説明

空調システム及び区画部材

【課題】ビニルハウス内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、ビニルハウス内の空調を行う空調機の室内機が損傷することを防止する。
【解決手段】ビニルハウス(20)内で太陽熱を利用して土壌の殺菌を行う際に、着脱自在の区画部材(18)が、ビニルハウス(20)内の室内機(12)を覆うように設けられる。区画部材(18)の内側には、室内機(12)が存在する閉空間(22)が形成される。室内機(12)が存在する閉空間(22)は、太陽熱によって加熱される土壌が存在する空間から区画される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルハウス内の空調を行う空調機を備えた空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビニルハウス内の空調を行う空調機が知られている。特許文献1には、この種の空調ユニットが記載されている。この空調ユニットは、蒸発器及び凝縮器を収容するケーシングを備えている。ケーシング内は、仕切り板によって、蒸発器が配置されたビニルハウスの内側空間と、凝縮器が配置されたビニルハウスの外側空間とに区画されている。
【特許文献1】特開平5−308859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ビニルハウス内では、種や苗を植える前に、太陽熱を利用して土壌の殺菌を行う場合がある。この土壌の殺菌中は、土壌の温度だけでなく、ビニルハウス内の温度が上昇する。ビニルハウス内の温度が上昇すると、ビニルハウス内の空調を行う空調機の室内機の電装品等が損傷するなどの問題が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ビニルハウス内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、ビニルハウス内の空調を行う空調機の室内機が損傷することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、ビニルハウス(20)内の空調を行う空調機(16)と、上記ビニルハウス(20)内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、上記空調機(16)の室内機(12)を覆うように設けられ、該室内機(12)が存在する閉空間(22)を形成する着脱自在の区画部材(18)とを備えた空調システム(10)である。
【0006】
第1の発明では、ビニルハウス(20)内で太陽熱を利用して土壌の殺菌を行う際に、区画部材(18)が、ビニルハウス(20)内の室内機(12)を覆うように設けられる。区画部材(18)の内側には、室内機(12)が存在する閉空間(22)が形成される。室内機(12)が存在する閉空間(22)は、太陽熱によって加熱される土壌が存在する空間から区画される。このため、土壌の殺菌が行われる空間とは独立して、室内機(12)の周囲の温度を制御することが可能である。
【0007】
第2の発明は、ビニルハウス(20)内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、該ビニルハウス(20)内の空調を行う空調機(16)の室内機(12)を覆うように設けられて、該室内機(12)が存在する閉空間(22)を形成する着脱自在の区画部材(18)である。
【0008】
第2の発明では、ビニルハウス(20)内で太陽熱を利用して土壌の殺菌を行う際に、この第2の発明の区画部材(18)が、ビニルハウス(20)内の室内機(12)を覆うように設けられる。区画部材(18)の内側には、室内機(12)が存在する閉空間(22)が形成される。室内機(12)が存在する閉空間(22)は、太陽熱によって加熱される土壌が存在する空間から区画される。このため、土壌の殺菌が行われる空間とは独立して、室内機(12)の周囲の温度を制御することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ビニルハウス(20)内で太陽熱を利用して土壌の殺菌を行う際に、区画部材(18)によって、太陽熱によって加熱される土壌が存在する空間から室内機(12)が存在する閉空間(22)を区画することで、土壌の殺菌が行われる空間とは独立して、室内機(12)の周囲の温度を制御することが可能となるようにしている。このため、空調機(16)を運転させることで、室内機(12)の周囲の温度が上昇することを抑制することができる。従って、室内機(12)の周囲の温度が例えば室内機(12)の電装品の耐熱温度を上回ることを回避でき、室内機(12)が損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態は、本発明に係る空調システム(10)である。この空調システム(10)は、図1及び図2に示すように、ビニルハウス(20)内の温度を調節するための空調機(16)と、着脱自在の断熱カバー(18)とを備えている。
【0012】
まず空調機(16)について説明する。
【0013】
空調機(16)は、冷房運転および暖房運転を実行可能に構成されている。空調機(16)は、ビニルハウス(20)外の地面上に設置される室外機(11)と、ビニルハウス(20)内の地面上に設置される室内機(12)とを備えている。室外機(11)と室内機(12)とは、連絡配管(13)によって接続されている。室外機(11)には、圧縮機と室外熱交換器と四路切換弁と膨張弁が接続された室外回路と、室外熱交換器に空気を送る室外ファンとが設けられている(図示省略)。室内機(12)には、室内熱交換器が接続された室内回路と、室内熱交換器に空気を送る室内ファンとが設けられている(図示省略)。また、室内機(12)には、室内ファン等を制御するための電装品(15)(プリント板に半導体等の電子部品が実装されたもの)が設けられている。空調機(16)では、連絡配管(13)によって室外回路と室内回路とが接続されることによって、冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルを行う冷媒回路が構成されている。
【0014】
冷房運転の際には、空調機(16)では、室外熱交換器が凝縮器となって室内熱交換器が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。室内機(12)では、吸込口(図示省略)から吸い込まれた空気が室内熱交換器で冷却されて吹出口(14)から吹き出される。一方、暖房運転の際には、空調機(16)では、室内熱交換器が凝縮器となって室外熱交換器が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。室内機(12)では、吸込口(図示省略)から吸い込まれた空気が室内熱交換器で加熱されて吹出口(14)から吹き出される。
【0015】
続いて断熱カバー(18)について説明する。
【0016】
断熱カバー(18)は、室内機(12)を覆うことが可能な大きさのカバーである。断熱カバー(18)は、ビニルハウス(20)の内部空間を区画する区画部材(18)を構成している。断熱カバー(18)は、太陽光を透過しない断熱材により構成されている。断熱カバー(18)は、例えば、2枚の側面部材(18a)と1枚の上面部材(18b)とを備えている。図2に示すように、2枚の側面部材(18a)は、断面視でL字状に接続されている。上面部材(18b)は、2枚の側面部材(18a)の上端面に固定されている。
【0017】
なお、断熱カバー(18)は、使用しないときは複数のパーツに分かれた状態となり、使用するときにその複数のパーツを組み立てることによって構成されるものであってもよい。この場合、ビニルハウス(20)の入口が狭い場合にも対応することができる。
【0018】
ここで、ビニルハウス(20)内では、種や苗を植える前に、ビニルハウス(20)を透過した太陽熱を利用して土壌(21)の殺菌が行われる。この土壌(21)の殺菌では、土壌(21)に黒色のビニールを被せて、土壌(21)の温度を上昇させる。ビニルハウス(20)内の温度は、土壌(21)の温度の上昇に伴って上昇する。ビニルハウス(20)内の温度は、例えば80℃程度にまで上昇する。
【0019】
本実施形態の空調システム(10)では、この土壌(21)の殺菌の際に、例えば室内機(12)の電装品(15)が故障しないように、断熱カバー(18)が室内機(12)を覆うように設置される。断熱カバー(18)は、一方の側面部材(18a)が室内機(12)の前面(吹出口(14)がある面)に対面し、他方の側面部材(18a)が室内機(12)の側面に対面し、上面部材(18b)が室内機(12)の上面に対面するように、設置される。また、断熱カバー(18)は、図2に示すように、2枚の側面部材(18a)の水平方向における両端(L字の両端)がビニルハウス(20)の内壁面に当接すると共に、上面部材(18b)の2辺がビニルハウス(20)の内壁面に当接するように、設置される。その結果、断熱カバー(18)の内側には、室内機(12)が存在する室内機側空間(22)が形成される。室内機側空間(22)は、ビニルハウス(20)を透過した太陽光が照射される土壌(21)が存在する土壌側空間(23)から区画された閉空間となる。
【0020】
このため、土壌の殺菌が行われる土壌側空間(23)とは独立して、室内機側空間(22)の温度を制御することが可能である。空調機(16)が冷房運転を行うと、室内機側空間(22)の温度が、使用者により設定された設定温度以下になるように調節される。その結果、土壌側空間(23)の温度の上昇に伴って室内機側空間(22)の温度が上昇することが、回避される。
【0021】
なお、土壌(21)の殺菌が終了すると、断熱カバー(18)は、ビニルハウス(20)内から撤去される。ビニルハウス(20)では、空調機(16)によって、内部空間全体の温度調節が可能な状態となる。
【0022】
−実施形態の効果−
本実施形態では、ビニルハウス(20)内で太陽熱を利用して土壌(21)の殺菌を行う際に、区画部材(18)によって、太陽熱によって加熱される土壌(21)が存在する土壌側空間(23)から、室内機(12)が存在する室内機側空間(22)を区画することで、土壌(21)の殺菌が行われる土壌側空間(23)とは独立して、室内機(12)の周囲の温度を制御することが可能となるようにしている。このため、空調機(16)を運転させることで、室内機(12)の周囲の温度が上昇することを抑制することができる。従って、室内機(12)の周囲の温度が例えば室内機(12)の電装品の耐熱温度を上回ることを回避でき、室内機(12)が損傷することを防止することができる。
【0023】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0024】
上記実施形態について、断熱カバー(18)が、室内機(12)の周囲を囲う例えば4枚の側面部材(18a)を備えていてもよい。この場合、室内機側空間(22)に、ビニルハウス(20)の側面を透過した太陽光が入射することを阻止することができるので、太陽熱を利用した土壌の殺菌の際に、空調機(16)の消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0025】
また、上記実施形態について、室内機(12)が、土壌(21)の殺菌の際の設定温度として、所定の制御温度(例えば30℃)を記憶していてもよい。この場合、室内機(12)には、土壌(21)の殺菌の際に使用者によって入力される入力ボタンが設けられる。入力ボタンが入力されると、室内機(12)では、設定温度が上記制御温度に自動的に設定されて、冷房運転が自動的に開始される。
【0026】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明は、ビニルハウス内の空調を行う空調機を備えた空調システムについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る空調システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る断熱カバーの上面部材を省略したビニルハウスの上面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 空調システム
12 室内機
16 空調機
18 断熱カバー(区画部材)
20 ビニルハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルハウス(20)内の空調を行う空調機(16)と、
上記ビニルハウス(20)内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、上記空調機(16)の室内機(12)を覆うように設けられ、該室内機(12)が存在する閉空間(22)を形成する着脱自在の区画部材(18)とを備えた空調システム。
【請求項2】
ビニルハウス(20)内において太陽熱を利用して土壌を殺菌する際に、該ビニルハウス(20)内の空調を行う空調機(16)の室内機(12)を覆うように設けられて、該室内機(12)が存在する閉空間(22)を形成する着脱自在の区画部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−178715(P2010−178715A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27267(P2009−27267)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】