード部37へ延び、タイヤビード部のビードコア45でビード部37の外側へ折り返される。カーカスプライ61(61B)はビードコア45で折り返された後ビードフィラー47の上端48の上方へ延び、カーカスプライ61Aに接触し密着した状態で、タイヤ幅方向の最大幅となる点51を越える位置までカーカスプライ61Aに密着しながら延びて、さらに、タイヤの最大幅の点51から幅方向接地端49の間でカーカスプライ61Aと離間してタイヤ表面側に突状に張り出し、突状の離間部63に沿って曲がり、再度カーカスプライ61Aに近づく。図4に示す実施形態では離間部63はタイヤ表面から突状形状で突出している。このタイヤ表面から突出した部分(突出部)65ではカーカスプライ61Bとタイヤ表面までの距離、すなわち突出部におけるゴム層の厚みはL2となっている。離間部63の厚み、すなわち離間部63におけるターカスプライ61Bとカーカスプライ61Aの距離はL1となっている。離間部63以外の部分のサイドウォールゴム層の厚みL0とすると、L2+L1>L0である。突出部の65の突出部分の厚さ(突出部がないとした場合の表面から突出部上端までの距離)をL3とすれば、L2+L1=L0+L3である。
【0034】
この突出部65は不整路面走行時異物等に接触したときタイヤを保護する。カーカスプライ61Bがタイヤ表面に接近しているので、L2部分のゴム層も強化されており外傷を受けにくい。さらに、離間部63のゴム厚が厚くなっているので、その下層のカーカスプライ61Aへの衝撃も緩和される。従って、不整路面の突起等によりカーカスプライ61Bが外傷を受けても、下層の61Aのカーカスコードやゴム層(ブチル層等)にまで不整路面の突起等が到達することを防止し、タイヤの荷重支持能力や空気保持性能を低下させない。また、突出部65はサイドウォール部から上側{(突出部65を除いた)タイヤ幅最大位置51からタイヤ径外側}で突出しているので、不整路面等からの異物がサイドウォール部から下側{(突出部65を除いた)タイヤ幅最大位置51からタイヤ径内側}、特にリム部やビード部のゴム層に衝突するのを防止している。また、図1に説明した様に、この突出部65はバットレス部39に設けると最も効果的である。この突出部はタイヤを保護しているという意味でプロテクトバーと呼んでも良い。
【0035】
この突出部65はタイヤ周方向に連続的でも良いし、あるいは断続的でも良い。連続的という意味はタイヤ周方向全体に突出部が存在するということであり、断続的という意味はタイヤ周方向に対して突出部が存在する部分と突出部がない部分が繰り返し現われるということである。タイヤ保護の点では突出部が連続していることがより望ましいが、ゴム量が多くなるので軽量化の点では断続的である方が良い。断続している場合には、突出していない部分でも図1に示したような離間部を設けておくことが望ましい。また突出部65のタイヤ表面から突出している部分の高さはタイヤ表面から1mm〜20mmであり、好適には5mm〜15mmである。この条件であれば上述の効果がある。(余り出過ぎると走行時の障害となるだけでなく、突出部の強度低下の問題やタイヤ重量増の問題が生じる。)さらに突出部65をタイヤ幅方向の最大幅にすることにより、異物がタイヤ半径方向内側へ接触することをさらに防止することができ、突出部65より内側部分のタイヤも効果的に保護される。すなわち、この場合は突出部65がないとしたときのタイヤ最大幅の位置51より突出部65の方が外側に出ている。この場合、外側に出る突出部の量は2〜3mm程度が望ましい。尚、図4に示すカーカス構造は1−0構造で、カーカスプライ1枚が離反した離間構造である。
【0036】
図5は離間部による突出部およびリムプロテクトバーを含む本発明の実施形態を示す図である。すなわち、図5に示すように、空気入りタイヤ70はリムに組まれた状態でリムフランジ71近傍に当たる部分に膨出部73を備えている。悪路走行時は小石等の異物がサイドウォール部だけでなくビード部側にもあたり、リム組みされたタイヤ70のリムフランジ71やリムフランジ71の上側のビード部からサイドウォール下側を損傷することがある。特に図5に示すような扁平空気入りタイヤ70は断面高さが低いためその危険性が高い。そこで、本発明は、サイドウォール部上側に設けた離間部63およびそれによる突出部65に加えてさらにリムフランジ71近傍でリムフランジ71との接触部分からタイヤの最大幅部分51(突出部65および膨出部73を除く)までのサイド領域にリムフランジ71よりもタイヤ幅方向に突出する膨出部73を備える。
【0037】
この膨出部73はタイヤの周方向に連続的に形成しても良いし、断続的に配置しても良い。また膨出部73をタイヤ半径方向に複数個配置しても良い。膨出部73は主としてゴム部材で作製されるが中に補強コード入りの補強層を埋設しても良い。あるいは、補強コードを埋設した補強材75、いわゆるスチールレインフォースをビードフィラーおよび/またはビードコアの側面に貼りつけても良い。
【0038】
膨出部73を設けることによりこの領域のゴム部材が厚くなっているので、小石等の異物が接触しても内部のビードコアやビードフィラーへ与える衝撃を減らすことができる。その結果、ビード部のビードコアやビードフィラーへの損傷を大幅に減少させることができる。突出部65も備えているので、これらの効果は格段に高まる。また膨出部73はタイヤ幅方向へ突出しているので、跳ね上がった小石等の異物がリムフランジ71に接触することを防止でき、さらに縁石等がリムフランジ71に接触することも防ぐことができるので、リムフランジ71の損傷を大幅に減少させることができる。またスチールレインフォース等の補強層をさらに備えることにより、ビード部がさらに強化される。
【0039】
膨出部73は、サイド部にゴムボリューム部を一体成形で作製しても良いし、タイヤ成形後、後付けでサイド部にゴム保護材を取り付けて作製しても良い。後付けでサイド部に取り付ける場合は、たとえば空気入りタイヤのサイド部およびゴム保護材に一対の凹部および凸部を設け、この凹部および凸部を相互に係合させることにより、簡便に取り付けることができる。従って、この部分が損傷した場合でも容易に交換できるという利点もある。
尚、図5においては離間部が突出部となっている場合を示しているが、図1に示すような離間部がタイヤ表面より突出していない場合も膨出部73を設ける効果は同様である。
【0040】
図6はサイドウォール部の離間部に補強層77を配置した本発明の空気入りタイヤの実施形態を示す図である。図6に示す実施形態においては、図4に示す場合と同様に離間部63は突出部65を伴っているが、図1に示すような突出部のない空気入りタイヤ60の離間部に補強層77を連続的にまたは断続的に配置しても良い。突出部65を持つ場合は離間部63のゴム層の厚みが厚くなっているので、補強層を配置するスペースは広い。この離間部63のゴム層は、補強層77を有しさらに強化されているので、タイヤ表面に大きな衝撃が加わっても補強層の下のカーカスプライ61Aを損傷することが殆どなくなり、パンク等の大きな問題に波及することはなくなる。補強層77はスチール等の金属コードやアラミド繊維等の有機繊維コードを含むゴム、高強度ゴムあるいは短繊維配合ゴムを使用した補強層である。また、補強層77は離間部63以外の部分にも連続的に、あるいは断続的に配置しても良い。
【0041】
図7は、2層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の別の実施形態を示す図である。図1に示す場合と同様に、空気入りタイヤ80において、密着して積層した2枚のカーカスプライ81(81A)および82(82A)が、タイヤ内側においてトレッド部33からサイドウォール部35を介してビード部37へ延び、タイヤビード部のビードコア45でビード部37の外側へ折り返される。カーカスプライ81および82は折り返された後位置関係が逆転し、カーカスプライ82がタイヤの内側となり、カーカスプライ81がタイヤの外側となる。図7に示す実施形態では、カーカスプライ82(82B)はビードコア45で折り返された後ビードフィラー47の途中で終端しており、カーカスプライ81(81B)はビードコア45で折り返された後もビードフィラー47の上端48の上方へ延び、カーカスプライ82Aに接触して密着しながらタイヤ半径方向外側へ延び、さらに、タイヤ幅方向の最大幅となる点51を越える位置までカーカスプライ82Aに接触しながら延びて、タイヤの最大幅の位置51(突出部65を除く位置で)から幅方向接地端49の間でカーカスプライ41Aと離間してタイヤ表面側に突状に突出し突状部(突出部)65を有し、突状の離間部63に沿って曲がり、再度カーカスプライ82Aに近づく。図7に示す実施形態ではカーカスプライ81Bは離間部の中途で終端している。このように2層のカーカスで突出部を有するタイヤにおいても本発明の離間部および突出部を有する構造を作製できる。尚、この実施形態のカーカス構造は2−0構造で、1枚のカーカスプライが離反した離間構造である。
【0042】
図8は、1層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の別の実施形態を示す図である。図8は図4に示す実施形態において、外側に折り返されたカーカスプライ61Bが離間部63で下層のカーカスプライ61Aから離間して、突出部65を形成する離間部63に沿って延び、カーカスプライ61Aに再び接近して接触し、離間部63を完全に包み込んだ構造を示す。カーカスプライ61Bはカーカスプライ61Aと接触し密着しながらトレッド部まで延びている。このように、本発明の離間部および突出部を有する構造は一層のカーカスプライを用いても完全に離間部63を囲みこんだ突出部を含む構造の空気入りタイヤを作製することもできるので、カーカスプライ一層でもサイドウォール部を強化することもできる。尚、この実施形態のカーカス構造は1−0構造で、カーカスプライ1枚が離反する離間構造である。
【0043】
図9は、2層のカーカスプライを有し、突出部を持つ離間部を含む本発明の他の実施形態を示す図である。図9に示すように、2層のカーカスプライ85(85A)および86(86A)は、タイヤ内側のトレッド部において密着し積層しているが、サイドウォール部の幅方向接地端49からタイヤの最大幅の位置51の間で離間して、突状の離間部63をおよび突出部65を形成している。カーカスプライ86Aは離間部63を覆った後で、再びカーカスプライ85Aと接触し密着して積層しながらタイヤ径方向内側へ延び、ビードコア45で折返した後、2層のカーカスプライ85(85B)および86(86B)のうち内側となったカーカスプライ86Bはビードフィラー47に密着して延びて、ビードフィラー上端48でカーカスプライ86Aと接触して密着し積層しながらタイヤ径方向外側へ延びる。一方カーカスプライ85(85B)はビードフィラー部の中途で終端する。そして、カーカスプライ86Bは、離間部63でカーカスプライ86Aに密着しながら離間部63を取り巻き、離間部63の上部を経た後タイヤ内側に接近し、離間部63の斜面の中途で終端している。図9に示す実施形態では、離間部63は突出部65を有している。この実施形態では、タイヤ内側のカーカスが一部分で離間するとともに離間部のタイヤ表面側には2層のカーカスプライが存在するため強化され、外部からの衝撃に対して強い構造となっている。このような複雑なカーカスプライの配置構造でも本発明の離間部および突出部(突状部)を形成することができる。
【0044】
図10は、2層のカーカスプライを有し、離間部を持つ突出部を含む本発明のさらに別の実施形態を示す図である。図10に示すように、1層のカーカスプライ87(87A)は、タイヤ内側のカーカスを構成してトレッド部からサイドウォールを経てビード部37を内側から外側へ折り返し、カーカスプライ87(87B)はビードフィラー47の上端48でカーカスプライ87Aと密着して積層しながらタイヤ半径方向外側へ延びてサイドウォール部の途中で終端する。一方、もう1層のカーカスプライ88(88A)は、トレッド部でカーカスプライ87Aと積層しながらサイドウォール部側へ延び、サイドウォール部の幅方向接地端49からタイヤの最大幅の点51の間でカーカスプライ87Aから離間して、突出部65を形成する離間部63を形成している。さらにカーカスプライ88Aは離間部63を超えた後は、再びカーカスプライ87Aと密着し積層して、サイドウォール部の途中でカーカスプライ87Bの終端部でカーカスプライ87Bと接触し密着しながら、折り返す前にビードフィラー部の中途で終端している。この実施形態はカーカス構造が1−1F構造で、カーカス1枚が離反した離間構造である。このようなバリセーションに富む構成でも本発明の離間部を有する突出部をサイドウォール部に形成してサイドウォール部を強化することができる。
【0045】
図11は、本発明の離間部を有する空気入りタイヤの作製方法を説明する図である。図1に示す実施形態の空気入りタイヤを作製するには、まずカーカスプライ部材を円筒状ドラム(図示省略)に供給して所定プライ数(2枚、41、42)だけ巻き付け、巻き付けたドラム上のカーカスプライ部材41、42に一対のビードコア部材45およびビードフィラー部材47を貼り付け固定した後、各ビードコア部材45の周りにカーカスプライ部材41、42を折り返して筒状グリーンケースとする。このとき、離間部50となる部分のカーカスプライ41Cを離間部50の形状に変形させておき、この離間部50をカバーするカーカスプライ41Cは下層のカーカスプライ42Aと密着させないことが重要である。次にグリーンケースのビードコア部材45の相互間隔を狭めるとともにグリーンケースを膨張変形させて外周にベルト部材43およびトレッドゴム部材91を貼りつける。トレッドゴム部材91の両端部(図10では片側右半分のみ記載)はグリーンケースの膨張変形に従い内側(矢印方向へ)変形させながらカーカスプライ部材42Aに接着する。従って。トレッドゴム部材91の両端部にある突状の離間部領域93も内側に変形しカーカスプライ部材42Aに接着する。この離間部93にカーカスプライの離間部となる部分41Cを合わせて密着させて貼りつける。
【0046】
さらに、サイドウォールゴム部材95の離間部に嵌合する領域97を合わせてカーカスプライ部材41Cおよびトレッドゴム部材の両端部側に貼りつけ、未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を得る。この未加硫タイヤの製造方式は、トレッドゴム部材91を貼りつけた後でサイドウォールゴム部材95を貼りつけているので、SOT(Sidewall Over Tred)構造またはサイド後貼り方式と呼ばれる。この後、グリーンタイヤを金型にセットしブラダーでインフレーションさせてグリーンタイヤを金型に押しつけて加硫する。このような方法で、本発明の離間部を有し、および/または突出部を有する空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0047】
表1に示す空気入りタイヤ(サイズ:205/55R16)を試作し、そのタイヤを車両(2000ccクラス乗用車)に装着して未舗装道路(採石場内)を長期間走行させ、バットレス部における外傷により走行不能になるまでの走行距離とバットレス部の深さ1.5mm以上の傷の個数により評価した。表中カーカス構造のHiはバットレス部に形成した離間部の斜面で終端していることを示す。(図1を参照)カーカス離反とは離間部を形成していることを意味する。また、プロテクトバーとは突出部をバットレス部に設けていることを意味する。表1の評価結果により従来タイヤに比較すると、本発明の離間構造を有する空気入りタイヤは耐久性がかなり良いことが分かる。突出部を設けると耐久性がさらに向上することが確認された。
【0048】
【表1】

【0049】
以上説明したように、本発明はサイドウォール部にカーカス層の離間部および/または離間部を含む突出部を備えた空気入りタイヤである。不整路面走行時にこの空気入りタイヤを装着すると従来タイヤに比べて耐久性が飛躍的に向上する。種々のカーカス構造にも適用できるので、汎用性も高い。
【0050】
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容を記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることも言うまでもない。さらに、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の空気式タイヤは、不整路面走行時に耐久性良好なタイヤとして、各種の車両に使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・ビード部、2・・・サイドウォール、3・・・トレッドクラウン、
4・・・ビードコア、5・・・カーカス、5A・・・トレッドカーカス、
5B・・・カーカス折返し部、6・・・ベルト層、
7・・・ジョイントレスキャッププレイヤ、8・・・サイドプロテクター、
9・・・環状リブ、11・・・テキスタイルコード層、
11A・・・キスタイルコード層(11)のコード、11B・・・コード層11の径外端、
11Cテキスタイルコード層の径内端、12・・・カーカス、13・・・ビードコア、
14・・・ビードフィラー、15・・・トレッドゴム、
16・・・空気入りラジアルタイヤ、17・・・突起、19・・・ベルト層、
31・・・空気入りタイヤ、33・・・トレッド部、34・・・トレッド溝、
35・・・サイドウォール部、36・・・トレッドゴム、37・・・タイヤビード部、
38・・・サイドウォールゴム層、
39・・・バットレス部、41・・・カーカスプライ、42・・・カーカスプライ、
43・・・ベルト層、45・・・ビードコア、47・・・ビードフィラー、
48・・・ビードフィラー47の上端、49・・・タイヤ幅方向接地端、
50・・・離間部、51・・・タイヤの最大幅位置、
53・・・離間部50の中途斜面上の位置、
60・・・空気入りタイヤ、61・・・カーカスプライ、63・・・離間部、
65・・・突出部、70・・・空気入りタイヤ、71・・・リムフランジ、
73・・・膨出部、75・・・補強材、77・・・補強層、80・・・空気入りタイヤ、
81・・・カーカスプライ、82・・・カーカスプライ、85・・・カーカスプライ、
86・・・カーカスプライ、87・・・カーカスプライ、88・・・カーカスプライ、
91・・・トレッドゴム部材、93・・・離間部領域、
95・・・サイドウォールゴム部材97・・・嵌合領域
201・・・カーカスプライ、202・・・カーカスプライ、203・・・離間部、
204・・・サイドウォール部ゴム層、205・・・タイヤ表面、




【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部、並びに一対のサイドウォール部およびビード部を具えるとともに、少なくとも一枚のカーカスプライからなるカーカスおよび前記ビード部に埋設したビードコアを具える空気入りタイヤにおいて、タイヤ側面部のカーカスプライの少なくとも1枚が、ビードフィラー部よりタイヤ半径方向外側の領域の一部において、前記カーカスプライ(カーカスプライ1)の直下のカーカスプライ(カーカスプライ2)より離間していることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
カーカスプライ2はカーカスプライ1と同一層であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
カーカスプライ2はカーカスプライ1と異なった層であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記離間している部分(離間部分)は、タイヤ幅方向接地端からタイヤ最大幅位置までの間に存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記離間部分は、タイヤ幅方向接地端からタイヤ最大幅の位置までの間を略3等分したときの中央の領域(バットレス部)に存在することを特徴とする、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記離間部分において、カーカスプライ1およびカーカスプライ2の離間距離は1mm以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記離間部分上における最外側のカーカスプライよりタイヤ表面までの距離は、1mm〜5mmの間であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記離間部分はタイヤの周方向に連続していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記離間部分はタイヤの周方向に断続していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記離間部分によってタイヤの表面の少なくとも一部がタイヤ表面外側に突状になっていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記突状部分はタイヤの周方向に連続していることを特徴とする、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記突状部分はタイヤの周方向に断続していることを特徴とする、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
タイヤ幅方向接地端からタイヤ最大幅位置までの間にタイヤの周方向に突状部を設け、前記突状部の少なくとも一部に前記離間部分が存在することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記突状部は、少なくとも1つの周方向に連続する突状部であることを特徴とする、請求項13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記突状部は、少なくとも1つの周方向に断続する突状部であることを特徴とする、請求項13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
前記突状部の少なくとも1部がタイヤ幅方向の最大幅となることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記離間部に少なくとも1枚の補強層を配置することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
前記補強層は金属、有機繊維、高強度ゴム、または短繊維を使ったゴム層であることを特徴とする、請求項17に記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
リムに組まれた状態でリムフランジ近傍に膨出部を備えていることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項20】
前記離間部分のカーカス1のタイヤ径方向長さは10mm〜30mmであることを特徴とする、請求項1〜19のいずれかの項に記載の空気入りタイヤ。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−52749(P2013−52749A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192174(P2011−192174)
【出願日】平成23年9月3日(2011.9.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)