説明

空気圧縮機

【課題】
インバータ制御手段を介して駆動制御されるモータと、モータによって駆動されて圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮機によって生成された圧縮空気を貯蔵する空気タンクとを備えた空気圧縮機において、発熱部分を効率よく冷却することができる空気圧縮機を提供する
【解決手段】
モータの回転軸には本体カバー8の外部から吸込んだ冷却風をモータ側へ流通させる冷却ファン14を設け、インバータ制御手段を構成する発熱部品を熱伝導性の良好な材料により構成されたケース内に収容して構成した制御回路部5を、冷却ファン14の回転軸前方、即ち本体カバー8と冷却ファン14の間に配置する。そして冷却ファンの回転により発生する吸引空気流は本体カバー8に設けた前面の風窓より取り込み、制御回路部5を通過した後にモータ部2へ流れることで制御回路部を冷却するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気工具を駆動するために必要な圧縮空気を生成するのに好適な空気圧縮機に関し、特に、インバータ制御手段を含む回路基板、モータ、圧縮機などの発熱部分を効率よく冷却することができる空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場などでは、圧縮空気の圧力で釘やネジを木材などに打ち込こむ携帯型の空気工具が広く使用されている。一般に、空気工具等を駆動する空気圧縮機は、モータ等の駆動部の回転出力軸の回転運動が、圧縮空気生成部のクランク軸を介してシリンダ内のピストンの往復運動として変換され、ピストンの往復運動によってシリンダの吸気弁から吸い込んだ空気を圧縮するように構成される。シリンダ内で圧縮された圧縮空気はシリンダの排気弁からパイプを通して空気タンクに吐出され、空気タンク内に貯留される。
【0003】
空気圧縮機が2つの空気タンクから構成される場合は、お互い離間して平行に設けられる略円筒形の2つの空気タンクと、2つの空気タンクを一定の距離をおいて連結するフレームを有し、そのフレームの上側に、駆動部と圧縮部(圧縮空気生成部)が設置される。圧縮部で圧縮された空気は、一方の空気タンクに吐出される。2つの空気タンクは、お互いがパイプで連通され、一方の空気タンクからパイプを介して他方の空気タンクに圧縮空気を流入させることによって、双方の空気タンク内の圧力が同一に保たれる。釘打機等の空気工具は、この空気タンク内に貯留された圧縮空気を利用するもので、高圧の圧縮空気は空気タンクに取付けられた減圧弁により適正圧力へ調整され、エアホースを介して空気工具等へ供給される。この種の空気圧縮機は、例えば、特許文献1に開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−188954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の空気圧縮機は、空気タンク、モータ部、及び圧縮部を覆う本体カバーを備える。そして、圧縮部を駆動するモータへの電力の供給は、モータのロータの回転位置を検出するとともにこの検出信号に応じてモータのステータコイルに供給する電流、電圧を制御することによって行われる。近年、空気圧縮機においては、インバータ制御手段が広く使用されており、モータを効率的に駆動させて消費電力を低減している。
【0006】
インバータ制御のための回路は、半導体スイッチング素子やその他の部品によって構成され、半導体スイッチング素子はその駆動中の発熱が大きいため冷却が必要である。冷却が不十分な状態で使用すると素子が熱により破壊されてしまい、モータの制御ができなくなってしまう。そのため、制御回路部に保護回路を設け、これらの部品の温度が所定の温度に達した時にモータへの電力の供給を遮断して素子の破壊を防止するようにするのが一般的である。しかし、電力の供給が遮断されると、空気圧縮機の圧縮運転がその都度停止してしまうというデメリットがある。
【0007】
近年では釘打機だけでなく、ドライバなども圧縮空気を使って動作させる空気工具が広く使われるようになり、空気消費量の増加に伴い空気圧縮機の運転頻度が多くなってきた。よって、インバータ制御手段を使用している空気圧縮機においてはインバータ制御回路の過熱を防止し、保護回路の動作による運転停止の頻度を低減することが望まれていた。
【0008】
従来技術においては、発熱部品を備えたインバータ制御回路部を、熱伝導性の良好なアルミ材料などにより構成されたケース内に発熱部品がケースと密着するように収容している。そして、一対の空気タンクの間で、かつ、モータと圧縮機の少なくとも何れか一方の下方にインバータ制御回路部を配置し、モータの回転軸の圧縮機側端部に取付けた冷却ファンにより発生する空気流の一部を空気タンク、圧縮機、モータそして制御回路部によって囲い構成にした通風路へ通風することにより発熱部品を冷却するよう構成していた。
【0009】
しかしながら、空気圧縮機を連続または断続的に運転していると、制御回路はもちろんのことモータのステータコイルの銅損による発熱や圧縮部のボールベアリング、ピストンリング等による摩擦損による発熱、空気圧縮時の圧縮摩擦熱等により、モータ部、圧縮部、空気タンク部がそれぞれ温度上昇するので、冷却用の空気通路内は高温状態になり、外気を取り込んでもすぐに冷却空気自体の温度が上昇してしまい、高温状態になった空気で制御装置の回路素子を冷却することになるため、冷却効果を著しく低下させてしまう。このような状態で運転を行なうと結果的に制御回路素子の温度が所定の温度に達してしまい保護回路が動作し、運転が停止してしまうことがあった。
【0010】
また、発熱部品がケースによって覆われている上に、一対の空気タンクの間であって、モータと圧縮機の少なくとも何れか一方の下方に制御回路を配置しているために、本体カバー内部に溜まった熱を排気するための排気口不足による本体カバー内部の温度上昇抑制と、空気タンク間に設けた風路部に十分な冷却風を通風させるため、圧縮機側に取付けた冷却ファンは圧縮部やモータの外形より大きな軸流形の冷却ファンを設定しなければならず、圧縮機本体をコンパクトに設計するための弊害となっていた。
【0011】
さらに、上述した弊害を避けるために、大形の冷却ファンを使用し、本体カバー内部全体を通風させると、圧縮機やモータ部などの凹凸部により気流が乱れ、効率よく冷却風を外部へ排出することができず、本体カバー内部の温度を上げる原因となっていた。
【0012】
従って、本発明の主な目的は、モータ、圧縮機、モータの回転を制御する制御回路を有する空気圧縮機において、発熱部分を効率よく冷却することができる空気圧縮機を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、モータの回転を制御する制御回路の設置場所を工夫することにより、制御回路に含まれるインバータ制御手段等の発熱の大きい素子を効率よく冷却することができる空気圧縮機を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本体カバー内の空気の流れをスムーズにした空気圧縮機を提供することにある。
【0015】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0017】
一定の間隔を隔てて平行に配置され、圧縮空気を貯留する一対の空気タンクと、外部より吸入した空気を圧縮して空気タンクに供給する圧縮部と、圧縮部に連結され圧縮部を駆動するモータを有し、モータの軸方向が空気タンクの長手方向軸と略平行となるように、モータと圧縮部を一対の空気タンクの上方に配置した空気圧縮機において、モータの回転軸の一端に冷却風を発生させる冷却ファンを設け、モータを駆動するための制御回路部を、一対の空気タンクの上方であって、冷却ファンの軸方向投影領域と重なる位置になるように配置した。この制御回路部は回路基板を収納する収納ケースを有し、冷却ファンの軸方向投影領域内に収納ケースの一部または全部が含まれるように配置する。ここで、冷却ファンの軸方向投影領域とは、冷却ファンのファン外径、またはファンを収容するハウジングの外径を、回転軸方向に投影した際に含まれる領域または部分をいい、その領域は、一般的に冷却ファンにより発生される空気流の流れとほぼ一致し、冷却ファンによる冷却効果が最も強く影響される。また、空気タンクの上方とは、空気タンクの最上部よりも上という意味だけでなく、空気タンクの長手方向の軸線よりも上、又は、平行に配置された空気タンクを連結するフレームよりも上という概念である。
【0018】
収納ケースは、例えばアルミニウム等の熱伝導性の良好な材料により構成されたケースであり、全面を閉じるか又は少なくとも1面を開放した略直方体のケースである。開放面がある場合は、その開放面の一つを冷却ファン側に向けて、収納ケースを縦置き又は横置きにて配置する。
【0019】
モータのハウジングの一端側には、冷却ファンによって発生される冷却風をステータコイル部へ案内する半球円筒状のファンガイドが設けられる。このファンガイドによって、吸引口からハウジングの内部に吸引された冷却風を、ステータコイルに効率よく導き、モータのハウジングの側部又は後端部から排出させる。ファンガイドの吸引口の直径は、収納ケース自体または開放面の幅よりも小さくするのが好ましく、この場合、吸引口が収納ケースの内部に位置するように配置すると好ましい。
【0020】
冷却ファンは、ファンガイドの内部に設けられた遠心ファンであることが好ましいが、他の吸引ファンであっても同様に用いることができる。ファンガイドには、その外周部に、吸引された冷却風の一部をモータのステータコイルに導かずに外部に排出する吐出口を設けても良い。
【0021】
空気圧縮機には、一対の空気タンクの少なくとも一部分と、圧縮部と、モータを覆うものであって、その前面、側面に空気の通過を可能とする風窓を有する本体カバーを設ける。冷却ファンによって発生される空気流は、本体カバーの前面の風窓(スリット)から吸引され、冷却ファンによって発生される空気流の上流側に設置された制御回路部の周囲を通過し、ファンガイドの内部に入り、モータ内部を通過してモータの側部又は後端部からモータ外部に排出され、その後、本体カバーの側面の風窓から外部に排出される。
【0022】
尚、制御回路部は空気タンクの上方で、冷却ファンの軸方向にみて本体カバーと冷却ファンの間に位置するようにし、冷却ファンによって発生される空気流の領域内に位置するように設置される。そのため、制御回路部はその配置が鉛直方向になるように縦置きにしても良いし、水平方向になるように横置きに設置しても良い。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、モータを駆動するための制御回路部を、一対の空気タンクの上方であって、冷却ファンの軸方向投影領域と重なる位置に配置したので、冷却ファンによって取り込んだ外気を直接制御回路部へ流すことが可能になり、冷却風は温度上昇することなくその大半が制御回路部の冷却に最初に利用されるため、少ない風量で高い冷却効果を得ることができる。また、大形の冷却ファンを用いる必要がなくなり、冷却ファンの小型化を図ることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、制御回路部は回路基板を収納する収納ケースを有し、冷却ファンの軸方向投影領域内に収納ケースの一部または全部が含まれるように、制御回路部を配置したので、冷却ファンによって発生される空気流の流路内に制御回路部が確実に配置されるので、高い冷却効果を得ることができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、収納ケースは、冷却ファンに対面するように、縦置きにて配置されるので、冷却ファンの前方に収納ケースを配置するための大きなスペースを必要とせずに、わずかなスペースで済むので、空気圧縮機をコンパクトに構成することができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、収納ケースは少なくとも1面が開放された略直方体状であり、開放面が冷却ファン側に向けて配置されるので、冷却風は収納ケースの外周壁面から内部壁面へ流れ込み、発熱素子の周囲を通過して吸引口に案内されるので、収納ケース内に熱がこもることなく、冷却風の冷却有効表面積が増加し冷却性能が著しく向上する。
【0027】
請求項5の発明によれば、冷却ファンの外側に位置する半球円筒状のファンガイドを設け、ファンガイド内部に吸引された冷却風を、モータの側部から排出させるようにしたので、モータ内部の熱を効率よく放出することができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、ファンガイドの吸引口の直径は、収納ケースの開放面の幅よりも小さくしたので、冷却ファン12により生じる空気流が制御回路部の収納ケースの前面より側面に沿って流れ、発熱回路素子の放熱フィンとして機能する収納ケースを効果的に冷却でき、しかも、その空気流のほとんどがファンガイド13により吸い込まれるため、冷却効率がきわめて高くなる。
【0029】
請求項7の発明によれば、冷却ファンとして遠心ファンを用いているので、ファンガイドの吸引口から吸引された空気を、円周方向に導き、モータの円周部に位置するステータコイル近傍に冷却風を導くことができ、ステータコイルの冷却効率が向上する。また、遠心ファンを用いることによって、冷却ファンを小型化することができるので、空気圧縮機をコンパクトに構成することができる。
【0030】
請求項8の発明によれば、吸引された冷却風の一部をモータのステータコイルに導かずに外部に排出する吐出口を設けたため、吐出口から出た冷却風を圧縮部に吹き付けて圧縮部も同時に冷却することができるので、制御回路部、モータ、圧縮部等の全てを1つの冷却ファンで冷却することが可能になり空気圧縮機のさらなる小型化を図ることができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、冷却ファンによって発生される空気流は、本体カバーの前面の風窓から吸引され、モータ内部を通過して本体カバーの側面の風窓から排出されるため、圧縮機側に取付けられる冷却ファンによる空気流に影響したり、又は、影響されることなく本体カバー内の空気流の流れをスムーズにし、温度上昇を抑えることができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、モータを駆動するための制御回路部を、空気タンクの上方で、冷却ファンの軸方向にみて本体カバーと冷却ファンの間に設けることにより、冷却ファンによって取り込んだ外気を直接制御回路部へ流すことが可能になり、少ない風量で高い冷却効果を得ることができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、冷却ファンの前側に制御回路部を縦置きに配置したので、空気圧縮機の空気タンクの軸方向の長さの増大を押さえることができ、空気圧縮機をコンパクトに構成することができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、冷却ファンの前側に制御回路部を横置きに配置したので、スペースに余裕がある場合に、冷却ファンによる空気流を乱すことなく制御回路部に対する冷却効果の高い空気圧縮機を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す。図2は、図1に示した空気圧縮機の側面図であり、一部に部分断面を示す。図3は、図1に示した空気圧縮機の空気の流れを説明するための正面図である。
【0037】
図1〜図3に示すように、本発明にかかる空気圧縮機1は、圧縮空気を貯留する一対の空気タンク4a、4bと、圧縮空気を生成し空気タンク4bに供給するための圧縮部3と、圧縮部3を駆動するためのモータを有するモータ部2と、モータの起動・停止(オン・オフ)を制御する制御回路部5を有する。図面上、二点鎖線で示されているのが本体カバー8の断面である。本体カバー8は、少なくとも空気タンク4a、4bの上方と、モータ部2と、圧縮部3と、制御回路部5を覆い、その上面には空気圧縮機1に供給される商用交流電源をオン又はオフするための主電源スイッチ24(図2)が設けられる。
【0038】
空気タンク4a、4bは圧縮空気を貯留するもので、その空気タンクの長手方向中心軸X(図2)が互いに略平行となるように一定の間隔を隔てて並べて配置され、これらの空気タンク4a、4b間にフレーム9、17が溶接又はその他の任意の方法で固定されることによって互いに連結される。空気タンク4a、4bの下方、即ち、長手方向中心軸Xよりも下方には、脚部10(図2、3)が設けられ、空気圧縮機1を床の上に置き易くしている。また、空気タンク4a、4bの前方及び後方にはハンドル35が設けられ、空気圧縮機1の移動を容易にしている。
【0039】
圧縮空気は圧縮部3で生成され、圧縮部3の吐出口より吐出管30を通して空気タンク4bに供給される。供給された圧縮空気は、空気タンク4b内で、例えば3.0〜4.2MPaの圧力を有する。また、空気タンク4aと4bは、連結管(図示せず)によって連結されており、両方の空気タンクの圧力は均一に保たれる。空気タンク4aには安全弁(逃がし弁)7が取り付けられ、空気タンク4a、4b内の圧力が異常に高くなったときに、その圧縮空気の一部を外部に吐出させて、異常な圧力上昇を防止する。
【0040】
双方の空気タンク4a、4bには、圧縮空気取り出し口となるカプラ6a、6bが設けられ、それらには、ホース(図示せず)を介して釘打機等の空気工具(図示せず)が接続される。図2から理解できるように、本実施形態では、カプラ6a、6bは、それぞれ上下に2つずつ設けられるが、カプラの数や、設置する場所は任意に設定しても良い。
【0041】
カプラ6a、6bの隣には、減圧弁34a、34bがそれぞれ設けられ、減圧弁34a、34bは、その入口側(タンク側)の圧縮空気の圧力の大きさにかかわらず、出口側(カプラ側)の圧縮空気の最高圧力を一定に抑える機能を持つ。例えば、減圧弁34a、34bが最高圧力2.0MPaのものを使用した場合、空気タンク4a、4b内の圧縮空気の圧力が2.0MPa以上であっても、減圧弁34a、34bからは2.0MPa以下の圧縮空気しか出力されないので、所望の最高圧力以下の圧力を持つ圧縮空気が得られる。カプラ6a、6bの近傍には、圧力計33a、33bが取り付けられ、減圧弁34a、34bの出口側の圧力をモニタできる。 空気タンク4aの後ろ側端部付近には、ドレン排出部31が設けられ、空気タンク4a、4b内の圧縮空気及び圧縮空気中に含まれる水蒸気がタンク内の底部に蓄積されたドレン(水分)を排出できる。
【0042】
圧縮部3は、図1に示されるように、二つの圧縮機27、28により構成され、一段目の圧縮機27と二段目の圧縮機28はクランクケースを介してそれぞれ対向するように配置される。一段目の圧縮機27はクランクケース内部を経由して吸い込まれた外部空気(大気圧)を圧縮し、第1の吐出管29を経由して二段目の圧縮機28へ圧縮空気を送り込む。二段目の圧縮機28は一段目の圧縮機27から供給される圧縮空気を、例えば3.0〜4.2MPaの許容最高圧力まで圧縮して第2の吐出管30を経由してタンク4bに供給する。
【0043】
モータ部2を構成する電気モータは、例えば、ホール素子等の検出手段(図示せず)によってロータ21の回転位置を検出して、この検出信号によってステータコイル22への電力の供給を制御するDCブラシレス方式のモータであり、その電力の供給は制御回路部5においてインバータ制御することによって制御される。
【0044】
モータ部2は、その回転軸が空気タンクの長手方向軸線Xと略平行となるように配置され、カップ状のロータハウジングの外周に永久磁石が取付けられたロータ21からなる回転子と、その外周側に界磁巻線であるステータコイル22が配置された固定子を有する。固定子は、複数の鉄心にステータコイル22がそれぞれ巻かれたもので、各鉄心(磁極)間には、隙間があるために、その隙間を介してモータの軸方向に風を流すことができる構造になっている。モータ部2のモータハウジングの一端側には圧縮部3がステータホルダ23を介して結合されており、圧縮部3は空気タンク4a、4b間を連結しているフレーム9上にボルトにて固定される。
【0045】
モータの回転軸の一端は圧縮部3のクランクケースを貫通して延び、その端部には冷却ファン11が取り付けられる。本実施形態では、冷却ファン11として軸流ファンを用いる例を示しているが、これに限定されるものではなく、冷却用に十分な量の空気流を起こすことができるならば、任意の形式のファンを用いても良い。ファン11によって、本体カバー8の側面の風窓81a、81bより空気(外気)が吸引され、吸引された空気は圧縮部3を冷却したのち本体カバー8の後面の風窓82より排気される。
【0046】
モータの回転軸のもう一方側の端部には、本体カバー8の前面側の風窓83より外気を吸引しモータ部2側へ空気を導くために、羽根形状を設けた樹脂成形により成形した冷却ファン12が取付けられる。冷却ファン12は遠心ファンであり、その外側には樹脂材料からなり、冷却ファン12の回転により生じた遠心方向への空気流を、ステータコイル22へ案内するための半球円筒状のファンガイド13が設けられる。遠心ファンは軸流ファンに比べて、同じ大きさでも比較的多い風量を起こすことができるので、装置をコンパクトにするのは好適である。ファンガイド13は、軸方向両端にある2つの開口部がそれぞれ円形であり、大きい方の開口部はモータ2のステータハウジングに取り付けられる。取り付け方法は、接着、嵌合、ネジ止めなど、任意の方法で良い。ファンガイド13の小さい方の開口部である吸引口14は、図1に示すように制御回路部5の収納ケース50の幅寸法Aに対し若干小さい径寸法Bよりなり、収納ケース50の正面に位置するように設置される。図3において、制御回路部5の内側に点線で描かれた2重の円は、冷却ファン12の外径の位置と、吸引口14の位置を示している。この冷却ファン12の外径の位置を示す円の範囲を、軸方向に投影した(延長した)領域が、冷却ファンの軸方向投影領域であり、図3において、制御回路部5の一部分が、その軸方向投影領域に含まれていることが理解できるであろう。
【0047】
制御回路部5は、図2に示すように電源用回路部品51、モータの運転をインバータ制御するための半導体スイッチング素子52やその他の回路素子部品を搭載した回路基板53よって構成され、半導体スイッチング素子52などの発熱部品を、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な材料によって四面が成形されたケース50内に配置される。ケース50の配置場所は、一対の空気タンク4a、4bの上方、即ち、空気タンク4a、4bの長手軸よりも上側であって、冷却ファン12と本体カバー8の間にその直方体の長手面(直方体のうち、一番大きい面積を有する面)が縦方向または鉛直になるように設置され、収納ケース50の前面に設けた固定用座面16を空気タンクのフレーム17に合せボルトで固定する。ケース50は全面が閉じた形状の直方体でも良いが、本実施形態では、うち2面が開放した形状であり、2つの開放面のうち1面を冷却ファン12側へ、もう一面を空気タンク側、即ち、下側へ向けた状態で固定する。下側の面を開放することにより、内部にほこりが溜まるのを防止でき、また、仮に結露ができたとしてもその水分が排出されやすくなるという利点がある。発熱部品は、前記ケース50内に前記ケースと密着するようにして収容され、ケース50が発熱部品の放熱フィンとして機能するようにしている。
【0048】
以上のような構成とすることにより、モータが回転することで軸端部に設けた冷却ファン11、12がそれぞれ回転し、図4、6に示すような矢印で示す気流110、120a、120bが発生する。図4から理解できるように、冷却ファン11により生じる気流110は、本体カバー8側面の吸引用風窓81a、81bより外気を吸引し圧縮機27、28を冷却したのちファン11に吸込まれ、本体カバー後面の風窓82より外部に排出される。また、一対の空気タンク間には一定の隙間を設けて開放しているので、前記気流110の一部は、気流120a、120bで示すように、ステータホルダより下方円周方向へも排気することで、タンク間を通過しスムーズに外部に排気することができる。特に、空気タンクを連結するフレームより下方には制御回路部がないため、下方への空気の流れをスムーズになり、冷却効率が向上する。
【0049】
一方で、冷却ファン12により生じる気流120は、本体カバー8前面の吸引用風窓83より吸引され、制御回路部5の収納ケース50の前面より側面に沿って流れるので、発熱回路素子の放熱フィンとして機能する収納ケース50を効果的に冷却したのち、ファンガイド13内に吸い込まれる。ファンガイド13の径寸法Bは収納ケースの幅寸法Aとほぼ同じ径寸法か小さいので、収納ケース50の側面に沿って流れてきた冷却風は収納ケース50より剥離することなくスムーズに流れて、ファンガイド13内へ案内される。
【0050】
ファンガイド13に吸込まれた冷却風120は半球円筒状のガイド内側を通過してモータのステータコイル22間を通過し、ステータホルダ23の円周上に放射状に設けた案内リブにより左右方向とタンク側の下方向に分流してモータ内部から排出される。この案内リブの形状は、圧縮機3側のファン11によって発生される気流110に影響を与えないように、左右方向への排気流は本体カバー側面の排気用風窓81a、81bより排出され、下方への排気流は図5の120a又は120bに示すようにタンク下又はタンク間を通って排出されるように、空気流を目的の方向に導くように形成すればよい。案内リブや排気のための流路の形状や数は、必要とされる風量などに応じて任意に設ければよい。
【0051】
なお、本体カバー8側面の風窓81aと81bは冷却ファン11の排気と冷却ファン12の吸気が混在するため、それぞれの風窓の境に気流を遮断するリブ84(図4)を設けることにより吸排気の効率を向上することができる。リブ84は、例えば本体カバー8の内側に本体カバー8と一体に成型することもできるし、圧縮部3側に金属製あるいはプラスチック製の板を設けることによって実現できる。また、各風窓81a、81b、82、83の大きさ、即ち、幅や高さは、本体カバー8の大きさに合わせて、できるだけ大きくするのが好ましいが、気流の流れなどを考慮して任意に設定すればよい。
【0052】
次に、図6を用いて本発明の別の実施形態を説明する。図6は本発明の第2の実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す。図6においては、制御回路部5の収納ケース50の開放面がモータ部2に近づくように、ファンガイド13の吸引口131が収納ケース50の開放面より内側に位置するように配置した。このように配置することにより、冷却ファン12から吸引される空気は、ほとんどすべてが制御回路部5の内部を通過してから吸引されるので、制御回路部5の冷却効果が非常に高くなる。また、可能な限り収納ケース50をモータ部2に近づけて配置したので、制御回路部5を設置するために必要とされるスペースが最小となり、空気圧縮機をコンパクトに構成することができる。
【0053】
次に、図7を用いて本発明のさらに別の実施形態を説明する。図7は、本発明の第3の実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す。図7では半球状のファンガイド132の周囲の一部分、たとえば、左右2箇所において吐出口133を有するように形成し、一部の空気をモータ内部に導き、残りの空気を吐出口133を経由して外部に排出されるようにした。図7の例では、モータの左右部分においてだけ吐出口133が設けられ、上下部分においてはファンガイド132の周囲には開口部はない。吐出口133を経由して冷却ファン12によって吸込まれた気流の一部がステータコイル22間を通過することなくファンガイド外部へ排気され、排気風を効率よく圧縮機27、28に吹き当たるように導くことができる。吐出口133の形状や角度は、冷却すべき部位の位置に応じて調整される。このように構成すれば、ファンガイド132の吐出口133の大きさや、形状、その方向などによって、モータ部2の冷却と圧縮部3の冷却の度合いを分配することができるので、簡単な構成により空気圧縮機1の冷却効果を向上させることができる。
【0054】
尚、吐出口133は圧縮機27、28の冷却のためだけではなく、本体カバー8の内部の空気の流れを調節するために設置することも可能であり、排気角度や排気口の数は任意に設定することができる。
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、冷却ファンによって取り込んだ外気を直接制御回路部5へ流すことが可能になり、冷却風は温度上昇することなく大半を制御回路部の冷却に利用されるため、少ない風量で高い冷却効果を得ることができる。さらに、本発明によれば、モータの回転を制御する制御回路部の設置場所を工夫したことにより、インバータ制御手段等の発熱の大きい素子を効率よく冷却することができる。本発明の配置では制御回路部を縦置きにしたので、制御回路部の収納ケース内にほこりが溜まりにくくなる。さらに、一対の空気タンク間、フレーム下側に設けた従来技術の制御回路部の配置に比べると、本発明の配置では制御回路部は空気タンクの上側にあるので、脚部10に設けられたキャスターを利用して空気圧縮機1を移動する場合など、制御回路部5をぶつけたりする危険性が大幅に減少される。
【0056】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、圧縮部3側に取付けた冷却ファン11を吐出形の軸流ファンとしているが、本発明によればモータ部2を冷却した気流120は、冷却ファン11の気流110を阻害することなく外部へ排気することができるので、冷却ファン11は吸込形の軸流ファンでも良く、その場合、図4で示した気流110を逆方向に発生させるようにしても良い。
【0058】
また、冷却ファン11の形式は、軸流ファンに限定されるものではなく、圧縮部の冷却気流をスムーズに排気できるように本体カバー8の内壁を設計すればどのようなタイプの冷却ファンでも良く、例えば、遠心ファンやでも同様の効果を得ることができる。さらに、冷却ファン11に対応して設けられるファンガイド13は半球状だけでなく、他の形状、例えば、その断面が略四角形であっても良い。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、冷却ファン12を遠心ファンとして説明したが、これに限定されるものではなく、軸流ファンなど、任意の形式のファンを用いても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す図。
【図2】図1に示した空気圧縮機の側面図であり、一部に部分断面を示す図。
【図3】図1に示した空気圧縮機の正面図。
【図4】図1に示した空気圧縮機の空気の流れを説明するための部分断面上面図を示す図。
【図5】図1に示した空気圧縮機の空気の流れを説明するための部分断面側面図を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す空気圧縮機全体の上面図であり、一部に部分断面を示す図。
【符号の説明】
【0061】
1:空気圧縮機 2:モータ部 3:圧縮部 4a、4b:空気タンク
5:制御回路部 6a、6b:カプラ 7:安全弁 8:本体カバー
9、17:フレーム 10:脚部 11:冷却ファン 12:冷却ファン
13:ファンガイド 16:固定用座面
20:吸引口 21:ロータ 22:ステータコイル 23:ステータホルダ
27、28:圧縮機 29、30:吐出管 31:ドレン排出部
33a、33b:圧力計 34a、34b:減圧弁 35:運搬ハンドル
50:収納ケース 51:電源用回路部品 52:半導体スイッチング素子
53:回路基板
81a、81b:吸引用風窓 82:吐出用風窓 83:吸気用風窓 84:リブ
110、120、120a、120b:気流
131:(ファンガイドの)吸引口 132:ファンガイド
133:(ファンガイドの)吐出口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔を隔てて平行に配置され、圧縮空気を貯留する一対の空気タンクと、
外部より吸入した空気を圧縮して前記空気タンクに供給する圧縮部と、
該圧縮部に連結され前記圧縮部を駆動するモータを有し、
前記モータと前記圧縮部を前記一対の空気タンクの上方に配置した空気圧縮機において、
前記モータの回転軸の一端に冷却風を発生させる冷却ファンを設け、
前記モータを駆動するための制御回路部を、前記一対の空気タンクの上方であって、前記冷却ファンの軸方向投影領域と重なる位置に配置したことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
前記制御回路部は回路基板を収納する収納ケースを有し、前記冷却ファンの軸方向投影領域内に前記収納ケースの一部または全部が含まれるように、前記制御回路部を配置したことを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
前記収納ケースは、前記冷却ファンに対面するように、縦置きにて配置されることを特徴とする請求項2に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
前記収納ケースは少なくとも1面が開放された直方体状であり、該開放面が前記冷却ファン側に向けて配置されることを特徴とする請求項3に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
前記モータのハウジングの一端側に、前記冷却ファンの冷却風をステータコイル部へ案内するためであって、前記冷却ファンの外側に位置する半球円筒状のファンガイドを設け、前記ファンガイド内部に吸引された冷却風を、前記モータの側部から排出させることを特徴とする請求項4に記載の空気圧縮機。
【請求項6】
前記ファンガイドの吸引口の直径は、前記収納ケースの開放面の幅よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の空気圧縮機。
【請求項7】
前記冷却ファンは、遠心ファンであることを特徴とする請求項6に記載の空気圧縮機。
【請求項8】
前記ファンガイドの外周部に、吸引された冷却風の一部を前記モータのステータコイルに導かずに外部に排出するための吐出口を設けたことを特徴とする請求項5に記載の空気圧縮機。
【請求項9】
前記空気圧縮機に、前記一対の空気タンクの少なくとも一部分と前記圧縮部と前記モータを覆うものであって、その前面、側面に空気の通過を可能とする風窓を有する本体カバーを設け、
前記冷却ファンによって発生される空気流は、前記本体カバーの前面の風窓から吸引され、前記モータ内部を通過して前記本体カバーの側面の風窓から排出されることを特徴とする請求項2に記載の空気圧縮機。
【請求項10】
圧縮空気を生成する圧縮部と、圧縮部に連結され前記圧縮部を駆動するモータと、前記圧縮部によって生成された圧縮空気を貯留する空気タンクを有し、前記モータと前記圧縮部をその軸方向が前記空気タンクの長手方向軸と略平行となるように前記空気タンクの上方に配置し、前記圧縮部と前記モータと前記空気タンクの少なくとも一部分が本体カバーで覆われた空気圧縮機において、
前記モータの回転軸の一端に冷却風を発生させる冷却ファンを設け、
前記モータを駆動するための制御回路部を、前記空気タンクの上方で、前記冷却ファンの軸方向にみて前記本体カバーと前記冷却ファンの間に設けることにより、前記冷却ファンによって発生される空気流の上流側に前記制御回路部を配置したことを特徴とする空気圧縮機。
【請求項11】
前記制御回路部は回路基板を有し、該回路基板が鉛直方向になるように、前記制御回路部を縦置きに配置することを特徴とする請求項10に記載の空気圧縮機。
【請求項12】
前記制御回路部は回路基板を有し、該回路基板が水平方向になるように、前記制御回路部を横置きに配置することを特徴とする請求項10に記載の空気圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−185648(P2009−185648A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24810(P2008−24810)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】