説明

空気熱源ヒートポンプシステムおよびその運転方法

【課題】冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することができる、簡素でかつ安価な構成の空気熱源ヒートポンプシステムおよびその運転方法を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機10、四方切換弁12、室外熱交換器13、室外送風機14を有する室外機3と、室内熱交換器30、室内送風機31を有する室内機2とが冷媒配管4,5により接続され、圧縮機10、四方切換弁12、室外熱交換器13および室内熱交換器30等によりヒートポンプサイクル6が構成されている空気熱源ヒートポンプシステム1において、室外機3側の四方切換弁12と、室内機2側の室内熱交換器30とを接続する冷媒配管5に、該冷媒配管5側を流れる冷媒と水等の熱媒体とを熱交換させ、冷却媒体または加熱媒体を製造する冷媒/熱媒体熱交換器40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷風または温風の吹出しと同時または交互に、冷水または温水を製造することができる空気熱源ヒートポンプシステムおよびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、施設園芸等においては、作物の収穫量の増加あるいは品質向上を図るため、夏期にはハウス内の冷房と共に培地または地中の冷却が、また冬期にはハウス内の暖房と共に培地または地中の加熱が必要な場合がある。これに対処するため、従来は、ハウス内を冷暖房する専用の空気熱源ヒートポンプエアコンを設置し、これとは別に、培地または地中を冷却または加熱するための冷温水を製造する空気熱源ヒートポンプチラーを設置しているのが一般的であった。
【0003】
一方、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室内熱交換器等によりヒートポンプサイクルを構成した空気熱源ヒートポンプエアコンにおいて、サイクル中に冷媒/水熱交換器を付加し、室内熱交換器を介して冷風または温風を吹出すと同時に、冷媒/水熱交換器から冷水または温水を取り出し可能とした空気熱源ヒートポンプエアコンは、従来から知られている。例えば、特許文献1には、室外機と室内機とを接続する液配管とガス配管との間に、室内機に対して並列に冷媒との熱交換により冷水または温水を生成する冷媒/水熱交換器を接続し、生成した冷水または温水をポンプでファンコイルユニットに循環させることにより、空調用に利用可能とした空気熱源ヒートポンプ式空気調和装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、圧縮機の吐出配管に冷媒バイパス配管を接続し、該冷媒バイパス配管に冷媒/温水熱交換器を設けて温水を生成するとともに、圧縮機の吸入配管にブライン冷却用熱交換器を有するバイパス配管を接続し、ブライン冷却用熱交換器で冷却されたブラインを生成することにより、温水と冷却されたブラインとを取り出し、給湯、その他に利用可能としたヒートポンプシステムが開示されている。更に、特許文献3には、四方切換弁と室外熱交換器との間の冷媒配管に冷媒/水熱交換器を設け、冷房運転時に冷媒/水熱交換器から温水を、また暖房運転時に冷媒/水熱交換器から冷水を取り出し可能としたエンジン駆動の空気熱源ヒートポンプ式空気調和装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−300007号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2007−225274号公報(図1参照)
【特許文献3】特開2006−242524号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に示されるように、ヒートポンプの基本冷媒回路に対して、バイパス回路や並列回路を接続して冷媒/水熱交換器を設置し、冷水または温水を取り出し可能としたものでは、バイパス回路や並列回路の他に、切換弁が必要となる等により、構成が複雑化し、コスト高になるという問題があった。また、バイパス回路や並列回路、あるいは冷媒/水熱交換器内にサイクルを循環する冷媒や冷凍機油が滞留することは避け難く、タイミングを見て冷媒戻し運転や油戻し運転を行うようにしているが、性能や信頼性の低下をもたらす要因となっていた。
【0007】
また、上記特許文献3に示されるもののように、冷房運転時に温水、暖房運転時に冷水を取り出すようにした空気熱源ヒートポンプシステムでは、例えば、夏期にはハウス内の冷房と共に培地または地中を冷却する必要があり、また、冬期にはハウス内の暖房と共に培地または地中を加熱する必要がある施設園芸用ハウス向けの空気熱源ヒートポンプシステムには適用できないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することができる、簡素でかつ安価な構成の空気熱源ヒートポンプシステムおよびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムおよびその運転方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる空気熱源ヒートポンプシステムは、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室外送風機等を有する室外機と、室内熱交換器および室内送風機等を有する室内機とが冷媒配管により接続され、前記圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室内熱交換器等によりヒートポンプサイクルが構成されている空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、前記室外機側の前記四方切換弁と、前記室内機側の前記室内熱交換器とを接続する冷媒配管に、該冷媒配管側を流れる冷媒と水等の熱媒体とを熱交換させ、冷却媒体または加熱媒体を製造する冷媒/熱媒体熱交換器が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室内熱交換器等によりヒートポンプサイクルが構成されている空気熱源ヒートポンプシステムの室外機側の四方切換弁と、室内機側の室内熱交換器とを接続する冷媒配管に、該冷媒配管側を流れる冷媒と水等の熱媒体とを熱交換させ、冷却媒体または加熱媒体を製造する冷媒/熱媒体熱交換器が設けられているため、室外機側の四方切換弁と、室内機側の室内熱交換器とを接続する冷媒配管に冷媒/熱媒体熱交換器を付設するだけで、室内熱交換器を蒸発器として機能させて運転する冷房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器を用いて冷却媒体を製造することができるとともに、室内熱交換器を凝縮器として機能させて運転する暖房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器を用いて加熱媒体を製造することができる。従って、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することが可能な空気熱源ヒートポンプシステムを、標準的な空気熱源ヒートポンプを用い、大幅に変更することなく、簡素にかつ安価に構成することができる。また、冷媒/熱媒体熱交換器の冷媒側には、圧縮機運転中は常に冷媒が流通される構成のため、サイクル中を循環する冷媒や冷凍機油が冷媒/熱媒体熱交換器内に滞留することがなく、冷媒や冷凍機油の滞留による性能や信頼性の低下をなくすることができる。
【0011】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムは、上記の空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、前記冷媒/熱媒体熱交換器には、前記熱媒体を貯える熱媒体タンクが接続され、1次側ポンプを介して前記熱媒体タンクと前記冷媒/熱媒体熱交換器との間で前記熱媒体が循環可能とされているとともに、前記熱媒体タンクには、負荷側に前記熱媒体を循環する熱媒体循環回路が接続され、前記負荷側に2次側ポンプを介して前記熱媒体が循環可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、冷媒/熱媒体熱交換器に、熱媒体を貯える熱媒体タンクが接続され、1次側ポンプを介して熱媒体タンクと冷媒/熱媒体熱交換器との間で熱媒体が循環可能とされているとともに、熱媒体タンクに、負荷側に熱媒体を循環する熱媒体循環回路が接続され、負荷側に2次側ポンプを介して熱媒体が循環可能とされているため、空気熱源ヒートポンプシステムを適宜冷房モードまたは暖房モードで運転し、冷媒/熱媒体熱交換器で製造される冷却媒体または加熱媒体を熱媒体タンクに貯えながら、冷却媒体または加熱媒体を製造することができる。また、熱媒体タンクに貯えられている冷却媒体または加熱媒体を適宜熱媒体循環回路へと循環させることによって、負荷側での利用に供することができる。このように、熱媒体タンクを設け、その大きさを適当に設定することにより、冷却媒体または加熱媒体の製造およびその利用を安定化することができる。
【0013】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムは、上記の空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、前記1次側ポンプは、前記熱媒体タンク内の熱媒体温度に応じて制御され、前記2次側ポンプは、前記負荷側の温度に応じて制御されるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、1次側ポンプが、熱媒体タンク内の熱媒体温度に応じて制御され、2次側ポンプが、負荷側の温度に応じて制御されるように構成されているため、冷却媒体または加熱媒体の製造時、熱媒体タンク内の熱媒体温度に応じて1次側ポンプを運転することにより、熱媒体タンク内に所定の温度範囲の冷却媒体または加熱媒体を貯えることができる。また、負荷側の温度に応じて2次側ポンプを運転することにより、熱媒体タンク内に貯えられている冷却媒体または加熱媒体を負荷側に循環し、負荷側の温度を設定範囲に制御することができる。従って、冷媒/熱媒体熱交換器を介して熱媒体タンク内に所定の温度範囲の冷却媒体または加熱媒体を貯えおき、それを適宜利用することにより負荷側の温度を確実に設定範囲に維持することができる。
【0015】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムは、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、前記冷媒/熱媒体熱交換器は、前記室外機側の前記四方切換弁と前記室内機側の前記室内熱交換器との間を接続する前記冷媒配管中おいて、前記室外機の内部、前記室内機の内部、もしくは両室内外機の外部のいずれかに設置可能とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、冷媒/熱媒体熱交換器が、室外機側の四方切換弁と室内機側の室内熱交換器との間を接続する冷媒配管中において、室外機の内部、室内機の内部、もしくは両室内外機の外部のいずれかに設置可能とされているため、冷媒/熱媒体熱交換器を必要に応じて、室外機の内部、室内機の内部、もしくは両室内外機の外部のいずれかに選択的に設置することができる。つまり、室外機側の四方切換弁と室内機側の室内熱交換器とを接続する冷媒配管中であれば、いずれの部位に冷媒/熱媒体熱交換器を接続し、設置してもよく、従って、冷媒/熱媒体熱交換器を設置する際の自由度を高めることができる。
【0017】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムは、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、前記室内機は、施設園芸用ハウス内に設置され、該施設園芸用ハウス内の冷暖房に供されるとともに、前記冷媒/熱媒体熱交換器によって製造された前記冷却媒体または加熱媒体は、前記施設園芸用ハウス内の培地または地中の冷却または加熱に供されるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、室内機が、施設園芸用ハウス内に設置され、該施設園芸用ハウス内の冷暖房に供されるとともに、冷媒/熱媒体熱交換器によって製造された冷却媒体または加熱媒体が、施設園芸用ハウス内の培地または地中の冷却または加熱に供されるように構成されているため、空気熱源ヒートポンプシステムを1台設置することによって施設園芸用ハウス内の冷暖房に止まらず、培地または地中の冷却、加熱をも行うことができる。従って、培地または地中の冷却または加熱用に別途熱源機を設置する必要がなく、設備費を抑制することができる。また、既設の冷暖房用の空気熱源ヒートポンプ機を改修して冷媒/熱媒体熱交換器を追加することによっても、簡単に培地または地中の冷却、加熱を実現することができ、作物の収穫量の増加あるいは品質向上に資することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかる空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上述のいずれかに記載されている空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、冷房モードでは、前記室内機から前記室内熱交換器で冷却された冷風を吹出すと同時または交互に、前記冷媒/熱媒体熱交換器で冷却媒体を製造し、暖房モードでは、前記室内機から前記室内熱交換器で加熱された温風を吹出すと同時または交互に、前記冷媒/熱媒体熱交換器で加熱媒体を製造することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムを用い、冷房モードでは、室内機から室内熱交換器で冷却された冷風を吹出すと同時または交互に、冷媒/熱媒体熱交換器で冷却媒体を製造し、暖房モードでは、室内機から室内熱交換器で加熱された温風を吹出すと同時または交互に、冷媒/熱媒体熱交換器で加熱媒体を製造するようにしているため、上述した1台の空気熱源ヒートポンプシステムを用いて、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することができ、2種類の異なる媒体の冷熱(冷風と冷水等の冷却媒体)または温熱(温風と温水等の加熱媒体)を同時に利用することが可能となる。従って、空気熱源ヒートポンプシステムの多様化を図り、その用途あるいは適用範囲の拡大に資することができる。
【0021】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上記の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、前記暖房モードでの運転時、前記室外熱交換器に霜が堆積した場合、前記四方切換弁により暖房サイクルを冷房サイクルに切換え、前記冷媒/熱媒体熱交換器で前記加熱媒体を用いて冷媒を加熱し、除霜運転を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、暖房モードでの運転時、室外熱交換器に霜が堆積した場合、四方切換弁により暖房サイクルを冷房サイクルに切換え、冷媒/熱媒体熱交換器で加熱媒体を用いて冷媒を加熱し、除霜運転を行うようにしているため、暖房運転時、室外熱交換器に堆積した霜を冷房サイクルに切換えて除霜する際、冷媒/熱媒体熱交換器で加熱媒体から吸熱し、その熱を利用して効率よくかつ迅速に除霜することができる。従って、除霜に要する時間を略半分にし、暖房効率の向上を図ることができるとともに、除霜運転時における圧縮機への液冷媒の流入を確実に防止することができる。
【0023】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、前記室内機から冷風または温風を吹出して冷暖房運転を行う場合、前記室内送風機を冷暖房運転に合わせて通常運転し、前記冷媒/熱媒体熱交換器を用いて冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、前記室内送風機を停止もしくは前記室内熱交換器への循環風量を低下させて運転することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、室内機から冷風または温風を吹出して冷暖房運転を行う場合、室内送風機を冷暖房運転に合わせて通常運転し、冷媒/熱媒体熱交換器を用いて冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、室内送風機を停止もしくは室内熱交換器への循環風量を低下させて運転するようにしているため、冷風または温風を吹出す冷暖房運転を主体に運転する場合は、室内送風機をそれに合わせて通常運転し、冷却媒体または加熱媒体の製造を主体に運転する場合は、室内送風機を停止もしくは室内熱交換器への循環風量を低下して運転することにより、冷媒/熱媒体熱交換器での熱媒体の冷却または加熱に冷媒の熱量を有効に利用することができる。従って、それぞれの運転時において、目的にかなった適切でかつ効率的な運転を行うことができる。
【0025】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、前記冷房モードでの冷風吹出し運転時、前記冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以下になったとき、1次側ポンプを運転して前記冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、冷房モードでの冷風吹出し運転時、冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以下になったとき、1次側ポンプを運転して冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させるようにしているため、冷風吹出し運転時、低負荷等により冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以下に低下し、熱媒体が凍結するおそれがある場合には、1次側ポンプを運転して熱媒体を循環させることにより、冷媒/熱媒体熱交換器内での熱媒体の凍結を防止することができる。従って、冷媒/熱媒体熱交換器の凍結による損傷等のトラブルを防止し、安全に運転することができる。
【0027】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、前記暖房モードでの温風吹出し運転時、前記冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以上になったとき、1次側ポンプを運転して前記冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、暖房モードでの温風吹出し運転時、冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以上になったとき、1次側ポンプを運転して冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させるようにしているため、温風吹出し運転時、外気温の上昇等により冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以上に上昇し、熱媒体が沸騰するおそれがある場合には、1次側ポンプを運転して熱媒体を循環させることにより、冷媒/熱媒体熱交換器内での熱媒体の沸騰を防止することができる。従って、冷媒/熱媒体熱交換器での熱媒体の沸騰によるトラブルを防止し、安全に運転することができる。
【0029】
さらに、本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法は、上述のいずれかの空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、前記冷房モードまたは暖房モードで、冷風または温風を吹出すと同時に冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、製造される冷却媒体または加熱媒体の温度に応じて前記室内熱交換器に循環する風量を制御することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、冷房モードまたは暖房モードで、冷風または温風を吹出すと同時に冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、製造される冷却媒体または加熱媒体の温度に応じて室内熱交換器に循環する風量を制御するようにしているため、冷暖房運転と冷却媒体または加熱媒体の製造運転とを同時に行う場合、室内熱交換器に循環する風量を、冷却媒体または加熱媒体の温度に応じて制御することにより、室内熱交換器での冷媒の吸熱量または放熱量を調整することができる。従って、冷暖房運転と冷温媒体の製造運転との同時運転時、冷媒/熱媒体熱交換器で熱媒体を冷却または加熱するのに必要な冷媒の熱量を確保しながら、同時に室内熱交換器を介して冷風または温風を吹出し、冷房運転または暖房運転を継続することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の空気熱源ヒートポンプシステムによると、室外機側の四方切換弁と、室内機側の室内熱交換器とを接続する冷媒配管に冷媒/熱媒体熱交換器を付設するだけで、室内熱交換器を蒸発器として機能させて運転する冷房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器を用いて冷却媒体を製造することができるとともに、室内熱交換器を凝縮器として機能させて運転する暖房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器を用いて加熱媒体を製造することができるため、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することが可能な空気熱源ヒートポンプシステムを、標準的な空気熱源ヒートポンプを用い、大幅に変更することなく、簡素にかつ安価に構成することができる。また、冷媒/熱媒体熱交換器の冷媒側には、圧縮機運転中は常に冷媒が流通される構成のため、サイクル中を循環する冷媒や冷凍機油が冷媒/熱媒体熱交換器内に滞留することがなく、冷媒や冷凍機油の滞留による性能や信頼性の低下をなくすることができる。
【0032】
本発明の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法によると、上述した1台の空気熱源ヒートポンプシステムを用いて、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することができ、2種類の異なる媒体の冷熱(冷風と冷水等の冷却媒体)または温熱(温風と温水等の加熱媒体)を同時に利用することが可能となるため、空気熱源ヒートポンプシステムの多様化を図り、その用途あるいは適用範囲の拡大に資することができる。例えば、施設園芸用ハウスを用いた作物の栽培において、高温期には、昼間の培地または地中の冷却と、夜間の培地または地中の冷却およびハウス内の冷房との併用、低温期には、培地または地中の加熱と、ハウス内の暖房との併用が可能となる。これにより、作物の地上部と地下部に対して個別に最適な温度制御を施すことができ、作物にとってより好適な栽培環境を提供することができる。また、低温期のハウス内暖房では、冷媒/熱媒体熱交換器で製造した加熱媒体を用いて冷媒を加熱できることから、除霜運転時間を大幅に短縮することができ、従って、除霜運転に伴うハウス内の温度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気熱源ヒートポンプシステムを施設園芸用ハウスに設置した状態での構成図である。
【図2】図1に示す空気熱源ヒートポンプシステムの冷媒回路図である。
【図3】図1に示す空気熱源ヒートポンプシステムの運転モードと機器の動作状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る空気熱源ヒートポンプシステムを施設園芸用ハウスに設置した状態での構成図が示され、図2には、その冷媒回路図が示されている。
空気熱源ヒートポンプシステム1は、施設園芸用のハウス60内に設置される室内機2と、その外部に設置される室外機3とを備えており、該室内機2と室外機3とは、冷媒液配管(冷媒配管)4および冷媒ガス配管(冷媒配管)5を介して接続されている。
【0035】
室外機3内には、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機10、冷媒ガス中の油を分離するオイルセパレータ11、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁12、冷房時は凝縮器、暖房時は蒸発器として機能する室外熱交換器13、室外熱交換器13に対して外気を流通する室外送風機(室外ファン)14、暖房時に冷媒を断熱膨張する暖房用膨張弁15、凝縮された液冷媒を一時貯留するレシーバ16、冷房時に冷媒を断熱膨張する冷房用膨張弁17、冷媒圧縮機10に吸入される冷媒中から液分を分離し、ガス分のみを吸入させるアキュームレータ18等が設置されている。
【0036】
室外機3の内部に設置されている冷媒圧縮機10、オイルセパレータ11、四方切換弁12、室外熱交換器13、暖房用膨張弁15、レシーバ16、冷房用膨張弁17、アキュームレータ18は、図2に示されるように、順次冷媒配管19を介して接続され、公知の室外側冷媒回路20を構成している。なお、オイルセパレータ11により分離された冷凍機油は、流量調整絞り21を有する油戻し回路22を介してアキュームレータ18の入口側に戻されるように構成されている。
【0037】
一方、室内機2内には、冷房時は蒸発器、暖房時は凝縮器として機能する室内熱交換器30およびハウス60内の空気を室内熱交換器30に対して循環する室内送風機(室内ファン)31等が設置されている。この室内熱交換器30の一端には液側配管32A、他端にはガス側配管32Bが接続されており、これらの液側配管32Aおよびガス側配管32Bは、室外機3側の冷房用膨張弁17に接続されている液側配管19Aおよび四方切換弁12に接続されているガス側配管19Bに対し、それぞれ冷媒液配管4および冷媒ガス配管5を介して接続されている。これによって、密閉されたヒートポンプサイクル6が構成されている。
【0038】
加えて、上記ヒートポンプサイクル6の室外機3側の四方切換弁12と、室内機2側の室内熱交換器30との間を接続する冷媒ガス配管5(ガス側配管19Bおよびガス側配管32Bを含む)には、冷媒/熱媒体熱交換器40が設けられている。この冷媒/熱媒体熱交換器40は、冷媒ガス配管5側を流れる冷媒と、熱媒体配管41側を流れる水、ブライン等の熱媒体とを熱交換するものである。
【0039】
冷媒/熱媒体熱交換器40は、熱媒体配管41を介して熱媒体タンク42と接続されている。この熱媒体を貯える熱媒体タンク42と冷媒/熱媒体熱交換器40との間には、熱媒体配管41を介して1次側熱媒体循環路43が構成され、該1次側熱媒体循環路43中に設けられている1次側ポンプ44を介して熱媒体が循環可能とされている。なお、熱媒体タンク42の容量は、保有できる熱媒体の量により、冷却媒体または加熱媒体を製造する際の冷媒圧縮機10の発停インターバルや冷暖房運転を中断して冷却媒体または加熱媒体を製造する際の中断時間等に影響を及ぼすため、これらの点を考慮して適切な大きさとされている。
【0040】
熱媒体タンク42には、図1に示されるように、2次側の熱媒体循環回路45が接続されており、負荷を構成する培地(または地中)61を冷却または加熱する冷却・加熱手段46に対して熱媒体タンク42内の冷却媒体または加熱媒体が循環可能とされている。2次側熱媒体循環回路45には、熱媒体を循環する2次側ポンプ47が設けられている。上記1次側ポンプ44および2次側ポンプ47は、それぞれ熱媒体タンク42内の熱媒体温度を検出する温度センサ48および培地(または地中)61の温度を検出する温度センサ49の検出値に応じてオン/オフ制御されるようになっている。
【0041】
また、上記冷媒/熱媒体熱交換器40、熱媒体タンク42、1次側ポンプ44および2次側ポンプ47等によって冷温媒体製造ユニット7が構成されており、この冷温媒体製造ユニット7は、図1示されるように、ハウス60内のスペースを有効利用するため、通常は施設園芸用ハウス60の外部に設置されるが、内部に設置してもよい。さらに、冷媒/熱媒体熱交換器40は、冷温媒体製造ユニット7内に限らず、室内機2の内部、室外機3の内部等において、冷媒ガス配管5(ガス配管19Bおよびガス配管32Bを含む)に設置することも可能である。
【0042】
次に、空気熱源ヒートポンプシステム1の運転方法について説明する。図3には、ハウス60側の熱負荷と、ヒートポンプシステム1の運転モードと、室内送風機31および1次側ポンプ44の動作との状態図が示されている。
夏期、中間期等の冷房時、図2に示される実線矢印のように、冷媒圧縮機10で圧縮された冷媒を、オイルセパレータ11、四方切換弁12を経て室外熱交換器13、レシーバ16、冷房用膨張弁17、室内熱交換器30、冷媒/熱媒体熱交換器40、四方切換弁12、アキュームレータ18の順に循環させることにより、室内熱交換器30を介して冷風を吹出す冷房運転と、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を冷却して冷却媒体を製造する冷却媒体製造運転とを同時にまたは交互に単独で運転することができる。
【0043】
つまり、冷媒/熱媒体熱交換器40に熱媒体タンク42内の熱媒体を循環する1次側ポンプ44を停止し、室内送風機31を通常通り運転することにより、室内熱交換器30を蒸発器として機能させ、ここで冷却された空気(冷風)を室内機2からハウス60内へと吹出すことによって、ハウス60内の冷房に供することができる。
【0044】
上記とは逆に、室内送風機31を停止もしくは低速運転し、1次側ポンプ44を運転して冷媒/熱媒体熱交換器40に熱媒体を循環することにより、冷風の吹出しを停止(冷房停止)した状態で冷媒/熱媒体熱交換器40において熱媒体を冷却し、冷却媒体を製造して熱媒体タンク42内に貯えることができる。そして、この冷却媒体を、2次側ポンプ47を適宜駆動して2次側熱媒体循環回路45に循環することにより、冷却・加熱手段46を介してハウス60内の培地61を冷却することができる。
【0045】
このように、冷房運転モード時、室内送風機31と1次側ポンプ44との運転、停止を適宜切換えることにより、交互に冷房運転と冷却媒体の製造運転とを行い、ハウス60内の冷房と培地61の冷却を実行することができる。この際、熱媒体タンク42に設けられている温度センサ48の検出値に基づいて1次側ポンプ44を制御することにより、熱媒体タンク42内に所定の温度範囲の冷却媒体を貯えることができる。また、培地(または地中)61の温度を検出する温度センサ49の検出値に基づいて2次側ポンプ47を制御することにより、培地(または地中)61の温度を設定範囲内に維持することができる。
【0046】
また、1次側ポンプ44を停止し、室内機2から冷風を吹出す冷房運転中に、低負荷状態となる等により休止中の冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒ガスの温度が低下しすぎると、冷媒/熱媒体熱交換器40内で熱媒体が凍結するおそれがある。そこで、室内熱交換器30を経て冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒の温度を、冷媒/熱媒体熱交換器40の冷房時の冷媒流入側に設けられている温度センサ50により検出し、その値が設定温度以下になったとき、1次側ポンプ44を連続運転または断続運転し、熱媒体タンク42内の熱媒体を冷媒/熱媒体熱交換器40に循環させることにより、冷媒/熱媒体熱交換器40内での熱媒体の凍結を防止するようにしている。なお、温度センサ50による検出値は、室内熱交換器30の冷房時の冷媒出口側に設けられている既設の温度センサ52(図2参照)の検出値によって代替してもよい。
【0047】
なお、上記においては、冷房運転と冷却媒体の製造運転とを交互に単独運転する場合について説明したが、冷房運転と冷却媒体の製造運転とを同時、すなわち室内機2から冷風を吹出し、ハウス60内を冷房しながら、冷媒/熱媒体熱交換器40において冷却媒体を製造するようにしてもよい。この場合、1次側ポンプ44を運転し、熱媒体タンク42内の熱媒体を冷媒/熱媒体熱交換器40に循環させながら、同時に室内送風機31を運転することにより、室内熱交換器30を介して冷風を吹出すことになる。
【0048】
このように、冷房運転を行いながら冷却媒体を製造する場合、相対的に熱媒体側の温度が低くなると、室内熱交換器30側で相対的に温度が高い空気との熱交換によって冷媒の温度が上昇してしまい、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を冷却することができなくなってしまう。そこで、例えば、室内送風機31の回転を制御することにより、冷媒/熱媒体熱交換器40で製造される冷却媒体の温度に応じて室内熱交換器30に循環する風量を制御し、室内熱交換器30での冷媒の吸熱量を調整するようにしている。その結果、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を冷却するための必要熱量を確保することができ、冷房運転と冷却媒体の製造運転との同時運転が可能となる。
【0049】
一方、冬期、中間期等の暖房時、図2に示される破線矢印のように、冷媒圧縮機10で圧縮された冷媒を、オイルセパレータ11、四方切換弁12を経て冷媒/熱媒体熱交換器40、室内熱交換器13、レシーバ16、暖房用膨張弁15、室外熱交換器13、四方切換弁12、アキュームレータ18の順に循環させることにより、室内熱交換器30を介して温風を吹出す暖房運転と、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を加熱して加熱媒体を製造する加熱媒体製造運転とを同時にまたは交互に単独で運転することができる。
【0050】
つまり、冷媒/熱媒体熱交換器40に熱媒体タンク42内の熱媒体を循環する1次側ポンプ44を停止し、室内送風機31を通常通り運転することにより、室内熱交換器30を凝縮器として機能させ、ここで加熱された空気(温風)を室内機2からハウス60内へと吹出すことによって、ハウス60内の暖房に供することができる。
【0051】
これとは逆に、室内送風機31を停止もしくは低速運転し、1次側ポンプ44を運転して冷媒/熱媒体熱交換器40に熱媒体を循環することにより、温風の吹出しを停止(暖房停止)した状態で冷媒/熱媒体熱交換器40において熱媒体を加熱し、加熱媒体を製造して熱媒体タンク42内に貯えることができる。そして、この加熱媒体を、2次側ポンプ47を適宜駆動して2次側熱媒体循環回路45に循環することにより、冷却・加熱手段46を介してハウス60内の培地(または地中)61を加熱することができる。
【0052】
このように、暖房運転モード時、室内送風機31と1次側ポンプ44との運転、停止を適宜切換えることにより、交互に暖房運転と加熱媒体の製造運転とを行い、ハウス60内の暖房と培地(または地中)61の加熱を実行することができる。この際、熱媒体タンク42に設けられている温度センサ48の検出値に基づいて1次側ポンプ44を制御することによって、熱媒体タンク42内に所定の温度範囲の加熱媒体を貯えることができる。また、培地(または地中)61の温度を検出する温度センサ49の検出値に基づいて2次側ポンプ47を制御することによって、培地(または地中)61の温度を設定範囲内に維持することができる。
【0053】
また、1次側ポンプ44を停止し、室内機2から温風を吹出す暖房運転中に、高負荷状態となる等により休止中の冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒ガスの温度が上昇しすぎると、冷媒/熱媒体熱交換器40内で熱媒体が沸騰するおそれがある。そこで、四方切換弁12を経て冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒の温度を、冷媒/熱媒体熱交換器40の暖房時の冷媒流入側に設けられている温度センサ51により検出し、その値が設定温度以上になったとき、1次側ポンプ44を運転し、熱媒体タンク42内の熱媒体を冷媒/熱媒体熱交換器40に循環させることによって、冷媒/熱媒体熱交換器40内での熱媒体の沸騰を防止するようにしている。なお、温度センサ51による検出値は、冷媒圧縮機10の吐出配管に設けられている既設の温度センサ53(図2参照)の検出値によって代替してもよい。
【0054】
さらに、暖房モードでの運転時、特に外気温が低い場合には、室外熱交換器13の表面に霜が堆積し、室外熱交換器13での熱交換を阻害する。このため、空気熱源ヒートポンプ機では、一般に着霜が一定量以上になると、暖房サイクルを四方切換弁により冷房サイクルに切換え、図2に実線矢印で示されるように、冷媒圧縮機10から吐出された高温の冷媒ガスを室外熱交換器13側に循環させることにより室外熱交換器13を加熱し、霜を溶かすようにしている。
【0055】
このデフロスト運転時、室内機2からの冷風吹出しを防止するため、通常、室内送風機31の運転を停止することから、室内熱交換器30で十分に熱を汲み上げることができなくなり、デフロスト時間が長くなってしまう。しかし、本実施形態では、1次側ポンプ44を運転して冷媒/熱媒体熱交換器40に加熱媒体を循環させ、該加熱媒体により冷媒を加熱し、加熱媒体から吸熱して冷媒を蒸発させるようにしている。このため、加熱媒体の熱を有効に活用して室外熱交換器13の除霜を行うことができ、デフロスト運転時間を大幅に短縮することができる。
【0056】
なお、上記では、暖房運転と加熱媒体の製造運転とを交互に単独で運転する場合について説明したが、暖房運転と加熱媒体の製造運転とを同時、すなわち室内機2から温風を吹出し、ハウス60内を暖房しながら、冷媒/熱媒体熱交換器40において加熱媒体を製造することができる。この場合、1次側ポンプ44を運転し、熱媒体タンク42内の熱媒体を冷媒/熱媒体熱交換器40に循環させながら、同時に室内送風機31を運転することにより、室内熱交換器30を介して温風を吹出すことになる。
【0057】
このように、暖房運転を行いながら加熱媒体を製造する場合、相対的に熱媒体側の温度が高くなると、室内熱交換器30側で相対的に温度が低い空気との熱交換により冷媒が放熱し、温度が低下してしまい、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を加熱することができなくなってしまう。そこで、例えば、室内送風機31の回転を制御することにより、冷媒/熱媒体熱交換器40で製造される加熱媒体の温度に応じて室内熱交換器30に循環する風量を制御し、室内熱交換器30での冷媒の放熱量を調整するようにしている。これによって、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を加熱するための必要熱量を確保することができ、暖房運転と加熱媒体の製造運転との同時運転が可能となる。
【0058】
しかして、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の空気熱源ヒートポンプシステム1によると、標準的な空気熱源ヒートポンプに対して、室外機3側の四方切換弁12と、室内機2側の室内熱交換器30とを接続するガス側配管19B,32Bを含む冷媒ガス配管(冷媒配管)5に、冷媒/熱媒体熱交換器40を付設するだけで、室内熱交換器30を蒸発器として機能させて運転する冷房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器40を用いて冷却媒体を製造することができる。また、室内熱交換器30を凝縮器として機能させて運転する暖房モード時に、冷媒/熱媒体熱交換器30を用いて加熱媒体を製造することができる。
【0059】
従って、冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造することが可能な空気熱源ヒートポンプシステム1を、標準的な空気熱源ヒートポンプを大幅に変更することなく、簡素にかつ安価に構成することができる。また、冷媒/熱媒体熱交換器40の冷媒側には、圧縮機運転中は常に冷媒が流通される構成のため、サイクル中を循環する冷媒や冷凍機油が冷媒/熱媒体熱交換器40内に滞留することがなく、冷媒や冷凍機油の滞留による性能や信頼性の低下をなくすることができる。
【0060】
そして、上記空気熱源ヒートポンプシステム1の利用により、冷房モードでは、室内機2から室内熱交換器30で冷却された冷風を吹出すと同時または交互に、冷媒/熱媒体熱交換器40で冷却媒体を製造し、暖房モードでは、室内機2から室内熱交換器30で加熱された温風を吹出すと同時または交互に、冷媒/熱媒体熱交換器40で加熱媒体を製造することができる。このため、1台の空気熱源ヒートポンプシステム1で冷風と冷却媒体または温風と加熱媒体をそれぞれ同時または交互に製造し、2種類の異なる媒体の冷熱(冷風と冷水等の冷却媒体)または温熱(温風と温水等の加熱媒体)を同時に利用することが可能となる。従って、空気熱源ヒートポンプシステム1の多様化、その用途あるいは適用範囲の拡大に資することができる。
【0061】
また、冷媒/熱媒体熱交換器40に1次側熱媒体循環路43を介して熱媒体タンク42を接続しているため、空気熱源ヒートポンプシステム1を適宜冷房モードまたは暖房モードで運転し、冷媒/熱媒体熱交換器40で製造される冷却媒体または加熱媒体を熱媒体タンク42に貯えながら、冷却媒体または加熱媒体を製造することができ、また、この熱媒体タンク42に貯えられている冷却媒体または加熱媒体を適宜2次側熱媒体循環回路45へと循環させることにより、負荷側(培地または地中61)での利用に供することができる。このように、熱媒体タンク42を設け、その大きさを適当に設定することにより、冷却媒体または加熱媒体の製造およびその利用を安定化することができる。
【0062】
また、1次側熱媒体循環路43に設けられている1次側ポンプ44を熱媒体タンク42内の熱媒体温度に応じて制御し、2次側熱媒体循環回路45に設けられている2次側ポンプ47を負荷側(培地または地中61)の温度に応じて制御するようにしているため、冷却媒体または加熱媒体の製造時、熱媒体タンク42内の熱媒体温度に応じて1次側ポンプ44を運転することにより、熱媒体タンク42内に所定の温度範囲の冷却媒体または加熱媒体を貯えることができる。また、負荷側(培地または地中61)の温度に応じて2次側ポンプ47を運転することにより、熱媒体タンク42内の冷却媒体または加熱媒体を負荷側に循環し、負荷側の温度を設定範囲に制御することができる。従って、冷媒/熱媒体熱交換器40を介して熱媒体タンク42内に所定の温度範囲の冷却媒体または加熱媒体を貯えておき、それを適宜利用することにより負荷側(培地または地中61)の温度を確実に設定範囲に維持することができる。
【0063】
また、上記冷媒/熱媒体熱交換器40は、四方切換弁12と室内熱交換器30とを接続する冷媒ガス配管5中であれば、室外機3の内部、室内機2の内部、もしくは両室内外機2,3の外部のいずれに設置してもよく、冷媒/熱媒体熱交換器40を必要に応じて、室外機3の内部、室内機2の内部、もしくは両室内外機2,3の外部のいずれかに選択的に設置することができる。従って、冷媒/熱媒体熱交換器30を設置する際の自由度を高めることができる。
【0064】
さらに、上記空気熱源ヒートポンプシステム1の室内機3が施設園芸用のハウス60内に設置され、該施設園芸用ハウス60内の冷暖房に供されるとともに、冷媒/熱媒体熱交換器40によって製造された冷却媒体または加熱媒体が施設園芸用ハウス60内の培地または地中61の冷却または加熱に供されるように構成されている。このため、空気熱源ヒートポンプシステム1を1台設置することにより施設園芸用ハウス60内の冷暖房に止まらず、培地または地中61の冷却、加熱をも行うことができ、従って、培地または地中61の冷却または加熱用に別途熱源機を設置する必要がなく、設備費を抑制することができる。また、既設の冷暖房用空気熱源ヒートポンプ機を改修して冷媒/熱媒体熱交換器40を追加することによっても、簡単に培地または地中61の冷却、加熱を実現することができ、作物の収穫量の増加あるいは品質向上に資することが可能となる。
【0065】
また、暖房モードでの運転時、室外熱交換器13に霜が着霜した場合、四方切換弁12により暖房サイクルを冷房サイクルに切換え、冷媒/熱媒体熱交換器40で加熱媒体を用いて冷媒を加熱し、除霜運転を行うようにしているため、加熱媒体からの吸熱により効率よくかつ迅速に除霜することができる。これにより、除霜に要する時間を略半分にし、暖房効率の向上を図ることができるとともに、除霜運転時における圧縮機への液冷媒の流入を確実に防止することができる。
【0066】
また、冷風または温風を吹出す冷暖房運転を主体に運転する場合は、室内送風機30をそれに合わせて通常運転し、冷却媒体または加熱媒体の製造を主体に運転する場合は、室内送風機30を停止もしくは室内熱交換器31への循環風量を低下して運転するようにしているため、冷媒/熱媒体熱交換器40での熱媒体の冷却または加熱に冷媒の熱量を有効に利用することができる。従って、それぞれの運転時において、目的にかなった適切でかつ効率的な運転を行うことができる。
【0067】
また、冷風吹出し運転時、低負荷等により冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒の温度が設定温度以下に低下し、熱媒体が凍結するおそれがある場合には、1次側ポンプ44を運転して熱媒体を循環させることにより、冷媒/熱媒体熱交換器40内での熱媒体の凍結を防止するようにしているため、冷媒/熱媒体熱交換器40の凍結による損傷等のトラブルを防止し、安全に運転することができる。
【0068】
同様に、温風吹出し運転時、外気温の上昇等により冷媒/熱媒体熱交換器40に流入する冷媒の温度が設定温度以上に上昇し、熱媒体が沸騰するおそれがある場合には、1次側ポンプ44を運転して熱媒体を循環させることにより、冷媒/熱媒体熱交換器40内での熱媒体の沸騰を防止するようにしているため、冷媒/熱媒体熱交換器40での熱媒体の沸騰によるトラブルを防止し、安全に運転することができる。
【0069】
さらに、冷暖房運転と冷却媒体または加熱媒体の製造運転とを同時に行う場合、室内熱交換器30に対する循環風量を、冷却媒体または加熱媒体の温度に応じて制御することにより、室内熱交換器30での冷媒の吸熱量または放熱量を調整するようにしている。このため、冷暖房運転と冷温媒体の製造運転との同時運転時、冷媒/熱媒体熱交換器40で熱媒体を冷却または加熱するのに必要な冷媒の熱量を確保しながら、同時に室内熱交換器30を介して冷風または温風を吹出し、冷房運転または暖房運転を継続することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、空気熱源ヒートポンプシステム1を施設園芸用のハウス60内の冷暖房と、培地51の冷却、加熱に適用した例について説明したが、一般的な建屋の冷暖房用にも適用でき、この場合、室内機2を用いた冷暖房の他に、冷媒/熱媒体熱交換器40に直接または熱媒体タンク42を介して負荷側のファンコイルユニットを接続することにより、ファンコイルユニットを介して特定エリアの冷暖房あるいは特定物の冷却または加熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 空気熱源ヒートポンプシステム
2 室内機
3 室外機
4 冷媒液配管(冷媒配管)
5 冷媒ガス配管(冷媒配管)
6 ヒートポンプサイクル
10 冷媒圧縮機
12 四方切換弁
13 室外熱交換器
14 室外送風機
19 冷媒配管
30 室内熱交換器
31 室内送風機
40 冷媒/熱媒体熱交換器
42 熱媒体タンク
43 1次側熱媒体循環路
44 1次側ポンプ
45 2次側熱媒体循環回路
46 冷却・加熱手段
47 2次側ポンプ
48,49,50,51 温度センサ
60 施設園芸用ハウス
61 培地(または地中)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室外送風機等を有する室外機と、室内熱交換器および室内送風機等を有する室内機とが冷媒配管により接続され、前記圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器および室内熱交換器等によりヒートポンプサイクルが構成されている空気熱源ヒートポンプシステムにおいて、
前記室外機側の前記四方切換弁と、前記室内機側の前記室内熱交換器とを接続する冷媒配管に、該冷媒配管側を流れる冷媒と水等の熱媒体とを熱交換させ、冷却媒体または加熱媒体を製造する冷媒/熱媒体熱交換器が設けられていることを特徴とする空気熱源ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記冷媒/熱媒体熱交換器には、前記熱媒体を貯える熱媒体タンクが接続され、1次側ポンプを介して前記熱媒体タンクと前記冷媒/熱媒体熱交換器との間で前記熱媒体が循環可能とされているとともに、前記熱媒体タンクには、負荷側に前記熱媒体を循環する熱媒体循環回路が接続され、前記負荷側に2次側ポンプを介して前記熱媒体が循環可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の空気熱源ヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記1次側ポンプは、前記熱媒体タンク内の熱媒体温度に応じて制御され、前記2次側ポンプは、前記負荷側の温度に応じて制御されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の空気熱源ヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記冷媒/熱媒体熱交換器は、前記室外機側の前記四方切換弁と前記室内機側の前記室内熱交換器との間を接続する前記冷媒配管中おいて、前記室外機の内部、前記室内機の内部、もしくは両室内外機の外部のいずれかに設置可能とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の空気熱源ヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記室内機は、施設園芸用ハウス内に設置され、該施設園芸用ハウス内の冷暖房に供されるとともに、前記冷媒/熱媒体熱交換器によって製造された前記冷却媒体または加熱媒体は、前記施設園芸用ハウス内の培地または地中の冷却または加熱に供されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の空気熱源ヒートポンプシステム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されている空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法において、
冷房モードでは、前記室内機から前記室内熱交換器で冷却された冷風を吹出すと同時または交互に、前記冷媒/熱媒体熱交換器で冷却媒体を製造し、
暖房モードでは、前記室内機から前記室内熱交換器で加熱された温風を吹出すと同時または交互に、前記冷媒/熱媒体熱交換器で加熱媒体を製造することを特徴とする空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項7】
前記暖房モードでの運転時、前記室外熱交換器に霜が堆積した場合、前記四方切換弁により暖房サイクルを冷房サイクルに切換え、前記冷媒/熱媒体熱交換器で前記加熱媒体を用いて冷媒を加熱し、除霜運転を行うことを特徴とする請求項6に記載の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項8】
前記室内機から冷風または温風を吹出して冷暖房運転を行う場合、前記室内送風機を冷暖房運転に合わせて通常運転し、前記冷媒/熱媒体熱交換器を用いて冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、前記室内送風機を停止もしくは前記室内熱交換器への循環風量を低下させて運転することを特徴とする請求項6または7に記載の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項9】
前記冷房モードでの冷風吹出し運転時、前記冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以下になったとき、1次側ポンプを運転して前記冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項10】
前記暖房モードでの温風吹出し運転時、前記冷媒/熱媒体熱交換器に流入する冷媒の温度が設定温度以上になったとき、1次側ポンプを運転して前記冷媒/熱媒体熱交換器に熱媒体を循環させることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。
【請求項11】
前記冷房モードまたは暖房モードで、冷風または温風を吹出すと同時に冷却媒体または加熱媒体を製造する場合、製造される冷却媒体または加熱媒体の温度に応じて前記室内熱交換器に循環する風量を制御することを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の空気熱源ヒートポンプシステムの運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122801(P2011−122801A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282977(P2009−282977)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(391007242)三菱重工空調システム株式会社 (5)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000111292)ネポン株式会社 (24)
【Fターム(参考)】