説明

窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法および窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造

【課題】熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する際に、窓ガラスの視認領域を十分に確保しながら、十分な接着強度をもって接着・固定する方法を提供する。また、窓ガラスの視認領域が十分に確保されるとともに、十分な接着強度を有する熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体との接着・固定構造を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着することで前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布する工程、プライマ塗布工程、加熱工程、ウレタン接着工程を含む熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法およびこれにより得られる接着・固定構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法および窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の固定窓ガラスについては、窓ガラスを車両本体に取り付ける際、窓枠付きのガラス板の窓枠部分をウレタン接着剤によって車両開口部のフランジに接着する方法が一般的である。このような窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠としては、従来から軟質塩化ビニル樹脂製の窓枠が最も広く用いられているが、軟質塩化ビニル樹脂製の窓枠は、環境への影響や、傷つきやすい、光沢が小さい等の問題があり、近年、これらの課題を解決した熱可塑性エラストマ製の窓枠に関心が集まっている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性エラストマは極性が小さいため、ウレタン接着剤との接着力に乏しいという問題がある。この問題を解決するために、ガラスパネルと金属製ガラスホルダと、エチレンプロピレンゴム(EPDM)シール部材とシール部材の内周縁に密着するウレタン樹脂層とからなるガラスサンルーフパネルにおいて、接着性を高める方法として、シール部材とウレタン樹脂層の間に、塗板プライマとエチレンプロピレンゴム(EPDM)用プライマとの混合プライマ層を設ける方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、エチレンプロピレンゴム(EPDM)系熱可塑性エラストマの組成に特徴を有し、エチレンプロピレンゴム(EPDM)系熱可塑性エラストマのウレタン系シーラを介した接着対象との接着において、接着対象の接着面に表面処理なしに実用的な接着性をもって接着できる自動車用ウェザストリップの技術が提案されており(特許文献2参照)、この文献には、特にエチレンプロピレンゴム(EPDM)系熱可塑性エラストマとウレタン系シーラの間にエチレンプロピレンゴム(EPDM)用プライマと汎用プライマを塗布すれば最大の接着強度が得られるとの記載がある。しかし、これら技術においても接着性は十分とは言い難かった。
【0005】
また、別の方法として、窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠部分ではなく、窓ガラスの窓枠取付け部より内周方向のガラス部分をウレタン接着剤により車体と接着する接着構造がとられているが、この構造では接着領域が窓ガラスの窓枠を越えて内周方向にまで及ぶため、視認領域(開口部)が小さくなってしまうという問題があった。
【0006】
最近では、窓の視認領域(開口部)を大きく取りたい等のデザイン上、安全上の要求が強いことから、熱可塑性エラストマ製の窓枠を有する車両用窓ガラスにおいても、従来の軟質塩化ビニル樹脂製の窓枠付き窓ガラスと同様の接着構造、つまり窓枠とウレタン接着剤間の接着で熱可塑性エラストマ製窓枠付き窓ガラスを車両本体に接着・固定する構造であって、窓の視認領域を確保しながら十分な接着性をもった窓枠付き窓ガラスの車両本体への接着・固定構造、および該接着・固定構造を得るための技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−94175号公報
【特許文献2】特開平8−175291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記観点からなされたものであって、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する際に、窓ガラスの視認領域を十分に確保しながら、十分な接着強度をもって接着・固定する方法を提供することを目的とする。また、窓ガラスの視認領域が十分に確保されるとともに、十分な接着強度を有する熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、下記(a)工程〜(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法を提供する。
【0010】
(a)熱可塑性エラストマ製の窓枠を周縁部に一体成形した車両用窓ガラスの前記窓枠の車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布して接着剤層を形成させる接着剤塗布工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(c)前記接着剤層とプライマ層を前記接着剤層が接着力を発現する温度以上の温度に加熱する加熱工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
【0011】
また、本発明は、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、下記(a’)工程、(b)工程、および(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法を提供する。
【0012】
(a’)成形面の所定位置に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布した金型を用いて車両用窓ガラスの周縁部に熱可塑性エラストマ製の窓枠を射出成形により一体成形して、前記車両用窓ガラスの周縁部に、車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤層の形成された窓枠を一体成形する窓枠成形工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用の窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
【0013】
また、本発明は、上記本発明の方法により接着・固定された、窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠と車両開口フランジとの間に、窓枠側から順に変性ポリオレフィンを含む接着剤からなる層、プライマからなる層、およびウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層の3層を有する窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する際に、窓ガラスの視認領域を十分に確保しながら、十分な接着強度をもって接着・固定することが可能である。また、本発明の熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造は、窓ガラスの視認領域が十分に確保されるとともに、十分な接着強度を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の接着・固定方法に用いる熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの一例の端部断面を示す図である。
【図2】本発明の接着・固定方法の実施の一形態を順を追って示す図である。
【図3】熱可塑性エラストマ基材とアルミニウム板とを接着剤により接着した接着試験片の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
まず、図1および図2を用いて本発明の熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法の第1の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、熱可塑性エラストマ製の窓枠1が車両用窓ガラス板2の端部を挟み込む形で全周に一体成形された窓枠付き車両用窓ガラスの一例の端部断面を示す図である。図1に示す例では、車両用窓ガラス板2は、片側表面の外縁部全周に一定幅の黒色セラミックス層3を有し、黒色セラミックス層3の幅以上に車両用窓ガラス板2の内周方向に入り込まない範囲で熱可塑性エラストマ製の窓枠1が取り付けられている。
【0018】
ここで、熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラス10は、黒色セラミックス層3を有する側の窓枠部分で車体開口フランジと接着されるが、この構造において、黒色セラミックス層3は前記接着部分を目隠しする役割を果たすものであって、通常の熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスはこのような黒色セラミックス層を有する。ただし、本発明の接着・固定の効果の観点から言えば、黒色セラミックス層はなくてもよい。
【0019】
本発明の方法において、熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラス10を構成する車両用窓ガラス板2および黒色セラミックス層3については、一般の車両用固定窓に用いられるガラス板、黒色セラミックス層を特に制限なくそのまま使用することが可能である。また、車両用窓ガラス板2に黒色セラミックス層3を設ける方法についても特に限定されるものではない。
【0020】
また、本発明の方法において、熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラス10の窓枠1を構成する熱可塑性エラストマとしては、特に限定されず、公知の熱可塑性エラストマ、具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、ポリアミド系熱可塑性エラストマ、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマ等の熱可塑性エラストマを用いることが可能である。これらのうちでも、オレフィン系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマが、耐薬品性や耐傷付き性が良好である点で好ましい。
【0021】
本発明においては、上記熱可塑性エラストマとして、市販品を用いることが可能であり、オレフィン系熱可塑性エラストマのこのような市販品としては、例えば、サントプレーン(アドバンスト・エラストマー・システムズ(AES)ジャパン社製・商品名)、ミラストマー(三井化学社製・商品名)、住友TPE(住友化学社製・商品名)、サーモラン(三菱化学社製・商品名)、オレフレックス(日本ポリエチレン社製・商品名)、ミラプレーン(三菱化学社製・商品名)等が挙げられ、スチレン系熱可塑性エラストマの市販品としては、例えば、ラバロン(三菱化学社製・商品名)等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、このような熱可塑性エラストマを用いて、一般的な成形方法、例えば、射出成形等の方法で、車両用窓ガラス板、または、周辺に黒色セラミックス層の形成された車両用窓ガラス板の周縁部へ、熱可塑性エラストマ製の窓枠が成形と同時に取り付けられた、図1に示すような熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラス10が用いられる。この他に、押し出し成形によって形成された熱可塑性エラストマ製の窓枠が車両用窓ガラス板、または周辺に黒色セラミックス層が形成された車両用窓ガラス板の周縁部に装着された図1に示すような熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラス10が用いられる。
【0023】
ここで、図1に示す熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラスを用いた本発明の接着・固定方法を図2を用いて説明する。図2は、本発明の接着・固定方法の実施の一形態を順を追って示す図である。
【0024】
図2の(1)は、本発明の(a)工程後、すなわち、熱可塑性エラストマ製の窓枠1を周縁部に一体成形した車両用窓ガラス2の前記窓枠1の車両開口フランジへの接着面に、変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布して接着剤層4を形成させる接着剤塗布工程後の熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの端部断面を示す図である。
【0025】
本発明の方法において、(a)工程で用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤とは、加熱により熱可塑性エラストマとの充分な接着性を発現し、さらに変性された箇所を有することによって、後述するプライマとも接着性を発現する接着剤である。前記窓枠1を構成する熱可塑性エラストマは極性が小さいことからウレタン接着剤との接着性に乏しいが、両者間に接着性を持たせるために、本発明においては熱可塑性エラストマ側に熱可塑性エラストマとの接着性が認められる変性ポリオレフィンを含む接着剤を用いるものである。また、後述するように、本発明においては、この変性ポリオレフィンを含む接着剤とウレタン接着剤との間にさらにプライマを介在させるが、変性ポリオレフィンを含む接着剤は該プライマとの接着性をも有するものである。
【0026】
なお、変性ポリオレフィンを含む接着剤が熱可塑性エラストマとの接着性を発現する機構としては、加熱によって変性ポリオレフィン中の分子同士の絡み合い、熱可塑性エラストマ中の分子同士の絡み合いがゆるみ、ついで変性ポリオレフィン中の分子と熱可塑性エラストマ中の分子との絡み合いが起こることによるものと考えられる。
【0027】
本発明において上記接着剤が含有する変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを主鎖とし側鎖に官能基を有するポリマーである。この変性ポリオレフィンの主鎖を構成するポリオレフィンとしては、プロピレン単位を含むポリオレフィンであることが好ましく、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。
【0028】
前記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとを共重合させたものであれば、その構造、物性等は特に限定されない。プロピレン以外のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらの中でも接着性が優れる点で1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることが可能である。また、プロピレン−α−オレフィン共重合体には、プロピレンの単位、プロピレン以外のα−オレフィンの単位の他に、本発明の目的を損わない範囲で他の単量体の単位を含有してもよい。さらに、プロピレン−α−オレフィン共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、置換基を有していてもよい。プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレンコポリマー、プロピレン−1−ブテンコポリマー、プロピレン−エチレン−1−ブテンコポリマーが好ましく挙げられる。
【0029】
また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体においては、下記式で表されるプロピレン単位の含有量が50モル%以上であることが好ましい。
プロピレン単位の含有量(モル%)=[プロピレン単位のモル数/全単位のモル数]×100
このプロピレン単位の含有量が50モル%以上であると、プロピレン−α−オレフィン共重合体の充分な凝集力が得られ、熱可塑性エラストマとの接着性に優れる。より接着性に優れる点でプロピレン単位の含有量は60モル%以上であることがより好ましい。
このようなプロピレン−α−オレフィン共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を混合して変性ポリオレフィンの主鎖として用いられる。
【0030】
本発明において上記接着剤が含有する変性ポリオレフィンとしては、下記(1)〜(3)の変性ポリオレフィンから選ばれる1種以上が好ましく、また、これらの変性ポリオレフィンにおいて主鎖となるポリオレフィンの構成は上述のとおりプロピレン単位を含むポリオレフィンが好ましい。
(1)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合されたポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィン(1)とも記載する)、
(2)塩素化ポリオレフィン、
(3)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合され、かつ塩素化されたポリオレフィン(以下、変性ポリオレフィン(3)とも記載する)。
【0031】
上記変性ポリオレフィン(1)および変性ポリオレフィン(3)における、α、β−不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられ、α、β−不飽和カルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの中でも、α、β−不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましく、接着性が優れる点で無水マレイン酸が特に好ましい。つまり、変性ポリオレフィン(1)としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく、変性ポリオレフィン(3)としては、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンが好ましい。
【0032】
さらに、変性ポリオレフィン(1)としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンのうちでも、主鎖ポリオレフィンが、ポリプロピレン、プロピレン−1−ブテン共重合体から選ばれる、無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性プロピレン−1−ブテン共重合体が特に好ましい。また、変性ポリオレフィン(3)としては、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンのうちでも、主鎖ポリオレフィンがポリプロピレンである無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンが特に好ましい。
また、(2)塩素化ポリオレフィンとしては、主鎖ポリオレフィンがポリプロピレンである塩素化ポリプロピレンが好ましい。
【0033】
以下に、上記(1)〜(3)の変性ポリオレフィンについて詳細に説明する。
(1)変性ポリオレフィン(1)
上記変性ポリオレフィン(1)の側鎖は、α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種(以下、「不飽和カルボン酸等」という)から形成される。該側鎖は、不飽和カルボン酸等のみから形成されていても、他の有機基に不飽和カルボン酸等が結合して形成されていてもよい。
変性ポリオレフィン(1)における上記不飽和カルボン酸等(有機基に結合する不飽和カルボン酸等を含む)による変性量は、変性ポリオレフィン(1)の100質量部に対して、導入される不飽和カルボン酸等の質量が0.1〜10質量部であることが好ましい。この変性量が0.1質量部以上であれば充分な接着力が得られ、変性量が10質量部以下であれば変性ポリオレフィンの極性が好適であり熱可塑性エラストマとの接着力に優れる。これらのバランスがよりよい点で、不飽和カルボン酸等による変性量は1〜5質量部であることがより好ましい。さらに合成が容易である点でこの変性量は3質量部以下であることが好ましい。
【0034】
変性ポリオレフィン(1)は、主鎖となるポリオレフィン、好ましくは、プロピレン−α−オレフィン共重合体に、α、β−不飽和カルボン酸等から選択される少なくとも1種をグラフト共重合させる方法により製造され、該製造方法としては、溶液法、溶融法等の一般的な共重合方法を任意に選択できる。
溶液法としては、主鎖となるポリオレフィン、好ましくは、プロピレン−α−オレフィンをトルエン等の芳香族有機溶媒に100〜180℃で溶解させた後、不飽和カルボン酸等を添加し、さらに、後述するラジカル発生剤を一度にまたは数回に分けて添加して共重合させる方法が挙げられる。溶融法としては、主鎖となるポリオレフィン、好ましくは、プロピレン−α−オレフィンをこれらの溶融温度以上に加熱して溶融させた後、不飽和カルボン酸等および後述するラジカル発生剤を添加して共重合させる方法が挙げられる。
グラフト共重合に用いられるラジカル発生剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−ターシャルブチルパーオキサイド等が挙げられ、共重合反応温度とラジカル発生剤の分解温度を考慮して選択される。
【0035】
このようにして得られる変性ポリオレフィン(1)は、重量平均分子量が10,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば変性ポリオレフィン(1)を含む接着剤の凝集力が強くなり充分な接着強度が得られる。また、重量平均分子量が100,000以下であれば、変性ポリオレフィン(1)の有機溶媒への溶解性が高く、該溶液を塗布するにあたっての良好な作業性を得るための室温での流動性が得られる。接着強度と流動性がより優れる点で、重量平均分子量は30,000〜70,000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation chromatographyl (GPC))(標準ポリスチレン換算)によって測定された値である(以下、重量平均分子量については、全て同様の方法で測定されたものである)。
【0036】
変性ポリオレフィン(1)は結晶化度が10〜70%であることが好ましい。結晶化度が10%以上であれば、接着剤の凝集力が強くなり充分な接着強度が得られる。また、結晶化度が70%以下であれば、変性ポリオレフィン(1)を溶解した溶液が安定し、塗布時の良好な作業性が得られる室温での流動性を示し、低温での保管も可能となる。これらがより優れる点で結晶化度は30〜60%であることがより好ましい。なお、結晶化度の測定方法は、X線回析による透過法等であるのが好ましい(以下、結晶化度については、全て同様の方法で測定されたものである)。また、変性ポリオレフィン(1)は、接着剤としての耐熱性に優れる点で、融解温度(Tm)が90℃以上であることが好ましい。
【0037】
(2)塩素化ポリオレフィン
塩素化ポリオレフィンの製造は、例えば、ガラスライニングされた圧力反応缶の中で、ポリオレフィンを(a)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤およびイオン交換水を含む水性混合溶媒中で加温して溶解した後、または(b)四塩化炭素、クロロホルム等の塩素系溶剤中で加温し溶解し、ラジカル発生剤を加えた後、塩素ガスを所定塩素含有量になるように吹き込み、反応終了後、脱溶剤する方法で行うことができる。
【0038】
塩素化ポリオレフィン中の塩素含有量は15〜35質量%であることが好ましい。塩素含有量が15質量%以上であれば、有機溶媒に対する充分な溶解性が得られ、溶液を安定化させることができる。塩素含有量が35質量%以下であれば、塩素化ポリオレフィンに充分な凝集力が得られ、充分な接着強度が得られる。
なお、塩素化ポリオレフィン中の塩素含有量の測定方法としては、電位差滴定法等が挙げられる。
【0039】
塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、40,000〜250,000が好ましい。重量平均分子量が40,000以上であれば、充分な凝集力が得られ充分な接着強度が得られる。重量平均分子量が250,000以下であれば、後述するエポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との良好な相溶性が得られ、有機溶媒への溶解性に優れ、さらに接着剤を塗布するにあたっての良好な作業性を得るための室温での流動性にも優れる。
また、塩素化ポリオレフィンの結晶化度は、10〜50%が好ましい。結晶化度が10%以上であれば充分な凝集力が得られ充分な接着強度が得られる。結晶化度が50%以下であれば、有機溶媒の溶解性に優れ、塗布時の良好な作業性が得られる室温での流動性にも優れ、低温での保管も可能となる。さらに、結晶化度が50%以下であれば、エポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との均一な混合が容易になる。
【0040】
塩素化ポリオレフィンとして、異なる塩素含有量の塩素化ポリオレフィン成分を2つ以上含むものを用いると、高温化での凝集効果が得られることから、および、さらにせん断接着強さに優れる接着特性を発現できることから、好ましい。例えば、塩素含有量が25質量%以上35質量%以下の範囲の塩素化ポリオレフィン成分(以下、「高塩素含有量成分」という。)1種以上と、塩素含有量が15質量%以上25質量%未満の範囲の塩素化ポリオレフィン成分(以下、「低塩素含有量成分」という。)1種以上とからなる塩素化ポリオレフィンを用いると、低塩素含有量成分に特徴的な高い凝集力と高塩素含有量成分に特徴的なエポキシ基含有化合物やシランカップリング剤(後述する)との相溶性に優れる点で、より好ましい。
【0041】
また、該凝集力と該相溶性とをより高い水準で両立できる点で、塩素含有量が18〜22質量%で、重量平均分子量が180,000〜210,000である塩素化ポリオレフィン(低塩素含有量成分)1種以上と、塩素含有量が25〜29質量%で、重量平均分子量が100,000〜170,000である塩素化ポリオレフィン(高塩素含有量成分)1種以上とを用いることがより好ましい。これらの場合において、高塩素含有量成分に対する低塩素含有量成分の割合(低塩素含有量成分/高塩素含有量成分)が、質量比で5/1〜25/1の割合である塩素化ポリオレフィンを配合することで、特に高温下での凝集力に優れる特性と、特に有機溶媒への溶解性、および後述するエポキシ基含有化合物やシランカップリング剤との相溶性に優れる特性とをあわせ持つ接着剤が得られるため、好ましい。
【0042】
(3)変性ポリオレフィン(3)
変性ポリオレフィン(3)の製造方法としては、ポリオレフィンにα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選ばれる1種以上をグラフト変性し、ついで塩素化する方法;ポリオレフィンを塩素化し、ついでα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選ばれる1種以上をグラフト変性する方法;ポリオレフィンに対してグラフト変性と塩素化とを同時に行う方法;のいずれであってもよい。
なお、変性ポリオレフィン(3)の製造に用いるα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物は、変性ポリオレフィン(1)の製造におけるα、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物と同様であり、好ましい態様も同様である。また、変性ポリオレフィン(3)の製造に用いる塩素化の方法については上記(2)塩素化ポリオレフィンにおける塩素化の方法と同様とすることができる。
【0043】
変性ポリオレフィン(3)中の塩素含有量は、接着性および有機溶媒への溶解性が良好になることから10〜30質量%であることが好ましい。また、変性ポリオレフィン(3)の重量平均分子量は、30,000〜200,000が好ましく、50,000〜150,000が特に好ましい。
【0044】
本発明に用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤における変性ポリオレフィンの含有量としては、接着剤の固形成分全量に対して40質量%以上、好ましくは60〜97質量%の量が挙げられる。接着剤が変性ポリオレフィンをこの範囲で含有すると、熱可塑性エラストマとの接着力がより向上する。
本発明に用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤には、前記変性ポリオレフィン以外に、プライマ層(後述)との密着力の向上や接着耐久性の向上などを目的として、シランカップリング剤、エポキシ基含有化合物、ポリイソシアネート等が含まれることが好ましい。
前記シランカップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基、チオール基、アミノ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0045】
変性ポリオレフィンが前記変性ポリオレフィン(1)である場合、接着強度がより強くなる点で、エポキシ基を末端に有するエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、変性ポリオレフィン(1)100質量部に対して、0.1〜30質量部であるのが好ましい。0.1質量部以上であると、充分な接着力が得られる。また、30質量部以下であると、シランカップリング剤同士の反応を抑制でき、熱可塑性エラストマとの接着性の低下を防止できる。
【0046】
変性ポリオレフィンが塩素化ポリオレフィンである場合は、アミノ基を末端に有するアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。これは、塩素化ポリオレフィンと充分相溶し、かつ後述の好ましく配合されるエポキシ基含有化合物の硬化触媒にもなることで、初期接着強度、耐温水試験後、耐熱試験後の接着強度を良好にできるからである。シランカップリング剤は、塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物との合計100質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0047】
変性ポリオレフィンが前記変性ポリオレフィン(3)である場合は、エポキシ基を末端に有するエポキシ基含有シランカップリング剤およびアミノ基を末端に有するアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。これらは単独で使用してもよく、併用してもよい。シランカップリング剤は、変性ポリオレフィン(3)100質量部に対して、合計で1〜20質量部とすることが好ましく、2〜15質量部とすることが特に好ましい。
【0048】
また、変性ポリオレフィンが前記塩素化ポリオレフィンである場合、本発明における接着剤はエポキシ基含有化合物を含むことが好ましい。該エポキシ基含有化合物は、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物である(ただし、前記エポキシ基含有シランカップリング剤を除く)。該エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多官能性エポキシド、あるいは、パラ・ターシャルブチルフェニルグリシジルエーテル等の1官能性エポキシド等が挙げられる。また、エポキシ当量が100〜800g/eqであるものが好ましく、特に、活性水素化合物との反応性および単体での流動性が良好であることから、エポキシ当量が130〜250g/eqであるものがより好ましい。
【0049】
エポキシ基含有化合物として、商品名:デナコールEX−146(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:225g/eq)、商品名:エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量:184〜194g/eq)、商品名:エポライト100MF(共栄社化学社製、エポキシ当量:135〜145g/eq)等が挙げられる。
【0050】
塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物の含有割合は、塩素化ポリオレフィン100質量部に対してエポキシ基含有化合物0.1〜28質量部の割合であることが好ましい。塩素化ポリオレフィン100質量部に対して、エポキシ基含有化合物を0.1質量部以上にすると接着剤組成物は加熱耐久性に優れ、過剰のエポキシ基含有化合物は接着性を低下させるため、28質量部以下にすることで熱可塑性エラストマとの接着を安定化できる。熱可塑性エラストマとの接着をより安定化できる点で、上記含有割合は、0.1〜25質量部の割合であることがより好ましい。
【0051】
さらに、塩素化ポリオレフィンとして、重量平均分子量が40,000〜170,000の上記した高塩素含有量成分を用いるときには、上記塩素化ポリオレフィンとエポキシ基含有化合物の含有割合を、塩素化ポリオレフィン100質量部に対してエポキシ基含有化合物0.1〜30質量部の割合にすることが好ましい。該含有割合がこの範囲にあると、接着強度が低下することがない。
【0052】
本発明に用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤が含有するポリイソシアネートとしては、1分子中にイソシアネートを少なくとも2個有する化合物が特に制限なく挙げられる。このようなポリイソシアネートとしては、脂肪族炭化水素にイソシアネート基が結合したものであってもよく、芳香族化合物にイソシアネート基が結合したものであってもよい。
これらポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の低分子ポリイソシアネートが挙げられる。
【0053】
また、上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基が芳香環に結合している構造のウレタンプレポリマーであってもよい。該ウレタンプレポリマーとしては、例えば、上述のような低分子ポリイソシアネートとポリオール化合物との反応物が挙げられる。ポリオール化合物としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールのようなポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0054】
ポリオール化合物と上記低分子ポリイソシアネートとは、任意の組み合わせで用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、および、ポリオキシプロピレントリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、トリレンジイソシアネート(TDI)、および、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種とから得られるウレタンプレポリマーとの組み合わせが、貯蔵安定性、入手の容易さの点から好ましい。
ポリオール化合物と上記の低分子ポリイソシアネートとの混合比は、ポリオール化合物中のヒドロキシ基に対する上記の低分子のポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が1.3〜2.5であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。
【0055】
上記接着剤におけるポリイソシアネートの含有量は、変性ポリオレフィン100質量部に対して、10〜100質量部であるのが好ましく、30〜70質量部であるのが特に好ましい。これは、接着性がより優れるからである。なお、ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、変性ポリオレフィンを含む接着剤は、有機溶剤に溶解して接着剤溶液として使用されることが好ましい。用いられる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。このとき、変性ポリオレフィン、またはこれと所望により添加するシランカップリング剤やエポキシ基含有化合物、ポリイソシアネート等との合計が、5〜30質量%の濃度となるように有機溶媒に溶解されるのが好ましい。
【0057】
本発明における変性ポリオレフィンを含む接着剤には、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、カーボンブラック等、その他接着剤に必要に応じて添加される各種の添加剤等が挙げられる。本発明おける変性ポリオレフィンを含む接着剤には、上記した添加剤の中でも、紫外線吸収剤と光安定剤とを組合せて含有させるのが、耐紫外線特性、耐温水特性および耐熱水特性等に優れるので好ましい。
【0058】
本発明に用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤としては、塩素化ポリプロピレン、アミノ基含有シランカップリング剤、およびエポキシ基含有化合物を含有する接着剤;無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよびエポキシ基含有シランカップリング剤を含有する接着剤等が挙げられる。なお、これらの接着剤については、本出願人らによる、国際公開第2004/024843号パンフレット、国際公開第2005/075596号パンフレット等に詳細に開示されている。
【0059】
上記説明した変性ポリオレフィンを含む接着剤は、変性ポリオレフィンとその他任意成分が組み合わされて市販されているものも多く、本発明においてはこのような市販品を用いることが可能である。熱可塑性エラストマ用の変性ポリオレフィン含有接着剤の市販品として具体的には、ハードレンMP‐200(東洋化成工業社製・商品名;無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよびアミノ基含有シランカップリング剤を含有)等を挙げることができる。
【0060】
本発明の接着・固定方法の(a)工程においては、このような変性ポリオレフィンを含む接着剤を熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠1の車両開口フランジへの接着面に塗布する。塗布の方法としては、特に制限されず、一般的なスプレー塗布、フェルトを用いた接触塗布等の方法をとることが可能である。なお、接着剤塗布後、接着剤が溶剤を含有する場合には乾燥等の処理を施してもよい。ただし、変性ポリオレフィンを含む接着剤が、後述するプライマとの接着力を失うような加熱は実施すべきでない。溶剤が揮発さえすればよいので、乾燥工程は、たとえば10〜30℃の環境に放置する程度でも充分である。このようにして変性ポリオレフィンを含む接着剤からなる層が窓枠1の車両開口フランジへの接着面に形成されるが、該接着剤層4の厚さは、概ね5〜20μm程度とすることができる。
【0061】
ここで、前記(a)工程で形成された接着剤層に接着性を持たせるためには、加熱処理が必要であるが、この加熱処理は(a)工程では行われず、(b)工程のプライマ塗布工程後、(c)工程で実施することになる。
【0062】
本発明の接着・固定方法においては、上記(a)工程に引き続いて、(b)工程、すなわち、前記接着剤塗布工程で形成された変性ポリオレフィンを含む接着剤層の表面にプライマを塗布しプライマ層を形成させるプライマ塗布工程が行われる。
【0063】
図2の(2)は、(b)工程が終わった後の窓枠付き車両用窓ガラスの端部断面を示す図である。
【0064】
本発明の方法において、(b)工程で用いるプライマとしては、通常、車両用窓ガラスを車両本体に固定するためのウレタン接着剤に対して用いられるプライマと同様のものが挙げられる。このようなプライマとして、具体的には、(i)反応性基を含むメタクリル酸エステルの共重合体とシラン化合物とを含む組成物、(ii)シラン化合物とイソシアネート基を有する化合物とを含む組成物、等が挙げられる。なお、これらプライマ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において溶剤、耐候性向上のための顔料、紫外線吸収剤等の任意成分を含有していてもよい。
【0065】
上記車両用のウレタン接着剤用プライマは多くが市販されており、本発明においては市販品を用いることが可能である。市販品として具体的には、(i)については、PC3(横浜ゴム社製・商品名)、GP402(サンスター社製・商品名)が、(ii)については、MS90(横浜ゴム社製・商品名)、GP435−41(サンスター社製・商品名)等が挙げられる。
【0066】
本発明の接着・固定方法の(b)工程においては、このようなプライマを接着剤塗布工程で形成された変性ポリオレフィンを含む接着剤層4の表面に塗布する。塗布の方法としては、特に制限されず、一般的なスプレー塗布、フェルトを用いた接触塗布等の方法をとることが可能である。なお、プライマ剤塗布後、プライマが溶剤を含有する場合には乾燥等の処理を施してもよい。このようにしてプライマ層5が変性ポリオレフィンを含む接着剤層4の表面に形成されるが、プライマ層5の厚さは、概ね5〜20μm程度とすることができる。
【0067】
ここで、本発明の接着・固定方法において用いる熱可塑性エラストマ、変性ポリオレフィンを含む接着剤およびプライマについて個々に具体的な例示を上記で行ったが、より高い接着性を得るために本発明において好ましい前記3者の組み合わせについて以下に示す。
【0068】
本発明において、好ましい前記3者の組み合わせの一つとして、オレフィン系熱可塑性エラストマ、塩素化ポリプロピレンとアミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有化合物を含む接着剤およびイソシアネート基含有化合物とシラン化合物とを含むプライマ、の組み合わせが挙げられる。
また、別の前記3者の好ましい組み合わせとして、オレフィン系熱可塑性エラストマ、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとエポキシ基含有シランカップリング剤とを含む接着剤および反応性基を含むメタクリル酸エステルの共重合体とシラン化合物とを含むプライマ、の組み合わせが挙げられる。
【0069】
本発明の接着・固定方法においては、上記(b)工程に引き続いて、(c)工程、すなわち、前記変性ポリオレフィンを含む接着剤層とプライマ層とを、前記接着剤層が熱可塑性エラストマとの接着力を発現する温度以上の温度に加熱する加熱工程が行われる。
【0070】
この加熱工程は、変性ポリオレフィンを含む接着剤に熱溶着を起こさせて熱可塑性エラストマに対して接着力を発現させる工程である。この加熱工程を(b)工程のプライマ塗布工程以前に行うと、変性ポリオレフィンを含む接着剤層とプライマ層の間の接着性が確保されないため、本発明の第1の実施形態では、(b)工程のプライマ塗布工程以降に行うこととする。
【0071】
加熱の方法としては、特に限定されず、通常の加熱方法、例えば、オーブンによる加熱、熱風加熱、赤外加熱等が挙げられる。
加熱工程における加熱温度は、変性ポリオレフィンを含む接着剤が熱溶着による接着力を発現する温度以上の温度であれば特に制限されず、これはまた用いる変性ポリオレフィンを含む接着剤の種類にもよるが、具体的には、160〜220℃、好ましくは180〜200℃を挙げることができる。また、加熱の時間として、オーブンによる加熱の場合は10〜30分間、好ましくは15〜20間を挙げることができ、熱風加熱、赤外加熱の場合は、1〜60秒間、好ましくは、10〜30秒間を挙げることができる。
【0072】
本発明の接着・固定方法の第1の実施形態においては、上記(c)工程に引き続いて、(d)工程、すなわち、前記加熱工程後の熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスのプライマ層表面と前記車両開口フランジをウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程が行われる。図2の(3)は、本発明の接着・固定方法の実施の一形態において、ウレタン接着・固定工程後、つまり、本発明の実施の一形態による接着・固定が終了し、得られた熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体との接着・固定構造11を示す図である。
【0073】
本発明の方法において、(d)工程で用いるウレタン接着剤としては、一般に、車両用窓ガラスを車両本体に固定するために用いられるウレタン接着剤が、特に制限なく使用できる。
【0074】
上記(c)工程後の、熱可塑性エラストマ製窓枠の車両開口フランジとの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤層4とプライマ層5が積層された熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラスにおいて、プライマ層5の表面と車両開口フランジ7とをウレタン接着剤により接着・固定させるには、(c)工程後の車両用窓ガラスのプライマ層5の表面にウレタン接着剤を塗布した後に車両開口フランジ7に係止し、ウレタン接着剤を硬化させるか、または前記(c)工程後の車両用窓ガラスを、ウレタン接着剤が塗布された車両開口フランジ7に係止し、ウレタン接着剤を硬化させればよい。
このようにして前記プライマ層5の表面と車両開口フランジ7の間に前記ウレタン硬化物の層6が形成されるが、その厚さは概ね1〜10mm程度とすることができる。
【0075】
また、本発明においては、前記(a)工程〜(d)工程に替えて、下記(a’)工程、前記(b)工程、および前記(d)工程を行うことによって、熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定することも可能である。以下、この本発明の第2の実施態様について説明する。
【0076】
第2の実施形態における(a’)工程は、成形面の所定位置に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布した金型を用いて車両用窓ガラスの周縁部に熱可塑性エラストマ製の窓枠を射出成形により一体成形して、前記車両用窓ガラスの周縁部に車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤層の形成された窓枠を一体成形する窓枠成形工程である。すなわち、例えば、図2の(1)に示すような構成を、車両用窓ガラス板2への熱可塑性エラストマ製窓枠1の成形時に作製し、これを本発明に用いることも可能である。
【0077】
上記(a’)工程の射出成形に用いる射出成形機および金型としては、通常、車両用窓ガラス板の周縁部に熱可塑性エラストマ製の窓枠を成形するのに用いるものが特に制限なく用いられる。ここで(a’)工程においては、前記射出成形に用いる射出成形機の射出口の温度および金型の温度を適切に調整することが好ましい。(a’)工程では、射出成形の際に熱可塑性エラストマが加熱されるため、金型の成形面に塗布された変性ポリオレフィンを含む接着剤と熱可塑性エラストマ製窓枠とが充分な接着性を発現する。この際、変性ポリオレフィンを含む接着剤層と、続く(b)工程において該接着剤層の表面に塗布されるプライマ層との接着性が損なわれてはならない。よって、変性ポリオレフィンを含む接着剤層にプライマ層との接着機能が残る程度の温度に、前記射出成形機の射出口の温度および金型の温度を適切に調整することが好ましい。
熱可塑性エラストマ、変性ポリオレフィンを含む接着剤、プライマの種類や、窓枠の形状等にもよるが、(a’)工程では、射出成形機の射出口の温度を190〜240℃の範囲内で、金型の温度を30〜60℃(より好ましくは40〜50℃)の範囲内で調整することが好ましい。
【0078】
上記(a’)工程終了後の、(b)工程および(d)工程は、第1の実施形態と同様に実施できる。なお、第2の実施形態においては(b)工程および(d)工程の間に第1の実施形態で説明した(c)工程を行う必要はない。これは、第2の実施形態においては、(a’)工程の射出成形が、190〜240℃程度に加熱して溶融させた熱可塑性エラストマを金型へ注入して行うことから、この(a’)工程で第1の実施形態で説明した(c)工程が同時に行われることになることによる。
【0079】
次に、上記本発明の接着・固定方法で得られる、本発明の、熱可塑性エラストマ製の窓枠が取り付けられた車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造について説明する。
【0080】
図2の(3)は、上記の通り本発明の接着・固定構造の実施の一形態を示すものであって、熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラスが、前記窓枠1と車両開口フランジ7との間に、窓枠側から順に変性ポリオレフィンを含む接着剤からなる層4、プライマからなる層5、およびウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層6の3層からなる接着層を有することで、車両本体に接着・固定されてなる熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体との接着・固定構造11が示されている。
【0081】
本発明の接着・固定構造においては、熱可塑性エラストマ製の窓枠が取り付けられた車両用窓ガラスは、例えば図2の(3)に示される構造で、窓枠部分において通常は全周が車両開口フランジに前記3層からなる接着層により接着・固定されているが、窓ガラスの視認領域を確保するために、前記熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠1と車両開口フランジ7との間の前記3層からなる接着層の幅(図2の(3)で(w)で示される)については、接着強度を確保できる範囲で小さいほうが好ましく、そのような接着層の幅として具体的には、5〜25mmが好ましい範囲として挙げられる。また、より好ましい接着幅は、10〜15mmである。
【0082】
本発明の接着・固定方法においては、熱可塑性エラストマ製の窓枠が取り付けられた車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する際に、窓枠と車体間の接着剤層の構成を、上記のように熱可塑性エラストマ製窓枠側から順に、変性ポリオレフィンを含む接着剤層、プライマ層、ウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層の3層構造とし、さらに、接着性を発現させるための条件を適切に設定することにより、熱可塑性エラストマ製の窓枠と車体間の十分な接着強度をもった接着・固定構造の実現を可能としたものである。また、上記接着・固定構造とすることで、余分な接着幅を必要とせず、窓ガラスの視認領域を十分に確保することが可能となる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
以下の[1]〜[5]に示す方法で、図3に示す、車両用窓ガラスのための熱可塑性エラストマ製窓枠と車両本体との接着・固定構造のサンプルであると同時に接着試験のための試験片となるサンプルを作製した。図3において、接着・固定構造のサンプル(接着試験片)20は、車両用窓ガラスのための熱可塑性エラストマ製窓枠に相当する熱可塑性エラストマ基材21の片面端部に約10mm幅で、変性ポリオレフィンを含む接着剤層22、プライマ層23、ウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層24の順に3層構造の接着層が積層されその接着層を介して、熱可塑性エラストマ基材21が車両本体(開口フランジ)に相当するアルミニウム板25と接着・固定された構造を有するものである。
【0085】
[1]熱可塑性エラストマ基材の作製
被着体となる熱可塑性エラストマとして、サントプレーン121−65M300(アドバンスト・エラストマー・システムズ・ジャパン社製、商品名)を厚さ3mmのシート状に射出成形したものから、25×50mmの大きさに切り出したサンプルを準備した。
【0086】
[2]変性ポリオレフィンを含む接着剤およびプライマの塗布
上記[1]で得られた熱可塑性エラストマ基材の、片側約15mm幅程度に熱可塑性樹脂用の接着剤Aをフェルトを用いて接触塗布した後、常温で前記接着剤中の溶剤を揮発させて、接着剤層を形成させた。なお、接着剤Aは、塩素化ポリプロピレンおよびアミノ基含有シランカップリング剤を含む接着剤である。なお、接着剤A中の各成分の配合割合は、塩素化ポリプロピレン:アミノ基含有シランカップリング剤=17:0.8(質量比)である。
【0087】
[3]プライマの塗布
上記[1]で得られた熱可塑性エラストマ基材上の接着剤層の表面全面に、プライマ(横浜ゴム社製、MS90(商品名))をフェルトを用いて接触塗布した後、常温で溶剤を揮発させて、プライマ層を形成させた。
【0088】
[4]加熱処理
上記[3]で得られた接着剤層/プライマ層付き熱可塑性エラストマ基材を、200℃に設定したオーブンに入れ、20分間加熱した。
【0089】
[5]アルミニウム板との接着
加熱処理後の熱可塑性エラストマ基材の、プライマ層の表面全面にウレタン接着剤(横浜ゴム社製、WS202(商品名))をシーリングガンを用いて塗布し、ウレタン接着剤層の厚さが10mmとなるようなスペーサーを用いて、プライマ処理を施したアルミニウム板を接着した。つぎに、40℃90%RH雰囲気中で4日間養生することにより接着試験片(接着・固定構造のサンプル)とした。なお、アルミニウム板のプライマ処理としては、横浜ゴム社製のGC20(商品名)を塗布後、さらに、横浜ゴム社製のMS90(商品名)を塗布することで実施した。
【0090】
[実施例2]
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例3]
変性ポリオレフィンを含む接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤Bとした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。なお、接着剤Bは、無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよびエポキシ基含有シランカップリング剤を含む接着剤である。なお、接着剤B中の各成分の配合割合は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン:エポキシ基含有シランカップリング剤=6:1(質量比)である。
【0091】
[実施例4]
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例3と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例5]
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤ハードレンMP−200(東洋化成工業社製、商品名)とした以外は実施例2と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
【0092】
[実施例6]
熱可塑性エラストマ基材をマルチフレックス(マルチベース社製、商品名、特開2006−291019号公報を参照)とした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例7]
プライマをPC3(横浜ゴム社製、商品名)とした以外は実施例6と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
【0093】
[実施例8]
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤Bとした以外は実施例7と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例9]
接着剤を熱可塑性樹脂用の接着剤ハードレンMP−200(東洋化成工業社製、商品名)とした以外は実施例7と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[実施例10]
熱可塑性エラストマ基材をノフアロイ(日油社製、商品名)とした以外は実施例9と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
【0094】
[比較例1]
上記[3]のプライマの塗布と[4]加熱処理の順番を逆にした以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
[比較例2]
プライマを塗布しないこと以外は実施例1と同様の条件で接着試験片(接着・固定構造のサンプル)を作製した。
【0095】
[接着試験]
上記各実施例および各比較例で得られた接着試験片について、JIS−K6850に準拠し、試験片の非接着部分をチャックで掴み、室温下、引張り速度50mm/分の条件でせん断引張り試験を行い、せん断強さを評価した。結果を表1に示す。
【0096】
なお、せん断強さはせん断応力(MPa)に換算した値として示した。また、破壊界面状態は、熱可塑性エラストマ基材の材料破壊の場合はB、熱可塑性エラストマ基材と熱可塑性樹脂用の接着剤との界面破壊の場合をAFP、熱可塑性樹脂用の接着剤とプライマとの界面破壊の場合をAFA、熱可塑性樹脂用の接着剤とウレタン接着剤(硬化物)の界面破壊をAFUとして示した。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示す結果から、実施例1〜10においては、破壊面が熱可塑性エラストマ基材の材料破壊となっており、せん断強度も十分なものであった。したがって、上記各実施例において十分な接着強度が得られていることがわかる。
【0099】
一方、プライマ塗布より先に加熱処理を行った比較例1においては、熱可塑性樹脂用の接着剤とプライマとの界面破壊となり、十分な接着強度が得られていないことがわかる。また、プライマを塗布しなかった比較例2の場合も熱可塑性樹脂用の接着剤とウレタン接着剤との界面破壊となり、十分な接着強度が得られていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の接着・固定方法によって、これまで十分な接着性が得られないために困難であった熱可塑性エラストマ基材をウレタン接着剤によって車両本体に接着することが十分な接着性をもって可能となる。よって、軟質塩化ビニル樹脂ビなど環境負荷の大きい樹脂部材をウレタン接着剤によって接着する用途において、設計変更することなく、環境負荷の小さい熱可塑性エラストマに代替させることができるようになる。具体的には、自動車用の固定窓などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1…熱可塑性エラストマ製の窓枠、2…車両用窓ガラス板、3…黒色セラミックス層、4…変性ポリオレフィンを含む接着剤層、5…プライマ層、6…ウレタン硬化物層、7…車両開口フランジ、10…熱可塑性エラストマ製の窓枠付き車両用窓ガラス
11…熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体との接着・固定構造
20…接着・固定構造のサンプル(接着試験片)、21…熱可塑性エラストマ基材、22…変性ポリオレフィンを含む接着剤層、23…プライマ層、24…ウレタン硬化物層、25…アルミニウム板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、
下記(a)工程〜(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(a)熱可塑性エラストマ製の窓枠を周縁部に一体成形した車両用窓ガラスの前記窓枠の車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布して接着剤層を形成させる接着剤塗布工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(c)前記接着剤層とプライマ層を前記接着剤層が接着力を発現する温度以上の温度に加熱する加熱工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
【請求項2】
熱可塑性エラストマ製の窓枠を取り付けた車両用窓ガラスの前記窓枠を車両開口フランジにウレタン接着剤により接着して前記車両用窓ガラスを車両本体に接着・固定する方法であって、
下記(a’)工程、(b)工程、および(d)工程を含む窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(a’)成形面の所定位置に変性ポリオレフィンを含む接着剤を塗布した金型を用いて車両用窓ガラスの周縁部に熱可塑性エラストマ製の窓枠を射出成形により一体成形して、前記車両用窓ガラスの周縁部に、車両開口フランジへの接着面に変性ポリオレフィンを含む接着剤層の形成された窓枠を一体成形する窓枠成形工程、
(b)前記接着剤層の表面にプライマを塗布してプライマ層を形成させるプライマ塗布工程、
(d)前記窓枠を取り付けた車両用の窓ガラスを前記車両開口フランジに装着し前記プライマ層表面を前記車両開口フランジにウレタン接着剤により接着・固定する接着・固定工程。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマが、オレフィン系熱可塑性エラストマまたはスチレン系熱可塑性エラストマである請求項1または2に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィンを含む接着剤が、下記変性ポリオレフィンの少なくとも1種を含む接着剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
(1)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合されたポリオレフィン、
(2)塩素化ポリオレフィン、
(3)α、β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物から選択される少なくとも1種がグラフト共重合され、かつ塩素化されたポリオレフィン。
【請求項5】
前記(c)加熱工程における加熱が、160〜220℃で行われる請求項1、3または4に記載の窓枠付き車両用窓ガラスの車両本体への接着・固定方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により接着・固定された、窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠と車両開口フランジとの間に、窓枠側から順に変性ポリオレフィンを含む接着剤からなる層、プライマからなる層、およびウレタン接着剤が硬化してなるウレタン硬化物層の3層を有する窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造。
【請求項7】
前記熱可塑性エラストマ製窓枠付き車両用窓ガラスの窓枠と車両開口フランジとの間の前記3層からなる接着層の幅が、5〜25mmである請求項6記載の窓枠付き車両用窓ガラスと車両本体との接着・固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−179867(P2010−179867A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27077(P2009−27077)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】