空調用レジスタ
【課題】駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくする。
【解決手段】ケース、環状フィン30(フィン部31)、上流側フィン44,45、操作ノブ40、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備える空調用レジスタを対象とする。ケースは、内部空間を空調用空気の通風路とする。通風路での空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方(車幅方向)を第1方向とし、他方(上下方向)を第2方向とする。この空調用レジスタにおいて、環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸(シャフト35)と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸(シャフト35)と、ギヤ支軸(シャフト35)を支点とする駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)への傾動を規制する傾動規制部とを設ける。
【解決手段】ケース、環状フィン30(フィン部31)、上流側フィン44,45、操作ノブ40、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備える空調用レジスタを対象とする。ケースは、内部空間を空調用空気の通風路とする。通風路での空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方(車幅方向)を第1方向とし、他方(上下方向)を第2方向とする。この空調用レジスタにおいて、環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸(シャフト35)と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸(シャフト35)と、ギヤ支軸(シャフト35)を支点とする駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)への傾動を規制する傾動規制部とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きを変更する空調用レジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを変更するための空調用レジスタが組込まれている(例えば、特許文献1参照)。この空調用レジスタは、図18に示すように、ケース80、下流側フィン83、上流側フィン85、操作ノブ87及び伝達機構88を基本的な構成要素として備えている。
【0003】
ケース80は筒状をなし、その内部空間を空調用空気Aの通風路81としている。通風路81の下流端は空調用空気Aの吹出口82となっている。
ここで、通風路81での空調用空気Aの通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方(紙面に直交する方向)を第1方向とし、他方(図18の略上下方向)を第2方向とすると、下流側フィン83は、ケース80内の吹出口82よりも上流側において第1方向に延び、フィン支軸(図示略)により第2方向への傾動可能に支持されている。また、上流側フィン85は、ケース80内の下流側フィン83よりも上流側において第2方向に延び、支軸86により第1方向への傾動可能に支持されている。
【0004】
操作ノブ87は、下流側フィン83及び上流側フィン85の各傾きを変更する際に操作される部材であり、第1方向への操作により同第1方向へ移動し、第2方向への操作により、下流側フィン83とともにフィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する。
【0005】
伝達機構88は、操作ノブ87の第1方向の動きを上流側フィン85に伝達して、同上流側フィン85を同第1方向へ傾動させるための機構である。
この伝達機構88としては、上記特許文献1に記載されているように、駆動ギヤ89及び被動ギヤ91からなるものが代表的である。駆動ギヤ89は第1方向に並設された複数の歯90を有し、操作ノブ87の同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する。被動ギヤ91は上流側フィン85に設けられて、駆動ギヤ89に噛み合わされている。
【0006】
上記空調用レジスタでは、操作ノブ87が第2方向へ操作されると、駆動ギヤ89が被動ギヤ91に噛み合わされた状態に維持されつつ、下流側フィン83が同第2方向へ傾動されられる。このときには、駆動ギヤ89の歯90は、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92を変えない。駆動ギヤ89の歯90は、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92に対し摺動するのみである。従って、下流側フィン83のみが第2方向へ傾動させられる。
【0007】
また、操作ノブ87が第1方向へ操作されると、その操作ノブ87の動きが駆動ギヤ89及び被動ギヤ91を通じて上流側フィン85に伝達される。この伝達は、駆動ギヤ89の歯90が、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92を変えることで行なわれる。そして、上記伝達により、操作ノブ87に連動して上流側フィン85が支軸86を支点として第1方向へ傾動させられる。
【0008】
これらの傾動により、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きが変更される。吹出口82からは、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きに応じた方向へ空調用空気Aが吹出される。表現を変えると、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きが変えられることで、吹出口82からの空調用空気Aの吹出し方向が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−148455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1に記載された従来の空調用レジスタでは、下流側フィン83を第2方向へ傾動させるための操作を操作ノブ87に対し行なったときにも、駆動ギヤ89を被動ギヤ91に噛み合わせた状態にする必要がある。そのためには、駆動ギヤ89の第2方向のサイズを大きくせざるを得ない。ここで、駆動ギヤ89は、上流側フィン85、下流側フィン83等と同様に空調用空気Aの流れを妨げ、圧力損失を招くところ、上記の大型化に伴い圧力損失が増大する。その結果、吹出口82から吹出される空調用空気Aの強さが低下したり、空調用空気の到達距離が短くなったりする。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくすることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内部空間を空調用空気の通風路とするとともに、同通風路の下流端に前記空調用空気の吹出口を有し、前記通風路での前記空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし他方を第2方向とする筒状のケースと、前記ケース内の前記吹出口よりも上流側において前記第1方向に延び、フィン支軸により、前記第2方向への傾動可能に支持された下流側フィンと、前記ケース内の前記下流側フィンよりも上流側において前記第2方向に延び、前記第1方向への傾動可能に支持された上流側フィンと、前記第1方向への操作により同第1方向へ移動し、前記第2方向への操作により、前記下流側フィンとともに前記フィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する操作ノブと、前記第1方向に並設された複数の歯を有し、前記操作ノブの同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤと、前記上流側フィンに設けられ、かつ前記駆動ギヤに噛み合わされる被動ギヤとを備える空調用レジスタであって、前記下流側フィンにおいて前記フィン支軸と同軸上に設けられて前記駆動ギヤを支持するギヤ支軸と、前記ギヤ支軸を支点とする前記駆動ギヤの前記第2方向への傾動を規制する傾動規制部とをさらに備えることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、操作ノブの第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤは、下流側フィンにおいてフィン支軸と同軸上に設けられたギヤ支軸によって支持される。この駆動ギヤは、ギヤ支軸を支点として第2方向へ傾動可能であるが、その傾動は傾動規制部によって規制される。
【0014】
このため、操作ノブは、第2方向へ操作されると、下流側フィンとともにフィン支軸を支点として同第2方向へ傾動するが、駆動ギヤは同第2方向へ傾動せず、被動ギヤに噛み合った状態を維持する。このとき、駆動ギヤの歯は、噛み合い対象となる被動ギヤの歯を変えない。また、駆動ギヤが操作ノブと一体となって第2方向へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤの歯は、被動ギヤの歯に対し摺動しない。
【0015】
また、操作ノブは、第1方向へ操作されると、同第1方向へ移動する。この操作ノブの第1方向への操作に連動して駆動ギヤが同第1方向へ移動する。この移動に伴い、駆動ギヤの歯が、噛み合い対象となる被動ギヤの歯を変えることで、同被動ギヤが上流側フィンと一体となって第1方向へ傾動させられる。
【0016】
これらの第1方向及び第2方向への傾動により、上流側フィン及び下流側フィンの各傾きが変更される。吹出口からは、上流側フィン及び下流側フィンの各傾きに応じた方向へ空調用空気が吹出される。
【0017】
上記の構成では、下流側フィンを第2方向へ傾動させるための操作が操作ノブに対し行なわれたときにも、駆動ギヤが常に被動ギヤに噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤが一体となって傾動する特許文献1とは異なり、第2方向についての駆動ギヤのサイズを大きくしなくても(同方向のサイズが小さくても)、駆動ギヤが常に被動ギヤに噛み合う。その結果、駆動ギヤが空調用空気Aの流れを妨げる現象が抑制され、駆動ギヤに起因する圧力損失が小さくなる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被動ギヤは、前記上流側フィンの下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設けられ、前記上流側フィンには、前記縁部から前記被動ギヤに向けて延びる切欠き部が設けられ、前記駆動ギヤは前記切欠き部に入り込んだ状態で前記被動ギヤに噛み合わされており、前記切欠き部において前記第2方向に相対向する壁面により前記傾動規制部が構成されていることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、駆動ギヤが被動ギヤに噛み合わされた状態では、その駆動ギヤは上流側フィンの切欠き部に入り込んでいる。切欠き部において第2方向に相対向する壁面は、駆動ギヤに対し、同第2方向についての両側に位置し、傾動規制部として機能する。そのため、駆動ギヤが第2方向へ傾動しようとした場合、同駆動ギヤが切欠き部の壁面に当接し、それ以上傾動することを規制される。このようにして、簡単な構成でありながら、傾動規制部による駆動ギヤの傾動規制が行なわれる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記上流側フィンは、前記第1方向の複数箇所に互いに平行に離間した状態で配設されており、前記複数箇所の上流側フィンは、前記通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられることにより、同通風路を閉鎖するものであることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、操作ノブが第1方向へ操作されると、その操作ノブの動きが駆動ギヤ及び被動ギヤを通じて上流側フィンに伝達される。この伝達により、操作ノブの操作に連動して、上流側フィンが第1方向へ傾動させられる。
【0022】
そして、上記操作ノブの第1方向への操作により、各上流側フィンが、通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられると、通風路が閉鎖され、吹出口からの空調用空気の吹出しが遮断される。
【0023】
上記のように、各上流側フィンを通風方向に対し略直交する位置まで傾動させる場合には、各上流側フィンを上記とは異なる位置まで傾動させる場合、例えば、通風方向に対し平行にする場合や、通風方向に対し傾斜させる場合よりも、操作ノブが第1方向へ多く操作される。これに伴い、駆動ギヤも第1方向へ多く移動される。この多くの移動にも拘らず、駆動ギヤを被動ギヤに噛み合わせた状態にするために、同駆動ギヤは第1方向に長くなる。
【0024】
そのため、駆動ギヤの第2方向のサイズを小さくして、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくする効果が有効に得られる。
すなわち、駆動ギヤが操作ノブと一体となって第1方向にも第2方向にも動くものでは、下流側フィンを第2方向へ傾動させるための操作を操作ノブに対し行なったときにも、駆動ギヤを被動ギヤに噛み合わせた状態にするために、駆動ギヤの第2方向のサイズが大きくなる。駆動ギヤが第1方向にも第2方向にも大型化し、圧力損失が特に大きくなる。
【0025】
これに対し、請求項3に記載の発明では、駆動ギヤが第1方向には大きくなるが、第2方向には小さくなる。そのため、圧力損失が有効に小さくされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、下流側フィンにおいてフィン支軸と同軸上にギヤ支軸を設けて駆動ギヤを支持するとともに、ギヤ支軸を支点とする駆動ギヤの第2方向への傾動を傾動規制部によって規制するようにしたため、第2方向についての駆動ギヤのサイズを小さくし、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【図2】第1実施形態における空調用レジスタの主要な構成部品を示す分解斜視図。
【図3】第1実施形態における空調用レジスタを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図4】図2の要部を拡大して示す部分分解斜視図。
【図5】図3(B)のA−A線断面図。
【図6】図3(B)のB−B線断面図。
【図7】図3(B)のC−C線断面図。
【図8】図7の状態から操作ノブが第2方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す側断面図。
【図9】図5の状態から操作ノブが第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す平断面図。
【図10】本発明を具体化した第2実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【図11】第2実施形態における空調用レジスタを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図12】図11(B)のD−D線断面図。
【図13】図11(B)のE−E線断面図。
【図14】図11(B)のF−F線断面図。
【図15】図13の状態から操作ノブが第2方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す側断面図。
【図16】図12の状態から操作ノブが第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す部分平断面図。
【図17】図16の状態から操作ノブがさらに第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す部分平断面図。
【図18】従来の空調用レジスタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両用の空調用レジスタに具体化した第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
【0029】
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として左右方向を規定する。
【0030】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その車幅方向についての中央部、両側部等には本実施形態の空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの機能の1つに、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを調整することがある。
【0031】
図1及び図5に示すように、空調用レジスタは、ケース10、環状フィン30、操作ノブ40、上流側フィン群、伝達機構50、シャットダンパ60及びダンパ駆動機構65を備えている。次に、これら各部の構成について説明する。
【0032】
<ケース10>
ケース10は、空調装置の通風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、図1及び図2に示すように、リテーナ11及びベゼル12を備えている。リテーナ11及びベゼル12は、いずれも両端が開放された筒状体からなる。ベゼル12は、リテーナ11よりも車両後方側(車室側)に配置され、連結部(図示略)によりリテーナ11に連結されている。ケース10(リテーナ11及びベゼル12)の内部空間は、空調用空気Aの流路(以下「通風路20」という)とされている(図5参照)。
【0033】
図1及び図3(A),(B)に示すように、ベゼル12は、自身の下流端に空調用空気Aの吹出口13を有している。吹出口13は、上下方向に対するよりも車幅方向に細長い横長の矩形状をなしている。ベゼル12の下流端において、上記吹出口13の周りは四角環状をなす枠部14となっている。枠部14は、空調用レジスタの意匠面を構成するものであり、下流側へ膨らむように湾曲している。
【0034】
ここで、上記通風路20での空調用空気Aの通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向とする。本実施形態では、車幅方向を第1方向とし、上下方向を第2方向としている。なお、本明細書では、「通風方向」は、環状フィン30及び上流側フィン44,45によって向きを変えられる前の空調用空気Aの流れ方向をいうものとする。
【0035】
通風路20は、ケース10の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、上記第2方向(上下方向)に相対向する一対の第1壁部21と、上記第1方向(車幅方向)に相対向する一対の第2壁部22とからなる。
【0036】
図2及び図3(A)に示すように、ケース10の両第1壁部21において、吹出口13からそれぞれ上流側へ一定距離離れた箇所には、軸受部23が設けられている。ここでは、上記軸受部23は、リテーナ11及びベゼル12の接合部分であって、第1方向(車幅方向)へ互いに離間した複数箇所に設けられている。
【0037】
<環状フィン30>
図2及び図3(B)に示すように環状フィン30は、ベゼル12内であって、吹出口13の上流側近傍に配設されている。環状フィン30は、第2方向(上下方向)に互いに平行に離間した状態で第1方向(車幅方向)に延びる2枚の板状のフィン部31を、上流側フィンとして有している。両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての一端部(左端部)同士は、厚みの均一な板状の端連結部32によって連結されている。同様に、両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての他端部(右端部)同士は、厚みの均一な板状の端連結部33によって連結されている。両端連結部32,33は第1方向(車幅方向)については、互いに反対方向へ膨らむように湾曲している。各端連結部32,33は、通風路20での空調用空気Aの通風方向に平行に形成されている、
上述した一対のフィン部31と、一対の端連結部32,33とによって、環状フィン30は第2方向(上下方向)よりも第1方向(車幅方向)に細長い環状をなしている。環状フィン30の第1方向(車幅方向)の寸法は、ケース10の両第2壁部22間の寸法よりも小さく設定されている。これは、環状フィン30を第1方向(車幅方向)への移動可能に構成するために必要な条件である。
【0038】
さらに、両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての中央部分は、第2方向(上下方向)へ延びる板状の中央連結部34によって連結されている。この中央連結部34は、両フィン部31が第2方向(上下方向)へ撓むのを規制するほか、後述する操作ノブ40の設けられる箇所として機能する。
【0039】
図2及び図5に示すように、ケース10(ベゼル12)の下流側の端部であって両第2壁部22には、第1方向(車幅方向)へ延びるシャフト35が架け渡されている。シャフト35の両端部は、両第2壁部22に対し、少なくとも同方向への移動不能に取付けられている。すなわち、シャフト35は、両第2壁部22に対し回転可能に支持されてもよいし、回転不能に係止されてもよい。
【0040】
環状フィン30は、上記シャフト35が挿通された一対の端連結部32,33と中央連結部34とにおいて、ケース10に対し、第1方向(車幅方向)への移動可能かつ第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。より詳しくは、両端連結部32,33と中央連結部34とにはそれぞれ孔36があけられており、これらの孔36にシャフト35が挿通されている。
【0041】
上記シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)への傾動可能に支持するためのフィン支軸として機能する。また、シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸として機能する。
【0042】
<操作ノブ40>
操作ノブ40は、上記中央連結部34の下流部であって、第2方向(上下方向)についての中央部に一体に形成されている。操作ノブ40は、第1方向(車幅方向)へ延びる板状をなしている。操作ノブ40は、環状フィン30の両フィン部31に対し平行に配置されている。操作ノブ40は、環状フィン30の一部(中央連結部34)に結合されていることから、その環状フィン30と一体となって動く。すなわち、操作ノブ40は、シャフト35に沿って第1方向(車幅方向)へ移動(スライド)可能であり、シャフト35を支点として第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0043】
<上流側フィン群>
上流側フィン群は、ケース10内の環状フィン30(フィン部31)の上流近傍に配置された複数枚の上流側フィンからなる。各上流側フィンは、第2方向(上下方向)に延びる板状体からなり、互いに第1方向(車幅方向)へ平行に離間した状態で配設されている。これらの上流側フィンは、第1方向(車幅方向)についての中央部に位置する1枚の上流側フィン44と、それ以外の複数枚(4枚)の上流側フィン45とからなる。各上流側フィン44,45は、第2方向(上下方向)についての両端面から同方向外方へ延びる支軸46を備えている。そして、各上流側フィン44,45は、両支軸46においてケース10(リテーナ11及びベゼル12間)の軸受部23に回動可能に支持されている。そのため、各上流側フィン44,45は、支軸46を支点として第1方向(車幅方向)へ傾動可能である。
【0044】
各上流側フィン44,45の上流部には切欠き部47が形成されている。上流側フィン44,45毎の切欠き部47には、第2方向(上下方向)に延びる連結軸48が設けられている。各連結軸48は、上記支軸46から上流側へ偏倚した箇所に位置している。そして、上流側フィン44,45毎の連結軸48は、第1方向(車幅方向)に延びる長尺状の連結ロッド49に連結されている。これらの上流側フィン44,45、支軸46、連結軸48、連結ロッド49等により、全ての上流側フィン45を上流側フィン44に同期した状態で傾動させる平行リンク機構が構成されている。
【0045】
<伝達機構50>
図4及び図5に示すように、伝達機構50は、操作ノブ40の第1方向(車幅方向)の動きを上流側フィン44に伝達して、同上流側フィン44を同方向へ傾動させるが、操作ノブ40の第2方向(上下方向)の動きを同上流側フィン44に伝達しないようにするための機構であり、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備えている。また、伝達機構50は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させることで、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させる連動機構も兼ねている。
【0046】
駆動ギヤ51は、第1方向(車幅方向)に延びる板状体からなる。この駆動ギヤ51の上流側の縁部には、第1方向(車幅方向)に複数の歯52が並設されている。駆動ギヤ51からは、下流側へ向けて軸受部53が突設されている。本実施形態では、軸受部53は、駆動ギヤ51において第1方向(車幅方向)に互いに離間した2箇所に設けられている。さらに、駆動ギヤ51の下流側の縁部であって、第1方向(車幅方向)についての中央部には、上流側へ向けて延びる係合凹部54が形成されている。
【0047】
そして、駆動ギヤ51は、両軸受部53が、第1方向(車幅方向)について上記中央連結部34の両側に位置するように配置されている。中央連結部34の上流側の一部が、上記係合凹部54に下流側から係合されるとともに、両軸受部53に上記シャフト35が挿通されている。こうした構成により、駆動ギヤ51は環状フィン30(操作ノブ40)に対し傾動可能である。すなわち、シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)において上記フィン支軸と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸として機能する。この点において、第1実施形態は、駆動ギヤ89が操作ノブ87に一体に形成された特許文献1と大きく異なっている。また、上記の構成により、環状フィン30の第1方向への動きが中央連結部34及び係合凹部54を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、駆動ギヤ51は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に伴い同方向へ移動する。
【0048】
被動ギヤ55は、平面扇形状をなす板状体からなり、複数の上流側フィン44,45のうちの1つ、ここでは第1方向(車幅方向)の中央に位置する上流側フィン44に設けられている。被動ギヤ55の外周面には、複数の歯56が円弧状に並ぶように連続して形成されている。被動ギヤ55は、第2方向(上下方向)については、上流側フィン44の中央部に位置している。また、被動ギヤ55は、通風路20での空調用空気Aの通風方向については、上流側フィン44の下流側の縁部から僅かに上流側へ離れた箇所に位置している。上流側フィン44における下流側の縁部と被動ギヤ55の歯56との間は、駆動ギヤ51の厚みよりも第2方向(上下方向)に間隔のやや広い切欠き部57となっている。
【0049】
そして、駆動ギヤ51がこの切欠き部57に入り込み(図6参照)、上記被動ギヤ55に噛み合わされている。ここで、上記切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面は、駆動ギヤ51の同方向についての両面に当接することで、同方向についての駆動ギヤ51の傾動を規制する傾動規制部を構成している。
【0050】
<シャットダンパ60>
図5及び図7に示すように、シャットダンパ60は、通風路20を開閉するためのものであり、ケース10内の上流側フィン群よりも上流側(リテーナ11内)に配置されている。シャットダンパ60は、通風路20に直交する面に対応して、第2方向(上下方向)よりも第1方向(車幅方向)に細長い長方形板状をなしている。
【0051】
シャットダンパ60は、第1方向(車幅方向)についての両端面から突出する支軸61によりケース10(リテーナ11)の第2壁部22に支持されている。
<ダンパ駆動機構65>
図1及び図5に示すように、ダンパ駆動機構65は、シャットダンパ60を開閉駆動するための機構であり、操作ダイヤル66及び回動伝達部67を備えている。操作ダイヤル66は円板状をなし、ケース10に対し、第2方向(上下方向)への回動可能に支持されている。操作ダイヤル66の一部は、ベゼル12の枠部14に設けられた窓部14Aを通じて下流側へ露出している。回動伝達部67は、操作ダイヤル66の回動をシャットダンパ60に伝達するためのものであり、ケース10の外部であって、操作ダイヤル66とシャットダンパ60の支軸61との間に設けられている。回動伝達部67は、リンク機構、ギヤ機構等によって構成されている。
【0052】
上記のようにして第1実施形態の空調用レジスタが構成されている。次に、この空調用レジスタの作用について説明する。
図5〜図7に示すように、操作ダイヤル66の回動操作を通じ、両支軸61を支点としてシャットダンパ60が回動させられて、同シャットダンパ60が通風方向(第1壁部21)に対し平行にさせられると、通風路20が全開状態となり、空調用空気Aが通風路20を流れる。空調用空気Aは、上流側フィン44,45及び環状フィン30に沿って流れた後、吹出口13から吹出される。そのため、上流側フィン44,45が第1方向(車幅方向)へ傾動させられ、環状フィン30が第2方向(上下方向)へ傾動させられることで、空調用空気Aは、それら上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きに応じた方向へ流れて、吹出口13から吹出される。表現を変えると、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きが変えられることで、吹出口13からの空調用空気Aの吹出し方向が変更される。
【0053】
ここで、ギヤ支軸(シャフト35)によってケース10に支持された駆動ギヤ51は、そのギヤ支軸(シャフト35)を支点として、環状フィン30(操作ノブ40)に対し、第2方向(上下方向)へ傾動可能であるが、その傾動は傾動規制部によって規制される。すなわち、駆動ギヤ51が被動ギヤ55に噛み合わされた状態では、その駆動ギヤ51は上流側フィン44の切欠き部57に入り込んでいる。切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面57Aは、駆動ギヤ51に対し、同方向についての両側に位置し、傾動規制部として機能する。そのため、駆動ギヤ51が第2方向(上下方向)へ傾動しようとした場合、同駆動ギヤ51が切欠き部57の壁面57Aに当接し、それ以上傾動することを規制される。
【0054】
一方、フィン支軸(シャフト35)によってケース10に支持された環状フィン30は、そのフィン支軸(シャフト35)を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。環状フィン30の上記傾動を、駆動ギヤ51に伝達するものは特に設けられていない。環状フィン30の中央連結部34に一体に形成された操作ノブ40についても、フィン支軸(シャフト35)を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0055】
そのため、図8に示すように、操作ノブ40に対し第2方向(上下方向:図8では下方)の力が加えられると(操作ノブ40が第2方向へ操作されると)、その力は、操作ノブ40と一体に設けられた中央連結部34を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。操作ノブ40は、環状フィン30(フィン部31)と一体となって、シャフト35(フィン支軸)を支点として第2方向(上下方向)へ傾動するが、駆動ギヤ51は同方向へ傾動せず、被動ギヤ55に噛み合った状態を維持する。
【0056】
このとき、駆動ギヤ51の歯52は、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えない。また、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第2方向(上下方向)へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤ51の歯52は、被動ギヤ55の歯56に対し摺動しない。さらに、このときには、中央連結部34は、駆動ギヤ51の係合凹部54内で第2方向(上下方向)へ傾動する。
【0057】
図9に示すように、操作ノブ40に対し、第1方向(車幅方向:図9では左方)の力が加えられると(操作ノブ40が第1方向へ操作されると)、その力は、操作ノブ40と一体に設けられた中央連結部34を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。このとき、ケース10の第2壁部22間に架け渡され、かつ第1方向(車幅方向)に延びて環状フィン30の両端連結部32,33に挿通されたシャフト35は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動をガイドする機能を発揮する。そのため、上記力の伝達により、操作ノブ40は環状フィン30(フィン部31)と一体となって、シャフト35上をスライドさせられることにより、第1方向(車幅方向)へ移動させられる。この移動に伴い、中央連結部34及び端連結部32,33が、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40が操作された側へ位置を変える。
【0058】
また、中央連結部34が係合凹部54に係合されていることから、操作ノブ40に対し、上記のように第1方向(車幅方向)の力が加えられる(操作ノブ40が第1方向へ操作される)と、その力が、中央連結部34及び係合凹部54を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、操作ノブ40の第1方向(車幅方向)への操作に連動して(環状フィン30の第1方向への移動に連動して)、駆動ギヤ51が同操作ノブ40の操作された側へ移動する。
【0059】
この移動に伴い、駆動ギヤ51の歯52が、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えることで、同被動ギヤ55が上流側フィン44と一体となって、支軸46を支点として、第1方向(車幅方向)のうち操作ノブ40の操作された側へ傾動させられる。この支軸46を支点とする上流側フィン44の動きは、連結軸48及び連結ロッド49を介して他の上流側フィン45に伝達される。この伝達により、全ての上流側フィン45が上流側フィン44に同期して、操作ノブ40の操作された側へ傾動する。
【0060】
このように、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40の操作された側へ環状フィン30が移動させられるとともに、その移動に連動して上流側フィン44,45が同第1方向(車幅方向)へ傾動させられる。環状フィン30の上記移動により、中央連結部34及び端連結部32,33が操作ノブ40の操作された側へ変位させられ、同端連結部32,33が、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避する。そのため、空調用空気Aの流れが端連結部32,33によって妨げられる現象が起こりにくい。
【0061】
第1実施形態では、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)へ傾動させるための操作が操作ノブ40に対し行なわれたときにも、駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤ89が一体となって傾動する特許文献1に比べ、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さいものの、同駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。
【0062】
また、上記端連結部32,33及び駆動ギヤ51は、上流側フィン44,45が通風方向に対し平行にされたときの吹出口13の実開口面積を少なからず小さくする。実開口面積は、通風路20の吹出口13において通風方向に直交する面を投影面とした場合、その投影面において空調用レジスタの各部品や各部が投影されていない箇所の面積である。
【0063】
この点、端連結部32,33が厚みの均一な板状をなし、しかも空調用空気Aの通風方向に平行に形成されている第1実施形態では、投影面において端連結部32,33の投影される箇所の面積が小さい。また、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さい第1実施形態では、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって傾動する特許文献1よりも、投影面において駆動ギヤ51の投影される箇所の面積が小さい。これらのことから、実開口面積が大きくなって、通風抵抗が減少し、圧力損失が小さくなる。
【0064】
なお、操作ダイヤル66の回動操作を通じ、支軸61を支点としてシャットダンパ60が回動させられ、同シャットダンパ60が通風方向(第1壁部21)に対し傾斜状態にされて第1壁部21に接触させられると、通風路20が閉塞される。通風路20での空調用空気Aの流通が遮断され、吹出口13からの空調用空気Aの吹出しが停止される。
【0065】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸と同軸上に駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸を設けるとともに、ギヤ支軸を支点とする駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)への傾動を規制する傾動規制部を設けている。
【0066】
そのため、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを大きくしなくても、同駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合った状態に維持することができる。同第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを小さくし、同駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくすることができる。
【0067】
また、駆動ギヤ51に起因して空調用空気Aが第2方向(上下方向)へ分割されるのを抑制することができる。
(2)被動ギヤ55を、上流側フィン44の下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設ける。上流側フィン44において縁部と被動ギヤ55との間に切欠き部57を設ける。駆動ギヤ51を、切欠き部57に入り込ませた状態で被動ギヤ55に噛み合わせる。そして、切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面57Aにより傾動規制部を構成している。
【0068】
そのため、上記のような簡単な構成でありながら、傾動規制部による駆動ギヤ51の傾動規制を行なうことができる。
(3)操作ノブ40を中央連結部34において環状フィン30に一体に形成している。こうした構成は、環状フィン30を操作ノブ40と一体で、ケース10に対し第1方向(車幅方向)へ移動させることによりはじめて可能となる。環状フィンがケースに対し第1方向(車幅方向)へ移動不能であり、操作ノブのみが同方向へ移動するものでは、操作ノブを環状フィンとは別部材によって構成せざるを得ない。
【0069】
そのため、操作ノブ40を第1方向(車幅方向)へ操作することで、環状フィン30を同方向へ移動させることができる。
また、操作ノブ40を環状フィン30とは別部材によって構成するものに比べ、部品点数を削減することができる。
【0070】
(4)環状フィン30(フィン部31)を第2方向(車幅方向)への傾動可能に支持するフィン支軸と、駆動ギヤ51を環状フィン30(フィン部31)に支持するギヤ支軸とを、共通のシャフト35により構成している。
【0071】
そのため、フィン支軸とギヤ支軸とが別部材によって構成された場合に比べ、部品点数を削減することができる。
(5)仮に、環状フィンが第1方向(車幅方向)へ移動しないものであるとすると、上流側フィンが通風方向に対し傾斜させられると、環状フィンの端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置し、同空調用空気の流れを妨げるおそれがある。
【0072】
この点、第1実施形態では、環状フィン30を、ケース10に対し第1方向(車幅方向)への移動可能に支持する。環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させる連動機構(伝達機構50)を設けている。
【0073】
そのため、連動機構(伝達機構50)により、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させて、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させることができる。その結果、環状フィン30の端連結部32,33が空調用空気Aの流れを妨げるのを抑制することができる。
【0074】
(6)上記(5)に関連するが、連動機構(伝達機構50)により、上流側フィン44を環状フィン30の移動に連動して傾動させる。上記環状フィン30の移動により、端連結部32,33や中央連結部34の第1方向(車幅方向)についての位置を変化させている。
【0075】
そのため、空調用レジスタの下流側からは、ケース10内であって環状フィン30よりも上流側に位置する上流側フィン44,45が見づらい。しかし、端連結部32,33や中央連結部34を見ることで、上流側フィン44,45の傾き等を見なくても、第1方向(車幅方向)についての空調用空気Aの吹出し方向を簡単に把握することができる。
【0076】
(7)上記(5)に記載した現象、すなわち、環状フィンの端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置し、同空調用空気の流れを妨げる現象を解消する手段として、環状フィンにおける2つの端連結部の間隔が下流側ほど広くなるように、同端連結部を通風方向に対し傾斜させることも考えられる。このようにすると、端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置しなくなり、空調用空気の流れが端連結部によって妨げられる現象が起こりにくくなる。
【0077】
しかし、この場合には、上流側フィンが通風方向に対し平行にされたとき、吹出口の実開口面積が小さくなる。そして、実開口面積が小さくなるに従い通風抵抗が増し、圧力損失が増大する。
【0078】
この点、第1実施形態では、端連結部32,33を、通風路20での空調用空気Aの通風方向に平行に形成している。
そのため、端連結部が通風方向に対し傾斜させられた場合よりも、投影面において端連結部32,33の投影される箇所の面積を小さくすることができる。これに伴い、実開口面積を大きくして、通風抵抗を減少させ、圧力損失を小さくすることができる。
【0079】
(8)ケース10内の第2壁部22間には、第1方向(車幅方向)に延びて環状フィン30の両方の端連結部32,33に挿通されたシャフト35を架け渡すことで、環状フィン30をシャフト35によりケース10に対し第1方向への移動可能に支持している。
【0080】
そのため、シャフト35をガイドとして機能させることができる。シャフト35上をスライドさせることにより、環状フィン30を第1方向(車幅方向)へ移動させることができる。
【0081】
(9)連動機構として、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備えるものを用いている。
そのため、これらの駆動ギヤ51及び被動ギヤ55により、環状フィン30の移動に連動して上流側フィン44を第1方向(車幅方向)へ傾動させ、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させて上記(5)の効果を得ることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図10〜図17を参照して説明する。
【0083】
第2実施形態は、次の各点において、第1実施形態と異なっている。
(i)図10〜図12に示すように、環状フィン30(フィン部31)は、ケース10に対し、第2方向(上下方向)へは傾動可能であるが、第1方向(車幅方向)へは移動不能に構成されている。そのために、環状フィン30の第1方向の寸法は、ケース10の両第2壁部22間の寸法と同程度(やや小さく)に設定されている。また、第1実施形態でのシャフト35に代え、環状フィン30(フィン部31)の各端連結部32,33にフィン支軸71が一体に設けられている。各フィン支軸71は、第1方向(車幅方向)についての外方(他方のフィン支軸71から遠ざかる方向)へ突出している。環状フィン30は、これらのフィン支軸71において、ケース10の第2壁部22に対し、第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。
【0084】
(ii)環状フィン30(フィン部31)は、第1実施形態での中央連結部34に代え、複数(2つ)の中間連結部72を備えている。これらの中間連結部72は、両フィン部31間の上流部であって、第1方向(車幅方向)についての複数箇所(2箇所)に配置されている。各中間連結部72は、第2方向(上下方向)に延びる板状体からなる。各中間連結部72は、両フィン部31に一体に形成されている。各中間連結部72は、第1方向(車幅方向)に細長いフィン部31が第2方向(上下方向)へ撓むのを規制する。各中間連結部72には、操作ノブ40は設けられていない。
【0085】
(iii )図10及び図14に示すように、操作ノブ40は、環状フィン30(フィン部31)に対し、第1方向(車幅方向)への移動可能に支持されている。
操作ノブ40は、環状フィン30における両フィン部31間に配置されている。第1方向(車幅方向)についての操作ノブ40の両側部からは、同操作ノブ40を基準として第2方向(上下方向)へ支柱73が延びている。各支柱73は、延出端にガイド突部73A
を有している。一方、フィン部31において、内側(対向するフィン部31側)の面の第1方向(車幅方向)についての中間部には、同方向へ延びるガイド溝74が形成されている。そして、上記支柱73毎の両端のガイド突部73Aがガイド溝74に対し、第1方向(車幅方向)への摺動可能に係合されている。
【0086】
(iv)図12及び図14に示すように、操作ノブ40における上流側の端面であって、第1方向(車幅方向)についての2箇所からは下流側へ向けて切込み部75がそれぞれ延びている。各切込み部75内には、第1方向(車幅方向)に延びるギヤ支軸76が設けられている。このギヤ支軸76は、上記フィン支軸71と同軸上に設けられている。駆動ギヤ51の各軸受部53は対応する切込み部75内に入り込み、上記ギヤ支軸76により第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。
【0087】
(v)図16及び図17に示すように、上流側フィン44,45の第1方向(車幅方向)についての可動範囲が第1実施形態よりも広く設定されていて、同上流側フィン44,45が、通風路20を開閉するシャットダンパとしての機能を有している。この機能のために、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55が、第1実施形態よりも多くの歯52,56を有している。上流側フィン44,45を第1方向(車幅方向)へ傾動させる際に、操作ノブ40を同方向へ移動させる操作が行なわれることについては第1実施形態で説明したが、この操作ノブ40を通常時よりも多く移動させる操作が行なわれることで、各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動して通風路20を閉鎖する。
【0088】
第1実施形態でのシャットダンパ60に相当するものは用いられていない。また、上流側フィン44,45を第1方向(車幅方向)へ傾動させるための操作ノブ40の操作により、同上流側フィン44,45がシャットダンパとしても機能することから、ダンパ駆動機構65も用いられていない。
【0089】
各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動する際に、連結ロッド49と上流側フィン44,45との干渉を回避するために、上流側フィン44,45毎の連結軸48は、同上流側フィン44,45から偏倚した箇所に設けられている。
【0090】
また、各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動する際に、被動ギヤ55の設けられた上流側フィン44と、その隣に位置する上流側フィン45との干渉を回避するために、後者の上流側フィン45には干渉回避部77が設けられている。
【0091】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のようにして構成された第2実施形態の空調用レジスタの作用について説明する。
【0092】
図14に示すように、ギヤ支軸76によって操作ノブ40(ケース10)に支持された駆動ギヤ51は、そのギヤ支軸76を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能であるが、その傾動は図13に示す傾動規制部(切欠き部57の壁面57A)によって規制される。この点は、第1実施形態と同様である。
【0093】
一方、一対のフィン支軸71によってケース10に支持された環状フィン30は、両フィン支軸71を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。環状フィン30の第2方向(上下方向)への傾動を、駆動ギヤ51に伝達するものは特に設けられていない。環状フィン30の両フィン部31間に配置され、支柱73を介して両フィン部31に取付けられた操作ノブ40についても、両フィン支軸71を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0094】
そのため、操作ノブ40に対し第2方向(上下方向)の力が加えられると(操作ノブ40が第2方向へ操作されると)、その力が、支柱73を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。操作ノブ40は、図15に示すように、環状フィン30(フィン部31)と一体となって、両フィン支軸71を支点として第2方向(上下方向)へ傾動するが、駆動ギヤ51は同方向へ傾動せず、被動ギヤ55に噛み合った状態を維持する。
【0095】
このとき、駆動ギヤ51の歯52は、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えない。また、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第2方向(上下方向)へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤ51の歯52は、被動ギヤ55の歯56に対し摺動しない。
【0096】
操作ノブ40に対し、第1方向(車幅方向)の力が加えられると、図10及び図16に示すように、その操作ノブ40と一体となった支柱73のガイド突部73Aがガイド溝74内をスライドする。すなわち、操作ノブ40は、力の加えられた方向へ環状フィン30に対し相対移動する。
【0097】
また、駆動ギヤ51における一対の軸受部53が操作ノブ40の切込み部75に係合されていることから、操作ノブ40に対し、上記のように第1方向(車幅方向)の力が加えられると、その力が、切込み部75及び軸受部53を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、駆動ギヤ51が操作ノブ40の第1方向(車幅方向)への操作に連動して、同操作ノブ40の操作された側へ移動する。この移動に伴い、駆動ギヤ51の歯52が、噛み合う対象となる被動ギヤ55の歯56を変えることで、同被動ギヤ55が上流側フィン44と一体となって、支軸46を支点として、第1方向(車幅方向)のうち操作ノブ40の操作された側へ傾動させられる。この支軸46を支点とする上流側フィン44の動きは、連結軸48及び連結ロッド49を介して他の上流側フィン45に伝達される。この伝達により、全ての上流側フィン45が上流側フィン44に同期して、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40の操作された側へ傾動する。
【0098】
そして、上記の第1方向(車幅方向)及び第2方向(上下方向)への傾動により、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きが変えられる。吹出口13からは、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きに応じた方向へ空調用空気Aが吹出される。
【0099】
第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)へ傾動させるための操作が操作ノブ40に対し行なわれたときにも、駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって傾動する特許文献1に比べ、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さいものの、同駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。
【0100】
さらに、操作ノブ40の第1方向への操作により、図17に示すように、各上流側フィン44,45が、支軸46を支点として通風路20での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられると、通風路20が閉鎖され、吹出口13からの空調用空気Aの吹出しが遮断される。
【0101】
上記のように、各上流側フィン44,45を通風方向に対し略直交する位置まで傾動させる場合には、各上流側フィン44,45を上記とは異なる位置まで傾動させる場合、例えば、通風方向に対し平行にする場合や、通風方向に対し傾斜させる場合よりも、操作ノブ40が第1方向(車幅方向)へ多く操作される。これに伴い、駆動ギヤ51も第1方向(車幅方向)へ多く移動させられる。この多くの移動にも拘らず、駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合わせた状態にするために、第1方向(車幅方向)における歯52の数が多くなって、駆動ギヤ51は第1方向(車幅方向)に長くなる。
【0102】
そのため、駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)のサイズを小さくして、駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくする効果が有効に得られる。
すなわち、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第1方向にも第2方向にも動く特許文献1では、上流側フィン85を第1方向へ大きく傾動させるための操作を操作ノブ87に対し行なったときにも、駆動ギヤ89を被動ギヤ91に噛み合わせた状態にするために、駆動ギヤ89について第1方向のサイズが大きくなる。駆動ギヤ89が第2方向に加え第1方向にも大型化し、圧力損失が特に大きくなる。
【0103】
これに対し、第2実施形態では、駆動ギヤ51が第1方向(車幅方向)には大きくなるが、第2方向(上下方向)には小さいため、圧力損失が有効に小さくされる。
従って、第2実施形態によれば、上述した(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
【0104】
(10)駆動ギヤ51を第1方向(車幅方向)に長くし、同駆動ギヤ51を同方向へ多く移動させることにより、複数の上流側フィン44,45を、通風路20での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させて、通風路20を閉鎖するようにしている。
【0105】
そのため、上述した(1)のように、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを大きくすることなく、同駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合った状態に維持することで、駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくする効果を有効に得ることができる。
【0106】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<環状フィン30について>
・環状フィン30における2つのフィン部31は、下流側フィンとして、互いに独立した状態で形成されてもよい。この場合、各フィン部31(下流側フィン)は、フィン支軸により、ケース10の第2壁部22に対し第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されてもよい。
【0107】
<連動機構について>
・連動機構は、環状フィン30の第1方向への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させることで、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させるものであることを条件として、上記実施形態とは異なる構成に変更されてもよい。
【0108】
<シャットダンパ60について>
・第2実施形態においても、第1実施形態と同様の構成のシャットダンパ60が設けられてもよい。
【0109】
<適用箇所について>
・本発明は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に配設される空調用レジスタにも適用可能である。
【0110】
・本発明の空調用レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹出す空調用空気の向きを調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
<その他>
・本発明は、吹出口13が縦長となるように配置される空調用レジスタにも適用可能である。この場合、上下方向が第1方向となり、車幅方向(左右方向)が第2方向となる。環状フィン30における一対のフィン部31は第2方向(車幅方向)に相対向する。また、上流側フィン44,45は、第1方向(上下方向)に配列される。
【0111】
・本発明は、操作ノブの第1方向への操作を、駆動ギヤ及び被動ギヤを介し上流側フィンに伝達して同方向へ上流側フィンを傾動させるものであることを条件に、上記実施形態とは異なる形状、例えば、略正方形の吹出口を有する空調用レジスタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…ケース、13…吹出口、20…通風路、31…フィン部(下流側フィン)、35…シャフト(フィン支軸、ギヤ支軸)、40…操作ノブ、44,45…上流側フィン、51…駆動ギヤ、52…歯、55…被動ギヤ、57…切欠き部、57A…壁面(傾動規制部)、71…フィン支軸、76…ギヤ支軸、A…空調用空気。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きを変更する空調用レジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを変更するための空調用レジスタが組込まれている(例えば、特許文献1参照)。この空調用レジスタは、図18に示すように、ケース80、下流側フィン83、上流側フィン85、操作ノブ87及び伝達機構88を基本的な構成要素として備えている。
【0003】
ケース80は筒状をなし、その内部空間を空調用空気Aの通風路81としている。通風路81の下流端は空調用空気Aの吹出口82となっている。
ここで、通風路81での空調用空気Aの通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方(紙面に直交する方向)を第1方向とし、他方(図18の略上下方向)を第2方向とすると、下流側フィン83は、ケース80内の吹出口82よりも上流側において第1方向に延び、フィン支軸(図示略)により第2方向への傾動可能に支持されている。また、上流側フィン85は、ケース80内の下流側フィン83よりも上流側において第2方向に延び、支軸86により第1方向への傾動可能に支持されている。
【0004】
操作ノブ87は、下流側フィン83及び上流側フィン85の各傾きを変更する際に操作される部材であり、第1方向への操作により同第1方向へ移動し、第2方向への操作により、下流側フィン83とともにフィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する。
【0005】
伝達機構88は、操作ノブ87の第1方向の動きを上流側フィン85に伝達して、同上流側フィン85を同第1方向へ傾動させるための機構である。
この伝達機構88としては、上記特許文献1に記載されているように、駆動ギヤ89及び被動ギヤ91からなるものが代表的である。駆動ギヤ89は第1方向に並設された複数の歯90を有し、操作ノブ87の同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する。被動ギヤ91は上流側フィン85に設けられて、駆動ギヤ89に噛み合わされている。
【0006】
上記空調用レジスタでは、操作ノブ87が第2方向へ操作されると、駆動ギヤ89が被動ギヤ91に噛み合わされた状態に維持されつつ、下流側フィン83が同第2方向へ傾動されられる。このときには、駆動ギヤ89の歯90は、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92を変えない。駆動ギヤ89の歯90は、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92に対し摺動するのみである。従って、下流側フィン83のみが第2方向へ傾動させられる。
【0007】
また、操作ノブ87が第1方向へ操作されると、その操作ノブ87の動きが駆動ギヤ89及び被動ギヤ91を通じて上流側フィン85に伝達される。この伝達は、駆動ギヤ89の歯90が、噛み合い対象となる被動ギヤ91の歯92を変えることで行なわれる。そして、上記伝達により、操作ノブ87に連動して上流側フィン85が支軸86を支点として第1方向へ傾動させられる。
【0008】
これらの傾動により、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きが変更される。吹出口82からは、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きに応じた方向へ空調用空気Aが吹出される。表現を変えると、上流側フィン85及び下流側フィン83の各傾きが変えられることで、吹出口82からの空調用空気Aの吹出し方向が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−148455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1に記載された従来の空調用レジスタでは、下流側フィン83を第2方向へ傾動させるための操作を操作ノブ87に対し行なったときにも、駆動ギヤ89を被動ギヤ91に噛み合わせた状態にする必要がある。そのためには、駆動ギヤ89の第2方向のサイズを大きくせざるを得ない。ここで、駆動ギヤ89は、上流側フィン85、下流側フィン83等と同様に空調用空気Aの流れを妨げ、圧力損失を招くところ、上記の大型化に伴い圧力損失が増大する。その結果、吹出口82から吹出される空調用空気Aの強さが低下したり、空調用空気の到達距離が短くなったりする。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくすることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内部空間を空調用空気の通風路とするとともに、同通風路の下流端に前記空調用空気の吹出口を有し、前記通風路での前記空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし他方を第2方向とする筒状のケースと、前記ケース内の前記吹出口よりも上流側において前記第1方向に延び、フィン支軸により、前記第2方向への傾動可能に支持された下流側フィンと、前記ケース内の前記下流側フィンよりも上流側において前記第2方向に延び、前記第1方向への傾動可能に支持された上流側フィンと、前記第1方向への操作により同第1方向へ移動し、前記第2方向への操作により、前記下流側フィンとともに前記フィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する操作ノブと、前記第1方向に並設された複数の歯を有し、前記操作ノブの同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤと、前記上流側フィンに設けられ、かつ前記駆動ギヤに噛み合わされる被動ギヤとを備える空調用レジスタであって、前記下流側フィンにおいて前記フィン支軸と同軸上に設けられて前記駆動ギヤを支持するギヤ支軸と、前記ギヤ支軸を支点とする前記駆動ギヤの前記第2方向への傾動を規制する傾動規制部とをさらに備えることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、操作ノブの第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤは、下流側フィンにおいてフィン支軸と同軸上に設けられたギヤ支軸によって支持される。この駆動ギヤは、ギヤ支軸を支点として第2方向へ傾動可能であるが、その傾動は傾動規制部によって規制される。
【0014】
このため、操作ノブは、第2方向へ操作されると、下流側フィンとともにフィン支軸を支点として同第2方向へ傾動するが、駆動ギヤは同第2方向へ傾動せず、被動ギヤに噛み合った状態を維持する。このとき、駆動ギヤの歯は、噛み合い対象となる被動ギヤの歯を変えない。また、駆動ギヤが操作ノブと一体となって第2方向へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤの歯は、被動ギヤの歯に対し摺動しない。
【0015】
また、操作ノブは、第1方向へ操作されると、同第1方向へ移動する。この操作ノブの第1方向への操作に連動して駆動ギヤが同第1方向へ移動する。この移動に伴い、駆動ギヤの歯が、噛み合い対象となる被動ギヤの歯を変えることで、同被動ギヤが上流側フィンと一体となって第1方向へ傾動させられる。
【0016】
これらの第1方向及び第2方向への傾動により、上流側フィン及び下流側フィンの各傾きが変更される。吹出口からは、上流側フィン及び下流側フィンの各傾きに応じた方向へ空調用空気が吹出される。
【0017】
上記の構成では、下流側フィンを第2方向へ傾動させるための操作が操作ノブに対し行なわれたときにも、駆動ギヤが常に被動ギヤに噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤが一体となって傾動する特許文献1とは異なり、第2方向についての駆動ギヤのサイズを大きくしなくても(同方向のサイズが小さくても)、駆動ギヤが常に被動ギヤに噛み合う。その結果、駆動ギヤが空調用空気Aの流れを妨げる現象が抑制され、駆動ギヤに起因する圧力損失が小さくなる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被動ギヤは、前記上流側フィンの下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設けられ、前記上流側フィンには、前記縁部から前記被動ギヤに向けて延びる切欠き部が設けられ、前記駆動ギヤは前記切欠き部に入り込んだ状態で前記被動ギヤに噛み合わされており、前記切欠き部において前記第2方向に相対向する壁面により前記傾動規制部が構成されていることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、駆動ギヤが被動ギヤに噛み合わされた状態では、その駆動ギヤは上流側フィンの切欠き部に入り込んでいる。切欠き部において第2方向に相対向する壁面は、駆動ギヤに対し、同第2方向についての両側に位置し、傾動規制部として機能する。そのため、駆動ギヤが第2方向へ傾動しようとした場合、同駆動ギヤが切欠き部の壁面に当接し、それ以上傾動することを規制される。このようにして、簡単な構成でありながら、傾動規制部による駆動ギヤの傾動規制が行なわれる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記上流側フィンは、前記第1方向の複数箇所に互いに平行に離間した状態で配設されており、前記複数箇所の上流側フィンは、前記通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられることにより、同通風路を閉鎖するものであることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、操作ノブが第1方向へ操作されると、その操作ノブの動きが駆動ギヤ及び被動ギヤを通じて上流側フィンに伝達される。この伝達により、操作ノブの操作に連動して、上流側フィンが第1方向へ傾動させられる。
【0022】
そして、上記操作ノブの第1方向への操作により、各上流側フィンが、通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられると、通風路が閉鎖され、吹出口からの空調用空気の吹出しが遮断される。
【0023】
上記のように、各上流側フィンを通風方向に対し略直交する位置まで傾動させる場合には、各上流側フィンを上記とは異なる位置まで傾動させる場合、例えば、通風方向に対し平行にする場合や、通風方向に対し傾斜させる場合よりも、操作ノブが第1方向へ多く操作される。これに伴い、駆動ギヤも第1方向へ多く移動される。この多くの移動にも拘らず、駆動ギヤを被動ギヤに噛み合わせた状態にするために、同駆動ギヤは第1方向に長くなる。
【0024】
そのため、駆動ギヤの第2方向のサイズを小さくして、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくする効果が有効に得られる。
すなわち、駆動ギヤが操作ノブと一体となって第1方向にも第2方向にも動くものでは、下流側フィンを第2方向へ傾動させるための操作を操作ノブに対し行なったときにも、駆動ギヤを被動ギヤに噛み合わせた状態にするために、駆動ギヤの第2方向のサイズが大きくなる。駆動ギヤが第1方向にも第2方向にも大型化し、圧力損失が特に大きくなる。
【0025】
これに対し、請求項3に記載の発明では、駆動ギヤが第1方向には大きくなるが、第2方向には小さくなる。そのため、圧力損失が有効に小さくされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、下流側フィンにおいてフィン支軸と同軸上にギヤ支軸を設けて駆動ギヤを支持するとともに、ギヤ支軸を支点とする駆動ギヤの第2方向への傾動を傾動規制部によって規制するようにしたため、第2方向についての駆動ギヤのサイズを小さくし、駆動ギヤに起因する圧力損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【図2】第1実施形態における空調用レジスタの主要な構成部品を示す分解斜視図。
【図3】第1実施形態における空調用レジスタを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図4】図2の要部を拡大して示す部分分解斜視図。
【図5】図3(B)のA−A線断面図。
【図6】図3(B)のB−B線断面図。
【図7】図3(B)のC−C線断面図。
【図8】図7の状態から操作ノブが第2方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す側断面図。
【図9】図5の状態から操作ノブが第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す平断面図。
【図10】本発明を具体化した第2実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【図11】第2実施形態における空調用レジスタを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図12】図11(B)のD−D線断面図。
【図13】図11(B)のE−E線断面図。
【図14】図11(B)のF−F線断面図。
【図15】図13の状態から操作ノブが第2方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す側断面図。
【図16】図12の状態から操作ノブが第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す部分平断面図。
【図17】図16の状態から操作ノブがさらに第1方向へ操作されたときの空調用レジスタを示す部分平断面図。
【図18】従来の空調用レジスタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両用の空調用レジスタに具体化した第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
【0029】
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として左右方向を規定する。
【0030】
車室内において、車両の前席(運転席及び助手席)の前方にはインストルメントパネルが設けられ、その車幅方向についての中央部、両側部等には本実施形態の空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタの機能の1つに、空調装置から送られてきて車室内に吹出される空調用空気の向きを調整することがある。
【0031】
図1及び図5に示すように、空調用レジスタは、ケース10、環状フィン30、操作ノブ40、上流側フィン群、伝達機構50、シャットダンパ60及びダンパ駆動機構65を備えている。次に、これら各部の構成について説明する。
【0032】
<ケース10>
ケース10は、空調装置の通風ダクト(図示略)と、インストルメントパネルに設けられた開口(図示略)とを繋ぐためのものであり、図1及び図2に示すように、リテーナ11及びベゼル12を備えている。リテーナ11及びベゼル12は、いずれも両端が開放された筒状体からなる。ベゼル12は、リテーナ11よりも車両後方側(車室側)に配置され、連結部(図示略)によりリテーナ11に連結されている。ケース10(リテーナ11及びベゼル12)の内部空間は、空調用空気Aの流路(以下「通風路20」という)とされている(図5参照)。
【0033】
図1及び図3(A),(B)に示すように、ベゼル12は、自身の下流端に空調用空気Aの吹出口13を有している。吹出口13は、上下方向に対するよりも車幅方向に細長い横長の矩形状をなしている。ベゼル12の下流端において、上記吹出口13の周りは四角環状をなす枠部14となっている。枠部14は、空調用レジスタの意匠面を構成するものであり、下流側へ膨らむように湾曲している。
【0034】
ここで、上記通風路20での空調用空気Aの通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし、他方を第2方向とする。本実施形態では、車幅方向を第1方向とし、上下方向を第2方向としている。なお、本明細書では、「通風方向」は、環状フィン30及び上流側フィン44,45によって向きを変えられる前の空調用空気Aの流れ方向をいうものとする。
【0035】
通風路20は、ケース10の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、上記第2方向(上下方向)に相対向する一対の第1壁部21と、上記第1方向(車幅方向)に相対向する一対の第2壁部22とからなる。
【0036】
図2及び図3(A)に示すように、ケース10の両第1壁部21において、吹出口13からそれぞれ上流側へ一定距離離れた箇所には、軸受部23が設けられている。ここでは、上記軸受部23は、リテーナ11及びベゼル12の接合部分であって、第1方向(車幅方向)へ互いに離間した複数箇所に設けられている。
【0037】
<環状フィン30>
図2及び図3(B)に示すように環状フィン30は、ベゼル12内であって、吹出口13の上流側近傍に配設されている。環状フィン30は、第2方向(上下方向)に互いに平行に離間した状態で第1方向(車幅方向)に延びる2枚の板状のフィン部31を、上流側フィンとして有している。両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての一端部(左端部)同士は、厚みの均一な板状の端連結部32によって連結されている。同様に、両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての他端部(右端部)同士は、厚みの均一な板状の端連結部33によって連結されている。両端連結部32,33は第1方向(車幅方向)については、互いに反対方向へ膨らむように湾曲している。各端連結部32,33は、通風路20での空調用空気Aの通風方向に平行に形成されている、
上述した一対のフィン部31と、一対の端連結部32,33とによって、環状フィン30は第2方向(上下方向)よりも第1方向(車幅方向)に細長い環状をなしている。環状フィン30の第1方向(車幅方向)の寸法は、ケース10の両第2壁部22間の寸法よりも小さく設定されている。これは、環状フィン30を第1方向(車幅方向)への移動可能に構成するために必要な条件である。
【0038】
さらに、両フィン部31の第1方向(車幅方向)についての中央部分は、第2方向(上下方向)へ延びる板状の中央連結部34によって連結されている。この中央連結部34は、両フィン部31が第2方向(上下方向)へ撓むのを規制するほか、後述する操作ノブ40の設けられる箇所として機能する。
【0039】
図2及び図5に示すように、ケース10(ベゼル12)の下流側の端部であって両第2壁部22には、第1方向(車幅方向)へ延びるシャフト35が架け渡されている。シャフト35の両端部は、両第2壁部22に対し、少なくとも同方向への移動不能に取付けられている。すなわち、シャフト35は、両第2壁部22に対し回転可能に支持されてもよいし、回転不能に係止されてもよい。
【0040】
環状フィン30は、上記シャフト35が挿通された一対の端連結部32,33と中央連結部34とにおいて、ケース10に対し、第1方向(車幅方向)への移動可能かつ第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。より詳しくは、両端連結部32,33と中央連結部34とにはそれぞれ孔36があけられており、これらの孔36にシャフト35が挿通されている。
【0041】
上記シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)への傾動可能に支持するためのフィン支軸として機能する。また、シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸として機能する。
【0042】
<操作ノブ40>
操作ノブ40は、上記中央連結部34の下流部であって、第2方向(上下方向)についての中央部に一体に形成されている。操作ノブ40は、第1方向(車幅方向)へ延びる板状をなしている。操作ノブ40は、環状フィン30の両フィン部31に対し平行に配置されている。操作ノブ40は、環状フィン30の一部(中央連結部34)に結合されていることから、その環状フィン30と一体となって動く。すなわち、操作ノブ40は、シャフト35に沿って第1方向(車幅方向)へ移動(スライド)可能であり、シャフト35を支点として第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0043】
<上流側フィン群>
上流側フィン群は、ケース10内の環状フィン30(フィン部31)の上流近傍に配置された複数枚の上流側フィンからなる。各上流側フィンは、第2方向(上下方向)に延びる板状体からなり、互いに第1方向(車幅方向)へ平行に離間した状態で配設されている。これらの上流側フィンは、第1方向(車幅方向)についての中央部に位置する1枚の上流側フィン44と、それ以外の複数枚(4枚)の上流側フィン45とからなる。各上流側フィン44,45は、第2方向(上下方向)についての両端面から同方向外方へ延びる支軸46を備えている。そして、各上流側フィン44,45は、両支軸46においてケース10(リテーナ11及びベゼル12間)の軸受部23に回動可能に支持されている。そのため、各上流側フィン44,45は、支軸46を支点として第1方向(車幅方向)へ傾動可能である。
【0044】
各上流側フィン44,45の上流部には切欠き部47が形成されている。上流側フィン44,45毎の切欠き部47には、第2方向(上下方向)に延びる連結軸48が設けられている。各連結軸48は、上記支軸46から上流側へ偏倚した箇所に位置している。そして、上流側フィン44,45毎の連結軸48は、第1方向(車幅方向)に延びる長尺状の連結ロッド49に連結されている。これらの上流側フィン44,45、支軸46、連結軸48、連結ロッド49等により、全ての上流側フィン45を上流側フィン44に同期した状態で傾動させる平行リンク機構が構成されている。
【0045】
<伝達機構50>
図4及び図5に示すように、伝達機構50は、操作ノブ40の第1方向(車幅方向)の動きを上流側フィン44に伝達して、同上流側フィン44を同方向へ傾動させるが、操作ノブ40の第2方向(上下方向)の動きを同上流側フィン44に伝達しないようにするための機構であり、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備えている。また、伝達機構50は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させることで、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させる連動機構も兼ねている。
【0046】
駆動ギヤ51は、第1方向(車幅方向)に延びる板状体からなる。この駆動ギヤ51の上流側の縁部には、第1方向(車幅方向)に複数の歯52が並設されている。駆動ギヤ51からは、下流側へ向けて軸受部53が突設されている。本実施形態では、軸受部53は、駆動ギヤ51において第1方向(車幅方向)に互いに離間した2箇所に設けられている。さらに、駆動ギヤ51の下流側の縁部であって、第1方向(車幅方向)についての中央部には、上流側へ向けて延びる係合凹部54が形成されている。
【0047】
そして、駆動ギヤ51は、両軸受部53が、第1方向(車幅方向)について上記中央連結部34の両側に位置するように配置されている。中央連結部34の上流側の一部が、上記係合凹部54に下流側から係合されるとともに、両軸受部53に上記シャフト35が挿通されている。こうした構成により、駆動ギヤ51は環状フィン30(操作ノブ40)に対し傾動可能である。すなわち、シャフト35は、環状フィン30(フィン部31)において上記フィン支軸と同軸上に設けられて駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸として機能する。この点において、第1実施形態は、駆動ギヤ89が操作ノブ87に一体に形成された特許文献1と大きく異なっている。また、上記の構成により、環状フィン30の第1方向への動きが中央連結部34及び係合凹部54を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、駆動ギヤ51は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に伴い同方向へ移動する。
【0048】
被動ギヤ55は、平面扇形状をなす板状体からなり、複数の上流側フィン44,45のうちの1つ、ここでは第1方向(車幅方向)の中央に位置する上流側フィン44に設けられている。被動ギヤ55の外周面には、複数の歯56が円弧状に並ぶように連続して形成されている。被動ギヤ55は、第2方向(上下方向)については、上流側フィン44の中央部に位置している。また、被動ギヤ55は、通風路20での空調用空気Aの通風方向については、上流側フィン44の下流側の縁部から僅かに上流側へ離れた箇所に位置している。上流側フィン44における下流側の縁部と被動ギヤ55の歯56との間は、駆動ギヤ51の厚みよりも第2方向(上下方向)に間隔のやや広い切欠き部57となっている。
【0049】
そして、駆動ギヤ51がこの切欠き部57に入り込み(図6参照)、上記被動ギヤ55に噛み合わされている。ここで、上記切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面は、駆動ギヤ51の同方向についての両面に当接することで、同方向についての駆動ギヤ51の傾動を規制する傾動規制部を構成している。
【0050】
<シャットダンパ60>
図5及び図7に示すように、シャットダンパ60は、通風路20を開閉するためのものであり、ケース10内の上流側フィン群よりも上流側(リテーナ11内)に配置されている。シャットダンパ60は、通風路20に直交する面に対応して、第2方向(上下方向)よりも第1方向(車幅方向)に細長い長方形板状をなしている。
【0051】
シャットダンパ60は、第1方向(車幅方向)についての両端面から突出する支軸61によりケース10(リテーナ11)の第2壁部22に支持されている。
<ダンパ駆動機構65>
図1及び図5に示すように、ダンパ駆動機構65は、シャットダンパ60を開閉駆動するための機構であり、操作ダイヤル66及び回動伝達部67を備えている。操作ダイヤル66は円板状をなし、ケース10に対し、第2方向(上下方向)への回動可能に支持されている。操作ダイヤル66の一部は、ベゼル12の枠部14に設けられた窓部14Aを通じて下流側へ露出している。回動伝達部67は、操作ダイヤル66の回動をシャットダンパ60に伝達するためのものであり、ケース10の外部であって、操作ダイヤル66とシャットダンパ60の支軸61との間に設けられている。回動伝達部67は、リンク機構、ギヤ機構等によって構成されている。
【0052】
上記のようにして第1実施形態の空調用レジスタが構成されている。次に、この空調用レジスタの作用について説明する。
図5〜図7に示すように、操作ダイヤル66の回動操作を通じ、両支軸61を支点としてシャットダンパ60が回動させられて、同シャットダンパ60が通風方向(第1壁部21)に対し平行にさせられると、通風路20が全開状態となり、空調用空気Aが通風路20を流れる。空調用空気Aは、上流側フィン44,45及び環状フィン30に沿って流れた後、吹出口13から吹出される。そのため、上流側フィン44,45が第1方向(車幅方向)へ傾動させられ、環状フィン30が第2方向(上下方向)へ傾動させられることで、空調用空気Aは、それら上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きに応じた方向へ流れて、吹出口13から吹出される。表現を変えると、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きが変えられることで、吹出口13からの空調用空気Aの吹出し方向が変更される。
【0053】
ここで、ギヤ支軸(シャフト35)によってケース10に支持された駆動ギヤ51は、そのギヤ支軸(シャフト35)を支点として、環状フィン30(操作ノブ40)に対し、第2方向(上下方向)へ傾動可能であるが、その傾動は傾動規制部によって規制される。すなわち、駆動ギヤ51が被動ギヤ55に噛み合わされた状態では、その駆動ギヤ51は上流側フィン44の切欠き部57に入り込んでいる。切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面57Aは、駆動ギヤ51に対し、同方向についての両側に位置し、傾動規制部として機能する。そのため、駆動ギヤ51が第2方向(上下方向)へ傾動しようとした場合、同駆動ギヤ51が切欠き部57の壁面57Aに当接し、それ以上傾動することを規制される。
【0054】
一方、フィン支軸(シャフト35)によってケース10に支持された環状フィン30は、そのフィン支軸(シャフト35)を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。環状フィン30の上記傾動を、駆動ギヤ51に伝達するものは特に設けられていない。環状フィン30の中央連結部34に一体に形成された操作ノブ40についても、フィン支軸(シャフト35)を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0055】
そのため、図8に示すように、操作ノブ40に対し第2方向(上下方向:図8では下方)の力が加えられると(操作ノブ40が第2方向へ操作されると)、その力は、操作ノブ40と一体に設けられた中央連結部34を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。操作ノブ40は、環状フィン30(フィン部31)と一体となって、シャフト35(フィン支軸)を支点として第2方向(上下方向)へ傾動するが、駆動ギヤ51は同方向へ傾動せず、被動ギヤ55に噛み合った状態を維持する。
【0056】
このとき、駆動ギヤ51の歯52は、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えない。また、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第2方向(上下方向)へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤ51の歯52は、被動ギヤ55の歯56に対し摺動しない。さらに、このときには、中央連結部34は、駆動ギヤ51の係合凹部54内で第2方向(上下方向)へ傾動する。
【0057】
図9に示すように、操作ノブ40に対し、第1方向(車幅方向:図9では左方)の力が加えられると(操作ノブ40が第1方向へ操作されると)、その力は、操作ノブ40と一体に設けられた中央連結部34を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。このとき、ケース10の第2壁部22間に架け渡され、かつ第1方向(車幅方向)に延びて環状フィン30の両端連結部32,33に挿通されたシャフト35は、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動をガイドする機能を発揮する。そのため、上記力の伝達により、操作ノブ40は環状フィン30(フィン部31)と一体となって、シャフト35上をスライドさせられることにより、第1方向(車幅方向)へ移動させられる。この移動に伴い、中央連結部34及び端連結部32,33が、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40が操作された側へ位置を変える。
【0058】
また、中央連結部34が係合凹部54に係合されていることから、操作ノブ40に対し、上記のように第1方向(車幅方向)の力が加えられる(操作ノブ40が第1方向へ操作される)と、その力が、中央連結部34及び係合凹部54を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、操作ノブ40の第1方向(車幅方向)への操作に連動して(環状フィン30の第1方向への移動に連動して)、駆動ギヤ51が同操作ノブ40の操作された側へ移動する。
【0059】
この移動に伴い、駆動ギヤ51の歯52が、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えることで、同被動ギヤ55が上流側フィン44と一体となって、支軸46を支点として、第1方向(車幅方向)のうち操作ノブ40の操作された側へ傾動させられる。この支軸46を支点とする上流側フィン44の動きは、連結軸48及び連結ロッド49を介して他の上流側フィン45に伝達される。この伝達により、全ての上流側フィン45が上流側フィン44に同期して、操作ノブ40の操作された側へ傾動する。
【0060】
このように、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40の操作された側へ環状フィン30が移動させられるとともに、その移動に連動して上流側フィン44,45が同第1方向(車幅方向)へ傾動させられる。環状フィン30の上記移動により、中央連結部34及び端連結部32,33が操作ノブ40の操作された側へ変位させられ、同端連結部32,33が、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避する。そのため、空調用空気Aの流れが端連結部32,33によって妨げられる現象が起こりにくい。
【0061】
第1実施形態では、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)へ傾動させるための操作が操作ノブ40に対し行なわれたときにも、駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤ89が一体となって傾動する特許文献1に比べ、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さいものの、同駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。
【0062】
また、上記端連結部32,33及び駆動ギヤ51は、上流側フィン44,45が通風方向に対し平行にされたときの吹出口13の実開口面積を少なからず小さくする。実開口面積は、通風路20の吹出口13において通風方向に直交する面を投影面とした場合、その投影面において空調用レジスタの各部品や各部が投影されていない箇所の面積である。
【0063】
この点、端連結部32,33が厚みの均一な板状をなし、しかも空調用空気Aの通風方向に平行に形成されている第1実施形態では、投影面において端連結部32,33の投影される箇所の面積が小さい。また、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さい第1実施形態では、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって傾動する特許文献1よりも、投影面において駆動ギヤ51の投影される箇所の面積が小さい。これらのことから、実開口面積が大きくなって、通風抵抗が減少し、圧力損失が小さくなる。
【0064】
なお、操作ダイヤル66の回動操作を通じ、支軸61を支点としてシャットダンパ60が回動させられ、同シャットダンパ60が通風方向(第1壁部21)に対し傾斜状態にされて第1壁部21に接触させられると、通風路20が閉塞される。通風路20での空調用空気Aの流通が遮断され、吹出口13からの空調用空気Aの吹出しが停止される。
【0065】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)環状フィン30(フィン部31)においてフィン支軸と同軸上に駆動ギヤ51を支持するギヤ支軸を設けるとともに、ギヤ支軸を支点とする駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)への傾動を規制する傾動規制部を設けている。
【0066】
そのため、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを大きくしなくても、同駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合った状態に維持することができる。同第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを小さくし、同駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくすることができる。
【0067】
また、駆動ギヤ51に起因して空調用空気Aが第2方向(上下方向)へ分割されるのを抑制することができる。
(2)被動ギヤ55を、上流側フィン44の下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設ける。上流側フィン44において縁部と被動ギヤ55との間に切欠き部57を設ける。駆動ギヤ51を、切欠き部57に入り込ませた状態で被動ギヤ55に噛み合わせる。そして、切欠き部57において第2方向(上下方向)に相対向する壁面57Aにより傾動規制部を構成している。
【0068】
そのため、上記のような簡単な構成でありながら、傾動規制部による駆動ギヤ51の傾動規制を行なうことができる。
(3)操作ノブ40を中央連結部34において環状フィン30に一体に形成している。こうした構成は、環状フィン30を操作ノブ40と一体で、ケース10に対し第1方向(車幅方向)へ移動させることによりはじめて可能となる。環状フィンがケースに対し第1方向(車幅方向)へ移動不能であり、操作ノブのみが同方向へ移動するものでは、操作ノブを環状フィンとは別部材によって構成せざるを得ない。
【0069】
そのため、操作ノブ40を第1方向(車幅方向)へ操作することで、環状フィン30を同方向へ移動させることができる。
また、操作ノブ40を環状フィン30とは別部材によって構成するものに比べ、部品点数を削減することができる。
【0070】
(4)環状フィン30(フィン部31)を第2方向(車幅方向)への傾動可能に支持するフィン支軸と、駆動ギヤ51を環状フィン30(フィン部31)に支持するギヤ支軸とを、共通のシャフト35により構成している。
【0071】
そのため、フィン支軸とギヤ支軸とが別部材によって構成された場合に比べ、部品点数を削減することができる。
(5)仮に、環状フィンが第1方向(車幅方向)へ移動しないものであるとすると、上流側フィンが通風方向に対し傾斜させられると、環状フィンの端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置し、同空調用空気の流れを妨げるおそれがある。
【0072】
この点、第1実施形態では、環状フィン30を、ケース10に対し第1方向(車幅方向)への移動可能に支持する。環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させる連動機構(伝達機構50)を設けている。
【0073】
そのため、連動機構(伝達機構50)により、環状フィン30の第1方向(車幅方向)への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させて、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させることができる。その結果、環状フィン30の端連結部32,33が空調用空気Aの流れを妨げるのを抑制することができる。
【0074】
(6)上記(5)に関連するが、連動機構(伝達機構50)により、上流側フィン44を環状フィン30の移動に連動して傾動させる。上記環状フィン30の移動により、端連結部32,33や中央連結部34の第1方向(車幅方向)についての位置を変化させている。
【0075】
そのため、空調用レジスタの下流側からは、ケース10内であって環状フィン30よりも上流側に位置する上流側フィン44,45が見づらい。しかし、端連結部32,33や中央連結部34を見ることで、上流側フィン44,45の傾き等を見なくても、第1方向(車幅方向)についての空調用空気Aの吹出し方向を簡単に把握することができる。
【0076】
(7)上記(5)に記載した現象、すなわち、環状フィンの端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置し、同空調用空気の流れを妨げる現象を解消する手段として、環状フィンにおける2つの端連結部の間隔が下流側ほど広くなるように、同端連結部を通風方向に対し傾斜させることも考えられる。このようにすると、端連結部が、上流側フィンに沿って流れる空調用空気の流路上に位置しなくなり、空調用空気の流れが端連結部によって妨げられる現象が起こりにくくなる。
【0077】
しかし、この場合には、上流側フィンが通風方向に対し平行にされたとき、吹出口の実開口面積が小さくなる。そして、実開口面積が小さくなるに従い通風抵抗が増し、圧力損失が増大する。
【0078】
この点、第1実施形態では、端連結部32,33を、通風路20での空調用空気Aの通風方向に平行に形成している。
そのため、端連結部が通風方向に対し傾斜させられた場合よりも、投影面において端連結部32,33の投影される箇所の面積を小さくすることができる。これに伴い、実開口面積を大きくして、通風抵抗を減少させ、圧力損失を小さくすることができる。
【0079】
(8)ケース10内の第2壁部22間には、第1方向(車幅方向)に延びて環状フィン30の両方の端連結部32,33に挿通されたシャフト35を架け渡すことで、環状フィン30をシャフト35によりケース10に対し第1方向への移動可能に支持している。
【0080】
そのため、シャフト35をガイドとして機能させることができる。シャフト35上をスライドさせることにより、環状フィン30を第1方向(車幅方向)へ移動させることができる。
【0081】
(9)連動機構として、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55を備えるものを用いている。
そのため、これらの駆動ギヤ51及び被動ギヤ55により、環状フィン30の移動に連動して上流側フィン44を第1方向(車幅方向)へ傾動させ、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させて上記(5)の効果を得ることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図10〜図17を参照して説明する。
【0083】
第2実施形態は、次の各点において、第1実施形態と異なっている。
(i)図10〜図12に示すように、環状フィン30(フィン部31)は、ケース10に対し、第2方向(上下方向)へは傾動可能であるが、第1方向(車幅方向)へは移動不能に構成されている。そのために、環状フィン30の第1方向の寸法は、ケース10の両第2壁部22間の寸法と同程度(やや小さく)に設定されている。また、第1実施形態でのシャフト35に代え、環状フィン30(フィン部31)の各端連結部32,33にフィン支軸71が一体に設けられている。各フィン支軸71は、第1方向(車幅方向)についての外方(他方のフィン支軸71から遠ざかる方向)へ突出している。環状フィン30は、これらのフィン支軸71において、ケース10の第2壁部22に対し、第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。
【0084】
(ii)環状フィン30(フィン部31)は、第1実施形態での中央連結部34に代え、複数(2つ)の中間連結部72を備えている。これらの中間連結部72は、両フィン部31間の上流部であって、第1方向(車幅方向)についての複数箇所(2箇所)に配置されている。各中間連結部72は、第2方向(上下方向)に延びる板状体からなる。各中間連結部72は、両フィン部31に一体に形成されている。各中間連結部72は、第1方向(車幅方向)に細長いフィン部31が第2方向(上下方向)へ撓むのを規制する。各中間連結部72には、操作ノブ40は設けられていない。
【0085】
(iii )図10及び図14に示すように、操作ノブ40は、環状フィン30(フィン部31)に対し、第1方向(車幅方向)への移動可能に支持されている。
操作ノブ40は、環状フィン30における両フィン部31間に配置されている。第1方向(車幅方向)についての操作ノブ40の両側部からは、同操作ノブ40を基準として第2方向(上下方向)へ支柱73が延びている。各支柱73は、延出端にガイド突部73A
を有している。一方、フィン部31において、内側(対向するフィン部31側)の面の第1方向(車幅方向)についての中間部には、同方向へ延びるガイド溝74が形成されている。そして、上記支柱73毎の両端のガイド突部73Aがガイド溝74に対し、第1方向(車幅方向)への摺動可能に係合されている。
【0086】
(iv)図12及び図14に示すように、操作ノブ40における上流側の端面であって、第1方向(車幅方向)についての2箇所からは下流側へ向けて切込み部75がそれぞれ延びている。各切込み部75内には、第1方向(車幅方向)に延びるギヤ支軸76が設けられている。このギヤ支軸76は、上記フィン支軸71と同軸上に設けられている。駆動ギヤ51の各軸受部53は対応する切込み部75内に入り込み、上記ギヤ支軸76により第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されている。
【0087】
(v)図16及び図17に示すように、上流側フィン44,45の第1方向(車幅方向)についての可動範囲が第1実施形態よりも広く設定されていて、同上流側フィン44,45が、通風路20を開閉するシャットダンパとしての機能を有している。この機能のために、駆動ギヤ51及び被動ギヤ55が、第1実施形態よりも多くの歯52,56を有している。上流側フィン44,45を第1方向(車幅方向)へ傾動させる際に、操作ノブ40を同方向へ移動させる操作が行なわれることについては第1実施形態で説明したが、この操作ノブ40を通常時よりも多く移動させる操作が行なわれることで、各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動して通風路20を閉鎖する。
【0088】
第1実施形態でのシャットダンパ60に相当するものは用いられていない。また、上流側フィン44,45を第1方向(車幅方向)へ傾動させるための操作ノブ40の操作により、同上流側フィン44,45がシャットダンパとしても機能することから、ダンパ駆動機構65も用いられていない。
【0089】
各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動する際に、連結ロッド49と上流側フィン44,45との干渉を回避するために、上流側フィン44,45毎の連結軸48は、同上流側フィン44,45から偏倚した箇所に設けられている。
【0090】
また、各上流側フィン44,45が通風方向に略直交する位置(図17参照)まで傾動する際に、被動ギヤ55の設けられた上流側フィン44と、その隣に位置する上流側フィン45との干渉を回避するために、後者の上流側フィン45には干渉回避部77が設けられている。
【0091】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のようにして構成された第2実施形態の空調用レジスタの作用について説明する。
【0092】
図14に示すように、ギヤ支軸76によって操作ノブ40(ケース10)に支持された駆動ギヤ51は、そのギヤ支軸76を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能であるが、その傾動は図13に示す傾動規制部(切欠き部57の壁面57A)によって規制される。この点は、第1実施形態と同様である。
【0093】
一方、一対のフィン支軸71によってケース10に支持された環状フィン30は、両フィン支軸71を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。環状フィン30の第2方向(上下方向)への傾動を、駆動ギヤ51に伝達するものは特に設けられていない。環状フィン30の両フィン部31間に配置され、支柱73を介して両フィン部31に取付けられた操作ノブ40についても、両フィン支軸71を支点として、第2方向(上下方向)へ傾動可能である。
【0094】
そのため、操作ノブ40に対し第2方向(上下方向)の力が加えられると(操作ノブ40が第2方向へ操作されると)、その力が、支柱73を介して環状フィン30(フィン部31)に伝わる。操作ノブ40は、図15に示すように、環状フィン30(フィン部31)と一体となって、両フィン支軸71を支点として第2方向(上下方向)へ傾動するが、駆動ギヤ51は同方向へ傾動せず、被動ギヤ55に噛み合った状態を維持する。
【0095】
このとき、駆動ギヤ51の歯52は、噛み合い対象となる被動ギヤ55の歯56を変えない。また、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第2方向(上下方向)へ傾動する特許文献1とは異なり、同駆動ギヤ51の歯52は、被動ギヤ55の歯56に対し摺動しない。
【0096】
操作ノブ40に対し、第1方向(車幅方向)の力が加えられると、図10及び図16に示すように、その操作ノブ40と一体となった支柱73のガイド突部73Aがガイド溝74内をスライドする。すなわち、操作ノブ40は、力の加えられた方向へ環状フィン30に対し相対移動する。
【0097】
また、駆動ギヤ51における一対の軸受部53が操作ノブ40の切込み部75に係合されていることから、操作ノブ40に対し、上記のように第1方向(車幅方向)の力が加えられると、その力が、切込み部75及び軸受部53を介して駆動ギヤ51に伝達される。この伝達により、駆動ギヤ51が操作ノブ40の第1方向(車幅方向)への操作に連動して、同操作ノブ40の操作された側へ移動する。この移動に伴い、駆動ギヤ51の歯52が、噛み合う対象となる被動ギヤ55の歯56を変えることで、同被動ギヤ55が上流側フィン44と一体となって、支軸46を支点として、第1方向(車幅方向)のうち操作ノブ40の操作された側へ傾動させられる。この支軸46を支点とする上流側フィン44の動きは、連結軸48及び連結ロッド49を介して他の上流側フィン45に伝達される。この伝達により、全ての上流側フィン45が上流側フィン44に同期して、第1方向(車幅方向)のうち、操作ノブ40の操作された側へ傾動する。
【0098】
そして、上記の第1方向(車幅方向)及び第2方向(上下方向)への傾動により、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きが変えられる。吹出口13からは、上流側フィン44,45及び環状フィン30(フィン部31)の各傾きに応じた方向へ空調用空気Aが吹出される。
【0099】
第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、環状フィン30(フィン部31)を第2方向(上下方向)へ傾動させるための操作が操作ノブ40に対し行なわれたときにも、駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。そのため、同操作が行なわれたときに駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって傾動する特許文献1に比べ、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズが小さいものの、同駆動ギヤ51が常に被動ギヤ55に噛み合う。
【0100】
さらに、操作ノブ40の第1方向への操作により、図17に示すように、各上流側フィン44,45が、支軸46を支点として通風路20での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられると、通風路20が閉鎖され、吹出口13からの空調用空気Aの吹出しが遮断される。
【0101】
上記のように、各上流側フィン44,45を通風方向に対し略直交する位置まで傾動させる場合には、各上流側フィン44,45を上記とは異なる位置まで傾動させる場合、例えば、通風方向に対し平行にする場合や、通風方向に対し傾斜させる場合よりも、操作ノブ40が第1方向(車幅方向)へ多く操作される。これに伴い、駆動ギヤ51も第1方向(車幅方向)へ多く移動させられる。この多くの移動にも拘らず、駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合わせた状態にするために、第1方向(車幅方向)における歯52の数が多くなって、駆動ギヤ51は第1方向(車幅方向)に長くなる。
【0102】
そのため、駆動ギヤ51の第2方向(上下方向)のサイズを小さくして、駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくする効果が有効に得られる。
すなわち、駆動ギヤ89が操作ノブ87と一体となって第1方向にも第2方向にも動く特許文献1では、上流側フィン85を第1方向へ大きく傾動させるための操作を操作ノブ87に対し行なったときにも、駆動ギヤ89を被動ギヤ91に噛み合わせた状態にするために、駆動ギヤ89について第1方向のサイズが大きくなる。駆動ギヤ89が第2方向に加え第1方向にも大型化し、圧力損失が特に大きくなる。
【0103】
これに対し、第2実施形態では、駆動ギヤ51が第1方向(車幅方向)には大きくなるが、第2方向(上下方向)には小さいため、圧力損失が有効に小さくされる。
従って、第2実施形態によれば、上述した(1),(2)に加え、次の効果が得られる。
【0104】
(10)駆動ギヤ51を第1方向(車幅方向)に長くし、同駆動ギヤ51を同方向へ多く移動させることにより、複数の上流側フィン44,45を、通風路20での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させて、通風路20を閉鎖するようにしている。
【0105】
そのため、上述した(1)のように、第2方向(上下方向)についての駆動ギヤ51のサイズを大きくすることなく、同駆動ギヤ51を被動ギヤ55に噛み合った状態に維持することで、駆動ギヤ51に起因する圧力損失を小さくする効果を有効に得ることができる。
【0106】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<環状フィン30について>
・環状フィン30における2つのフィン部31は、下流側フィンとして、互いに独立した状態で形成されてもよい。この場合、各フィン部31(下流側フィン)は、フィン支軸により、ケース10の第2壁部22に対し第2方向(上下方向)への傾動可能に支持されてもよい。
【0107】
<連動機構について>
・連動機構は、環状フィン30の第1方向への移動に連動して上流側フィン44,45を同方向へ傾動させることで、端連結部32,33を、上流側フィン44,45に沿って流れる空調用空気Aの流路から退避させるものであることを条件として、上記実施形態とは異なる構成に変更されてもよい。
【0108】
<シャットダンパ60について>
・第2実施形態においても、第1実施形態と同様の構成のシャットダンパ60が設けられてもよい。
【0109】
<適用箇所について>
・本発明は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に配設される空調用レジスタにも適用可能である。
【0110】
・本発明の空調用レジスタは、空調装置から送られてきて室内に吹出す空調用空気の向きを調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
<その他>
・本発明は、吹出口13が縦長となるように配置される空調用レジスタにも適用可能である。この場合、上下方向が第1方向となり、車幅方向(左右方向)が第2方向となる。環状フィン30における一対のフィン部31は第2方向(車幅方向)に相対向する。また、上流側フィン44,45は、第1方向(上下方向)に配列される。
【0111】
・本発明は、操作ノブの第1方向への操作を、駆動ギヤ及び被動ギヤを介し上流側フィンに伝達して同方向へ上流側フィンを傾動させるものであることを条件に、上記実施形態とは異なる形状、例えば、略正方形の吹出口を有する空調用レジスタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…ケース、13…吹出口、20…通風路、31…フィン部(下流側フィン)、35…シャフト(フィン支軸、ギヤ支軸)、40…操作ノブ、44,45…上流側フィン、51…駆動ギヤ、52…歯、55…被動ギヤ、57…切欠き部、57A…壁面(傾動規制部)、71…フィン支軸、76…ギヤ支軸、A…空調用空気。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を空調用空気の通風路とするとともに、同通風路の下流端に前記空調用空気の吹出口を有し、前記通風路での前記空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし他方を第2方向とする筒状のケースと、
前記ケース内の前記吹出口よりも上流側において前記第1方向に延び、フィン支軸により、前記第2方向への傾動可能に支持された下流側フィンと、
前記ケース内の前記下流側フィンよりも上流側において前記第2方向に延び、前記第1方向への傾動可能に支持された上流側フィンと、
前記第1方向への操作により同第1方向へ移動し、前記第2方向への操作により、前記下流側フィンとともに前記フィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する操作ノブと、
前記第1方向に並設された複数の歯を有し、前記操作ノブの同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤと、
前記上流側フィンに設けられ、かつ前記駆動ギヤに噛み合わされる被動ギヤと
を備える空調用レジスタであって、
前記下流側フィンにおいて前記フィン支軸と同軸上に設けられて前記駆動ギヤを支持するギヤ支軸と、
前記ギヤ支軸を支点とする前記駆動ギヤの前記第2方向への傾動を規制する傾動規制部と
をさらに備えることを特徴とする空調用レジスタ。
【請求項2】
前記被動ギヤは、前記上流側フィンの下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設けられ、
前記上流側フィンには、前記縁部から前記被動ギヤに向けて延びる切欠き部が設けられ、
前記駆動ギヤは前記切欠き部に入り込んだ状態で前記被動ギヤに噛み合わされており、
前記切欠き部において前記第2方向に相対向する壁面により前記傾動規制部が構成されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記上流側フィンは、前記第1方向の複数箇所に互いに平行に離間した状態で配設されており、
前記複数箇所の上流側フィンは、前記通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられることにより、同通風路を閉鎖するものである請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【請求項1】
内部空間を空調用空気の通風路とするとともに、同通風路の下流端に前記空調用空気の吹出口を有し、前記通風路での前記空調用空気の通風方向に直交する方向のうち、互いに直交する2方向の一方を第1方向とし他方を第2方向とする筒状のケースと、
前記ケース内の前記吹出口よりも上流側において前記第1方向に延び、フィン支軸により、前記第2方向への傾動可能に支持された下流側フィンと、
前記ケース内の前記下流側フィンよりも上流側において前記第2方向に延び、前記第1方向への傾動可能に支持された上流側フィンと、
前記第1方向への操作により同第1方向へ移動し、前記第2方向への操作により、前記下流側フィンとともに前記フィン支軸を支点として同第2方向へ傾動する操作ノブと、
前記第1方向に並設された複数の歯を有し、前記操作ノブの同第1方向への操作に連動して同第1方向へ移動する駆動ギヤと、
前記上流側フィンに設けられ、かつ前記駆動ギヤに噛み合わされる被動ギヤと
を備える空調用レジスタであって、
前記下流側フィンにおいて前記フィン支軸と同軸上に設けられて前記駆動ギヤを支持するギヤ支軸と、
前記ギヤ支軸を支点とする前記駆動ギヤの前記第2方向への傾動を規制する傾動規制部と
をさらに備えることを特徴とする空調用レジスタ。
【請求項2】
前記被動ギヤは、前記上流側フィンの下流側の縁部から上流側へ離間した箇所に設けられ、
前記上流側フィンには、前記縁部から前記被動ギヤに向けて延びる切欠き部が設けられ、
前記駆動ギヤは前記切欠き部に入り込んだ状態で前記被動ギヤに噛み合わされており、
前記切欠き部において前記第2方向に相対向する壁面により前記傾動規制部が構成されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記上流側フィンは、前記第1方向の複数箇所に互いに平行に離間した状態で配設されており、
前記複数箇所の上流側フィンは、前記通風路での通風方向に対し略直交する位置まで傾動させられることにより、同通風路を閉鎖するものである請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−112256(P2013−112256A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261675(P2011−261675)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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