説明

空気調和機の取っ手構造

【目的】 吹出口と取っ手とを兼用する構造によって、コンパクトな枠体形状でも持ち運びのしやすい空気調和機を実現する。
【構成】 枠体1内に空気流路2を配置し、空気流路2の端には空気吸込口3と空気吹出口4とを設け、空気吸込口3から空気吹出口4に至る空気流路2に送風機5を設ける。空気流路2の出口となる空気吹出口4は枠体1内部で上方に向かって開口し、空気吹出口4よりも上方の枠体1の前面上部に開口部6を設け、枠体1内の空気吹出口4と開口部6とを空気誘導部7で連通する。空気吹出口4から上方に向かう空気流は空気誘導部7によって開口部6に向けられ、開口部6から枠体1の前方に向かって吹出すことができる。また、吹出ガード4aを空気吹出口4に配置することで空気誘導部7が枠体1の前面に開口するので、空気調和機の移動時には開口部6から手を挿入して取っ手8として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は持ち運び可能な空気調和機の吹出口の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は枠体に空気吸込口と空気吹出口とを設け、空気吸込口から空気吹出口に至る空気流路には送風機を取付け、送風機によって空気吸込口から室内空気を取り入れ、空気流路を流れて空気調和された空気を空気吹出口から室内に吹出す構造となっている。そして、このような空気調和機には壁に取付けて使用されるものや床置きして使用されるタイプのものがある。
【0003】
床置きして使用する空気調和機の場合、任意の場所に移動して使用するものであるから、移動時に持ち運びがしやすいように枠体に取っ手を設けた構造が一般的であり、枠体の側面や背面に配置した凹状の取っ手や枠体1の上部に突出させたコ字状の取っ手などが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気調和機は部品の小型化や配置を工夫することによって枠体のコンパクト化が進んでいるが、凹状の取っ手は枠体内に突出する為に枠体内に配置された部品や空気流路と干渉しないように取付ける必要があり、コンパクト化された空気調和機では枠体内のスペースが狭くなる為に取っ手の形状を小さくしなければならず、指の掛かりが浅くなって持ちにくいものとなっていた。
【0005】
一方、枠体の上部に突出するコ字状の取っ手は、枠体内のスペースが狭いときでも比較的形状の大きい取っ手を設けることができるが、取っ手が枠体の上部に突出する分だけ高さ方向のコンパクト化が犠牲になってしまうものであった。また、取っ手が枠体の外側に突出することによって見栄えが悪くなってしまうものであった。
【0006】
更に、最近では枠体のコンパクト化だけでなくデザイン面においても優れた空気調和機の要求があるが、コンパクト化された枠体形状では製品のデザインを大きく変えることは難しくなっている。この為、枠体を透明な素材で形成したスケルトンタイプの製品が増えているが、この構造は枠体内の部品が見えるから、枠体の内部を見せたくない場合には利用できないものであり、従来では枠体の内部を部分的に隠すことで対応していたが、部品点数が増加してコストアップの要因となりやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の課題を解決するもので、枠体1内に空気流路2を配置し、該空気流路2の端には空気吸込口3と空気吹出口4とを設け、空気吸込口3から空気吹出口4に至る空気流路2に空気流を作り出す送風機5を設けた空気調和機において、空気流路2の出口を形成する空気吹出口4は枠体1内部で上方に向かって開口し、該空気吹出口4よりも上方の枠体1の前面上部に開口部6を設け、かつ、枠体1内の空気吹出口4と開口部6とを空気誘導部7によって連通し、該空気誘導部7は空気吹出口4から上方に向かう空気流を開口部6から枠体1の前方に向かって吹出す空気流に変えると共に、空気吹出口4には吹出ガード4aを配置し、空気誘導部7が枠体1の前面の開口部6から枠体1内にのぞむ取っ手8を構成するものである。
【0008】
また、前記空気誘導部7は空気吹出口4の背面側の端部から開口部6の上部の枠体1前面に連続する湾曲板7aで構成したから、空気吹出口4から上方に向かう空気流を開口部6に向けても、空気流は流速をほとんど落とすことなく開口部6から枠体1の前方に吹出すことができる。
【0009】
また、前記枠体1の上面には前面側を高くする段部9を形成し、空気調和機の移動時に枠体1の上面側に位置する指を段部9に掛けることができるようにしたから、持ちやすい形状の取っ手8を構成できる。
【0010】
また、枠体1の前面中央には枠体1内に向けて凹部10を形成し、該凹部10の前方には前面パネル1aを取付け、前面パネル1aの上端と枠体1の前面との間には開口部6を形成すると共に、前面パネル1aと凹部10との間には送風機5を配置し、該送風機5の上方には前面パネル1aの上端内側と凹部10の背面との間隔によって空気吹出口4を形成し、かつ、空気吹出口4と開口部10との間には枠体1の凹部10によって空気誘導部7と取っ手8とを構成することにより、コンパクト化によって枠体1の形状が大幅に変更できない時でも、優れたデザインの空気調和機を実現できるものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のようにこの発明では、空気吹出口4と吹出ガード4aとを枠体1内に配置し、開口部6から枠体1内にのぞむ空間に手を挿入できるようにして取っ手8を構成したものであり、空気調和機の使用時には枠体1の前面に開口した開口部6から枠体1の前方に向かって空気を吹出し、空気調和機の移動時には開口部6から手を挿入して枠体1を持つことができる構造としたものである。
【0012】
このように空気吹出口4と取っ手8とを兼用することにより、枠体1に取っ手8を設ける必要がなくなり、枠体1をコンパクトな形状にすることができると共に、空気吹出口4から開口部6に連続する空間で形成された取っ手8は開口が広く奥行きのある大きな形状となり、コンパクトな枠体形状であっても持ち運びのしやすい空気調和機を実現できた。
【0013】
また、空気吹出口4から上方に向かう空気流を開口部6に向ける空気誘導部7を湾曲板7aで形成し、空気流が湾曲板7aに沿ってスムーズに流れるようにしたから、送風機5の風は流速をほとんど落とすことなく開口部6から枠体1の前方に吹出すことができる。
【0014】
また、枠体1の上面に段部9を形成して、取っ手8と枠体1の上面とをつかんだ時に段部9に指を掛けることができるようにしたから、重量のある空気調和機でも簡単に持ち運びができるようになった。
【0015】
更に、枠体1の前面中央に凹部10を設け、凹部10の前方に前面パネル1aを取付け、前面パネル1aと凹部10との間に空気吹出口4を形成し、前面パネル1aと枠体1の前面との間に開口部6を形成し、空気吹出口4と開口部6との間の凹部10によって空気誘導部7と取っ手8とを構成してもよく、このときは部品点数や組立て工程が減少して製造コストが低下できる。
【実施例】
【0016】
図に示す空気清浄機の実施例によってこの発明を説明すると、1は空気清浄機で構成する空気調和機の枠体、2は枠体1内に形成した空気流路、11は枠体1内の空気流路2を前部室Aと後部室Bとに分割する仕切板、11aは仕切板11に設けた空気通過口、3は枠体1の背面の空気流路2の後部室Bの端に設けた空気吸込口、4は空気流路2の前部室Aの端に設けた空気吹出口、4aは空気吹出口4の吹出ガードである。
【0017】
12は枠体1の内側の後部室Bに設けたフィルタ機構、13は後部室Bに設けたフィルタ機構を保持するガイドであり、フィルタ機構12はガイド13に沿って着脱可能に収納している。
【0018】
5は枠体1の前部室Aに設けた送風機、5aは空気通過口13の中央に配置した送風機5のモータであり、該モータ5aに通電すると、送風機5が回転して空気吸込口3から仕切板11の空気通過口11aに向かう空気流を作り出し、フィルタ機構12を通過する時に室内空気中の塵や埃が捕集されて清浄な空気となる。
【0019】
2aは前部室Aに設けた送風機5の周りに位置して空気流を枠体1内の上部に向ける送風ケーシングであり、送風機5によってフィルタ機構12を通過した空気は空気通過口11aから吸引して送風ケーシング2a内で上方に向け、送風ケーシング2aの出口である空気吹出口4から室内に清浄空気を吹出すことができる。
【0020】
空気清浄機のような床置きで使用するタイプの空気調和機は、任意の場所に移動することができるようになっており、移動時に持ち運びしやすくする為には枠体1に取っ手を設ける必要があるが、最近のようにコンパクト化の進んだ枠体形状では、枠体1に取っ手を設ける為のスペースの確保が困難になっており、持ち運びのしやすい取っ手の形状で枠体1のコンパクト化を実現することが課題となっている。
【0021】
この発明は上記の課題を解決するもので、空気流路2の出口となる空気吹出口4を枠体1内部で上方に向かって開口し、空気吹出口4の吹出ガード4aは枠体1の前部室A内の送風ケーシング2aの出口に配置されている。
【0022】
6は空気吹出口4よりも上方の枠体1の前面上部に設けた開口部、7は空気吹出口4と開口部6とを連通する空気誘導部であり、開口部6は枠体1の横幅広く形成してある。また、空気吹出口4の吹出ガード4aは開口部6の下部の枠体1の前面内側と、枠体1内の仕切板11との間に位置しており、空気誘導部7で囲まれた空間が枠体1の前面に開口する構造となっている。
【0023】
そして、送風機5が回転すると、空気吸込口3から室内空気を吸込み、送風ケーシング2aに送られて上方に向かう空気流が形成され、空気吹出口4から枠体1内の上部に向かう空気流は空気誘導部7で開口部6に向けられ、開口部6から枠体1の前方に向かって吹出すものとなった。
【0024】
8は空気誘導部7で形成される開口部6から枠体1内にのぞむ取っ手であり、取っ手8の入口は横幅広く形成された開口部6の大きさであり、取っ手8の奥行きは枠体1の前面と仕切板11との間に開口した空気吹出口4の大きさであるから、形状の大きい取っ手8を構成することができた。この為、空気調和機を移動する為に開口部6から手を挿入した時は、取っ手8と枠体1の上面とをつかむようにして持つことができ、使用者は確実に手を掛けることができるようになった。
【0025】
このように空気吹出口4と取っ手8とを兼用することにより、コンパクト化によって枠体1内のスペースがほとんどないときでも、形状の大きい取っ手8を形成することができるから持ち運び性が犠牲になることはなく、コンパクトな枠体形状でありながら持ち運びのしやすい空気調和機が実現できた。
【0026】
7aは空気誘導部7を構成する湾曲板であり、該湾曲板7aは吹出ガード4aと仕切板10との接続部から開口部6の上部の枠体1の前面内側に連続している。この為、空気吹出口4から上方に向かう空気流が湾曲板7aに沿ってスムーズに開口部6に向かうようになり、送風機5の吹出方向を上方から前方に変更しても空気の流速をほとんど落とすことはなく、開口部6から枠体1の前方に吹出すことができるものとなった。
【0027】
更に、9は枠体1の前面側が高くなるように枠体1の上面に形成した段部であり、取っ手8に手を挿入し、取っ手8と枠体1の上面とを手でつかんで持ち上げる時は、枠体1の上面側の指を段部9に掛けることで指が外れにくくなるから、重量のある製品でも持ち運びしやすくなった。
【0028】
また、図3に示す他の実施例において、10は枠体1の前面に設けた凹部であり、該凹部10は枠体1の前面周縁から連続して枠体1内にのぞませた透明の素材で形成しており、実施例では凹部10が前部室Aと後部室Bとに分割する仕切板11を兼用しており、前部室A側となる凹部10内には送風機5とモータ5aとを配置している。
【0029】
1aは凹部10内に設けた送風機5の前方に配置した前面パネルであり、前面パネル1aは側部と下部が枠体1の前面の周縁部に接続し、上部が凹部10の上面よりも下方に位置しており、枠体1の前面上部と前面パネル1aの上端との間に開口部6が形成されている。また、前面パネル1aと凹部10とで囲まれた送風機5の周囲には送風ケーシング2aが形成されている。
【0030】
送風機5の上方には前面パネル1aの上端と凹部10の背面との間隔によって空気吹出口4を構成し、前面パネル1aの上端内側と凹部10との間には吹出ガード4aが取付けてある。
【0031】
この構造であれば、枠体1の前面で形成された凹部10は送風機5やモータ5aの取付け部を一体に構成でき、実施例の空気清浄機では更に仕切板11を兼ねる構造となっているから、部品点数や組立て工程が減少して製造コストを低下させることができるものとなった。
【0032】
更に、枠体1内に配置された部品は枠体1の背板14と前面パネル1aによって隠れて外から見えない構造となり、枠体1内に配置された送風機5やフィルタ機構12などの部品を見せたくないときでも、枠体1の前面は透明な素材で形成することができるから、使用する素材の選択の幅を広げることができ、デザインの変更がしやすい構造となった。
【0033】
また、図4に示す実施例は図3に示す実施例の正面図であって、枠体1は透明な素材で形成する凹部10と、凹部10との間で後部室Bを構成する背板14と、凹部10との間で前部室Aを構成する凹部10内にはめ込まれた前面パネル1aで構成してある。
【0034】
前記したように凹部10は枠体1の前面の周縁から連続して形成した透明な素材で形成してあり、凹部10の周縁は前面パネル1aの外側に位置している。10aは透明な素材で形成した凹部10の周縁の内側に形成したリブであり、リブ10aを周縁内部に複数個並べることで枠体1の前面に模様として現すこともでき、リブ10aの形状や配置を変えるだけで枠体1の前面に現れる模様を簡単に変更することができるから、コンパクトな枠体形状でも持ち運びがしやすく、なおかつ優れたデザインの空気調和機が実現できるものとなった。
【0035】
なお、図に示す実施例は空気清浄機であるが、この発明は空気吹出口における構造にかかるものであるから、除湿機や冷風機などの空気調和機にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例を示す空気清浄機の断面図である。
【図2】図1に示す空気清浄機の移動時の状態を示す断面図である。
【図3】この発明の他の実施例を示す空気清浄機の断面図である。
【図4】図3に示す空気清浄機の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 枠体
1a 前面パネル
2 空気流路
3 空気吸込口
4 空気吹出口
5 送風機
6 開口部
7 空気誘導部
7a 湾曲板
8 取っ手
9 段部
10 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内に空気流路を配置し、該空気流路の端には空気吸込口と空気吹出口とを設け、
空気吸込口から空気吹出口に至る空気流路に空気流を作り出す送風機を設けた空気調和機において、
空気流路の出口を形成する空気吹出口は枠体内部で上方に向かって開口し、
該空気吹出口よりも上方の枠体の前面上部に開口部を設け、
かつ、枠体内の空気吹出口と開口部とを空気誘導部によって連通し、
該空気誘導部は空気吹出口から上方に向かう空気流を開口部から枠体の前方に向かって吹出す空気流に変えると共に、
空気吹出口には吹出ガードを配置し、空気誘導部が枠体の前面の開口部から枠体内にのぞむ取っ手を構成することを特徴とする空気調和機の吹出口構造。
【請求項2】
前記空気誘導部は空気吹出口の背面側の端部から開口部の上部の枠体前面に連続する湾曲板で構成したことを特徴とする請求項1記載の空気調和機の吹出口構造。
【請求項3】
前記枠体の上面には前面側を高くする段部を形成したことを特徴とする請求項1記載の空気調和機の吹出口構造。
【請求項4】
枠体の前面中央には枠体内に向けて凹部を形成し、該凹部の前方には前面パネルを取付け、
前面パネルの上端と枠体の前面との間には開口部を形成すると共に、
前面パネルと凹部との間には送風機を配置し、該送風機の上方には前面パネルの上端内側と凹部の背面との間隔によって空気吹出口を形成し、
かつ、空気吹出口と開口部との間には枠体の凹部によって空気誘導部と取っ手とを構成した請求項1記載の空気調和機の吹出口構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和した風を上方へ吹出す空気吹出口を備えた空気調和機であって、この上方を向いた空気吹出口の上方には、この空気吹出口の前側を除く側方と後方に連続する取っ手を形成し、
空気調和機の前側に開口部を形成する取っ手の手掛け部が、空気吹出口から上方へ吹出す風を、前記開口部から前方へ吹出す風に変更する空気誘導部を形成していることを特徴とする空気調和機の取っ手構造。
【請求項2】
前記空気誘導部は空気吹出口の背面側の端部から開口部の上部の枠体前面に連続する湾曲板で構成したことを特徴とする請求項1記載の空気調和機の取っ手構造。
【請求項3】
前記枠体の上面には前面側を高くする段部を形成したことを特徴とする請求項1記載の空気調和機の取っ手構造。
【請求項4】
枠体の前面中央には枠体内に向けて凹部を形成し、該凹部の前方には前面パネルを取付け、
前面パネルの上端と枠体の前面との間には開口部を形成すると共に、
前面パネルと凹部との間には送風機を配置し、該送風機の上方には前面パネルの上端内側と凹部の背面との間隔によって空気吹出口を形成し、
かつ、空気吹出口と開口部との間には枠体の凹部によって空気誘導部と取っ手とを構成した請求項1記載の空気調和機の取っ手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−118856(P2006−118856A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361379(P2005−361379)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【分割の表示】特願2002−21081(P2002−21081)の分割
【原出願日】平成14年1月30日(2002.1.30)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】